『世間一般的に「良い」といわれているものと
私が「良い」と思うものは必ずしも一致しない』
人それぞれの「良い」をめぐる4編のエッセイ。
自分の直感を信じて
兼松 明里
ステージアップ
伊東 彩乃
人は見た目が9割
磯部 三恵
さよならムスタング
l i s a
世間一般的に「良い」といわれているものと、私が「良い」と思うものは必ずしも一致しない。
そもそも「良」ってなんだ?
『穀物の中から特に良いものだけを選び出す為の器具の象形から出来た漢字』
ふむふむ。でも、その基準って?
私の場合は、直感で「好きだ」という理由が一番多い。
自分は結構ひねくれていると思っている。
他人が「良い」というものを「良い」と思えないことが多い。
それはもちろん好みだからしょうがないんだけれど、10人中9人が賛同するものに、「え~? そう⁇」って言っちゃう10人中1人が私。
あまのじゃくなわけじゃない。
なんというか、みんなが言うその「良い」は、「無難」という言葉が合う。悪くはない、という意味で使っていると思う。
でもそれは私にとって、好きでも嫌いでもないので、「良い」ではないんだ。
そして「良い」の中はランクわけされている。
「良いんだけどね~(35%)」とか
「まぁ、合格(60%)」とか
「すっごく良い!(100%)」とか。
これ、たぶん誰でもありうること。
そして、その「良い」はどれも、自分の生活や人生を「良く」してくれる。
心地よく、気持ちよく、楽しく。
そう思うと、自分の人生、好き嫌いとか良い悪いとか、常に選択して生きているんだなって実感する。
私の直感と感性は自分が一番信じているし、さらに人の直感と感性を知って、視野をもっと広くしたいと思う今日この頃。
「良いもの」について考えながら、めずらしく遅い速度で歩いていた。
いつ以来だろう、記憶の検索に簡単には引っかからないほどひどく落ち込んだ気持ちのときに、皮肉なテーマを噛みしめながら。
一週間前、ある知人と偶然の再会をした。確かまだ、ドラゴンズが落合監督の頃だったから、会うのは五、六年ぶり。
それにしても、良いタイミングでそこを通ったものだわ。お互い突然の出来事に、驚きと喜びの中、ひとしきり挨拶を交わした。
そして彼女の言葉。
「どうしたの?」
「なにが?」
「すごく痩せて」
首をかしげる私と、心配そうな彼女。お互いの表情に、さっきまでの笑顔はない。
そうか、私は痩せたのか。
数年前の記憶を辿る。
その頃の私を思い描く。
口の中がザラついてくる。
彼女の目に映る今の私、美しくないのでしょうね。
キレイになりたい。キレイは良いコト。
良い環境で、良い評価を受けて、高水準の良い生活をおくる。良い食事と、良い運動、良いお化粧品を使って、良い睡眠を取る。そうやって良いモノに囲まれたら、良い自分になれるのかしら……エステサロンに走り回る日々。良い自分を求めて。
変わりたい。美しくなりたい。
そうなれたらきっと、甘い蜜だけ舐めながら生きていけるのに……探し求める答えが、そこにある気がして、追い続ける。
でも、私の中のキレイの定義、条件とルール、自分にだけ課した規律は、守ろうとするほど自分を否定する。
本当は、そこに答えがないことを知っている。
だけど今は、好きにすればいいと自分を解き放つ。私の隅々まで納得する時が来るまで。
ずっと私、自分を認めてあげられなかった。
この容姿、この人格、この思考。
受け入れてくれないのは、他人じゃなくて自分だと、ずっと気づけずにいた。
そこから抜け出せないうちは苦しい。
苦しくて、粉々にした過去は、修復のしようがなくて、破片を一つだけつまんでみたけれど、それ以上は集める気にはならなかった。
だけど、過去を証明しなければ未来をくれないというのなら、私は集める。
震える手で、つなぎ合わせる。
でもその先にあるのはきっと、さよならだわ。
創り出す数と壊す数。
とても生産が追いつかない。
壊すことで、そこに確かに存在した事実を確認する。
結局安心は、喪失の中にある。
すべてを失って、やっとホッとする自分にまた気づいた。
すべてはベストなタイミングで起こる。
「良くないと思えることも、自分に起きたベストなこと」と、女神さまは言っていた。
最近、ちらついている、私の使命と答え。
グッドでベストなタイミングが、今、ようやく来たみたい。
皆さんは「人は見た目が9割」で判断されますか?
また、ご自身は他人からどう見られているのか、考えたことはありますか?
人間は知能があるので、内面重視! といきたいと思いますが……
前置きはここまでとして、先日、母の通院のため車を走らせていて、途中トイレ休憩にサービスエリアへ立ち寄った時のことです。
母は歩行が不自由なので、身障用パーキングに車を停めました。すると、横にボックス型の車がスッと入ってきて停車。中から出てきたのは、若いご夫婦。その後を追うように飛び出してきたのが、4歳くらいのお子さんと、そのお子さんに「○○、走らない」と声を掛ける初老の男性でした。
んんん⁈
一瞬私は、自分が停車したパーキングの看板を確かめました。
たしか、一般車両の駐車スペースは満車じゃなかったよね……?
ご夫婦は後ろを振り返ること無く、各々のスマートフォンに夢中。元気盛りで走り回るお子さん。その後ろからトイレに向かって歩く初老の男性。
そこで感じたのは、お子さんの保護者である大人の3人に対する見た目の不快感。
もしかしたら、お子さんの安全のために身障用のパーキングに停車したのかもしれません。ですが、私はその仕草、ふるまい、容姿からは、お子さんへの関心、周囲への配慮は感じられませんでした。
心理学に『メラビアンの法則』というものがあります。相手に伝わる印象は言葉7%、表情・体型などの見た目93%というものです。
またこのような諸説があります。外見的魅力・好印象を与えることによって、活躍のチャンスが増える、自尊心が高まる傾向にあると。
そう思うとあえて自分を損にしてしまうのは、もったいない! と思います。
少し話が逸れますが、数年前から主人に誘われゴルフを始めたのですが、私は「見た目」から入るタイプ。
しっかりウェアーを揃え、いざコースにデビュー!
主人からは「初心者には見えないね~」と言われ、その気になってスイングしたら……(笑)
一進一退ですが、不思議です。出来る! 気になるのですから(笑)
「GOOD」と「BAD」なら、やっぱり見た目は「GOOD」の方がいい。
人は見た目が9割は、自分の「徳」9割のためではないかなと感じます。
先日、12年間持っていたエレキギターを処分した。
それは私の大学生時代を象徴するような存在で、機種名は「ムスタング」。日本で初めてのロックギタリストといわれるCharの代名詞、小さめのボディにショートスケールネック、独特のビブラート・ユニットを持った、癖のあるギター。
でも、私がそれを買った理由は、バリバリのロックがやりたいとかCharに憧れていたとか、そういうわけではなくて、生成り色のボディと形、ギターの中ではマニアックな存在だったのが気になったから。
そして弾くようになって、チープな低音とチリチリした高音と太く豊かな中音を持ち、それらが合わさると温かく切ない音を出せることを知って、より気に入った。
そのギターは、初めての本格的なオリジナルバンドで使っていた。
ボーカル&キーボード、ギター、ベース、ドラムの4人編成。大学の軽音サークルで結成した。みんな私よりちょっとずつ年上で、人からとても好かれる、サークルの中心的な人たちだった。だから、そのバンドは結構人気があったと思う。
私はボーカルの作った曲を、そのイメージをより表現するために、ギタリストらしからぬ不思議で弾きづらいフレーズを作っては、下手なりに弾いた。
「ギターで弾かなくていいんじゃないの?」
サークルの先輩からはよく言われたけれど、独特な癖のある音と弾きづらいフレーズだからこそ出せる緊張感やたどたどしさは曲に合っていたし、自分とムスタングだから出せると思っていて、頑なに姿勢は崩さなかった。
というより、崩せなかった。
だってそのバンドは、「私」というものを180度変えた場所で、ムスタングを奏でることは「私の中の他の人と違う部分」を表現して、認めてもらえて、褒めてもらえる、そんな手段だったから。バンドの人も、私のギターを良しとしてくれていた。
でも、そのバンドが活動を終えるとムスタングも役割を終え、私は表現の場所と手段を別のものへとシフトしなくてはいけなくなった。
それは、頼っていた人たちから離れて、ひとりで歩いていくことを意味していた。
25歳の夏だった。
その後、ムスタングを弾くことはほとんどなくなり、小さいころから慣れ親しんでいたピアノに回帰していった。
ピアノを練習し、曲を作り、新しい音楽の集まりに参加し、時には人前で演奏する。
新しい場所を手に入れたかのように思えて、やっと独り立ちした、依存から抜け出せたと一時は思う。
でも、そのバンドがなくなってしまったことの、どこか悲しい気持ちと虚無感はうっすらと纏わりついて消えない。ひとりで表現することの恐さにすくんでしまう。
自信が持てない、不安……
満ちていたやる気は少しするとしぼんで、ピアノに集中できなくなる。
気分転換にムスタングを取り出してはバンドの曲のギターフレーズを弾いてみる。
なんだか空しい……
やる気がさらになくなり、しばらく音楽から離れる。
でもしばらくして、やっぱり音楽やりたい! とまたピアノに向かうけれど……
この数年、その繰り返しが何回あっただろう。
あぁ、私にとって、あのバンドはそれほど大事だったんだと何回も気がついて、そのたびに、もう戻れない懐かしい日々を思う。
ひとりで歩きだすことを躊躇し続けて、弾くことが嫌になりその分思い入れの強くなっていくムスタング。
でもね、ずっと気づいていたんだ。
バンドを組もうといったのは私。活動がしづらくなると分かっていてバンドの拠点地を離れ地元に帰ってきたのは私。ボーカルが「バンドを休止しよう」と言った時反対しなかったのは私。
誰かが決めたからじゃない、自分も決めてきた事だった。
私は誰かのじゃなくて、自分の音楽がやりたくなっていた。
人に好かれ評価もある場所を離れて、何もない、ただの私から始める。
その状態はとても不格好に感じて苛立つこともあるけれど、ひとり評価されることに不安と恐怖は大きいけれど、選択したのは自分。
だったら、「それでよかったんだ」と思えるように今を生きて、過去に対する気持ちを変えていきたい。あのバンドを、空しさではなくて感謝の気持ちで思い出したい。
そうなれたらきっと、私はもっと私になっていると思う。
先日手放したムスタング。
ひとりでも歩いていこうと自然と思えたから、さよならした。
次の弾き手に会えますように。またその役割を全うできますように。
兼松 明里
(かねまつ あかり)
引き出物プランナー、贈り物コーディネーター
学生時代は畜産を学び、卒業後は製薬会社の研究所で技術職として勤務。その後特許ライセンス業務に就き、妊娠出産を経て現在はまた研究技術職に復帰。趣味の、旅や食べ歩き・お取り寄せをキッカケに自身の結婚式でカタログギフトを自作。その後【引き出物プランナー】【贈り物コーディネーター】として開業。ヒト・モノ・コトとの出会いを求め、家族を巻き添えにし、休みの度に車で走り回っている。
Message
世の中すべてのモノやコトは理由さえあれば
“ギフト”になる可能性をもっている
ブログ
http://ameblo.jp/kokoro-no-tsumeawase/
Instagram
@hikidemonoplanner
伊東 彩乃
(いとう あやの)
中小企業診断士事務所スタッフ
静岡に生まれ、静岡の学校を卒業し、静岡でOLなどを経て、現在は中小企業診断士の事務所に勤務。広報を担当。静岡市七間町を中心に、静岡おまちのイベント・お店・商品・人をブログで紹介する日々。
Message
「自分なんて…」と思うからこそ自分自身を開きたい。
変われることを伝えられる人になりたい。
事務所スタッフブログ
http://ouendan.eshizuoka.jp/
磯部 三恵
(いそべ みえ)
「therapy mirakul 」
女性専用カウンセリング、メンタルケアセラピスト
私は昔、インナーチャイルドに捉われていました。抵抗していくことで、現在の自分、ライフスタイルを獲得しています。女性が自分らしく充実して生きていく、そのために私ができるお手伝いがある! その思いから「ミラクル」をはじめました。
Message
自己の過去から『現在』『未来』は変えられる。
意識づけが変化を生み充実したWoman lifeに繋がる。
ホームページ
http://www.therapymirakul.com
l i s a
ピアノ弾き、音楽クリエイター、図書館司書
Message
わたしはわたし
ひとはひと
みんなそれぞれの人生をちゃんといきている
だからおもしろい✨
を心にとめて
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@lisa_anone_nohi
「いいエッセイ」とは?
書き続けていると、気になり始めることです。
「役立つ情報を、自身の体験から、ストーリーで語る」としてみます。
じゃあ、役立つ情報とは?
行動を起こそうとするとき参考になるもの、知らないこと・未知の世界を教えてくれるものでしょうか。
このエッセイマガジンのそもそもは、ふと目にした一言でした。
今の自分の世界を変えたいなら、今の自分を知る必要がある。
うまく書けるのか、やっていけるのかわからなくてもいいからまずやってみる、書いてみる。そのうちに「書くことを通して自分を見つめ直す」ことになるだろうと、最初に予測してみました。
今回で7号目。ライターさんからは、そのような効果があったとちらほら聞きますので、少し手ごたえを感じています。
書いて、発見して、書いて、発見して。
それを繰り返すうちにより伝えたいことが出てきたり、役に立ちたいという気持ちが強くなってきたり、行動を変えていきたいと思うようになったり。
自分を知ろうとすることは、今の自分を更新し続けていくことでもあるんだと思っています。
スタジオ 木の中庭 l i s a
2017年6月24日 初版 2020年3月 第2版 発行
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"私らしさというのを持ちながら、今ここを生きようと変化し続ける女性はとってもハンサム! そのために必要なのは……? たくさんの考え方にふれて自分を知ること、だと思う。"
Her storiesは「多様な考え方とスタイルを知ることこそ自分らしく生きるコツ」をコンセプトに、ライフスタイルも仕事も考え方も異なる女性たちのお話を配信するエッセイマガジンです。ライターが執筆を通して自身の振り返りと発見をし、自分の言葉で伝えていきます。そして、「より自分らしく生きたい」と願う読者に向けて、ハンサムに生きるためのヒント「たくさんの考え方やスタイルを知る」機会を提供することを目的としています。
毎号「言葉」を決めて、そこから連想されることを各自書いていくのですが、同じ言葉なのに思い出したり考えたり感じたりすることはバラバラ。文調も使われる言葉も人それぞれ。それは、考え方の違い、これまで生きてきた背景の違い、感性やセンスの違い‥‥‥その人らしさが出ているからだと思います。それってとっても面白い! と思いませんか?
読んでくださる皆さんが「自分だったらどうだろう?」と想像をめぐらせる、自分を見つめる機会になったならうれしく思います。
自分らしく生きたい人のヒントになることを願って。