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専門的知識のとぼしい小学校教師が、社会や理科などの教科をどうやって教えたらいいかを探求した本となっています。
二〇二〇年度から導入されるプログラミング体験の授業も含め、32本の授業プランも紹介しています。

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素人教師の専門性が問われる授業の進め方

荒井賢一

はやし出版



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  この本はタチヨミ版です。

 目 次

まえがき

一つめの探求 授業を通して社会を視る

一 教科書や資料集を活用する

授業プラン①(6年社会・総合)「渡来文化と渡行文化 そしてロボットの未来」

二 集合知で深める

授業プラン②(5年社会)「日本の食料生産の問題点を調べ、解決策をさぐる」

三 確証バイアスから抜け出す

授業プラン③(5年社会)「情報を送る側と受け取る側ではどちらの責任が重いか」

四 プレゼンに発問をプラスする

授業プラン④(6年理科)「深刻な水不足の国はどうやって水を手に入れるか」

五 課題と解決策を見つけ出す

授業プラン⑤(5年社会)「日本の工業 原因と解決策を考える」

六 授業を記録する

授業プラン⑥(5年社会)「情報媒体の長所と短所 一番便利(危険)なのは?」

七 具体と抽象を往還する

授業プラン⑦(6年社会)「日本国憲法を現実に落とし込んだものが法律である」

八 当たり前ではないことに気付かせる

授業プラン⑧(6年社会)「基本的人権をジャンケンで勝ち取る」

二つめの探求 中学年社会から視る高学年社会の授業

九 生活経験を活かす

授業プラン⑨(3年社会)「コンビニとスーパー 便利なお店はどっち?」

十 グラフを読み取る

授業プラン⑩(4年社会)「グラフの細分化 大阪市のごみ量と人口の推移」

十一 見学を活かす

授業プラン⑪(3年社会)「図書館で働く人は給料をもらっているのか」

十二 セレクト発問で討論

授業プラン⑫(4年社会)「おまわりさんと道路標識 交通ルールを守らせるには」

十三 年表を読み取る

授業プラン⑬(4年社会・大阪)「洪水の少ない今の淀川ができるまでを推しはかる」

十四 知識を楽しく定着させる

授業プラン⑭(4年社会)「PowerPointで3択クイズを作る」

三つめの探求 高学年の理科授業

十五 凛々しい個別化で全員参加

授業プラン⑮(5年理科)「まぜなくても食塩は水にとけるだろうか」

※全員参加の授業への手立て

十六 実験に至る展開に布石あり

授業プラン⑯(6年理科)「ペットボトルでできる流れる水の地層づくり」

※安上がりで、すぐに用意できる実験

十七 予想の理由を発表する

授業プラン⑰(5年理科)「意外性が生まれるふりこの実験」

※ふりこの実験は教師が見本を示し、測定方法も教える

十八 規則性を見つける

授業プラン⑱(6年理科)「小さな力をてこで大きな力に変える」

※てこの働きを体感させるために

十九 実験・製作をマネジメントする

授業プラン⑲(5年理科)「電磁石の磁力を2つの方法で強くする」

※実験・製作をマネジメントするために

二十 アプリで観察する

授業プラン⑳(6年理科)「時間を超えてiステラHDで月観察」

※iステラHDの使い方

二十一 整理し、厳選する

授業プラン㉑(6年理科)「人間が生きていくために絶対に必要なもの」

※心臓や血液の大切さや仕組みに気付かせる

四つめの探求 知的で楽しい社会科の授業

二十二 あれども見えずに気付かせる

授業プラン㉒(5年社会)「五円玉から見える5年生社会科の学習」

二十三 同じ観点で考え調べる

授業プラン㉓(6年社会)「米づくりによって人々のくらしはよくなったのか」

二十四 教科書を開きたくなる導入

授業プラン㉔(5年社会)「1枚の写真から見える日本の地形と気候」

二十五 必然性を見抜く

授業プラン㉕(6年社会)「天下統一や朝鮮出兵につながる兵農分離」

※点と点が線になる日本史

二十六 知識を全体共有する

授業プラン㉖(5年社会)「学習への準備 自動車について知っていること」

※タローラ作りで自動車作りの疑似体験

5つめの探求 ICTを効果的に使った授業のあり方

二十七 WEBページを活用する

授業プラン㉗(6年社会)「ゴッホに影響を与えた浮世絵師:歌川広重」

二十八 不思議が街にあふれてる

授業プラン㉘(6年理科)「出前機が教える地震に強い建物とは?」

二十九 ICTに描かせてみる

授業プラン㉙(5年社会)「正多角形をプログラミングする」

三十 推測する力をつける

授業プラン㉚(6年理科)「プログラムを組んで信号機を動かす」

三十一 仕組みを考える

授業プラン㉛(5年社会)「自動販売機のプログラムから米作りの未来まで《第1時》」

※自動販売機のプログラムの作り方(スクラッチ編)

授業プラン㉜「自動販売機のプログラムから米作りの未来まで《第7時》」

あとがき

まえがき

小学校教師は、社会や理科について、ほぼ素人です。
もちろん、中学の社会や理科の免許を持っている方もいるでしょう。
でも、ほとんど小学校教師は、自分が学校で学んできたぐらいしか知りません。
例えば、6年の社会科。
なぜ、貴族の世から武士の世に変わったのか?
なぜ、天皇制は二千年も維持されてきたのか?
例えば、高学年の理科。
飽和した食塩水に、砂糖を入れたら溶けるのか?
手回し発電器を回すと、なぜ電気が生まれるのか?
このような疑問に、専門的知識のとぼしい小学校教師が答えられるでしょうか。
(もしかすると、あなたは答えられるかもしれませんね。)
さらに、ただ答えられるだけでは、教師とはいえません。
それらの知識を子どもたちが納得いくように、教えられなければいけないのです。
もちろん、それを楽しく教えられたら、よりいいわけです。
この本では、専門性の高い知識を子どもたちにどうやって教えたらいいかを探求したものとなっています。(まだ「探究」には至っていません。)
二〇二〇年度から導入されるプログラミング体験の授業プランも紹介しています。
「さすが先生!」と、子どもたちに尊敬の目で見られるような教師への道をともに、探求していきましょう。
二〇二〇年三月二十六日 荒井 賢一

一つめの探求 授業を通して社会を視る

「発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。
 新しい目で見ることなのだ。」
 マルセル・プルースト

一 教科書や資料集を活用する

 子どもたちの語彙力を高めるための素材は、教室の中にある。
 その一つが教科書だったり、資料集だったりする。
 教科書や資料集には、子どもたちの知らない語彙が詰まっている。
 それらの語彙を授業の中の教師の問いによって、掘り出し、磨くのである。
 学びを通してこそ、子どもたちが出会う語彙が光り輝くのである。

新語彙で語彙力を鍛える
語彙力を高める教科は、国語だけではありません。
5年の社会科の学習であれば、領土、気候、農業、水産業、工業など、新たな語彙(学習用語)が出てきます。6年で学習するや歴史政治も、多くの人名や出来事、憲法や国会の仕組みや制度などの専門的語彙が数多く登場します。
新しい語彙を習うことは、子どもたちの語彙力を高めることにつながります。
なぜなら、今まで考えもしなかったことが、新語彙によって触発されるからです。
例えば、「渡来」という語彙から、他の国から渡って来たものがあったことを知り、「渡来文化」を知ることで、日本は他の国の影響によって進化できたことに気付けることができます。
 さらに、人も国も他から何かを受け取ることで、成長・進化できるのだという今まで気付けていなかった真理に触れることもできるのです。
後述の授業プランでは、渡来の逆、渡行もあることに気付かせ、さらに語彙力を高めていきます。
 逆のものを意識するだけで、語彙はそれだけで2倍に増えるといえるでしょう。

ポーランドを渡って行く日本庭園
 二〇一六年八月四日テレビ東京が放映した「世界!ニッポン行きたい人応援団」では、日本庭園をこよなく愛するポーランド人を日本に招待しています。
 自分の家の庭を日本庭園にし、茶室まで造っているポーランド人セバスティアンは、島根県の足立美術館に訪れました。
 足立美術館は、アメリカの庭園専門誌『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』で、十三年連続一位に選ばれている。二〇一五年には、外国人入館数が年間二万五千人を突破したそうです。
 ポーランド人セバスティアンは、番組の最後に次のように言っています。
「初めてのニッポンは毎日が素晴らしい経験ばかりでした。僕が思っていた以上に足立美術館の庭師さんたちはすごかった。ポーランドに帰ってニッポンで学んだ技術を自分のものにするために精進します。」
日本庭園の技術がポーランドに渡って行っている一つの例といえるでしょう。

最新技術への学びが語彙力を鍛える
 今回の授業プランでは、日本の最新ロボット技術の一つであるジェミノイドを紹介しています。
 あらゆる分野で日々誕生している最新技術を取り上げることが、子どもたちの語彙力を鍛えることにもつながります。さらに、教師としての専門性に磨きをかけることにもなるでしょう。

授業プラン①(6年社会・総合)
「渡来文化と渡行文化 そしてロボットの未来」

渡来文化~中国や西洋から渡って来たもの~
【遣唐使船の写真を提示】
「何船といいますか。」
 ・遣唐使船
「7世紀から9世紀にかけて、日本から中国の唐をめざして、多くの人が海を渡りました。何をしに行ったのですか。」
・中国の進んだ文化を学びに行った。
「その結果、どんなものが中国から日本に渡って来たのでしょうか。」
 ノートに書かせてから、列指名する。
 ・政治の仕組み ・法律
 ・仏教の教典 ・香料や香木
 ・楽器や楽譜 ・書物
 ・囲碁 ・工芸品
 ・油の製法 など
【黒船の絵を提示】
「何という船ですか。」
「一八五三年の夏、4隻の黒船・軍艦が日本にやって来ました。
 何をしに来たのですか。」
 ・日本と貿易に来た。
「日本は明治維新を経て、西洋の文化を取り入れることにしました。
 どんなものが西洋の国から日本に渡って来たのでしょうか。」
 ノートに書かせてから、列指名する。
 ・れんが造り ・ガラス
 ・道路 ・電柱
 ・洋服 ・水道
 ・水力発電 ・鉄道
 ・郵便 ・軍隊
 ・工場 ・機械
 ・散髪 ・学校制度
 ・ガス灯 ・人力車
 ・新聞 ・太陽暦
 ・電話 など

渡行文化~日本から中国や西洋に渡って行ったもの~
「日本はアジアの中でいち早く西洋の文化を取り入れ、それが中国に渡って行くようになります。どんなものが渡って行ったと思いますか。」
 思いつく子に発表させた後、以下のようなものが渡って行ったことを紹介する。
・和製漢語(共産・資本・政治・経済・文明など)  
 ・水道設備 ・学校制度 など
【7~9世紀 中国→日本が、19~20世紀 中国←日本の地図を提示】
【19~20世紀 日本←西洋を提示】
「現代はどうなっていると思いますか。」
 ・日本から西洋に渡って行ってる。
「日本からどんなものが西洋に渡って行っているのでしょうか。」
 挙手指名で発表させる。
 ・自動車 ・新幹線
 ・アニメ など
 外行語(すし・すもう・つなみ)が出なければ、教師から紹介する。

日本のロボット産業
【ロボット産業の輸出グラフの提示】
「ある産業の輸出グラフです。日本が世界シェア1位です。何でしょう?」
 ・自動車 ・新幹線
「産業用ロボットです。」
【産業用ロボットの写真提示】
「ロボットの中に、遠隔操作型ロボットがあります。ラジコンのように、遠くからロボットを動かすことができるのです。
 では、遠隔操作型ロボットで何ができるでしょうか。」
 ・遠くに物を運べる。
 ・危険な所で作業ができる。
「遠隔操作型ロボットをつくることに賛成ですか、反対ですか。」
 ノートに賛成・反対とその理由を書かせ、話し合わせる。
【海外の遠隔操作型ロボット(地雷除去、軍事兵器など)を紹介】
「遠隔操作型ロボットをつくることに賛成ですか、反対ですか。」
【日本の遠隔操作型ロボット「ジェミノイド」を紹介】

※写真の女性の1人は、ロボット工学者の石黒浩教授が開発された遠隔操作型ロボットのジェミノイドである。人間そっくりの表情や仕草で会話をすることができる。

 開発者の石黒浩教授やそのジェミノイドをできれば動画で紹介する。
「世界平和に貢献できるのは、西洋のロボットですか日本のロボットですか。」
 ・日本のロボット。
「未来のロボットづくりに、みなさんが関わっていくかもしれませんね。」

※写真のジェミノイドは、中に携帯を埋め込むことで、遠く離れた孫と会話ができるように造られている。(石黒教授開発)

二 集合知で深める

 高学年の社会科の学習で、調べる活動を省くことはできない。
 課題に対しての適切な情報を自分で見つけ出す力をつける必要があるからだ。
 しかし、その調べ学習は、本当に子どもたちの力を高めているだろうか。
 今回の授業プランでは、河田孝文氏の「集合知」を取り入れ、子どもたちの調べる力を集団的に高めていく。

丸写しの調べ学習になっていないか
社会科や総合で調べ学習をさせます。
 このときによくあるのが、教科書や資料集もしくはネット情報の丸写しすることです。
 調べた語彙の意味も分かっていないのに、ノートのスペースを埋めるために、ただ書き写してはいないでしょうか。
丸写し自体は視写の一種なので無駄ではありません。でも、これは調べ学習とはいえません。
では、どうすればいいでしょうか。



  タチヨミ版はここまでとなります。


素人教師の専門性が問われる授業の進め方

2020年3月24日 発行 初版

著  者:荒井賢一
発  行:はやし出版

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荒井賢一(あらい・けんいち)
 1965年、石川県生まれ。高槻市立芥川小学校勤務。大阪教育サークルはやし代表。
 学力研常任委員。教育サークルREDS所属。
 ホームページ「教育考現学」(http://bcaweb.bai.ne.jp/~aik28501)公開中。
 『「遊びのルーツ」もの識り大百科』(1991.6明治図書)
 『絵になる100マス計算プリント』(2002.8清風堂書店)
 『学力ドリル漢字小学6年生』(2004.3清風堂書店)
 『絵になる100マス計算プリント・パートⅡ』(2004.12清風堂書店)
 『2つの発問で組み立てる授業』(2007.3フォーラム・A)
 『同音異義語習熟プリント』(2016.3清風堂書店)
Kindle版『2つの発問で組み立てる授業』BCCKS Distribution (2020/3/5)
Kindle版『授業づくり5つの心構えと指導法』BCCKS Distribution (2020/3/12)
Kindle版『国語の授業づくりにおける5つの視点』BCCKS Distribution (2020/3/16)
Kindle版『子どもが食らいつく道徳授業の組み立て方』BCCKS Distribution (2020/3/23)

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