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天国から、一番近い、命から、一番遠い。

「糸」

群青出版



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手首の花びらが綺麗だね、きみが笑う日は最終日。許した数だけ花が咲く。
花の色から自分を選んで。白色が好き、なんて、つまらないでしょう。
それでも、人生。ここはまだ一つ目の星。わたしから零れるは彗星。
次はどんな命で生まれよう、海の手前で世界と最後の無駄話。
瞼の裏では素晴らしい世界が闇を食べているんだよ。絵のない絵本から飛び出して。タイムカードは切らないで。ここから先はロスタイム。
逆方向の電車に乗ったら、革命の始まり。人間らしさを武器にする。
人間のフリした細胞、命のために寿命を削れ。


     詩「花泳ぐ」


宇宙が溶けても誰も気付かないよ。きみの星なんて瞬きのよう。
最果ての名前を教えて、微かに聴こえる名曲の名前を教えて、聖人君子の死因を教えて、ぜんぶ忘れて、これまでの呼吸を数えて。
そしてわたし、百年後に嘘をつく。一日前に吐いた息は遺書のよう。ほら、空から輪っかが落ちてきた。心臓の左側、天国への最短ルート。
私が死んだら世界は美しくはなれないよ。誰かが誰かを殺す夜、それを誰かが人生で最高の夜と言う。青春でお金を買った夜。
あの子が初めて死んだ夜。
それでも、僕らは、命を生きていく。


     詩「星の子」


愛の伝え方はアナログで、悪口は全部デジタルに。電波に首を絞められながら生きていく。もう死んでいるみたいなもんだね、きみが言う。
みんな爆弾を持ってんだ。導火線は赤い糸、切り刻んで来世。
割引の程度は人権の程度。私に貼られたシールすら、私は知らない。
夕方のセールと優しさの血液。目を開かずに出来る仕事で食べるご飯。
スーツのシワは生命線。横断歩道の白線、踏み外したら落選。
靴底の減りはきみが生きてきた証明。私、息をして、大人になるために。
校庭の真ん中には死体がひとつ。遊具に絡まる首輪がふたつ。
大人になる三十秒前、名前の意味が呪いに変わる。ため息を吐いたら起爆音。


     詩「爆弾魔」


くだらない愛情表現で産まれた子供。
大丈夫、きみは神の子。
だからいつまでも生きていて。
水曜日には雨が降る。水溜まりから足が生えたら、
空を羨ましく思うでしょう。
真夜中のこと、命のせいにしないでよ。
空から振る子供の幽霊。墓場からは母の歌。
きみの地獄はきみのため、
脳から上は、きみ以外の所有権。
跳ねた水滴、遮断機の音、まだ読めない漢字の話、
くだらないから幸せだって。
私、天国で綿飴を食べる。
貯金額と寿命のオークション。床暖房完備の地獄。
産まれた日から寿命は縮む。
それでもきみは、それでも私は、
それでも雨は、


     詩「天国と置き傘」


きみは、呼吸の、依存症。茜色の空も、
吐き出す頃にはゴミになる。
口の中に死骸を詰めて、窒息死でもしてみてよ。
わたし、ずっと、あの子のダンスを眺めていたい。
これもぜんぶ蝶の夢。わたしはわたし、
なんて言える証明は無いらしい。
疑問形で終わるのだけは嫌だよ、
人生、最後に答えを教えて、人生。
前髪だけが伸びる季節に恋をする。
なんにもいらない、なんにも、いらない、
もうなにも。舌の位置、呼吸の仕方、
当たり前を気にしたら生きづらくなる不思議。
先生、ここは、誰のための教室ですか。


     詩「呼吸のゴミ」


安っぽい愛情の虜。人はいつまで恋をする、
わたしはいつまで息をする。
ほら、もう、この世の終わり。
きみが最後に選ぶ表情はどれ。
喜怒哀楽の隙間から声がする。もう、
朝。もう一度朝。光の外側で欠伸をする。
時計の針に追い越されて、
一歩も動かないことが正解なのだろう。
唯一の救いとして、人は夢を見る。
左手の存在を忘れたら大人の証拠。もう限界、
からあと少しで世界の終わり。息の停留所、
停るのはわたし意外のすべて。
浴槽はワンダーランド。命の契約終了日。
ほんとのほんとの最後の日、きみはきみに恋をした。


     詩「恋の命」


命が透明になる日、
あなたの手を握れないまま年を越す。
星の下には化け物がいて、
鎖に繋がれて飼われてるんだよ。
一人残らず成人を迎える、だから、
子供のままで死んでゆく。
約束が星の数を超えたら、
お菓子を持って迎えに行くよ。
最低な朝から太陽を救い出せ。
知らない人の知らない夢、
光らない雲から雨が一粒。
声が枯れても人のまま。
だから優しくなんてなれないよ。
星の下の化け物は、命を握れない。
星の下の化け物は、今日も、
季節の上で迷子になった。


     詩「ニンゲン」


窓の外側は知らない世界。私の此処とは別世界。
だからきっと同じ息は吐けないよ。内側では、五体満足の祝福が鳴る。
周りと違う感情を愛して、感情の種類はあなたが決めて。産まれた意味より文字数の多いレシート。破れないなら人間失格。
ねえ、ほら、私たち、失った友達の数だけ笑えるよ。ここはとても幸せ。
になるために右腕を捨てる。少し躓けば、呼吸の始まりに遅刻する。
ここはとても素敵な世界。素晴らしい世界。匿名で語られる若者のすべて。
真っ赤だった、だから春だった。
窓の外では命が、咲いて、


      詩「今日の花」


人間は、最短距離で最高へ向かう。途中で転ぶ。
この始まりは、瞼の裏側。愛はしろいろ。
色々の中にわたしはいる、とっても生きている。月の視界の一番端っこ、いつか欠けたら落ちて、落ちて、人間に戻る。
来世では、名前が住所の代わりになる。そうして、きみはわたしに会いに来る。それは、これは、すべて、瞼の裏側で見てる夢。走馬灯。
右斜めから流れ出す。絵筆の先から血が滲む。
きみはこの世で、どんな絵を描く。わたしはあの世で。
もういいかい、で命は始まる。


     詩「かくれんぼ」


きみの心臓をゼリーにして、冷蔵庫の隅でおやすみなさい。
ねえ神様、わたし、今日も返事を待ってる。
人間は死んだって汚い生命、だから綺麗な色で絵を描く。生命。
それでも、星が腫れても、きみの心臓だけは綺麗だよ。
右手小指から、妬み嫉みの味がする。嘘の中から同情をすくい上げて飲み込んで。朝を作った人は、わたしの夜を知らない。だから勝手に光り輝く。
わたしもあなたを知らない、だから勝手に死んでゆく。
それでも人としての愛を、殺さないために育む愛を、
心臓のために生きていく愛を、


     詩「葡萄ゼリー」


喉で踊るは、春とアルコール。グラスの外側で水滴は揺れる。
右頬の色は、ブラックライト。落ち着かないのは手足があるから。
ここから先は、深層心理。ぜんぶ、私のせいにしないでよ。
性別を消して、友情の最終形。
まだ生きていたいなら、次の言葉を飲み干して。
蝶の柄のペンケース、でもわたし、あの日死んだから、
あれはきっと少女の棺桶。今夜だけは星が綺麗だなんて嘘を吐く。
きみと私とわたし、
愛情に乗り込んで、誰のせいでもない楽園へ。


      詩「春を呼ぶ」


目を開けても、きみはまだ夜の中。手を叩けば深い海。
飲み込んだ言葉は消化されない、だから人は破裂する。
一方通行、後ろを向いたら最期の光景。ふわっと終わる、重力の裏側。
体重から心の重さを差し引いて、やっと、人は生まれた意味を知る。
ビルの上には優しさがふたつ、死骸がひとつ。
足元で枯れる花があるでしょう、それがあなたの生まれた意味です。
海の底では死骸の演奏。襟足だけが水面を舞う。
きみが最後に輝く方法、ビルの上には死骸がひとつ。
最期の海には、愛の宝石が浮かんでる。


      詩「海の輝」


人は死ぬ間際に鳥になる、だからここから先を、どうか楽しんで。
この世界のすべて、きみのために死んでゆく。
命たちが舞う、わたしは名前を知らない。
羽をもいで、代わりに足を手に入れた鳥のよう。
生物学的な真実に抗えば終わり、これでもう終わり、
嘘なんか吐かないよ。最終章、最終少女は、儚いよ。
脳は死ぬ間際に光を放つ。真っ直ぐ伸ばして、遠く、近く、
命には辿り着けないまま、光。ここは、彩り鮮やかな墜落現場。


     詩「鳥と落下」


深夜一時に花火が上がる、きみは眠らず、夜の光。
死体の手の中から魚が産まれる。
踵は剥がれて、愛が咲く。開いた色は内緒にして。
わたしだけの彩。優先席で待ち合わせよう、
わたしが死んだら始まる話。楽譜の上には、
華が咲く、鍵盤の上で跳ねるは命。
飛び上がれば、空。紛れもない空だった。
参加賞、白色、音楽が鳴り止んだ日。
嘘は有限だから、いつかほんとの話をするよ。
街灯の目線を抜けて、
夜道で笑えばひとりぼっちのサーカス。
ほら、伏線回収の鐘が鳴る。


     詩「サーカス」


言葉の先端に触れる。毒に濡れる。
やさしい心の始まり。例えばあと二日の呼吸なら、
息を止めたまま永遠の中を泳ぐから。
誰かの指先が触れたら窒息死。
致死量はやさしい言葉ふたつ分。
生まれた日から選択肢が始まる、
自分らしさは終わる、最後に地面に着くのは両足。
産まれる前の姿で、生の終わり。
掌から太陽を出すマジックのタネを君は知ってる。
でも私、月の裏側に答えがあること、
私は、知ってる。
月への最短距離を、言葉は知ってる。


     詩「月へ往く」


二度目の人生、前世のまちがいさがし。
もしも、次の信号が、私の知らない色を見せたなら、
地球の青さを信じるよ。
この世の全てが犯罪に思えた日、
人を殺そうと思った日、
引き出しの中のプリンセスは私を救わない。
きみが命の終わりを歌った日、何度も言うけど、
きみは生きてる。灰皿の中にストーリー。
鼓膜とオルゴールを取り換えて、
綺麗な音だけを摂取して。悪口で心を洗う、
それでほんとうの人間に戻る。
暗闇の中には人影がふたつ、
ベランダから下が私の世界、ようこそ生命。
孤独に気付いた、いま、愛を唄え。


     詩「ベランダの唄」


星空に葡萄が生った、
滴る青はわたしの星を塗る。
それを綺麗だと言えないわたしは、
きっと悪者でしょう。
抑揚のない心、波打ち際には誰が立つ。
あの日の言葉の寿命は長い。
息を止めても、季節は回る。
だから人間なんていらないね。
季節が息を止めたら何が回る。
今日はきみの誕生日。世界滅亡のカウントダウン、
二度寝のために鳴る時計。都会で生きる生命は、
宇宙の底でひとりぼっち。
最低最悪な笑顔を見せてよ。
命の果汁を生贄にして、星空を守り抜く。


詩「葡萄」


ふわっとしたもの、人が生きる理由なんて、
ふわっとしたもの。死ぬ二日前、呼吸の落し物。
拾われなくていい命。誕生日の翌日は振替休日。
国の酸素は国民の死因。振り返れば、暗闇、
後ろに目が無い弱い人。景色を捨てて前を向く。
星をひとつ、ケーキの上に置いてみて。
優しさに気付くはずだよ。
靴下の穴、ランドセルのキーホルダー、
最終日の通学路、近道をすれば擦り傷、
少年の夢を知らない。
部屋の隅で鳴らす音、わたしの中で消える音、
意味なんてないから耳はいらない。嗚呼、
この世界は素晴らしい。
吐いた唾には星がひとつ。


     詩「ふわりふわり」


知らない星の歩き方を私は知らない。きっと、窪みの部分は踏まないように。
逆らう重力に逆らって、流れと逆向きに歩いてく。
私、こういうのには慣れてる。描きたい絵はこの星では小さくて、
この世では足りないキャンパス。
もしも、私に羽が無いなら、垂直落下で空を切る。
切り刻まれたのは心のほう。
宇宙の音量を少しだけ下げても、消えない愛情。
ほら、宙に浮いてる。大丈夫、ここでは靴はいらないよ。
ねえほら、雲は宇宙の欠片みたいだ。


     詩「星の歩き方」


骨の隙間から花が咲く、天国は植物園。
涙は今日の空の色、染まれば濡れて。
夜になれば、少しだけ溶ける左目。右目は孤独と朝の中。
それでも、だからこそ私は、いつまでも人間である。
両手両足の数が安心の数ならくだらない。君には必要ないでしょう。
乾燥した感想で慰めて。心臓の流れはいつも、持久走の三週目。
黒板に書いた人生プラン、消し忘れたそれとアレは瞳の裏側へ。
指 と 指の間に隙間があるから、
命と大切は逃げてゆく。


     詩「隙間」


この風にも名前はあって、私にもきっと、名前はあって。
何も燃えない朝焼けと心情。
生まれた意味と死ぬ意味の中間地点で立ち止まる。
人間はみんな、ビルの上で生まれてる。
無限ループの中から飛び出せば、白。きみにも名前はあるでしょう。
心中出来ない鳥たちよ、愛を叶えられない鳥たちよ。
朝、家を出て、煙の中を進んでく。誰かが私の名前を呼んで、
振り返る間に、春が終わる。息継ぎの間に死んでゆく。
昨日救えなかった命にも、名前はあるでしょう。


     詩「名前を呼ぶよ」


八月の夜、ぬるくなったソーダ。確実に空は消えてしまった。
嘘つきたちの、プロポーズ。ここからここまでが人生、
そこからあそこまでも人生、人であるうちは天国でさえ人生のまま。
手を離した瞬間、掴まれたのは首の薄皮から少し下の骨の直前でした。
あれは、いつか人を轢いた電車のサイレン。
きみだけが弾けるピアノで本当を鳴らして。
喉から出たのは、透明な粘膜。
それが何かを知らないうちは、
これからもずっと、人間のまま。


     詩「夏と夜とプロポーズ」


あの空も、ディスプレイから流れる映像。
もう今は、雨は降らない。真実は、私の笑顔だけ。
ガラス玉が割れる音、大切なものが死んだ音。
破片で描いた傷口の色は、産まれる前の色だった。
空気を入れ続けても割れない風船、人間の形をしたそれはゴムの匂い。
あの少年はピエロ恐怖症。短編小説みたいな通帳。
壊れた靴でも飛べるはず、羽は後から付いてくる。
左フリックで青色は零れる。君の頬も、同じ色。
墜落、上昇、命であの空を叩き割れ。


     詩「墜落。上昇。」


秋が終わり夏が来て、風吹けば恋。
遊園地は錆だらけでも笑ってる。あの日の私を待ったまま。
明日の私は、白線の外側に座り込んで泣いていた。
青春なんて名前だけ、だから青に呪われた青年団。
殺されないから殺さない、心臓を一握りして生きてることを理解する。
ズボンの裾に躓いた、両足を知った。
まだまだ知らないことばかりだよ。昨日神様が買った参考書、
付箋のページに真実があって。
生命なら、なにもせずに死んだって、芸術作品。


     詩「生命の作品」


夏が来る。嘘つきが始まる。
今日だって、星はおなじ並びをしていて、風はおなじ匂いをしていて、
だから、私、だけがはみ出した。水風船がはじける瞬間。
色水に憧れてしまう夜明け。川の流れに逆らえば、春。
優しさは、下流で待ってる。そうして君は、何も変わらないままでいい。
もうすぐ、夏が終わる。ことばは役目を終える。
日差しは水面を弾いて、懐かしさを感じる、
そんな音が聞こえる、そんな気がする。
この世界から私だけがはみ出したまま、夏。


     詩「私、夏と水面。」


君の目は宝石、誕生月と同じ色。手首から花が咲いた、
朝、光合成で目が覚める。きっと世界は他人の為に息をする、
から、君はもう笑わなくていい。強盗にだって優しさはあるよ。
だから救われる。それなら私は。君は。知らない公園、止まった時計台。
追い越せない年齢。あの夏を待つ。ここから先も当然だらけの通せんぼ。
もしも昨日と同じ夜空だったら、神様だって嘘つきだ。
私はなんにも信じない。コピペされた月に気付いたら運の尽き。
夜の公園とコンテンポラリーダンス。宝石の中に飛び込んで、
刺さった棘に触れる、触れる寸前。
目を閉じていて大丈夫。もうすぐ、ぜんぶ、鳴り止むよ。

     詩「誕生石の唄」


鼓動の鳴らし方をわたしは知らない。
でも、これでもわたし、大人になれたよ。足の進め方を教わった日、
心は置いてけぼりにされたまま。大人になるための教育、
交差点で立ち止まる子供、寿命はきっとあと少し。集合時間に遅れないで。
時間だけが正義だ。懐かしい歌を聴くために生きている。甘えからの卒業。
終りまであと5センチメートル。炭酸の中で踊れた夏、
スカートが揺れて風鈴の音。孤独の慣らし方をわたしは知らない。
夜の越え方を知らないきみは、また、夜と手を繋ぐ。
ここは美しくてもいつか塵になる星。
それを知らないままでいたいから、人々は詩を唄う。

     詩「大人」


月の大きさが私を超えた日、私は神様じゃないと知る。
だからなんとかして人間に縋りつく。
雨は透明な血液で、ビニール傘と同じ色。
置き傘を盗まれないように慎重に生きていて。
内容の無い合言葉、それと愛言葉。
日常として人を傷付ける街を走り抜けて、青春なんてクソだと唄う。
手袋の中で歌われる真実は指紋の中へ溶けていく。だけ。
今日、きみは産まれた。奥歯が少し痛い朝、誰かが幸せを感じた朝。
雲は太陽に焼かれて死んだ。その代わりとして産まれた私。
次に私が生まれる前日、月は死ぬ。

     詩「月の死因」


愛情の虜、人はみんな。欠伸をすれば、心臓の壊れる音がする。
真夜中で映える自販機も、夕暮れの中では孤独の光。
誰にも気付かれないことが幸せだ。冷蔵庫の色と同じ感情だけを大切にして。
今日は、産まれた日と同じ空が浮く。この瞬間は、感情は、
きみみたいだ。だから、きみは、命の生まれ変わりなんだよ。
天井から光の線、瞼には昨日のハイライト。
そういえば誰か死んだんだっけ。届けば遠く、浮かべば弱く、
向こう岸まで声を投げるよ。
ここにいること、伝わらないなら死んでしまえ。
少年の声が聞こえる。

     詩「少年の唄」


星降る夜に思い出すのは、なんにも無い朝。気付けば、
手のひらの中に青い星。神様と同じ笑顔をしている。
水槽の中で浮かぶ蝶は夢を見ない。目の色と同じ炎で煙草を燃やして。
さあ、心だけ、記憶の中へ飛んで行く。花の蜜に舞う彼女は、
この世の終わりみたいで、美しかった。私、死ぬまで酸素を裏切れない。
親友みたいだね、って笑った。未来人は昔話に殺される。
部屋の隅が少し狭くなったので、両の手を片足に閉じ込めた。
私はこの空を飛ばす。心の角で空を切る。ピアスから彩が消える、
そうして、愛から少し嫌われる。人間模様の蝶が舞う。
今日は、なんにも無い朝。手のひらの中から青色の光。

     詩「青色の死」

天国から、一番近い、命から、一番遠い。

2020年7月30日 発行 初版

著  者:「糸」
発  行:群青出版
表  紙:蒔

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「糸」

詩。いのちのこと。Twitter:@ningen_ito

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