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個人向け遺伝子検査の功罪

草戸棲家



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個人向け遺伝子検査とは何か?

個人向け遺伝子検査とは、医療機関による診断目的の遺伝子検査とは異なる、個人を直接の販売対象とした遺伝子検査のことです。現在、例として、次のような個人向け遺伝子検査が販売されています。

・ジーンクエスト
  https://genequest.jp/

・マイコード
  https://mycode.jp/

・ジーンライフ
  https://genelife.jp/

こういった個人を直接の販売対象とした遺伝子検査のことを、本書では略して個人向け遺伝子検査と呼ぶことにします。これは決してまだ市民権を得た呼称ではありませんが、かつて提案されたようなDTC遺伝学的検査よりも分かりやすいですし、Google検索のヒットカウント数を見ても十分に大きな数がヒットします。

DTC遺伝学的検査
  https://jshg.jp/about/notice-reference/view-on-dtcgenetic-testing/

個人向け遺伝子検査の世界的主流、23andMe社

現状、残念ながら、新型コロナの感染拡大を含め、様々な影響を受けて、個人向け遺伝子検査は、期待されたほどの的中率にいたっていません。これは主としてGWAS(ジーヴァス)という統計学的分析手法と、DNAアレイという分析装置の限界によるものです。しかしながら、自分の祖先がどのくらいイタリア系なのか、香港系なのか、といった人種の坩堝(るつぼ)の課題を抱える米国では、祖先を辿って祖先の近い者同士がSNS上で交流をはかる機能が、それなりに個人向け遺伝子検査の需要を喚起しました。そういったSNS機能込みの個人向け遺伝子検査の代表格が、現在Google社の傘下となっている23andMe社です。

同社は主として言語、法規制、流通網などの課題によると思われますが、日本を対象範囲としていません。しかしながら、Google社の傘下におさまっていることで、個人向け遺伝子検査の世界的主流となっています。

私は、個人的な健康問題の解決の一助として、将来的に23andMe社の検査がより拡張されていくことに期待し、2012年という早い段階で同社の個人向け遺伝子検査を受けました。このときには米国からの通信販売転送サービスを用いて、検査キットを入手しました。しかしながら、こういった検査は拡張されることなく現在まで続いているので、当時の知見が現在でもそのまま通じるため、本著でその検査結果と雑感を紹介いたします。

アルツハイマー病の罹患予測確率

なお、本書でご紹介する分析結果が23andMeの最新の分析チップ(V5)ではなく、2012年当時の分析チップ(V3)に基づいていることを記しておきます。だからといって結果そのものは大きく変わるとは思えず、V5に対応するために再度米国から検体の転送輸入をしなければならないという事情によります。新型コロナの関係でヒト検体の海外輸送は規制が厳しくなっていると思われ、最新の分析結果にアップデートするのは諦めることにいたしました。しかし個人向け遺伝子検査の検査結果に対し、とるべき基本的な姿勢は同じと考えられ、本著では過去の分析結果をご紹介しています。

"Disease Risks"の分析結果レポートを、2012年3月に出力したものを、図として示しました。中でも気になったのは、その中の私のアルツハイマー病(Alzheimer's Disease)の罹患予測確率(Your Risk)が14.2%と平均的確率(Average Risk)の約2倍であったことです。私は母方の祖母をアルツハイマー病の中で亡くしています。直接の死因は肺炎でしたが、20年以上アルツハイマー病を患った後の、肺炎による死であり、アルツハイマー病がいかに壊滅的に人間というものを壊していくかというものをまざまざと見せられたがために、それに対する恐怖心が強く植えつけられました。

不意に更新された罹患予測確率

同じアルツハイマー病の罹患予測確率を、2014年8月に表示させたものが前の表で示したものです。このとき、罹患予測確率は10.1%で、母集団の平均値が4.0%でした。

気になるのは、2年半でアルツハイマー病の私の罹患予測確率が40%近く低下しているだけでなく、母集団の平均値も下がっていることです。推測ですが、これは当初主に白人を大多数として母集団を組んでいたのではないかと思われるところを、途中で新しい学術論文に基づいてより人種依存性の高い正確なものに切り替えたのではないかと思われます。こういったことは研究が進んで学術論文が出れば出るほど頻繁に起こると思われ、診断目的の遺伝子検査であれ、個人向け遺伝子検査であれ、今後頻繁に起こってくると思われます。ただし、それを被験者にどのように頻繁に通知するかは、各検査機関の倫理観にかかっていると言えるでしょう。残念ながら、23andMeと私の場合には言語の壁が大きかったため、そういった通知を私がないがしろにしてしまった可能性もあります。そういう意味ではいくら世界最大規模だからと言って、23andMeの個人向け遺伝子検査をおすすめはいたしません。本著でご紹介するのは、あくまで、日本で日本語で受けられる個人向け遺伝子検査が始まる前に、ビジネスを開始していたのが23andMe社であったためです。

いずれにしろ、関連分野の学術文献が出れば出るほど、個人向け遺伝子検査の示す結果も変わってくることを申し述べさせて頂いておきます。

主な疾患リスク

結局のところ、私が平均よりも大きく扱わなくてはならない疾患リスクは、次の3つでした。

・2型糖尿病 ★4 46.5%(平均27.8%)
・痛風 ★4 35.7%(平均22.8%)
・アルツハイマー病 ★4 10.1%(平均4.0%)

この★4の部分は、"CONFIDENCE"信頼度と呼ばれ、平たく言うと最上位ランクの★4のみが"Established Research"確立された研究であると述べられており、★3以下は信頼するに値しないと思われます。

また本著で頻繁に用いている罹患予測確率という用語は、私が23andMeの検査結果を説明するのに、"Risk"をリスクと訳しただけでは、具体的に何のことか分からないので、なるべく誤解がないように私が日本語訳を作ったものです。23andMeでは具体的にRiskの意味を、各疾患についての詳細ページで説明していて、アルツハイマー病の場合は、次のように非常に具体的に述べられています。

10.1 out of 100 men of Asian ethnicity who share * *'s genotype will develop Alzheimer's Disease between the ages of 60 and 79.
(10.1%というRiskの意味は)* *さんと同じ遺伝型を持つアジア人男性の、100人のうち10.1人が、60歳から79歳までの間に、アルツハイマー病を発症するでしょう。

Riskを罹患予測確率と訳しているのは、誤解を招かないように多少冗長な表現になっている感も否めないため、もし日本の複数の学会で共通の呼称があればそれに読み替えていただきたく思います。

GWAS(ジーヴァス)という統計的手法による罹患予測の是非

先述の罹患予測確率というのは、実際にはどうやって算出されているのかというと、実は驚くほどシンプルな原理に基づいています。さきほど述べた私にとって罹患予測確率の高い、2型糖尿病、痛風、アルツハイマー病というのはいずれも、(極めて数少ない例外はありますが)基本的には多くの遺伝子が影響しあって罹患予測確率が高くなったり低くなったりする多遺伝子疾患です。多遺伝子疾患となると、基本的にはメカニズムの解明よりも先行してどの遺伝子のどの変異(一見無意味に見える変異はSNP(スニップ)と呼ばれます)が影響しているのかを統計的に推し量ってしまうのが現在の主流の考え方です。この推し量る手法のことをGWAS(ジーヴァス)と呼んでいます。

GWASの原理を、前の図に示しました。この図は、後に示す米国NHGRI研究所からの図を改変して含んだものです。採血して白血球の中にある染色体を調べると、GWASにより、図の右下に示した染色体のどの部分が、右上の各疾患に関係しているか、およその検討がつきます。この「およそ」の部分は、実際には限られた患者数の限られたSNPしか調べることができないことにより曖昧さを含んでいるという意味合いです。これが各検査会社で検査結果やその信頼性が異なっている大本の原因です。よりたくさんの患者を調べて、より多くのSNPを調べれば、より信頼性の高い罹患予測確率を出すことができるのですが、もちろんよりコストがかかります。

GWASに含まれる曖昧さ

具体的には、GWASに含まれる曖昧さというのは、前の図に示しますように、患者の人数とDNAの遺伝型から、ある疾患に関係しそうなSNPを探す場合を考えてみます。SNP1について、3人の患者を調べると、遺伝型としてCが2人、Gが1人であったとします。同じように健常者を調べるとCが2人、Gが1人です。SNP2について患者でCが3人、Gが0人、健常者でCが2人、Gが1人でした。SNP1とSNP2ではどっちがこの疾患に関係していると言えるでしょうか? SNP1は患者と健常者でCとGの割合が全く同じであるため、役に立ちません。その一方で、SNP2の方は患者でCが100%、健常者でCが66%なので、SNP2としてCを持っていれば、Gを持っているよりも、いくらか疾患に罹患する確率が高いということになります。したがって、SNP2の方がSNP1より罹患予測にとって役に立つと言えます。しかしながら、これは統計からの比較の問題であり、調べた人数やSNPが少ないと、かなり大雑把な結果しか得られません。その一方で調べるSNPを多くすると、究極的には全ての塩基を調べるのと同じぐらいコストが嵩んでくることになります。

GWASによる分析の単純な原理のみご紹介しましたが、これを知ってしまうと、大雑把さに失望された方もおられると思います。しかしご安心ください。実際には、前述したように、検査会社は十分な患者数、十分なSNP数が確保できて、信頼性の高い結果を返すことができる検査項目については、信頼性を最高ランクとして★4つといったように、分かりやすく表示すべく工夫をしています。

・・・というか、はっきり言ってしまうと、信頼性が最高ランクとして示されている検査項目以外は、私個人の意見としては、大雑把すぎて役に立たないと思っております。

年々充実してくるGWAS地図

ともかく、この方法だと、ありとあらゆる疾患の罹患予測確率を出すことができるため、前の図のように、染色体上のGWAS地図が描かれ、年々詳しくなっていきています。しかしそれでも、統計的な罹患予測確率だけが得られることを忘れてはなりません。私達、個人向け遺伝子検査を購入する側ができることとしては、自分が必要としている疾患の罹患予測確率について、その遺伝子検査会社が、例えば★4といった十分な信頼性のある検査結果を返してくれるかどうか、購入前にホームページなどで確認することです。私が調べた範囲では、Genequestの2型糖尿病といった疾患に対しては、★4の信頼性との記述を見つけることができました。
https://genequest.jp/dnatest/healthrisk/20

アンジーの乳がんの予防のための遺伝子検査

では、個人向け遺伝子検査があくまで大雑把な検査しか行わないのに対して、診断向けの遺伝子検査はどのような正確さを持つものなのでしょうか?

いささか話は複雑になりますが、著名人により知られるようになった身近な例として、アンジェリーナ・ジョリー(以降ではアンジー)が、2013年に診断向け遺伝子検査を受けて、乳がんの変異を持っていることが分かり、予防のために乳房を切除した事例をあげたいと思います。

全てのがんが遺伝子の変異により発生するのは事実です。しかし、がんの直接の原因は、卵子や精子といった生殖細胞系列の変異、つまり各個人で生まれつき持っている変異ではなく、がんを患う体の部位で、体細胞の変異が発生することによります。

診断向け遺伝子検査とは何か?

がんというのは、変異して勝手に大増殖を始めてしまったヒトの体細胞そのものなのです。アンジーの場合には、乳がんとしての体細胞の変異を引き起こしやすい、別の変異が診断向け遺伝子検査で明らかになりました。この検査で調べたのは、乳がんに対して間接的に影響を及ぼす変異であり、乳がんの直接的な原因となる体細胞の変異とは別のものです。アンジーの予防的乳房切除術が報道された中では、この間接的に影響を及ぼす変異のことを、通称としてBRCA1という遺伝子の名前で呼び、遺伝子検査の項目名としてもBRCA1と呼ばれています。

アンジーのBRCA1の変異は87%の確率で乳がんを発生させると本人が語ったように、決して100%ではありません。乳がん全体としては、環境因子、つまり平たく言えば食べ物などの影響を受ける、多遺伝子疾患です。BRCA1の変異はがんの直接の原因になる変異を発生しやすくしますが、BRCA1だけが乳がんを引き起こすわけではなく、BRCA1に変異がなくとも、たとえば閉経後の肥満といった生活習慣など環境的からの要因諸々をトータルして乳がんを患ってしまうこともあります。しかし、BRCA1が引き起こす乳がんについてのみ考えると、平均寿命の患者で87%というのはかなり高い数値ですし、長生きすればするほど100%に近づいていくと思われるので、優性遺伝の単一遺伝子疾患に近くなってきます。

いずれにしても、あくまでBRCA1の影響は間接的なので、それゆえにBRCA1の変異による87%の罹患予測確率という数値と、母親をがんで亡くしたといった家族歴だけで、まだ乳がんを実際には患っていないにも関わらず、乳房を切除するに至ったアンジーの決断が話題を呼びました。

アンジー母子の場合が示すように、BRCA1の変異は親から子へとかなりの確率で遺伝します。もっとも多いパターンは、父か母のどちらかが、2本の染色体のうち1本にBRCA1の変異を有している場合だと思われますので、父か母から50%の確率で遺伝することになります。BRCA1は性染色体ではなく常染色体の上にあるので、母だけでなく父からも子へと同じ確率で遺伝します。また、BRCA1変異により男性の乳がんの罹患予測確率も増すとのことです。BRCA1の変異は、このように優性遺伝のパターンで遺伝しますが、がんの直接の原因である体細胞の大増殖を引き起こす変異の方は、遺伝することはありません。

個人向け遺伝子検査と診断向け遺伝子検査の比較

個人向け遺伝子検査の中にも、BRCA1遺伝子に含まれる一部の変異が含まれていることがあります。実際、23andMeの以前の検査結果のスクリーンショットを残したおいたものには、BRCAの文字が残っています。しかしながら、このBRCAの項目は2020年現在、表示されなくなりました。これはおそらく、あまりにも部分的な検査によって、あまりにも心理的動揺を引き起こす結果をもたらすことによると思われます。

BRCAといった診断向けの遺伝子検査の場合には、個人の人生への影響の大きさを鑑みて、臨床遺伝専門医か、遺伝カウンセラーによって、十分な説明がなされた上で、GWASとDNAアレイの組み合わせではなく、シーケンシングという分析手段によって、かなり徹底した検査が行われるのが普通です。シーケンシングでは、塩基配列の中の1つ1つの塩基を順々に調べていき、変異が起こっている場合は確実にその場所と種類を検出します。その結果、いままでに学術文献で発表されていない変異については、変異を検出したものの、その影響については分からない、といった結果になることもありますが、年々学術論文の知見は蓄積されていくので、ほとんどの変異の影響が将来的に明らかになるでしょう。

まとめると、個人向け遺伝子検査と診断向け遺伝子検査は、まるで別のものであって、個人向け遺伝子検査がどういった多遺伝子疾患(2型糖尿病、痛風、アルツハイマー病など)になりやすいか、その傾向のみを与えるのに対して、診断向け遺伝子検査は、例えば87%というように、かなり確定的にがんといった疾患になりやすいのかを示します。

あくまでも個人向け遺伝子検査を確定的なものとしてとらえないよう、くれぐれもそのことをご承知を上でご利用いただければ、将来的に生活習慣の改善により、罹患しやすい多遺伝子疾患を避けることも可能でしょう。個人向け遺伝子検査は、遺伝子検査という名称故に診断向け遺伝子検査と混同されがちです。しかしながら、個人向け遺伝子検査が、そういう目安として利用されるべきものであることをご理解いただけると幸いです。

シーケンシングとは何か?

前の章で、個人向け遺伝子検査ではDNAアレイとGWASの組み合わせを用い、その分、大雑把な罹患予測確率を与えるものだと述べました。それに対して、診断向け遺伝子検査ではシーケンシングという方法を用いると述べました。ここでは、シーケンシングという方法について、少し具体的に述べたいと思います。

シーケンシング(sequencing)は英語のingを付加されたシーケンスの能動態であり、元になった動詞のシーケンスとは順番を決めるという意味です。何の順序を決めるのかというと、我々が通常の用語として使っている「遺伝子」、その物質名としてはデオキシリボ核酸(「DNA」)の中の塩基の配列の順序を微細な測定により決定します。前の図では、ごくごく単純化した塩基が4つしかないDNAの対、つまり、上に一本、下に一本として示しました。よく知られているようにDNAは安定状態ですと二重らせんの形をとって容易に平らな線状構造になることはありませんが、DNAの塩基配列を測定する際には、らせんではなく線状の構造をとる状態にします。

このときに、ちょっとした法則があって、図中では多少模式的に示しました。DNAの塩基は4種類しかないのですが、左上のT(チミン)があれば、その反対側のDNAである左下はA(アデニン)となります。同様に左上から右へと二番目の塩基がAであれば、その反対側である下側のDNAはTとなります。さらにG(グアニン)であれば反対側はC(シトシン)、最後はCであれば反対側はGとなります。

このような法則性により、DNAの塩基配列はある塩基がわかれば、その反対側の塩基も自然にわかるという仕組みになっています。シーケンシングとは、こういったDNAの仕組みを巧みに応用しながら、塩基の配列を順番に測定している方法のことです。

シーケンシングの段取り

少し端折りましたので、もう一度図でもってシーケンシングの基本的な段取りを示します。まず、二重らせんになっているDNAのらせんをほどいて、二本鎖のDNAにします。次に、さらに一本鎖のDNAへと分離してから、その上にプローブと呼ばれる物質をくっつけながら、DNAの端からもう一方の端へと塩基をスキャンしていきます。プローブは、塩基の種類、A、T、C、Gに反応して異なった挙動をするので、それでもって今現在プローブが接続している塩基の種類が測定されます。このようにして、DNAの一本鎖の端から端まで読み取れば、そのDNAの全部の塩基配列が決定されます。

次世代シーケンシングと呼ばれる高速化技術

あくまで一例であって、しかも私自身、こういったシーケンシングの高速化技術の進歩についていけていないため、説明が非常に部分的なことに終始することをまずお詫びしたいと思います。より詳しくは、次世代シーケンシング、次世代シーケンサー、NGSといった用語で検索していただいた方が最新で正確な知見が得られると思います。

とは言え、IT革命のような高速化の波は、シーケンシングの世界にも押し寄せて来ています。次々に高速化技術が開発され、いかにしてヒトの個人の、また患者の、全部の染色体の全部のDNAの配列を読み取るか、そのために膨大な投資と競争が繰り広げられています。およそ10年前に私が一度だけ受けたことがある全エクソームシーケンシングという、当時としては比較的大規模なDNA検査の際には、イルミナ社の次世代シーケンサーを用いました。前の図では、その時にどのようにして高速化の技術が応用されたかを示したものです。

要点のみ述べると、最終段階の「各クラスターごとに色が光るのを同時に読む」というのがポイントです。簡単に言うとコンピュータのCPUのコア数が2個、4個、8個と増えたのと同様に、並列化によって速度を稼ごうという手法です。

なお余談になりますが、「コピーして増やす(PCR)」と述べているのは、ポリメラーゼ連鎖反応のことで、新型コロナウイルスのPCR検査のPCRと基本的には同じ工程のことを指しています。

まとめ、および、私の思い

このようにして、現在もまだ診断向け遺伝子検査のための次世代シーケンシングは、より速く、より安くなり続けています。しかしながら、『2001年宇宙の旅』や『鉄腕アトム』のような21世紀に入ってからの爆発的な技術革新にまでは今の所いたっておりません。それでもいつの日か、個人向け遺伝子検査にも次世代シーケンシングが取り込まれると見込まれており、原因不明の慢性疼痛を患っている筆者としては、そういった技術革新により、いままで知られなかった疾患がもっともっと明らかになることを望んでやみません。

世界に7000種類を超える希少難病が存在しているのに、それに対して十分な理解が得られていない現状につきましては、拙書『残酷な進化の奇跡ー希少難病と進化の関係』にて記されていただいておりますので、こちらもどうぞよろしくお願いいたします。

個人向け遺伝子検査の功罪

2020年6月25日 発行 初版

著  者:草戸棲家

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