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ランニングを考察する
1巻 ランニング感覚

神屋伸行

走遊Lab



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  この本はタチヨミ版です。

 目 次

はじめに

第1章 ランニングについて考えることとは
1.ランニングにおける座学の重要性
2.ランニングにおける「ドリル」の重要性と楽しみ方
3.「走らない」ではなく、走れないのは辛い
4.ケアする
5.トレーニングとケアを兼ね備えた優れもの
6.反復について考えてみよう
7.「記録」に対する意識の変化
8.スロージョグを役立てる
9.「足音」を変える
10.そもそも「足音を変える」ってどういうこと?なんでクラブチームで取り組むの??
11.レースへのピーキングと強化トレーニングは同時には出来ないのだから

第2章 ランニング感覚

第一部 「感覚」についての考え方
1.案外見落としがちなイメージ力
2.言語化すること
3.連動・内面・感覚と、フォーム構築
4.動く部分、動かせる部分、動かせない部分
5.力とスキル
6.身体を止めないこと
7.身体を調える
8.体重と身体の重さ
9.身体の重さ
10.疲労感
11.疲労を作り出す為に走ってる?
12.循環
13.汗
14.睡眠
15.故障
16.体操
17.ゾーン

第二部 環境と内面
1.暑さ、寒さの感じ方は人それぞれ違うから
2.暑熱順化
3.寒冷順化
4.寒さ対策
5.上り・坂道攻略

第三部 部位ごとに考えてみよう
1.頭部
2.首
3.肩:僧帽筋
4.肩関節
5.鎖骨の内側
6.胸郭
7.背中
8.腹筋
9.腹
10.臀部
11.足の付け根
12.ハムストリングス:モモ裏
13.ひざ
14.ひざ裏
15.ふくらはぎ
16.前脛骨筋:すね
17.足首
18.足の甲
19.足の爪
20.足底
21.足指
22.つま先

あとがき

はじめに

ランニングに親しまれる人はトレーニングを通じて様々な暗黙の知見と感覚をお持ちの方が多いです。それらを言語化してみるとそれが独自解釈なのか、一般的な共通項のあるものかを分類できたりします。

世の中には多くのランニングに関する情報が出回っていますが、基礎基本と呼ばれる一般的共通項が多いもの、応用や発展レベルにあたるもの、オリジナリティの高いものなどがあり、自分なりの情報収集、整理、考察を加えて自分の経験や感覚とすり合わせる必要があります。

また、それらの得た情報を活かして自分のトレーニングへの導入や考え方や意識に取り入れていく作業が大切になっていきます。

そこで本著ではランニングに関わる多くのことを考察するきっかけとなるよう整理しました。ここを起点に著者のコーチング、レッスンを受けてカスタマイズしていくことで更に浸透、修得しやすくなります。また、著者が代表を務めるKRC並びに兵庫県加古川市に拠点を置く「走遊Lab」でも様々な練習会やイベントを通じて濃い体験、修得にしていけるように提供しています。

日頃ランニングに慣れ親しんでいる人だけでなく、初心者の方や復帰を目指される方も予め情報を得、考察をしておくことでスムーズにランニングに取り組むことが出来ると考えます。

本著を手にした方のランニングライフのヒントに、貢献できれば幸いです。

走遊Lab:https://note.com/nkamiya/n/ncba3b15226ee

著者個人の活動へのお申込みはこちらから

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第1章 ランニングについて考えることとは

1.ランニングにおける座学の重要性

座学が目的ではなくあくまで手段ですが、ランニングにおける知識やスキルは実践を通して心身に落とし込むことが大切である反面、実践の場で得た感覚や知見、知識やアイディアをその場限りで消失させず次に活かせるかは非常に重要です。

予習→本番→復習

その予習と復習も非常に大事です。先に情報を持って本番に臨む、そこで得た情報をフル活用する。その繰り返しと効率の良さ、質の高さがパフォーマンスの向上や故障等の予防にも、学習にも役立ちます。

動画を活用する仕組みやオンラインでの研究会という仕組みもそうですが、日々継続して情報を得る場、フィードバックを受ける場を活用することで大きな効果が得られます。

若いうちにトップアスリートを目指していく上でもそういった仕組みを、サイクルをシャワーのようにどんどん浴びていく、フル活用することでどんどん伸びていく面があるんですよね。

強豪チームで多くの選手を輩出するのもそういう流れがあるからですが、そうでなくてもそういった仕組みを持ったクラブチームやオンラインサロンを活用することで成長できるようになっていきます。(著者が代表を務めるKRCもそこを目指しています)

これはトップアスリートに限りません。むしろ忙しい社会人ランナーこそ重要かもしれません。地方にお住まいの方は身近にそういった環境が無ければオンラインを活用するのは非常に有効です。

そして座学の良いところは言語で整理が出来るからです。よくスポーツの世界ではトレーニング前後に立ったままでミーティングを行いますが、あれはリアルな場で伝わることも多い反面、そこを離れると消失する可能性も高いんですよね。あの場面でメモを取ると良さそうですが、臨場感には欠けそうです。ミーティングを撮影し、あとで確認、再利用すると良さそうですね。

優れた何かを持ち合わせた指導者は臨場感あるリアルの場だけでも多くが伝わり、プレイヤーも吸収しそうですが、そういった実績やプレイヤーの力がなければ効率は落ちると思います。だからこそ言語化や一般化が出来るように仕組みで勝負する必要があると思うんですよね。

そうでないと多くの人が活用出来ないし、継承がし難い。それだけ座学には大きな可能性が秘められていると思います。リアルの座学、オンラインでの座学。両方駆使して成長のサイクルを早める、豊かな体験とする。そういうイメージで取り組んでいくと有意義で楽しいですね。


2.ランニングにおける「ドリル」の重要性と楽しみ方

皆さん「ドリル」はご存知ですか?小さい頃に漢字ドリルや計算ドリルをやったと思いますが、それは違います。今回はランニングにおけるドリル。教科書のようなものをイメージした方は申し訳ないです。

動き作り、操作性を高める、アジリティ、神経や腱や筋肉に覚え込ませたり刺激を与える取り組みを指します。

「ドリル」を探せば多くの内容やトレーニング、考え方が載っています。我々が現役時代(20年以上前)は短距離ブロックが取り組んでいたと思いますが、長距離ブロックはあまりやっているところは少なかったように思います。

しかし、その有効性がランナー全般に知れ渡り、多くのランナーが取り組むようになりました。ただちょっと苦手意識をお持ちの方も多いようです。恐らく動画を見て、スゴい動きのプレイヤーやコーチを見て自分には無理だと感じてしまう人も居られると思います。

もちろんドリルが上手くなる、素晴らしいパフォーマンスが出来るのも爽快ですが、大抵のランナーの方がドリルに取り組む目的はランニングにおけるパフォーマンスの向上、強化、故障の予防、効率化が目的だと思います。だからドリルを最高に引き上げるより、出来なかったことを出来るようにしていくことが大事ですし、少しずつでも取り組むのが大事です。これは計算ドリルや漢字ドリルと同じで正確性を高め、反復することが大切になります。

逆に長距離ランナーが走ることを止めてドリルだけやっていても長い距離は走りきれないでしょう。目的に応じてやる、気楽に楽しみながらやるのがコツです。

そしてこれはコーチやアスレティックトレーナーに付いてチェック、フィードバックを貰うのが良いですね。毎日でなくても、リアルでは難しくても動画を共有し、フィードバックを貰って再び自分の動きに落とし込むと良いですね。我流だとなかなか出来ているかどうか、部分毎に目的に合っているかが解り難いんですよ。

ドリルは奥が深いです。KRCではこのような仕組みでサポートします。著者個人でも同様に、練習会での実践、noteなどを通じた言語化、オンラインを活用したフィードバックと共有を行います。

さて先程も書いた「目的」ですが、ランニング全般における目的の次は、何の能力を伸ばしたいか、意識するかの目的を持ってドリルを選び、取り組みます。全体をバランス良く取り組むならそういったドリルの組み合わせを構築し、スプリント能力向上が目的なら、それに応じたドリルを選択、導入します。

ただドリルをやっただけではむしろ怪我を招いたりします。普段、動かさない部位を無理やり動かしたり、許容範囲を超えたり、力加減を間違えるなど、ドリルそのものがリスクだということも意識しておきたいですね。日々の中で丁寧に、目的を持って取り組むことでその効果が上がっていきます。ランニングにおいての効果も実感できます。

だから最初は学んでいくことが大切です。第2章で扱う「ランニング感覚」の向上、感覚を掴むためにもドリルは非常に重要なものとなります。一朝一夕では修得できませんのでコツコツ取り組み続ける仕組みを活用し、楽しみながらチャレンジしましょう。


3.「走らない」ではなく、走れないのは辛い

故障、体調不良の何が怖いかと言えば「走れない」ことです。現役時代に一番恐れていたのはまさにそこで「明朝、起きた時に走れなくなっていたらどうしよう?」と考えることはしばしばありました。

引退する時に「走らなくて良い」とは思っても、「走れない」ことを想定する人はあまり居ないと思います。走ろうと思えばいつでも走れる状態に戻ると思いがちですね。

"どこか痛めて、状態が悪い為、競技続行を諦める。そのうち時間が経つと共に痛みも無くなり走ろうと思えば走れる。"実はそうならなかったりするんですよね。何年経っても持病は持病のまま残ってしまって、ちょっと走ったり、日常生活で無理をすると痛みが発生する。不調がやってくる。

だから走ろうと思っても「走れない」。

これを防ごうと思えば初心の頃から先を見据え、トレーニングなどが自分の心身を蝕んで途絶しないような取り組み方、技術やスキル、マインドを育んでいく必要があるんですよね。引退後でも、運動中断下でも状態改善の取り組みは続けておくことが大切です。

科学的知見、知識、知恵、コーチなどの指導や経験・・・

強くなる為だけでなく、安全に、中長期的にも悲惨な状況にならない為にも、リスクマネジメントはしっかりとしておきたいところです。

もちろん突発的なケガや不調というのは誰しも起きるわけで、そんな時に焦ってバタバタするのではなく、日頃から心構えと対処法を練り、盛り込みながら取り組むと良いんですよね。

そうでないと「走らない」という休養を自分で定めた場合と比べ、「走れない」という非常に不本意な状態に陥ります。

なんでもそうですが、自分の意図する選択が出来ているうちはまだ良いですが、意図しないルートを行かざるを得ないときの苦しさは筆舌し難いものがあります。そんな不本意な状態にならないよう、日頃から対策し、学んでおき、短期的にだけでなく、中長期的な期間を経ても思うように身体が動かせるよう、辛い思いをしないようにしたいですね。


4.ケアする

感覚を良い状態にするためにはケアは欠かせません。このあと色々読んで頂くと解りますが、それぞれの項目にも「ケア」は何度か登場します。

ただそれでもケアの重要性を説ききれないほど、大切だということです。

ケアはさぼるとその分、疲労蓄積やダメージが残されます。それは感覚の狂いを招き、パフォーマンスの低下や更なるダメージ、疲労を呼び込むことに繋がっていきます。

毎日きちんとケアをする。

簡単なようで、なかなか面倒なことですし、心情的にも痛みや違和感が出るまで切羽詰まらないので疎かにしがち。トップアスリートでもそこが結構な差に繋がっている部分でもあります。

チーム活動においてはアイシング道具を面倒くさがらずに用意する。個人で用意するのが自立したアスリートとしては理想ですが、やはり仕組みで動かさないとチームとしてはまだらになってしまいます。ケアをきちんとしないチームと比べれば全体の故障率、コンディショニング維持も大きく変わってくるでしょう。

トレーナーを入れ、日々のメンテナンスサポートや、一定の割合でマッサージなどを受けたり、整体などで身体を整え、調整を行いますが、まずは個人でケアすることが土台となります。

ここでもトレーナーは理想としてアスリート自身が自立してケアをすることを前提に、サポートを組み立てていくことになります。もちろん個人で走っているランナーにおいてはそのような手厚い環境を望むことは難しいので、なおさらセルフケアの重要性は高まります。

ケアは丁寧に、足指から足底、すねへと末端から順にケアし続けることで感覚を良好にしていきます。足指を開き、動きやすくするのも重要です。走り続けていると意外なほど指が疲れていたりしますので、甲などの痛みに影響を及ぼすことにも繋がります。

足裏全体も足底だけを気にするのではなく、ツボ押しでも知られているように全体に色んなツボがあるので丁寧にほぐしていく。刺激する。そうやって良好な感覚を維持する必要があります。

足部分を中心に記載しましたが、もちろん背中は張りますし、脚全体でもあちこちケアすべき対象があります。臀部、ハム・・・ケアするところは幾らでも生じます。

最近はケアアイテムや手法も増え、それぞれの意識差、情報格差も生まれやすくなっています。

どの程度時間をかけて行うかも重要です。トレーニングに対し比率が低いとダメですよね。全体練習、トレーニング以外の場面で行うことを考えると出来る限り自分の時間を使って、勉強しながらでも、読書しながらでも出来ることです。

アスリートでなく、ファンランでも同じで日々の生活、軽い運動でも疲労は必ず起きます。ですので少しでもケアを覚えておいて損はないでしょう。

ライターやイラストレーター、リモートやオフィスワークなどのようなデスクワークも首や背中、腕の疲労度も高いと思います。寝ることが1番の休養、回復ですが、部位のケアをすることでより効果を高められます。

みなさん、どんな人でもぜひお試し頂ければ幸いです。ケアをすること、きちっと身体作りをし、多くの人が少しでもケガや不調の少ない生活が送れるようになれば良いなと思います。


5.トレーニングとケアを兼ね備えた優れもの

ランナーにとって勿論ランニング練習は非常に大事ですが、量をやり過ぎるとダメージもまた蓄積していきます。でも持久力は向上させたい。

そんな時にお勧めなのが「水泳」。アクアトレーニングです。

これは筋疲労が高い時のケアにもなりますし、歩くだけでも「自重」が掛からない分、脚への負担も大幅に減らすことが出来ます。その上で、水圧が・・・と多くの説明が出来るのですが、ここでは省きます。本当に効果抜群の優れものです。

トレーニング後も心地よい疲労感が得られ、睡眠も深く取れることにも繋がります。内蔵疲労も出にくいし、熱射病にもなりにくい。欠点としては気軽に行ける場所、出来る場所が少ないところでしょうか。

大学スポーツで気軽にプールを貸し出してもらえるチームは強くなるチャンスが一段と拡がっています。民間のジムだと日中に利用できる方が有り難いので、自分で自由に時間を使え、組み立てられる「プロ」の方がメリットも高いですね。実業団でもジム契約しているチームもあったりします。

忙しい大人やジュニア期にとっては気軽に活用するチャンスは少ないかもしれませんが、お時間のある方は検討に値する効果は予測できます。また気軽な運動という意味ではサイクリングもおすすめです。こちらは身体の疲労回復には大きく影響はしないと思いますが、爽快感を得ることができ、メンタルには好影響を寄与するように感じられます。

様々なスポーツ体験、気軽な運動は心身に好影響が及ぼされます。もちろん「適切な」という但し書きが付随してくるので、そのあたりは自分の身近にあるスポーツ環境の選択と、コーチの選択などに委ねられる部分もあります。

何より、まずは自分の中にある意識や知識を構築し、選べる判断基準を作っていきましょう。


6.反復について考えてみよう

ある一定の技能や技術を徹底的に身に付けたり、記憶しようと思ったら反復練習が大事なのは論を待たないと思いますが、それも大まかに2つの考えに分けられると思います。

一つは、同じ参考書を何度も反復する方法。
一つは、同じような領域の参考書を複数、出来るだけ網羅する方法。



  タチヨミ版はここまでとなります。


ランニングを考察する 第1巻 ランニング感覚

2021年1月9日 発行 初版

著  者:神屋伸行
発  行:走遊Lab

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