＊ 詩 ＊

　ドーン・コーラス

この身に生まれ育った信念を燃やしながら、
動くからだは私のものじゃない
太陽が昇る音がして
影のことを思い出した

草花がゆっくりと向きを変える
温かい香りを外気へ溶かす
かすかに光る水溜まりに映る
瞬きの出来ない私だけが
昨夜の夢に取り残されていた

　異常気象

ミシンみたいに動く鳩時計
ゆがんだ鏡に真っ直ぐ映る目ん玉ふたつ
深夜ラジオ、アナウンサーの句読点
汗だけが染み込んでいるまくら

南極大陸に恨みはないから
ただずっと息を止めている

　変換

頭の中で誰かがしきりに叫んだ
日本語ではなかったのかもしれない
語尾の感嘆符は悲しんでいるのだ

彼は必要としていた。救いに似た何か
あまりにも平凡なそれらを求めて
彼は朝が来るまで叫び続けた

深い悲しみの匂いと、耳鳴りの唄
気付くと僕はしきりに叫んでいた
日本語ではなかったかもしれない

　引き金

ペパーミント色の引き金に
心を込めたが遅かった
私を見捨てるこの星と
会社を辞めるなかまたち

みえない他人ひとの未来など
笑いもしないわたしなど
「どうでもいいよ」と神は言った
「残念ですね」と海は言った