はじめに

変化の時代を生きるために

これは、オリンピック・パラリンピックが日本で行われ、国民体育大会・障害者スポーツ大会が鹿児島で行われる予定だった２０２０年に、鹿児島県霧島アートの森で５名のアーティストと地元住民、そして学芸員、有志スタッフとともに作った展覧会の記録です。

そもそも本展は、２０１５年にスポーツタイムマシンを最終日に走った女の子２名からの要望を受けて、「この作品をもう一度展示する」と約束したことがきっかけでした。
再展示をどのようにできるか模索して数年。スポーツの祭典が東京で、そして鹿児島で行われる２０２０年に、鹿児島県霧島アートの森で展示の機会をいただきました。そしてこの作品１点だけの展示ではなく他の展開もしたいと考え、スポーツタイムマシンのアーティスト犬飼博士と安藤僚子の２人に関する展示をしたいと思いました。
また、東京でも鹿児島でもスポーツの機運高まる時期に、スポーツを、創造／表現／発表するアートの場=美術館で考えることはこの祭典そのものに（せっかく２回目となる東京開催であることも相まって）これまでと異なる視点を向けることができるのではないかと思ったのです。

加えて個人的には、この祭典に関わる経済の力学やその議論に疑問がありました。そして、なにより鍛えられた身体をもつアスリートにばかり注目が行きがちなこの時期に、開かれた美術館という場で運動が得意な人も、苦手な人も、健常者も障がい者も、誰もがアートの視点で体を動かす楽しさを体感することは、スポーツの魅力を浮きあがらせ、オリンピズムが掲げるように（他者と）「理解しあう」ために大切なのではないかと考えました。


しかし、準備半ばの２０２０年春、新型コロナ感染症の蔓延。そして全国に緊急事態宣言が出されてしまいます。イベントが規制され、スポーツも憚られた初めての緊急事態宣言。何がウィルスを広げる行動なのか、人との接触を断ち切ることは社会的にどのような影響があるのか何もわからない。感染者を出さないこと、命を大切にすることを考えて本展をどのように開催できるのか—。アーティストの犬飼博士、安藤僚子、鹿児島県霧島アートの森の学芸員 久保孝彰、田中信幸、矢野祐輔３名と、鹿児島の制作チーム、市村、早川、そしてわたし四元とで話し合いが重ねられました。

大きな変化を求められる時代に何が必要なのかを議論していくことは、人の存在、運動と、表現を行き来する展覧会を作る上で必要な時間だったと振り返って思います。
その時間を経て、本展に様々な協力者が現れ、また、予想もしなかった物語が生まれました。

本書では、十代の高校生や大学の先生、参加アーティストと何人もの方に寄稿をお願いし、それぞれの視点をからこの展覧会のアーカイブを共に創ることを試みました。本展とその周りで起きたさまざまな出来事の一部しか記録できないのですが、多くの人々の考えや想いが本展の輪郭を描いてくように、本書が“共に創り、共に生きていく”ことがこの変化の時代を乗り越え、楽しむための助けになることを願います。

２０２１年　四元朝子

つくるスポーツ／するアート展について

本展は、アーティストに犬飼博士と安藤僚子の２人を招へいし、鹿児島で４８年ぶりとなる国⺠体育大会や全国障害者スポーツ大会の開催など、スポーツへの機運が高まる２０２０年の秋にスポーツとアートを包括し考える場を創出するため企画されました。その一方、２０２０年春以降に感染が拡大した新型コロナウイルスは、新しい生活様式の構築という急速な社会の変化を促し、予定したスポーツの祭典は開催時期や内容の見直しを迫られ、本展も企画内容の更新を行う必要に至りました。
そこで、壁に投影される過去の自分や家族、友達、動物などの走った記録と実際に「かけっこ」をすることができる装置として好評を博したメディアアート作品《スポーツタイムマシン》（文化庁メディア芸術祭鹿児島展　２０１５）の展示や、「入らなそうでギリギリ入る物体」を設計・製作し、それを任意の空間へ実際に入れてみる《搬入プロジェクト》の実施など当初企画した内容に加え、「つくるスポーツ」と「する（プレイする）アート」について取り組みを続ける２人のアーティストの視点をとおして、変化する社会に寄り添いつつ生み出されるスポーツとアートによる共創について考えるきっかけを創出しました。

【関連事業】

◯１０月４日（日）１４：００〜　オープニングイベント　：《搬入プロジェクト》デモンストレーション
搬入プロジェクトゲストアーティスト［石川卓磨（悪魔のしるし）、佐々木文美（ＦＡＩＦＡＩ）、菅野広樹］

◯１１月３日（火・祝）霧島アートの日は３つの関連イベントを開催　詳細はこちら
「スポーツ共創をやってみよう」（ワークショップ）
時間・場所：１３時から１４時３０分まで展示室内にて
講師：犬飼博士（本展作家）、岡村尚美（ゲスト講師）

「霧島アートの森からＺＩＮＥを発信しよう」（ＺＩＮＥづくり＆交換ワークショップ）
時間・場所：１０：００〜１６：００　多目的スペースにて
講師：安藤僚子（本展作家）

「自然農法のワラでスポーツをつくってみよう」
時間・場所：１４：３０〜１６：００　ワンラブコーヒー霧島（本館正面入口の道路向かい）にて
講師：犬飼博士（本展作家）、内海順（湧水町自然農法家）

◯会期中の土日祝日　１０：００〜１６：００　《スポーツタイムマシン》体験

【主催】鹿児島県霧島アートの森
【企画協力】四元朝子（企画推進／サンカイ・プロダクション合同会社）、市村良平（コーディネーター／市村整材）、早川由美子（メンター／ＮＰＯ法人ＰａｎｄＡ）
【協力】湧水町、湧水町教育委員会、一般社団法人　運動会協会、鹿児島大学工学部建築学科ＣＡＲＲＹ－ＩＮ－ＰＲＯＪＥＣＴチーム、株式会社池田ＭＡＧＩＣエンタープライズ、金森香、菅野広樹、パフォーマンス集団・悪魔のしるし、山口情報芸術センター［ＹＣＡＭ］、小山冴子

【展示概要】

⑴　搬入プロジェクト＃２４　霧島アートの森
「入らなそうでギリギリ入る物体」を設計・製作し、それを任意の空間へ実際に入れてみる《搬入プロジェクト》を実施。鹿児島大学工学部建築学科有志（ＣＡＲＲＹ－ＩＮ－ＰＲＯＪＥＣＴチーム）やパフォーマンス集団・悪魔のしるしのメンバーが、地元湧水町の方々の協力を得ながら、物体の設計、製作、搬入を実施。

ゲストアーティスト：石川卓磨（悪魔のしるし）、佐々木文美（快快）、菅野広樹

⑵　フェスティバル／トーキョー２０　とびだせ！ガリ版印刷発信基地
パフォーマンスアートのフェスティバル「フェスティバル／トーキョー２０」（１０月１６日〜１１月１５日）に誕生する印刷所「とびだせ！ガリ版印刷発信基地」のＰｏｐ－ｕｐ　ＺＩＮＥスタンドが登場。自分が伝えたいことを自由につづることのできる手作り冊子「ＺＩＮＥ」が全国のスタンドと繋がり交流・発信を行なった。

⑶　みなさんと滞在制作する。スペースタイムグラウンド
アーティストの犬飼博士が滞在し、観覧者とともに「スポーツ／アート」を「つくり／する」活動を行うグラウンド。その場にある様々な道具を使ったりアーティストと対話したりすることを通して、新たなスポーツやアートを作り、実際に試す場を創出した。

⑷　未来の運動会プロジェクトとスポーツ共創
「運動会」をメディアやアートフォームと捉え、皆で運動会をつくり行う作品。過去に誰かが作った競技をプレイするのではなく、運動会そのものを自分たちでつくりプレイする。２０１４年から全国各地で１５回以上自主的に開催された「スポーツ共創」の取り組みを動画や写真資料で紹介。

⑸　スポーツタイムマシン
２０１３年に誕生した《スポーツタイムマシン》は、壁に投影される過去の自分や家族、友達、動物などの走った記録と実際に「かけっこ」をすることができるメディアアート。全国に展開しこれまでに５千人超の参加者を数える。２０１５年の文化庁メディア芸術祭鹿児島展以来、鹿児島では５年ぶりとなる本作の再現を試みた。

スポーツタイムマシンがやってきた

　本展は、２０１５年に鹿児島県国民文化祭の一環で行われた「文化庁メディア芸術祭『境界のあいだ』」で初めてスポーツタイムマシンを鹿児島市内で展示し、２０２０年の（予定されていた）国民体育大会・障害者スポーツ大会をきっかけにもう一度、同作を展示するという、５年の月日を経て実現した企画でした。

　２０１５年の会場は、九州新幹線と県内の各地を結ぶ在来線が行き来する鹿児島中央駅に隣接するアミュプラザの地下道。地元の人々の暮らしに密着し、子どもからお年寄りまで様々な世代の人々が通る場所です。
　午前中には近隣にお住まいのご高齢の方やまだ小さなお子さん連れの親子が足を止め、歩いたり、走ったりと思い思いにスポーツタイムマシンを楽しみ、また午後の時間になると学校帰りの小学生たちが立ち寄り、ランドセルを置いて走ります。夕方には中高生が馬跳びをしたり、スキップをしたりと工夫を凝らし、スポーツタイムマシンを楽しむ様子を毎日のように目にしました。

そのような日々の中で、２０１５年のスポーツタイムマシンは会期最終日を迎え、鹿児島で人々とのたくさんの思い出（走行記録）を携えて、終了しようとしたのですが、最後に来場した二人の子どもからの「もう一度スポーツタイムマシンをやって欲しい」という一言で、再び２０２０年、鹿児島に戻ってきたのでした。

▼２０１５年１０月２４日〜１１月１５日
初めてのスポーツタイムマシン 鹿児島初展示

●国民文化祭かごしま 関連事業「文化庁メディア芸術祭かごしま」１０月３１日〜１１月１５日
　Facebookページ
　https://www.facebook.com/MediaArtsFesKAGOSHIMA/

　　企画運営：文化庁メディア芸術祭鹿児島実行委員会
　　ディレクション　小山冴子
　　テクニカルディレクション　岩田卓朗（山口情報芸術センター[YCAM]）*
　　事業統括　MBC開発
　　プレイベントコーディネート　早川由美子、四元朝子（KCIC）
　　総合監修　植松篤（鹿児島県霧島アートの森 キュレータ）*
　　*２０１５年当時

▼展覧会を考える。
二度目のスポーツタイムマシンの展示

鹿児島における初めてのスポーツタイムマシンから５年の時を経た２０２０年はさらに内容を押し広げ、犬飼博士さん、安藤僚子さんふたりの活動をテーマにした展覧会を作ることにしました。
お二人から提示されたテーゼは

　「共創」

です。

そもそもスポーツタイムマシンは、等身大のゲームのような空間に没入していく作品ですが、そこを走る人がいることで成り立ちます。その記録を使って次に本作を楽しむ新たな走者が参加して...という風に来場者がつながりながら、人と人の間で成立していく作品。そのことを踏まえると、スポーツタイムマシンを出発点に二人の活動を考えていくためのキーワードがこの言葉にあることは理解できました。

では次に、「スポーツとアートをテーマにする展覧会」となると、展覧会会場で何をお客様に提示するか？をスポーツとはなにか？スポーツはPLAY（する）ものか？、アートとはなにか？CREATE（創る）のだけでよいのか？という疑問があがりました。２０２０年１２月時点でのポイントはここまでだったのですが、年が明け、２０２１年になると新たな課題が増えました。

新型コロナ感染症です。展覧会を行っていいのか？スポーツタイムマシンは感染症に影響があるのかないのか、新たな課題を抱えて、展覧会の企画について話し合いとなりましたが、犬飼博士と安藤僚子、そして鹿児島県霧島アートの森の学芸員のみなさんと話した結果、＜できることを考える＞ということを選びました。それは、２０２０年の６月のことでした。

スポーツタイムマシン

「５年前の自分と走りに来ました」
田上裕（鹿児島ユナイテッドＦＣ 応援リーダー）

展示概要：
壁に投影される昔の記録と実際に「かけっこ」をすることができる装置　。過去の自分や、家族、友達、動物の走った記録に挑戦でき、自身の走った記録は３Ｄデータで同時に保存されるメディアアート作品です。
鹿児島県では、２０１５年の文化庁メディア芸術祭鹿児島展から５年を経て本作を体験しに来場した方も。地元プロサッカーチームの鹿児島ユナイテッドＦＣ　応援リーダーの田上裕氏は５年前の選手時代の３Ｄデータとかけっこを行い、勝利。また、当日見学に来ていた小学生児童とスポーツタイムマシンで行進をした記録も残していきました。

宮崎からコンテンポラリーダンスカンパニー んまつーポスが来場。
コロナ禍で、２０１９年から宮崎県内の生徒に向けて続けてきた遠隔のダンス授業を鹿児島県霧島アートの森でおこないました。
んまつーポス 　http://www.odosupo.com/nmatu-posutop.html

約１ヶ月の展覧会期間中の来場者は約１０，０００人。スポーツタイムマシンを走ってくれた方は約１，４００人。子どもからお年寄りまでたくさんの方々にご参加いただきました。

●「智子＆朝子　鹿児島県霧島アートの森　スポーツタイムマシン」
https://youtu.be/LI6uHwWRzDc

また、この場で多様なスポーツタイムマシンの使い方も生まれ、段ボールで大きな造作物を来場者と制作し、その後、みんなで動かして走らせる試みもありました。

●「大きな存在と逃げ惑う人々」
（テスト１〜３）
https://youtu.be/QN2cmb_ZmmE
https://youtu.be/bTMwq2Jj4_c
https://youtu.be/INAREi7yQ0U

最終日。アーティスト犬飼博士が１ヶ月の滞在中に交流した吉松地域の住人や湧水町の人々が別れを惜しんで次々に来場しました。

搬入プロジェクト

「全く違う価値観を持った人たちと一緒に」　
井上紘太朗さん
　（鹿児島大学工学部建築学科 CARRY-IN-PROJECTチーム）

ある空間に「入らなそうでギリギリ入る物体」を設計・製作し、それを実際に入れてみる「搬入プロジェクト」。パフォーマンス集団・悪魔のしるしの演出家・危口統之（１９７５～２０１７）が２００８年に考案したもので、これまでに東京、神奈川、香川、京都、オランダ、クロアチア、ソウルと国内外２４箇所で開催されてきました。鹿児島県では、同プロジェクト発案の悪魔のしるし、及び、鹿児島大学工学部建築学科の学生有志によるＣＡＲＲＹ－ＩＮ－ＰＲＯＪＥＣＴチームが各々搬入物の設計と制作から搬入まで行いました。
搬入するための大きな物体の製作はもちろん、大勢の人々がその物体を持って空間に入れるという一連の流れは、各々の動きをお互いに注意深くみて判断するという、協力する想いが重要です。

搬入プロジェクトゲストアーティスト：石川卓磨（悪魔のしるし）、佐々木文美（快快）、菅野広樹
設計・搬入：鹿児島大学工学部建築学科ＣＡＲＲＹ－ＩＮ－ＰＲＯＪＥＣＴチーム
協力：悪魔のしるし、老谷家具店、株式会社オンドデザイン、３７ｄｅｓｉｇｎ、鹿児島市、霧島市

プロジェクトの流れ：

・８月２６日
　鹿児島大学工学部建築学科ＣＡＲＲＹ－ＩＮ－ＰＲＯＪＥＣＴチームとアーティスト　安藤僚子、石川卓磨、佐々木文美によるオンラインミーティング

・９月４日
　同チームにより、霧島アートの森（１／２０スケール）模型の制作

・９月５日
　同チームによる搬入物の試作模型の製作および搬入実験

・９月１６日
　学生による試作模型のプレゼンテーションと本番のために制作する物体の決定

・１０月１日〜３日
　霧島アートの森　館内で搬入物制作

・１０月４日
　搬入プロジェクト実施

・１０月５日〜１１月８日
　搬入物　および　学生による試作模型展示

打ち合わせ〜会場入り仕込まで

悪魔のしるしチーム

プロフィール：

悪魔のしるし
演出家の危口統之（１９７５年生〜２０１７年没）が、２００８年に結成。演劇的な舞台作品と、あるルールに則った即興要素のあるパフォーマンスなど、様々な作品の上演を重ねる。
舞台作品としては、危口自身とその実父が出演する『わが父、ジャコメッティ』（２０１４年、２０１６年）が、海外を含む６都市で上演され、パフォーマンス作品としては『搬入プロジェクト』が初演以来、国内外でも評価を受け、２０１６年までに８カ国２０箇所での公演を重ねてきた。
危口統之没後の現在は、建築家の石川卓磨や、デザイナーの宮村ヤスヲ、企画・プロデュースの金森香らを中心に、危口統之の作品アーカイビング活動や、演出家の意志を継ぐ形で２０１８年に「搬入プロジェクト」のオープン化を宣言した。

石川卓磨
１９７８年神奈川県生まれ。２０００年横浜国立大学建設学科卒業。卒業後設計事務所に勤務。ランドスケープ、家具、インテリア、インスタレーション、集合住宅、美術館の設計等の業務に携わる。２００７年より独立し、ｎｅｗｅｓｔ一級建築士事務所を共同主宰。住宅や店舗の設計を生業としている。２００８年「悪魔のしるし」に立ち上げから参加。舞台美術の設計・施工を担当。

佐々木文美
１９８３年鹿児島県生まれ。多摩美術大学　映像演劇学科卒業。快快（ＦＡＩＦＡＩ）メンバー。　同チームでの演劇制作の他、個人的に演劇、ダンス、コンサート、展示など様々な企画に舞台美術担当として参加している。近年の参加作品として、２０１８年ＡＡＦ戯曲賞受賞記念公演「シティＩＩＩ」２０１９年快快「ルイ・ルイ」　等。ホームパーティーするのが好き。


菅野広樹
１９８０年宮城県生まれ。２００３年横浜国立大学建設学科卒業。２００６年早稲田大学大学院理工学研究科建築学専攻修了。修了後、東京、北京、山形の設計事務所に勤務。いろいろな地域や国の方々との設計業務を経て、関係者が躍動する集団設計に興味を持ち、ただいま研究中。

鹿児島大学建築学科CARRY-IN-PROJECTチーム

●学生
荒川兼丞、井之口 春菜、井上 紘太朗、井上直大、木和田 有美、後藤岳大、後藤安紀、小西郁史、佐藤由奈、陣内大星、比嘉秋野

●教員
小山雄資、柴田晃宏、増留 麻紀子　※五十音順

鹿大建築搬入プロジェクトチーム ツイッター
@carryinproject　https://twitter.com/carryinproject

２０２０年１０月４日
「つくるスポーツ／するアート」展 オープニング
搬入プロジェクト動画

https://www.youtube.com/watch?v=x1u6p46am5U

とびだせ！ガリ版印刷発信基地

「みんな表現したいことが実はあって、それがうまいんです」　
安藤僚子さん

誰もが自分が伝えたいことを自由につづった印刷物「ＺＩＮＥ」を作ることで誰でも《表現》する側に立つこととなり、《交換》することで自分の表現を発信するだけでなく、多様な考えにふれることができる－、人や町、その背景にある多様な文化が出会うプラットフォームともなるプロジェクト。本展アーティストである安藤僚子は、２０１８年からデジタル印刷機リソグラフと工具があるＤ．Ｉ．Ｙ．スタジオ「Ｈａｎｄ　Ｓａｗ　Ｐｒｅｓｓ」の活動を始め、各地で展開。鹿児島県では会期中にワークショップも実施し、ＺＩＮＥを知らない来場者も自由に表現を紙に残し、数々の工夫を凝らしたＺＩＮＥが誕生。
また後日国内各所のＺＩＮＥスタンドに送付（または各地のものが鹿児島県霧島アートの森に届き）、交換されました。

https://www.handsawpresstokyo.com/

みなさんと滞在制作する。
スペースタイムグラウンド

「『何を体験するか？』ですよね」　犬飼博士さん

会期中、犬飼博士が会場に滞在。来場者とともに《スポーツをつくり、アートをする》活動を行い、犬飼博士及び参加者の活動そのものを《作品》として展示しました。地元小学校の協力のもと借りてきた運動会や体育の授業で使用する数々の道具（玉入れのカゴやお手玉、跳び箱やフラフープなど）を会場に展示しながら、来場者とそれらを使ったスポーツ競技を作り、プレイ。またその案を壁面に掲示しました。
つくること、プレイすること、それらが次々とこの会場で実行される、体験の“場”が立ち上がりました。
１１月３日の鹿児島県霧島アートの日には、ゲストに岡村尚美（かくれんぼ協会会長）を迎え、スポーツをつくるワークショップや、綱引きの綱を綯って実際に綱引きをやってみる企画も実施されました。（※「十五夜綱引きの文化と、綱をつくるアーティスト。」ページ参照）

１１月３日（火・祝）霧島アートの日

「スポーツ共創をやってみよう」で生まれた種目プラン（抜粋）

「未来の運動会プロジェクト」と
「スポーツ共創」

「運動会」をメディアやアートフォームと捉え，皆で運動会をつくり行う《未来の運動会プロジェクト》。過去に誰かが作った競技をプレイするのではなく，運動会そのものを自分たちでつくりプレイする。２０１４年から全国各地で１５回以上自主的に開催された「スポーツ共創」の取り組みを動画や写真資料で紹介しました。

「つくるスポーツ／するアート」展最終日　１１月８日

トークイベント「それでもつくるする」

犬飼博士、安藤僚子（本展アーティスト）
ＣＩｃｏ（勝部ちこ、鹿島聖子）
久保孝彰 （鹿児島県霧島アートの森　学芸課長）
早川由美子（ＮＰＯ法人ＰａｎｄＡ）
市村良平（市村整材）
四元朝子（サンカイ・プロダクション合同会社）

犬飼：現在、鹿児島県霧島アートの森の２０２０年度唯一のアーティストが来場する企画展として僕と安藤僚子さんで「つくるスポーツするアート」展を行っています。そして今日は最終日になりました。

　安藤さんと僕、そして鹿児島で５年前にスポーツタイムマシンを招聘してくれたメンバー達が中心となってここ鹿児島県霧島アートの森でいろいろな展示を企画してきました。テーマはスポーツをつくるということだったり、アートをするということだったり。もしくは逆でもいいし、スポーツをするということだったり、アートをつくるということだったりしてもいいと思います。そこを行ったり来たりしながら僕らがよく活動しているので、そのような展示にできたら良いなと思ってこのような展覧会になりました。

　そして、僕がこの１ヶ月間、ここ鹿児島県霧島アートの森に滞在をしていて、その姿そのものを展示するというような、生ける作品としてここに存在しました。今もまさにこの状態は「つくるスポーツ」だろうという《態度》をこうして現場で来てくださったみなさん、それからインターネットで見てくださっているみなさんに、ここでお見せしています。

　僕はとりわけ縁があるわけでもなく鹿児島県で、１ヶ月間、手がかりもなくやってきました。とはいえこの場所でやれることをやっぱりやりたくて、模索をしていたということがいろいろありました。その中で、鹿児島県霧島アートの森のある湧水町の隣の伊佐市というところで活動されているダンサーの二人がいらっしゃると言うことをお聞きし、そうかそういう人がいるんであればその人と是非お話してみたいなと思い、今日はＣＩｃｏのお二人に参加していただきました。どうぞよろしくおねがいします。
　この展示のことは僕があとから説明しながら紹介すれば良いかなと思うので、まずはお二人のことを教えていただけたらなと思います。

「無いところからつくる」ダンス

勝部：私達はダンサーでちょっとめずらしい感じのダンス「コンタクトインプロビゼーション」、日本語にすれば「関係を持って、即興する」というものをやっています。即興なので、予め決め事がほとんどなくて、動きが自由。「一人でやるのではなく、誰かと関わりを持ってやるというのが一応の決まり」というか、そういうものという認識でやります。だから広いんですよね。「これがコンタクトインプロだ」というのを持ってる人は持っているのですが、私達はかなりはみだしながら自由に解釈して、逆に言えば自分たちなりのを作ろうと、それができるダンスだからと思って気に入ってやっています。

　それを東京でやっていたのですが、いろいろな所を訪れながら環境が大事だなということに気がついて、「では東京ではないほうがいいかもしれない」という判断で場所を探していたら、偶然伊佐市というところが出てきたのです。そして下見にきて、他と比べることなく良いんじゃないかなと思って即興的に決めました。山を見て、木を見て、十曽青のキャンプ場を見て、ここでイベントをやりたいとピンときて、それが決め手になったのと、そこに移住した人たちに色々会ったのです。

犬飼：移住してきた人たち？

鹿島：移住の先輩たちに、「どんな暮らしをしてるとか、どうかな」みたいなのを聞いて。そしたら出会った人たちがとてもいい感じだったんです。楽しそうにく暮らしていたので、「じゃあもう引っ越しましょう」という感じでした。

犬飼：もともと東京ではどのような活動をされていたんですか？ダンスとかイベントをされていたんですか？

勝部：私達自身もダンサーで、舞台作品をつくることもしていました。
　ただ、このコンタクトインプロビゼーションを始めてからは、あまりたくさんの方がされていらっしゃらなかったので、研究会や勉強会をしたり、ワークショップを自分たちでやったり、講師を呼んできて、フェスティバルをやったり、割とオールラウンドに場を作ってきました。その「場をつくる場」というのがどこだったらいいかという模索の中で、鹿児島県伊佐市は自然に近いところで、人が少ないし、アート関係の人も少ないけれど、なんとかなるんじゃないかと思いました。自分たちが移住したら、そこに人を集めたいという気持ちもあったし。あんまり考えなかったですね。

犬飼：考えてないってことはないでしょ。考えてなくて東京から移住ってなかなか無理。

勝部：考えて移住しない人が多いので、移住しやすい人間からしたほうが良いと思って。自分ひとりのことじゃなく、いろんなしがらみや、家族と離れるのは難しい人とかはなかなかできないですよね。だけど、（私達は）動きやすい感じなんですよ、誰も止めてくれないぐらい。

犬飼：出身はどちらですか？

鹿島：千葉です。

勝部：大阪。

犬飼：東京では何年くらい活動されてたんですか？

鹿島：２０００年くらいからこの活動をしました。それぞれはもっと前からダンスはやってていたのですが。

勝部：１２年くらい東京でダンスをやっていました。

犬飼：移住のきっかけって、震災とか関係してます？

勝部：そうですね。震災で決定的に考えを強くしました。

鹿島：それ以前も、海外でいろいろなフェスティバルに参加しますが、コンタクトインプロの人たちって結構ジプシー的な人が多いんですね。
　ふらりと旅に出て、バックパックに稽古着ぎっしり詰めて半年くらいウロウロしてるとか。だから定住する人があまりいないので、その影響もあって、別にどこか行くっていうことに抵抗ない。だから出会うと今どこにいるの？みたいなのが定番の挨拶なのです。

犬飼：なるほど。この配信をみている方には、コンタクトインプロビゼーションのワークショプや活動というものがどういうものか分からない方が多くいらっしゃると思います。先程キャンプ場で、「ここでやれそうだなと思った」というのが決め手となったというお話がありましたが、そこでどんなことをやるのか教えてもらえますか？

勝部：講習会、ワークショップはリーダーがいて、習う人とシェアしながらやります。

　体を動かすというのがまず１つ。アプローチはほんとに各々です。「コレでなければいけない」というのはないのですが、基本は即興で人と関わり合いながらやるということ。要素はみんな持ってますね。

　みなさん各々イメージするダンスがどのようなものか色々あるでしょう。これもダンスなの？という動きもあります。止まってたりとか、瞑想してたりとか、歌を歌ってたりとか、結構自由な感じですね。それで何を求めていくかというと、「無いところからつくる」というのはあります。道具がいらないし、衣装も決まっているわけではい。唯一、保護のための膝当てくらい持ってたら良いかなという感じで、ルールもなく、音楽ももしかしたら無くても踊れる。

　まったくないところから何か自分たちが楽しいと思える瞬間を作っていこう、という感じですね。

犬飼：なるほど。これは今やられると結構いろんな方が伊佐市に集まってきて一緒につくられてるって感じですか？

勝部：集まる人は世界あちこちからきます。（参考動画：i-Dance Japan 2019 Contact Improvisation Festival

四元：世界中からコンタクトインプロビゼーションのダンサーが集まるんです。すごいですよね。

鹿島：伊佐でやってるフェスティバルには、９割５部ぐらいが県外からいらっしゃいます。

犬飼：伊佐って来やすいっていう感じでは無いですよね。

鹿島：そうですね、アクセスの悪い場所です。空港からも駅からも鹿児島に到着されるので参加者のピックアップのアレンジをまずやります。

犬飼：熊本から来る人もいれば鹿児島から来る人もいるみたいな話ですよね。

鹿島：そう、だから自家用車歓迎みたいな感じで。

四元：勝手に来てもらえる人歓迎！ですね

勝部：もう大歓迎で、しかもその後みんな乗せていってあげてください、とお願いします。まあそこも含めて楽しみの一つにしてます。

鹿島：もちろん鹿児島とか伊佐の人にも参加してほしいんですけど、今のところは結構外部からくる人がほとんどです。

勝部：もともと伊佐に住んでいる人たちは外部の方がくることに楽しみ方を見つけて、フェスティバルのいろんな生活部分をサポートする、そこにとても興味を持って頂いていますね。

犬飼：集まってくれた人の生活部分をサポートする。

勝部：お食事を作る人達、テント立てたりとか運んだりとか、そういうのを任せろと言ってくださる人たち、そういう部分では非常に彼ら無くてはやっていけない。

鹿島：面白いのは、いろんなボランティアで関わってくれた人たちが終わったあとに、例えばフェイスブックなどを見ていたら海外のアーティストとコメント書いたりしているのが、いい。

犬飼：住民の人たちがね。

四元：交流が生まれている。

鹿島：ライク（いいね）ボタン押してるなとかそういうのが面白くて、そうか繋がってたんだ、と。

犬飼：そこまで展開されてたんですね。僕もコンタクトインプロビゼーションには実はちょっと繋がりがあります。今ここに展示していることの一部だったりしますが、開館して１７年になる山口県山口市にあるアートセンターの山口情報芸術センター［ＹＣＡＭ］で、アートのジャンルとしてパフォーミングアーツを扱うことが多々ある。四元さんはそこで働いていた。僕も２０１３年あたりからＹＣＡＭとお付き合いさせて頂いていて、安藤さんと一緒に作品を展示しました。

　それが今ここに展示されているスポーツタイムマシンです。スポーツタイムマシンが終わって、その後に大脇理智さんというダンサー兼メディアアーティストがいるのですが、その人がずっと新しいメディアを使ったダンスの研究のようなことをしていて、その中でなにか次一緒にできないかと声をかけてくれて。

　僕はその頃、《運動会》というものに夢中でした。そこで、ＹＣＡＭにいってみて、「僕は運動会をやりたいんだけどな」って言ってたら、いやまずこちらからやろうと理智くんが言い出したのがコンタクトインプロビゼーション。そこに立ってくださいって言われて、背中合わせでこんなふうに背中合わせさせられて（立って実演しながら）、「もっと俺を信用しろ」とかいろんなことを言い合いながら。「手はこうやって」、「次は背中で」とか、そうやってずっとやってってしばらくそれを続けたんですよ。そしてＹＣＡＭのやりたいことはこういうことだって言い始めるんですよ。

　それで、この延長線上で何をするか、という話になり、頑なに僕は「結局それって即興で制作されていく約束事／ルールとかお互いの信用のようなことで、公共の施設であるＹＣＡＭは、それをどれだけ地域に波及し、地域全体とインプロビゼーションできるかというようなことが求められているんだと思う」と言いました。「それを一言で言ったら運動会じゃ駄目なの？　僕そういうつもりで言ってんだけど」と話したら段々飲み込んでいってくれて。

　僕のやっている《未来の運動会》も《コンタクトインプロビゼーション》と共通するものがあります。

　大抵、運動会はルールが決まっていて、第一種目玉入れ、第二種目１００メートル走と、それをやらされる感じがあるとおもうのですが、《未来の運動会》ではやることが決まってないんです。でも最後に運動会をやることだけは決まっている。みんなで集まって「さあ何しようか」から始まり、種目を決めて行きます。ＹＣＡＭでは３日間の合宿です。日本人って面白いもので、運動会やるよってウェブサイトに書いて応募フォームつけとくと、２００〜３００人集まります。中身何も決まってないのに。みんな運動会にやたら信頼感を持ってて、だから運動会ってものを選んでくれますね。

　コンタクトインプロビゼーションやるよっていっても応募してくる人も結構限られてくるか、もしくは逆に９割５分の方が世界から来るのかもしれないけど、地域の人はなかなか来ないですよね。
おかげさまでと言うか《運動会》という名前をつけたおかげで、いっぱい地域の人が来ます。子連れも含めて。あと全国からも「《未来の運動会》って名前でなんだろう？」と来る人も。

　来場者は最初ごちゃまぜになって前半の２日間で種目をつくり、そのあと運動会そのものを作っていき、出来上がった種目を３日目にやるという過程を経て行きます。その３日目は、みんなが何かしら動いてやるのですが、そのみんなで作った種目の中に、ダンスのように勝ち負けのないものもあります。しかし、最後にはゲームのようにいわゆる勝ち負けのあるもので点数を決めて紅組の勝ちですみたいなことをやるんですけど、全部勝ち負けのない種目になったことはないですね。大抵勝ち負けがあるものになる。なので未来の運動会は今全国であっちこっちやり始めてて勝手に。そういうことをＹＣＡＭの文脈からはコンタクトインプロビゼーションのスタートで、未だにそれをやり続けてるっていうような気分。そういうのはずっと背負ってたりするんですよね。

　一方で安藤さん。いま安藤さんが東京でやってることもダンスのお祭りだったりするじゃないですか。

安藤：私は今、豊島区と東京都が主催のパフォーマンスアートのフェスティバルに、東京で近所の仲間と始めたリソグラフ印刷とオープンＤＩＹスタジオ「Ｈａｎｄ　Ｓａｗ　Ｐｒｅｓｓ」というご近所コレクティブユニットで参加しています。

　パフォーマンスアートフェスティバルなのに、私達みたいな印刷スタジオ・ものづくり工房が、なぜアーティストとして呼ばれて参加してるかと言うことなのですが．．．。豊島区には都立をはじめ、多くの劇場があります。それらの劇場を会場として十数年このフェスティバルは続いてきました。しかし、どうしても劇場作品というのは閉じられた空間でやるために、見に来るお客さんが固定化されてしまったりとか、舞台の上に立ち表現する側と、見る側という関係性がなかなか崩れにくいということで、数年前に新しいディレクターが着任したときに、「まちなかでもっといろいろな人が参加しやすいプログラムを増やしたい」と、声をかけてもらったという経緯があります。つまり、私はそのまちなか部隊なのです。

　具体的にはＺＩＮＥを作って交換するというプログラムなのですが、ダンスなどの場合、観客が参加して表現する側に回るのといのが、どうしても難しいですが、ＺＩＮＥを書いて印刷してその印刷された表現が色んな人に回るという仕組みだと、参加もしやすいし表現する側に立てるんじゃないかという試みで去年から２年続投でやらせてもらっています。あと１週間会期がありますが、鹿児島県霧島アートの森も全国の出張会場の一つとして参加してくださっていて、鹿児島からもたくさんZINEの原稿が送られてきてます。

犬飼：アートの森にも、同じＺＩＮＥスタンドとかがありますね。ここでもＺＩＮＥの制作ができるということですね。

安藤：そうです。去年は豊島区の中の大塚駅前商店街の空き店舗で、本当にに街に開いたようなところでやってたんですけど、今年はコロナ感染症があり、一箇所に人を集めて盛り上がるのが難しい状況なので、たくさんの場所にポップアップの拠点を作って分散して参加できるように工夫してます。豊島区内で１４箇所、全国で１４箇所のポップアップＺＩＮＥスタンドを開設しまして、その中の１つが鹿児島県霧島アートの森ですね。

犬飼：ありがとうございます。そういうわけで安藤さんもそうやって踊っているという説明ですね。　　

安藤：そうそうそう。紙の上で踊ってるって感じですね。さっきの即興性の話とか、人とやるって話とかは自分たちのプログラムも共通しています。とくにここは人通りの多い街の中なので、突然、普段なら絶対出会わないような人が飛び込んで来てくれますね。そういう人にプログラムを説明して、あなたもＺＩＮＥを作ってみませんかと呼びかけて参加してくれた、その見知らぬ人がつくる表現というのに毎回感動する。その人が考えていることを即興的に紙に書いてくれるのですが、そういうところは何かコンタクトインプロビゼーションのダンスと共通するところがあるんじゃないかなと思って話聞いてました。

スポーツとアートの間にあるのはダンス

犬飼：と、こんな作家二人でやっているのが「つくるスポーツ／するアート」展。スポーツとアートの間にあるのはおそらくダンスだろうという話は、企画をしている間にしていたのです。ダンスはスポーツなんだろうか、ダンスはアートなんだろうか。そういうことだと思うんですよね。

　ダンスそのものをパフォーミングアーツっていう言い方もありますが、もうひとつ言うと体育の授業の中かにダンスがあり、それはスポーツの文脈の中のダンスがある。僕ら二人は身体を使っているけれど、僕らが踊ってるというよりは、誰かと一緒に踊ろうみたいな姿勢はあり、実は僕らは踊っていない。だからダンスという言葉は直接はここには出てこない。ただどこかでダンスという言葉を出さなきゃいけないなとは思っていて、今日お二人に来てもらってお話できたらなと思っていたっていうことなんですよね。

勝部：実はコンタクトインプロビゼーションの別名で「アートスポーツ」っていう人もいるんです。最近は減ってきているのですが、一時期、「それはなんですか？」と聞かれた時に「アートスポーツ」と答えている方がいました。だからアートのダンスというよりはスポーツのダンスみたいな、そういう位置づけの人もいて、特に海外はこのダンスをするための場所が《ジャム》っていう場があります。曜日と時間と場所だけ決まっていて好きにそこの人と踊って、好きな時間に帰るみたいな、クラブみたいな感じなんです。

　それに一汗流しに行って帰ってくるというような、スポーツジムに行くような代わりに「ダンスの場に行って、踊ったね」みたいな感じで日々の生活にそういうものを持ってる。そういうことからきているからか、スポーツ的な感覚で捉えているのです。だけど別に記録とか、勝敗とかっていうわけではない《スポーツ》なんですね。

鹿島：例えばダンスって身体的なトレーニングをしないとできないように思われることがあって、「小さいときからやってると得だ」というようなところがありますよね、音楽もそうかも知れませんが。

　ある程度幼少期にそこで培わないと、大人になってからやるとどうしても差がついてしまう、例えばバレエのようなダンスのジャンルはたくさんあるんですけど、コンタクトインプロの場合って「ダンスが美しくなきゃ」とかいう基準もなければ、楽しむ側がまずはどう楽しむかみたいなところが大事で、カッチカチの体なのにすごく柔らかく動く人とかいっぱいいるんです。ストレッチしたらすごい硬いような人がいっぱいいるんですけど、動き方はその人の体で習得してるから、見てたら目覚ましいことをやったりもするんです。だから基礎があるかないかじゃ測れない不思議なところがあり、そういう意味では順を経て基本を踏まえないとできないみたいなところではないし、コンクールで賞があるとかでもないっていうところが面白いと思います。

犬飼：今年になってからも続けてらっしゃるんですか？ちょっと止まったりとかされたことあります？今年コロナ禍で。

鹿島：続けてます。外向きには減ってますけど、自分の中ではずっとやってる。

つくるスポーツ／するアート展をやる意味

犬飼：「自分の生活の中ではやってる」と、つまりそこに境目はないという感じなんですね。止まってしまった企画展はありますが、この「つくるスポーツ／するアート」展をやろうとした人たちがここにいる。僕ら東京から呼ばれてやるので、やっぱり地元で何かやる理由があるのでしょう。四元さんはもともとパフォーミングアーツにとても興味があって、今でも積極的に考えてらっしゃる。そこと関わりがあると思っているんですけれども、この企画、展覧会っていうのがどうして今ここでやらなければいけなかったのか、どういう過程でここまで来てるのか。ちょっと教えてもらえませんか。

四元：もともと２０１９年に、「２０２０年にやる国体、そしてその前にオリンピックがあるのでスポーツの展覧会をしませんか」と、鹿児島県霧島アートの森の方からお聞きしました。「では、実は５年前にスポーツタイムマシンを、もう１回やろうって子どもたちと約束したのでやりたいです。」と伝えました。それと合わせて、今スポーツタイムマシン以外にも起きてることを、犬飼さんと安藤さんっていう象徴的なお二人の活動を見せたいという思いがありました。

　どういう風に見せるのがいいかと、１年前にお二人に相談し、ディスカッションをしながらつくっていったのです。ただ、新型コロナ感染症が蔓延し、鹿児島の早川さんと市村さんと何度か打ち合わせをしながら、「コロナだと何ができないのか」、「スポーツタイムマシンはできないのか、できるのか」などと話をしている内に早川さんが「いやスポーツタイムマシンはできる」と。そして「そうだね。じゃあ感染対策はどうしたらいいのか」とディスカッションしていきました。

　それ以外の案件としても色々出てきたましたが、お客様の対応をどうするか、予算をどうするか。鹿児島県霧島アートの森の方とも相談させていただいて、そのときに久保課長が「芸術はそういうのを解決していくものです」っておっしゃったんです。重要な一言でした。そこでどうやったら解決していくためのことができるのかっていうのを霧島アートの森の方としていって、犬飼さんと安藤さんと、何を展示するか？と、打ち合わせをして、犬飼さんが「自分たちは『つくる』と『する』というのを続けているという《態度》を見せなきゃいけない」と。そうおっしゃってこのタイトルになり、ここまで来たという感じです。

犬飼：まずお二人。その過程の中でどうでしたか。

早川：最初に打ち合わせを始めたとき新型コロナ感染症はまだ出現していなくて、途中で晴天の霹靂のように状況が変わり、どうしようと話し合いになりました。しかしやはりアーティストのお二人が「こういうときだからこそやろうよ」と言ってくださって。その言葉は後押しになり、企画を持ちかけた側からしては「あ、やれるんだ」と思いました。もちろんすごい高い山はその時すでに見えてましたけど、やっぱりその二人の言葉が最後まで引っ張ったかなという気はします。

犬飼：おもしろいね。

市村：そうですね。僕はもう単純におもしろそうだからやったほうが良いなとは思ってて、ちょっとコロナが引いてきた時に、展示のプログラムをちゃんと設計すればできるだろうなとは思っていました。ただ周りの社会との関係性とかを考えると、ログを残し、アーカイブとしてしっかりこの環境下でもできるっていうことを見せたほうが、僕個人の興味としても面白いし、周りもみんな興味もってくれるんじゃないかなと思いました。

　当時は本当に簡単にみんな中止してたんですよね。なんでもかんでも中止してやってたと思うのですが、「それでもやるんだ」と打ち合わせの中で言ってて、たしかにそうだと。「文化は止まらない」というような言葉をＹＣＡＭの人たちが喋ってたという話を聞いて、「そうだよな、止める必要ないんだよ」と思い、じゃあやったほうが良いんじゃないですか、と。
僕はどっちかと言うと後ろから背中を押す、感覚でずっとやっていました。

四元：押されてました本当に。

犬飼：久保さんはどんな風に思ってましたか？

久保：４月からずっと延期になってやった展覧会もありましたし、休館にも当然なりました。

犬飼：どのくらいだったんですか？休館の期間は。

久保：２週間程度。

犬飼：じゃあ短いですね。

久保：その間にこれから展覧会をやっていくわけなので、ここで中止にするのは一番無難な考え方であるんですけれども、これからコロナのある社会で展覧会を続けていくにはやはり少しでもやっていって、どういったことで感染対策をするかということを発表する機会を提供できるなと思いました。その観点でこの展覧会を始めて行ったのです。実際今日までのところ中止にもならずここまで来ていますので、それなりに対策を講じてくれたんだろうなと考えています。

犬飼：解決すべき課題、何か課題を感じているからこそですね。

久保：ここは現代アートの美術館で、現代アートというのは基本的に前衛。少し社会の先を見据えて行かなければなりません。我々はそういう場所を提供して、こういうことができるというのを地域に対してはもちろん、鹿児島県にも、日本にも、「こうやってアーティストの活動できる場が提供できる」と見せる最初の公的な展覧会でした。

四元、鹿島：素晴らしいですね。励まされました。

犬飼：何かが解決したかどうか、実は僕は全然定かじゃなくて。そもそも解決したいっていう風におっしゃってたことが社会とか結構大きな話だと思うんですね。
　国全体とか、コロナの話もしてしまいましたが。この地域に来て、地域で初めて会った人たちに、この地域そのものの課題のようなことを言われました。「こういうものをお前はどうしてくれるんだ？」みたいな。鹿児島の公的な予算で呼ばれて、我々の税金をどう使ってくれるんだみたいな圧力を、はっきりは言われないですけど、眼力で感じるわけですよ。みんなニコニコしながらいらっしゃいませと言いつつ多分そういうことなんだろうなと思ってて。「アーティストなんですよねー。」みたいな。
　実は回答みたいな感じじゃなくてそもそもみんながどんな課題にぶつかってるのかというようなことを全然確定できていない。ひょっとしたらもう課題すらも市民の人たちは見えてないのかもしれない。館の人たちとかこのスタッフの中でも課題みたいなことは話したことはないんですよね。コレが今鹿児島の課題だろうとか。コロナの話はいま明確だろうから良いんですけど...。

　未来に対して何か残そうとしてくれたんだけど、何が課題になってるかっていうのを、色々は思ったんだけど、この辺独特の課題を教えていただきたいです。ＣＩｃｏは今何年ですか？

勝部：８年目です。

アーティストがもっと人の動きを作ればいいんだな、と

犬飼：隣の市ではありますが、伊佐市に住んでいて、どのようなことを課題として考え、それを解決しようとしているのか、お聞きしたいです。

勝部：単純に言うと、世界が狭いと言うか、その中で生きて考えて過ごしている人が多いので、自分の生活の範囲内が無事で安全でとりあえず良ければ良い、外からの、例えば、コロナ禍で他県から人が来たというだけでもピリピリしちゃう方が数多くいらっしゃいます。

　そこで自分の捉える視野が広ければ広いほどもうちょっと相手の気持ちとか、違う立場の人の考えとかそういうものに想像力が働いて、今と違う考えや行動になっているんじゃないかなと。ここ鹿児島に限らずだと思いますが、地方の小さい町とか、人の行き来がもともと少ないところとか、観光地でもない場所など、そのようなところに対して例えば私達がもっと人の動き、流れを作っておけばいいんだな、という気はしました。

鹿島：少しまた論点がずれるのですが、そのお話を聞いてて最近の自分の興味と合うところがあります。《情報と物理》のようなことで、情報に物理空間が操作されるというようなことです。

　結局、先ほどのルールもそうですが、例えば、「皆ここではマスクをして下さい」というルールができると、マスクをしないとオドオドしてしまいますよね。「ここに入るにはまずマスクを着用して下さい」というルールがあったら、現実にみんなマスクをしている。逆に、今ここで皆がマスクを外して喋ってたら、「なにこれ？」みたいになってしまう。それは、見えない現実が情報を操作している、では「結局自分はどの情報に動かされてるんだ？」と感じるところもあるなと思ったんです。
　今、ちこさんが言ったような狭い世界っていうのは見えない世界がたくさんあって、見えない未知の人々がたくさんいて、未知の人々が例えば脅威を持ってくるという印象が皆の中にある。それにまた操作されて、他県のナンバー見たら卵投げてしまうとかそういう行動になってしまうのかな。

犬飼：卵投げてました？

鹿島：そんな話も聞きました。例えばアートの話で言うと、美術館や、アートパフォーマンス、アートイベントや生の音楽を鑑賞する機会がなかなか無いと、芸術が実生活とすごくかけ離れたものになり、、「アートというもののはそういうアーティストがやるものだ」と、自分たちとは全然縁がないという感覚が生まれます。そのような環境にいる人たちがまた次の世代を育てた時に、アートとは無縁な世代がどんどんできてしまうみたいな感じなのかなって。それも結局は未知のものイコール関係ない、知らないっていう風になってしまうのかと。
　外国人を見ただけで「いやいや英語は（無理）」となってしまうのもそう。個人的に仲良くなれば別に何人だろうが友達にもなれるのですが、ひっくるめて外国人というだけで「イヤイヤイヤイヤ...」と距離をおいてしまうのが、よく見受けられると思います。

犬飼：それが９割５部は外国人のフェスティバルで、彼らの生活をサポートする市民たちに現れてしまってるという話ですね。

鹿島：逆にその状況に入って来れたら、「楽しい」「嬉しい」に変わるわけです。

実空間と情報空間、二つの分野の仕事がひとつになった

犬飼：まさに安藤さんと僕は情報と物質みたいなことをやっています。僕はどっちかと言うとずっとテレビゲームクリエイターなので、「テレビの中や情報空間の中で何をデザインするか」みたいなことをやっていたのですけど、安藤さんは全く逆で物をデザインする側で空間デザイナーだったんですよね、安藤さん！

安藤：鹿児島を去る時にＺＩＮＥをつくり、そこにちょっと書いたことですが（●ページ参照　最後に入れます）、私は建築を勉強してインテリアのデザイナーになりました。犬飼さんと仕事をしたのが２０００年くらいのときかな。

犬飼：初めての仕事は日本科学未来館の常設展示「アナグラのうた」で、は２０１１年ですね。


安藤：そうですね。その少し前の２００５年から２００７年ぐらいのときは、実店舗よりもＥＣショップの方に投資する方が多く、私のような実空間をデザインする仕事がなくなる印象がありました。
　自分の身体は実空間にあるのに、「情報空間と実空間は今後どういどうなっていくのだろう」とよく考える時期でした。犬飼さんとはたまたまオフィスメイトみたいな感じで知り合い、一緒に空間情報科学の展示の仕事をする機会があって、「その時に情報を扱ってる仕事をする人と、自分みたいに実空間を扱ってる仕事をする人が一緒にものをつくる、そこを融合していくっていうのは、凄く幸せな未来がそこにあるんじゃないか」と思ったのです。そして今度は、犬飼さんと仕事じゃないところでまた何か作りたいなと思ったっていうのはあります。
　それがスポーツタイムマシンをつくる最初のきっかけだったかと思います。

犬飼：簡単に言えばそういうことなんです。僕も空間のことは分からないから、ここに柱立てたいみたいな欲求はあるんだけど、安藤さんここに柱立てたいんだけどって言うと、安藤さんがダンボールで立ててくれる。

安藤：スポーツタイムマシンをつくった時に、犬飼さんずっとゲーム、デジタルゲームっていうの？を作ってて、私は実空間をずっと作ってたから、扱う物質がぜんぜん違う。

犬飼：メディアがね。

安藤：そう。扱うメディアが全く違うので、最初話が全然合わなかった。
　例えばスポーツタイムマシンって走った記録がデータとしてパソコンの中に入ってしまうじゃないですか。私はデジタルデータに還元されちゃうと、実空間で走ったというものが見えなくなってしまう感じがして、なんか嫌だなと思ってたんですよ。それを犬飼さんは嫌だなって思わなかったんですよね。

　「もっと見える化させたいんだよね、物質的に触れるものとして見える化させたいんだよね。」って伝えました。

　そこで、走った記録は紙のカードでも保管するし、サーバーの中にデジタルデータも保管する。そういうふたつを対等に保存する作品にしようと話し合いました。それは二人が良いと思うところと、便利だなって思うところが違うので、その違いを話し合って、ひとつひとつどうするか解決してできた作品という感じがありますね。

早川：嬉しいこの話聞けて。

四元：貴重ですね、この話。

犬飼：よし、じゃあこの話は別でもっとしよう。ウケるんならさ。

　そのようなことを安藤さんと続けてきて思うことは、ものを外在化させてあるんだけど、スポーツタイムマシンはずっと問いかけるんですよ。

「私はスポーツタイムマシンです。みなさんのデータや思い出を１００年間残したいんです。そのためにはどうしたら良いんでしょうか。」って。

　ちょっと生物みたいな扱いになっていて、ずっと問い続ける。あいつ自身もわかってないんですよ。

　それは要するに僕らもわかってないってことなんですよね。どうすればいいでしょうかって誰に問いかけれるかっていうと結局、そこにいる人、なんですよね、その場所にいる地域の人間なので。どちらかというと期待してるのは、安藤さんは《紙》と言ったし、僕は《電子メディア》とかって言ったけど、実はそうじゃなくて、《人》なんですよ。

　「あなたの想い出を残すのはお前だろう、あなたでしょう」と《人》という大きな回答としては持ちながら、やり続けてるっていうことなんですよね。だからこそ今回のこの展示みたいなものっていうのも機械相手ではなく、人間相手に対して展覧会をやるって事になっていて、鹿児島県アートの森の課題点を解決していこうというようなことだとも思うんです。

　とはいえ、それが本当に難しい。それこそ回答があるのかどうか、課題は何なのかみたいなことが本当に読めない。

地域で暮らす、地域と踊る

犬飼：なんだろうな、こっちに来て思ったことはやっぱり僕は鹿児島に住んでないし、吉松に住んでないので、なぜ僕はここでやんなきゃいけないのかなっていうことなんです。そこでＣＩｃｏは、移住されてるわけじゃないですか。東京に愛着を持っていたのか、どうして今は伊佐に愛着を持っているのか...、その愛着の持ち方は、土地が、地域が自分になるのではないかと思うのですが、東京と伊佐両方知ってる身としてどんな感じなんですか？

勝部：凄くシンプルな質問ですが、自分の知り合い友達を自分の住んでるところに「良いところだからぜひ来てね」って言えるかどうか、という質問をずっと持ってたんですよね。わたしは地元が大阪だから自分の住んだところにそう言えるか、と思います。大阪に居ると、こんなところに人を呼ばれへんわっていうなんか自分の住んでる街に愛着がなくて。

　それがなぜか、理由はいろいろあるんですけど。東京に行ったからといってそれが「すごく良いところでしょう来て」ってなかなか言えない。もちろん東京はすごい街だから、人が来たくなる要素はいっぱいある。だから呼んでも良いんだけど、でもなんかちょっと違うなっていう。そして、ある時、「うちのとこすごいいとこよ来て！」っていう福岡の人がいて、そんな事言えるんだ、ってびっくりしたんですよ。住んでいるところが良いから来て、っていうのその愛着心ってすごいな、羨ましいなと思いました。じゃあ自分が住むところに人を招きたいって思うところに引っ越したい。今は結構、叶ってます。

犬飼：そうですか。

勝部：はい。ぜひ来てって、おいでって。ぜひ来て下さい。ウェルカム。って言えるようになったのはかなり違いで。

鹿島：私は今まで千葉と東京とニューヨークと伊佐に住んで。東京の最後のほうはもう疲れた感じはあったんです。そして、伊佐に引っ越してきました。人生の大半、私はダンスをしてきて生きてきてるんだけど、結局どこに身を置くかで体の感覚がだいぶ違うんですよね。
　今の伊佐の環境は、自分自身の体やダンスにとっては本当に良いです。空間が身体の拡張みたいに捉えるとすると、もの凄く自由で広くて、空間と自分が凄く繋がってる感っていうのは今の伊佐は一番いいんですよね。

犬飼：って言うとこの草とか、木とかと呼応している感じがすると。

鹿島：そうそうそうそう。腕がそこまで広がってるみたいな感じがあって。

　身体性としては、いま自分に満足しています。３０代の頃のほうが腰痛多かったなとか、そういうことは感じるんですよ。もちろん東京やニューヨークのいろいろな人の刺激があったというのはあります。いろんな人がいるからそこで刺激は受けられるし、いろんな人が居るからいろんなものが作り出される。そういったものに刺激を受けます。東京やニューヨークも伊佐も両方好きなんですけど、住んでることに関しては今の環境が凄く良いなぁというか、気持ちにも穏やかになれるし。

犬飼：伊佐が面白いと思っているお話がありましたが。

鹿島：面白いですね。植物がね、ほとんどなんですよ、身のまわり。今まで植物ってあんまり関係なく生きて来たんだけど、周りの植物がすごい色んな事を教えてくれるていうか。クリエイティブなんですよね。植物は自らいろんなものを作って、こんなちっちゃい種がこんなでっかいものになったりするから、そのことに驚きの毎日。

犬飼：それとコンタクトインプロビゼーションしてる。

鹿島：そうそうそう。

安藤：四元さん今お庭をどうしようかちょうど悩まれてたような。植物から身体性を感じて庭造りに反映するの良いんじゃないですかね。

四元：私は植物と自分の仕事がすごい結びついた一年間が去年あったんです。私自身、転職が多くて鹿児島から東京の大学行ったあとに東京の会社に勤めて、パリに留学して山口戻ってきてまた東京行って鹿児島行ってって移動ばかりしていました。

　そして、今は鹿児島拠点で地域の仕事をしているのですが、新しい地域に短期間しかいないので、人との関係がちょっと微妙だったり、もっと伝えたいことが伝えられなかったり、あとココとココに派閥があるなってのが見えたり（笑）。

　去年と一昨年は家に引きこもっていました。

犬飼：今年以上に！？

四元：はい。母が亡くなったので母の庭を引き継いで、いろいろ育てていたのですが、好きな花を好きなように植えてたら、喧嘩するのとかいっぱいいるんですよ。相手を食っちゃうのとか、湿ったところが好きなのと乾いたところが好きなのと、とか。

鹿島：ありますね。

四元：それ見てるとすごい人間みたいだなと思いました。それぞれ合う土のところに行けば良いんだなと思ったりしましたね。
　あとケアしないとどんどん荒れていく。朝５分でも積んであげると成育が全然違います、コレすごい社会だと思いました。そういう意味ですごい今好きですね。それが仕事に結びついたところでした。

犬飼：四元さんもコンタクトインプロビゼーションしてる、踊ってるってことですね。なんか鹿児島で面白いと思っているっていうか、ずっと居るんだったら何か思っていると思うんですけど。

市村：僕はもともと島根県出身なのですが、大学で鹿児島に来て、１５年。今は街づくりの仕事をして色んな地域に入ったりします。もともとは建築が専攻だったので、卒業する時に、設計事務所の面接を受けたのですが、普通に設計事務所に入って１級建築士とって、どんどんと建てていくっていうのもイメージとしては有りました。でも既定路線のような感じもして、鹿児島面白そう、やれる糊代がいっぱいあるように感じて、それに身を置きたいと思ったのです。結局、建てるのをやめて、建築を使う側に回りたいと思ってやってるので、僕は早川さんとかとも昔から色々させていただいたりだとかしていて、遊べる範囲が僕にとってはすごい広い地域だなと思い、今も残ってやっているって感じですね。

犬飼：まだ空白というか隙間がいっぱい有るように見えてるってことか。

早川：ちょうどＣＩｃｏが伊佐市に来られて１年目に私お家に呼んで頂きました。熊本と鹿児島の境ぐらいのところで住んでらしたんですよね。ダンスの方だって聞いて、どうしようそれこそ体鍛えてないやとか思いながら、学校でお二人のイベントがあるとお聞きして、行ってみました。

　鹿児島にいる人からすれば、普通の暮らしなのですが、お二人は「その暮らし一つ一つがキラキラしてるんです。」っておっしゃったんですよね。だからさっきそれこそおっしゃったように、アートと暮らしの境が無いというのをそのまま身体表現にするコンタクトインプロビゼーションの一番の芯の大事な部分みたいなところを感じました。言葉じゃなくて、ただ「お茶入れたよ」とか。

　私自身が街中の団地からやや田舎の場所に行って今ちょうど１０年。虫も最初は一つ一つ驚いてたんですけど段々なれてきて、だんだん仲間みたいになってくるという感じ。人間関係と同じで、多様性というか順応性で楽しめるようになってきました。

　そして、ここ鹿児島における課題っについても考えます。この展覧会をやること自体にすごい覚悟したところがありましたが、やることによっての色んな言葉の中に課題は含まれていること、それが私たちのところにぼーんとなげられるんだろうなと思うんです。
　展覧会をやること自体に反対があるかもしれませんが、それを覚悟することが開催することに繋がる、《開催することイコール覚悟すること》だとみんなで話しましたけどいまのところ全然何も、ウェルカムばかり。聞こえてないだけかもしれませんが。

　本当のところの課題っていうのは掴みきれなかったんですよね。もうちょっと「なんでこんな事やってるんだ！」とか言う人来るかなって覚悟していました。そこで見えてくるのこともあったのかもしれないなっていうのが、最終日に思うことです。皆さんすごくいい人っていうか、逆にコロナで抑えられてた分、なんとかやろうとしている人たちを応援するよとか、自分を開放したいとか、こういうのを待ってましたっていう人のほうがとても多いんだと分かったのは、結果としてとても良かったと思います。
　わかんないですよ、本当に心の底からそう思っていらっしゃらない方もいるかも知れないですけど。今日、ここに来ながらとか思っている方がいるかもしれないですが。（笑）

ハードウエアとしての地域。

犬飼：館としてはどうですか、最終日。

久保：館の課題というのは色々有るんですけれども、今回は犬飼さんが会期中にこうして滞在していただいたっていうのが今一番大きななことで、これだけ長く滞在されていた方は近年ではいないです。

　これでどういった科学反応が起きるのかなというのを我々も若干期待しながらいました。そういう中で犬飼さんからお話を伺い、目の前に藁がありますけども、鹿児島の方からすればなんの変哲もないものが、それが新しい発見であると、そういった違う視点で色んな意見をいただくっていうのはある意味で成果があったのかなと思います。

　鹿児島県霧島アートの森としてもこの湧水町にありますので、地域の方とアートについてもっと触れ合う機会をつくっていくことも考えていますので、そういう意味では今回は１つの橋渡し、最初の礎をつくってもらった方という風に考えています。

四元：それで言うと私も...。
　犬飼さんが１ヶ月滞在するというのは心配でした。しかし、ものすごい勢いで地域の人や、犬飼さんご自身が住んでいらっしゃる町の人と仲良くなって本当にすごいな、と思いました。
　今日も街の人がお別れ会をしてくれると。
　犬飼さんのレジデンスの目の前に住んでる方と犬飼さんはデートしたりしているんですよね。（笑）そういうものすごい勢いでコミュニケーションを取られているのにすごいびっくりしてました。それは意識的にどんどん街を探してやろうみたいなとこがあったのですか、それとも自然に生まれてきたことなのでしょうか。
　どうしてこんな風になったのかなと不思議だったのですが。

犬飼：それは鹿児島のためになんかしろってことでしょ。鹿児島県からお金もらってるから。鹿児島のこと知らないから、１個ずつ見てくしかないから、どうぞよろしくおねがいしますって。それはね、前のスポーツタイムマシンつくったときにやったことだったりするんですよね、安藤さん。

安藤：そうですね。基本、山口も鹿児島も知ってる人がいない場所でやるので知り合いを増やしていく以外に方法ないと思っていました。もちろん館の人たちとは別に

犬飼：今日の話を聞いてて、（市村さんが）建築をつくる側じゃなくて使う側になる。土地があって、そこに来て何か、ダンスだったらプレイの方にやっぱり寄ってると思うんですけど、クリエイトって言うとどっか上から目線で俯瞰しながらこれをこうしましょうっていう風に決めてくようなことだと思うんです。プレイをするってことのが、今日の共通点のような気がしたんです。

　（上からの）ディベロップというかクリエイトと（下からの）プレイ、する、みたいなものっていうのが上から下から有るのですが、ここで共通していることは、「何か作りましょう」という上から目線から行くんじゃなくて、「プレイをすることがつくることになっている」というような出発点をもった人たちがここに集まっている。

　僕のスポーツ共創はスポーツをつくるという文脈の中で「ディベロップレイ」って呼んでいて、「プレイすることが何かをつくってしまっていることになる」「つくっていることそのものが楽しくてプレイをするってことになってしまっている」っていうことなのです。

　そのような共通点がある中で、コンピューターゲームクリエイターである僕はここでプレイをしなきゃいけないので、人も含めた地域がハードウェア。つまり、そのハードウェアの上で僕はプレイをしながら結果的に何かをつくらなきゃいけない、という立場と同じです。

　例えば、スーパーマリオが大地に立ったら、右に空間が有るから右に歩いていく、余白があるならそこに歩いていくって設計になっていくんですが、同じように僕はスタートボタンを押して、始めたばっかりのゲームキャラクターのようにその場を散策していって一人ずつ話しかけてった。子供の頃からやってる、テレビゲームの中でも外でもやってるような作業ていうのをプレイをしてる。それを鍛錬してきたと。
　それをクリエイトな目で見つめながら鍛錬してきてるっていうのが僕らが選ばれてることだと思うのです。わざわざアーティストとして選ばれてる、それは安藤さんも似てると思います。そういうことに日々注力しながら生きていて、それは別に東京でも変わらないです。ここでも変わらないっていうことなので、ここでそれをやろうとしたっていうのが回答ですね。安藤さん、今はフェスティバルトーキョーで大塚にいるのですっけ？

安藤：大塚。豊島区の大塚です。

犬飼：そこでやろうとしてる。ただ安藤さんは酒が飲めて僕は酒が飲めないっていうウィークポイントがあって、鹿児島だと大変なことになってる。

安藤：問題だよね。鹿児島でなんかやるにはね。焼酎飲めないと話にならないでしょ。

犬飼：それだけで説教される感じです。
　ぜひ伊佐にも行って原っぱで僕も戯れてみたいです。この藁を見つけた時と同じように、スポーツつくったりゲームつくったりアートつくったりさせて下さい。
よろしくおねがいします。鹿児島のみなさんありがとうございました。

十五夜綱引きの文化と、
綱をつくるアーティスト。

一ヶ月の鹿児島滞在をした犬飼博士は、鹿児島県姶良郡湧水町の吉松駅近くに宿舎を借りました。その周辺の人々や、鹿児島県霧島アートの森を訪れる地域の方などにあたたかく受け入れられ、鹿児島のこと（暮らしや慣習）についてお話を聞く機会を得ました。
犬飼が鹿児島に到着した時期は９月も終わり、農家の多いこの地域では稲刈りを控えて大忙しの秋。鹿児島が位置する南九州で実は、稲刈りを終えた後に稲を陰干しして藁にし、縄をない、１０月の十五夜にそれを使って綱引きをするという文化があることを、県外から来た彼は知りました。
一ヶ月間鹿児島に滞在をする犬飼博士は、地元の自然農法をする若い農家（内海さん）に出会い、稲刈りから綱引きの縄をつくるところまで全ての行程を行うことを試みました。

以下、犬飼本人のＳＮＳ上に投稿された報告（２０２０年１１月９日）を転載いたします。
※本書の制作にあたり、一部改変しました。

「２０２０年１０月鹿児島県湧水町においての過去の運動会につながるフィールドワークの結果」

犬飼博士

旧暦８月１５日（現在の９月末〜１０月初旬）におこおなわれる十五夜（ジューグヤ）
南九州地方では多くの場所で　つなひきと相撲が行われる。
犬飼は１０月初旬に吉松駅前の８０歳くらいの方々からこれをきいて興味をもちはじめる。
かねてより綱引きの綱をつくってみたいと思っていたため、証言を元にまずは藁をもとめ
地元の自然農法をする若い農家（内海さん）に相談し、稲刈り＞かけぼし＞脱穀（昭和の足踏み型）＞乾燥＞わらすき
という工程を経て藁を分けていただいた。
次はこの藁をいかに綱にするかなのだが、証言では、「子供のころにお爺さんにならってやった」こうしてこうしてと手振りを見せるが、８０歳のかたですら「いや、もうできないよ」という。
その後も幅広い年齢の住人に聞くが手をもごもごしながら「おしえられない」という。
ＹｏｕＴｕｂｅを検索するといくらか綱をよっている動画がみつかる。
もうこうなったらこれをたよりに、やってようとなり１１／３霧島アートの森とその前の湧水グリーンツーリズムのイベントにて、大量の藁を広げて「さてとにかくやってみよう」というワークショップを開催した。

特に集客もしなかったが、みながワラワラと藁によってくる。
藁のよりかたを知っているかたいますか？
ときいてみると、何人か３０代くらいの人があつまってきて藁を上手によりはじめる「昔やったことがあってたしかこんな感じだった」と縄を次々に作っていく。
しばらくその様子をみていて動きをコピーするとなんと犬飼も縄をよれるようになってきた。
ここでピンときた。
「ああ、この動作は言葉では記憶や伝達しにくいんだ、体を通じて伝えるしかないのだ。だからどの人も手つきを行い言葉では「教えられない」と言うのだ」
荒々しい縄だがその場に集まった人で５メートルほどのつなひきに耐えそうな縄ができた。
ワークショップのエンディングとしてその縄で３人ｖｓ３人の綱引きをやってみた。
その様子は動画をＹｏｕＴｕｂｅで公開した。
https://youtu.be/gkV__9IzXcg

結果的にしばらくはもちこたえたが真ん中かちぎれた。これは今後に続きを感じられる良いエンディングだったように思う。
その後皆は藁の山にねっころがって楽しんでいた。
日光と風のなか藁の香りにつつまれ、初めての人たちと話しながら試行錯誤する時間はそれだけでとても幸福だった。その幸福感と藁をよる手つきがわすれられない。思い出すだけで笑顔になるのはなぜだろう。
ぜひ、つづきをどこかでやりたい。
後日くりの図書館で鹿児島の郷土資料をしらべたところ、十五夜のつなひきは最後は切れなければいけない、そのためにカマでわざと切れ目を入れるという記述もみつかる。
また吉松の郷土資料にも写真がみつかり
駅前の住人たちの証言どおりの様子がみられた。

湧水町から始まる一級河川川内川（せんだいがわ）の下流　薩摩川内市で行われる「大綱引き」も有名だ。

ちなみに
十五夜ではつなひきに続き角力（すもう）もセットでおこなれるそれについては別に記すことにする。
このフィールドワークは、鹿児島県霧島アートの森　つくるスポーツするアート展の一環として行い、鹿児島県、アートの森、湧水町、遠方から駆けつけた友人等のたくさんの人々の協力と参加によって行われました。ありがとうございました。感謝の言葉がつきません。

スポーツタイムマシンという環境

スポーツタイムマシン保存会　廣田祐也

出会い

　僕がスポーツタイムマシンと出会ったのは２０１３年夏、小学５年生の時のことだった。それはまさに運命とも言えるような、僕の人生に大きな影響を与えるものだった。はじめは友達に連れられ、展示されていた近所の商店街に行っただけではあったのだが、どんどんとそれで走り記録することにのめり込んでいった。
　「運動することが苦手で不器用な僕でも遊べるのか」「この展示は何なのだ」「電子機器がたくさん使われた装置で遊ぶことがスポーツ（タイムマシン）と呼べるのか」当時の僕には驚きの連続で、その正体に夢中になった。そして何よりも、そのマシン・その会場で遊ぶのが楽しかった。
　１つ目のスポーツタイムマシンの魅力は、「スポーツ」の概念、さらには「ｅスポーツ」の概念を揺さぶってくるところだろう。

「残す」ということ

　２０１３年に２期にわたり展示されたスポーツタイムマシン。しかしその終わりはやってくるものだった。しかし、ただでは終わらせないのが次の魅力、１００年先にも走れるようにスポーツタイムマシンを残そうという呼びかけが始まったのだ。
　僕はすぐにスポーツタイムマシン保存会への参加に名乗りをあげ、２０１３年、２０１４年と保存に向けた会議に参加した。そこでは大人の方の話を聞き、展示をすることはとても大変なことなのだろうと思いつつ、何としてでもまた遊びたいという気持ちが昂っていった。

再走した日

　２０１５年、山口にて２度目の展示が行われた。２年ぶりに走れる喜びに浸り、とても嬉しい気持ちだった。過去の自分と対決し、自分の成長を肌で感じることができた。保存会の仲間が過去の彼ら自身と対決しているのを見るのも、感慨深く感じた。
　２つ目のスポーツタイムマシンの魅力は先にも挙げた通り、この機械を残すことでそれがタイムマシンとなり得ることだ。作品名でも作品説明でも謳われていることをなぜ改めてここに記すのか、それは実際に体験してみなくては本当の価値、本当の感動が味わえないと僕自身が感じているからだ。
　この展示会場では２０１４年、２０１５年のスポーツタイムマシンの動きにつても情報共有がなされた。北海道、香川、鹿児島など日本各地で展示された様子を聞き、全国の走者と繋がりたいという気持ちも芽生え始めた。

鹿児島への道のり

　２０２０年秋に鹿児島での再展示が計画されていることを知ったのは同年１月初旬のこと。この頃は世界中がCOVID-１９でパンデミックに見舞われるなど思いも寄らなかった。
　その後感染が拡大し、このまま開催されるのは無理なのだろうかと一人で残念な思いを募らせ始めた頃、設営準備開始の指示を聞き、安心したと同時にとても嬉しかった。この展示に関わられたスタッフの方々の「それでも最後までやりきるんだ、こんな時こそスポーツ／アートの力でなんとかするんだ」という強い志を伺った時には本当に感銘を受けた。山口の倉庫で行った準備作業にも身が入った。
　山口での準備を終えた僕は当初、後は鹿児島での展示報告を待つのみだと思っていた。山口から距離のある鹿児島に行くことはしないだろうと考えていたのだ。しかし、その後すぐに病気となり気力を失ってしまった僕は、「こんな時だからこそ、小さい頃から自分を楽しませてくれたスポーツタイムマシンで走ったり、現地のコミュニティの方々と関わったりなど、元気をもらいに行きたい」と次第に思うようになった。
　ここで３つ目のスポーツタイムマシンの魅力となるが、機器や備品、展示会場、人などの環境を通じてコミュニケーションが生まれ、コミュニティが形成されていくところだ。「よりどころ」をつくる手助けをしてくれる存在というのは非常にありがたいものだ。
　そしてついに、１０月中旬の鹿児島行きを決めた。

鹿児島での疾走

　山口から鹿児島の山中へ移動し、霧島アートの森に到着した。土地の空気感や野外展示を味わった後、素敵な空間で「つくるスポーツ／するアート」展が開催されていることにより一層気持ちが高まったことを今でも覚えている。
　いざ、展示のある屋内に入ると、大好きなサウンドが出迎えてくれた。そして展示の全景を見た時、大好きな空間に帰ってきたんだという思いになった。
　持参した選手カードや過去の自分のデータをリュックサックから取り出し、操作用のコンピュータへと向かった。データの読み込みが終わり出走準備が始まった時、この展示が実現したこと、そこに自分がいることに対する思いが一気に押し寄せ感無量だった。記録が開始されると一転、「とにかく速く走り過去の自分に勝ってやろう」という一心で走った。気持ちが良かった。その後、記録が終わりリプレイを見て驚いたことがあった。走る速さは上がっているもののフォームが全くと言っていいほど変わっていなかったのだ。身体は大きく成長したものの自分は自分なのだなと改めて実感した。

鹿児島の人々と

　自分が走り終えた後はもっぱら会場中を動き回り、スタッフ業務をさせてもらっていた。鹿児島へ出向いた理由でもあるコミュニケーションをするために、だ。２０１３・１５年の時もさせてもらう機会はあったが本格的に運営に混じったのは初だった。
　閉館まで遊んでいた小学生の男の子は、ひたすら対戦相手のカードを探し、見つけて来ては走ることを繰り返した。人と会話することはあまり好まない子であったが、僕がカードを受け取ってオペレーションをする数十回のやり取りもとても満足した時間だった。彼の姿は、僕が今までには無かった何かを感じスポーツタイムマシンにハマっていった７年前と同じ姿のようにも思えた。
　テレビニュースで展示を知ったという家族は、４世代で訪れていた。スポーツタイムマシンの理念である「記録して未来へ残すこと」や「タイムマシンであること」を説明すると、小さな赤ちゃんもお母さんと一緒に走り、記録を残して帰っていった。後に大きな意味を持つ記録となることだろう。
　ある中年の男性はカンガルーと対決した。跳びながら走った彼はその後、自分のリプレイを見ながら「僕もカンガルーのように走ってみた」と笑顔で楽しそうに教えてくれた。その話を聴いた全員がほっこりしていた。
　まだまだ書ききれないほどのやり取りがそこには存在していた。全ての出会いやコミュニケーションに感謝したい。

最後に

　僕が山口へ帰った後も文化の日の記念行事などが行われ、無事に展示は終了したようだ。今回の展示でスポーツタイムマシンを走った方々、展示を成功させた関係者の方々には感謝の気持ちでいっぱいだ。
　またいつか、どこかでスポーツタイムマシンが展示され・設置され・常設され・新たにつくられ……人々にとっての良い環境（道具）として存在していて欲しいと切に願う。
　そのためにできることを一人のファンとして、一人の保存会メンバーとしてこれからもや活動していきたいと思う。

（画像提供;犬飼博士 氏　安藤僚子 氏）

廣田祐也
２００２年生まれ。山口県内の高校に通う１８歳。小学生の時に山口情報芸術センター[YCAM]の１０周年記念祭で「スポーツタイムマシン」（犬飼博士、安藤僚子）と出会う。現在は、任意団体 文化祭協会 代表理事、スポーツタイムマシン保存会メンバーなど。

私にとってのスポーツタイムマシン

ＮＰＯ法人ＰａｎｄＡ　早川由美子

　いわゆる「現代アート」が何なのかもわかっていないまま、２００４年に文化芸術活動の振興や支援を謳いＮＰＯ活動を始め、２年経つ頃には、すべての作品に触れて楽しむという、その頃にはまだ異端の展覧会を開催する程、「現代アート」と関わっていた私。社会派美術、インスタレーション、レジデンス、アートプロジェクト・・・立ち現れる現象や作品が面白く、初めての言葉も目まぐるしい現場ではすんなりと頭にも心にも入っていった。

　２０１３年に、有志と共に行政とＫＣＩＣ（かごしま文化情報センター）を作って、飛躍的に「現代アート」とその周辺の世界が広がった。広い世界を持つ人との出会いは、まるで宝島に行き着いたようだった。四元さんがＫＣＩＣのチーフを引き受けてくれていなかったら、２０１５年の国民文化祭（国文祭）メディア芸術祭鹿児島展の受入れを私は引き受けなかったと思う。ＫＣＩＣの活動が始まってからそれまで、新しい作品と世界観を多く引き寄せてくれた彼女を通して、メディアアートをもっと知りたい、この面白さをもっと多くの鹿児島の人たちにも知って欲しいと思ったからだ。
メディア芸術祭受入れのために、国文祭メディア芸術祭の先催県視察にも行かせてもらい、メディア芸術祭鹿児島展の候補作品も含め、本当に多くの作品を観た。そこには、それまで違う世界と思っていたゲームやテクノロジー、医療などが融合した絶妙で心を捉えて離さない作品との出会いが待っていた。

　鹿児島展の作品を決める時、本当にどれも来て欲しい作品ばかりだったが、「スポーツタイムマシン」だけは必ず入れて欲しいと思った。インタラクティブアート含め、時間を刻んだり可視化する作品は多くある。けれど、未来を楽しみに思ったり、過去とリアルに対峙できたり、異類婚姻譚の世界のごとく動物や実在しないキャラクターたちと同じ土俵で競い合うなど、そのロマンあふれる作品性に、子どもから高齢者まで、何の準備も要らず「走る」という行為でアクセスできるという「遊び」のようでありながら広く深い作品にひとめぼれしたからだ。リアルに観てはいなかったけどひとめぼれ。メディアアートの面白さをもっと多くの鹿児島の人たちに知ってもらうきっかけとしては、候補の中でこれ以上の作品はないと思った。

　鹿児島展の２０日間の会期で、１，０００人以上の人たちが「スポーツタイムマシン」を楽しんだ。わざわざ問い合わせてきてくれた車椅子の方もとても楽しそうだった。雑巾がけ走りやバック走行など、走りのアイデアも楽しみ方も子どもたちの中で毎日のように新しく生まれていた。新しい遊びや作品のヒントがあちこちにあるように感じた。何とかこれを未来へ繋ぎたいと心から思った。

　「スポーツタイムマシン」はその気持ちをも、救い上げてくれる作品となった。５年後に決まっていた国民体育大会（国体）鹿児島大会にも「走る」作品は意義ある存在としてきっとその役割が見出せるはずと、「スポーツタイムマシン」の懐で、県国体準備室へのバトンタッチとしての行進を記録した。パフォーマンスをリアルなバトンタッチとして実現するために、国体準備室はもちろん、数年にわたり関係する部署や人を訪ねては、「スポーツタイムマシン」の話をした。今や、メディアアートのひとつではなく、１，０００人以上もの鹿児島県民が関わった作品の当事者であることも。

　そして、５年後の２０２０年。もう消えかかっていたバトンタッチの細い糸を何とか結べたと思っていた矢先に、行われるはずだった国体鹿児島大会は、東京オリンピック・パラリンピックの延期に合わせて無期延期（２０２１年現在は２０２３年に確定）となってしまった。それでも、「つくるスポーツ／するアート展」を２０２０年に開催して、再び鹿児島の地に「スポーツタイムマシン」を出現させることを決めた。作品の当事者である５年前に走ってくれた人たちをはじめ、今ここに生きるすべての人に向けて「スポーツタイムマシン」の再来が、別な大きな意味を持つと思ったからだ。
５年後の未来が現実となる様(さま)を作品を通して感じるという、「スポーツタイムマシン」の作品性も検証するような今回の展覧会は、どの角度から切ってもたくさんの思いで胸がいっぱいになった。

　ロマンあふれる、つまり夢と希望にあふれた未来を子どもたちに見せることができたのか。
そこに確かに存在する過去の自分と対峙して未来へのエールとなったのか。

　マシンは、記録を大切に保管し再生し、忠実に応えてくれた。未曽有の混乱状況にあったのは社会の方で、人類におけるその責任は大きい。だからこそ、夢と希望を詰め込んだ「スポーツタイムマシン」は、５年前の約束通り、目の前に立ち現わせる必要があったのだ。

　犬飼博士さんと安藤僚子さんによって生み出された作品「スポーツタイムマシン」は、その軸に、人間に対する底知れない愛と賛歌を感じる。哲学的とも捉えられるけれど、もっとそれは熱を帯びている。「スポーツタイムマシン」に限らず、彼らの作り出す作品や場、空間は、みんなと一緒に未来を見てみたい！みんなと一緒に明日もその次の日ももっと生きてみよう！と思わせるエネルギーを伝播させているように感じる。それは、使命とか権利とか役割とかではなくて、「もっと遊ぼうよ！」という心根に起因していて、すべてを解放するような、すべてから解放されるような気づきをも含みながら、いつの間にかすり寄ってくる遊び心という「救いと許し」なのではないかと思う。

早川由美子
ＮＰＯ法人ＰａｎｄＡ　理事長
鹿児島生まれ。独学で絵の勉強をする。２００３年アーツマネジメントを修得、実例研究後、２００４年文化芸術支援ＮＰＯ　ＰａｎｄＡを設立。翌年法人化、２０１０年からＮＰＯ法人ＰａｎｄＡ。障害者アート支援活動の他、展覧会やワークショップ、アートプロジェクトなどをプロデュースし、独自カリキュラムで養成する文化ボランティアと共に、人や地域の新たなつながりや魅力を引き出すさまざまな事業展開を経て、文化行政への参画や人材育成など土壌作りを続けている。

「搬入プロジェクトを経験して」

鹿児島大学工学部建築学科 CARRY-IN-PROJECTチーム
井上紘太朗、佐藤由奈、比嘉秋野
聞き手：市村良平、四元朝子

四元：去年の秋はどうもありがとうございました。「つくるスポーツするアート」展ではいろいろ挑戦的なことが実現できました。

市村：搬入プロジェクトは、普段、大学で用途のあるものを設計しているのと異なると思いますが、このプロジェクトを初めて聞いた時、素直にどう思いましたか？

比嘉：やっぱり最初聞いたときはモニュメントみたいなイメージだったのでなんか建築とはまた違うものだなと言う印象でした。ただ関わってみると構造的なことや接合の仕方など建築に近いものを学べました。ベクトルはことなりましたが、逆に楽しくてが私としてはとても充実度が高かったです。

市村：ちなみにどのあたりが楽しかったですか？

比嘉：実際に手を動かしてあの大きさのものができるということです。実はこのプロジェクトの前にマスクケースを作っていて、小さいものを作ることはしていたため、そのスケールの差が感じられてとても楽しめました。

井上：僕も、比嘉さんと同じで、マスクケースであったり、また、趣味で絵を描いてるのですが、今回はそれらと比べ大きなものであったこと、また、建築は基本的に“静的“なものですが、今回のように“大きな、動かす、ものを作る“という取り組みが初めてだったので自分達に「できるのか？」という印象で、不安でした。



概念が覆された

市村：井上さんは、今回のチームのリーダーになってくださいましたね。

井上：リーダーになろうと思ってはなかったのですが、会議に遅れていて、丁度リーダーを決めるタイミングで参加しました。誰もリーダーにならなさそうだったので、逆に「良い機会だな」と思いやることにしました。昔、高校の部活とかでもまとめ役をする機会が多かったので、今まで通りにやろうと思った感じです。

佐藤：私は「こういうプロジェクトがあるから先生から参加してみないか」という話がありました。その後、自分でも調べて動画を見てみたのですが井上さんも言ってたように、建物というのは基本的に動かないですし、展示時作品はその搬入できるような大きさを作る、もしくは展示室の中で制作するのが私の中で当然だろうと思っていたこと、その概念が一気に覆された感じがしてすごく純粋に「面白そうだな」と思ったのが第一印象でした。

市村：ちなみに先生はどのような感じで説明してきたんですか？

一同：笑

佐藤：外で作ったものを 中に入れて行くという感じだったとおもいます。最初、私は、外で作ったものを小さくたためるようにしたあとに、空間の中に入れてまた元の大きさに戻して展示するのではないかと自分の中で解釈したんです。しかし実際に調べて動画などを見てみると、全然…、「そもそも空間に入らないのではないか？」というような大きさのものを作って入れるっていうのに驚きましたが、それがこのプロジェクトなんだなあって思いました。

市村：参加してない学生の反応はどうだったのかというのも気になっています。「何やってんの？」っていうのを感じだったのかとかも想像しますが…、いかがでしたか？

井上：一番最初に、物体を製作するための工法を検討する段階で友達にいろいろと相談しにしたのですが、内容を説明した時、それこそ「何やってんだ？」というリアクションはありました。（笑）でもだんだんと「おもしろそうだね！」っていう反応が結構出てきましたね。

比嘉：それこそ「何それ？」という反応、そして「搬入してそれをどうするの？」と言う感じで。（笑）「いや搬入するのが見どころなんだよ！」と説明しても「ふうん…？」って感じが多かったです。なので「まあ見てくれたら一番伝わるのかな」と。でも実際見に行ってくれた人もいたみたいで「面白かった！」という声とかはいただいて嬉しかったです。

佐藤：そうですねなかなか伝えるのが難しいなという印象は受けました。理解はできるけど「それがどう面白いんだろう？」っていう。でも家族に、このプロジェクトが建築資材の荷揚げ職人さんの美しさから発足したというのを伝えたら「職人さんの技術の美しさに着想したのがすごく面白いね」という話になりました。

参加のきっかけ

市村：今回は、希望者を募る挙手制だったと思いますがやってみようと思った動機はなんですか？

佐藤：純粋に自分がアーティスト側になるという経験はなかなか出来ないことですし、これからもこのような機会って無いだろうと。元々、作品の製作や、展示に興味がありました。

市村：それはご自分の就活と関係があったのですか？

佐藤：自分の興味のある分野ではあったという感じです。

比嘉：私はそもそも美術館に行ったり、インスタレーションを見たりすることが好きだったので話を聞いた時に「楽しそう」って あまり何も考えず楽しそうと思って参加したって感じです。そして佐藤さんがおっしゃってたように自分がアーティスト側に回れるという機会もないので参加してとてもよかったなと思ってます。

市村：アーティストの気分になれましたか？

比嘉：あまり実感はないのですが、展覧会のクレジットに自分たちの名前があったときは嬉しかったです。

井上：2人と同じような感じですが、最初は純粋に楽しそうだなという興味本位から入りました。そして、学生の間に自分が作った作品が美術館に展示される経験は貴重ですし、他人に評価してもらえるという機会は搬入プロジェクトしかない！と考え参加したいと考えました。また、ゴードン·マッタ=クラークという現代アーティストがいるのですが、彼は世間でありふれている何もないところに美しさを見いだしており、共感しています。その考え方とこの今回の搬入プロジェクトの荷上げに美しさを見出すというところが似てると思い、「面白い、やろう」と思いました。

ただ「物体を作る」という以外は
何も決まってないスタート

市村：設計〜施工〜搬入といろいろな段階があったと思いますが、それぞれで難しかったことや苦労したことはありますか？

比嘉：最初は模型で検討しているので実際に立って見た時にこれがどうなるのか、こわれないかとかいう部分がとても心配でしした。そもそも単純な構造計算はしか知らないので、実際、物体が立ってみないとわからないという怖さが１番にあって。考えて施工してはいたのですが「もう現場施工でその場で合わせていこう」という話になり、常に頭を動かしながら手を動かしながらコミュニケーションをみんなで取りながら進めて想像していたものと実際に出来るもののイメージの差ができるところが今回の難しさだ思いました。

市村：そうですね、搬入してる時とかどうでした？

比嘉：想定では作った物体を運ぶ時にそんな高く上げないつもりだった部分を、みんなで高く上げてしまい、ねじれが生じてとてもヒヤヒヤしました。（笑）みんなでイメージを合わせるというのはとても難しいと思いましたし、それが実際現場でやっているからこその面白さでもあると感じました

佐藤：設計段階でいうと、ただ「物体を作る」という以外は何も決まってないので、「何から考えていったらいいか？」っていう難しさがありました。建築設計の課題となると、敷地や機能など条件が複数あり、そこから形を考えて作ることが多かったのですが、今回は「どんな形でもどんな色でもどんな素材でもいいからとにかく外から中に入れる」というそれだけだった。そこから「まずどうしよう…」と。１番難しいなあと思いながら、模型を作って手を動かし、またこれまでの搬入プロジェクトの作品を見て、ちょっとづつできていったという感じでした。
そしてやはり施工してる段階では、比嘉さんの言う通り、構造を知識としてではなく実際の形にしたことがなかったため、完成形を想像するということが難しかったです。実際に作っているとやはり学生の私たちだけだと知識も経験もないので、周りの方や職人さんの意見やアドバイスをいただけたのはとても大きな助けとなりました。搬入の段階は、想定していたよりも力が入らなかったり、ひとりひとりのちょっとした動きとか位置が作品を思いもよらない方向へと動かしてしまったりと、作品に触れる人の動作がダイレクトに伝わるので、そこの調整や息の合わせ方が難しいなって思いました。

市村：私が聞いたところ、先生たちは「みんな出来るでしょ」とおっしゃっていました。あれは、自分が学生だったらできないなあと思ってみていました。

比嘉：プレッシャーを感じました。

市村：実際計算したんですか？

比嘉：一応、モーメントを考えました。ここに全部力がかかると考えて…という感じでざっくりとした計算しかしてないですね。

市村：それでも計算したんだと思ってびっくりですね。井上さんはどうですか

井上：僕はリーダーという役割があり、また、設計の段階でコンペをした際、僕の案が採用されたので設計に対してはとても情熱をもってやりました。ただ、構造や施工などわからないことが多すぎて…、先生やいろいろな方に相談していろんな知識を得ることができました。また、そこが難しかったですがとてもやりがいを感じました。
また、全体を通して人を動かすっていう立場にあったのでそこは特に難しく、手探り状態で大変でした。実際に搬入をした時は30人ぐらいの人がいて、搬入する方法のイメージをその場その場で言葉や動きで伝えるというのが難しかったです。ですが振り返ると達成感があり楽しかったなと思いました。

市村：搬入の時はかなり焦ってましたよね？

井上：そうなんです、しょっぱなから動き間違えたりして…笑

市村：いい経験になったと言ってくれるのであれば良かったんだと思います。


多くの人々が搬入物の制作をサポートしてくれた

四元：わたしからひとつ質問していいですか。私自身は建築のことをあまり存じ上げないのですが、今回拝見して物体の製作については本当にたくさんの知識がつまっている印象を受け、ただただ「すごいな」と感動して見ていました。大学にはたくさんの専門知識を持つ先生がいらっしゃると思いますが、どのような先生にご相談したのですか？

井上：構造の先生に途中で相談しに行って接合部をどのようにすればよいかアドバイスを聞きに行きました。

市村：構造に関して、悪魔のしるしの石川さんがビールケース工法の中では新しいやり方と言ってましたね。中でワイヤーでひっぱっているという。

四元：そうそう、安藤さんが搬入する日の朝に「これすごいよね！」って言ってたんです。
そしてもうひとつ質問なのですが、山口から手伝いに来た人が刺股（さすまた）の種類の多さにびっくりしていました。山口の方が刺股を１本持って帰りましたよね。どうしてあれだけ多くの種類を準備する話になったのかなって気になってます。

佐藤：先生から「展示空間の大きさは限りもあるので、長い刺股ばかりだと、逆に物体の高さをあげられなくて使いづらのではないか？」というアドバイスをいただき、３種類の刺股を作って用意しました。そして前日の物体が完成する直前に、それらの刺股を見た老谷さん*から、「この先端のＵ字の片側だけ短くした方が使いやすくなるよ」とアドバイスをいただき、種類を増やしました。

市村：ちなみにその搬入している時にこれは想定外だったみたいなことってありますか？

比嘉：刺股が結構曲がって壊れてしまったのは予想外でしたね。

市村：確かに、脚立で支えている時もありましたね。

佐藤：想定外でいうと、もう1つ。搬入当日について当初は、私たち学生と先生にプラスして悪魔のしるしの方達数名ぐらいの人数で行けるんじゃないかって思っていたのですが、全くそんなことがなかった。（湧水町役場の方など）たくさんの方に参加していただくことができて、よかったです。今思えば（少ない人数で搬入しようとしていたのは）危なかったなあって思います。

井上：僕は、模型を使って何度も搬入方法を検討していたのですが、当日は意外と入らなくないか？ということがあって。最初の建物の入り口のところで物体がねじれたり、植栽の木にぶつかったりと、細かいことですが意外と動きがすんなり行かなかったというのもあります。

*地元湧水町の老谷家具の老谷さんがサポートに入ってくださった。

いま、振り返って思うこと

市村：いま、プロジェクト全体をこう振り返った時にの感想をお聞きできますか？

井上：僕自身が卒業設計で“祭り“をテーマにしてみんなでお祭りの山車を運ぶという計画を提案しました。その祭りの雰囲気と搬入プロジェクトは結構似てるなと考えていて、それはみんなで考えながら搬入物を作ったり運んだりしている時に感じました。様々なバックグラウンドを持つ人が混じり合って１つの事をするということを搬入プロジェクトではできた思うのですが、それが僕自身の卒業設計で考えてきたこととリンクし、実際に出来たのではないかと思います。今*は就職活動中ですが、社会に出ても今回のようなイベントや仕事が出来たらいいなと思いました。

市村：またやりたいと思ってますか？

井上：機会あったら全然やりたいですね。

佐藤：本当に楽しかったしもう搬入ができたときはとても感動しました。もちろんうまくいかないところもあったり、悪魔のしるしの作品は途中で折れたりもしたので、単純に「搬入を成功させる」ことを考えたら次はもっと精密に検討することで成功率を上げることができるかも、と思いました。しかし、このプロジェクトを振り返ると、「ひとの力で運ぶ」というのが大きな魅力だとおもいます。ひとが運ぶから思うように力が入らなかったり、ひとりひとりの力具合で思いもよらない方向に曲がったりということが発生するので、一緒に前へ進んで展示するということが今まで見たどんな作品よりも“人間っぽい”、作品そのものに人間味があるなと思いました。私はこの春から社会人になり、展示空間に携わる仕事に就きます。今までは内装空間は建物の躯体は関係なく内側だけを創るという意識がありましたが、建物の躯体の形にも影響を受けるということに気づきました。また、外から中に入れるという中だけで完結しない搬入プロジェクトが展示空間の可能性を広げているのではないかと思いました。私の仕事も空間の内側だけではなくて外側にも携わっていけるのではないかなという希望をもてたことも含めてとても良い経験だったと思います。

比嘉：純粋にイベントや展示空間が好きなのでみんなワイワイとこのイベントに関われたというのが楽しかったし嬉しかったというのが率直な感想です。また、このプロジェクトを通して、スケジュールを決めてきっちりやって行くことも大切なんですけど、やはりやってみて違ったことも多々あるので柔軟に対応して行くのが大切だという経験ができました。実際にモノを作るっていう経験を学生の間にできてよかったと思っています

市村：僕もこの空間にどういう形を搬入しようかというのを日常的に考えるようになってしまってちょっとやばいなと思ってます笑

四元：悪魔のしるしの方達と交流はできましたか？

佐藤：なかなか時間がなくて悪魔のしるしの製作を見に行けなかったのです。それは残念だったのですが、悪魔のしるしの方々は様子を見にきてくださって、話しをたりアドバイスもらったり出来てとても楽しかったですし、一緒に搬入できたのは楽しかったです。

四元：同じ霧島アートの森内でも、製作場所が離れていましたもんね。

井上：石川さんや鹿児島県霧島アートの森の方や市村さんと打ち合わせの機会が何度かありそこで、このような作り方をやったことがある、とか、こだわっているところを教えてもらったりしました。

比嘉：自分たちはビールケースでやっていたのですが、悪魔のしるしのみなさんは木（もく）で自由にいろんな形作っていたので、いいなというところはありました。笑 先が尖っていたり、形が素敵だなって思いながらやってました。

四元：そうですね、ビール工法できないって言ってましたっけ。

市村：というか、ビール工法はあまり効率的じゃないというのを山口情報芸術センターの星郎さんも言ってましたね。

四元：でもビールケースでできてしまって感動しましたね。

市村：あと、菅野さんが最後に終わった後に「搬入やると興奮するね」とか言ってて、あれはやばい人だなと思いました笑
何かしらのこう快楽感を覚えているっていう...。

四元：私は、「あぁ、素敵な風景だな」って忘れられないことがあります。鹿児島県霧島アートの森の建物の裏から、搬入する入り口の方に、悪魔のしるしの人や守衛さんなどみんなで助け合いつつ目の前の木をくぐり抜けながらその大きな搬入物を運んでいたんです。その時に石川さんが「もうこれが究極の民主主義だ！」って言ったんです。わたし、感動して。コロナ禍で政治に社会に、みんながいろいろな思いがある時に「あ、民主主義ってこういうことなのかもしれない」って思ったんです。身を持って体験した瞬間でした。笑

市村：先生から聞いたんですけどなんかやってる最中になんかメンバーがちょっとなんか雰囲気悪くなった瞬間があったって聞いたんですが、そんことがあったんですか？

比嘉：ありましたっけ？

井上：僕が途中で疲れ果ててあまりよくない雰囲気を出してた気がします。笑反省してます。笑

市村：ではみんな疲れただけですかね。

比嘉：先生が「もう自由にやってください」という感じだったので、客観的に見て楽しんでたのかもしれませんね。

四元：先生は見ているだけだったのですか？

比嘉：都度、アドバイスをいただいたのですが、基本「自由にやってください」というスタンスでやらせていただいてました。


搬入プロジェクトが外と中をつないでくれた

市村：搬入プロジェクトをやって、またはアーティストと一緒にプロジェクトをやって価値観変わったこととかってありますか？

比嘉：（建築現場の方が）資材を運ぶのを見てこのプロジェクトができたという話をお聞きし、その着眼点が面白いと思いました。わたしもいろいろなところに目を付けようと思うようになりました。価値観でいうと、小さいものにも着目して全体ができているというイメージが着きました。

佐藤：内装空間というと建物を作る建築の人から見るとまだ認められていないような感じがしていました。就職活動をしている時に会社の方も「まだまだやっぱり世間的には知名度の低い業界だからこれから頑張っていきたい」とおっしゃっていたり、大学でも「内装よりも建築をつくるほうがいいでしょう」という考えの先生もいて。自分でも建築と内装とどちらの仕事がいいのか悩んだ時期もあったのですが、搬入プロジェクトに携わって自分のやりたいことに自信がつきました。内装とはいえやはり建築の外側との関わりはあるということがわかったし、搬入プロジェクトが外と中をつないでくれたみたいにまだまだ可能性があるのではないかなと思えたのが良かったと思います。

市村：ありがとうございます、なんか嬉しいですね。

井上：空間と建築をルビンの壺みたいに物事を反転して考えるという所に面白みを感じ、物事を反転して考えることの大切さを勉強できたと思っています。あと先程の祭りの話と一緒になりますが、全く違う価値観を持った人たちと一緒に何かするっていうことがとても楽しく、これから社会に出るにあたりとても意味のあることなんだろうと思いました。

佐藤：また機会があればぜひ参加したいです。

市村・四元：嬉しいですね、いろいろいいお話をお聞きできました。今日は本当にありがとうございます。


※収録２０２１年２月８日時点

「搬入プロジェクト」
鹿児島大学バージョン

鹿児島大学大学院理工学研究科准教授　柴田 晃宏

　２０２０年夏、鹿児島大学建築系学生有志と共に「搬入プロジェクト」に取り組んだ。
建築内の室空間は扉を介して内外を行き来する。扉は室の断面よりも小さく、通常の片開き扉は幅約１ｍ×高さ約２ｍ程度である（両開き扉なら幅は倍）。扉の大きさは通り抜ける人体の寸法だけではなく、開閉時、我々が行動する軌跡などからも決まってきている。小さくては通り難く、大き過ぎると開閉に労力が掛かり開け難くなるため、適切な寸法に収斂している。
　「搬入プロジェクト」は、この様な扉を通って室内に最大限の物体を搬入するインスタレーション（パフォーマンス）であり、そして、建築の楽しみ方を１つ追加するものだと思う。
引越等でベッドやピアノなど室内に大きな物を入れる際に、扉を外したり、遣り繰りを工夫したり、或いは窓から入れる等、苦労した人は結構いるのではないだろうか。
　建築の設計段階から室内に大きな物を入れることが分かっている場合は、それを想定した大きさの扉やダメ穴（施工時に物を搬入して、竣工時までに穴を塞ぐ）を考える。機械室などはメンテナンスでの機械の入れ替えを考慮してマシンハッチを付ける場合もある。或いはデザインとして、アルヴァロ・シザのマルコ・デ・カナヴェーゼス教会のように大きな扉を付けることもがあるが、これは特殊な例で、通常は、前述の様に人が開け閉めし易さを考えるとそれほど大きな扉にはならず、通常の生活では室内のボリュームよりも小さい扉で何の問題もない。しかし、扉の向こうの室内には扉以上の空間が控えており、ボトルネックを発生させている。「搬入プロジェクト」は、多くの人が気にもしない、この建築上の問題を浮かび上がらせてくれる。

　どれだけの大きさの物を搬入できるのか？、どの様に動かせば最大限のボリュームを搬入できるのか？、パズルを解くようである。扉は小さいのだから、細長い物体をらせん状に回転させながら搬入するのが効率が良さそうである。これまでの実例も、この手法に即しているように思われた。とすると問題点となるのが、運び手の位置（間隔）である。これは建築の構造力学での支点間距離になる。当然、距離が長くなれば、運び手に掛かる重量の負担は大きくなるし、搬入物体自体にも強度が必要になる。運び手の間隔を詰めれば済むという問題ではない。何故なら、らせん状に回転させながら搬入するのだから、物体は上方向にも立ち上がる、運び手は宙に浮けないから、支点間距離は否応なしに開いてしまう。また、今回は搬入する物体を焼酎ケースを繋ぎ合わせて制作しているが、焼酎ケース自体の強度以外にどの様にジョイント（接合）するのかも問題になる。これまでの実例では、強度的にベニア板を接合部材として使用する手法が良かったようである。大きな物体にするには強度が必要であるが、ベニア板の強度を増すには厚みが必要となり重量も増してしまう。結果、更に強度が必要になるというジレンマに陥る。
以上のような事が、最初のミーティング時に頭を過ぎった。とても大変で楽しそうだ。

　さて、学生達に一通り考えられる問題を説明し、デザインに取り組んで貰った。霧島アートの森の展示スペースへの経路、形の面白さ、搬入時にダイナミックな動きがあるか等を考えてスタディを繰り返した。
　最初、焼酎ケースの接合には、鉄筋コンクリート工事で使用する鉄筋仮留め用の番線を利用する方法を考えていた。
　実際に焼酎ケースをお借りして、ジョイント部分のモックアップを製作し、強度の確認をしてみたところ、細い番線では強度が足りず、太い番線は施工性が悪かった。そこで、ワイヤーを焼酎ケースの中に通してターンバックルで締め、張力を掛ける方式を併用することにした。これは建築のプレストレストコンクリート梁の原理である（私が学生の頃、構造の先生が麻雀牌の例で説明してくれた事を思い出し、今の学生達に同じ話をした）。
　搬入する物体の大きさや運び手の位置（支点）は、建築構造力学の梁計算を援用して算出し、焼酎ケースの素材から部材強度を仮定して、ワイヤの太さや角の役物を製作する際のビスの本数などを導き出した。更に物体上部の部分を支持するために刺股状の道具も考案した。
　実際に作ってみると、そこには、頭で考えている（机上の）設計では分からない事が色々と見えてくる。

手が入って施工できるか？、焼酎ケースは使用品なのでプラスチック劣化による強度低下がある、焼酎ケースのスタッキング方向を考えて各部材の組合せを考えなければならない、角の接合部にはベニア板の役物を製作した方が良い等々。
感覚で考えたことを計算で裏付けたり補正したりしていく。Ｔｒｙ　ａｎｄ　Ｅｒｒｏｒ、まさにエンジニアリングデザイン教育である。
学生達は座学で勉強してきたことが実際にどの様に役立つのかを実感できたと思う。
不明な点を構造の先生に聞きに行ったりもしたようである。楽しく学ぶ事を搬入プロジェクトが実感させてくれた。
　さて、検討すべきを検討し準備を整えて、本番の製作するために現地入りした。
製作を開始した１日目は接合のための部材作りと梁に相当する部材までの製作で順調に終わった。ちょっと拍子抜けであった。初日、私は大学での業務があったため、あの調子なら大丈夫だろうと学生達に後を任せて、鹿児島に帰還した。しかし、甘かった。２日目、各部材を繋げて行く作業に入って、トラブル発生である。ワイヤーの長さが足りない。ターンバックルの数が間違っていた。学生達に不穏な空気が流れたが、何とかトラブルを乗り越えたようである。教員が居なくても何とかなるものだ。搬入搬入当日、現地入りして完成した搬入物体を見た時には感動した。恐らく学生達が掛けたエネルギーが宿っていたのだろう。そして、搬入が始まる。刺股が重量に耐えきらず破損したり（刺股の強度は計算していなかった）、搬入手順に少し手違いがあったり、何回か困難な場面もあったが、無事、搬入することができた。展示会場に搬入された物体を見た時にもまた感動した。搬入によって運び手や観覧者のエネルギーが更に付加されたようだ。
建築を作るに当たって、トラブルが幾つも起こる。設計時でも施工時でも。それらに如何に臨機応変に対応出来るのか、頭の柔軟性が問われることは多い。搬入プロジェクトはまさに建築だった。

柴田 晃宏　１９６８年生まれ　
１９９０年　大阪大学工学部建築工学科卒業
１９９２年　東京工業大学大学院修士課程修了
１９９２年　デザインシステムにて建築家　清家清に師事
１９９９年　一級建築士事務所ｉｋｍｏ設立
２０１０年　東京工業大学大学院博士後期課程修了（博士（工学））
２０１０年　小山工業高等専門学校建築学科　准教授
２０１３年　鹿児島大学大学院理工学研究科建築学専攻　准教授（現在に至る）

「搬入プロジェクト #２４ 鹿児島・霧島アートの森」を振り返って

悪魔のしるし／建築家　石川卓磨

　取り返しのつかないことを、いつしでかすだろうか。そんなことが頭の隅に宿ってからずいぶん経つ。
何度も繰り返してやるたびに、確信していくことがある。それは搬入プロジェクトはチキンレースだということだ。搬入の難易度は自分達で設定できてしまうので、やるたびに何かに挑戦していないと自分に失望する。そのため新たな課題なしに搬入をすることはできない。永遠に続くエスカレーション。経路が長い、形が複雑、巨大化、重くなる、新しい素材、工法、形状、生演奏付き。足し算的に挑戦するべきことはいくらでもある。逆に、どこまで軽量化できるか、作業の省力化をどこまでできるか、というような引き算的なチャレンジもまた存在する。今回は適当にやります！…みたいなことは許されない。許したくない。満足できない。誰に許されないかというと、過去の自分にである。そんなわけで常に負荷がかかり続ける。しかし、何かに挑戦していることには外から見ている分には気が付きにくい。側から見ると、一体この人は何に苦しんでいるのだろうと見えることだろう。そして、声がかかると、いろんな場所に行きたいので、ついつい行ってしまう。

　自ら設計、施工した物体が搬入中に壊れるなんて、建築家のはしくれならば、最も避けなくてはいけない不名誉な事態であり、信用失墜行為である。その不名誉な行為を2回連続でやっているあたり、本当にどうかしている。今回は強度不足の部分がポッキリ折れてしまった。怪我人もでなくて、建物に傷をつけないで本当によかった。予算が少ない、時間がない、などと言い訳してはいけない。しかし今度こそ壊れないように頑丈に作ろうとやってみると、どうやっても入らないので切断する羽目になったりするので手に負えなかったりもする。

　鹿児島・霧島アートの森での搬入では、幸運なことに、鹿児島大学の方々が見事な搬入プロジェクトを実施してくれた。
焼酎ケースは決して構造体に向いているものではないのだが、鹿児島といえば焼酎は外せないと、敢えて焼酎ケースでの製作に挑み、焼酎ケースが露出するように配慮したり、角度によっては焼酎ケースが鹿児島の「Ｋ」と見えるように設計するなど心憎い企ても見られた。ディテールは全て新設計。複雑な角度の接合部も、意匠優先でそこに工法を追っつけていくという正しい姿勢。高い場所で支えることが多くなることを考慮して、様々な長さの自作のさすまた棒が活躍した。多忙の中、短い時間で実験を繰り返し、試行錯誤しながら物体を組み上げていく様子はもはや尊かった。
コロナ禍であり、遠方ということもあり、遠隔で状況を伝え合いながらの準備期間を過ごした。今回は鹿児島大チームと悪魔チームがそれぞれの物体を製作する、という体制だったので、物体に特色がはっきりと出た。総勢１０チームくらいでやってみても面白いかもしれない。その時は人的資源の浪費が激しいのでもう少し小さめの空間で、小さめの物体でも良いだろう。実現は叶わなかったが、地元の方々の技術を活かした、藁で装飾された物体も是非見たかった。
今回参加してくれた方々や、目撃した人の中に種が宿って、いつかどこかでふと、搬入プロジェクトをやろうかな、と芽を出してくれることを願ってやまない。

　宰の危口が他界してから、自分の役割は搬入物体の設計監理者から少し変化しているように思う。以前は、エンジニア的にこのプロジェクトを支えていた自負があったのだが、最近は側にいて最初から最後まで見届ける人、のような気持ちでいる。よいのか悪いのかはよくわからないのだが、あまり責任を負い過ぎないような心持ちになり、以前よりも気負いが減った。不思議なものだ。搬入に成功とか、失敗とかにはあまりこだわらない。そもそも、成功とか失敗とかはあまり関係ない演目なのだ。タチの悪いことに、成功しても失敗してもそれはそれで盛り上がってしまう。過去に搬入できなくて切断して以来、予定調和でやっていないことが周知され、ますます劇的になっている。毎回リハーサルなしの一発勝負である。いろんな人を巻き込んで公演ができたならば、もうそれで十分である。

そう考えると、搬入プロジェクトとは一体なんなのだろうか。
アートなのか、スポーツなのか。
演劇なのか、空間芸術なのか、パフォーミングアーツなのか。
建築なのか、彫刻なのか。
遊びやゲームのようにな何かか。
祭りなのか、労働なのか、なんなのか。
そんな議論をまだ見ぬ人たちとできたら何よりである。

おそらく、悪魔のしるしは早く搬入プロジェクトから手を引いた方がいいのだ。このさきは崖から落ちるだけ。取り返しのつかないことをしでかして、二度と搬入プロジェクトができない団体となるしか終わり方がないだろう。とはいえ、お声がけをいただいたら、懲りずにいつでも搬入はやりたいと思っている。
著作権を放棄したこのプロジェクトに対して、これからも悪魔のしるしはいちプレイヤーとして、意見交換したり、時には観戦したり、時には搬入したりもしながら、プロジェクトとまだまだ伴走していきたい。

石川卓磨（悪魔のしるし/建築家）
１９７８年神奈川県生。２０００年横浜国立大学建設学科卒業卒業後、設計事務所に勤務。ランドスケープ、家具、インテリア、インスタレーション、建築では集合住宅、美術館の設計等の業務に携わる。２００７年より独立し、ｎｅｗｅｓｔ一級建築士事務所を共同主宰。住宅や店舗の設計を生業としている。２００８年演劇のような公演を催す集団「悪魔のしるし」に立ち上げから参加。舞台美術の設計、施工を担当。

展覧会視察

日別
１０月８日（木）小学校　１団体　１６０名／中学校　１団体　２５名
１０月９日（金）特別支援　１団体　３２名
１０月１０日（土）小学校　１団体　２９名
１０月１３日（火）小学校　１団体　３５名
１０月１５日（木）小学校　２団体　１６０名／特別支援　１団体　２５名
１０月２０日（火）小学校　１団体　１１６名
１０月２１日（水）小学校　１団体　２０名／特別支援１団体　４８名
１０月２２日（木）小学校　１団体　１６４名
１０月２３日（金）小学校　２団体　１３２名
１０月２７日（火）小学校　２団体　７６名／高校　１団体　１４９名
１０月２９日（木）小学校　４団体　２７５名／高校　１団体　３９名
１０月３０日（金）小学校　２団体　７３名
１１月５日（木）小学校１団体　５７名
１１月６日（金）小学校１団体　２０名

校種別
小 学 校　２０団体　１３１７名
中 学 校　１団体　　２５名
高　校　　２団体　　１８８名
特別支援　３団体　　１０５名

　計　２６団体　１６３５名

●新聞
南日本新聞 １０月６日
南日本新聞 １０月１３日「ゆないく通信」

●ラジオ／テレビ
フレンズFM 「フレンズルーム」９月１５日
フレンズFM「イブニングレディオ」１０月２日
KKB 「ぷらナビ」 １０月３日「湧水町リフレッシュの旅」
KYT 「かごピタ」 １０月９日 (会場から生放送)
NHK「 情報ウェーブ」 １０月１６日
KTS 「かごニュー」 １０月２２日 特集「つくるスポーツ/するアート」展
MBC 「NEWSナウ」１０月２３日「過去の自分と“かけっこ”霧島アートの森」
KTS １０月２４日「サチのかごしまリサーチ」

●ウェブマガジン
美術手帖 オンライン
Yahoonews（walker plus）
かごぶら
tjかごしま
アートコモンズ
ゆこゆこ
trilltrill


●その他
鹿児島ユナイテッドＦC 公式Ｙｏｕｔｕｂｅ「きばれ！ユナイテッドステーション」
鹿児島ユナイテッドＦC公式ツイッター
アミュビジョン(アミュプラザ鹿児島 アミュ広場および鹿児島中央駅通路 １０月１３日〜１１月８日)

アーティストプロフィール

犬飼博士　運楽家/運動会協会理事/ゲーム監督
１９７０年愛知県生まれ。映画監督・山本政志に師事したのちゲーム監督に転身。人と人がつながるコミュニケーションツールとしてのビデオゲームにこだわり対戦型ゲームだけを制作。
２００２年より、スポーツとゲームを融合する「ｅスポーツ」の事業を開始。 ＷＣＧ　や　ＣＰＬの日本予選を主催し、世界大会に参加。
『ｅスポーツグラウンド』や科学展示『アナグラのうた　消えた博士と残された装置』等小さなビデオ画面だけに収まらないフィジカルな作品で文化庁メディア芸術祭にて受賞。近年は『未来の運動会プロジェクト』にてスポーツを皆でつくる人を育成し、「スポーツ共創」を推進中。
https://twitter.com/polygoninukai


安藤僚子　空間デザイナー
合同会社デザインムジカ代表。ファッションや飲食などの店舗設計を中心に、演劇や科学展示などの会場構成、ディスプレイやアートインスタレーションなど空間にまつわる幅広いジャンルで活動している。主な作品に「スポーツタイムマシン」（メディアインスタレーション／２０１４年第１７回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞）、日本科学未来館常設展「未来逆算思考」（空間設計・アートディレクション）など。著書に「ＴＯＫＹＯインテリアツアー」(ＬＩＸＩＬ出版社)など。