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青春部活動バイブル

あつ丸 ウユニ塩湖 遠藤彩乃 
はるくら 本田

二松学舎大学



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 目 次

「けいおん!」の魅力

「さあ、楽しい音楽の時間だ!」

青春がつまった漫画たち

私の好きなスポーツ漫画

ホスト部から学ぶ高校生活のススメ

「けいおん!」の魅力

あつ丸

「けいおん!」の魅力

あつ丸

はじめに


 今回原稿を執筆するにあたって、「学校生活や部活動を楽しみ、これらのモチベーションを上げたい現在高校生の人やこれから高校生になる人にむけた、部活動がテーマになっている漫画を紹介する」という企画の趣旨に合う漫画を考えた時、部活動が題材となっている作品や、物語と密接に関わってくる作品は数多あるけれど、やはり自分が影響を受けた作品を紹介する方が真実味が増すと考えました。
 そこで今回取り上げる作品は、私含め多くのアニメファン、そして普段アニメを見ない人まで楽器演奏、バンド活動の道に誘い込んだ伝説の漫画『けいおん!』です。

『けいおん!』とは


 『けいおん!』は作者かきふらいによって雑誌『まんがタイムきらら』に掲載された4コマ漫画で、高校で軽音学部に入部した5人の女子高校生の日常を描いた学園コメディーです。
 『まんがタイムきらら』という雑誌はいわゆる〝萌え〟の要素を多く含む作品が主に掲載されています。それら作品の傾向としては「女の子たちの日常をゆるっと描く」というものが多く、ハラハラするような劇的な展開はないけれど、読者に癒しを与えてくれます。
 『けいおん!』もそんな作品の例に漏れず、軽音楽部の活動を中心に終始ほのぼのとした日常が描かれ、見ていて癒されるような気持ちになる人も多いと思います。

『けいおん!』の魅力


 ここからは私が考える『けいおん!』の魅力を3つ述べたいと思います。

①4コマ漫画である
 やはり4コマ漫画というのはテンポが良いため、難しく考えることなく読み進めることができます。そしてそれは、日常をゆるっと描く本作品との相性も非常に良く、頭を空っぽにしてただページを繰り、ひたすらに供給される癒しを享受するだけの時間は最高のリフレッシュタイムとなると思います。

②〝きらら系〟ジャンル確立の立役者
 〝きらら系〟とはアニメのジャンルで、その名の通り、『まんがタイムきらら』に掲載されている作品のアニメがそこに当てはまります。現在では毎シーズン必ずといっていいほど、〝きらら系〟アニメは放映されているなど大人気の分野であると言えます。
 そんな一大ジャンルを築き上げるのに大きく寄与した作品が『けいおん!』だと私は考えています。他にも『ご注文はうさぎですか?』や『きんいろモザイク』など代表とされる作品はありますし、この作品以前にアニメ化された『まんがタイムきらら』の作品もいくつかあります。しかしここまで爆発的なヒットとなったのは間違いなく『けいおん!』が初めてでしょう。
 『けいおん!』は計3回アニメ化されました。テレビシリーズが2回、劇場版が1回です。アニメにおいて2期というのはもちろん1期の人気や売り上げが高くなければ製作されないものです。ましてや劇場版までやる作品というのはほんとうに一握りです。
 『けいおん!』以降この作品のように「女の子たちの日常が描かれる」アニメ作品は増えたと感じています。それら作品の走りとなったのが『けいおん!』だと考えられます。

③魅力的な楽曲
 『けいおん!』がアニメ化に成功した大きな理由の一つにこの作品の内容とアニメという表現形態が最高にマッチしたことが考えられます。
 原作では表現しきれない部分、つまり実際の演奏を聞かせるというのがアニメ化によって可能になり、またその楽曲の数々が非常に魅力的でした。
 当時2枚同時発売されたシングルが発売初日にオリコンデイリーシングルランキングで1・2位を独占するなど、その人気ぶりはアニメファンに留まらず、一般の人々の目にも留まるレベルでした。
 私の周りにも普段アニメをほとんど見ないが『けいおん!』の楽曲は聞き、そこからギターを始めた人がいたなど幅広い範囲に影響を及ぼしています。

おわりに


 私も実際に『けいおん!』に影響を受けてギターを始めたことがあります。それだけこの作品にはインパクトがありました。3つあげた魅力の2つは漫画そのものではなくアニメのことになってしまいましたが、原作もアニメもどちらも非常に面白いです。日々楽しそうに部活動に励む登場人物たちの様子が描かれる本作品を読むことで、自らの部活動に対する期待やモチベーションが高まったら良いなと考えています。

「さあ、楽しい音楽の時間だ!」

ウユニ塩湖

「さあ、楽しい音楽の時間だ!」

ウユニ塩湖

 私は中学高校と吹奏楽部で、それなりに忙しい部活動生活を送っていました。とくに高校の部活は、とてもハードで、毎日を生きるだけで精一杯という状況でした。そのような日々を過ごす中で、「なぜこんなに辛い思いをして音楽をしているんだろう」「音楽ってこんなに苦しいものだっけ」といった自分が頑張っているはずのことに対して疑いたくなるような気持ちが出てきてしまうこともしばしばでした。
 そんな私を支えた漫画が『のだめカンタービレ』でした。

『のだめカンタービレ』は二ノ宮知子原作での漫画作品で、アニメ化を始め上野樹里と玉木宏主演の実写ドラマや映画が話題になりました。舞台は音楽大学、「音楽は楽しければいい」と言って好きなようにピアノを弾くのだめこと野田恵と、幼少期から英才教育を受け海外から帰ってきた天才千秋新一の、出会いから始まります。二人のドタバタラブコメディは、クラシック音楽の固そうなイメージを払拭するかのような思わず笑ってしまうギャグ感満載。そんな二人が音楽大学の様々な仲間やプロの天才音楽家たちと出会い、素敵な音楽を奏でていきます。
 それでは、物語の中で特に印象に残り、私を支えた名シーンを紹介していきます。

「何でそこまでして勉強しなきゃいけないんですか?…自由に楽しくピアノを弾いて何が悪いんですか!」

 千秋に追いつくために人生で初めてピアノを猛練習したのだめですが、コンクールで優勝することができませんでした。のだめは小さいころにスパルタレッスンを受けたことがトラウマになっており、天才的にピアノが弾けるのに努力をしたことがありませんでした。そんなのだめが初めて努力し、初めて挫折したシーンでののだめの一言です。頑張った先に結果がついてこないなら、ただ楽しく弾いていたいと、「一緒にヨーロッパに行こう」と言う千秋の告白を避け、ピアノから逃げて実家に帰ってしまいます。
 頑張ってもうまくいかなくて、それなら自分が楽しいだけでいいじゃないか、必死で練習したのに結果が出なかった時、私も何度もそう思いました。しかし音楽は自己満足のみの楽しさと、認められたうえでの楽しさでは格段に違います。このシーンの後、実家に帰ったのだめを千秋が探しに行き、のだめはまたコンクールを目指します。このシーンは音楽に対して、「ただ楽しければいい」と言う逃げの気持ちを改めさせてくれます。

「ちゃんと合わせてやるから、俺の音を聴け!」

 のだめと千秋がラフマニノフのピアノコンチェルトを二台のピアノで連弾するシーンです。ピアノコンチェルトというのはオーケストラとピアノソロが一緒に演奏する曲です。千秋はのだめの実力を確かめるべく、オーケストラパートを千秋が弾き、ピアノパートをのだめに弾かせました。のだめの自由奔放で自分勝手なピアノに振り回される千秋はのだめを一喝します。
 誰かと一緒に音楽をするときにまず大事なことは「相手の音を聴く」ということです。独りよがりでは音楽が成立せず、相手の音を聞き、その後と、リズムと調和させることで音楽は完成するのです。のだめが千秋の音を聞くことで二人の音楽は粗削りながら調和し、二人のいる練習室は二人の音楽で満たされます。このシーンを見て、私もこのように誰かと意志を通い合わせて音楽してみたいと強く思いました。私が音楽をやっているうえで憧れのシーンです。

「さあ楽しい音楽の時間デス」

 世界的指揮者であり、千秋の指揮の師匠のミルヒーことシュトレーゼマンの台詞です。千秋が指揮を振ることになったSオケは、音大の変わり者や落ちこぼれの学生などが集まっていて千秋は指導に苦しみます。しびれを切らした千秋は練習室から去ろうとしますが、そこにシュトレーゼマンが現れ、指揮台に立ちます。演奏を始める前、この言葉を団員にかけました。すると、千秋の指揮では絶望的だった演奏が、みるみる音楽的な素敵な演奏に代わっていくのです。いつもは女性に目がなく「エロジジイ」と罵倒されるシュトレーゼマンですが、圧倒的な差を見せつけられた千秋はシュトレーゼマンを尊敬するようになります。
 音楽はまず「楽しむ」ことが大切であるという根本的なことを思い出させてくれるこのシーンでは、上手に弾けなくてもまず「楽しむ」ことを一番に考えるべきだということを教えてくれます。またこのセリフはこれ以降千秋も使うようになり、『のだめカンタービレ』の一つのテーマのようにも感じます。

音楽は楽しむもの

 私は現在もオーケストラサークルで音楽を続けていますが、私が「オーケストラをやりたい」と思ったきっかけの一つが『のだめカンタービレ』を読んだことでした。音楽は楽しむことが一番大切で、でも楽しむためには努力を重ね、独りよがりになってはいけないことなど、今でも心に刺さっています。また、原作は漫画作品ですが、本人たちの音楽が聞こえてくるような表情の描写やドラマ構成など、見ててあきません。音楽をやっている人もやっていない人も、もうやめてしまった人もぜひ読んでみて、見てみてほしい作品です。

青春がつまった漫画たち

遠藤彩乃

青春がつまった漫画たち

遠藤彩乃

それぞれの青春


 数多くある部活動をテーマにした漫画について、今回は運動部と文化部それぞれ一個ずつ紹介したいと思います。運動部では『ハイキュー!!』、文化部では『青空エール』について取り上げます。今部活動を頑張っている、もしくは昔頑張っていた人みんなに刺さる何かがきっとあるはずです。

それぞれの魅力


 まずは『ハイキュー!!』についてです。『ハイキュー!!』とは字の如く高校男子バレー部を舞台にした少年漫画です。連載は去年終わりましたが人気があるためアニメ化、小説化、舞台化など多岐にわたりメディア展開がされています。主人公は日向翔陽(以下、日向)という小柄な少年であり、「小さな巨人」と呼ばれた宮城県立烏野高校(以下、烏野高校)のエースが活躍する試合を見てから、バレーボールを始めます。しかし、日向の中学は男子バレーボール部など存在しなく、試合も一度だけ、しかも惨敗という結果に終わります。中学卒業後、日向は憧れのエースがいた烏野高校に進学し今度こそ男子バレーボール部に入部しようとしますが、そこにはなんと試合で惨敗を喫した相手であった、通称「コート上の王様」影山飛雄もいて…⁉という始まりから、インターハイ・春高出場に向けて、烏野高校バレー部は時にはぶつかり合いながらも切磋琢磨し合い、また他の高校との交流を経て皆それぞれ成長していく物語となっています。
 この漫画の大きな魅力は、出てくる登場人物たちそれぞれが信念を持っており、バレーに対して誠実な想いを毎回ぶつけているという点です。そのためメインである烏野高校以外の高校の選手たち(烏野高校の相手となっていく高校)が好きだというファンもたくさんいます。その中でも「青葉城西高校」「白鳥沢学園高校」「音駒高校」「梟谷学園高校」「稲荷崎高校」あたりが有名です。読めばあなたもきっと推しが見つかるはず!
 ここでさらに魅力を深堀りするために、印象的な言葉をいくつか紹介します。(分かりやすくするため、人物名の後ろに高校名をつけています)


「強いって自由だ」(日向翔陽 烏野高校)注1
「落ちた後は上る以外に道はなし」(田中龍之介 烏野高校)注2
「下を向くんじゃねぇ バレーは常に上を向くスポーツだ」(鵜飼繋心 烏野高校)注3
「才能は開花させるもの センスは磨くもの」(及川徹 青葉城西高校)注4
「今日、何をする? 昨日を守って、明日何になれる?」(宮兄弟 稲荷崎高校)注5


 このように、奮い立たせてくれるような名言がたくさんあります。部活が辛くなったとき、必ずあなたの背中を押してくれることでしょう。ストーリーも暗くなる場面がほとんどないので気軽に読めると思います。バレーボールについての説明も丁寧で、バレーボールの知識がほぼ皆無な私でも楽しんで読めたので、凄くオススメです。

 次に吹奏楽部を舞台にした少女漫画『青空エール』の紹介です。『青空エール』は北海道の高校をモデルに、主人公小野つばさ(以下、つばさ)が、甲子園でのブラスバンドの演奏を見たことがきっかけに、吹奏楽初心者でありながらも名門白翔高校吹奏楽部の門を叩きます。しかし、名門ということもあり厳しい部活の規則や練習・周りの先輩、同級生の圧倒的なレベルの差の前につばさは何度も心が折れかけてしまいます。そんな時、同じクラスでこちらも名門野球部に所属する山田大介(以下、大介)が何度も励ましてくれ、そこから恋愛にも発展していくという、部活と恋愛両方の青春が詰まった漫画となっています。
 最初は失敗ばかりで部内での友達もなかなか作れなかったつばさでしたが、練習・合奏・合宿・甲子園応援・(吹奏楽の甲子園と呼ばれている)普門館出場など、様々な出来事を通して仲間と分かり合い、またつばさ自身も成長していきます。
『青空エール』の大きな魅力は、つばさの高校三年間が丁寧に描かれているということです。そのため成功だけでなく挫折や失敗もたくさん描かれているのが特徴です。例えば、つばさのせいで部活に来なくなった先輩をパートの皆で一生懸命説得したり、レギュラー争いで出来る後輩に負けたり、なかなか普門館出場への切符がつかめなかったり……と、つばさは三年間で何度も壁にぶち当たっています。しかし、その度に一生懸命、本気で、誠実に立ち向かうつばさの姿に胸打たれ、思わず読んでるこっちが泣いてしまうようなシーンも!特に、部活で頑張っていた経験がある人はかなり胸打たれると思います。何かをがむしゃらに一生懸命頑張るって、青春ですよね。
最後に、素敵な名言を紹介します。

「ずっと自分の靴ばかり見てた。だけど君が信じてくれたから上を見れた。見上げた空は青かった。」(小野つばさ)注6
「誰よりも頑張らないとダメだ。自信なくても、結果出なくても、頑張っていいんだ。」(小野つばさ)注7
「音楽は直接人を助けられはしないけれど、人の心を励ますことはできると思う。」(杉村 容子)注8

それぞれの経験


 それぞれの部活にそれぞれの青春があるように、高校生のときはやること全てが貴重な経験となり、振り返ればそれが青春となっています。ぜひ部活動についての漫画を読んで刺激をもらい、実際に部活(帰宅部でももちろん)を一生懸命頑張って、一つでも多く高校時代の青春を残しませんか?


注1『ハイキュー!!』四四巻より
注2『ハイキュー!!』三〇巻より
注3『ハイキュー!!』二一巻より
注4『ハイキュー!!』十七巻より
注5『ハイキュー!!』三二巻より
注6『青空エール』一巻より
注7『青空エール』一巻より
注8『青空エール』九巻より

私の好きなスポーツ漫画

はるくら

私の好きなスポーツ漫画

はるくら

『黒子のバスケ』について


 私がはまっていた漫画は「黒子のバスケ」です。部活動は中高と陸上競技部でしたが、陸上競技を扱った漫画があまりなく当時アニメをやっていた「黒子のバスケ」の漫画が面白くはまっていました。「黒子のバスケ」はバスケットボールを扱った漫画であり、全30巻で映画も上映していたので知っている人が多いのではないかと思います。

主人公の存在


 まず「黒子のバスケ」の面白いところは主人公の存在です。スポーツ系の漫画で特殊なスキルを持っていることや主人公が成長してすごく強くなるなど様々なパターンがありますが、「黒子のバスケ」では主人公はバスケがあまり上手ではありません。また、成長はしますがすごく能力が上がることもありません。主人公は存在感が薄いことと、ミスディレクションという視線を誘導する技能を用いて、味方にパスを回すことに特化した選手として活躍するという話になっています。ここで大事なのが主人公の技は味方がいないと成立しないというところです。主人公はパスを回すことしか出来ないので、チームメンバーの大切さを実感出来る漫画となっています。私のやっていた陸上競技は個人競技と捉えられがちですが、実際は仲間の存在がすごく大切であり頑張る活力になったりします。

主人公への投影


 次に主人公に自分を投影させやすいところが読者がハマりやすい点です。主人公は一時期成長が止まってバスケットボールを辞めようと考えていました。そこに同級生が来てバスケットボール以外のことに手を出すように提案します。そこで、人間観察することから視線誘導の技能を得て、活躍する選手に成長していきます。私自身も陸上競技をやっているなかで成長しないという時がありましたので、思考を変えて練習したりなど主人公の気持ちがわかる場面が多々あります。


感想


 最後に個人的な意見になりますが、自分が現在活動している部活動と違った漫画を読むことによって今まで思いつかなかった方法や考え方が湧いてきたりするので、ぜひ別のスポーツ漫画も読んでみてください‼

ホスト部から学ぶ
高校生活のススメ

本田

ホスト部から学ぶ高校生活のススメ

本田

――扉を開けると、そこはホスト部でした。


 春爛漫の好季節、桜並木を抜け、新生活への期待と不安に胸を膨らませながら開いた扉の先が〝ホスト部〟だったとしたら。そう考えるだけで、どこかわくわくしてきませんか?
 ……と、語りかけておいてなんですが、実際にそんな目にあったとしたら、私はわくわくどころかビクビクでそっとその扉を閉じてしまうでしょう。ホスト部へ続く扉と共に心の扉もそっと閉じ、絶対にあの部屋には近寄らないぞという固い意志を持ち、教室の隅で空気に溶け込むようにして穏やかな学校生活を送ることになると思います。高校生活、完。
 しかしそうはならなかった、(というよりもなれなかった)勇者がひとり。それこそが、『桜蘭高校ホストクラブ』の主人公である「藤岡ハルヒ」その人です。そもそもこの〝ホスト部〟というどこからどう見ても珍妙なる集団とはなんぞや、というところから説明していきましょう。
 ホスト部とは。一に家柄、二にお金の私立桜蘭学園理事長子息にして須王財閥の一人息子、「須王環すおうたまき」率いる暇を持て余した高等部美麗男子6名による、所謂ホストクラブの真似事。金持ちというのは暇を持て余す生き物らしく、美麗男子らと同じように暇を持て余した同校女子にとってホスト部は格好の遊戯、喜び勇んで飛びつくワケでありまして。そんなこんなで需要と供給の一致した、金持ちの道楽が〝ホスト部〟というワケです。
 そんなホスト部、ひいては金持ち渦巻く私立桜蘭学園へ分不相応にも紛れ込んでしまったのが特待生にして生粋の庶民である「藤岡ハルヒ」。ハルヒはホスト部に対して不注意から抱えた多額の借金と運命のイタズラという名の様々なカン違いから、女の身でありながらホスト部にてホストとして借金返済に明け暮れることになります。『桜蘭高校ホスト部』とは、そんな不幸な身の上ながら図太く淡白に生きるハルヒが、須王環を始めとするホスト部の面々と華々しくも馬鹿馬鹿しく素敵な高校生活を送る話であります。

バカの隣にいると楽しい


 ホスト部は、環が高等部へ上がる際に立ち上げた部活です。「我々の美貌を活かした部を立ち上げよう!」などというバカ丸出しの発言を、環の友人である鳳鏡夜おおとりきょうやが形に整え実現させてしまったのがこのホスト部の始まり。環は過去、ある人にかけられた言葉から「毎日楽しく!」をモットーに生きている男です。自分が楽しく生きて笑顔でいれば、周りの人に幸せを分けることができる。周りの人も笑顔になってくれる。全員がそうであると信じられるほど幸せな人生を送ってきてはいないけれど、そうであれば良いと願って生きているのです。だから、お客さんを楽しませることを目標にホスト部を立ち上げるし、何事も経験してみないことには始まらないと、なんでもかんでも手を出そうとする。やってみなければ、楽しいことかどうかすら知る機会も生まれません。「須王環」はそういう男です。
 高校生とは、中学の時よりも行動範囲が広がり、それでいて適度に子供扱いされて大人の手を借りることのできる便利な身分。きっと、高校生活を楽しく送るにあたって必要なのは、環のようなバカの存在なのです。行動力のあるバカの隣にいるのはめちゃくちゃ楽しい。高校生活を楽しく送りたくてもどうしたらいいかわからない、という方がほとんどでしょうが、バカが隣にいると「楽しい」が勝手に舞い込んでくるものです。
 私も高校時代、「体育祭の有志の出し物であたかもディズニーのショーの如く煌びやかで派手でクオリティの高いものがやりたい」というようなバカを言い出した友人がいましたが、最終的に任意参加であるにも拘らずほぼ学年全員が参加した大掛かりな出し物を完成させることができました。バカの思いつきを、思いつきで終わらせずになんとか実現できないものかとあれこれ考えること。もしそれが実現できなかったとしても、それを考えて走り回るだけで、何もせずにただぼんやりと時間の過ぎ去るのを待っているだけの高校生活よりは数倍楽しくなることはお約束します。

コロナ禍は最高の建前

 とは言っても、都合よく隣にバカがいるばかりではないでしょう。それならば、自分がバカになるしかないのです。新しいことを生み出すのに、コロナ禍の今ほどちょうどいい時期はありません。なぜなら、何もかもが「例年とは違う」から。何もかもが例年と違うなら、前例にないことをするのに「コロナ禍だから」が建前として使えるワケです。コロナ禍だからこうしたい、今までやっていたこれが無くなったか代わりにこれをやりたい、オンラインを使えばこれができる。こじつけだろうと建前だろうと、立派な理由を立ててしまえばこっちのものなのです。いかにして大人の協力を取り付けるか。何かバカをやろうとした時、難関として立ち塞がるこの問題を、今であればいつもの半分くらいの労力で片付けられてしまうのです。
 このご時世、コロナによって中止になったイベント、得られるはずが失ってしまった楽しみというのは数えきれないほどあると思います。ですが、もうそれらは本当にどうしようもないのです。どうしようもないので、今のその奪われるばかりの状況をなんとかするために、少しでも多くの楽しみを得るために、一度バカになってみてはどうでしょうか。

紹介した作品 『桜蘭高校ホスト部』葉鳥ビスコ

青春部活動バイブル

2021年7月9日 発行 初版

著  者:あつ丸 ウユニ塩湖 遠藤彩乃 はるくら 本田
発  行:二松学舎大学

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John.

高校時代は演劇部所属。好きな部活動漫画は『ピンポン』(松本大洋・著)。

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