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縁あれば千里

結城玲夏

チームいちじく



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  この本はタチヨミ版です。



「私達、うまくいくような二人じゃなかったんだよ。」
 彼女の最後の言葉だった。未だに鮮明に覚えている。東京にしては珍しく、積もるほどの雪が降った日だった。吐き捨てるようにそう告げて去ったベージュのダッフルコートにボブヘアーの後ろ姿。呆然と見つめることしかできなかった。
 彼女が去った後、僕の周りには4.3度の空気と髪に積もって溶けない雪だけが残った。


 中学二年から付き合っていた彼女。高校の位置が真逆になったことがおわりのはじまりだった。行動範囲が変われば付き合う友人も変わってくるもので、必然的に僕たちの会う間隔は空いていった。週五で顔を合わせていた中学時代は遠い昔のものになって、週に一回の一緒に帰る約束は月に一回に減り、夏休みを境にどこかに消えた。
 LINEを送る頻度すら月イチになってもまだ、僕は彼女との関係に満足していた。自分の好きな女の子が自分のことを好きでいる、それだけで満足だった。彼女の気持ちを考えていなかったことに、久しぶりに会った時彼女に直接言われて初めて気づいた。



  タチヨミ版はここまでとなります。


縁あれば千里

2021年8月15日 発行 初版

著  者:結城玲夏
編  集:蓑もえ
デザイン:鹿島絵里子
発  行:チームいちじく

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結城玲夏(ゆうきれな)

NovelJam初参加です。一応、現役女子高生です。いまだに平成最後の夏に取り残されています。今年の夏も、Twitterで140字連載しています。ぜひ。ID(@2_______re7)アンダーバーはななつです。

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