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カミキリ通信276〜280号

カミキリ情報館

カミキリ情報館出版



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  この本はタチヨミ版です。

カミキリ通信276号 (2013.2.24)

●大道玉貴氏の思い出 秋田勇   
●池修の採集日記2012 自採集600種は南アルプスで
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●大道玉貴氏の思い出 秋田勇
年末も押し迫った2012年12月17日に1通の喪中のハガキが届いた。
差出人は大道龍介(玉貴氏の長男)である。
まさかと思ったが父「玉貴」儀となっている。
加療中とは聞いてはいたが2012年シーズン中は
彼と3度一緒に採集に行ったのでにわかに信じがたい。
12月8日永眠。 人の命ははかないものだ。合掌。
大道氏の最初の出会いは2002年盛夏の大菩薩だった。
その時は多少虫の情報交換し別れた。
3年後の春に高尾山で再会することに。
これがきっかけで関東甲信越地区の採集は一緒にいくようになった。
虫のキャリアも年齢も小生の方が多少上廻っていたのだが
ほぼ同じ世代でまた酒もいけるほう。
上戸の小生にとっても気の合う虫屋だった。
その後2008年に仕事を引退して実家の姫路に帰ることになった。
そのおかげか関西方面に何度も彼のお誘いもあり出撃する機会が出来た。
直近としては2012年5月20日 大道氏、N島氏と3人で戸台へ採集に行ったことだ。
もちろん目的はツジヒゲナガコバネだ。
大道氏は初めてこれをゲットすることができたいへん喜んでいる姿が目にうかぶ。
2012年6月9日 和歌山県広川町へ。
ここは小生が希望していたタカサゴシロが目的である。
彼の好意で快く車をだしてもらって現地まで案内していただく。
満足できる成果であった。感謝々々。
2012年7月28日 大道氏、N島氏に再び誘われ3人で三重県大台町へ。
目的はクロソンホソハナだ。
彼らもまだこの種は未採集とのこと。
リョウブ、ノリウツギの花が満開状況。
何度掬っても網に入るのはコウヤホソハナばかり。
大道氏はこれが花にくるのではなくノブドウの葉にきていることに気付いた。
飛んでいる姿はまさしくクロソンホソハナである。
彼のおかげで多数採集することができた。感謝々々。
9月に入り四国へ秋のコブ叩きのお誘いがあったのだが都合がつかず来年に延ばすことにした。
これが彼との最後の連絡となるとは思ってもいなかった。
虫界では無名戦士だったが惜しい人を亡くし残念な思いである。
大道氏同行の関西方面記録(小生の初採集のカミキリムシのみ記載)
2008年5月  春日山  クビアカモモブトホソ ズマルトラ、
2008年7月  和歌山  タカサゴシロ アオスジ
2008年7月  大塔山  オオクボカミキリ
2008年10月 淡路島  ツチイロフトヒゲ、セダカコブヤハズ
2009年5月  和歌山  モンクロベニ
2012年7月  三重県  クロソンホソハナ
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●池修の採集日記2012年
自採集600種は南アルプスで
鳳凰小屋
肉体的年齢的に、行けるときに一度は行っておきたいと思っていた。
重い腰をあげたのは、600種採集まで、あと残り3種となり、1種でも減らしたく、ワルサワダケヒメハナカミキリなら鳳凰小屋で確実に採集できるからだった。
南アルプス登山は、今まで一度も経験がないので、
T氏をさそうと、一度は行ってみたい場所と、意見が一致して、鳳凰小屋出撃と決めた。
7月28日
鳳凰小屋まではいくつかルートがあり、無難なコースと思われる御座石コースを選び、御座石の登山口まで行き、「御座石(ございし)温泉」に宿泊する。
素泊まり料金は約7千円、夕食を頼むならプラス5千円というので
T氏のレクサス車を走らせて「ガスト」で夕食を済ませる。
宿はブログで、噂どおりで、想像を絶します。
「鳳凰小屋まで5時間」と書かれた温泉タオルをもらう。
部屋は二階、窓には網戸もなく、
窓を開けていたらルリボシカミキリがやってきて、
電気を消して寝ると、ルリボシカミキリが襲ってくる(?)
手や顔をナメに来るのか、とにかく眠れないので、ルリボシ君を外に出す。
蚊もいて、殺虫剤をトイレ付近で見つけて駆除する。
エアコンはないが、部屋内は窓を閉めても暑くない、
標高千メートルは、あるからだろう。
宿は川沿いにあり、部屋は完全に湿りきっていて、ウェットな気分。
テレビはあるが、使えない状態。
トイレは共同で水洗。
携帯電話の充電できるコンセントだけはあったので安心した。
翌朝、支払いを済ませると、
「帰りは半額で入浴できるからね」と女将が言う。
冗談だろ、ヒナビタ共同温泉並みの風呂に三千五百円?
相場500円、高くて千円だよ。
朝6時10分に出撃
噂どおりの地獄が始まる。
標高的にして、千メートルの御座石から2千メートルを超える場所まで
軍手をして、両手をついて這い上がっていく。
急坂登りが約4時間、苦しめる苦しめる。
地獄の難行だ。
登山家じゃないし、登山は好きではない、
一生に一度の苦行と、自分を励まし、
10時に燕頭山(つばくろやま)の頂上着 標高 : 2105m
ここから鳳凰小屋(約2400メートル)まで
一時間かかると言う。
T氏と同じ歩調、同じ休憩などの余裕はなく、
鳳凰小屋で落ち合うことにした。
地獄の燕頭山(つばくろやま)登頂が終わり
それから小屋まで楽々コースだと言う。
サハリンやアラメがいそうな針葉樹の林道を抜けていくと、
ガスってきて、雨が降り出しそうな感じ。
雨にでもなったら、ワルサワ君は採れない。
最後のリキを出して、駆け足気味に小屋まで向かう。
途中でみつけたショウマをみると
普通種のピド君とは変った黒さが渋いピド君がいる。
これはスズキイ(シナノヒメハナ)で、二頭摘む。
一種追加、598種目。
一時間で着くはずが、予想外にアップダウンもあり
二時間かかり、お昼過ぎに鳳凰小屋到着。
まだ雨が降っていない。
さっそく小屋の周辺に咲くショウマを見るが
カミキリがいない、ハエ蜂ばかり。
あせる心で、カミキリが見えなくなっている。
鳳凰小屋のオーナーは虫屋だというので
ご挨拶して、カミキリ採集に来たというと
すぐに小屋周辺を案内してくれた。
「この草にイケダイが止まっている。
昨日は小屋の塀に多数いたけど」
イケダイが見当たらない。
オーナーは小屋の受付に戻って毒ビンからイケダイを見せてもらった。
でかい? ビニボラ(オニヒゲナガコバネ)以上に大きい。
「ワルサワはどこですか」
オーナーがショウマを見渡すが、いない。
ちょっと歩いて、隠れたショウマからワルサワ君をとってきて
プレゼントしてくれた。
お~ これがワルサワ君か、乳白色のリングが綺麗。
奇跡か? ガスは消えて、晴れてきた。
雨が降らないと安心したのか、余裕の目で、
ショウマを見ると、晴れたのも幸いしたか
ワルサワ君が集まってきた。
そして草にいるイケダイも数頭発見。
やった。 600勝だ。
お祝いに、山小屋特製のコーヒーをオーダーした。
500円なり。
30分以上遅れて、T氏到着
オーナーに「虫屋」だと紹介すると、
採集案内開始、虫屋が来てくれたことが嬉しいようだ。
T氏に言った。
「600達成したので祝杯したい、ビール?
ぼくはコーラだけど」
T氏も登山中は禁酒とのことで、
山の水で冷えたコーラを飲んで祝杯、350円なり。
小屋には登山客が集まっている。
「50名以上は来ている?」
「いや、100名は来ているよ」とT氏が言う。
人気のある山小屋のようだ。
その後、イケダイとワルサワは一ダース以上採集して満腹となった。
ミヤマカミキリモドキもいて、
でかい、普通のカミキリモドキのニ倍以上ある。
オーナーに尋ねた。
「タカネヒメハナが採れるそうですが」
「今から案内するよ。今年はそこで、まだ誰も採集していないけど」
オーナーに案内されて、
小屋から100メートル程度、離れた場所へ
採集方法は立ち枯れのヤシャブシの根際をみたり、
周辺の下草の掬いだそうだ。
やってみたが、完敗に終わった。
小屋に戻ると、大ショック!
他の虫屋さんが小屋周辺でタカネヒメハナをゲットしたそうだ。
それも、ずっと見ていた廃材の場所だった。
あとで聞くと、タカネヒメハナも小屋から出る廃材で発生していて
1日多い時で、3頭は採れるそうだ。
え! オーナーから聞いてなかったよ。
目の色をかえて、タカネヒメハナを就寝まで探すが
見つからなかった。
夕食はスパイシーの利いたポークカレーで
宿泊料金は夕食+一泊で7千円
朝食は+千円
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山小屋宿泊の異常な世界を体験
見知らぬ男女が、シングルサイズより細くみえる布団を
ぎりぎりに並べられて、肩をふれあいそうな感覚で寝る。
あ~ これはパスしたい。
となりの男性のイビキが耳元で爆音となっている、
100名?が一面に何列かで寝る異常な世界。
一生に一度の体験だが、嫌な体験をした。
それにまったく暗闇の世界で、懐中電灯は自前で持って寝る必要あり。
自分は携帯電話のライトでトイレに行った。
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翌日の朝はトホシハナを求めて、地蔵岳登山
砂場の急斜面で、滑り落ちないように
人の踏み跡を一歩一歩踏みしめながら登るが、ハナがない、鹿の害がひどいらしい。
頂上付近に並ぶ地蔵さんを見ただけで終わった。
11時まで鳳凰小屋付近で採集
鳳凰小屋はイケダイ、ワルサワ、たまにタカネのカミキリ牧場になっている。
オーナーが意識的に材を牧草のように配備している。
付近の花でクモマハナの斑紋変異も楽しむことができた。
下山も急降りで、ストックが必要なほどで、
16時までには御座石の登山口に到着したが、しんどかった。
もう二度と登りたくない。
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カミキリ通信277号 (2013.3.24)

======== 目次 ============

●DX9星人の大菩薩決戦 

ハセガワトラ

●大道玉貴氏の思い出 その2   AXT星人   

東日本編チャイロヒメコブ、ヒゲジロホソコバネその他

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●DX9星人の大菩薩決戦 

ハセガワトラ

7月の3連休を利用して昆虫撮影をテーマに遠征しようと思った。

行き先は大菩薩峠。中里介山の未完の小説として有名であり、

ふもとの甲斐大和駅から登ると武田家終焉のばしょもある。

が首都圏から割かし近く標高が1800m程あり平地では見られない昆虫がいて、

以前より初心者にも有名な場所だ。

2泊3日の日程で初日は長兵衛小屋、翌日はぺんしょんすずらんに宿泊する予定だ。

知り合いのA氏も行くという、しかも前日から長兵衛小屋に泊まりかなりの気合の入れようだ。

今回の目標はゼフィルス各種、ハセガワトラカミキリ、ツヤハダクワガタその他生態写真の撮影。

とりあえず初日午前10時位には長兵衛小屋に到着。A氏と合流。

この時期駐車場付近のミヤマイボタ?に結構虫が集まる。

マクロレンズで撮影できる距離にあるものは撮影して無理な場所は網で掬い、
せめて記録になるように撮影する。

カスミカメムシの仲間が多数と地味なカミキリ、ジョウカイ等が殆どだったが、

アシナガアオハナムグリが何匹かいて幸いいい感じの生態写真が撮影できた。

それから昨年オオホソコバネカミキリが何匹かやってきたブナの立ち枯れに向かうが、

確か100m程の距離だった記憶があるのだが、どこまで行っても無い。

「もしや?」・・・そう台風で倒れてしまったらしい。

その場所に行くと急斜面にブナの倒木が見えた。

あそこまでいけば何かしら面白い虫がいるかもしれないと思ったが、やめた。

他を探そう。

一旦宿に戻りブナの立ち枯れはないか?
ご主人に聞いてみたところ、何本かは近くにあるらしい。

で、一番楽な立ち枯れに向かった。

途中道を間違えてモミの立ち枯れを結構見つけた。ここも面白いかもしれない。

で、目的のブナの立ち枯れに到着するといきなり2匹オオホソコバネカミキリが歩いている。

自分の少ない経験だと高い場所にいても

たいがいオオホコバネカミキリは撮影出来る高さまで降りて来て、

メスの場合樹皮が剥がれた場所にしか産卵しないみたいなので

余裕をもって撮影できた。その後もう一匹オスが飛来してきた。

このカミキリはお土産に確保しておいた。その他キヌツヤハナカミキリや不明のハナノミ位。

結構な時間そこに費やしこの日はオオトラフハナムグリや寄生バチなんかを撮影して宿に帰る。

この宿は発電機で電気をまかなっており、症等は21時。

食事はとても美味しくしかも値段もお手ごろで今年も行こうと思う。

で、9時の消灯までご主人が外の灯りを点けてくれて、ミヤマクワガタ4匹、多数の蛾が飛来。

驚いたのはシロスジカミキリが飛んできたこと。どうなっているんだろうか?

翌日美味しい朝食を頂いて、まず昨日の花を見に行く。天候は曇り。

あまり成果が無く立ちすくしていると見覚えのある車がやってきた。Sさん親子だ。

僕がミクシイの日記に大菩薩に行くとだけ書いたのだが

それだけで僕の居場所が分かったようだ。

凄い勘だ。



  タチヨミ版はここまでとなります。


カミキリ通信276〜280号

2021年11月12日 発行 初版

著  者:カミキリ情報館
発  行:カミキリ情報館出版

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