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カミキリ通信381〜385号

カミキリ情報館

カミキリ情報館出版



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  この本はタチヨミ版です。

カミキリ通信381号 (2021.11.28)

======== 目次 ============

●出会いたかったカミキリムシ2018/西日本ブラコブ行脚
●フサヒゲルリカミキリは何処  脇田健介
●天牛人語 月刊むし カミキリ特集号・20

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●(出会いたかったカミキリムシ2018/西日本ブラコブ行脚)
とにかく暑い夏、2018年度の夏を一言で称するなら
これ以外の形容は無いと思う。
7月のみ順調な採集であったが
キジマトラを狙った再びの奥日光では見事に撃沈。
御嶽方面にもキジマトラで有名な御神木があるらしいが
飛来していないとeichan氏から伺い
今年の夏の暑さのムシへの影響を感じると同時に秋口の採集に向けて嫌な予感がしていた。
あまりに暑いと秋口出のコブに影響あるんじゃないかな・・。
数年前にようやくとナンキセダカコブ以外のセダカ亜種を
数年かけて秋口に得る事が出来、暫くはヤクコブに傾倒していた
ここ数年(eichan氏を案内して翌年以降まるで採れない)、
少し目先を変えて改めてセダカ亜種を秋口に追い求めてみようと考えた。
また、巷で囁かれていた噂、故高桑先生の執筆なさっておられたコブヤハズ図鑑、
これによりセダカ亜種がまた増えるんじゃないか?という話も
今回のリトライの動機である。とは言ったもののどれが亜種として増え、
どこが元々の話で落ち着くのか正直さっぱりわからない。
コブは好きだが微細な相違よりも採れて喜んでるレベルの人間としては
改めて想像を巡らせて自分なりにセダカの亜種分類するのは非常にハードルの高い問題である。
というよりそこまで各地でセダカを採れていないしぐずぐず考えた採集は正直疲れる。
なので出来る限りお気楽で秋の風情を楽しめ、且つ今まで訪れた事の無い場所、
それらを中心に西日本のセダカをもう一度やり直してみようと考えた。
要は西で秋にコブ叩きしたいだけなんですけどね。
(西日本最高峰、石鎚山のセダカ)
秋の予定として愛媛2回、和歌山南紀、山口の予定を立てていたが
結局予定の時期に訪れる機会が出来たのは愛媛の2回のみ。
後は雨予報や台風などで順延もしくは時期を繰り下げた。
2018年最初に訪れたのは西日本最高峰の石鎚山。
前日夜間(と言っても石鎚最寄り近くの伊予西条駅の到着は深夜13時手前。
朝はそこからバスに乗ってロープウェイ駅まで出る計画だったが
気が急いていた為早朝にタクシーへ乗車、一気に麓のロープウェイ駅まで出向いた。
三連休とは言え朝一、
ロープウェイに乗車する人は限られるだろうと考えていたが、甘い。
ひょっとしたらそれでも少ないのかもしれないが
最初の発車時刻手前には数十人が列をなしてロープウェイを待ち受けていた。
流石、西日本最高峰。
しかしながらこれだけの人数が山に訪れるとなると
落ち着かない採集になりそうである。
どやどやと人数がロープウェイを下車し思い思いの行動で第一歩を楽しんでいた。
歩いていて改めて思うがムシ屋って山で歩いていても見てるトコ違いますね。
気にも留めない粗朶とかじっと見つめてたりする。
さておき、取り合えずは歩いて成就社を訪れ
そこを起点にセダカを狙おうと算段していたのだが
歩いて少しすると分岐道に当たった。
どうも下に向けて下る感じの道でリフトだろうか?
木々の合間からケーブルが頭上に見え隠れしている。
ちょっと歩いただけだが
静かで日蔭で比較的乾燥も少ない様子でとても良い雰囲気。
これは叩きたい、そう感じで道沿いの枯れ葉をポスポスと叩いて下って行った。
すると、やったね、初石鎚山のセダカ・・、とてつもなく小さいが嬉しい。
気を良くして叩いて回るものの中々落ちてこない。
正直石鎚山のセダカ叩きはそれ程苦労しないと踏んでいた。
個体数も少なくない筈であるのだがどうにも上手く落ちてくれない。
叩いて回るものの叩き方が悪いのか叩いたのに
枯れ葉が引っかかったままの場所があった。
手に取って覗いてみるとラッキー!
葉っぱに包まって大きめの♀が鎮座していた。
やはりセダカも大きい個体を得れるのは楽しい。
程なくして湿度が保たれアザミ類の下部が枯れて居たり
低木に枯れ葉が絡まっているような素敵な場所を見つけたものの
どうにも追加が得られなかった。
寄り道したお蔭でセダカは採れたものの肝心の起点とすべき成就社はまだ先。
成果も上がらないので取り合えず最初に定めた目的地に歩を進めた。
上から下から楽し気な声が聞こえてくる。
恐らくロープウェイが到着する度にひっきりなしに登山客が登ってくるのだろう。
案外、人の声が聞こえたりすると採集に集中できないタイプなので困っていた所にまたも脇道。
どうも遊歩道のようだったが取り合えずその脇道を登る。
とは言え案外急な登りで少々息が上がってしまったがセダカは見つけられなかった。
この脇道も成就社へと続く道の様でなんとなく目的地には辿りついたようだ。
周辺を見回すとまたも気になる遊歩道。
今度はこちらを探索してみようと考えた。
とは言えこちらはあまり叩く場所もなく淡々と続く道を進んでいったが
ササに引っかかった枯れ葉の一角が視界に入った。
ようやく3匹目のセダカ。
これもミニサイズ。採れるだけ有り難いがどうにもサイズが・・。
少し進むとそれなりに叩ける箇所もあったのだが尽く空振り。
唯一落ちてきたのはシコクヒメヒゲナガのみ。
前回(と言っても数年前だが)も秋口に採集した記憶があるが
今回は欠損の無い個体だった。秋にも出ているのかな?
いかにもセダカが落ちてきそうな場所は歩けば
それなりにあるものの結局は前述の3頭のみで打ち止め。
採れるだけ有り難かったがもう一押し欲しかった。
この日はお天気も良くお日様が大変高くなる頃には
林床も乾燥してきている感じがしたので午後2時過ぎに撤収を決めた。
落ちても良さそうな場所と思ってもセダカが居ないこのパターン、
あるあるかも知れないがやはりコブ採集は面白い、
今更ながら再認識して石鎚山を後にした。
(リベンジ、愛媛高縄山のセダカ)
高縄山を訪れるのは2回目。最初はeichan氏に案内して頂いた。
ここのセダカはツルギセダカ亜種になるそうだがDNAレベルから違う
(私はこうゆうの良く分からない)らしい。
ただこの高縄山、初回ではかなり厳しい思いをした場所でもある。
確か数年前訪れた時は台風直後。
初夏にはいったいどれだけの個体数がいるのか?
と思う位セダカが盛況だったらしいが
初回の秋は結果eichan氏が2exsのみに終わったと記憶している。
前週の石鎚山もイメージよりも採れなかったことを考えると
高縄山も厳しいだろうな、と考えていた。
伊予北条駅を起点にし近隣のタクシーを使って朝一で高縄山へ。
道すがら目に入ったのは土台だけの墓石。
今年はあちこちで豪雨災害が起こっていたが
この四国も例外ではなかったのだろう、墓石の後ろには土砂崩れが起きていた。
所々改修している道路を走って高縄山に到着。下車したのは高縄寺の辺り。
案内していただいたポイントより手前で下車してしまったが
歩いて少しすると比較的採集しやすい様々な樹種のあるポイントに到着。
ここには登山道のような道も整備されており
そこを歩いて周辺を叩くかシキミに堆積した枯れ葉を叩いて
セダカを得る方法が前回有効であった。
取り合えず入口付近を叩くとツチイロフトヒゲがアザミから落下。
その後も道の先々でこのツチイロフトヒゲが落ちてくる
(恐らく2桁は落ちた)のだが、この時点で前回とは違う手応えを感じていた。
ゆっくりと歩いていくがツチイロフトヒゲが落ちるものの
肝心のセダカが落下してこない。
諦めずに歩いて回ると
カエデの下に枯れ葉が引っかかったり積もったりしている好条件の場所。
所謂これ居なきゃダメ!って場所である。
叩くと予想どおりコロンと仰向けに高縄山初セダカが落下してくれた。
複数いるよね?条件があまりに良かったのと叩ききれない場所でルッキングと坊主めくり。
すると、視界に、ん?触覚?ありゃ、松の葉っぱの長い奴か・・・、
いやいや!やはりセダカであった。
セダカ付き枯れ葉を手に取っているというのに危うくリリースする所であった。
擬態といえば擬態だがここまでして気づかない私が間抜けと言えば間抜けである。
じっくり見ると触覚が長い立派な♂。
満足する大きさである。探し始めて30分、こうなると活力が湧く。
今度は道の無い斜面を叩きながら下っていくがそうそう甘くはなく、
やはり入り組んだ場所は難しいと実感した。
今度は登山道沿いを叩くと小さな♀落下。
そしてこの付近をしつこく叩くとまた♂落下。
ただどれも小さめな個体。
今度はこの登山道を後にして上へと続く舗装道を歩き周辺を叩く事にした。
片側は先程叩いていた樹林帯とは雲泥の差でかなり傾斜がきつい。
低木に引っかかった道路際を叩いて歩く以外にないのだがこんな場所でも2頭落ちてきた。
ここに来て感じた。
本来はこの位は採れる山であり、前回は全て台風のお陰で台無しになったのだ、と。
9月も20日を過ぎた採集であったが
ツチイロフトヒゲ(尤も本種も秋口ですけど)を皮切りに
ドイ、クモノスモンサビ、ニセビロウド、アトジロサビ、
案外色々落ちてきた。
凡種ではあるが種類が落ちてくれるのは楽しいものである。
また、先ほどの登山道とは別にどこまで続いているかは
分からないが下っていく未舗装の道がある。
そこにはノイチゴ(かな?地面を這う感じで生えている)に
堆積した枯れ葉で同じくミニセダカを2exs得る事が出来た。
所でこの剣山亜種の高縄山のセダカ。剣山で得た個体とはかなり印象が違う。
剣山のセダカ(最近は採りずらくなっていると聞く。悲しい。)とは色味が違う
(高縄は茶色でエリトラは灰色っぽい)し、
肩のラインやヤハズの部分も異なっている印象を受ける。
あまり区別は気にしない方なので間違っていたらごめんなさい。
ただ、同じツルギセダカとしては素人目にも明らかに違う。
どのような分類になるのか?図鑑、早くでないかなぁ。
この付近にはベンチもあり秋の弱い日差しを受けながら成果に満足し、
しばしまったりしつつ愛媛の秋を堪能した。

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●フサヒゲルリカミキリは何処
カミキリ屋さんなら誰でも知ってるけれど
ほとんどの方はその生きた姿を見たことはないのでは。
私も地味にではあるが長年やってるにもかかわらずその一人。
本種は以前は北海道や本州の数県で点々と記録されていたようだが
2000年代以降では長野県と岡山県のみに。
そして現在、私の住む長野県でも残念ながら確認されなくなってしまった・・・と。
ご存知のように本種は岡山県(2004年)、長野県(2010年)において
希少野生動植物保護条例で、
さらには種の保存法(2016年)によって
完全保護のムシ(絶滅危惧IA類)となりアンタッチャブルに。
一方で私は昨年、無事に定年退職。
今まで時間がなくてできなかったことの中で是非とも叶えたい事の一つがフサヒゲとのご対面。
その生きた姿をなんとか見てみたい。
レモンイエローのユウスゲとフサヒゲの画は、
ヤマシャクヤクとキマルか、蝶で言うならカタクリとギフチョウ?
そこで昨年春から改めて長野県のフサヒゲの情報集めやフィールド調査を開始。
知り合いに聞いたり、大変ご無礼ながら、
他の方の持っていた標本の採集者を探し出して図々しくもお尋ねしたり・・・と。
(その際には池修様にも大変お世話になりました。改めてお礼申し上げます)
約半世紀前に記録のあった地元、長野市の産地周辺から調査を開始し、
同様な環境を探索して方々歩き回りましたが、
そもそもユウスゲ自体をなかなか発見できず。
あったとしても疎らで、幼虫の生育に十分であろう太い花茎を持った株は多くない。
ユウスゲを発見すること自体の困難さを痛感した初年度でした。
今年に入り、思い切って正式にボランティアとして
長野県の希少野生動植物監視員(フサヒゲルリカミキリ)に登録。
保護区域内での調査等にも参加させてもらいました。
十分な時間をかけて詳細な調査をできたわけではないですが
残念ながら生息の痕跡は発見できず。
しかし、長野県は広い。必ずどこかで人知れず生き延びているはず・・・
と信じ、願っています。
今年9月、長野市の半世紀前の旧産地(現在は耕作放棄地で約7~800坪)の地主さんと交渉し、
フサヒゲ復活の為のユウスゲ栽培、育成地として無償でお借りすることに。
現在、来春のユウスゲの種蒔に向け草刈りや倒木整理を進行中。
気の遠くなるような話ですが、どうなることやら。

長野県長野市 脇田健介

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●天牛人語 月刊むし カミキリ特集号・20 
2021年10月号(608号)
[表紙]交尾中のヒラヤマコブハナカミキリ
今月のむし ネクマチジヒオドシハナカミキリ
マイナー離島のカミキリ紀行 (3)小笠原諸島 ついに夢の無人島めぐり!(前編) 
フォトニック昆虫を探せ!─第3部:ルリボシカミキリ─ 
徳之島産カミキリ3種の食樹について 
佐賀県でヒラヤマコブハナカミキリを採集 
多摩川中流域の河川敷に広く分布するジュウジクロカミキリ 
至福の日々:九州南半部のカミキリを探る(1)
ピドニア道への誘い

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読感
2ページ目の
「マイナー離島のカミキリ紀行(3)小笠原諸島 ついに夢の無人島めぐり!(前編)」
F氏が、許可をえて小笠原諸島で禁断の兄島、弟島、向島などで採集できる幸運を。
独壇場の活躍紀行の前篇である。わくわくしました。
普通に採集に行けない無人島の話は貴重です。

カミキリ通信382号 (2021.12.26)

●呼ばれて飛び出て宮古島 宮川幸也
●ハットリイさんに会う 石藏拓
●天牛人語 今年の月刊むし、カミキリの話題

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●呼ばれて飛び出て宮古島 宮川幸也
4月に入りいよいよ本格的にムシの季節。
4月初旬にはeichan氏と合流し石垣島で短期採集。
結果としてはイシガキリンゴやイシガキキボシなど既採集種のみで
全てeichan氏に提供した。
余談だが最近は既採集のカミキリはその時点で満足していればその場でリリースしたりもする。
本命はムネモンウスアオ(何度採っても良い)やヤエヤマヒオドシハナ(訳の分からない逃がし方をした為)だったが短期で結果が出せる程甘い2種ではない。
やはり南国は気温が高く体も動く。4月第二週目翌週は宮古島、この島を訪れる人はこの島に呼ばれて必然的に来島するという謂れがある不思議な島、オカルトめいた話ではあるが以前聞いた話である。



  タチヨミ版はここまでとなります。


カミキリ通信381〜385号

2021年11月12日 発行 初版

著  者:カミキリ情報館
発  行:カミキリ情報館出版

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