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この本はタチヨミ版です。
魔の森という森がある魔女も沢山住んでいる小さな田舎町に、Micという少女が住んでいました。Micは、ごく平凡な両親の元で生まれました。
父は、木こりのMike。母は、主婦のHaruという名前です。
Micには、2つ上のYuiというお姉さんもいました。
Micが生まれてからHaruがMicに付っきりなので、YuiはMicに母親を取られると思って、Micにいろいろな意地悪をしました。
Yuiが大きくなって着られなくなった服を、Micが与えられて着ていると、
「それはお前なんかには似合わない!」と怒って服の袖口を強く引っ張って伸ばしたり、
時には、ハサミで、滅茶苦茶に切り刻んでしまうこともありました。
そのおかげで、Micの着ている服は、いつも袖の片方だけが伸びていたり、ほつれていたりとボロボロになっていました。
そんなみすぼらしい姿のMicをみて、周りのガキ大将たちも、変だ!とかおかしい!と口々に言ってMicを馬鹿にし出しました。
HaruもMikeもMicにいじめをするYuiに困り果てて叱るのですが、一向によくなりません。
むしろ、叱れば叱るほど、Micを庇っている!と今度は、Yuiが泣き喚いて収拾がつかなくなってしまって、両親は困り果てていました。
ある日、Micの家に郵便受けを取りつけに、ポストのおじさんがきてくれました。
まだ、髪の短いMicをみて、「かわいい男の子だねえ」と目を細めました。
Haruは、「いやだわ。この子、女の子なんですよ?」というと、おじさんは、
何故か、また「ほんとにかわいい男の子だねえ」と笑って言いました。
Micは、短い髪で居ると男の子に見られちゃうんだ…と落ち込みました。
それから、Micは、男の子に見られるのが嫌で髪を切らずに、伸ばし続けました。
時が経ち、Micは、6歳になっていました。
Micは、視力が落ちてしまったので母が、メガネを買い与えることになりました。
メガネを買ってもらったmicが、早速メガネを掛けると、世の中の風景がクリアにみえて
Micは、世界は、こんなにきれいに見えるものだったんだ!と感動しました。
すると、そんなMicを見て母親のHaruは、大きくため息をついて
「やっぱり女の子だとブスにみえるわねえ…」
と言い放ちました。Micは、驚いて母親の顔を見上げました。
「男の子だったら、カッコよくなるんだけど、女の子だとやっぱりブスね!」
と、もう一度繰り返し言いました。
Micは、信じられない!という思いで呆然と立っていると、背後から
「ブース!ブス!」とヤジが飛んできました。
驚いて振り返ると、そこにはYuiが立っていて意地悪くわらっています。
周りの同級生たちも、メガネをかけたMicの顔を覗きこんでは、「変なの!」とか
「確かにブスかも!」と口々に口走ります。
せっかく、目が見えるようになったのに…とショックでメガネを外すと、世界がぼやけてしまって何も見えず、真っすぐに歩けなくて人にぶつかって怒られてしまいました。
Micは、どうしていいかわからず、自室に駆け込んでメガネを床に放り投げ、ベッドに突っ伏して大声で泣いてしまいました。
それからというもの、Micは、人前に出る時は、深く帽子を被ってマスクをするようになりました。服は相変わらずYuiにボロボロにされてしまうので、Micの格好は、ますますヘンチクリンなものになってしまいました。
それで、また余計に虐められることになります。
それからまた時が経って、Micは15歳になっていました。
服は、相変わらず姉のYuiのお下がりのままでしたが、Yuiも17歳ともなれば、さすがにMicの服を引っ張ったりハサミで切り刻むようなことはしなくなったので、服がボロボロになることはありませんでした。
多少、流行おくれの服であっても、それでも前よりマシだと自分に言い聞かせていました。
その時、木の陰から誰かが呟きました。
「お前は、相変わらずブスだな!頭も悪くて馬鹿だし!」
思わず振り返ると、黒いフードを被った女が立っていました。
年齢は、Micとほぼ変わらないようにみえます。顔はよくみえません。
「私は、Ema。黒魔女よ。」
と、そのEmaという黒魔女は、ニヤリと笑いました。
「何なの?失礼な魔女ね!」とMicは、精一杯言いました。
「だって、本当のことじゃないの?お姉さんのお古を着てダサいし、めがねもかけててブスじゃないの!おまけに、学校の成績も悪いし、馬鹿じゃん!」
確かに、Micは何もかもに自信がなくて、勉強にも身が入らないし、スポーツも得意ではなく、学校の成績は良いとは言えるものではありませんでした。
「う、うるさい!」とMicが目をつぶって怒鳴りました。
すると、Emaは、「こわーい!」と言いながら箒にまたがって、ひらりと宙に舞ってmicをかわしますが、Micの周りをぐるぐると飛びながら回って「ブース!ブース!」と口元に手を添えて冷やかします。
Micは、まるで姉のYuiみたいだな!と思ってギリリと歯ぎしりをしました。
どうして、みんな私のことをそんな風に言うの??
劣等感があるまま、Micは大人になりました。もう20歳です。
Micは、街に出てケーキ屋さんで働くことになりました。
小さいころから、甘いお菓子が好きでした。よく通っていた街のケーキ屋さんエトワールの店主のおじさん、BobさんがMicに、そんなにお菓子が好きなら働いてみない?と誘ってくれたのです。Bobさんはとても優しくて仕事も丁寧に教えてくれて大好きなお菓子に毎日囲まれて、Micは幸せでした。
でも、エトワールのマダムはMicに厳しくてお客さんのミスで起きたトラブルでも全てMicのせいにします。
お客さんに悪く思われたくないからです。
お客さんが謝っても、Micが悪いんです!といつも決めつけてしまいます。
そして、Micに謝罪を要求します。
お客さんも困り果てますが、マダムの勢いに押されて最後には、マダムの言う事を受け入れてしまいます。
そんなマダムに、店主のBobさんも強く言えず、Micは誰も自分を助けてはくれないんだ…と絶望してしまいます。
Micがエトワールで働きだしてから2年が過ぎた頃、Micの下に後輩が出来ました。
Miyuという名前で、金髪で色白、青い目がくりくりとして可愛らしい子でした。
Micは、相変わらずお姉さんのYuiの流行おくれのお下がりの服を着ていて、どことなく古臭い服で、度がきついメガネをかけていると目が小さくみえて、Miyuとは対照的な外見でした。
可愛らしいMiyuに嫉妬しているのもあったのか、MicはMiyuに厳しく当たります。
かつて、マダムがMicにしていた仕打ちを、そのままMiyuにもしていました。
Micは、むしろそれが正しいとおもっていて、そうすべきだと思いこんでいました。
ある日、エトワールにスラッと足が長くて色白のカッコイイ紳士が現れました。
静かに店のドアを開けて帽子を取り、店に入ってきたその青年に、Micは一目ぼれしてしまいました。その青年は、にこりと笑って「甘いものが好きなんです」といいました。
Micも、「わたしもそうなんです!」と言って、お勧めのケーキを4個ほど紹介すると4個のケーキを全て買ってくれました。
Micがお会計をしていたので、Miyuが、ケーキを箱にいれて丁寧に包んで運ぼうとする矢先に、Miyuはケーキの箱を床に落としてしまいました。
Micは、それを見て、烈火のごとくMiyuを叱りつけました。
「何してるのよ!お客様のケーキなのよ!」
Miyuは、泣いて謝ります。それでもMicの怒りは収まりません。
紳士なお客さんは、「まあまあ、そんなに言わないで…」と止めました。
Micは紳士な青年に向き直って、「いいえ!この子は、どんくさくて馬鹿で、どうしようもないです。お店でも手を焼いていて困っているんです!お気になさらないでください!」と堂々と笑顔でいいました。
その紳士は、急に怖い顔になって
「なんだって?」
と言い放ちます。
そして、急にMiyuの手を取ると自分の方にグイッと引き寄せてMicを睨みつけました。
Micは、わけがわからず呆然とその光景をみつめていると、紳士が口を開きました。
「この子は、私の妹です!Miyuが働いているからどんなお店かと思って寄ったんです。
私たちは、ここの地主の子供です。本当なら働かなくてもいいんだけれど、社会勉強のために、身分は明かさず働いていたんです。でも、エトワールがこんなひどい店だとは思わなかった!大事な妹をこんなところには任せられない!」と言って紳士は、Miyuの手を引いて代わりのケーキも貰わず帰ってしまいました。
Micが青ざめて立っているとマダムがやってきて、案の定こっぴどく怒られてしまいました。
でも、いつもあなたが私にやっていることじゃないか…と思いましたがMicも言えませんでした。
後日、紳士からMiyuが使っていたお店の制服が送られてきました。制服には、
「Miyuは、もう辞めさせます」と手紙が添えられていました。
Micは、初恋の人と、Miyuというお店の戦力を同時に失ってしまいました。
そして、地主の長男を立腹させたので、忽ちうわさは街中に広がって前々からのマダムの評判も悪く、今回のMicの件でお店の信用と売り上げも地に落ちてしまいました。
お店には、次第にお客さんが来なくなってしまい、やがて閉めてしまいます。
Micは、一体何が悪かったのか…と落ち込んでべッドに伏せて泣いてると、どこからともなくクスクスと笑い声が聞こえてきました。
ハッと顔を上げると、目の前に黒魔女のEmaが立っていました。
「え?なんでアンタがここにいるの?」と叫ぶと、Emaは、にやりと笑って
「だって、私は…」といいかけて「そんなことより、こんなことになってざまあないわね!」と高笑いしました。「自業自得ね!」と言い放って、Emaは箒にまたがってひらりと飛んで消えて逃げてしまいました。
自業自得…
そうなのかもしれない。Micは思いました。
私は、Miyuに随分と酷いことをしてきてしまった。
自分がされて辛かったことを、Miyuにもしたから、自分にも跳ね返ってきてしまったのかもしれない。初めて、自分がどんなに酷いことをしてきたのか、Micの身に沁みたのでした。
「一体、この先どうすればいいの…?」
自分がこうなってしまったのは、何故か、どこで間違ったのか、ずっと考えますが、答えは見つかりません。
よろよろと立ち上がり、部屋のドアに手をかけたその時でした。
リンリン!と誰かが呼び鈴を鳴らしています。
誰?また、Ema?と怯えてドアを開けるとそこには…
なんとMiyuが立っていました。
「Miyu…」
Micは、Miyuの顔を見た途端に、ボロボロと大粒の涙をこぼしてその場に泣き崩れてました。
Micは「ごめんなさい、ごめんなさい…!」と言うのが精一杯でした。
すると、Miyuは、Micの前にひざまずいて、Micの手を取りました。
「私こそ、ごめんなさい!あれから、Micさんのことが気になってお店に行ったらもう既にお店がなくなっていて…兄もなんてことをしたんだと思って、どうしてもMicさんに逢いたくなって兄の反対を押し切ってここへ来たんです。」
「兄は、極端なことをする人なんです。何もお店を潰さなくても…Micさんが苦しんでいるのに、こんな仕打ちをして本当にすみません…」
「Miyu…どうして…」
Micは、涙が溢れてMiyuがみえなくなってしまいました。
「私も辛かったけど、Micさんがマダムに理不尽に叱られているのを見たんです。だからMicさんが、どうしてあんな風になってしまったのがわかったんです。マダム、わたしにもめちゃくちゃキツかったんですよ!」とMiyuが笑って言った。
タチヨミ版はここまでとなります。
2021年12月23日 発行 初版
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