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1.熊の掌
(一)食憲鴻秘(清時代の料理書)
地上に穴を掘って半分石灰を入れ、そこに毛のついた熊の掌を置き、その上に石灰を入れ、水を注ぐ。石灰によって熊の掌が化学反応を起こしたら取り出して、陰干しにする。そうすれば、毛も毛根も容易に除去できる。その熊の掌をきれいに洗ってから、米のとぎ汁に一日か二日浸しておく。その後豚の脂でくるんでじっくり煮る。煮えたら、また豚の脂を取り除く。その後、掌をひも状に裂いて、豚肉と一緒にとろ火で煮込む。
別のやり方:熊の掌を柔らかく煮込むのは容易ではない。柔らかく煮込んでいないものを食べると腹具合が悪くなる。サンショウと塩の粉を小麦粉に混ぜたもので熊の掌をくるみ、飯を炊く鍋で十数回蒸したら食べられる。また、熊の掌の肉と豚肉を一緒に煮ると、豚肉は柔らかく芳醇な味になる。残った熊の掌は食べずに、次に豚肉を煮るときにまた使う。こうして豚肉と一緒に十数回煮ると、熊の掌は食べられるようになる。長期間保存でき、変質しない。
熊の掌は上等で美味な食べ物として、悠久の歴史を持つ。春秋戦国時代の「孟子」に「魚は我が欲するところなり。熊掌もまた我が欲するところなり。二者兼ぬることを得てべからずんば、魚を捨てて熊掌をとるものなり」とある。熊の掌はコラーゲンを主とする結合組織で、乾燥したものを短時間で軟らかく煮るのはとても難しい。それゆえ、春秋時代、楚の成王は太子の反乱に遭ったとき、「熊の掌を食べさせてくれ。それから死ぬ」と言って時間を稼ぎ、救援の兵が来るのを待った。熊の掌の調理には難度の高い技術が要るので、歴史上多くの調理人が、出来栄えが悪いからと殺されている。
その後、料理人の不断の研究により、熊の掌を調理する技術はますます向上していった。清の康熙帝時代の満漢全席にあった熊の掌の料理は「鮮やかな味で香りは濃厚、さくさくとして滑らかで玉のような白い色つや。食べて称賛しない人はいない」と言われている。
(二)唐魯孫(1907-1985.作家)
十月二十日顔元叔教授が、また十月二十三日に夏元瑜さんが、熊の掌に関する文を発表された。私は昔から食べることが好きなので、往時を振り返り、熊の掌について述べてみたい。
かつて熱河の高官だった爽良という人が言っていたが、興安嶺にも長白山にもツキノワグマが生息し熊の掌が手に入るが、食べるなら長白山の熊の掌がいいそうだ。
興安嶺でも長白山でも、冬になるとマイナス二十度か三十度になる。が、長白山の夏は蜜蜂が特別に多く、ハチミツも多く産する。不思議なことに、興安嶺では蜂の巣はあまり見ない。
ツキノワグマはハチミツがとても好きだ。長白山の蜂の巣は、たいてい地面に倒れた枯れ木の中にある。ツキノワグマは蜜蜂に刺されるのも恐れず、皮が粗くて肉厚の手を巣の中に突っ込んで蜜をなめる。
深秋にハチミツをたっぷり食べ、木の穴の中で冬眠する。その時片方の前足で穴の入り口をふさぎ、もう片方をずっとなめ続ける。今年は左前足をなめ、来年は右前足をなめるという具合だ。それゆえ熊の掌を調理するときは、左と右を別々に煮込む。ひと冬の間熊がなめ続けた部分には唾液がしみこみ、肥えて豊かな味になっているからだ。古人がどうやって熊の掌を調理していたかはわからない。今は煮込む。
新しい熊の掌はすぐには食べられない。次の年になるまで乾燥させる。新しい熊の掌は水を使わず、ざら紙で血をふき取り、石灰を底に敷き、その上に炒り米を分厚く置いた磁器の壺に入れる。入れた後周囲を炒り米でびっしり固め、口の部分を石灰で封じて一年か二年億。調理はそれからだ。
壺から熊の掌を取り出してきれいに洗った後、分厚くハチミツを塗って弱火で一時間煮る。その後ハチミツを洗い流して調味料を入れ、弱火でじっくり煮込む。炭火が一番いい。三時間煮込むと香りが鼻を打つので、鍋を開ける。もしハチミツを使わなかったら、三日三晩煮込んでも、食べられるものにならない。
2.鹿鞭(オス鹿の生殖器)
食憲鴻秘
米をといだ汁に鹿鞭を一日か二日浸してから、きれいに洗う。それにネギ、サンショウ、塩、料理用酒を加え、容器に入れて密封する。それをとろ火で煮込んでから食べる。
鹿鞭は漢方薬で、硬くて折れにくい。気は腥で性は温、味は咸辛で、肝、腎、膀胱の三経に入り、腎精を補って腎陽を盛んにし、精気を益して腰やひざを強める働きがある。
様々な使い方があり、酒に浸してもいいし、薬膳にしてもいい。煮込んでもいいし、丸薬にしてもいい。腎臓の治療や腰痛膝痛の治療に使い、耳鳴りや不妊症にも効果がある。が、、もともと陽が盛んな人は、服用を慎んだ方がいい。
2022年2月19日 発行 初版
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