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1.アワビの料理
アワビは殻のある軟体動物で、海水中の礁石にへばりつき、藻類を食している。殻の外ヘリに呼吸用の孔が並んでいる。私たちの土地で「九孔」と呼ぶものは、アワビの一種だ。
アワビの美味をほめない人はいない。新鮮な「九孔」はどこのシーフード店でも売っており、独特の美味だ。が、日干しにした広東のアワビや缶詰のアワビと同列に論じることはできない。新鮮なアワビは柔らかくて香りがあり、調理したアワビには濃厚な味がある。
広東ではふかひれの醤油煮と干しアワビの醤油煮が有名だ。
アワビは厚くて噛み応えがあり、ずしりとした重みがある。調理を経てもしこしこしており、非凡な味だ。熊の掌よりはるかにいい。
缶詰のアワビは、私の知る限りは日本のものとメキシコのものがあり、それぞれ特色がある。日本のアワビはやや小さく、色が少し淡い。一缶に四つか五つ入っていて、細やかで柔らかい。メキシコの缶詰はアメリカで売れている。様々な品質のものがある。
缶詰のアワビは調理を経ており、薄切りにしてそのまま食べてもおいしい。缶詰のアスパラガスと組み合わせると、絶妙だ。缶詰を開けるや否や、フォークで食べ始める人もいる。 アワビの千切りにコウサイを加えて炒めたものは酒のいいつまみだ。
アワビをさいころ状に切り、エビと一緒にスープにすると、酒もご飯も進む。
が、私が食べたアワビ料理でもっともよかったのはアワビ麺だ。
ある年の冬、瀋陽の友人の家に泊まった。私は明け方に起きる習慣なのだが、その家の料理人王さんが苦しんでいた。理由を聞くと、胃が痛いと言う。いつも携帯している胃薬を二粒あげたら、痛みがやんだ。王さんはとても感謝し、お礼に朝食に麺を作ってくれることになった。ほかに具がなかったので、主人のためにとっておいたアワビの缶詰を開け、アワビを取り出して千切りにしスープも一緒に鍋に入れ、アワビ麺を作ってくれたのである。それまで経験したことのない壮挙だった。胃薬二粒で、アワビ麺だ。香りで主人は知ったのだが、にこにこしていた。
2.西施の舌
郁達夫が1936年「福州における飲食と男女」という文で、西施の舌(西施は中国四大美女の一人)について書いている。
:「閩小記」に書かれている西施の舌がカラスガイの肉を指すかは知らない。が、カラスガイの肉は色が白くて肥えており、さくさくとした味でニワトリのスープで煮るのが適している。楕円形のカラスガイの肉は、色も香りも味も形もすばらしい。
「閩小記」は清時代初期の周亮工という人が福建で仕事をしていた時に記したものだ。西施の舌は貝類に属し、マテガイより小さく、ハマグリより長い。カラスガイだったのか?浅い海の砂の中に産するので「砂ハマグリ」とも呼ばれる。殻は十五センチの楕円形で、水管が長くて白く、いつも殻の外に出している。その様子が舌に似ているので、「西施の舌」の名がついた。初めて福建に来た人が西施の舌を食べると、みな美味に驚く。実は西施の舌を産するのは福建だけではない。私の知るところでは、天津や青島から福建台湾に至るまで、浅瀬に生息する。
私が初めて西施の舌を食べたのは、青島の順興楼だ。大碗のすまし汁に尖った白いものが浮いていて、最初は何かわからなかった。
主人が西施の舌だと言ったので、口に含むと、柔らかくてすべすべした感じだ。評判通りの味だったが、すまし汁で水管部分だけを食べたので、少し意外な感じがした。郁達夫の書いた楕円形のカラスガイの肉は、西施の舌を丸ごと鍋に入れたものだ。現在台湾のシーフード店の西施の舌は、丸ごとを調理して出している。郁達夫は、西施の舌は色も香りも味も形もすばらしいと言っている。が、西施の舌全体はそんなにみやびやかな形ではない。美人の名前である「西施」という言葉とはイメージが違うのではないか。
3.タイラギの貝柱
タイラギには薄くて大きな貝殻が二枚ある。殻の開け閉めをつかさどる貝柱は二本だ。一本は殻の中央にあって太く、もう一本は前方にあって細い。これらの貝柱を取って乾燥して、食用にする。
新鮮なタイラギの貝柱は、私は中国大陸で食べたことがない。アメリカ海岸部のシーフードレストランでは、タイラギの貝柱の油揚げは普通の料理だ。油で揚げるだけの簡単なものだが、黄金色に焦げ、柔らかくておいしい。中国の乾燥貝柱のように噛めば噛むほど味が出る、というものではない。
タイラギの貝柱の産地がどこかは知らないが、南宋の詩人陸游が「老学庵筆記」に「明州のタイラギの貝柱には二種類ある」と書いている。明州は今の浙江省にあるので、浙江が産地の一つなのだろう。
タイラギの貝柱の食べ方は多い。乾燥品なので、先にもどさなければならない。水でもどすより、黄酒でもどした方がいい。大きな貝柱がおいしいとは限らない。小さな貝柱は、往々にして芳醇な味だ。一般的な食べ方としては「球状ダイコンとタイラギの貝柱」があるが、
ダイコンを球状に切るのは手間がかかるので、家庭で作るときは千切りでもいい。「菜芯と貝柱焼き」は、野菜の芯と貝柱を別々に焼いた後、一緒にあんかけにしたものだ。
「芙蓉貝柱」は、蒸した卵の吸い物に貝柱をのせ、再度蒸した料理だ。
乾燥貝柱をもどすときに使った水もしくは酒を卵の吸い物に入れておく。以上の三つの食べ方は、貝柱を細かく切る。実は、貝柱を丸ごとじっくり焼けばおいしいと思う。私の母は適度な大きさの貝柱を火腿(中華ハム)の薄切り、冬タケノコの薄切り、乾燥むきエビと一緒に大きな碗に入れ、紹興酒を注ぎ、蒸籠に入れて二時間蒸していた。形容できないほどおいしかった。
4.ゆでオキシジミ
北方人は殻のある軟体動物をあまり食べない。まったく食べないわけではないが、南方人のようには好まない。
北平の山東レストランに、「ゆでオキシジミ」という有名料理があった。
オキシジミは四センチくらいで、肉は少し黄色い。これを熱湯でさっとゆでた後、貝殻を開き、ひとつひとつを仰向けに皿に並べ、料理洋酒とショウガの粉、コショウのこなをふりかける。酒のいいつまみだ。「芙蓉オキシジミ」というのもあった。芙蓉とは蒸した卵のスープだ。五分目まで蒸したら、オキシジミの肉を表面に並べて、再度蒸せば出来上がり。殻ごと蒸すやり方もある。やや荒っぽいとも思うが、それでないとだめだという人もいる。
台湾ではオキシジミを食べたことがない。カキを煎った料理なら有名だ。アカガイは南方では普遍的な食べ物で、人口養殖しているところもある。熱湯で加熱し、殻を開いて、ごま油、醤油、酢を混ぜたものをかけて食べる。殻に血が混じっているので、私はあまり好きではない。ムール貝は
浙江や福建の名産だ。蒸した後醤油で煮込んだりするが、形が醜く、干からびたセミのようなので、北方人には受け入れがたい。
アラスカから南カリフォルニアまでのアメリカ西海岸にアメリカナミガイという貝が生息している。殻は十五センチくらいで、長くて太い肉が殻の外に伸びている。伸縮性はあるが、殻の中に納まりきらない。像の鼻のようだ。シアトルの高さんの家でご馳走になった。まず、像の鼻の部分 だけ切り取り、熱湯でさっとゆでる。そうすると外皮が剥がれ落ちる。その後薄切りにして、ネギ、ショウガ、塩を加えて、強火で油炒めをする。
アメリカ人は炒めるという手法を知らず、アメリカナミガイをうまく調理できていないと高さんが言っていた。
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2022年2月22日 発行 初版
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