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中華古典料理集(六)火腿<中華ハム>

食憲鴻秘、梁実秋、汪曾祺

duotian出版



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火腿(中華ハム)について語ります。

1.食憲鴻秘(清時代の料理書)
  ・金華火腿の作り方
    金華火腿の見分け方
     銀のかんざしを火腿に突き刺して、取り出す。かんざしの先からいい香りがすれば、正統な金華火腿だ。
    金華火腿の作り方
     豚のもも肉五百グラム当たり、炒った塩を四十グラムか五十グラム用意する。手が直接肉に触れると変質してしまうので、手につぶしたわらじをかぶせる。そして炒った塩を肉の表面になすりつける。綿のように柔らかくなるまで、四回か五回これをやる。肉から珠のような塩水がしみ出てきたら、サンショウの粉をしつこくなすりつけ、甕に入れて竹でふたをし、上に石を置いて圧力をかける。十日後に取り出して、稲わらの灰と肉を交互に積み重ねる。陰干しをした後、厨房の中の煙を出す場所の近くにつるし、松の柴で燻す。こうして作った火腿はとてもおいしい。
     火腿は動悸や食欲不振によく、浙江金華と雲南宣威のものがもっとも有名で、上等とみなされている。
     伝えられるところによれば、金華火腿は南宋に始まった。発明者は、金という国と戦った時の英雄宗沢(1059-1128)だ。宗沢は現在の金華の人で、貯蔵可能な大量の豚肉を作って将兵をねぎらおうとした。腐敗防止と色や味を維持するため、苦労をいとわず人民とともに研究をして、金華火腿を開発した。これはただの言い伝えだが、数百年間金華で火腿を生業とする店では宗沢の像を掲げ、宗沢を火腿の創始者として仰いできたのは事実だ。その後、金華火腿は献上品になり、現在まで八百年以上続いてきた。

2.梁実秋(1903-1987)、火腿
   以前は北方人は火腿の食べ方を知らず、脂っこくていやだと言っていた。調理の仕方が下手だったのかもしれない。火腿を見ると恐怖を感じる北方人もいて、清醤肉の方を好んできた。のちになって、多くの北方人も火腿を味わうようになったが、火腿は結局は南方のもので、北方ではあまりはやらない。いくつかの北方のレストランでは決して火腿を使わず、清醤肉を使い続けている。実際、清醤肉もいいものだ。江南に行くときは必ず持っていき、友人にあげるのだが、みな称賛する。ただ、火腿特有の香りは清醤肉にはない。
   火腿の歴史については語らない。金の軍を破った宋の宗沢という人が発明したとも言われている。宗沢は金華の東、義烏の人だ。それゆえ現在まで金華火腿と呼ばれている。  
   火腿の材料や作り方はとても凝ったものだ。金華の近くの東陽県蒋村の蔡氏一族の大部分は火腿製造を生業としているので、「蒋火腿」はとくに有名だ。

金華でいい火腿が食べられるとは限らない。いいものは全国各地に販売される。
   1926年冬のある日、呉梅さんが東南大学の同僚たちと南京の万全で宴会を開き、私も出席した。蒸した火腿が磁器の皿に高く積んで出された。火腿の精華の部分は二センチ四方の塊に切り分けられ、二十個くらいが重なっていた。この上ない美味だった。
   抗日戦争のある日、張道藩さんが重慶の留春wuで宴会を開いた。留春wuは雲南料理の店だ。雲南の食べ物は、ダイコンでもハクサイでもとても大きく、火腿も例外ではない。雲南の火腿は金華火腿より壮観で、脂が多くて肉が厚い。

味は少し落ちるが、焼いたものは独特の味だ。留春wuのものは、焼いた分厚い火腿でパンを挟んでいた。肥えた味で、湖南の蜜汁火腿より上だった。
   台湾はとても暑いので、火腿製作には向いていないが、かなりの人が模倣品を作っている。その結果粗製乱造となり、質の悪いものが出回っている。漬けたり天日干ししたりが不足しているのに売りに出すので、屍のにおいがするものまである。
   ある時、本物の金華火腿が一個手に入った。小ぶりで固かった。何年も収蔵していたのだろう。知り合いの店に行き、主人に包丁で切ってもらったのだが、主人は茫然としていた。鼻の穴を開いてにおいをかぎ、「本物の金華火腿だ。このにおいは数十年かいでいない!」と叫んだ。手放すに忍びない様子だったので、一部分を分けてあげた。家に帰ったらスープにして食べる、と言っていた。
   アメリカのハムはまずいものではないが、火腿とは別のもので、同列に論じられない。「バージニアハム」という品種は、色も味も香りも金華火腿に近い。骨を取ったものはことにおいしいので、海外にいる方は試してみてはどうか。

3.汪曾祺(1920-1997)、火腿
   雲南の宣威火腿と浙江の金華火腿はともに有名で、甲乙つけがたい。金華火腿は多くの人に知られ、種類も等級も多い。「雪舫蒋腿」は有名だ。より高級なのは、竹の葉で燻した「竹葉腿」というものだ。宣威火腿はそんなに凝っておらず、なんとなく火腿と呼ばれている。

宣威ではそれぞれの家で火腿を作っているが、集中して売っているのは昆明だ。正義路の東側に火腿を売っている店がある。丸ごとも切ったものも売っており、火腿骨や火腿油も売っている。

上海の金華火腿を売る店では「火腿脚爪」を時々売っているが、火腿油を単独で売っているとは聞いたことがない。火腿骨でスープを煮たり、火腿油で豆腐をじっくり煮込んだりすれば、とてもおいしいだろう。
   火腿は味を向上させる調味料としてよく使い、単独で食べるときは蒸して薄切りにする。金華火腿は部位によって「油頭」、「上腰」、「中腰」に分けられ、それより下は「脚爪」と呼ばれる。昆明の人が火腿を食べるときはふくらはぎからひじまでの部分を特別に重んじ、「金銭片腿」とも呼ぶ。円形の切り口の真ん中が赤身肉で、周囲が脂身、それに薄い皮がついている。大西門外にあまり大きくはない食堂がある。
   そんなに整っているわけではないが、品ぞろえは豊富で、必ず「金銭片腿」を置いている。馬を駆る運送屋の最大の好みの品だ。その食堂の主な顧客は馬を駆る運送屋なのだ。彼らが中に入ると、他のものを頼まぬうちに、まず「金銭片腿を一皿」と注文する。
   火腿が主材料ではないが、火腿なしでは作れぬ昆明料理もある。「ライギョのはさみ揚げ」がそうだ。

二片のライギョ(ライギョは活きのいいのを殺す)の肉に、赤身と脂身の混じった火腿を一片はさみ、平底鍋に置き、とろ火で加熱する。調味料は一切使わない。言葉にできないほどおいしい。東月楼の名物料理だ。東月楼は昆明の伝統ある店だが、今はもうないそうだ。
   昆明吉慶祥慶の火腿月餅は素晴らしい。今年の中秋、北京に運送されてきたのを買って食べたが、昔と変わらぬ美味だった。

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中華古典料理集(六)火腿<中華ハム>

2022年2月24日 発行 初版

著  者:食憲鴻秘、梁実秋、汪曾祺
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