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社会福祉士試験 重要項目 らくらく丸暗記BOOK

上野和夫

ペネトレイト



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目次

本書につて
社会福祉士ガイダンス
人体の構造と機能及び疾病
心理学理論と心理的支援
社会理論と社会システム
現代社会と福祉
地域福祉の理論と方法
福祉行財政と福祉計画
社会保障
障害者に対する支援と障害者自立支援制度
低所得者に対する支援と生活保護制度
保健医療サービス
権利擁護と成年後見制度
社会調査の基礎
相談援助の基礎と専門職
相談援助の理論と方法
福祉サービスの組織と経営
高齢者に対する支援と介護保険制度
児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
就労支援サービス
更生保護制度

社会福祉士試験 重要項目 らくらく丸暗記BOOK
ー試験合格には「重要項目を正しい覚える」ことが大切!ー




本書について


本書は、社会福祉士試験の筆記試験によく出題される重要項目を集めています。


毎年出題される問題の半数以上は過去に出されている内容と同じです。社会福祉士試験の合格ラインは7割以上の正解です。過去の問題をしっかり理解していると、7割以上の点数を取ること ができます。ただ、注意しないといけないのは、同じ文章で問いかけているとはかぎりません。そこで大切なのは、短い文章で正しい内容をしっかりと覚えることが大切なんです。


重要項目の短い文章を、毎日30項目覚えると1ヶ月ですべて身に着けることができます。
読むことにあわせて、耳を使っての短文記憶の努力をされると、さらに短い日数でしっかり暗記することができます。
付属教材として音声テキストを準備していますのでご利用ください。


あとは過去問題集を手に入れて解いてみましょう。問題はスラスラ解けるような感じがします。出題者のワナにはまることがなくなるまで繰り返し過去問題を解いてください。
当社ののホームページ(http://penetrateblog.com/)に問題を集めた本棚を準備しています。無料で利用できますので、ぜひトライしてください。すべての問題で合格(7割以上正解で合格)できたら試験に合格できると思います。







社会福祉士試験の申し込みスケジュール


社会福祉士試験の申し込みスケジュールは、以下のようになっています。


①2021年(令和3年)8月上旬:受験の手引を申請
8月上旬から「受験の手引」というものを取り寄せることができます。


初めて受験をする場合は「受験の手引」がなければ試験の申込みができません。
請求にお金はかからないので確実におこないましょう。


※過去の試験(第10回~)で、受験票を受け取った方のうち、確定した証明書を提出した方(受験資格が確定している方)は、インターネットによる受験申し込みができます(PC・スマートフォン・タブレット)。『受験の手引』を取り寄せる必要はありません。


②2021年(令和3年)9月9日〜10月8日:申し込み
申し込み期間は令和3年9月9日から10月8日の約1ヶ月間です。(消印有効)


期間内に忘れず申し込み手続きを済ませましょう。


申し込みができなければ受験自体ができないので、余裕を持って準備し郵送しましょう。


③2021年(令和3年)12月頃:受験票が返送されてくる
無事に申し込みが完了すると、12月ごろに受験番号や試験会場が記載された受験票が返送されます。


内容に誤りがないか確認し、試験当日まで無くさないよう保管しましょう。


④2022年(令和4年)2月6日:受験本番
試験当日です。試験曜日は日曜で全国一斉に実施されます。


積み重ねの成果を発揮しましょう!


⑤2022年(令和4年)3月15日:合格発表
合格発表です。結果はインターネットで確認することができます。


また、受験者に対して結果通知が同日に発送されます。


社会福祉士試験の申し込み方法


つづいて、試験の申込み方法について解説します。


社会福祉士試験の申し込みは、


郵送での申し込み
インターネットでの申し込み 
(過去の試験(第10回~)で、受験票を受け取った方のうち、確定した証明書を提出した方※受験資格が確定している方が対象)
2つの方法があります。


この2つでは出願方法が異なるので、それぞれの場合に分けて見ていきましょう。


1 郵送での申し込み方法
まずは郵送での申し込みについて解説します。


①受験の手引を入手する(ホームページ・はがき)
郵送申し込みの場合は、最初に『受験の手引』を入手する必要があります。


受験の手引は社会福祉振興・試験センターのホームページから取り寄せることができます。


また、受験の手引の請求は郵送はがきでも可能です。


記入例を参考にはがきの裏面に、


郵便番号
住所
氏名
電話番号
必要人数(例:社会福祉士受験の手引1人分)
上記をはっきりと記入し「社会福祉振興・試験センター宛」に郵送しましょう。


精神保健福祉士と同時受験を予定している場合は(精神保健福祉士受験の手引1人分)と併せて記入してください。


送り先
郵便番号:150-0002
住所:東京都渋谷区渋谷1の5の6
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター行


参考: 社会福祉振興・試験センター


②提出書類を準備する
つづいて、受験の手引に同封してある提出書類の記入や、受験料の振り込みなどに取り掛かりましょう。


必要な書類な次のとおりです。


全員が提出するもの
・受験申込書
・受験手数料払込受領証貼付用紙
・受験用写真等確認用紙


初受験者が提出するもの
・卒業証書(見込み含む)
・指定科目履修証明書(大学&短大卒のみ)
・実務経験証明書(実務経験が認められる人のみ)


再受験者が提出するもの
・受験資格確定済申出書
 ※再受験の場合は、一定の要件を満たしてればインターネット申請も可能です。


受験料
受験手数料は以下を参考にしてください。


受験料
社会福祉士(一般受験者) 19,370円
社会福祉士(精神保健福祉士と同時受験者) 16,840円
社会福祉士(科目免除者) 16,230円
払込期限は10月8日(金)までです。


受験手数料は、提出書類が郵送の場合、指定の「コンビニエンスストア専用払込票」を使用しての支払いになります。


③封筒記載の提出先に郵送で提出する
②で用意した書類を受付先に送付します。


届いていないなどのトラブルを防ぐためにも、郵送は郵便窓口から「簡易書留」で郵送することを強くおすすめします。


受験申込書の受付期間は、令和3年9月9日(木)から10月8日(金)までです。


10月8日の消印まで有効ですが、余裕を持って申込みをおこないましょう。


2 インターネットでの申し込み方法
次に、インターネットでの申し込み方法です。


※前提として、インターネットで申し込みをおこなうには「2回目以降の受験で要件を満たした方」が対象となるので注意しましょう。


インターネットの申込期間は2021年9月9日(木)〜10月8日(金)の約1ヶ月間です。


インターネットによる申し込み手順は次のとおりです。


① 申込みに必要なものを準備する
申し込みには次のものが必要です。


メールアドレス
 
過去の受験票または結果通知(「受験回」「受験番号」が分かるもの)
※複数回受験者は直近のもの
 
顔写真データ(幅665・高さ915ピクセル・JPEG形式に限る)
→申込み6ヶ月以内のもの、正面を向き肩から上、脱帽、両目が開き目がはっきり見え、試験中にメガネを着用する場合はメガネを着用


※写真の詳細はこちらで確認できます
以下は該当する方のみ必要です。


クレジットカード情報
(クレジットカード決済を選択する場合)
 
精神保健福祉士登録証に記載された「登録番号」
(試験科目(共通科目)の免除を申請する方)
 
前回受験時の配慮決定通知
(障害のある方などで、受験上の配慮を希望する方)
② 試験センターのホームページにアクセスし必要事項を入力
社会福祉振興・試験センターのホームページで必要事項を入力してください。


申込みはこちらでおこなうことができます。


申込み:社会福祉振興・試験センター


入力事項にしたがって入力事項を記入しましょう。


③受験手数料の支払い
インターネットによる受験申し込みをする方は、クレジットカードまたはコンビニエンスストアでの支払いができます。


申し込みの際の注意点
以上で申し込みは完了ですが、いくつか注意する点があるので解説します。


①インターネット申し込みは過去の受験者が対象
インターネット申し込みは、過去に受験しており以下の条件にあてはまる場合に利用可能です。


過去の試験(第10回~)で、受験票を受け取っている
確定した証明書を提出した方(受験資格が確定している)
上記に該当する方は、「受験の手引」を取り寄せる必要はありません。


手続きを簡略化できるので、対象の方は積極的に活用しましょう。


インターネットによる受験申し込みできるか不明な方、たとえば過去の試験で、「受験票(結果通知)」を受け取ったが、


受験票(結果通知)を紛失してしまった
確定した証明書を提出したか分からない
など、受験申し込みできるかあいまいな方は、下記に問い合わせをして確認することも可能です。


社会福祉振興・試験センター 試験室
電話番号:03-3486-7521
受付時間:9時30分~17時(土曜・日曜・祝日を除く)


問い合わせは、どんなに遅くとも10月1日までに確認しましょう。


参考: 社会福祉振興・試験センター


②受験の手引の請求・申込みは余裕をもって完了する
「受験の手引」申請後、手元に届くまでに数日間かかってしまいます。


どんなに遅くとも締切の一週間前(10月1日まで)には申請を終えましょう。


申込書類についても、必要事項の記入、証明証の準備、受験料の振り込みなどを終えてから書類を送付する必要があります。


申込みは早く済ませ、試験勉強に集中しましょう。


③2021年度(2022年)試験から受験料が上がる
厚生労働省の発表では、2021年度の社会福祉士試験から受験料が上がります。


受験料
社会福祉士(一般受験者) 15,440円→19,370円(+3,930円)
社会福祉士(精神保健福祉士と同時受験者) 13,980円→16,840円(+2,860円)
社会福祉士(科目免除者) 13,020円→16,230円(+3,210円)
と、約3,000円前後受験料が引き上げられます。


とくに2回目以降受験される方は前回より値段が上がってびっくりされるかもしれません。


指定された受験料を用意しコンビニエンスストアなどで支払いを完了しましょう。


まとめ


以上、社会福祉士の申し込みのスケジュール、申込み方法、注意点について解説しました。


インターネットでの申込みは初受験の方はできないので、とくに注意が必要です。


申込みは、何かと手間な部分が多いので早めに必要書類を準備しスケジュールに余裕を持って進めることをおすすめします。


難関といわれる社会福祉士試験、確実に合格を狙うなら対策講座の利用を検討してみてはいかがでしょうか?



1.人体の構造と機能及び疾病


人間の成長・発達・老化


☐ 1.卵子と精子が結合して、受精が起きます。


女性の卵巣から排卵された卵子と、男性の精巣でつくられた精子が結合して受精が起こります。


☐ 2.受精後、約4週間で胎芽となり、40週目頃に出生を迎えます。


受精後、約4週間で胎芽となり、胎生8週間で基本的な生理機能を担う器官が形成され始めます。12週目頃には性別がわかるようになり、40週目頃には体長約50cm、体重約3,000gに成長し、出生を迎えます。


● 3.脳、脊髄、感覚器官などは、児童期に急速な発達を遂げます。


アメリカのスキャンモンは、人間の器官や組織を4つに分類し、それぞれの成長の型について、20歳のレベルを100%としました。
・「神経系型」に属する脳、脊髄、感覚器官などは乳幼児期に急速な発達を遂げます。
・「生殖系型」に属するものは、思春期以降に著しく成長します。
・「リンパ系型」に属する扁桃腺やリンパ節などは、思春期の初めまでに成長がピークに達し、その後退縮して成人期を迎えます。
・「全身(一般)系型」に属する心臓、筋肉などは、乳幼児期まで急激な発育をした後いったん緩やかになり、乳児期の後半に再度成長して成人期を迎えます。


● 4.乳歯は、生後6、7か月頃に生え始めるが、出方は個人差が大きい。


乳歯は、生後6、7か月頃に生え始め、1歳頃には8本前後、3歳までには20本生えそろうが、出方は個人差が大きい。
乳歯は、6歳頃から脱落して永久歯に代わります。


● 5.新生児の運動は、原始反射の影響が大きい。


新生児にみられる主な原始反射
把握反射は、手のひらや足の裏に触れたものを握ろうとする。
吸綴反射は、口に触れたものに吸いつこうとする。
モロー反射は、大きな音がすると手足を広げたり、しがみつこうとしたりする。
歩行反射は、両脇を支えながら両足を床につけると歩き出すような足の動きをする。


● 6.乳児は、2、3か月頃から喃語を発するようになります。


乳児は、2、3か月頃から「アーアー」や「ウーウー」などの喃語を発するようになり、1歳頃には初語を話すようになります。小学校に入るまでに5千~1万語の語彙を獲得するといわれています。


● 7.老いてきた印象を与える徴候を、老年徴候と呼びます。


老人徴候とは、自覚的な老いを示す症状や、人が見て老いてきた印象を与える徴候のことで、中年期以降、万人に現れるものです。
主な老年徴候は、目-老視(老眼)、皮膚-しわ・いば・シミ、骨-円背・低身長(身長短縮)、大脳-記憶力低下、心血管-動脈の伸展力低下


人体の構造と各器官の機能


● 8.体液とは、体内を満たすすべての液体の総称です。


人間の体の60%は体液でできているといわれています。細胞内液が10%以上減少すると、機能障害や循環障害などの重篤な症状を呈します。


体液の区分
体液(体重の60%)、細胞内液(体重の40%)・細胞外液(体重の20%)、間質液(体重の15%)・血漿リンパ液(体重の5%)


● 9.血液は、血球と血漿からできています。


血液の成分とその働き
血液は血球(45%)と血漿(55%)からできています。血球は赤血球(血色素ヘモグロビン:酸素を運搬)、白血球(顆粒球:細菌感染で増加、無顆粒球:免疫関与、抗体産生貧血、免疫不全で減少)、血小板(血液の凝固に関与)からできています。血漿は、血清(フィブリノーゲン以外の成分で黄白色透明の液)とフィブリノーゲン(血液の凝固に関与)でできています。


● 10.心臓は、左右2つずつの心室と心房からできています。


心臓は、左心房、左心室、右心房、右心室という計4つの部屋からできています。右心房と右心室の間にある弁を三尖弁、左心房と左心室の間にある弁を僧帽弁といいます。


● 11.血液は、心臓がポンプのような働きをすることで、身体のすみずみにまで流れます。


血液の循環には、体循環と肺循環の2つの経路があります。
① 体循環は、左心室→大動脈→肺を除く全身→大静脈→右心房
②肺循環は、右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房


● 12.腎臓は、腰椎の背部に左右一対ある臓器です。


腎臓は、血液中から、体に必要なものを残し、不要なものを排出する浄化の働きをしている。腰椎の背部に左右一対ある臓器で、ソラマメの形をしています。


● 13.尿は、腎臓でつくられた後、膀胱に溜められ、尿道を通って排出されます。


尿は、腎臓でつくられた後、膀胱に溜められます。膀胱に尿が150~300mL溜まると尿意を感じ始め、600~900mLになると我慢することが困難になり、尿道を通って排出されます。


● 14.呼吸とは、活動に必要な酸素を取り入れ、不要になった二酸化炭素を排出することです。


呼吸とは、活動に必要な酸素を取り入れ、不要になった二酸化炭素を排出することで、この働きをガス交換といいます。
・肺胞気と毛細血管血液間のガス交換は、外呼吸です。
・組織における血液と細胞間のガス交換は、内呼吸です。


● 15.消化器は、消化管と臓器に分けられます。


消化器は、口腔、食道、胃、腸、肛門に至る食べ物の通り道である消化管と、肝臓、胆のう、膵臓などの消化液を分泌する臓器に分けられます。


消化器の機能
口腔:食べ物は口から入り、口腔内で咀嚼されます。
食道:□腔内で咀嚼された食べ物は、食道を通って胃に向かいます。
胃:食道を通ってきた食べ物が噴門から胃に入り、胃液によってある程度分解され、幽門から小腸へ送り出されます。
小腸は、十二指腸、空腸、回腸からできています。
十二指腸:胆汁と膵液が流れ込み、食べ物の分解がさらに進みます。
空腸:腸液が分泌されます。
回腸:分解された食べ物の成分、水分、電解質が吸収されます。
大腸:消化作用はほとんどなく、水分を吸収して糞便を形成します。
肛門:便意に促され、排泄します。


● 16.神経系は、中枢神経系と末梢神経系に分けられます。


神経系は、脳と脊髄から形成される中枢神経系と、知覚神経、運動神経、自律神経から形成さねる末梢神経系に分けられます。


● 17.大脳は、右半球と左半球に分かれています。


大脳は、右半球と左半球に分かれ、それぞれが前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉の4つの部位に分かれています。


大脳半球の機能分布
前頭葉は、感情、思考、想像、知性に関する機能
側頭葉は、聴覚、記憶などの中枢部
頭頂葉は、皮膚、知覚などの感覚の中枢部
後頭葉は、視覚の中枢部


● 18.自律神経には、交感神経と副交感神経があり、正反対の働きをしています。


自律神経は、意思とは関係なく独立して働き、エネルギーを発散する働きをする交感神経と、エネルギーを蓄える働きをする副交感神経があります。


● 19.人体には20種類のホルモンがあり、超微量で大きな効果を発揮します。


ホルモンは、血液中に分泌され、全身に広がります。人体には20種類のホルモンがあり、超微量で大きな効果を発揮します。


主なホルモンの分泌器官とその働き
膵臓のラングル八ンス島:インスリンは、血糖値を下げる。グルカゴンは、血糖値を上げる。
卵巣:エストロゲンは、女性の性徴と生殖器官の発達を促進
精巣:テストステロンは、男性の性徴と生殖器官の発達を促進
副腎髄質:アドレナリン・ノルアドレナリンは、血圧と心拍数を上げる。
甲状腺:甲状腺ホルモンは、体の機能を調節、分泌過剰でバセドウ病を発症、分泌低下で橋本病を発症
下垂体前葉:成長ホルモンは、成長と発育を制御、分泌過剰で巨人症、分泌低下で小人症


☐ 20.免疫とは、自己と非自己を区別する働きであります。


免疫とは、外部から侵入した異物を排除し、生体の恒常性を維持する基本的機能の一つです。生まれつき持つ非特異的防御機構と、特定の病原体に感染して得られる特異的防御機構があります。


国際生活機能分類とリハビリテーションの理念


● 21.WHOは、2001(平成13)年に国際生活機能分類(ICF)を作成しました。


WHOは、1980(昭和55)年に国際障害分類(ICIDH)を提起したが、2001(平成13)年には改訂版の国際生活機能分類(ICF)を作成しています。


● 22.国際生活機能分類(ICF)は、障害のある人だけでなく、すべての人の健康に関する分類です。


国際生活機能分類(ICF)は、生きることの困難さに注目した障害の分類ではなく、生きることそのものを把握しようとしています。障害のある人だけでなく、すべての人の健康に関する分類です。



● 23.リ八ビリテーションは、急性期、回復期、維持期に分けられます。


リハビリテーションは、単なる機能回復ではなく、障害者や高齢者の身体的、精神的、社会的な「全人間的復権」を意味するものと理解されています。


脳卒中のリハビリテーション
急性期リハビリテーションは、廃用症候群の防止を目的に、発病直後から離床までの時期に行われます。
回復期リハビリテーションは、在宅復帰を目的に、病状が安定した時期に行われます。
維持期リハビリテーションは、回復した機能の維持を目的に、退院後、自宅や施設などで行われます。


● 24.リハビリテーションには、医学的リハビリテーション、教育的リハビリテーション、職業的リハビリテーション、社会的リハビリテーションの4領域があります。


リハビリテーシ∃ンには、次の4領域があります。
①医療の観点からの医学的リハビリテーション
②社会福祉としての観点からの教育的リハビリテーション
③障害者の復職や就職に関する職業的リハビリテーション
④リハビリテーションの全過程を円滑に進行させるため、経済的条件や社会的条件を調整する社会的リハビリテーション


生活習慣病


● 25.生活習慣病とは、生活習慣が発症原因に深く関与していると考えられる疾患の総称です。


生活習慣病とは、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が、発症原因に深く関与していると考えられる疾患の総称で、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧、高尿酸血症などがあります。


● 26.悪性新生物は、日本人の死因の第1位です。


1981(昭和56)年以降、悪性新生物は、日本人の死因の第1位を占めています。高齢社会の進展に伴い、悪性新生物で亡くなる人は増加することが予想されます。


主な死因別死亡者数の割合
悪性新生物28.7%、心疾患15.8%、肺炎9.9%、脳血管疾患9.7%、老衰4.8%、不慮の事故3.3%、自殺2.1%

□ 27.悪性新生物の部位別死亡数では、肺がんと大腸がんは増加傾向です。


悪性新生物の部位別死亡数
男性では、肺がん、胃がん、大腸がんの順
女性では、大腸がん、肺がん、胃がんの順


● 28.虚血性心疾患には、狭心症と心筋梗塞がある。


虚血性心疾患のうち、可逆性で胸痛をきたすものを狭心症、虚血により心筋が壊死に陥ったものを心筋梗塞と呼びます。


狭心症と心筋梗塞の対比
狭心症は、原因は冠動脈の内腔が狭くなり酸素が欠乏、症状は胸痛が通常5分間、治療はニトログリセリンの投与
心筋梗塞は、原因は冠動脈が閉塞して血流が停止し心筋が壊死、症状は胸痛が30分以上続く、治療は血栓溶解薬の投与、経皮的冠動脈形成術など


● 29.高血圧とは、収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg以上の場合をいいます。


高血圧のうち、原因が明らかでないものを本態性高血圧、何らかの原因疾患によって起こるものを二次性高血圧と呼びます。わが国の高血圧は、本態性高血圧が9割、二次性高血圧が1割です。


● 30.脳血管疾患は、脳の血管が詰まったり破れたりすることが原因で起こる疾患です。


主な脳血管疾患には、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血があり、感覚障害、言語障害、意識障害などが現れます。脳梗塞には、脳血栓と脳塞栓があります。


主な脳血管疾患の種類と状態
脳梗塞は脳血栓と脳梗塞
脳血栓は、脳動脈硬化から血栓が生じ、血流が途絶えて脳細胞が壊死した状態
脳塞栓は、心臓などでできた血栓が脳の血管に運ばれ、脳動脈が詰まる状態
脳出血は、脳内の血管が破裂して脳の内部に出血した状態
くも膜下出血は、脳の表面を覆う軟膜とくも膜との間にできた動脈瘤が破裂し
て出血した状態



□ 31.糖尿病は、インスリンの分泌不足かインスリン作用不足のために、高血糖状態になる疾患です。


糖尿病には、インスリンの分泌が著しく障害される1型糖尿病と、インスリン分泌低下とインスリン作用不足が混在した2型糖尿病があります。わが国の糖尿病は、2型糖尿病が95%です。糖尿病の症状には、口渇、多飲、多尿などがあるが、
自覚症状がないうちに進行していることが多い。
尿病の三大合併症は、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害



□ 32.脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪などが過剰または不足した状態をいいます。


コレステロールには、高値になると血管壁に沈着して動脈硬化を促進する悪玉コレステロール(LDL)と、動脈硬化を抑制する善玉コレステロール(HDL)があります。中性脂肪が過剰に蓄えられると肥満になります。

脂質異常症の診断基準(空腹時採血)
高LDLコレステロール血症 140mg/dL以上
低HDLコレステロール血症 40mg/dL未満
高中性脂肪血症 150mg/dL以上


その他の重要な疾病

□ 33.先天性疾患は、遺伝障害、胎児障害、周産期障害に分けられます。

人間の染色体の数は、常染色体44本と性染色体2本の計46本です。性染色体には、X染色体とY染色体の2種類があります。男性にはX染色体とY染色体が1本ずつあり、女性にはX染色体が2本あります。

先天性疾患の分類

□ 34.脳性麻痺は、出生前後の時期に、脳の運動神経中枢が損傷されたことによって起きます。

脳性麻痺は、非進行性で悪化することはないが、成長に伴い障害の状態は変化する。麻痺の型には、痙直型、アテトーゼ型、混合型などがあります。



□ 35.ウイルス肝炎は、肝炎ウイルスの感染によって起こる肝臓の炎症性疾患です。


A型肝炎の感染経路は、飲料水や魚介類を介した経口感染で、わが国の50歳以上の90%は抗体を持っているといわれています。B型肝炎は、母子感染以外では慢性化することがほとんどありません。C型肝炎は、慢性肝炎になりやすく、肝硬変や肝がんに移行する確率が高いです。

主な肝炎ウイルスの特徴
A型肝炎は、経口感染、慢性化はなし、キャリアなし、潜伏期15~40日、海外での感染が多い。
B型肝炎は、血液感染、慢性化あり、キャリアあり、潜伏期30~150日、急性肝炎は青年男性に多い。
C型肝炎は、血液感染、慢性化あり、キャリアあり、潜伏期15~150日、ウイルス自体の感染力は弱い。


□ 36.疥癬は、ヒゼンダニが皮膚に寄生して起きます。

疥癬には、普通の疥癬とノルウェー疥癬の2つのタイプがあります。どちらも寄生するダニはヒゼンダニです。
普通の疥癬は、寄生数1,000以下、感染力は弱い、かゆみは強い(夜間に強い)、宿主の免疫力は正常
ノルウェー疥癬は、寄生数100~200万、感染力は強い、かゆみは不定、宿主の免疫力は低下



□ 37.骨粗鬆症とは、骨密度が減少し、骨折しやすくなった状態をいいます。


骨粗鬆症は、閉経後の女性に起こりやすく、女性ホルモンの減少が原因であると考えられています。


□ 38.白内障は、水晶体が白濁し、視力が低下する疾患です。

白内障は、手術で改善することができます。白内障を放置すると、眼圧が上昇して視神経が障害を受け、緑内障を発症することがあります。緑内障は、放置すると失明する危険があります。


□ 39.難聴とは、何らかの原因で聴力が低下し、音が聞こえにくくなった状態をいいます。

音を伝える外耳と鼓膜および中耳に障害が生じて起こるものを伝音難聴、内耳よりも中枢側に障害が生じて起こるものを感音難聴といいます。老人性難聴は感音難聴であることがほとんどで、周波数の高い高音から聞き取りにくくなります。



□ 40.褥瘡とは、長時間の圧迫によって皮膚の組織が障害を起こした状態です。


褥瘡の原因には、皮膚の圧迫・湿潤・不潔・摩擦、栄養状態の低下などがあります。予防には、2時間ごとの体位変換、身体の清潔、栄養状態の改善、シーツにしわをつくらないことなどがあります。褥瘡の好発部位は、骨の突出している部分です。皮膚に発赤があるときは、褥瘡の初期段階の可能性があるため、発赤部分のマッサージは行わないようにします。


□ 41.関節リウマチは、朝に手指のこわばりを感じるのが特徴です。

関節リウマチは、中高年の女性に多くみられる自己免疫疾患です。関節に炎症が起こり、痛みや腫れが現れ、進行すると骨が破壊されます。関節の炎症は対称性で、左右の同じ関節に生じるのが典型的です。


□ 42.尿失禁とは、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう状態です。

腹圧性尿失禁は女性に多く、治療には骨盤底筋訓練法(ケーゲル法)が効果的です。溢流性尿失禁は、高齢の男性に多い。切迫性尿失禁は、男女とも高齢になるにつれ頻度が高くなります。

尿失禁の種類と状態
腹圧性尿失禁は、くしゃみや咳などで腹圧がかかったときに尿が漏れる状態
切迫性尿失禁は、尿の我慢が困難なためにトイレに間に合わず漏れる状態
溢流性尿失禁は、前立腺肥大などにより尿道が圧迫されて尿が漏れる状態
機能性尿失禁は、排尿機能に異常はないが、身体を動かせない状態になった場合や、排尿の判断ができない場合などに尿が漏れる状態
反射性尿失禁は、脊髄損傷などで、本人の意思と関係なく反射的に尿が漏れる状態


□ 43.慢性塞性肺疾患には、肺気腫と慢性気管支炎があります。

慢性閉塞性肺疾患の主な原因は排尿痛、頻尿、残尿感です。肺気腫は、肺胞と呼吸細気管支が拡張し、破壊される疾患です。慢性気管支炎は、1年のうち少なくとも3か月間はほとんど毎日、少なくとも2時間連続して、咳や痰の存在する状態です。



□ 44.パーキンソン病は、中脳の黒質に病変が起き、ドーパミンの産生が制限されるために起きます。


パーキンソン病の三大主徴は、振戦(手足のふるえ)、固縮(筋肉が固く萎縮する)、寡動(動作が緩慢になる)です。


□ 45.尿路感染症は、高齢者に最も多い感染症です。

尿路感染症になると、排尿痛、頻尿、残尿感などの症状が現れます。女性は男性よりも尿道が短いため感染しやすい。


精神疾患


□ 46.精神疾患の診断基準には、米国精神医学会が作成したDSMとWHOが作成したICDがよく用いられています。

現在よく用いられているDSMは、列挙されている症状から病名が診断できるようになっています。ICDの最新版はICD-10で、精神及び行動の障害は10項目の下に多数の疾患が分類され、さまざまな国や地域で用いられるように工夫されています。


□ 47.2013年にアメリカで出版されたD□M-5では、広汎性発達障害を連続的にとらえた概念として、自閉症スペクトラム障害という診断名が採用されています。


アメリカで2013年に出版されたD□M-5では、アスペルガー症候群などの下位診断分類がなくなり、広汎性発達障害を連続的にとらえた概念である自閉症スペクトトラムという診断名に統合されました。



□ 48.老年期のパーソナリティ障害は、脳の器質疾患や精神障害の存在なしに生じます。


老年期のパーソナリティ障害は、ストレス、環境変化、喪失体験などが原因となって、脳の器質疾患や精神障害の存在なしに生じるものであり、著しい性格変化が現れます。


□ 49.せん妄とは、意識障害の一種で、軽度の意識漏濁に、錯覚、幻覚、それらに基づく妄想や興奮を伴う状態をいいます。

せん妄とは、意識障害の一種で、軽度の意識漏濁に、錯覚、幻覚、それらに基づく妄想や興奮を伴う状態をいい、感染症、脳血管障害、脱水症、糖尿病の低(高)血糖などが原因となって生じるものです。

せん妄への対応のポイント
興奮や幻覚が治まった場合であっても、その後すぐに再発することがあるので注意が必要です。
脳循環改善薬や向精神薬などの薬物治療によって改善を図ることが可能です。
せん妄症状がみられる者に対しては、適切に水分や電解質の補給を行います。


□ 50.精神疾患の原因は、内因性、外因性、心因性に大きく分けられます。

精神病の原因区分
内因性は、原因不明であるが脳の機能異常と考えられています。統合失調症と気分障害が代表的
外因性のうち器質性は、頭部外傷、脳血管障害など、脳の器質障害によって起こります。症状性は、脳以外の身体疾患があるときに起こります。中毒性は、アルコールや覚せい剤などの摂取によって起こります。
心因性は、心的要因によって起こります。神経症と心身症が代表的



□ 51.統合失調症は、遺伝的な要素や素質が発症に関与していると考えられています。


統合失調症は、わが国の精神科入院患者の約60%を占めています。主に思春期から青年期に発病することが多い。症状は陽性症状と陰性症状に大きく分けられ、陰性症状の方が陽性症状よりも優勢であることが多い。
陽性症状は、妄想(被害妄想、関係妄想、誇大妄想など)、幻覚(幻聴、幻視など)、
思考障害(思考滅裂、思考途絶など)、奇異な行動(不衛生、不適切な行動など)
陰性症状は、感情鈍磨、自発性の低下、ひきこもり、社会性の喪失など


□ 52.気分障害は、うつ病と双極性障害(躁うつ病)が代表的です。

うつ病ではうつ病相のみが続き、双極性障害(躁うつ病)では著しく気分が高揚する躁病相と、気分が沈むうつ病相の症状が交互に現れたり、うつ病相、躁病相のみがくり返し現れることもあります。うつ病相では、症状に国内変動がみられる。回復期には自殺企図がみられるため、励ましは禁忌です。
うつ病相と躁病相の主な症状
うつ病相は、不安、抑うつ気分、集中力減退、食欲不振、自殺企図など
躁病相は、多弁、多動、不眠、観念奔逸、精神運動興奮など



□ 53.パニック障害は、漠然とした不安に支配され、パニック発作を起こす疾患です。


パニック障害では、動悸、胸痛、めまいなどの発作が突発的に起こります。発作は、通常10分以内に治まるが、繰り返されるため、発作に対する不安から外出が困難になります。


□ 54.認知症の症状は、中核症状とBPSDに分けられます。
疾患により脳の認知機能が障害されたことによって起こる症状が中核症状で、中核症状のほかに、二次的に起こる症状がBPSD(認知症の行動・心理症状)です。

認知症の症状
BPSDは、徘徊、妄想、拒否、抑うつ、失禁、異食、興奮、せん妄、睡眠障害など
中核症状は、記憶障害、見当識障害、認知障害、人格変化など


障害の概要と利用者に対する理解


□ 55.麻痺とは、筋肉や神経が障害によって動かなくなることをいいます。

麻痺の種類には、四肢麻痺、片麻痺、対麻痺があり、四肢麻痺と対麻痺は脊髄損傷によって生じることが多く、片麻痺は脳血管疾患の後遺症によって生じることが多い。
脳血管疾患による片麻痺の場合は、損傷を受けた脳と反対側が麻痺します。脊髄損傷の場合は、損傷部位から下位が麻痺します。



□ 56.失語症には運動性失語(ブローカ失語)と感覚性失語(ウェルニッケ失語)があります。


大脳の運動性言語中枢の障害によって起こるのが運動性失語(ブローカ失語)、大脳の感覚性言語中枢の障害によって起こるのが感覚性失語(ウェルニッケ失語)です。

失語症の症状について
運動性失語(ブローカ失語)は、他人の言葉は理解できるが、自分で言語表現することができない。
感覚性失語(ウェルニッケ失語)は、言葉の意味が理解できなくなり、話の内容が支離滅裂になります。


□ 57.視覚障害は、大きく分けると盲と弱視に分類されます。

見る機能を完全に失っているのが盲で、見る機能がわずかながら残っているのが弱視です。視覚障害の障害程度等級は、静止した対象について測る視力と、眼球を動かさずに見える範囲をさす視野の、2つの機能によって決められています。



□ 58.聴覚障害者は、聴覚を失った時期によってコミュニケーションの方法が異なります。


先天性難聴や低年齢時に発症した後天性難聴では、母語の獲得と発達が阻害されるため、手話を第一言語としている人が多い。母語獲得後に発症した後天性難聴では、読話や要約筆記によってコミュニケーションをとる人が多い。


□ 59.高次脳機能障害は、脳の損傷によって起こる障害です。

高次脳機能障害は、脳血管障害や外傷性脳障害などによって脳に損傷を受けた結果、その後遺症としてさまざまな症状の障害が起こる疾患です。

高次脳機能障害の主な症状
記憶障害、注意・情報処理障害、遂行機能障害、病識欠落、社会的行動障害

2.心理学理論と心理的支援


人間の心理学的理解


□ 1.動機とは、人間をある行動に駆り立てる欲求・衝動・欲望などのことをいいます。


人間に行動を生起させ、それを方向づけ持続させる一連の心理過程のことを動機づけといいます。


主な動機づけの理論
動因低減説は、ホメオスタシスの安定をめざして動因が発生し行動を起こすという説
期待価値説は、後に得られる結果に対する期待や価値の大きさによつて行動するという説
内発的動機づけ説は、内部からの知的好奇心などによる動機づけ説
外発的動機づけ説は、外部からの報酬や罰などによる動機づけ説


□ 2.達成動機とは、優れた目標を立て、それを高い水準で完遂しようとする動機づけのことです。


達成動機の高い人と低い人とでは、成功や失敗の原因をどこに求めるかという原因帰属に違いがあります。


達成動機の違いによる比較
達成動機の高い人の成功の原因は自分の努力や能力、失敗の原因は自分の努力不足、生育環境は支持的な養育者
達成動機の低い人の成功の原因は課題の容易さや運の良さ、失敗の原因は自分の能力不足、生育環境は否定的な養育者


□ 3.マズローは、人間の欲求には階層性があると考えました。


マズローは、人間の欲求を、生理的欲求、安全と安定の要求、所属と愛情の欲求、自尊と尊敬の欲求、自己の実現の欲求の5つに階層化して序列し、高次な欲求充足に向けて動機づけがなされるとしました。


□ 4.感情には、情緒、気分、1情操の3つの側面があります。


感情とは、個人の心の中で起こる、喜びや悲しみといった主観的な経験のことをいいます。


感情の3つの側面
情緒は、喜怒哀楽などの主観的経験が行動や表情などにより他者に認知される側面
気分は、行動に駆り立てる動因としての側面
情操は、興味や意欲という価値を持続または増減していく側面


□ 5.順応には、明順応と暗順応があります。


順応とは、感覚器官が同じ刺激にさらされたまま時間が経過すると、その刺激に対する感受性が次第に減少することをいいます。


明順応と暗順応の内容
明順応は、暗い場所から明るい場所に出たとき、時間の経過とともに目が慣れて見えるようになる現象
暗順応は、明るい場所から暗い場所に入ったとき、時間の経過とともに周囲が見えてくるようになる現象


□ 6.主な学習理論には、試行錯誤学習、洞察学習、古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)、オペラント条件づけ、観察学習があります。


学習とは、経験によって生じる持続性のある行動の変容のことで、望ましい行動の変容ばかりでなく、不適切行動が学習された行動の変容もあります。


主な学習理論の提唱者とその内容
試行錯誤学習は、提唱者はソーンダイク、新しい状況に適応するため、あれこれ試して失敗しながら、次第に満足をもたらす反応だけが生じるようになる学習様式
洞察学習は、提唱者はケーラー、過去の経験や状況を統合して問題解決の見通しが働いていると考える学習様式
古典的条件づけは、パブロフ、刺激の対呈示によって刺激間に連合が起こり反応が変容する
オペラント条件づけは、提唱者はスキナー、オペラント行動が自発された直後に報酬を与えることで、その後の自発頻度が変化する
観察学習は、提唱者はバンデューラ、他者の行動を観察するだけで代理強化となり行動変容を引き起こす学習様式


□ 7.記憶のプロセスには、記銘、保持、想起(再生)といった段階があります。


記憶には、情報を覚え込む記銘、記銘された情報を蓄えておく保持、保持された情報を必要に応じて検索し引き出す想起(再生)といった過程があります。




□ 8.記憶は、記憶する時間と量によって、感覚記憶、短期記憶、長期記憶に分けられます。


記憶は、感覚を通って入ってくる情報を1~2秒保持する感覚記憶、記憶を数秒から数十秒間保持することができる短期記憶、繰り返し想起(再生)されれば、永続的に保持することができる長期記憶に分けることができます。


主な長期記憶の種類とその内容
意味記憶は、一般的な知識に関する記憶
エピソード記憶は、個人的体験や出来事に関する記憶
手続き記憶は、自転車の乗り方や泳ぎ方など、身体で覚えている記憶
展望的記憶は、人と会う約束の時間や場所など、将来や未来に関する記憶
フラミング記憶は、長期間繰り返されたために無意識にしみついた記憶


□ 9.類型論では、人の性格をいくつかのタイプに分類して理解しようとします。


代表的な類型論には、体型によって性格を類型するクレッチマーの類型論や、リビドーといわれる心的エネルギーによって性格を類型するユングの類型論があります。


クレッチマーの類型論
闘士型は、てんかん、頑固、粘り強い、几帳面、激怒するなど
細長型は、統合失調症、非社交的、静か、臆病、神経質、従順など
肥満型は、躁うつ病社交的、親切、活発、物静かなど


ユングの類型
外向型は、心的エネルギーが、自分の外側にある世界に向かう傾向、社交的
内向型は、心的エネルギーが、自分の内的な世界に向かう傾向、非社交的


□ 10.対人認知とは、他者をどのような人物であるか判断することです。


対人認知には、ある人に対して望ましい印象もしくは望ましくない印象を持った場合に、その印象をそれとは関連性のない側面にまで反映させて判断してしまうハロー効果があります。
また、人に期待を持つことによって、相手からその期待に沿うような反応を引き出すピグマリオン効果があります。


□ 11.人間は、無意識のうちに、不適応状態にならないよう防衛機制を働かせています。


防衛機制とは、欲求不満などに直面したとき、心理的な安定を維持したり回復したりするために、無意識のうちに働かせている心理的手段のことです。


代表的な防衛機制の種類
抑圧は、認めたくない欲求を意識から締め出して無意識の領域に押しやり、打ち消そうとする
退行は、困難な状況を避けるために、子どもっぽくふるまったり依存性を発揮したりする
反動形成は、自分の本当の欲求とは正反対の言動をとり、本当の自分を隠そうとする
置き換えは、欲求を本来とは別の対象に置き換えることで充足する
昇華は、充足されない非社会的な欲求を解消するために、社会的に認められている高次な行動をとる
補償は、劣等感をカバーするために、他の優れた部分を示し傷つくことを防こうとする
含理化は、自分に都合のいい理屈をつけ、自分の考えや行動を正当化して情緒を安定させる
同一視は、他者の望ましい属性を自分のもののようにみなして満足しようとする
逃避は、不安や葛藤などによる緊張状態を回避することで、自分を守ろうとする
投影は、認めがたい欲求を他者の中に投影して非難することで、不安を解消しようとする
代償は、本来の目的が得られないとき、獲得しやすい代わりのものに欲求を移して我慢する


人間の心理的発達


□ 12.発達には、環境と遺伝の2つの要因が働いています。


発達に関する代表的な学説には、ゲゼルが提唱した成熟優位説、ワトソンらが提唱した環境優位説、シュテルンが提唱した輻輳説、ピアジェが提唱した相互作用説があります。


発達に関する代表的な学説
成熟優位説は、個人の発達は、育つ環境よりも遺伝による素質の役割によって規定される
環境優位説は、個人の発達は、遺伝よりも育つ環境から得られる経験によって規定される
輻輳説は、個人の発達は、独立した遺伝的要因と環境的要因が集まった結果、一つの発達として現れる
相互作用説は、個人の発達は、環境的要因と遺伝的要因が相互に作用しながら現れる


□ 13.ボウルビィは、乳幼児が形成する情緒的結びつきをアタッチメント(愛着)と呼んだ。


ボウルビィは、アタッチメント(愛着)が、乳幼児の後の人格形成に大きな影響を及ぼすとした。乳幼児期に形成されたアタッチメント(愛着)は、内的ワーキングモデルとして青年期以降も存在しつづけると考えられています。


□ 14.フロイトの発達段階説は、リビドーといわれる性的エネルギーの現れ方に注目して考えられた。


フロイトの発達段階説
口唇期(1歳半頃まで) 口を通して快楽を得る時期
肛門期(3、4歳頃まで) 肛門からの排泄によって快楽を得る時期
男根期(6、7歳頃まで) 生殖器への関心や異性の親への性欲が生じる時期
潜伏期(11、12歳頃まで) エネルギーが外部に向かう時期
性器期(11、12歳頃から成人期まで) 性生活の発達が特徴となる時期


□ 15.ユングは、人の一生を太陽の運行になぞらえて考えた。


ユングは、誕生を日の出、死を日没、40歳くらいを人生の正午にあたるとして、ライフサイクルを少年期、成人前期、中年期、老年期の4段階に分けて考えた。


□ 16.ピアジェは、子どもの感覚運動から思考と認知の発達を示しました。


ピアジェの発達段階説
感覚運動期は、生後~2歳頃、感覚を通して外界とかかわる
前操作期は、2歳~7、8歳頃、ものの見え方や変化に左右されてしまう直観的思考と、模倣などの象徴的思考を行う
具体的操作期は、7、8歳~11、12歳頃、もののみかけの変化に左右されない思考ができる。具体的なものを論理的に思考できる
形式的操作期は、11、12歳~、抽象的な概念の理解や理論的な思考ができる


□ 17.エリクソンは、人生を8つの時期に分け、各発達段階には達成すべき発達課題があるとした。


エリクソンは、人は、発達課題を達成しても達成していなくてもすべての発達段階を通過していくが、発達課題の成功や失敗が、次の発達段階に大きな影響を与えるとした。


エリクソンの発達課題
乳児期は、0~1歳、「信頼感・希望」対「不信」
幼児期は、1~3歳、「自律性」対「恥・疑惑」
幼児後期は、3~6歳、「自発性」対「罪悪感」
児童期は、6~12歳、「勤勉性」対「劣等感」
青年期は、12~20歳、「自我同一性」対「同一性拡散」
成年期初期は、20~30歳、「親密性 愛」対「孤立」
成年期(壮年期)は、30~65歳、「生殖性」対「停滞」
老年期、65歳~ 、「自我の統合」対「絶望」


□ 18.発達障害は、脳機能の障害が比較的低年齢で発現するものをいう。


発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、アスペルガー症候群などがあります。


主な発達障害とその症状
自閉症は、言葉の発達の遅れ、コミュニケーション障害、対人関係 社会性の障害、パターン化した行動やこだわり
学習障害(LD)は、読む、書く、話す、聞く、計算するなどの特定の学習能力の習得と使用に障害がある状態
注意欠陥多動性障害(ADHD)は、年齢に不釣り合いな不注意、多動性、衝動性
アスベルガー症候群は、知能と言語の発達は保たれているが、対人関係と情緒に障害がある状態


□ 19.高齢者は、結晶性知能よりも流動性知能の方が低下しやすい。


教育や職業訓練などによって育てられる結晶性知能は、高齢になっても低下しにくい。新しいことの学習や新しい環境への適応で発揮される流動性知能は、高齢になると低下がみられます。


ストレスと適応


□ 20.ストレスを引き起こす要因をストレッサーといいます。


ストレッサーは、受け止める人によって、良いストレスとなるか悪いストレスとなるかが大きく異なります。
セリエは、ストレスを「外界のあらゆる要求によってもたらされる身体の非特異的反応」としました。


□ 21.ホームズとレイは、ライフイベントから構成される「社会的再適応評価尺度」を作成しました。


「社会的再適応評価尺度」において、生活上のストレスで最も高い得点の100点とされるのは「配偶者の死」です。
「社会的再適応評価尺度」とは、結婚という出来事の後、普通の日常生活パターンに戻るまでに要するエネルギーを50点とした場合に、ほかの人生上のストレスの程度が何点になるかを評価したものです。


社会的再適応評価尺度の上位10項目
順位出来事得点
1位は、配偶者の死100点
2位は、離婚73点
3位は、夫婦別居生活65点
4位は、拘留63点
5位は、親族の死63点
6位は、個人のけがや病気53点
7位は、結婚50点
8位は、解雇・失業47点
9位は、夫婦の和解・調停45点
10位は、退職45点


□ 22.キャノンは、ストレスという用語を用いて恒常性維持、緊急反応、闘争―逃走反応という概念を示しました。


ストレスが与えられても身体を一定の状態に維持しようとするのが恒常性維持、生存のために一次的に身体の反応を変化させるのが緊急反応、攻撃行動や逃避行動のために備えるのが闘争-逃走反応です。


□ 23.フリードマンとローゼマンが提唱したタイプA行動パターンは、同じような環境にいても、強いストレス反応を起こしやすい。


タイプA行動パターンは、冠状動脈性心疾患になる可能性が高いといわれています。タイプA行動パターンと反対の性格を、タイプB行動パターンといいます。


タイプA行動パターンの主な特徴
・自分が定めた目標を達成しようとする持続的で強い欲求
・競争を好み、それに熱中する傾向
・時間に追われながらも常に多方面に自己を関与させようとする傾向
・強い敵意性や攻撃性
・大声で早口で話す


心理検査


□ 24.ビネー式知能検査では、精神年齢(MA)を判定することができます。


ビネー式知能検査は、問題が難易度別に配列されており、どの程度まで正解することができたかで精神年齢(MA)を判定しています。後に、ターマンは、精神年齢(MA)を生活年齢(CA)で割って100倍した、知能指数(IQ)という概念を導入しました。
知能指数(IQ)=精神年齢(MA)/ 生活年齢(CA)×100


□ 25.ウェクスラー式知能検査は、言語性検査と動作性検査によって構成されています。


ウェクスラー式知能検査では、言語性IQ、動作性IQ、全検査IQの3種類の知能指数を求めることができます。


ウェクスラー式知能検査の種類と対象
WAIS-Ⅲ(成人用)は、16歳~89歳
WISC-Ⅲ(児童用)は、5歳~16歳11か月
WPPSI(低年齢児用)は、3歳10か月~7歳1か月

WMS-R(日本版ウェクスラー記憶検査)は、16歳~74歳


□ 26.代表的な投影法として、ロールシャッハ・テスト、TAT、SCT、バウム・テストがあります。


主な投影法とその方法
ロールシャッ八テストは、左右対称のインクのしみでできた図版を10枚提示し、その画像から連想するものを口頭で説明してもらい分析する
TAT(絵画主題統覚検査)は、異なった情景や生活状況を示す20枚の絵を提示し、自由に語ってもらい空想的な物語の内容から診断する
SCT(文章完成法テスト)は、未完成の文章を提示し、その後半を連想して文章を完成してもらい診断する
バウム・テストは、「1本の実のなる木」の絵を描いてもらい、その描き方によって診断する


□ 27.多数の質問項目を設定し、被検者に回答してもらうのが質問紙法です。


代表的な質問紙法
Y-Gテスト(矢田部・ギルフォード性格検査)は、120問の質問項目からなる
MMPI(ミネソタ多面人格目録)は、550問の質問項目からなる


□ 28.代表的な作業検査法として、内田・クレペリン検査があります。


一列に並んでいる一桁の数字を連続して加算していく作業を繰り返し、その作業過程から被検者の性格特性を把握しようとするのが内田・クレペリン検査です。


心理的支援の方法


□ 29.フロイトの精神分析では、精神構造は、エス(イド)、自我(エゴ)、超自我(スーバーエゴ)に分けられています。


人間の本能的な部分で快楽原理に従うのがエス、道徳原理に従いエスの直接的な行動を阻止する存在が超自我です。エスと超自我の間で折り合いをつけ、現実的な調整を図るのが自我です。


□ 30.障害の受容には、身体的受容、心理的受容、社会的受容の3つの側面があります。


身体的受容は、身体の症状、原因、予後について冷静かつ客観的に知ること
心理的受容は、障害に関して特に悩んだり恥ずかしがったりといった情緒的混乱を起こさないこと
社会的受容は、職業、家族、住居などの関係に現実的に対応すること


□ 31.価値転換理論は、障害者の心理的な損傷を小さくするためにライトが提唱しました。


ライトの価値転換理論は、失われた機能について悩むより、残存機能や現状での可能性を高めることの必要性を示唆しています。


□ 32.ロジャーズのクライエント(来談者)中心療法では、クライエント自身に内在する治癒力を呼び起こすことによって、問題解決を目指します。


ロジャーズのクライエント中心療法では、クライエントが主体となる姿勢を貫くことが重要視されます。カウンセラーは、自分の意見は挟まず、クライエントを無条件で受け入れ、共感的に理解します。


□ 33.行動療法は、身についてしまった不適切な行動を適切な行動に変えることを目指します。


行動療法では、問題行動は適切な対処方法が学習されていない結果か、不適切な行動が誤って学習されてしまった結果であるとして、不適切な行動を適切な行動に変えることを目指します。


□ 34.森田正馬によって創始された森田療法は、経症に対する治療法です。


森田療法は、神経症に対する治療法です。森田療法には、第1段階(絶対臥褥期)、第2段階(軽い作業期)、第3段階(重い作業期)、第4段階(社会生活準備期)の4段階があります。


□ 35.遊戯療法は、遊びを手段として用いる心理療法です。


遊戯療法の対象は、言語表現が未発達で自分の気持ちを上手に表現できない子どもです。遊戯療法の一つであるアクスラインの非指示療法は、ロジャーズのクライエントを中心に考える方法を発展させたものです。


□ 36.家族療法は、家族を一つのシステムとしてとらえるため、家族全体を対象としています。


代表的な家族療法には、ミニューチンの構造派家族療法、ヘイリーの戦略派家族療法、サティアの成長促進派家族療法があります。


代表的な家族療法とその内容
構造派家族療法は、親世代と子世代に境界がなければ子世代に問題が生じると考える
戦略的家族療法は、家族相互作用の意味、決まり、流れを変えることを治療の目的とする
成長促進派家族療法は、コミュニケーションの改善から個人や家族の成長を図る

3.社会理論と社会システム


社会学の理論


□ 1.コントは、社会学の創始者の一人です。


社会学という言葉は、フランスのコントの著書「実証哲学講義」(全6巻、1830~1842年)で初めて用いられた。コントとほぼ同時期に、イギリスではスペンサーなどが社会学を提唱し、ドイツではマルクスが社会学の理論を打ち立てていました。


創始期の研究者とその理論
コント(フランス)は、人間精神が神学的→形而上学的→実証的という段階で進行するに伴い、社会の仕組みは軍事的→法律的→産業的という段階で発展するという「3段階の法則」を唱えた
スペンサー(イギリス)は、社会も生物と同じように進化するという「社会進化論」を唱え、人間社会は軍事型社会→産業型社会へと進化すると指摘した
マルクス(ドイツ)は、社会は原始共同体→奴隷制→封建制→資本主義→社会主義という段階を経て発展すると唱えた


□ 2.デュルケムは、社会における人々の協力体制は、機械的連帯から有機的連帯に社会変動すると分析しました。


デュルケムは、著書「社会分業論」(1893年)で、産業化によって、社会における人々の協力体制は、同質な人々によって結合する機械的連帯から、異質な人々の分業によって結合する有機的連帯に変動すると分析しました。


□ 3.ヴェーバーは、エートス(禁欲倫理)によって近代資本主義が発展したと論じました。


ヴェーバーは、著書『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(1904~1905年)で、資本主義の発展を分析し、プロテスタンティズムのエートス(禁欲倫理)が近代資本主義の発展に影響を与えたと論じました。
プロテスタンティズムとは、プロテスタントの信仰のあり方のことで、エートス(禁欲倫理)とは、人間の社会行動の行方を、その内側から規制する観念の束のことです。


□ 4.ジンメルは、社会学の研究の対象は心的相互作用の形式であるとし、「形式社会学」を提唱しました。


ジンメルの心的相互作用の形式とは、さまざまな社会集団の中に共通してみられる、上下関係、競争、分業などといった相手のある行動様式のことです。心的相互作用が、社会を社会として成長させていることを、社会化という用語で表現しています。


□ 5.マンハイムは、ジンメルの形式社会学を批判し、「知識社会学」を提唱しました。


マンハイムの「知識社会学」の特徴は、知識の内容そのものを積極的に研究の対象とすることです。マンハイムは、現実を隠蔽する方向で存在を超越する考え方のイデオロギー的思考と、現実を追い越す方向で存在を超越する考え方のユートピア的思考について、どちらも批判的に論じています。


□ 6.マートンは、機能を、順機能、逆機能、顕在的機能、潜在的機能の4つに類型化しました。


マートンの機能分析
順機能は、目的通りの結果が得られるとき
逆機能は、目的に反する結果がみられるとき
顕在的機能は、役割などの果たしている機能が、その社会の成員によつて認識されている場合
潜在的機能は、社会などの参与者によって意図されず認知されていないが、結果として社会の適応に貢献する場合
マートンの機能の定義は「一定のシステムの適応ないし順応に貢献する客観的観察結果」です。


社会システムに関する理論


□ 7.パーソンズは、あらゆる社会関係は4つの機能によって説明することができると考えました。


パーソンズの4つの機能による分析図式は、AGIL図式と呼ばれています。Aは適応機能、Gは目標達成機能、Iは統合機能、Lはパターン維持機能です。


□ 8.ヴェーバーは、政治的支配の形態を伝統的支配、カリスマ的支配、合法的支配に分類しました。


伝統的支配とカリスマ的支配の支配形態は非合理的であるため、支配者自身は法に服す必要がない。合法的支配のもとでは、被支配者のみならず支配者も法に服さなければならない。


□ 9.ノネとセルズニックは、法のあり方を抑圧的法、自律的法、応答的法に分類しました。


抑圧的法は、法が支配の道具であり、支配体制のうちに埋め込まれている
自律的法は、社会からの独立性を確立することによって、社会のメンバーすべてが等しく従うべき
応答的法は、孤立した体系としての性格を捨て普遍性を維持しつつも、より柔軟で可塑的な性格を身につけるべき


近代の社会変動


□ 10.ワースは、都市コミュニティに関心を寄せ、アーバニズムという概念を提唱しました。


都市に特徴的な生活様式のことをアーバニズムといいます。アーバニズムに対比される概念として、大都会の郊外化に伴って形成される郊外に特徴的な生活様式のことをサバーバニズムといいます。


□ 11.鈴木栄太郎は、分析視点をわが国に設定し、自然村の概念と結節機関説を提唱しました。


人為的に制定された行政村に対し、自然発生的な村を自然村といいます。官庁、学校、娯楽施設などの施設を結節機関といい、その発達の度合いで都市化の度合いを測ることができるとしました。


□ 12.都市化は、インナー・シティ問題などの現象を起こすと考えられています。


都市化による現象
インナー・シティ問題は、都市の中心市街地の人口減少、企業流出、高齢化などによって、都市機能が低下する問題
スプロール現象は、都市の市街化地域が無秩序に拡大し、周辺部を蚕食する現象
ジェントリフィケーションは、都市の居住地域を再開発することによって、中高所得者層が都市に帰ってくる現象


□ 13.高度経済成長期に多くの労働者人口が都市部に流出し、農村部では過疎化が進んだ。


人口の流出によって住民が減少し、生活条件の確保と経済活動の再生産に支障をきたすことを過疎化といいます。


□ 14.限界集落は、中山間地や離島を中心に急激に増加しています。


限界集落とは、65歳以上の高齢者が住民の50%を超え、社会的共同生活の維持が困難になった集落のことです。


□ 15.わが国は、第二次世界大戦直後には、第1次産業の就業人口が過半数を超えていました。


わが国は、第二次世界大戦直後には第1次産業の人口が過半数であったが、その後は第2次産業、第3次産業へと中心が移り、特に第3次産業の就業人口は著しく増加しています。


人口構造の変化


□ 16.人口は、社会変動を生じさせる大きな要素の一つです。


わが国では、1967(昭和42)年に総人口が1億人を突破し、その後も増加を続けていたが、少子高齢化の影響によって、2005(平成17)年に初めて減少しました。今後もわが国の人口は、21世紀の大半を通して恒常的に減少していくことが見込まれています。


□ 17.合計特殊出生率とは、15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したものです。


わが国の合計特殊出生率は、1974(昭和49)年以降、傾向にあり、現在は1.3~ 1.4程度で推移しています。


□ 18.男女・年齢別人口の構成図を人ロピラミッドといい、わが国は、ひょうたん型に近い。


人ロピラミッドの型
ピラミッド型は、多産多死の段階にある発展途上国にみられる型
つりがね型は、人口が増減しない状態で安定を示している型
つぼ型は、出生数が減少し、人□の減少が予想される型
ひょうたん型は、ピラミッド型が出生数の急激な減少によってつぼ型となり、その後出生数が多少増加した後、再び減少した型


社会集団の理論


□ 19.クーリーは、第1次集団という概念を提唱しました。


メンバーの間に直接的で親密な関係がある集団のことを第1次集団といいます。第1次集団の対概念として後につくられた第2次集団という概念は、一定の目的のために形成された人為的な集団のことです。


第1次集団と第2次集団
第1次集団は、家族、遊び仲間、地域集団 など
第2次集団は、企業、学校、政党など


□ 20.テンニースは、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトという概念を提唱しました。


本質意志によって結びついた集団をゲマインシャフト、選択意志によって結びついた集団をゲゼルシャフトといいます。
ゲマインシャフトとゲゼルシャフト
ゲマインシャフト(本質意志)は、家族、村落 など:ゲゼルシャフト (選択意志)は、大都市、国民社会 など




□ 21.マッキーバーは、コミュニティとアソシエーションを対比しました。


一定の地域で人々の共同生活が営まれる社会のことをコミュニティといい、コミュニティの内部に一定の目的のために計画的につくられたのがアソシエーションです。


コミュニティとアソシエーション
コミュニティ(基礎社会)は、村落、都市 など
アソシエーション(派生社会)は、家族、教会 など


□ 22.サムナーは、内集団と外集団という概念を提唱しました。


親族や隣人などのように、愛情や献身の対象となる強い結びつきを持つ「われわれ集団」のことを内集団といいます。結びつきの弱い関係や競争などの対立関係にある「彼ら集団」のことを外集団といいます。


□ 23.ヴェーバーは、含理的支配の純粋型として官僚制を考えました。


官僚制とは、行政、企業、軍隊など、近代の大規模組織で成立している合理的な管理・運営の体系を指す用語です。


官僚制の特徴
専門性は、諸活動が明確に分化している
集権制は、上下関係がピラミッド的にしつかりしている
公式性は、専門性と集権制が文書によって規定されている


□ 24.集団からの影響には、同調行動、社会的促進、社会的抑制、社会的手抜き、社会的補償、社会的ジレンマなどがあります。


代表的な集団からの影響
同調行動は、自分の判断に反していても、集団の行動に合わせてしまう
社会的促進は、単純な作業のときは、集団の方が作業が促進される
社会的抑制は、複雑な作業のときは、集団の方が作業が阻害される
社会的手抜きは、集団で共同作業を行う場合、一人あたりの作業量は人数が多くなるにつれて低下する
社会的補償は、集団の成果が個人にとって重要な場合、他者の不足分を補うように作業量を増大させる
社会的ジレンマは、個人が自分にとって望ましい行動をとった結果、社会全体が望ましくない状況に陥る


個人と家族


□ 25.産業化に伴い、家族の機能は縮小化してきたと理解されています。


時代や社会によって家族の機能は異なります。家族の機能が縮小化しても、家族のみが果たす固有の機能もあります。


□ 26.わが国の世帯構成は、近年では単独世帯が増加しています。


高度経済成長期以降は、三世代世帯が減少して核家族世帯が増加したが、近年では、高齢単独世帯や未婚単独世帯の増加により、単独世帯が増加しています。


□ 27.近年、18歳未満の児童がいる世帯は、急激に減少しました。


18歳未満の児童がいる世帯の構成割合は、1975(昭和50)年には約5割であったが、2012(平成24)年には半減しました。


□ 28.クーリーは、「鏡に映った自我」という概念を提唱しました。


「鏡に映った自我」とは、他者という鏡に映った自己のことをいいます。クーリーは、自分からみた他者の自分に対するイメージから、自我をつくることができると考えました。


自我の3要素
自分が他者にどのように映っているのかという想像
他者はその自己の姿をどのように評価しているのかという想像
そのことに対する自分の感情


□ 29.ミードは、個人の自我は役割取得によって成長するとしました。


他者が自分に期待する役割を自らのうちに取り込むことによって具体的に形成することを役割取得といいます。


役割取得の段階
第1段階は、プレイ段階:ごっこ遊びのように役割を演じることによって、子どもが役割に期待されるあり方を理解する
第2段階は、ゲーム段階:ゲームに参加するときのように役割を実際に行うことで、役割を自分のものにする


□ 30.機能面からとらえた家族の形態には、定位家族と生殖家族があります。


自分が生まれ育った家族のことを定位家族、自分が結婚してつくり上げる家族のことを生殖家族といいます。


□ 31.構成員からとらえた家族の形態には、核家族、拡大家族、修正拡大家族があります。


夫婦と未婚2子で構成されている家族のことを核家族、核家族が血縁紐帯によって拡大された家族のことを拡大家族、同居はしていないが核家族とその親の家族に緊密な交流がある家族のことを修正拡大家族といいます。


□ 32.制度面からとらえた家族の形態には、族、直系家族、複合家族があります。


夫婦と未婚の子からなる核家族のことを夫婦家族、夫婦と1人の子の生殖家族からなる家族のことを直系家族、夫婦と複数の子の生殖家族からなる家族のことを複合家族といいます。


近代社会の変容と問題点


□ 33.わが国の自殺者数は、1998(平成10)年以降、年間約3万人の高い水準で推移しているが、2012(平成24)年、2013(平成25)年は、3万人を下回っています。


わが国の自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)は、先進7か国中、最も高い水準です。自殺死亡率は、女性よりも男性の方が高くなっています。


□ 34.コーンハウザーは、エリートと非エリートの概念を用いて社会を類型しました。


コーンハウザーは、「一般大衆のエリートヘの接近の可能性の大小」と、「非エリートの操縦されやすさの大小」の2つの尺度を組み合わせて、社会を4つのタイプに類型しました。


□ 35.リースマンは、社会的性格の類型を、伝統指向型、内部指向型、他人指向型に分類しました。


社会的性格の類型とその内容
伝統的指向型は、文化を構成している宗教、習慣、習俗などに影響を受ける
内部指向型は、理想や目標に突き動かされて、伝統的社会の停滞性を内側から打破する
他人指向型は、自分の無力さと不安から、他人の意向にたえず気を配って同調する
リースマンは、第二次世界大戦後のアメリカの中間層の社会的性格を、他人指向型としてとらえています。


□ 36.環境正義は、多民族国家であるアメリカ合衆国の社会的背景から生じた概念です。


低所得層や人種的マイノリティなど社会的弱者が多く居住する地域に廃棄物処理施設が集中して設けられるなど、環境間題が社会的弱者に集中することがあります。このような不平等を是正し、あわせて環境からの便益の分配における不平等も是正しようという考え方として環境正義という概念が生まれました。



□ 37.環境問題において、受苦圏と受益圏が一致しないことは少なくない。


環境問題において、受苦圏と受益圏が一致しないことは少なくない。さらに、施設建設などによって環境面や健康面で被害を受けるというような主張をするニンビー(NIMBY)と呼ばれる反対運動を起こしたとしても、社会的な理解を得られるとは限らない。


□ 38.環境問題を解決していくための考え方として、生活環境主義や自然環境主義などがあります。


環境問題を解決していくための考え方として、生活環境主義、自然環境主義、エコロジー的近代化などがあります。


代表的な環境問題を解決していくための考え方
生活環境主義は、地域の居住者の生活の立場から環境問題の所在や解決方法を考えようとする立場
自然環境主義は、自然環境に固有の価値を認め、人間の手が加わらない健全な生態系を守るという考えを持つ立場
エコロジー的近代化は、反近代化は環境問題の解決にはならないとし、環境保全と経済発展を同時に持続させることが可能であるだけでなく、環境保全を推進することによって新しい経済発展も可能となるという考え方


□ 39.フェミニズム運動とは、女性に対する差別をなくすことを目的とした社会運動のことです。


フェミニズムとは、女性の権利の確立を目指す思想のことです。第2次フェミニズム運動でキーワードとなった用語であるセクシズムとは、性別を理由に差別する制度のことをいいます。
第1次フェミニズム運動(19世紀から20世紀初頭)は、各国で展開された女性参政権要求運動
第2次フェミニズム運動(1960年代)は、欧米諸国を中心に展開された女性解放運動


□ 40.わが国の女性の労働力率を表すグラフは、M字型の形状をとることが知られています。


わが国では、女性が30~39歳の時期に、結婚や育児のために家庭に入ることが多いため、女性の労働力率を表すグラフがM字型の形状になっています。近年では、女性の労働力化が進み、30~ 34歳の労働力率は年々上昇していますが、M字型の形状であることに変わりはない。
多くの先進国では、女性の労働力率を表すグラフは台形型の形状をとります。

4.現代社会と福祉


福祉と福祉政策の概念


□ 1.」1950(昭和25)年に社会保障制度審議会は、社会保障制度に関する勧告を行いました。


1950(昭和25)年の社会保障制度に関する勧告では、社会保障制度について定義しています。


社会保障制度の定義
「いわゆる社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである」


□ 2.社会保障制度審議会の広義の社会保障には、狭義の社会保障、恩給、戦争犠牲者援護が含まれています。


社会保障制度審議会の社会保障の概念
社会保障は、広義の社会保障と社会保障関連制度からなります。
広義の社会保障は、狭義の社会保障(公的扶助、社会福祉、社会保険、公衆衛生及び医療、老人保健)、恩給、戦争犠牲者援護からなります。
社会保障関連制度は、住宅対策等、雇用(失業)対策からなります


□ 3.わが国の社会福祉学の研究が本格的に展開され始めたのは、二次世界大戦後のことです。


草創期の主な研究者の概念
大河内一男は、社会事業の対象は、資本主義経済の枠組みから外れた「経済秩序外的存在」である
孝橋正一は、社会事業とは、資本主義制度の構造的必然の所産である社会問題に向けられた合目的的補充的な公私の社会的方策施設の総称である
岡村重夫は、社会関係の不調和、社会関係の欠損、社会制度の欠陥という3つの生活困難に介入し、個人が基本的な社会制度を主体的に利用することができるよう援助することが社会福祉である


□ 4.福祉ニードとは、福祉的な支援の必要性のことをいいます。


ブラッドショーと三浦文夫は、福祉ニードを分類した研究者です。
ブラッドショーと三浦文夫の福祉ニードの分類
ブラッドショー
規範的ニードは、専門家の視点からみて判断したニード
感得されたニードは、ニードを持つ人が自覚しているニード
表明されたニードは、ニードを持つ人が他者に対して表現したニード
比較ニードは、比較することによつて必要があると判断されたニード
三浦文夫
貨幣的ニードは、金銭給付によって充足することができるニード
非貨幣的ニードは、金銭給付では充足されず、現物給付によって充足することができるニード


福祉制度の発達過程


□ 5.明治時代の民間慈善事業者の大半は、社会のあり方に疑問を持ち、社会改良的な情熱に燃えた人々です。


明治時代の主な民間慈善事業者とその功績
石丼十次は、1887(明治20)年、岡山孤児院を設立
石丼亮―は、1891(明治24)年、知的障害児施設である滝乃川学園を設立
山室軍平は、1895(明治28)年、救世軍に参加
片山潜は、1897(明治30)年、東京神田にキングスレー館を設立
横山源之助は、1899(明治32)年、「日本之下層社会」を執筆
留岡幸助は、1899(明治32)年、東京巣鴨に感化院を設立


□大正時代の民間慈善事業者の大半は、貧困問題の解消に尽力した人々です。
岡山県知事である笠井信一によって創設された済世顧問制度、大阪府知事である林市蔵と小河滋次郎によって創設された方面委員制度は、今日の民生委員制度の源流となっています。
大正時代の主な民間慈善事業者とその功績
河上肇は、1916(大正5)年、「貧乏物語」を執筆
笠丼信一は、1917(大正6)年、済世顧問制度を創設
林市蔵・小河滋次郎は、1918(大正7)年、方面委員制度を創設
長谷川良信は、1919(大正8)年、マハヤナ学園を設立
賀川豊彦は、1920(大19)年、「死線を越えて」を執筆


□1874(明治7)年に公布された恤救規則に代わり1929(昭和4)年に代わり、1929(昭和4)年に救護法が公布されました。
恤救規則では、済貧恤救は「人民相互ノ情誼」によること、対象を「無告ノ窮民」とすることなどが定められていました。
救護法は、1929(昭和4)年に公布されたが、財政難から1932(昭和7)年に施行されています。
1874(明治7)年恤救規則、1929(昭和4)年救護法、1932(昭和7)年 救護法の施行


□昭和20年代に旧生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法が制定され、福祉三法体制が確立しました。
児童福祉法は、戦災孤児や引揚孤児などの児童を保護することを目的として制定された
身体障害者福祉法は、身体障害者の福祉の増進を目的として制定された
旧生活保護法は、制定後、憲法第25条で規定された理念に基づいて改正され、現行の生活保護法になった
1946(昭和21)年旧生活保護法、1947(昭和22)年児童福祉法、1949(昭和24)年 身体障害者福祉法、1950(昭和25)年 生活保護法


福祉制度の発達過程
□昭和30年代に精神薄弱者福祉法(現・知的障害者福祉法)、老人福祉法、母子福祉法(現・母子及び寡婦福祉法)が制定され、福祉六法体制が確立しました。
精神薄弱者福祉法は、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するための援助と保護を目的に制定された
老人福祉法は、高齢者の心身の健康・生活の安定のための措置を目的に制定された
母子福祉法は、母子家庭等の生活の安定と向上のための措置を目的に制定された
1960(昭和35)年 精神薄弱者福祉法(現・知的障害者福祉法)
1963(昭和38)年 老人福祉法
1964(昭和39)年 母子福祉法(現・母子及び寡婦福祉法)


□社会事業法は、社会福祉事業法に改正された後、社会福祉法に改正されました。
社会事業法は、不況により困窮者が増加し、財源に困窮している民間社会事業団体に補助金を与えるために制定された
社会福祉事業法は、社会福祉事業に関する基本事項を規定し、公明かつ適正に事業が行われることを確保し、社会福祉の増進に資することを目的に社会事業法を改正して制定された
社会福祉法は、社会福祉基礎構造改革により社会福祉事業法を改正し、社会福祉に関する事項の共通基盤概念を定めた
1938(昭和13)年 社会事業法
1951(昭和26)年 社会福祉事業法
2000(平成12)年 社会福祉法


福祉の法制度
□福祉制度は、社会福祉法によって共通事項が定められ、対象者ごとに6つの法律が制定されています。
対象者ごとにある6つの法律とは、生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、母子及び寡婦福祉法、老人福祉法です。
福祉六法は、福祉三法(生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法)、知的障害者福祉法、母子及び寡婦福祉法、老人福祉法


□社会福祉法は、社会福祉事業を第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業に区分しています。
第一種社会福祉事業は、社会福祉事業のうち公共性の高い事業
第二種社会福祉事業は、第一種社会福祉事業以外の福祉の増進に貢献する事業


□第一種社会福祉事業には、入所施設サービスが多い。
第一種社会福祉事業は、利用者への影響が大きいため、経営安定を通じた利用者の保護の必要性が高い事業です。原則として、経営主体は、国、地方公共団体、社会福祉法人に限られています。
根拠法と第一種社会福祉事業の種類
生活保護法は、救護施設、更生施設、生計困難者を無料または低額な料金で入所させて生活の扶助を行う施設、生計困難者に対して助葬を行う事業
児童福祉法は、乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、障害児入所施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設
老人福祉法は、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム
障害者総合支援法は、障害者支援施設、身体障害者更生援護施設(附則に規定)、知的障害者援護施設(附則に規定)
売春防止法は、婦人保護施設
その他は、授産施設、生計困難者に無利子または低利で資金を融通する事業、共同募金を行う事業


□第二種社会福祉事業には、通所施設や在宅サービスが多い。
第二種社会福祉事業の経営主体には制限がないため、届出をすることによって経営することができます。
根拠法と主な第二種社会福祉事業の種類
児童福祉法は、障害児通所支援事業、障害児相談支援事業、児童自立生活援
助事業、放課後児童健全育成事業、子育て短期支援事業、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪間事業、地域子育て支援拠点事業、一時預かり事業、小規模住居型児童養育事業、助産施設、保育所、児童厚生施設、児童家庭支援センター、児童福祉増進相談事業など
母子及び寡婦福祉法は、母子家庭等日常生活支援事業、寡婦日常生活支援事業、母子福祉施設
老人福祉法は、老人居宅介護等事業、老人デイサービス事業、老人短期入所
事業、小規模多機能型居宅介護事業、認知症対応型老人共同生活援助事業、複合型サービス福祉事業、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、老人福祉センター、老人介護支援センターなど
障害者総合支援法は、障害者福祉サービス事業、一般相談支援事業、特定相談支援事業、移動支援事業、地域活動支援センター、福祉ホーム
身体障害者福祉法は、身体障害者生活訓練等事業、手話通訳事業、介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業、身体障害者福祉センター、補装具製作施設、盲導犬訓練施設、視聴覚障害者情報提供施設、身体障害者の更生相談に応じる事業
知的障害者福祉法は、知的障害者の更生相談に応じる事業
介護保険法は、生計困難者に対して、無料または低額な費用で介護老人保健施設を利用させる事業


□福祉事務所は、援護、育成、更生の措置に関する事務をつかさどる第一線の社会福祉行政機関です。
福祉事務所の設置が義務づけられているのは、都道府県及び市(特別区を含む)です。町村は任意で設置することができます。市町村福祉事務所は福祉六法を所管し、都道府県福祉事務所は福祉三法を所管することになっています。


□福祉事務所の指導監督を行う所員と現業を行う所員は、社会福祉主事でなければならない。
福祉事務所の所員の定数は、地域の実情に合わせて条例で定めることになっているが、現業を行う所員については、生活保護法の適用を受ける被保護世帯の数に応じて定めることになっています。
福祉事務所の配置職員には、所長、指導監督を行う所員(社会福祉主事)、現業を行う所員(社会福祉主事)、事務を行う所員がいる。


福祉政策
□社会政策とは、市民生活の安定と向上を直接の目的として策定・実施される公共政策のことです。
社会政策の目的には、稼得の豊かさや居住の快適さなどプラスの価値を追求するためのものと、困窮や疾病などマイナスの価値を回避するためのものがあります。


□公共政策のうち最も基底的なものは、社会秩序を維持するためのものです。
公共政策のうち社会秩序を維持するためのものには、警察、消防、司法などがあります。近年、公共政策の中心は、社会秩序を維持するためのものから、社会政策や経済政策に移ってきています。


□所得政策と福祉政策は、一般的に応益負担の原則をとらない点で共通しています。
すべての人が需要する現金を、必要性を持つ人々に対して供給するのが所得政策、障害者や高齢者などが特別に需要する財やサービスを、必要性を持つ人々に対して公的給付するのが福祉政策です。


□社会福祉サービスの供給主体には、フォーマルセクターとインフォーマルセクターがあります。
利用者と供給主体との間に正式な契約が交わされているものをフォーマルセクター、正式な契約や措置が存在していないものをインフォーマルセクターといいます。
フォーマルセクターは、社会福祉法人、民間営利事業、行政など
インフォーマルセクターは、家族、親戚、隣人、ボランティアなど


□スピン=アンデルセンは、政府がかかわる程度などによって福祉政策体制を3類型しました。
エスピン=アンデルセンの福祉政策体制の3類型には、自由主義レジーム、保守主義レジーム、社会民主主義レジームがあります。
エスピン=アンデルセンの福祉政策体制の3類型
自由主義レジームは、市場の自由な経済活動を重視する福祉レジーム(アメリカ、カナダなど)
保守主義レジームは、伝統的な家族の機能や職業上の地位の格差保持を重視するレジーム(フランス、ドイツなど)
社会民主主義レジームは、すべての住民を対象とする普遍的な社会サービスを重視する福祉レジーム(スウェーデン、ノルウェーなど)


諸外国の福祉政策の動向
□スウェーデンの社会保障制度は、「大きな政府による高福祉高負担」といわれています。
スウェーデンでは、社会保障給付費の対GDP比率が高いが、租税負担率の対GDP比率も高い。スウェーデンでは、1950年に社会扶助制度が創設され、福祉国家化が進められました。


□アメリカの社会保障制度は、「小さな政府による低福祉低負担」といわれています。
アメリカでは、社会保障給付費の対GDP比率が低いが、租税負担率の対GDP比率も低い。アメリカは、自助努力を重んじる国であり、市場原理を重視する国でもあります。


□相対的貧困率は、スウェーデンでは低く、アメリカでは高くなっています。
世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得の中央値の半分に満たない世帯員の割合を、相対的貧困率といいます。


□ドイツの社会保障制度は、「補完性の原則」に基づいています。
「補完性の原則」とは、国民の連携によって社会保障が成立するため、できるだけ国家の介入を避けるという考え方です。ドイツの社会保障給付費の対GDP比率、租税負担率の対GDP比率は、スウェーデンとアメリカの中間に位置しています。
ドイツの介護保険制度では、公費投入が行われていない。


□スウェーデンでは、コミューンが福祉サービスの種類や料金を決めています。
コミューンとは、日本の市町村に相当する基礎自治体のことです。コミューンの歳入は、地方所得税が約7割、利用料金が約8%で構成され、コミューンの自主財源は約7割となっています(2005年)。スウェーデンの福祉財政は、地方所得税によって賄われているといえるため、国から自立しています。
1992年にエーデル改革が行われ、ランスティング(県)が管理していたナーシングホームと訪問看護の権限がコミューンに移譲されました。

5.地域福祉の理論と方法


地域福祉の発展


□ 1.欧米における地域福祉の源流は、19世紀にイギリスで始まった慈善組織化運動(COS運動)とセツルメント運動です。


さまざまな団体が非組織的に行っていた慈善活動の組織化をめざして結成されたのが慈善組織化運動(COS運動)であり、スラム地域に住み込み、日常生活を通じてスラム地域の人たちに働きかけ、生活改善を図るのがセツルメント運動です。


□ 2.イギリスのロンドンでは、1869年に慈善組織協会(COS)が設立され、1884年にはトインビー・ホールが設立されています。


慈善団体の連絡、調整、組織化、救済の適正化を目的に設立されたのが慈善組織協会(COS)であり、バーネット夫妻によって創設された世界最初のセツルメント八ウスがトインビー・ホールです。


□ 3.アメリカでは、1886年にネイバーフッド・ギルドが設立され、1889年にはハル・ハウスが設立されています。


イギリスで始まった慈善組織化運動(COS運動)とセツルメント運動は、アメリカにも広がった。コイトによってニューヨークにネイバーフッド・ギルドが設立され、アダムスによってシカゴにハル・ハウスが設立されました。また、1877年には、バッファローに慈善組織協会(COS)も設立されています。


□ 4.わが国では、1908(明治41)年に中央慈善協会が設立されています。


慈善事業を指導奨励し、行政を補佐することを目的に設立された中央慈善協会は、わが国で初めて設立された慈善事業団体の中央組織です。初代会長には渋沢栄―が選出されています。
中央慈善協会は、現在の社会福祉協議会の前身です。


地域福祉の考え


□ 5.コミュニティ・オーガニゼーションは、アメリカで発達した理論です。


1939年に、全米社会事業会議に「レイン報告」が提出され、1947年には「インターグループワーク説」が提示されました。また、1955年にはロスが著書『コミュニティ・オーガニゼーション』を刊行して「地域組織化説」を唱え、1968年にはロスマンが「コミュニティ・オーガニゼーシ∃ン実践の3つのモデル」を提示しています。


代表的なコミュニティ・オーガニゼーションの研究者とその理論
レインは、「二―ズ・資源調整説」、地域におけるニーズと社会資源を調整する
ニューステッターは、「インターグループワーク説」、地域社会における団体や機関などの各種グループ間の関係を調整する
マレー・ロスは、「地域組織化説」、住民が主体となって地域を組織化し、問題を解決できるように働きかける
ロスマンは、「コミュニティ・オーガニゼーション実践の3つのモデル」、
(1)地域開発モデル(小地域開発モデル):住民参加を重視し、地域社会で問題解決にあたる活動、(2)社会計画モデル:専門的知識を用いて、地域間題を計画的に解決する活動、(3)ソーシャルアクションモデル:住民が組織化を行い、行政機関に制度改革などを求める活動


□ 6.イギリスでは、コミュニティケアの考え方を提唱するさまざまな報告書が提出されています。


イギリスでは、1968年の「シーボーム報告」を受けて、1970年に「地方自治体社会サービス法」が制定されました。


代表的な報告書とその内容
シーボーム報告(1968年)は、地方自治体ことにあったソーシャルワークの窓口を統一し、あらゆる相談にワンストップで対応するよう再編すべきであると提案
ガルベンキアン報告(1968年)は、コミュニティワークを、個人を取りまく社会問題を解決していくための一過程とし、ソーシャルワークの一部として提唱
エイブス報告(1969年)は、ボランテイアの役割は、専門家にはできない新しいサービスの可能性に挑戦する開発的役割であると強調
ウルフェンデン報告(1978年)は、福祉サービスの多様な供給主体の必要性を説き、福祉多元主義を提案
バークレイ報告(1982年)は、多数派報告では、コミュニティ志向のソーシャルワークが支持され、コミュニティ・ソーシャルワークを提唱
グリフィス報告(1988年)は、公的扶助による高齢者の施設入所財源を、国から地方自治体に移譲することを提言


□ 7.奥田道大は、地域社会を、地域共同体モデル、伝統的アノミーモデル、個我モデル、コミュニティモデルの4つに分類しました。


伝統的アノミーモデルは、地域共同体モデルから個我モデルの過渡的段階です。個我モデルは地域共同体モデルと対照的に位置づけられています。
地域共同体モデルは、地縁的結び付きで団結力はあるが、閉鎖的な地域社会
伝統的アノミーモデルは、住民の地域に対する帰属意識が薄く、無関心
個我モデルは、住民の権利意識は強いが、自分に関係することだけに関心を持つ
コミュニティモデルは、住民が積極的に地域社会に参加している


□ 8.1969(昭和44)年の東京都社会福祉審議会答申において、初めて「コミュニティケア」という概念が公式に用いられました。


1969(昭和44)年の東京都社会福祉審議会答申「東京都におけるコミュニティケアの進展について」では、施設ケアの対置概念としてコミュニティケアが取り上げられました。


□ 9.わが国の地域福祉理論は、1970年代に、理論化を目指すことから始まった。


1980年代には代表的な見解の比較や構成要件の類型化などを行い、1990年代には、理論の統合化とともにサービス供給システムなどの実績的な内容が問われるようになった。


代表的な地域福祉理論の構成要件
岡村重夫は、(1)コミュニティケア、(2)一般地域組織化活動と地域福祉活動、(3)予防的社会福祉
右田紀久恵は、(1)「基本的要件」:地域生活を成り立たせる基本的なもの、(2)「サービス構成要件」:個別的対応として、(3)「運営要件」:(1)と(2)を関連づけるもの
永田幹夫は、(1)在宅福祉サービス:対人福祉サービス、(2)環境改善サービス:生活や居住条件の改善、(3)組織活動:コミュニティワークの方法技術


□ 10.牧里毎治は、貧困などの地域的な現れは、資本主義社会の制度的政策的矛盾にあるとし、地域福祉を理論化しようとしました。


牧里毎治は、1980年代までの地域福祉理論を整理し、地域福祉を構造的アプローチと機能的アプローチの2つに分け、「地域福祉の2つのアプローチ論」を唱えました。


地域福祉の実践


□ 11.2006(平成18)年に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー新法)が施行されました。


バリアフリー新法は、1994(平成6)年に施行された「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)と、2000(平成12)年に施行された「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)を統合した法律です。


□ 12.地域福祉の実践には、在宅福祉サービス、環境改善サービス、組織化活動の3種類があります。


地域福祉の実践
在宅福祉サービスは、支援を必要とする人々にとつて日常生活に必要なサービス
環境改善サービスは、社会参加をしやすくするためのサービス
組織化活動は、動地域福祉全般を発展させるための活動


□ 13.社会福祉の専門職には、遵守すべき地域福祉推進の原則があります。


地域福祉推進の原則
(1)地域の個別化は、地域の独自性を重視する
(2)福祉課題の把握は、福祉課題を的確に把握し、具体的な福祉課題に対応する
(3)地域住民の主体性の尊重は、地域住民が解決に向けて努力するように支援する
(4)社会資源への関与は、社会資源を活用し、必要に応じて開発する
(5)組織化の重視は、組織として機能していくように支援する
(6)公私協働は、公的部門と私的部門が協働して問題解決に取り組む


□ 14.地域福祉の展開過程では、いずれの段階においても住民の参加を得ることが重要となります。


地域福祉の展開過程
準備段階「ニーズの把握」は、資料分析や調査などによって、あらかじめニーズを把握
目標設定段階「地域診断」は、具体的なニーズに基づいて目標を設定し、活動計画を策定
実践段階「地域組織化・福祉組織化」は、さまざまな団体と協働して活動
評価段階は、活動の成果を評価


□ 15.評価段階において活動を組織化の面から評価する際には、プロセスゴールとタスクゴールの両面から行います。


課題の解決に向けてどのようなプロセスを経てきたかを評価することがプロセスゴール、課題をどれだけ解決できたかという成果を評価することがタスクゴールです。


□ 16.評価段階において活動を運営面から評価する際は、八―ドウェア、ソフトウェア、アドミニストレーション、パーティシペーション、ファイナンスの面から行います。


施設器具の評価は、ハードウェア
サービス調達などの評価は、ソフトウェア
組織や運営の評価は、アドミニストレーション
住民の参加や当事者などの評価は、パーティシペーション
財産の評価は、ファイナンス


地域福祉の担い手


□ 17.1950(昭和25)年に、神奈川県は「社会事業教育実施校制度」をつくり、福祉教育の推進を行った。


戦後初期の福祉教育の共通点は、社会事業を通して児童の健全育成を意図とした教育実践を行うことであった。
高度経済成長期になると、児童の健全育成という教育実践ではなく、子どもたち自らが課題解決の方法を探るという教育実践に変更されています。


□ 18.1977(昭和52)年に始まった「学童・生徒のボランティア活動普及事業」は、教育実践が全国的に普及する契機となった。


「学童・生徒のボランティア活動普及事業」は、厚生省(現・厚生労働省)の国庫補助によって始められた事業で、1989(平成元)年からはボランティア協力校制度と呼ばれ、現在でも行われています。


□ 19.1992(平成4)年に作成された「新・社会福祉協議会基本要項」によると、社会福祉協議会には7つの機能があります。

社会福祉協議会の7つの機能
(1) 住民ニーズや福祉課題を明確化し、住民活動を推進する機能
(2) 公私の社会福祉事業等を組織化し、連絡 調整する機能
(3) 福祉活動と福祉事業を企画し、実施する機能(事業型社協)
(4) 調査研究を行い、必要な社会資源を開発する機能
(5) 福祉活動計画を策定し、政策提言や改善運動を行う機能
(6) 地域住民に対して広報活動を行い、啓発する機能
(7) 福祉活動や福祉事業を支援する機能
社会福祉協議会は、社会福祉法の第109条~111条に規定されており、地域福祉推進の中核に位置づけられています。


□ 20.ボランティアは一般に、自発性、主体性、社会性、無償性という特質を持っています。


毎年1月17日は「防災とボランティアの日」。
毎年1月15日~21日は「防災とボランティア週間」。
ボランティアは、近年では実費の支給が認められる傾向にある。


□ 21.NPO法人(特定非営利活動法人)とは、NP0法(特定非営利活動促進法)に基づき、特定非営利活動を主たる目的として設立された法人のことをいいます。


1998(平成10)年にNPO法(特定非営利活動促進法)が施行され、ボランティア団体などが法人格を取得しやすくなった。


NPO法人の特徴
(1)組織化されている、(2)民間である、(3)利益分配をしない、(4)自己統治や自己決定をしている、(5)自発的、(6)非宗教的、(7)非政治的


□ 22.NPO法に規定されている活動分野には、20の活動分野があります。


NPO法に規定されている20の活動分野
(1) 保健・医療または福祉の増進を図る活動
(2) 社会教育の推進を図る活動
(3) まちづくりの推進を図る活動
(4) 観光の振興を図る活動
(5) 農山漁村または中山間地域の振興を図る活動
(6) 学術・文化・芸術またはスポーツの振興を図る活動
(7) 環境の保全を図る活動
(8) 災害救援活動
(9) 地域安全活動
(10) 人権の擁護または平和の推進を図る活動
(11) 国際協力の活動
(12) 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
(13) 子どもの健全育成を図る活動
(14) 情報化社会の発展を図る活動
(15) 科学技術の振興を図る活動
(16) 経済活動の活性化を図る活動
(17) 職業能力の開発または雇用機会の拡充を支援する活動
(18) 消費者の保護を図る活動
(19) (1)~(18)に掲げる活動を行う団体の運営または活動に関する連絡、助言または援助の活動
(20) (1)~(18)に掲げる活動に準ずる活動として都道府県または指定都市の条例で定める活動


□ 23.民生委員とは、民生委員法に基づき、同じ住民の立場として地域の要援護者等への相談援助を行う者のことをいいます。


民生委員は、市(特別区を含む)町村に設置された民生委員推薦会が推薦し、都道府県に設置された地方社会福祉審議会の意見を聴いて都道府県知事が推薦し、厚生労働大臣が委嘱することになっています。任期は3年です。
民生委員の基本理念
民生委員法第1条は「民生委員は、社会奉仕の精神をもって、常に住民の立場に立って相談に応じ、及び必要な援助を行い、もって社会福祉の増進に努めるものとする」と規定しています。


□ 24.民生委員は、児童福祉法によって児童委員を兼任することになっています。


1947(昭和22)年の児童福祉法の制定によって、民生委員は児童委員を兼任することになった。1994(平成6)年には、児童の福祉に関する機関と児童委員の連絡調整を行い、児童委員の活動を支援する主任児童委員の制度が発足しました。


社会福祉協議


□ 25.1951(昭和26)年に制定された社会福祉事業法に、中央社会福祉協議会(現全国社会福祉協議会)と規定されました。


1983(昭和58)年に改正された社会福祉事業法によって、初めて市町村社会福祉協議会が法的に位置づけられた。現在では、すべての市町村に社会福祉協議会が設置されています。


□ 26.社会福祉協議会には、全国社会福祉協議会、都道府県・指定都市社会福祉協議会、市町村社会福祉協議会があります。


市町村社会福祉協議会は、1つの市町村に2つ以上設置できないため、平成の大合併による市町村数の減少に伴い、設置数も減少しました。地域社会福祉協議会は、社会福祉法に規定がないため、任意で設置することができます。


□ 27.市町村社会福祉協議会は、区域内の社会福祉事業を経営する者の過半数及び社会福祉活動を行う者の過半数が参加することを要件としています。


市町村社会福祉協議会は、区域内の市町村社会福祉協議会の過半数、社会福祉事業または更生保護事業を経営する者の過半数が参加することを要件としています。


□ 28.都道府県社会福祉協議会と市町村社会福祉協議会は、社会福祉法に事業内容が規定されています。


社会福祉法第110条には都道府県社会福祉協議会が行う事業が規定され、社会福祉法第109条には市町村社会福祉協議会が行う事業が規定されています。

都道府県社会福祉協議会が行う事業(社会福祉法第110条)


社会福祉協議会地域福祉の理論と方法
(1) (市町村社会福祉協議会の事業のうち)広域的見地から行うことが適切なもの
(2) 社会福祉事業に従事する者の養成 研修
(3) 社会福祉事業の経営に関する指導 助言
(4) 市町村社会福祉協議会相互の連絡 事業の調整
市町村社会福祉協議会が行う事業(社会福祉法第109条)
(1) 社会福祉事業の企画・実施
(2) 社会福祉活動への住民参加の援助
(3) 社会福祉事業に関する調査・普及・宣伝・連絡・調整及び助成など


□ 29.社会福祉協議会には、地域福祉推進の職員として企画指導員、福祉活動指導員、福祉活動専門員が配置されています。


企画指導員は、1963(昭和38)年から全国社会福祉協議会に配置されています。
福祉活動指導員は、1963(昭和38)年から都道府県。指定都市社会福祉協議会に配置されています。
福祉活動専門員は、1966(昭和41)年から市町村社会福祉協議会に配置されています。


□ 30.1992(平成4)年に、「新・社会福祉協議会基本要項」が定められました。


1992(平成4)年に、新たな社会福祉協議会の指針として「新・社会福祉協議会基本要頂」が定められました。


「新・社会福祉協議会基本要項」の特徴
(1)社会福祉協議会の構成員の明確化
(2)住民主体の理念の継続と発展
(3)福祉サービス等の企画と実施の強化


共同募金


□ 31.共同募金は、1918年にアメリカのロチェスターで行われたコミュニティ・チェストが始まりであると考えられています。


共同募金は、毎年1回、厚生労働大臣の定める期間に行われる寄付金の募集です。通常は、10月1日~12月31日の間に都道府県を単位として行われています。


□ 32.共同募金会は、共同募金を行うことを目的に設立された社会福祉法人で、第一種社会福祉事業です。


共同募金会は、共同募金が行われる前に、あらかじめ都道府県社会福祉協議会の意見を聴き、配分委員会の承認を得て、目標額、受配者の範囲、配分方法などを定め、公告することが規定されています。


共同募金の募金方法別構成率
(平成24年度)
個別募金74.0%、法人募金9.4%、職域募金4.0%、街頭募金2.0%、学校募金1.6%、個人寄付1.3%、イベント募金0.8%、NHK歳末募金3.3%


□共同募金で集められた寄附金は、配分委員会を通じ、地域配分や施設配分などに区分されます。


市町村社会福祉協議会が行う地域福祉活動のほか、各種団体、ボランティアグループなどに助成されるのは地域配分、建物や設備の修理・改善、各種機械や備品の購入・整備のほか、施設が実施する在宅福祉サービス事業などにも使われていのが施設配分です。


共同募金の助成内訳 (対象者別) (平成24年度)
住民全般49.5%、高齢者23.5%、障害児・者15.3%、児童・青少年11.7%
配分委員会は、寄附金の公正な配分に資するため、共同募金会に置かれています。



6.福祉行財政と福祉計画


福祉行政の実施体制


□ 1.福祉政策の基幹部分は、社会福祉に関する成文法という法的な根拠を持っています。


法には、文章で表現され制定されている成文法と、文章で表現されていない不文法がある。成文法は、憲法を頂点にピラミッドのような体系をしており、上位に位置する法が基本的な事項を定め、下位に位置する法が細かい事項を定めています。


成文法の体系
上位 憲法→法律→政令・省令→規則・条例など 下位


□ 2.社会福祉法の規定により、都道府県には地方社会福祉審議会の設置が義務づけられています。


地方社会福祉審議会は、都道府県知事や政令指定都市長などの諮問に答え、関係行政庁に意見を具申する役割を担っています。


□ 3.1999(平成11)年の地方分権一括法の成立によって、機関委任事務が廃止されました。


地方分権一括法によって、地方公共団体の社会福祉事務は、法定受託事務と自治事務に再編されました。


法定受託事務と自治事務
法定受託事務は、本来は国や都道府県が行うべき事務を受託し、地方公共団体が行っている事務
自治事務は、地方公共団体が行う事務のうち、法定受託事務以外の事務


□ 4.厚生労働省で主に社会福祉を担当しているのは、社会・援護局、雇用均等・児童家庭局、老健局の3つの局です。


厚生労働省は、2001(平成13)年の中央省庁再編によって、厚生省と労働省が統合再編されたもので、11の局が設置されています。社会福祉は、主に、社会・援護局、雇用均等・児童家庭局、老健局の3つの局が担当しています。


□ 5.厚生労働省には、社会保障に関連する審議会として社会保障審議会が設置されています。


社会保障審議会は、社会保障に関する調査・審議を行い、厚生労働省の諮問に答え、関係行政庁に意見を具申する役割を担っています。


□ 6.わが国の地方公共団体には、普通地方公共団体と特別地方公共団体の2つがあります。


都道府県と市町村のことを普通地方公共団体、特別区、地方公共団体の組合、財産区のことを特別地方公共団体といいます。


地方公共団体の分類
普通地方公共団体は、都道府県、市町村(指定都市:人口50万人以上、中核市:人口30万人以上、特例市:人口20万人以上、その他の市:人口5万人以上、町村)
特別地方公共団体は、特別区:東京23区、地方公共団体の組合(一部事務組合、広域連合)、財産区


福祉財政


□ 7.わが国の予算では、社会福祉関係の費用を社会保障関係費として計上しています。


社会保障関係費には、年金医療介護保険給付費、生活保護費、社会福祉費、保健衛生対策費、雇用労災対策費があります。


社会保障関係費の内訳(平成26年度)
年金医療介護保険給付費73.9%、生活保護費9.6%、社会福祉費14.6%、保健衛生対策費1.3%、保健衛生対策1.3%、雇用労災対策費0.6%、


□ 8.2012(平成24)年度の地方財政における歳出は、前年度に比べ減少しています。


2012(平成24)年度の地方財政をみると、歳出は前年度に比べ減少しており、東日本大震災分を除いた通常収支分の歳出も、前年度に比べ減少しています。


□ 9.2012(平成24)年度の地方財政の目的別歳出決算を構成比でみると、民生費が最も高くなっています。


民生費は、地方財政の目的別歳出決算の構成比では最も高くなっています。2番目は教育費、3番目は公債費です。


□ 10.2012(平成24)年度の民生費の内訳を構成比でみると、児童福祉費が最も高くなっています。


児童福祉費は増加傾向にあり、民生費の内訳の構成比では最も高くなっています。


民生費の内訳(平成24年度)の構成比
児童福祉費31.3%、老人福祉費24.7%、社会福祉費24.0%、生活保護費16.9%
災害救助費3.0%


福祉計画


□ 11.わが国の高齢化対策には、ゴールドプラン、新ゴールドプラス、ゴールドプラン21などがあります。


代表的な高齢化対策
1989(平成元)年、ゴールドプラン「高齢者保健福祉推進十か年戦略」1999(平成11)年度までの在宅福祉や施設福祉の緊急整備目標などを提示
1994(平成6)年、新ゴールドプラン「高齢者保健福祉推進十か年戦略の見直しについて」ゴールドプランが見直され、整備目標の引き上げを実施
1999(平成11)年、ゴールドプラン21「今後5か年間の高齢者保健福祉施策の方向」新ゴールドプランに続き、2004(平成16)年度までの介護サービス基盤の整備を含む総合的なプランとして策定


□ 12.わが国の少子化対策には、エンゼルプラン、新エンゼルプラン、子ども・子育て応援プラン、子ども・子育てビジョンなどがあります。


代表的な少子化対策
1994(平成6)年、エンゼルプラン「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」
1999(平成11)年、新エンゼルプラン「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」
2004(平成16)年、子ども・子育て応援プラン「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について」
2010(平成22)年子ども。子育てビジョン「重点施策実施5か年計画(前期)」


□ 13.わが国の障害者対策には、障害者プラン、新障害者基本計画、新障害者プランなどがあります。


代表的な障害者対策
1995(平成7)年、障害者プラン「ノーマライゼーション7か年戦略」リハビリテーションとノーマライゼーシ∃ンを基本理念として策定された計画
2002(平成14)年、新障害者基本計画障害者基本法に基づき、国が策定する障害者のための施策に関する基本的な計画
新障害者プラン「重点施策実施5か年計画」新障害者基本計画の前期5年で、重点的に実施する施策や達成目標などを定めたプラン


□ 14.介護保険事業計画は、3年を1期として策定されます。


介護保険事業計画には、市町村が策定する市町村介護保険事業計画と、都道府県が策定する都道府県介護保険事業支援計画があり、ともに3年を1期として策定されます。介護保険事業計画の策定内容は、定めるべき事項と定めるよう努める事項に大別されます。


□ 15.都道府県介護保険事業支援計画は、都道府県老人福祉計画と一体のものとして作成します。


都道府県介護保険事業支援計画は、都道府県老人福祉計画と一体のものとして作成し、さらに医療計画、都道府県地域福祉支援計画、高齢者居住安定確保計画などと調和が保たれたものでなければならない。


□ 16.社会福祉法では、市町村地域福祉計画と都道府県地域福祉支援計画の策定事項が規定されています。


社会福祉法では、市町村地域福祉計画の策定事項と都道府県地域福祉支援計画の策定事項が規定されています。
市町村地域福祉計画の策定事項(社会福祉法第107条他)
福祉計画福祉行財政と福祉計画
(1) 地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項
(2) 地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項
(3) 地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項
(4) 要援護者の把握・情報共有 支援に関する事項(通知)
都道府県地域福祉支援計画の策定事項(社会福祉法第108条)
(1) 市町村地域福祉の推進を支援するための基本的方針に関する事項
(2) 社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保または資質の向上に関する事項
(3) 福祉サービスの適切な利用の推進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項


□ 17.老人福祉法は、市町村に市町村老人福祉計画、都道府県に都道府県老人福祉計画の策定を義務づけています。


市町村老人福祉計画は、市町村介護保険事業計画と一体のものとして作成され、市町村地域福祉計画と調和がとれたものであることが求められます。都道府県老人福祉計画は、都道府県介護保険事業支援計画と一体のものとして作成され、都道府県地域福祉支援計画と調和がとれたものであることが求められます。
介護保険法は、市町村に市町村介護保険事業計画、都道府県に都道府県介護保険事業支援計画の策定を義務づけています。


□ 18.福祉計画には、計画の策定→実施→評価→再策定という過程があります。


福祉計画の過程モデルとして、計画の策定(plan)、実施(do)、評価(see)、再策定(rolling)という一連のサイクルがあり、一般にローリング方式といわれます。



7.社会保障


社会保障制度の歴史


□ 1.1601年に成立した「エリザベス救貧法」は、貧民を分類して救済事業を行った。


「エリザベス救貧法」は、貧民を、有能貧民、無能貧民、児童の3種類に分け、有能貧民は強制就労させました。
「エリザベス救貧法」の特徴は、救貧税の徴収、貧民を就労させるための配慮、貧民監督官制度による貧民の救済です。


□ 2.1834年に制定された「新救貧法,」は、中央に救貧法委員会を設置し、救貧行政を実施しました。


「新救貧法」では、救済を受ける貧民は最低層の自立労働者以下の水準で処遇するという劣等処遇の原則が明示されました。
「新救貧法」の特徴は、救貧行政の中央集権化、貧民処遇の一元化、院外救済の禁止、劣等処遇の原則です。


□ 3.ドイツは1883年に、世界最初の社会保険立法となる「疾病保険法」を制定しました。


ドイツでは、1883年に疾病保険法、1884年に災害保険法、1889年に養老及び廃疾保険法が制定されました。
ビスマルク宰相のもとで制定された社会保険は、「飴と鞭」といわれる政策の「飴」にあたります。


□ 4.アメリカでは1935年に、世界で最初に社会保障という言葉を用いた「社会保障法」を成立させました。


ルーズベルト大統領が大恐慌に対処するため、ニューディール政策の一環として制定したのが「社会保障法」です。この制度には、医療保障が含まれていなかった。
1938年にはニュージーランドが「社会保障法」を制定しています。


□ 5.フランスでは1945年に、「フランス社会保障計画(ラロック・プラン)」が発表されました。


「フランス社会保障計画(ラロック・プラン)」では、主に被用者を対象としていた社会保障制度から、普遍的な全国民のための社会保障制度を拡充するという計画が実施されました。


□ 6.1942年に、「ゆりかごから墓場まで」という普遍的な社会保障制度を提示した「ベヴァリッジ報告」が発表されました。


「ベヴァリッジ報告」では、社会が克服する社会悪として、欠乏、疾病、無知、不潔、怠惰という「5つの巨人悪」が唱えられました。
「ベヴァリッジ報告」での原則は、(1)均―給付・均―拠出の原則、(2)ナショナルミニマムの原則、(3)一般性の原則
国が国民に対して最低限度の生活を保障すべきであるという考え方をナショナル・ミニマムといいます。ウェッブ夫妻が『産業民主制論』の中で提示しています。


□ 7.わが国では第二次世界大戦中、国家総動員制のために社会保障制度が拡充されました。


第二次世界大戦前。中までの社会保障の法
1922(大正11)年、健康保険法(施行は1927(昭和2)年、対象は鉱工業労働者)
1938(昭和13)年、国民健康保険法(対象は農業者や自営業者)
1939(昭和14)年、船員保険法(対象は船員)
1941(昭和16)年、労働者年金保険法(対象は男子の筋肉労働者)
1944(昭和19)年、厚生年金保険法(労働者年金保険法を改称、対象を被用者全体に拡大)


□ 8.わが国では、1950(昭和25)年の社会保障制度審議会の勧告をもとに社会保障体系がつくられました。


社会保障制度の歴史
第二次世界大戦後の社会保障の法
1947(昭和22)年、労働者災害補償保険法、失業保険法
1958(日召和33)年、国民健康保険法の改正
1959(昭和34)年、国民年金法
1961(昭和36)年、国民健康保険法と国民年金法の施行(国民皆保険皆年金体制の確立)
1974(昭和49)年、雇用保険法(失業保険法を改正)
1982(昭和57)年、老人保健法(老人医療費の有料化)
2000(平成12)年、介護保険法


わが国の社会保障制度の概要


□ 9.国際労働機関(ILO)は、社会保障の柱として、社会扶助と社会保険を掲げています。


国際労働機関(ILO)が1952年に採択した「社会保障の最低基準に関する条約」は、医療給付、疾病給付、失業給付、老齢給付、業務災害給付、家族給付、母性(出産)給付、廃疾給付、遺族給付の9項目を、社会保障の範囲として掲げています。
国際労働機関(ILO)は、ベルサイユ条約によって1919年に設立されました。


□ 10.わが国の社会保障制度は、社会保険が主体で、公的扶助と社会手当が社会保険を補完しています。


社会保険は、被保険者が支払う保険料を主な原資として保険事故に備えるものです。
公的扶助は、租税を原資として困窮者の生活支援と自立支援のために給付されるものです。
社会手当は、社会保険と公的扶助の中間的方法をとったものです。


□ 11.社会保険には防貧的機能があり、公的扶助には救貧的機能があります。


社会保険は、失業や傷病などのように個人の責任に帰し得ない貧困原因に備え、貧困にならないように準備することを目指した防貧的機能がある。公的扶助は、困窮者に対し、国や地方公共団体が最低限度の生活を保障するという救貧的機能があります。


□ 12.社会保険には、年金保険、医療保険、労災保険、雇用保険、介護保険の5つがあります。


社会保険は、公的扶助に比べ給付の権利性が強く、受給にはスティグマが伴わないといった特徴があります。受給にあたって資力調査が行われることはない。
社会保険では、保険料拠出の見返りとして給付を受けることが、被保険者の権利として明確になっています。


□ 13.持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律は、「法制上の措置」として、社会保障制度改革の全体像・進め方を明示するものです。


持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律が、2012(平成24)年に成立した社会保障制度改革推進法に基づく「法制上の措置」として、有識者による社会保障制度改革国民会議における審議の結果等を踏まえて、社会保障制度改革の全体像・進め方を明示するものとして、2013(平成25)年12月5日に成立し、同年12月13日に公布・施行されました。


分野別の講ずべき社会保障制度改革の措置等
少子化対策は、子ども 子育て関連法の実施、待機児童解消加速化プランの実施
医療制度は、病床機能報告制度の創設、国保の保険者・運営等の在り方の改革、70~74歳の患者負担の見直し、高額療養費の見直し
介護保険制度は、地域包括ケアの推進、予防給付の見直し、低所得者の介護保険料の軽減
公的年金制度は、既に成立している年金関連法の実施、マクロ経済スライドの在り方


□ 14.わが国の社会保障の機能には、所得の再分配機能があります。


所得の再分配機能には、垂直的再分配、間再分配の3つがあります。
所得の再分配機能
垂直的再分配は、高所得者から低所得者への再分配
水平的再分配は、失業や疾病など同一所得層内の再分配
世代間再分配は、年金など賦課方式による世代間の再分配


□ 15.2011(平成23)年度の社会保障給付費を部門別にみると、総額に占める割合で最も多いのは年金です。


社会保障給付費部門別内訳(平成23年度)は、年金49.4%、医療31.7%、福祉その他18.9%
社会保障給付費とは、社会保障のために国民に給付された費用のことをいいます。


年金保険制度


□ 16.わが国は、国民すべてが公的年金制度に加入する国民皆年金体制です。


強制加入被保険者は、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者に分けられます。被保険者の資格に国籍要件はないが、強制加入の第1号被保険者には住所要件があります。


強制加入の被保険者
第1号被保険者は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって、第2号被保険者、第3号被保険者でない者
第2号被保険者は、被用者年金各法の被保険者、組合員、加入者
第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者で、20歳以上60歳未満の者


□ 17.国民年金の基礎年金給付費は、保険料と国庫負担によって賄われています。


第1号被保険者の保険料は、2005(平成17)年度以降、毎年280円ずつ引き上げられ、2017(平成29)年度以降は1万6,900円で固定することになっています。
国庫負担は、2009(平成21)年度に、3分の1から2分の1に引き上げられています。


□ 18.第1号被保険者の保険料免除制度には、法定免除と申請免除があります。


生活保護法の生活扶助を受ける場合や、障害基礎年金の受給権者である場合などに受ける保険料免除のことを法定免除、所得がない者や、生活保護法による生活扶助以外の扶助を受ける場合などに受ける保険料免除のことを申請免除といいます。
申請免除には、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除がある。また、そのほかに、若年者納付猶予制度や学生納付特例制度があります。


□ 19.基礎年金の給付の種類には、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の3種類があります。


基礎年金の種類と対象者
老齢基礎年金の対象者は、高齢者
障害基礎年金の対象者は、障害者
遺族基礎年金の対象者は、国民年金加入者の所得によって生活していた遺族
基礎年金は、いずれか1種類のみ給付され、併給は認められていません。


□ 20.老齢基礎年金は、受給資格期間の合計が25年以上ある者が65歳に達したときに給付されます。


受給資格期間とは、保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間を合計したものです。保険料免除期間は、受給資格期間には算入されるが、老齢基礎年金を計算する際に減額されることになります。


□ 21.老齢基礎年金の支給開始年齢は、原則として65歳であるが、繰上げ支給や繰下げ支給とすることもできます。


老齢基礎年金の支給開始年齢は、原則として65歳であるが、本人の希望によって60~64歳までの繰上げ支給と、65歳を過ぎてからの繰下げ支給を選択することができます。
2007(平成19)年度から、厚生年金保険も本人の希望によって65歳を過ぎてからの繰下げ支給ができるようになった。




□ 22.障害基礎年金の年金額は、1級の場合には2級障害年金額の25%増、2級の場合には老齢基礎年金と同額になります。


障害基礎年金は、被保険者または60歳以上65歳未満の被保険者であった者が、(1) 20歳未満で初めて医師の診断を受けた者が障害の状態であって20歳に達するか、20歳に達してから障害の状態になった場合で、(2)保険料納付済期間と保険料免除期間が、被保険者期間の3分の2以上で、障害状態に該当する場合に支給されます。


□ 23.遺族基礎年金の遺族の範囲は、死亡した者によって生計を維持していた子のある妻または子です。


遺族基礎年金の遺族の範囲における子とは、18歳に到達した年度の末日までにある子、または20歳未満で、障害等級1・2級の障害を持つ子です。


□ 24.厚生年金の給付には、老齢厚生年金、障害厚生年金・障害手当金、遺族厚生年金があります。


老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金は、基礎年金の支給要件を満たしている場合に、原則として老齢基礎年金に上乗せする形で支給されます。障害手当金は、基礎年金とは別に支給される独自の給付です。


厚生年金の給付の種類と支給要件
老齢厚生年金は、厚生年金の被保険者期間が1か月以上ある者で、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている者に原則として65歳から支給
障害厚生年金は、厚生年金の被保険者期間中にかかった傷病が原因で、障害基礎年金の障害等級1~3級に該当する場合に支給、障害手当金:障害基礎年金に該当しない障害の程度で、厚生年金保険の障害等級3級より軽度の場合に支給
遺族厚生年金は、被保険者が死亡したとき、被保険者であつた間に発生した傷病が原因で初診日から5年以内に死亡したとき、障害等級1級・2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき、老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たした者が死亡したとき
老齢厚生年金は、障害基礎年金との併給が可能になっています。


□ 25.社会保障・税一体改革関連の年金制度改正では、計4法が成立しました。


社会保障・税一体改革関連の年金制度改正は、2012(平成24)年に成立し、順次実施されることになった。
2012(平成24)年の年金制度改正のポイント
(1)公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律
・年金の受給資格期間を現在の25年から10年に短縮(平成27年10月1日)
・基礎年金国庫負担2分の1を恒久化する年度を平成26年度に設定(平成26年4月1日)
・短時間労働者に対する厚生年金 健康保険の適用拡大(平成28年10月1日)
・厚生年金や健康保険等に係る産休期間中の保険料免除(平成26年4月1日)
・遺族基礎年金の父子家庭への支給(平成26年4月1日)
(2)被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律
・厚生年金に公務員及び私学教職員も加入し、2階部分は厚生年金に統一(平成27年10月1日)
・共済年金・厚生年金の保険料率(上限18.3%)を統一、制度の差異を解消(平成27年10月1日)
・共済年金にある公的年金の3階部分(職域部分)を廃止(平成27年10月1日)
・恩給期間に係る給付を27%引き下げ(平成25年8月1日)
(3)国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律
・年金額の特例水準(25%)を平成25~27年度までに解消(平成25年10月1日)
(4)年金生活者支援給付金の支給に関する法律
・年金受給者のうち、低所得高齢者 障害者等に福祉的給付を実施(平成27年10月1日)


医療保険制度


□ 26.健康保険の保険者には、健康保険組合と全国健康保険協会があります。


健康保険の保険者には、主として大企業の被用者およびその被扶養者を対象とする健康保険組合と、主として中小企業の被用者およびその被扶養者を対象とする全国健康保険協会(協会けんぽ)があります。
健康保険組合の設立要件は、単独の企業が設立する場合が被保険者数700人以上、複数の事業者が共同で設立する場合は、被保険者数3,000人以上です。


□ 27.わが国の医療保険制度は、健康保険、共済保険、船員保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度に大きく分けることができます。


健康保険の対象者は、民間被用者
共済保険の対象者は、国家公務員 地方公務員 私立学校教職員
船員保険の対象者は、船員
国民健康保険の対象者は、自営業者 農林水産業者 退職者など
後期高齢者医療制度の対象者は、原則として75歳以上の高齢者


□ 28.国民健康保険の保険者には、市町村(特別区を含む)と国民健康保険組合があります。


地域住民を対象とし市町村が保険者になっているのが市町村国民健康保険、被用者保険の退職者を対象とし市町村が保険者になっているのが退職者医療制度、自営業者などを対象としているのが国民健康保険組合です。
国民健康保険組合には、同種の事業または業務に従事する者が300人以上で組織する公法人も含まれており、主な業種には、医師、歯科医師、弁護士などがあります。


□ 29.国民健康保険の保険料には、3つの賦課方式が定められています。


国民健康保険の保険料は、市町村ごとの実情に応じて条例で定めることになっています。


3つの賦課方式
(1) 所得割+資産割+被保険者均等割+世帯別平等割
(2) 所得割+被保険者均等割+世帯別平等割
(3) 所得割+被保険者均等割


□ 30.2014(平成26)年4月以降に70歳になる者(69歳まで3割負担だった者)の患者負担割合は、原則として2割となりました。


医療保険制度では、医療保険証を提示して医療サービスを受けると、保険給付を受けることができるが、一部は患者の自己負担になります。患者の自己負担分の割合については、年齢や所得によって異なります。
なお、2014(平成26)年4月から70~74歳の患者負担特例措置が見直され、2014(平成26)年4月以降に70歳になる者(69歳まで3割負担だった者)は、誕生日の翌月から、2割負担とすることになりました。一方、2014(平成26)年3月末までに70歳に達していた者(昭和19年4月1日までに生まれた者)は、特例措置が継続されることになり、1割負担となっています。


年齢区分別患者負担割合
0歳~義務教育就学前は2割、義務教育就学前~69歳は3割、70~74歳(現役並み所得)2割(3割)、75歳以上(現役並み所得)は1割(3割)


□ 31.医療保険の給付には、法定給付と付加給付があります。


医療保険の主な給付の種類
法定給付は、現物給付と現金給付
現物給付は、療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費など
現金給付は、傷病手当金、出産育児一時金、出産手当金、療養費、移送費など
付加給付は、任意給付


□ 32.2006(平成18)年に「老人保健法」が改正され、「高齢者医療確保法」が制定されました。


高齢化の進展に対処するため、2006(平成18)年に「老人保健法」が全面的に改正され、「高齢者の医療の確保に関する法律」(高齢者医療確保法)が制定されました。2008(平成20)年度からは「後期高齢者医療制度」が施行されています。


介護保険制度


□ 33.介護保険制度は、高齢者介護が深刻な問題となっていた2000(平成12)年に創設されました。


介護保険制度の目的は、高齢者に、必要な介護サービスを提供し、能力に応じて自立した日常生活を営むことができるようにすることです。


□ 34.介護保険制度は、5年を目途に大きな見直しが行われ、2005(平成17)年には、予防重視への転換を中心とした大改正が行われました。


2005(平成17)年の介護保険制度の改正ポイント
(1)予防重視型システムの確立は、新予防給付の創設、地域支援事業の創設
(2)施設給付の見直しは、居住費 食費の見直し、低所得者への配慮
(3)新たなサービス体系の確立は、地域密着型サービスの創設、居住系サービスの充実、地域包括ケア体制の整理、中重度者への支援強化、医療と介護の連携 機能分担
(4)サービスの質の確保 向上は、介護サービス情報の公表、サービスの専門性と生活環境の向上、事業者規制の見直し、ケアマネジメントの見直し
(5)負担のあり方・制度運営の見直しは、第1号保険料の見直し、要介護認定の見直しと保険者機能の強化、費用負担割合等の見直し


労働保険制度


□ 35.労働保険とは、労働者災害補償保険と雇用保険をまとめた総称です。


業務災害と通勤災害による傷病等に対して補償を行うのが労働者災害補償保険で、労災保険と呼ばれています。労働者の雇用機会の増大とその安定を確保するのが雇用保険です。


□ 36.労災保険の被保険者は、国家公務員と地方公務務員以外のすべての労働者です。


労災保険は、雇用形態に関係なくパートタイマー、アルバイト、日雇など、非正規雇用労働者であっても適用となります。労災保険の保険者は政府であるが、実際の事務は、都道府県の労働基準局と労働基準監督署が行っています。
労災保険の保険料は、労働者は負担せず、事業主が全額負担しています。保険料率は、過去3年間の事故率などを考慮して、事業の種類ごとに決められています。


□ 37.労災保険の給付では、その災害が労働によるものであるかについて労働基準監督署の認定を受けなければならない。


労災保険の給付の種類
(1)業務災害に関する給付は、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付
(2)通勤災害に関する給付は、療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付、葬祭給付、傷病年金、介護給付
(3)二次健康診断等給付
労災保険法施行規則別表に定める障害の等級には、1級から14級までの14等級があります。


□ 38.雇用保険には、失業等給付と雇用保険二事業があります。


雇用保険制度の体系
雇用保険は、失業等給付(求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付)と雇用保険二事業(雇用安定事業、能力開発事業)


□ 39.教育訓練給付は、2014(平成26)年10月より拡充され、給付額が4割に引き上げられました。


2014(平成26)年10月より、教育訓練給付は、給付額が従来の2割から4割に引き上げられました。対象となるのは、2年以上の被保険者期間を有する者(2回目以降は10年以上の被保険者期間が必要)で、給付期間は原則として2年(資格につながる場合などは最大3年)、年間48万円を上限とします。
45歳未満の離職者が受講する場合、訓練期間中は教育訓練支援給付金が支給されます(平成30年度までの暫定措置)。


□ 40.雇用保険二事業の財源は、保険料と国庫負担です。


雇用保険の保険料は、事業主と被保険者が負担することになっているが、雇用保険二事業に要する費用は、事業主のみが負担することになっています。
雇用保険じぎょうには、ほかに雇用福祉事業があったが2007(平成19)年度以降廃止されました。雇用保険二事業についても予算が削減され、縮小の方向にあります。


□ 41.育児休業給付金は、育児休業中に支給されます。


育児休業中に支給されるのが、育児休業給付金です。育児休業給付の支給金額は、これまで休業開始前賃金の50%であったが、2014(平成26)年4月から1歳未満の子を養育するために育児休業を取得する場合、休業開始後6か月について、休業開始前の賃金に対する給付割合が67%に引き上げられました。


□ 42.介護休業給付は、家族を介護するために休業した場合に支給されます。


介護休業給付における家族とは、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、被保険者が同居しかつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫です。支給額は、1か月あたり、原則として休業開始時賃金月額の40%です。

8.障害者に対する支援と障害者自立支援制度


障害者の現状


□ 1.2011(平成23)年の障害者手帳所持者数は約479万人と推計されています。


在宅の障害者手帳所持者数は約479万人と推計されています。障害者手帳を種類別にみると、身体障害者手帳所持者が約386万人、療育手帳所持者が約62万人、精神障害者保健福祉手帳所持者が約57万人となっています。


□ 2.身体障害者手帳所持者は、年々増加している傾向にあり、高齢化も進んでいます。


在宅の身体障害者手帳所持者は、年々増加している傾向にあり、さらに年齢階級別にみると、「70歳以上」が57.3%を占めて最も多くなっています。また、身体障害の種類別にみると、肢体不自由が最も多く、次いで内部障害が多くなっています。


□ 3.療育手帳所持者は、男性の方が多い。


在宅の療育手帳所持者を性別でみると、男性が約35万5千人、女性が約27万人と推計されています。また、重度の療育手帳所持者は、約24万人で療育手帳所持者全体の約39%を占めています。


□ 4.精神障害者保健福祉手帳所持者の半数以上は2級です。


在宅の精神障害者保健福祉手帳所持者を障害等級別にみると、2級の手帳を持っている者の数が最も多く、全体の53.5%と半数以上を占めています。また、1級の手帳を持っている者の約4割が65歳以上となっており、高齢者の方が若年者よりも重度化しやすくなっています。


□ 5.精神障害者保健福祉手帳所持者を年齢階級別にみると、「40~49歳」が最も多い。


在宅の精神障害者保健福祉手帳所持者を年齢階級別にみると、「40~49歳」が最も多く、次いで「70歳以上」が多くなっています。性別をみると、男性が約30万人、女性が約26万人となっており、男性の方が女性よりも多い。


□ 6.障害の原因をみると、「病気」と答えた者が最も多い。


障害者手帳所持者の障害の原因をみると、「病気」と答えた者が最も多くなっており、65歳以上の場合には、「病気」に次いで「加齢」が多くなっています。


障害者福祉の発展


□ 7.国連は、1948(昭和23)年に「世界人権宣言」を採択しました。


国連が1948(昭和23)年に採択した「世界人権宣言 」は、人権と自由を尊重し確保するために、すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準を宣言しています。


世界人権宣言第1条
「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」


□ 8.国連は、「知的障害者の権利宣言」と「障害者の権利宣言」を採択しました。


国連において、1971(昭和46)年に採択された「知的障害者の権利宣言」では、知的障害者も障害がない人と同様の権利を持つことが宣言されました。また、1975(昭和50)年に採択された「障害者の権利宣言」では、知的障害、精神障害、身体障害のすべての障害を持つ人の権利が宣言されました。


□ 9.国連は、1981(昭和56)年の国際障害者年で、「完全参加と平等」を主題として掲げました。


国連は、「完全参加と平等」を主題として掲げた国際障害者年の翌年1982(昭和57)年に「障害者に関する世界行動計画」を採択し、各国がとるべき障害のある人への施策モデルを提示しました。また、1983(昭和58)~1992(平成4)年を「国連・障害者の十年」とし、行動を具体化することを各国に要請しました。
1993(平成5年)~2002年(平成14)年を「アジア太平洋障害者の十年」とし、アジアにおける「完全参加と平等」を実現するための期間としました。2002年には、さらに10年間延長することが決められました。


□ 10.わが国は、2014(平成26)年1月20日付で、障害者の権利に関する条約に批准しました。


障害者の権利に関する条約は、2006(平成18)年12月に採択され、2008(平成20)年5月に発効されました。わが国は2007(平成19)年9月に署名し、障害者基本法の改正や障害者差別解消法の成立などにより国内の法律が条約の水準に達したとして、2014(平成26)年1月20日付で批准しました。同年2月19日から効力を生じることになった。


障害者総合支援法


□ 11.2005(平成17)年に障害者自立支援法が制定され、障害の種別ことに体系化されていた障害者施策が一元化されました。


障害者自立支援法(現・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法))によって、それまで、身体障害、知的障害、精神障害の障害ごとに体系化されていた障害者施策が一元化されました。また、実施主体についても、都道府県および市町村から市町村に一元化され、市町村が責任を持ってサービスを提供していくことになりました。


□ 12.2014(平成26)年4月から重度訪問介護の対象に、重度の知的障害者などが加わりました。


障害福祉サービスの一つである重度訪問介護は、これまで重度の肢体不自由者を対象としていたが、法改正により、重度の知的障害者や精神障害者などもその対象に加わりました。


障害者総合支援法の主な変更点(2014(平成26)年4月施行)
従来の障害程度区分を障害支援区分に変更、共同生活介護が共同生活援助に一元化、重度訪問介護の対象拡大、地域移行支援の対象拡大


□ 13.介護給付サービスの支給決定を受けようとする場合は、市町村に申請を行います。


介護給付サービスの支給決定を受けようとする障害者または障害児の保護者は、障害者または障害児の保護者の居住地の市町村に申請を行います。


□ 14.2014(平成20年4月から従来の障害程度区分が障害支援区分に変更されました。


2014(平成26)年4月から創設された障害支援区分は、障害者総合支援法において「障害者等の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものとして厚生労働省令で定める区分」と定義されています。障害支援区分の創設に伴い、判定方法も見直されました。


判定方法の主な変更点(2014(平成26)年4月施行)
現行の二次判定により近い一次判定が全国―律で可能となるよう、コンピュータ判定式の抜本的な見直し、警告コードの廃止、身体介助、日常生活、行動障害に係る各調査項目の選択肢の統一、調査項目の追加、削除、統合(106項目→ 80項目)、医師意見書の一部項目をコンピュータ判定で直接評価


□ 15.相談支援には、基本相談支援、地域相談支援、計画相談支援の3種類があります。


障害者総合支援法に基づく相談支援には、基本相談支援、地域相談支援、計画相談支援の3種類があります。事業としては一般相談支援事業と特定相談支援事業に区分されています。
一般相談支援事業=地域相談事業(地域移行支援+地域定着支援)+基本相談支援
特定相談支援事業=計画相談支援(サービス利用支援+継続サービス利用支援)+基本相談支援


□ 16.障害者総合支援法は、都道府県と市町村に障害福祉計画の策定を義務づけています。


障害者総合支援法は、都道府県には市町村障害福祉計画を集約した都道府県障害福祉計画の策定、市町村には市町村障害福祉計画の策定を義務づけています。
障害者総合支援法における都道府県障害福祉計画と市町村障害福祉計画は、障害者基本法における都道府県障害者計画や市町村障害者計画と調和がとれるよう計画されなければならない。


その他の障害者福祉の法制度


□ 17.1993(平成5)年に制定された障害者基本法は、わが国における障害者のための施策に関する基本的事項を定めたものです。


1970(昭和45)年に制定された心身障害者対策基本法が改正され、障害者基本法が制定されました。障害者基本法は、すべての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとっています。


障害者基本法第1条
「この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。」


□ 18.国および地方公共団体は、障害者の自立および社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に実施する責務を有します。


国および地方公共団体は、障害者基本法第1条に規定する社会の実現を図るため、第3条に定めるにのっとり、障害者の自立および社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に実施する責務を有しています。


障害者基本法第3条の基本原則
(1)全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる
分野の活動に参加する機会が確保されること
(2) 全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと
(3) 全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること


□ 19.内閣府には、委員30人以内で組織する障害者政策委員会が設置されています。


障害者基本計画の案の作成に際して意見を聴くため、内閣府には障害者政策委員会が設置されています。委員は、障害者、障害者の福祉に関する事業に従事する者および学識経験者のうちから内閣総理大臣が任命します。


□ 20.障害者基本法は、政府に障害者基本計画の策定を義務づけています。


障害者基本法は、政府に、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者基本計画の策定を義務づけています。また、都道府県は、障害者基本計画を基本とし、都道府県障害者計画を策定することが義務づけられています。さらに、市町村は、障害者基本計画と都道府県障害者計画を基本とし、市町村障害者計画を策定することが義務づけられています。


□ 21.身体障害者手帳の交付を受けるには、都道府県知事の定める医師の診断書を添えなければならない。


身体障害者手帳は、市町村長または福祉事務所長を経由して都道府県知事(指定都市市長または中核市市長を含む)に申請するが、その際、都道府県知事が指定した医師の診断書を添えなければならない。
身体障害者手帳は、譲渡または貸与してはならない。


□ 22.身体障害者手帳の等級は1級から6級まであり、障害の程度が最も重いのは1級です。


身体障害者手帳の等級は1級から6級まであり、障害の程度が最も重いのは1級です。身体障害者障害程度等級表に記載されている等級は、1級から7級まであり、肢体不自由で7級に該当する障害が2つ以上ある場合には6級になります。


身体障害者手帳の障害等級
視覚障害は、1級から6級
聴覚障害は、2級から4級、6級
平衡機能障害は、3級、5級
音声機能、言語機能または咀嚼機能障害は、3級、4級
肢体不自由(上肢・下肢)は、 1級から7級
肢体不自由(体幹)は、 1級から3級、5級
肢体不自由(乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害)は、1級から7級
心臓機能障害は、1級、3級、4級
じん臓機能障害は、1級、3級、4級
呼吸器機能障害は、1級、3級、4級
ぼうこうまたは直腸の機能障害は、1級、3級、4級
小腸機能障害は、1級、3級、4級
ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害は、1級から4級
肝臓機能障害は、1級から4級


□ 23.精神障害者保健福祉手帳の等級は、1級から3級まであります。


精神障害者保健福祉手帳の等級は、1級から3級まであり、障害の程度が最も重いのは1級で、有効期限は2年間です。申請の窓口は市町村になっており、都道府県知事または政令指定都市の市長から交付を受けることになっています。精神障害者保健福祉手帳の目的は、精神障害者の自立と社会参加を支援することで、精神障害者として法的に認められるための要件にはなていません。


精神障害者保健福祉手帳の等級
1級は、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級は、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級は、日常生活もしくは社会生活が制限を受けるか、または日常生活もしくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
2006(平成18)年10月から、精神障害者保健福祉手帳の申請の際に、顔写真が必要になった。


□ 24.精神保健福祉法の改正によって、保護者制度が廃止されました。


「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(精神保健福祉法)の改正により保護者制度が廃止されたことによって、医療保護入院等の適用要件に係る「保護者の同意」から「家族等の同意」に変更されました。この「家族等」には配偶者、親権を行う者、扶養義務者、後見人または保佐人が含まれます。また、その患者に「家族等」に該当する者がいない場合には、市町村長が同意の判断を行うことができるようになりました。


□ 25.精神保健福祉法が制定された経緯は、精神衛生法にさかのぼります。


1950(昭和25)年に制定された精神衛生法は、1987(昭和62)年に改正されて名称が精神保健法となり、1995(平成7)年にも改正されて名称が「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(精神保健福祉法)となりました。


□ 26.障害者虐待防止法における障害者虐待の種類には、使用者による障害者虐待が含まれています。


「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(障害者虐待防止法)における障害者虐待の種類には、養護者による障害者虐待、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待、使用者による障害者虐待の3種類があります。また、障害者虐待の類型には、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクト、経済的虐待があります。
障害者虐待の類型は、高齢者虐待防止法における高齢者虐待の類型と同様である。


□ 27.障害者差別解消法では、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項などを定めています。


「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)は、すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することを目的としており、2016(平成28)年4月から施行されます。同法では、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針や、行政機関等および事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置などを定めています。


□ 28.都道府県および指定都市は、精神保健福祉センターの機能を有する機関を設置しなければならない。


精神保健の向上や精神障害者の福祉の増進を図るための機関として、精神保健福祉法第6条に基づいて都道府県および指定都市に設置されているのが、精神保健福祉センターです。


精神保健福祉センターの業務
(1)精神保健および精神障害者の福祉に関する知識の普及を図り、調査研究を行う
(2)精神保健および精神障害者の福祉に関する相談および指導のうち、複雑または困難なものを行う
(3)精神医療審査会の事務を行う
(4)障害者総合支援法における自立支援医療費の支給認定などに関する事務のうち専門的知識および技術を必要とするものを行う
(5)障害者総合支援法における市町村の支給要否決定にあたり意見を述べる

(6)市町村に対し、技術事項についての協力その他必要な援助を行う
2002(平成14)年度から名称の規定が弾力化されて、精神保健福祉センターという名称を用いなくてもよくなった。


□ 29.発達障害者支援センターの実施主体は、都道府県または指定都市です。


発達障害者支援法上の施設である発達障害者支援センターの実施主体は、都道府県または指定都市ですが、事業の一部または全部を、指定社会福祉法人や特定非営利活動法人などに委託することができます。


発達障害者支援センターの業務
(1)発達障害の早期発見、早期の発達支援等に資するよう、発達障害者および家族に対し、専門的に、その相談に応じ、または助言を行う
(2)発達障害者に対し、専門的な発達支援および就労の支援を行う
(3)医療、保健、福祉、教育等に関する業務を行う関係機関および民間団体並びにこれに従事する者に対し発達障害についての情報提供および研修を行う
(4)発達障害に関して、医療等の業務を行う関係機関および民間団体との連絡調整を行う
(5) (1)~(4)に掲げる業務に付帯する業務
発達障害者支援センターの業務においては、さまざまな専門家等との連携が不可欠である。

9.低所得者に対する支援と生活保護制度

公的扶助の歴史

□ 1.19世紀末に、ブースやラウントリーによって、貧困調査が行われました。

ブースは、17年にわたってロンドンの民衆を調査し、著書『ロンドン民衆の生活と労働』で、ロンドン市民の約3割が貧困線以下であるとした。ラウントリーは、1899年にヨーク市で調査を行い、著書『貧困-都市生活の研究』で第1次貧困と第2次貧困という水準を設定し、市民の約3割が貧困状態にあるとしました。

ラウントリーの貧困水準

第1次貧困は、所得の総収入が身体を維持するための最低限度にも満たない水準

第2次貧困は、収入を飲酒などのように平常とは異なったものに消費しない限り、第1次貧困以上の生活を送れる水準

□ 2.わが国では貧困が社会問題となり、1929(昭和4)年に「救護法」が制定されました。

救護法の対象者は、65歳以上の老人、13歳以下の幼者、妊産婦、病人で、労働能力のある者は対象外となっていました。

□ 3.救護法は、救護の種類を生活扶助、医療、助産、生業扶助の4種類とし、埋葬費の支給も認められていました。

救護に要する費用は、原則として居住地の市町村が負担し、国が2分の1、道府県が市町村負担の4分の1を補助する仕組みになっていました。救護は、原則として被保護者の自宅で行い、困難な場合にのみ救護施設に入所させるか、私人の家庭などに委託して行われました。

□ 4.戦後、戦争被災者、失業者、海外引揚者などに対応するため、政府は「生活困窮者緊急生活援護要綱」を示しました。

連合国軍総司令部(GHQ)による「救済用配給物資ノ貯蔵二関スル件」(SCAPIN333)や「救済並福祉計画ノ件」(SCAPIN404)を受け、わが国では、1945(昭和20)年に「生活困窮者緊急生活援護要綱」を示しました。

□ 5.旧生活保護法は、連合国軍総司令部(GHQ)の覚書「社会救済」(SCAPIN775)を受け入れて制定されました。

わが国の政府は「生活困窮者緊急生活援護要綱」を示したが、連合国軍総司令部(GHQ)は覚書「社会救済」(SCAPIN775)を発し、それを受け入れて旧生活保護法が制定されました。

□ 6.旧生活保護法は、救護法の制限扶助方式を継承していました。

旧生活保護法は、素行不良な者、勤労を怠る者、生計の維持に努めない者などに対しては保護を行わないという、救護法の制限扶助方式を継承していました。

旧生活保護法の保護の種類

(1)生活扶助、(2)医療、(3)助産、(4)生業扶助、(5)葬祭扶助

□ 7.日本国憲法の制定および社会保障審議会の勧告を踏まえ、1950(昭和25)年に生活保護法が制定されました。

1946(昭和21)年に日本国憲法が制定され、第25条で生存権が規定されました。また、1949(昭和24)年には、社会保障制度審議会が「生活保護制度の改善強化に関する件」を勧告し、憲法の理念に沿った生活保護法への改善を示唆しました。

日本国憲法第25条

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」

□ 8.1957(昭和32)年に、国が定めた生活保護基準などについて訴えた「朝日訴訟」が起こりました。

「朝日訴訟」とは、結核患者であった朝日茂氏が、長期入院患者の保護基準が、憲法第25条の「健康で文化的な」最低基準を保障するものではないと訴えた裁判のことで、「人間裁判」ともいわれています。

保護の実施体制と財源

□ 9.生活保護の事務は、都道府県、市(特別区を含む)、福祉事務所を設置する町村が行っています。

2000(平成12)年から、保護の決定と実施に関する事務は法定受託事務となり、自立の助長のための援助などの事務は自治事務となった。

□ 10.保護の決定は、申請のあった日から14日以内に行うことを原則としています。

保護の実施機関は、保護の開始または変更の申請があったときは、保護の要否、種類、程度、方法を決定し、原則として申請があった日から14日以内に、申請者に書面で通知しなければならない。特別に調査が必要な場合などは、申請があった日から30日以内に延期することができるが、決定通知書にその理由を明記しなければならない。

生活保護の申請者は、30日以内に通知がない場合には、申請が却下されたものとみなすことができます。

□ 11.民生委員は、生活保護法の運営実施にあたり、協力機関と位置づけられています。

旧生活保護法では民生委員は補助機関と位置づけられていたが、改正された生活保護法では協力機関と位置づけられています。

□ 12.生活保護に必要な費用は、国と地方公共団体で負担することになっています。

国と地方公共団体の負担の割合は、要保護者の居住地によって異なっています。

保護費(施設事務費と委託事務費を含む)の負担割合

(1)市または福祉事務所を設置している町村は、国3/4、市町村1/4

(2)福祉事務所を設置していない町村は、国3/4、都道府県1/4

(3)居住地の明らかでない者は、国3/4、都道府県1/4

生活保護制度の仕組み

□ 13.生活保護法第1 条は、国家責任の原理を定めています。

国家責任の原理とは、国が国民の最低限度の生活を保障する責任を負うという原理です。

□ 14.生活保護歩法第2条は、無差別平等の原理を定めています。

無差別平等の原理とは、保護においては、身分や困窮の原因などによる差別を禁止するという原理です。

□ 15.生活保護法第3条は、最低生活の原理を定めています。

最低生活の原理とは、すべての国民が、健康で文化的な最低限度の生活を保障されるという原理です。

□ 16.生活保護法第4条は、補足性の原理を定めています。

補足性の原理とは、生活保護制度は、資産や能力の活用、扶養義務者による扶養、他法による救済を優先し、なお不十分な場合に補足的に用いるという原理です。

□ 17.生活保護法には、4つの原則が規定されている。

4つの原則とその内容

(1)申請保護の原則:保護は、要保護者、その扶養義務者その他の同居の親族の申請に基づいて行われるという原則。要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても必要な保護を実施することができる(第7条)

(2)基準及び程度の原則:保護は、厚生労働大臣が定める基準に基づいて測った要保護者の需要を基とし、要保護者の金銭や物品では満たすことのできない不足分を保護によって補うという原則(第8条)

(3)必要即応の原則:要保護者の年齢別、性別、健康状態等、その個人や世帯の実際の必要の相違を考慮し、有効かつ適切に行うという原則(第9条)

(4)世帯単位の原則:保護は、世帯を単位とする原則。但し、これによりがたいときは個人を単位とすることができる(第10条)

□ 18.生活保護法は、被保護者の最低限度の生活を保障するために特別な権利を規定しています。

被保護者の権利

(1)不利益変更の禁止:正当な理由がない限り、すでに決定された保護の内容を保護の実施機関によって不利益に変更されることがないという権利

(2)公課禁止:被保護者は、保護金品に対して課税されないという権利

(3)差押禁止:被保護者は、すでに受けた保護金品もしくはこれを受ける権利を差し押さえられることがないという権利

□ 19.保護者には、公費によって生活を保障されているためが課せられています。

被保護者の義務

(1)譲渡禁止:保護または就労自立給付金の支給を受ける権利は譲り渡すことができない

(2)生活上の義務:被保護者は、能力に応じて勤労に励み、自ら、健康の保持および増進に努め、収入、支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り、生活の維持および向上に努めなければならない

(3)届出の義務:被保護者は、収入や支出など生計の状況、居住地、家族構成などに変化があった場合には、速やかに保護の実施機関または福祉事務所長に届け出なければならない

(4)指示等に従う義務:被保護者は、保護の実施機関から生活の向上その他保護の目的達成に必要な指導または指示を受けた場合には、これに従わなければならない

(5)費用返還義務:急迫した事情などのため、本来資力があるにもかかわらず保護を受けた場合には、受けた保護金品に相当する金額の範囲内で、保護の実施機関の定める額を返還しなければならない

□ 20.生活保護法には、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の8つの扶助があります。

8つの扶助のうち、原則として、金銭給付には生活扶助、教育扶助、住宅扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の6つがあり、現物給付には医療扶助と介護扶助の2つがあります。

□ 21.生活保護法の改正によって、不正・不適正受給対策の強化が図られた。

生活保護法の改正では、(1)就労による自立の促進、(2)健康・生活面等に着目した支援、(3)不正・不適正受給対策の強化、(4)医療扶助の適正化等が図られた。これらは、一部を除き2014(平成26)年7月1日から施行された。

□ 22.生活保護法の改正によって、就労自立給付金が創設された。

生活保護法の改正によって、安定した職業に就くことにより保護からの脱却を促すための給付金として就労自立給付金が創設されました。就労自立給付金は、保護受給中の収入認定額の範囲内で仮想的に積み立て、安定した職業に就いたことにより保護廃止に至ったときに、一括支給されます。

支給額の上限を単身世帯10万円、多人数世帯15万円に設定し、再受給までの期間を原則3年間としています。

□ 23.生活保護の保護施設には、救護施設、更生施設、医療保護施設、授産施設、宿所提供施設があります。

保護施設の種類

救護施設(生活扶助)は、身体上または精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて生活扶助を行う

更生施設(生活扶助)は、身体上または精神上の理由により養護および生活指導を必要とする要保護者を入所させて生活扶助を行う

医療保護施設(医療扶助)は、医療を必要とする要保護者に医療の給付を行う

授産施設(生業扶助)は、就業能力の限られている要保護者に対し、就労または技能の修得のために必要な機会を与え、自立を助長する

宿所提供施設(住宅扶助)は、住居のない要保護者に対して住宅扶助を行う

保護施設の設置主体は、都道府県、市町村、地方独立行政法人、社会福祉法人、日本赤十字社に限られている。

□24.わが国の現在の生活扶助基準の算定方式は、1984(昭和59)年度から水準均衡方式となった。

水準均衡方式とは、政府経済見通しにおける当該年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎として、前年度までの一般世帯の消費支出水準と調整し改定率を決定する方式です。

□ 25.被保護者の勤労収入は、一定額を控除し、控除後の金額を収入額として認定しています。

被保護者に対する勤労控除には、(1)基礎控除、(2)特別控除、(3)新規就労控除、(4)未成年者控除の4つがある。

□ 26.保護の実施機関が行った保護の決定に不服がある場合には、都道府県知事に対し審査請求を行うことができます。

保護の実施機関が行った保護の開始、却下、停廃止などの処分に不服がある場合には、その処分を知った日の翌日から起算して60日以内に、都道府県知事に対し審査請求を行うことができます。

審査請求を経ても不服がある場合には、裁決があったことを知った日の翌日から起算して30日以内に、厚生労働大臣に対し再審査請求を行うことができる。

生活保護の最近の動向

□ 27.生活保護の保護率は、1996(平成8)年度から増加傾向に転じています。

生活保護の保護率は、1995(平成7)年度に過去最低の7.0‰となったが、その後、増加に転じ、2003(平成15)年度には10‰を超え、2011(平成23)年度には16.2‰となっています。

□ 28.被保護世帯を世帯類型別にみると、高齢者世帯が最も多くなっています。

高齢者世帯の受給は、1975(昭和50)年度は22万世帯であったが、2010(平成22)年度には60万世帯を超えている。また、増加が著しい被保護世帯は「その他の世帯」となっています。

□ 29.2011(平成23)年度の被保護人員を扶助別にみると、生活扶助が最も多くなっています。

2011(平成23)年度の被保護人員を扶助別にみると、生活扶助(約187万2,000人)が最も多く、次いで住宅扶助(約174万2,000人)、 医療扶助 (約165万7,000人)、 介護扶助(約24万8,000人)、その他の扶助(約21万9,000人)となっています。

その他の扶助は、教育扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の合計です。

□ 30.2011(平成23)年9月中の保護廃止の主な理由を構成割合でみると、「死亡」が最も多くなっています。

保護廃止の主な理由の構成割合は、2011(平成23)年9月中では「死亡」が29.8%で最も多く、次いで「働きによる収入の増加」が16.7%、「失そう」が11.0%、「社会保障給付金・仕送りの増加」が5.8%となっています。

□ 31.2011(平成23)年9月中の保護開始の主な理由を構成割合でみると、「働きによる収入の減少・喪失」が最も多くなっています。

保護開始の主な理由の構成割合は、2008(平成20)年9月中では「傷病による」が41.9%で最も多かったが、2011(平成23)年9月中では「働きによる収入の減少・喪失」が27.8%と最も多く、次いで「傷病による」が27.6%、「貯金等の減少・喪失」が25.4%となっている。

□ 32.生活保護の受給期間は長期化しています。

2011(平成23)年は、受給期間が10年以上になる世帯が、全体の4分の1程度となっています。高齢化の進展によって、高齢者世帯における受給期間の長期化が顕著になっていることなどが原因として考えられます。

低所得者対策

□ 33.生活福祉資金貸付制度の貸付対象は、低所得者世帯、障害者世帯、高齢者世帯です。

生活福祉資金貸付制度は、低利または無利子で資金を貸し付け、必要な援助指導を行うことによって、経済的自立や生活意欲の助長促進、在宅福祉や社会参加を図り、貸付世帯の安定した生活を確保することを目的としています。

貸付対象

低所得世帯は、必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民

税非課税程度)

障害者世帯は、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者等の属する世帯

高齢者世帯は、65歳以上の高齢者の属する世帯

生活福祉資金貸付制度は1995(昭和30)年に生体更生資金貸付制度という名称で、都道府県社会福祉協議会の補助事業として発足し、1990(平成2)年に生活福祉資金貸付制度に改正、2009(平成21)年度に再編成された。

□ 34.生活福祉資金貸付制度の貸付の種類には、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4つがある。

貸付の種類

総合支援資金は、生活支援費、住宅入居費、一時生活再建費

福祉資金は、福祉費、緊急小□資金

教育支援資金は、教育支援費、就学支度金

不動産担保型生活資金は、不動産担保型生活資金、要保護世帯向け不動産担保型生活資金

生活福祉資金貸付制度の貸付の原資は、国が3分の2、都道府県が3分の1を負担することになっている。

□ 35.生活福祉資金貸付制度の申込書は、市町村社会福祉協議会を経由して都道府県社会福祉協議会に提出されます。

生活福祉資金貸付制度の申込は、申込書に必要事項を記入して、市町村社会福祉協議会を経由して都道府県社会福祉協議会に提出します。民生委員は、申込書と一緒に民生委員調査書を市町村社会福祉協議会に提出することになっています。

□ 36.2013(平成25)年の「ホームレスの実態に関する全国調査」によれば、前年に比ベホームレス数は減少しています。

2012(平成24)年のホームレス数は9,576人であったが、2013(平成25)年では8,265人と減少している。都道府県別で最も多いのは大阪府で、次いで東京都、神奈川県の順になっています。

ホームレスの定義

ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法第2条では、「この法律において「ホームレス」とは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう」と定義している。

□ 37.ホームレス数は、女性よりも男性の方が多い。

2013(平成25)年の「ホームレスの実態に関する全国調査」によれば、ホームレス数のうち、男性は7,671人、女性は254人で、女性よりも男性の方が多い。

10.保健医療サービス

現代の保健医療サービス

□ 1.医療法は、医療施設に関して規定している法律です。

医療法は、病院、診療所、介護老人保健施設などの医療施設について規定しています。患者の視点に立った医療提供のあり方や、医療を受ける本人がどのような医療を受けるべきかを選択するための情報提供のあり方なども規定しています。

□ 2.医療計画では、5疾病・5事業および在宅医療について具体的な医療連携体制を記載することになっています。

5疾病と5事業

5疾病は、(1)がん (2)脳卒中 (3)急性心筋梗塞 (4)糖尿病 (5)精神疾患

5事業は、(1)救急医療 (2)災害時における医療 (3)へき地の医療 (4)周産期医療 (5)小児医療(小児救急医療を含む)

□ 3.病院では、入院診療計画書、退院療養計画書、退院支援計画書を作成し、交付することが規定されています。

病院では、入院診療計画書、退院療養計画書、退院支援計画書を作成し、交付することによって、患者がどのような医療を受けるか選択することを支援しています。

入院診療計画書は、入院中の治療に関する計画などを記載した書面

退院療養計画書は、退院後の療養に必要な保険医療サービスまたは福祉サービスに関する事項を記載した書面

退院支援計画書は、地域関係機関と連携して退院支援をしていくための書面

□ 4.患者の権利を尊重する具体的な方法には、インフォームド・コンセントとセカンド・オピニオンがあります。

1960年代以降、主にアメリカを中心として患者の権利という考え方が提起され、わが国の医療法においても、患者の意向を尊重することが明記されました。

インフォームド・コンセントは、説明と同意と訳される。医師が病状や治療方法などについて説明し、患者の同意を得ること

セカンド・オピニオンは、主治医以外の医師の意見を得ること

□ 5.わが国の国民医療費および一人あたりの国民医療費は、高齢化の進展を背景に増加しています。

その年度内に医療機関などにおいて傷病の治療にかかった費用を推計したものが国民医療費です。国民医療費と一人あたりの国民医療費は、近年どちらも増加しており、2011(平成23)年度では、国民医療費は38兆5,850億円、国民一人当たり国民医療費は30万1,900円となっています。

□ 6.国民医療費の財源は、公費、保険料です。

2011(平成23)年度の国民医療費の財源を構成割合でみると、公費38.4%(国庫26.0%、地方12.4%)、保険料48.6%(事業主20.2%、被保険者28.4%)、その他13.0%(患者負担12.3%)となっています。

医療保険制度

□ 7.2011(平成23)年度の国民医療費の制度区分別構成割合をみると、医療保険等給付分が最も多くなっています。

2011(平成23)年度の国民医療費の制度区分別構成割合の内訳は、医療保険等給付分47.5%、後期高齢者医療給付分31.8%、患者等負担分13.0%、公費負担医療給付分7.2%となっています。

□ 8.公費負担医療制度には、自立支援医療制度と難病医療費助成制度があります。

障害状態の軽減を図り、日常生活能力を回復・改善するために給付を行うのが自立支援医療制度で、障害者総合支援法に規定されています。難病医療費助成制度には、2014(平成26)年3月現在、56疾患が対象となっている特定疾患治療研究事業と、11疾患群(514疾患)が対象となっている小児慢性特定疾患治療研究事業があります。

□ 9.社会保険診療報酬は、点数で表示されていることから「点数表」とも呼ばれています。

社会保険診療報酬とは、公的医療保険の適用対象となる医療行為の料金のことをいいます。わが国では、実施した医療行為ごとに点数が決められ、1点を10円として計算される「出来高払い制」が採用されています。

□ 10.2014(平成26)年度の診療報酬改定では、消費税引上げ対応分の満額を確保した。

2014(平成26)年度の診療報酬改定では、改定率について、消費税引上げ対応分の満額を確保し、さらに消費税財源を活用した診療報酬本体への上乗せをしました。

保健医療サービスの提供機関

□ 11.病院とは、20人以上を入院させる施設をいいます。

わが国では病床数によって施設が区分され、20人以上の患者が入院できる施設を病院、患者を入院させる施設を有しないもの又は19人以下の患者が入院できる施設を診療所と規定しています。

□ 12.特定機能病院と称するには、厚生労働大臣の承認が必要となります。

要件を満たした病院は、厚生労働大臣の承認を得て特定機能病院と称することができます。

特定機能病院の主な要件

(1)高度の医療を提供する能力を有すること

(2)高度の医療技術の開発および評価を行う能力を有すること

(3)高度の医療に関する研修を行わせる能力を有すること

(4)その診療科名中に厚生労働省令で定める診療科名を有すること

(5)厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための施設を有すること

□ 13.地域医療支援病院の目的は、地域のほかの医療機関を支援することです。

地域医療支援病院は、都道府県知事が承認します。開設主体は、原則として国、都道府県、市町村、特別医療法人、公的医療機関、医療法人、社会福祉法人、独立行政法人労働者健康福祉機構などです。

地域医療支援病院の役割

(1)紹介患者に対する医療の提供(かかりつけ医等への患者の逆紹介も含む)

(2)医療機器の共同使用の実施

(3)救急医療の提供

(4)地域の医療従事者に対する研修の実施

□ 14.2006(平成18)年の医療法の改正(第5次)によって、調剤薬局が医療提供施設になった。

調剤薬局とは、薬局のなかでも特に保険指定を受けた薬局のことです。薬の説明や服用の仕方などを対面で説明することが役害」となっています。

保健医療サービスの専門職とその連携

□ 15.保健師、助産師、看護師の業務は、「保健師助産師看護師法」に規定されています。

「医師法」に規定されているのが医師の業務、「保健師助産師看護師法」に規定されているのが保健師、助産師、看護師の業務、「理学療法士及び作業療法士法」に規定されているのが理学療法士と作業療法士の業務です。

□ 16.医療ソーシャルワーカーの源流は、ロンドンのロイヤル・フリー・ホスピタルに配置されたアルマナーです。

1895年に、慈善組織協会の総領事であったロックが、無秩序な施療の実施を改善するため、ロンドンのロイヤル・フリー・ホスピタルにアルマナーを配置しました。1905年には、医師のキャボットが、アメリカのマサチューセッツ総合病院で、初めてとなるソーシャルワーカーを雇用した。

□ 17.わが国では1919(大正8)年に、病院で専門の相談員を配置しました。

わが国では、イギリスのアルマナーについて知見した三井財閥が、泉橋慈善病院に病人相談所を設置し、専門の相談員を配置しました。1926(大正15)年には、キャボットの実践を見聞した生江孝之が、済生会病院の創立にあたって相談員を配置しました。また、1929(昭和4)年には、アメリカで学んだ浅賀ふさが、聖路加病院のソーシャルワーカーとして着任しました。

□ 18.わが国で最初となる医療ソーシャルワーカーの業務指針は、1958(昭和33)年の「保健所における医療社会事業の業務指針」です。

1989(平成元)年に、医療ソーシャルワーカーの業務について、厚生省(現・厚生労働省)の局長通知です「医療ソーシャルワーカー業務指針」が作成され、2002(平成14)年に改正されました。

医療ソーシャリレワーカー業務指針には、「業務の範囲」と「業務の方法等」が示されています。

11.権利擁護と成年後見制度

憲法

□ 1.国民主権とは、国家の最終的な意思決定権力を国民が有するという意味です。

国民主権は、日本国憲法の基本原則の一つです。憲法は、主権者たる国民によって選挙された国会を国権の最高機関とし、内閣が行政権を持つと規定しています。

明治憲法では、主権が天皇にあった。

□ 2.現代憲法の特徴は、国民に自由権や社会権という基本的人権を保障していることです。

基本的人権は、フランス革命やアメリカ独立戦争などを通して確立された権利です。日本国憲法では、第11条で国民の基本的人権の永久不可侵性を、第13条では個人の尊重を規定しています。

日本国憲法第11条

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

日本国憲法第13条

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

□ 3.自由権には、精神的自由、人身の自由、経済的自由があります。

自由権

精神的自由は、思想及び良心の自由、信教の自由、表現の自由、学問の自由など

人身の自由は、奴隷的拘束の禁止、適正手続きの保障、被疑者の権利、被告人の権利など

経済的自由は、職業選択の自由、居住・移転の自由、外国移住・国籍離脱の自由など

□ 4.社会権は、資本主義経済を前提とする社会における人間の権利です。

社会権は、社会的弱者である人々の生存の権利を守るため、国家の積極的な介入を要求するものです。国家権力から人々の自由を保障する自由権に対し、社会権は国家権力によって守られるという特徴があります。

社会権

生存権は、国民の生存権、福祉増進に関する国の義務

教育を受ける権利は、教育を受ける権利、教育を受けさせる義務の権利

勤労者の権利は、勤労の権利と義務、勤労条件の法定、労働者の団結権・団体行動権

□ 5.わが国の三権分立は、立法権と行政権が密接な関係にある議院内閣制です。

三権分立には、アメリカの大統領制のように立法権と行政権が分離された型と、イギリスのように立法権と行政権が密接な関係にある議院内閣制があります。わが国では、国会に立法権、内閣に行政権、裁判所に司法権を付与し、議院内閣制を採用しています。

□ 6.内閣は、内閣総理大臣と国務大臣で組織されています。

内閣総理大臣は、国務大臣を任命し罷免することができます。内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負うことになっています。

内閣の主な機能

法律を誠実に執行し、国務を総理する

外交関係を処理する

条約を締結する

官吏に関する事務を掌理する

予算を作成して国会に提出する

憲法および法律の規定を実施するために、政令を制定する

□ 7.国会は、唯―の立法機関です。

立法の独占かつ単独で立法できることが、唯―の立法機関であるということを意味しています。国会は、憲法において国権の最高機関と位置づけられ、行政に対する国政調査権、司法に対する弾劾裁判権を有しています。

□ 8.裁判所は、最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所に分けられます。

わが国の裁判は三審制を採用しており、第一審、控訴審、上告審の順に、上級の裁判所で裁判を行うことになっています。

裁判所の種類

最高裁判所は、終審裁判所

高等裁判所は、控訴審、上告審(刑事を除く)、抗告の裁判

地方裁判所は、原則として民事、刑事、行政事件の第―審

家庭裁判所は、家事事件の審判 調停、少年の保護事件の審判

簡易裁判所は、訴訟価格が140万円以下の民事訴訟、法定刑が罰金以下の刑事訴訟など

行政法

□ 9.行政行為の代表的な効力には、拘束力、公定力、不可変更力、自力執行力があります。

行政行為は、原則として書面の交付や送達によって相手方がその内容を知りうる状態に置かれたときから効力を生じます。

行政行為の代表的な効力

拘束力は、行政行為の相手方だけでなく行政庁も拘束する効力

公定力は、違法な行政行為であっても取り消されない限り有効なものとして取り扱われる効力

不可変更力は、行政行為について行政庁自身の職権取消しが制限される効力

自力執行力は、行政庁が行政行為の内容を実現できる効力

□ 10.行政裁量は、羈束行為と裁量行為に分けることができます。

行政行為の要件や効果などを、あらかじめ法律で決定しておくことを羈束行為、行政庁の知識と判断能力にゆだねることを裁量行為といいます。

□ 11.行政行為によって国民が損害を被った場合に、事後的に救済するための行政救済制度があります。

行政救済制度には、行政不服審査、行政事件訴訟、国家賠償、損失補償の4つがあります。

□ 12.行政事件訴訟には、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟の4類型があります。

行政事件訴訟は、主観的訴訟(抗告訴訟と当事者訴訟)、客観的訴訟(民衆訴訟と機関訴訟)

主観的訴訟は、国民の個人的権利利益の保護を目的とする。

客観的訴訟は、客観的な法秩序の適正維持や公益保護を目的とする。

抗告訴訟には、処分の取消しの訴え、裁決の取消しの訴え無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務づけの訴え、差止めの訴えなどがある。

民法

□ 13.民法は、権利能力、意思能力、行為能力、責任能力の4つの能力について定めています。

権利能力は、権利の主体になれる能力

意思能力は、有効に意思表示をする能力(社会福祉分野では判断能力と呼ばれることが多い)

行為能力は、法律行為を有効に行うことができる能力

責任能力は、不法行為に基づく損害賠償責任を負担し得る能力

□ 14.民法では、監護及び教育の権利義務として、親権を行う者は子の利益のために子の監護と教育をする権利を有し、義務を負うとしています。

民法では、親権の効力として、監護及び教育の権利義務のほか、居所の指定、懲戒、職業の許可などについて定めています。

居所の指定は、子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。

懲戒は、親権を行う者は、子の利益のために行われる監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

職業の許可は、子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。

□ 15.契約とは、複数の当事者の意思表示が合致し、その合意に基づいて成立する法律行為のことです。

契約の分類には、双務契約・片務契約、有償契約・無償契約、要物契約・諾成契約、典型契約・非典型契約などがあります。

契約の分類

双務契約・片務契約は、当事者同士が責務を負担するか、片方だけが負担するかによる分類

有償契約・無償契約は、対価的給付があるか、ないかによる分類

要物契約・諾成契約は、契約が成立するために物の引渡しを必要とするか、しないかによる分類

典型契約・非典型契約は、典型契約(有名契約):民法上に規定されている13種類の契約、非典型契約(無名契約):典型契約以外の契約

□ 16.不法行為とは、故意または過失によって、人の権利に侵害を与えることをいいます。

民法上の不法行為に関する規定は、不法行為をなした者に対し、損害を賠償させる義務を課すことに主眼が置かれています。

不法行為責任が生じる要件

(1)故意または過失は、加害者に故意または過失が認められること

(2)権利侵害(侵害の違法性)は、権利ないし利益を違法に侵害したこと

(3)損害の発生は、財産的損害または精神的損害があること

(4)因果関係は、侵害行為によって損害が生じたこと

□ 17.民法上の親族とは、六親等内の血族と配偶者および三親等内の姻族のことをいいます。

親族関係の距離を表す単位のことを親等といいます。出生や養子縁組によって生じた関係で結ばれた者のことを血族、婚姻の相手のことを配偶者といい、その血族のことを姻族といいます。

□ 18.夫婦には、婚姻と内縁があります。

法律上の夫婦のことを婚姻、事実上の夫婦のことを内縁といいます。婚姻の成立には、婚姻を成立させる意思が合致し、婚姻障害となる事由がないという実質的な要件と、届出をしているという形式的な要件があります。

未成年者が婚姻した場合には、これによって成年に達したものとみなされ、親権や後見は終了します。

□ 19.離婚とは、婚姻を解消することであり、協議離婚、調停離婚、審判離婚、判決離婚の4種類があります。

(1)夫婦で合意し、離婚届の提出により成立する→協議離婚

(2)家庭裁判所の調停により成立する→調停離婚

(3)調停離婚が不成立の後、審判により成立する→審判離婚

(4)調停、審判でも離婚不成立の場合、家庭裁判所または地方裁判所に離婚訴訟を提訴し、判決により成立する→判決離婚

離婚の大部分は、夫婦で合意して成立する協議離婚です。

□ 20.親子には、実親子と養親子の2種類があります。

実子には、嫡出子と非嫡出子があります。養子には、実父母と養父母との二重の親子関係が生じる普通養子と、実父母との親子関係が終了し、養父母との親子関係だけが生じる特別養子があります。

嫡出子は、父母の婚姻から出生した子

非嫡出子は、婚姻関係にない男女の間に出生した子

普通養子は、当事者間の合意と届出によって成立

特別養子は、 家庭裁判所の審判によって成立

非嫡出子尾の法定相続分は嫡出子の2分の1とされていたが、2013(平成25)年の改正により平等となった。

□ 21.親権は、身上監護権と財産管理権に大きく分けることができます。

親権とは、親が未成年の子に対して有する権利や義務の総称のことをいいます。未成年の子の日常生活の世話をしたり教育をしたりするのが身上監護権、未成年の子が財産を有する限られた場合にしか問題にならないのが財産管理権です。

□ 22.扶養には、生活保持義務と生活扶助義務という2つの義務があります。

夫婦間または親と未成熟子との間に発生する扶養のことを生活保持義務といい、自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保障する義務です。それ以外の親族に対する扶養のことを生活扶助義務といい、自分の生活に余裕がある範囲内で被扶養者の最低限度の生活を扶助する義務です。

家庭裁判所は、三親等内の親族の場合には、審判によって生活扶助義務を負わせることができる。

□ 23.認知とは、法律上の親子関係を発生させる制度です。

認知の効力は、認知の時ではなく、出生の時に遡及します。認知の訴えは、父親が死亡している場合でも、二年以内であれば可能です。

□ 24.相続とは、被相続人の死後、財産上の権利義務を相続人が承継することです。

相続の財産には、預貯金などの財産だけでなく、借金などの債務も含まれています。民法では、遺言があれば民法の定める相続の原則より優先することになっているが、遺留分を損なうことはできない。

遺留分とは、法の定めにより相続人が相続できる最低限の割合のことです。

□ 26.遺言の方式には、普通方式と特別方式があります。

普通方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。特別方式には、危急時遺言と隔絶地遺言があります。

遺言の方式

(1)普通方式

自筆証書遺言は、全文、日付、氏名を自分で書き、押印して作成する

公正証書遺言は、2人以上の証人の立会のうえ、口述を筆記し各自が署名・押印して作成する

秘密証書遺言は、遺言内容を書いた書面に遺言者が署名・押印・封入・封印し、公証人1人、証人2人以上の前で封書を提出する

(2)特別方式

危急時遺言は、死亡の危機に迫った者が証人3人以上の立会をもって行う

隔絶地遺言は、伝染病で隔離されている者、船舶中にある者が行う

成年後見制度

□ 27.成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力の不十分な成年者を保護するための制度です。

成年後見制度には、法律の定めによる法定後見制度と、契約による任意後見制度の2種類があります。

□ 28.法定後見制度は、対象者の判断能力の程度などによって、後見、保佐、補助の3つに分かれています。

法的後見制度では、家庭裁判所が法的後見の開始を審判しています。

法定後見制度の対象者

後見は、判断能力が欠けているのが通常の状態の者

保佐は、判断能力が著しく不十分な者

補助は、判断能力が不十分な者

家庭裁判所に法定後見制度の申立をすることができる申立権者には、本人、配偶者、四親等内親族、未成年後見人、保佐人、補助人、検察官などがいる。

□ 29.任意後見制度は、あらかじめ任意後見人を選定し契約しておく制度です。

任意後見制度では、本人が契約締結に必要な判断能力を有している間に、任意後見人に一定の範囲で代理権を付与する契約を締結し、実際に判断能力が不十分になったときに、任意後見人による保護・支援を受けることができる制度です。

□ 30.任意後見契約は、本人と任意後見受任者で公正証書によって締結します。

任意後見制度は、事前に本人と任意後見受任者で公正証書によって、任意後見契約を締結します。そして、任意後見契約発効時に、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した上で、任意後見受任者が任意後見人として認められます。

任意後見監督人は、任意後見人の不正や権限の濫用を防止するために選任されるものです。

日常生活自立支援事業

□ 31.日常生活自立支援事業は、社会福祉法で第二種社会福祉事業に規定されています。

日常生活自立支援事業は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者など判断能力が不十分な者が、地域において自立した生活を送ることができるように支えるための事業で、社会福祉法第81条では「福祉サービス利用援助事業」と規定されています。

□ 32.日常生活自立支援事業は、事業の一部を委託することができます。

日常生活自立支援事業の実施主体は、都道府県社会福祉協議会及び指定都市社会福祉協議会であるが、事業の一部を市町村社会福祉協議会、地区社会福祉協議会、社会福祉法人、公益法人などに委託することができます。

□ 33.日常生活自立支援事業の対象者は、判断能力について2つの要件を満たす者です。

日常生活自立支援事業の対象者となるためには、2つの要件があります。

(1)判断能力が不十分な者

認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な者

(2)本事業の契約内容について判断し得る能力を有していると認められる者

□ 34.日常生活自立支援事業には、運営適正化委員会と契約締結審査会が設置されています。

運営適正化委員会は、都道府県社会福祉協議会に、第三者的機関として設置され、事業全体の運営監視と利用者からの苦情解決にあたっています。契約締結審査会は、「契約締結判定ガイドライン」だけでは判断できない場合に、利用者の能力を判断し、契約の適正化を図るなどしています。

12.社会調査の基礎

社会調査の概要

□ 1.わが国の全数調査(悉皆しっかい調査)には、1920(大正9)年から実施されている国勢調査があります。

国勢調査は、国の最も基本的な調査に位置づけられており、1920(大正9)年以降、ほぼ5年ごとに実施されています。10年ごとに大規模調査、中間年に簡易調査が行われています。

□ 2.統計法には、公的統計と基幹統計が定義されています。

国の行政機関、地方公共団体、独立行政法人などが作成する統計を公的統計といい、国勢統計、国民経済計算、行政機関が作成または作成すべき統計で総務大臣が指定するものを基幹統計といいます。

□ 3.社会調査には、統計調査(量的調査)と事例調査(質的調査)があります。

数量的データを統計技法によって収集し分析するのが統計調査(量的調査)、少数の質的データを分析し各データの個別性をとらえるのが事例調査(質的調査)です。

□ 4.「社会調査協会倫理規程」では、社会実施する際に必要な調査者の倫理を規定しています。

「社会調査協会倫理規程」は、一般社団法人社会調査協会によって2009(平成21)年に宣言されたもので、社会調査を実施する際に必要な調査者の倫理を規定しています。

「社会調査協会倫理規程」の重要点

(1)社会調査は科学的な手続きにのっとり、客観的に実施する。

(2)社会調査は、国内法規及び国際的諸法規を遵守して実施。

(3)調査対象者の協力は、自由意志によらなければならない。

(4)調査者は、調査対象者から求められた場合、調査データの提供先と使用目的を知らせる。調査データが当該社会調査以外の目的には使用されないことを保証しなければならない。

(5)調査者は、調査対象者のプライバシーの保護を最大限尊重し、社会調査に協力したことによって調査対象者が不利益を被ることがないようにする。

(6)調査者は、調査対象者を性別や障害の有無等によって差別的に取り扱ってはならない。

(7)調査対象者が年少者である場合には、調査者は特にその人権について配慮する。

(8)記録機材を用いる場合には、調査対象者に、調査の目的及び記録機材を使用することを知らせ、要請があった場合には、当該部分の記録を破棄または削除しなければならない。

(9)調査者は、調査記録を安全に管理しなければならない。

統計調査(量的調査)の方法

□ 5.調査対象をくまなく調査することを全数調査(悉皆しっかい調査)、調査対象の一部を抽出して調査することを標本調査(一部調査)といいます。

全数調査と標本調査の比較

全数調査の長所は、すべてを観察するので誤差が少ない、対象抽出の技術や手間がいらない、調査結果の事後分類が可能である

全数調査の短所は、対象集団が大きいときは費用がかかる、調査員を多く必要とする、質問項目が限られる

標本調査の長所は、費用を節約できる、調査員が少なくてすむ、要求される精度に合わせて調査の設計ができる

標本調査の短所は、標本抽出に知識と技術を要する、全数調査に比べ誤差が大きい、複雑な抽出法では事後分類が不可能になる

□ 6.標本調査の標本の抽出方法には、無作為抽出法、層化抽出法、多段抽出法などがあります。

無作為抽出法は、特定の意図を持たずにランタムに抽出する方法

層化抽出法は、母集団を相対的に同質ないくつかの層に分割し、それらの層ごとに標本の抽出を行う方法

多段抽出法は、数段階の抽出を行って標本を作成する方法

□ 7.統計調査の方法には、横断調査と縦断調査という分類があります。

横断調査は、1回のみの調査で、さまざまな種類のデータを収集し分析する調査方法

縦断調査は、同一の対象に対して時間をおいて数回の追跡調査を行い、時系列データを収集し分析する調査方法

横断調査では、データの違いがどの条件の相違に基づくものであるかを区別することが課題になる。

□ 8.調査方法には、自計式調査と他計式調査があります。

自計式調査は、調査対象者が自分で調査票に記入する調査方法→調査対象を拡大しやすいが、誤記入が多くなります

他計式調査は、調査員が対象者から聞き取りながら記入する調査方法→誤記入が少ないが、多くの調査員が必要になります

□ 9.質問紙法では、ダブルバーレル質問、ステレオタイプ語、キャリーオーバー効果などに注意して質問を作成しなければならない。

アンケート用紙などを用いて行う調査方法を、質問紙法といいます。質問紙法では、1つの質問に2つ以上の論点が含まれているダブルバーレル質問、言葉自体に特定のイメージが定着しているステレオタイプ語、質問の並べ方によっては次の答えに影響が生じるキャリーオーバー効果などに注意して質問を作成しなければならない。

□ 10.代表的なデータの解析方法には、単純集計とクロス集計があります。

1項目だけの集計結果で、個々の項目の回答がどのように分布しているかをみる方法が単純集計、2つ以上の項目を組み合わせ、その間の回答分布から相関関係を推定しようとする方法がクロス集計です。

□ 11.得られたデータの特性を表す数値を統計的に計算したものを記述統計量といいます。

代表的な記述統計量の値

中央値は、データを順番に並べたとき中央に位置する値、データ数月が奇数の場合は中央にあるデータの値、データ数月が偶数の場合は中央を挟む2データの平均の値

最頻値は、データのなかで一番多い値

最大値は、データのなかで一番大きい値

最小値は、データのなかで一番小さい値

パーセンタイルは、データを小さい順に並べたとき、小さいほうから数えて何パーセント目の標本の値かを示す数値

標本平均は、データ数値の和をデータ数ηで除した値

四分位数は、第1四分位数は25パーセンタイル、第3四分位数は75パーセンタイル

標本標準偏差は、各データが標本平均からどの程度乖離しているかを示す値、標本分散の平方根で、Sxと表す

事例調査(質的調査)の方法

□ 12.事例調査のデータ収集の方法には、観察法と面接法があります。

調査者が調査対象を観察することによってデータを収集するのが観察法、調査者が調査対象と面接を行い、そこで得た回答を収集・分析するのが面接法です。

□ 13.観察法には、統制的観察法と非統制的観察法があります。

あらかじめ観察方法や調査内容を決めておき、それに沿ってデータを収集するのが統制的観察法、観察方法や調査内容を決めることなく、状況に応じてデータを収集するのが非統制的観察法です。非統制的観察法には、調査者が対象集団の一員となって活動に参加しながら観察する参与観察法と、対象集団を外部から観察する非参与観察法があります。

□ 14.面接法には、構造化面接法、自由面接法、半構造化面接法などがあります。

あらかじめ質問項目や順番を決めておくのが構造化面接法、面接者が状況に応じて、質問の形式や順番などを自由に変えて質問するのが自由面接法、質問項目を一定数だけ決めておき、後は自由に質問するのが半構造化面接法です。

半構造化面接法は、構造化面接法と自由面接法の中間に位置づけられている。

□ 15.KJ法は、川喜田二郎が開発した現地調査の結果を整理する方法です。

KJ法は、収集したデータをカードに記入し、内容の本質が似ているものをグルーピングして見出しをつけ、グループごとの見出しを見比べてそれぞれの理論的な関係性をみつけ、問題の本質や問題の解決の糸口を探る方法です。

□ 16.グラウンデッド・セオリー法は、質的データから理論構築を行うための研究法です。

グラウンデッド・セオリー法は、グレイザーとストラウスが開発した研究法で、アメリカの看護学において定着した分析手法です。この手法の特徴は、得られた結果を文章化し、特徴的な単語などをコード化してデータを作ることです。

グラウンデッド・セオリー法の手順

(1)観察や面接によって資料収集を行う

(2)結果を文章化して記録しデータ化する

(3)データを適当なまとまりに区切って単位化する

(4)それぞれの単位にコードをつける

(5)得られたコードを比較し検討する

(6)この作業を繰り返し、コードを集約してカテゴリーを作る

□ 17.分析の妥当性を高めるために、メンバーチェックやピアチェックを行うことがあります。

対象者に結果を見せて分析の妥当性を高めることをメンバーチェックといい、スーパーバイザーなどの意見を仰いで分析の妥当性を高めることをピアチェックといいます。

13.相談援助の基盤と専門職

社会福祉士の役割と意義

□ 1.社会福祉士は、社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている国家資格です。

社会福祉士及び介護福祉士法は1987(昭和62)年に制定されたが、高齢化の進展や国の財政状況の悪化などによって社会福祉士の必要性が高まってきたことなどから、2007(平成19)年に改正されています。

□ 2.社会福祉士の資格は、名称独占の資格です。

資格を持っている者だけが名称を用いることができる資格を名称独占の資格という。社会福祉領域の相談援助の仕事は社会福祉士でなくても就くことができるが、資格を持たない者は社会福祉士の名称を名乗って仕事をすることはできない。

□ 3.社会福祉士及び介護福祉士法には、社会福祉士が守らなければならない義務が規定されています。

社会福祉士の主な義務

誠実義務(第44条の2)は、社会福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立って、誠実にその業務を行わなければならない

信用失墜行為の禁止(第45条)は、社会福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない

秘密保持義務(第46条)は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士でなくなった後においても、同様とする

連携(第47条)は、社会福祉士は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に、福祉サービス及びこれに関連する保健医療サービスその他のサービスが総合的かつ適切に提供されるよう、地域に即した創意と工夫を行いつつ、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない

資質向上の責務(第47条の2)は、社会福祉を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、相談援助に関する知識及び技能の向上に努めなければならない

□ 4.国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)は、2000年にソーシャルワークの定義を定めた。

国際ソーシャルワーカー連盟によるソーシャルワークの定義

ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワーメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。

人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。

□ 5.国際ソーシャルワーカー連盟は、世界中のソーシャルワーカーの団体が加盟できる連盟である。

わが国で国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)に加入しているのは、日本ソーシャルワーカー協会、日本医療社会事業協会、日本社会福祉士会、日本精神保健福祉士協会の4団体である。

□ 6.国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)に加入している4団体は、会員が守るべき倫理綱領を定めています。

国際ソーシャルワーカー連盟に加入している4団体は、連盟が2000年に定めたソーシャルワークの定義を、ソーシャルワークの実践に適用され得るものと認識し、実践の拠り所としています。

日本ソーシャルワーカー協会の定める倫理綱領は、前文、ソーシャルワークの定義、価値と原則(人間の尊厳、社会正義、誠実、専門的力量)、倫理基準(利用者に対する倫理責任、実践現場における倫理責任、社会に対する倫理責任、専門職としての倫理責任)から成っています。

□ 7.ソーシャルワークを構成する要素には、クライエントシステム、ニーズ、ソーシャリレワーカー、社会資源があり、互いに影響を及ぼし合っています。

ソーシャルワークを構成する要素

クライエントシステムは、クライエントを取り巻く環境を含むシステム

ニーズは、生存、ウェルビーイング、自己実現のために求められるもの

ソーシャリレワーカーは、ソーシャルワーク実践を行う専門職

社会資源は、ニーズを充足させるために活用される人材や物資

ソーシャルワークの発展

□ 8.ケースワークは、1910年代にリッチモンドによって体系化・理論化されました。

リッチモンドは、慈善組織協会(COS)に属し、友愛訪問などによって対象者を個別に援助する実践を通して、その援助過程を体系化・理論化しました。リッチモンドは、「ケースワークの母」と呼ばれ、その主著には『社会診断』(1917年)、『ソーシャル・ケースワークとは何か』(1922年)があります。

リッチモンドによるケースワークの定義

人間と社会環境との間を個別に、意識的に調整することを通してパーソナリティを発達させる諸過程から成り立っている。

□ 9.1920年前後から、ケースワークはフロイトの精神分析学の影響を受けるようになった。

1920年前後のケースワークは、フロイトの精神分析理論を基盤とした診断派のケースワークが主流になった。診断派のケースワークでは、利用者の抱えている問題の原因が、社会環境よりも個々の精神内界にあるとし、その治療を行う精神分析療法的なアプローチを行った。

□ 10.1930年代になると、新しい理論と実践を試みようとする機能派が現れました。

フロイトの弟子であるランクは、人間の精神性と創造性に着目し、フロイトが過去に着目した部分を否定して現在に焦点をあてた。機能派は、援助者が所属する機関の機能を自由に活用することで、自我の自己展開を助けることを課題とした。

□ 11.1950年代に入ると、診断派と機能派の統合が図られた。

1950年代になると、ケースワークの専門分化が問題視されるようになった。1955年には全米ソーシャルワーカー協会が設立されて、診断派と機能派の統合が図られた。パールマンは診断派に立脚しつつも機能派の長所を、アプティカーは機能派に立脚しつつも診断派の長所を積極的に取り入れた。

マイルズは1954年に、リッチモンド以来の伝統である社会環境への視点を取り戻すべきとして「リッチモンドに帰れ」と主張した。

□ 12.バールマンは、ケースワークを構成する要素として4つのPを示した。

パールマンの4つのP

(1)Person 問題を抱えて援助機関に来る「人」

(2)Problem クライエントが抱えている「問題」

(3)Place 援助が行われる「場所」

(4)Process 援助者と利用者との間に構築された信頼関係を媒介として展開される援助の「過程」

パールマンは、1986年の論文で、「専門職ワーカー」(Professional、person)と「制度・政策」(Provisions)の2つを、4つのPに加えている。

□ 13.1970年代以降に、ジェネラリスト・ソーシャルワークが明確になった。

ケースワーク、グループワーク、コミュニティワークの方法を区別せず、総合的・一体的に用いようとするソーシャルワークの体系をジェネラリスト・ソーシャルワークといいます。

1929年に発行されたミルフォード会議の報告書で、初めてジェネリックという概念が登場している。

相談援助の理念

□ 14.国際人権規約には、A規約とB規約があります。

1966年の国連総会で採択された国際人権規約のうち、経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)がA規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)がB規約です。

□ 15.アドボカシーには、ケースアドボカシーとクラスアドボカシーがあります。

権利侵害の対象となったり、困難な生活環境におかれたりしている人たちの復権を目的として生まれた実践倫理がアドボカシーです。ヘップワース、ルーニー、ラーセンは、アドボカシーをケースアドボカシーとクラスアドボカシーの2種類に分けています。

ケースアドボカシーは、個人や家族のためにサービスなどを利用できるように支援すること

クラスアドボカシーは、ある特定のグループに属する人すべてに良い影響が与えられるように、政策や法律などを変えるように働きかけること

□ 16.ノーマライゼーシヨンとは、障害者や高齢者が健常者と分け隔てなく社会生活を共にするべきであるという理念です。

ノーマライゼーションの理念は、デンマークで結成された知的障害児の「親の会」の運動をきっかけとして、デンマークのバンク=ミケルセンが提唱したものです。その後、スウェーデンに広がり、ニィリエが、「ノーマライゼーションの原理」として成文化した。

□ 17.ソーシャル・インクルージョンは、ソーシャル・エクスクルージョンを解決しようとするものです。

すべての人々を、その属性にかかわらず、孤立、孤独、排除、摩擦などから守り、社会の構成員として包み込み、支え合う理念のことをソーシャル・インクルージョンといい、社会的包摂と訳される。ソーシャル・エクスクルージョンは、社会的排除と訳される。

専門職による相談援助実践

□ 18.社会福祉主事は、社会福祉法で定められた任用資格であり、福祉事務所などに配置されます。

社会福祉各法に定める援護または更生の措置に関する事務等を行うため、都道府県や市町村の福祉事務所などに配置されているのが社会福祉主事です。

社会福祉主事の任用資格には、社会福祉士だけでなく精神保健福祉士も含まれています。

□ 19.身体障害者福祉司と知的障害者福祉司は、町村の福祉事務所に置くことができます。

身体障害者福祉司は、(1)身体障害者に関する専門的な相談や指導などを行う。(2)都道府県は、身体障害者更生相談所に配置しなければならない

知的障害者福祉司は、(1)知的障害者に関する相談援助や福祉事務所の所員に対する指導を行う。(2)都道府県は、知的障害者更生相談所に配置しなければならない

□ 20.社会福祉士の実践現場で倫理上のジレンマが生じた場合には、倫理綱領の基本精神を遵守する。

社会福祉士の倫理綱領(日本社会福祉士会)の「実践現場と綱領の遵守」は、「社会福祉士は、実践現場との間で倫理上のジレンマが生じるような場合、実践現場が本綱領の原則を尊重し、その基本精神を遵守するよう働きかける」と規定している。

□ 21.社会福祉士は、他の社会福祉士が専門職業の社会的信用を損なう場合には、本人にその事実を知らせます。

社会福祉士の倫理綱領(日本社会福祉士会)の「社会的信用の保持」は、「社会福祉士は、他の社会福祉士が専門職業の社会的信用を損なうような場合、本人にその事実を知らせ、必要な対応を促す」と規定している。

14.相談援助の理論と方法

相談援助の基礎理論

□ 1.パールマンが提唱した問題解決アプローチは、診断派と機能派を折衷したアプローチです。

問題解決アプローチの展開過程

接触段階は、問題と目標が明確化され、利用可能な資源が検討されて予備的な契約が取り交わされる段階

契約段階は、正確なアセスメントが行われて計画が策定され、結果や予後について検討される段階

活動段階は、計画が実行に移され、達成内容の評価後に終結となる段階

□ 2.心理社会的アプローチの起源は、リッチモンドが確立したケースワーク理論です。

ホリスが提唱した心理社会的アプローチの起源は、リッチモンドが確立したケースワーク理論です。その後、フロイトの精神分析理論の強い影響を受け、ハミルトンやトールらによって診断派アプローチとして発展し、心理社会的アプローチとして継承されました。

□ 3.機能的アプローチは、診断派アプローチヘの批判として誕生しました。

タフトやロビンソンによって確立された機能的アプローチは、診断派アプローチヘの批判として誕生しました。その後、スモーリーらによって継承され、1960年代に再構築されています。理論の基盤は、フロイトの弟子であったランクの自我心理学などから強い影響を受けています。

□ 4.課題中心アプローチの特徴は、短期間で計画的に援助を行うことです。

リードやエプスタインらによって理論構築された課題中心アプローチは、心理社会的アプローチ、問題解決アプローチ、行動変容アプローチの影響を強く受けています。課題中心アプローチでは、クライエント自身が重要であると認識し自覚している課題を中心に置き、短期間で計画的な援助が行われます。

□ 5.行動変容アプローチは、行動療法の知見をソーシャルワークに導入したものです。

行動療法の知見をソーシャルワークに導入した行動変容アプローチでは、クライエントの社会的機能を改善・向上させるよう、望ましい行動を増加させ、望ましくない行動を減少させることに焦点があてられます。

□ 6.危機介入アプローチは、危機に直面しているクライエントに介入します。

危機介入アプローチでは、クライエントの直面している危機が課題として取り上げられます。

キャラハンは「危機は、人が大切な目標に向かう時、障害に直面し、それが習慣的な問題解決の方法を用いても克服できない時に生じる」とし、早期介入を強調した。

相談援助の実践方法

□ 7.エンパワメントとは、ソロモンによって初めて用いられた用語です。

エンパワメントアプローチでは、問題を抱え無力状態に陥っている者であっても、潜在能力を引き出し強化することによって、自ら問題の解決が行えるよう援助が展開されます。

ソロモンのエンパワメントの定義

スティグマ化された集団に属していることで生じているパワーの欠如状態を減らすために、クライエントの一連の活動にたずさわる過程

エンパワメントは、1976年のソロモンの著書「黒人のエンパワメント、抑圧されている地域社会によるソーシャルワーク」で注目を浴びた用語である。

□ 8.ワーカビリティとは、クライエントの問題解決に取り組む能力のことをいいます。

ワーカビリティとは、クライエントの問題解決に取り組む能力のことで、パールマンによって提唱された概念です。パールマンらのMCOモデルでは、(1)動機づけ、(2)能力、(3)機会の3つをワーカビリティの重要な要素としてあげています。

□ 9.バイスティックは、クライエントと援助者が援助関係を形成するための7原則を示した。

バイスティックの7原則

個別化の原則は、それぞれのクライエントに応じた援助を行うという原則

意図的な感情表出の原則は、クライエントが自らの感情を率直に表出することができるよう、意図的に働きかけるという原則

統制された情緒関与の原則は、援助者が自らの感情を自覚して適切にコントロールし、クライエントにかかわるという原則

受容の原則は、クライエントの言動や態度を、ありのままに受け入れるという原則

非審判的態度の原則は、クライエントの価値観や考え方を尊重し、クライエントを非難したり裁いたりしないという原則

自己決定の原則は、クライエントが自らの判断をもとに決定するという原則

秘密保持の原則は、知り得た事柄の秘密を保持するという原則

□ 10.インテークの目的は、クライエントの抱えている問題を明らかにすることです。

インテークには、主訴の提示、ソーシャルワーク機能の説明、契約といった段階があります。

インテークの段階

(1)主訴の提示、クライエントが相談内容を援助者に伝える段階

(2)ソーシャルワーク機能の説明、援助者が提供できる援助についてクライエントに説明する段階

(3)契約、クライエントが支援を利用するかどうかを決定し、契約が行われる段階

□ 11.アセスメントとは、クライエントが抱える問題を解決するために、情報を収集し、課題を分析する段階のことをいいます。

アセスメントにおける情報収集では、援助者が質問するよりも、クライエント自身が語れるようにするとよい。また、アセスメントにおける情報収集は、必要最小限にとどめることが大切です。

□ 12.モニタリングによって問題が解決されたと評価された場合には、援助は終結へと向かう。

モニタリングでは、計画に沿って援助が行われ、援助が効果を上げているかなどの評価が行われます。援助が効果を上げていないと評価された場合には再検討が行われ、援助計画の見直しが行われます。援助によって問題が解決されたと評価された場合には、援助は終結へと向かいます。

□ 13.評価は、行う時期によって事前評価(アセスメント)、中間評価(モニタリング)、事後評価(エバリュエーション)に分けられます。

介入の前にクライエントの置かれている状況を評価するのが事前評価(アセスメント)、援助の途中で援助が計画的に行われているかどうかを評価するのが中間評価(モニタリング)、援助の終結に向けて援助全体を振り返って評価するのが事後評価(エバリュエーション)です。

□ 14.評価は、プロセス評価とアウトカム評価に分けられます。

援助がどのような経過を経ているかを評価するのがプロセス評価、援助実践の結果を観察・分析することで援助の効果を評価するのがアウトカム評価です。アウトカム評価では、アセスメント結果に基づき設定された援助目標が達成できたかどうかが主に判断されます。

□ 15.クライエントの置かれている状況を整理するために有効な図式法を、マッピング技法といいます。

代表的なマッピング技法

ジェノグラムは、世代関係図ともいわれ、三世代以上の家族にわたってみられる関係性の特徴を図式化したもの

エコマップは、社会関係地図ともいわれ、クライエントとその周りの人々や社会資源との間に存在する問題状況を描きだしたもの

フアミリーマップは、家族図ともいわれ、家族成員の関係を図に書き込んだもの

相談援助の効果を高める方法

□ 16.ケースマネジメントの目的は、クライエントの生活の質(QOL)を向上させることと、クライエントの意向に沿った自立を支援することであり、4つの視点があります。

ケースマネジメントの4つの視点

全体性は、クライエントの生活全体を支援するという視点を持つ

個別性は、クライエント一人ひとりの事情に応じた支援を行う

継続性は、クライエントの抱える問題について過去から将来まで見通したうえで援助を考える

地域性は、クライエントが生活する地域の特性に配慮する

□ 17.シュワルツが提唱した波長合わせは、グループワークの準備期に行われます。

シュワルツが提唱した波長合わせとは、グループワークを開始する前に、ワーカーがメンバーについてあらかじめ調べて理解を深め、グループワークで起こり得る場面などを予測することをいいます。

□ 18.代表的なグループワークの提唱者には、コイル、トレッカー、コノプカがいます。

グループワークでは、人間にとって重要な社会的環境である集団を意図的に形成し、そこで生じるグループ・ダイナミックスを活用して、一人ひとりのメンバーの援助を行っています。

代表的な提唱者によるグループワークの定義

コイルの定義

ソーシャル・グループワークとは、任意につくられたグループで、余暇を利用してグループワーカーの援助のもとに実践される一種の教育的活動であり、集団的な経験を通して個人の成長と発達を図るとともに、社会的に望ましい目的のために各成員が集団を活用することです。

トレッカーの定義

ソーシャル・グループワークとは、一つの方法であり、それによって社会事業団体内のグループに属する各人が、プログラム活動で成員の相互作用を指導するグループワーカーによって援助され、各自の必要と能力に応じてほかの人々と結びつき、成長の機会を持つ経験を与えられ、もって個人、グループ、および地域社会の成長と発展を図らんとするものです。

コノプカの定義

ソーシャル・グループワークとは、社会事業の一つの方法であり、意図的なグループ経験を通じて、個人の社会的に機能する力を高め、また、個人、集団、地域社会の諸問題により効果的に対処し得るよう、人々を援助するものです。

アメリカ・グループワーカー協会の定義

グループワークとは、グループワーカーが、グループの相互作用とプログラム活動によって、個人の成長と、社会的に望ましい目的の達成とを援助できるような方法であり、さまざまな型のグループの機能を可能にするための方法でもある。

□ 19.グループワークの展開過程は、準備期、開始期、作業期、終結期に分けることができます。

グループワークの展開過程

準備期は、メンバーが顔を合わせる前に準備をする段階

開始期は、メンバーが初めて集まり、グループとして動き始めるまでの段階

作業期は、グループとして課題に取り組み、目的達成のために活動を展開する段階

終結期は、グループワークを終わりにする段階

□ 20.グループワークでは複数のクライエントが一つの活動を行うため、参加者間の相互作用が働く。

グループワークの6つの構成要素

(1)個別の参加者は、グループワークの二―ズを持ったクライエント

(2)参加者のグループは、2人以上の利用者からなる相互作用を持つ集団

(3)プログラム活動は、グループワークの媒体

(4)グループワークを提供する場は、グループワークを行う組織と実際の場所

(5)援助者(ソーシャルワーカー) は、グループワークの側面的支援を行う者

(6)社会資源は、グループワークに用いる資源

□ 21.スーパービジョンとは、経験豊かなスーバーバイザーが、経験の浅いスーバーバイジーに対して、援助方法などの指導や助言を行うことです。

スーパービジョンの3つの機能

教育的機能は、経験の浅いスーパーバイジーを一人前の専門職として育てようとする機能

支持的機能は、スーパーバイジーの心情を理解し精神的にサポートする機能

管理的機能は、スーパーバイジーの能力を把握し能力に見合う業務を担当させる機能

□ 22.記録には、公式記録と非公式記録があります。

援助記録、運営管理記録、事例記録などを公式記録といい、実践記録、当事者記録などを非公式記録という。

シュワルツによる記録の定義

業務の根拠を明確にするために使われる道具であり、業務である。

□ 23.経済協力開発機構(OECD)は、1980年にOECD 8原則を採択した。

経済協力開発機構(OECD)が1980年に閣僚理事会勧告として採択した「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関するOECD理事会勧告」は、一般にOECD 8原則と呼ばれています。

OECD8原則とその内容

(1)収集制限の原則は、個人データの収集は、適法・公正な手段により、かつ情報主体に通知または同意を得て行われるべきであるという原則

(2)データ内容の原則は、収集される個人データは、利用目的に沿ったもので、かつ、正確 完全・最新であるべきであるという原則

(3)目的明確化の原則は、個人データの収集に際しては、目的を明確にし、データの利用は収集目的に合致するべきであるという原則

(4)利用制限の原則は、データ主体の同意がある場合、または、法律の規定による場合以外は、収集目的以外の目的のために、個人データを開示・利用・使用してはならないという原則

(5)安全保障の原則は、個人データは、合理的な安全保護装置により、紛失・不正なアクセス・破壊・使用 修正・開示等の危険から保護されるべきであるという原則

(6)公開の原則は、個人データに係る政策等を公開し、個人データの存在、利用目的、管理者等を明らかにするべきであるという原則

(7)個人参加の原則は、個人は、自己に関するデータの所在および内容を確認し、異議を申し立てる権利を有するという原則

(8)責任の原則は、データ管理者は、各原則を実施する責任を有するという原則

15.福祉サービスの組織と経営

福祉サービスを供給する組織や団体

□ 1.法人には、大きく分けて財団法人と社団法人があります。

法人の基本的な成り立ちが資産である場合には財団法人、人の集団である場合には社団法人となります。

財団法人は、社会福祉法人、学校法人、宗教法人など

社団法人は、株式会社、特定非営利活動法人、生活協同組合など

□ 2.社会福祉法は、社会福祉法人に役員として理事および監事を置くことを規定しています。

社会福祉法人には、役員として、理事(3人以上)、監事(1人以上)が置かれます。また、社会福祉法では、役員とは別に評議員会を置くことができると規定しています。

□ 3.NPO法人は、理事、社員総会、監事の3つの機関から成り立っています。

NPO法人の業務を決定する役員のことを理事といい、理事の業務執行状況や法人の財産状況を監査しているのが監事です。社員総会は、毎年1回開催されます。

□ 4.医療法人は、1950(昭和25)年の医療法の改正により制定されました。

2007(平成19)年の医療法の改正によって、医療法人が行える社会福祉関連事業は大きく拡大されました。

医療法人が行える主な社会福祉関連事業

(1)デイサービスセンター、保育所などの第二種社会福祉事業(ただし社会医療法人は、特別療養老人ホーム、養護老人ホーム、救護施設、更生施設、経過的軽費老人ホームを除く第一種社会福祉事業)

(2)介護保険法上の居宅サービス事業、居宅介護支援事業、介護予防サービス事業、介護予防支援事業、地域密着型サービス事業、地域支援事業、保健福祉事業(ただし地域密着型介護老人福祉施設を除く)

(3)サービス付高齢者向け住宅の設置(一部条件有)

(4)老人福祉法に規定される有料老人ホーム

(5)介護福祉士養成施設、介護職員養成研修事業、福祉用具専門相談員指定講習、福祉有償輸送

医師法第39条第1項は「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人とすることができる」と規定している。

□ 5.医療法人とは、病院、診療所または介護老人保健施設の開設を目的とした法人です。

医療法人は、社団法人であっても財団法人であっても設立することができるが、実際には、圧倒的多数が社団の形態をとっています。また、医療法人の設立には、都道府県知事の認可が必要です。

□ 6.社会医療法人とは、医療法を根拠とする公益性の高い医療法人です。

社会医療法人は、第5次医療法改正(2007(平成19)年施行)において創設された医療法人で、救急医療やへき地医療、周産期医療など特に地域で必要な医療の提供を担い、継続して良質で適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図ることを目的としています。

認定要件は厳格で、認定を受けると医療保健事業等について税制上の優遇措置を受けることができます。

組織運営と経営の基礎理論

□ 7.経営戦略とは、長期的な観点から環境の変化に適応し、将来にわたって存続・成長していくための一連の方策のことをいいます。

戦略という用語を経営に持ち込んだのは、アメリカのチャンドラーである。組織戦略の策定手順には、(1)経営理念の設定、(2)経営ビジョン・経営目標の設定、(3)環境の分析、(4)経営戦略の策定があります。

□ 8.経営戦略論の系譜は、外部環境を重視するか内部環境を重視するかで2つに分かれます。

外部環境を精緻に分析し、その環境に適合した位置に自らを置くのが、外部環境を重視する系譜で、「位置取り戦略」または「ポジシ∃ンベース型戦略」と呼ばれています。内部にある固有の能力やノウ八ウを重視するのが、内部環境を重視する系譜で「資源ベース型戦略」と呼ばれています。

□ 9.ドラッカーのマネジメント理論では、従業員一人ひとりの目標と全体の利益を調和させることが、マネジメントの原理であるとしています。

ドラッカーは、マネジメントとは、共通の目的、共通の価値観、適切な組織構造、適切な教育訓練により、成果を上げるための仕組みであると定義し、従業員一人ひとりの目標と全体の利益を調和させることが、マネジメントの原理であるとしています。また、「目標による管理」は、従業員一人ひとりが共通の目標に向かって貢献することが重要であるとしています。

□ 10.IS09001は、国際標準化機構(ISO)が品質マネジメントシステムについての要求事項を定めた国際規格です。

工業規格の世界的な調整と統一を図るために発足したのが、国際標準化機構(ISO)です。品質マネジメントシステムについての要求事項を定めた国際規格であるIS0 9001を、1987年に発行しています。

国際標準化機構(ISO)は、スイスのジュネープに本部を置く民間の非政府系組織である。

□ 11.伝統的な組織論では、組織構造を決定する際に5つの原則が重視されてきました。

伝統的な組織論における組織構造を決定する際の5つの原則は、絶対的な原則ではないため、それぞれの意義やデメリッ卜やメリットを考慮したうえで、組織構造を考える一つの視点として用いるべきです。

組織構造を決定する際の5つの原則

専門化の原則は、業務を分業化し仕事の能率を高めるという原則(この原則を徹底すると、従業員の熟練度は高まるが、多様な業務対応は困難になる)

権限・責任一致の原則は、従業員に与えられた権限と責任が等しくなるようにするという原則(権限が大きくなると無責任状態となり、責任が大きくなると従業員の負担が増す)

命令一元化の原則は、各構成員に対する指示や命令系統は単純で明快でなければならないという原則(一人の上司からだけ、指示・命令を受ける仕組みが想定されている)

統制範囲適正化の原則は、管理者の直接管理する部下の数を適切に設置するという原則

例外の原則は、手順通りに進んでいる定型的で反復的な業務は下位の者に任せ、管理者は例外的でより高度な業務に専従するという原則

□ 12.一般にマーケティングは、4つのPを要素としています。

4つのPとは、(1)製品(Products)、(2)場所・販売チャネル(Place)、(3)販売促進活動(Promotion)、(4)価格(Price)のことをいいます。

□ 13.三隅二不二が1966(昭和41)年に提唱したPM理論では、リーダーシップの機能にはP機能とM機能があります。

PM理論では、集団の目標を達成させるための課題遂行機能がP機能、メンバー間の人間関係を良好に保ち、集団のまとまりを維持する集団維持機能がM機能とされます。

三隅二不二のPM理論

PM型は、目標を達成する能力が高く、集団を維持しまとめる能力も高い

pm型は、目標を達成する能力が低く、集団を維持しまとめる能力も低い

Pm型は、目標を達成する能力は高いが、集団を維持しまとめる能力は低い

pM型は、目標を達成する能力は低いが、集団を維持しまとめる能力は高い

社会福祉法人の組織・経営に関する理論

□ 14.ハインリッヒの法則は、労災事故の発生を確率として示す法則です。

ハインリッヒの法則では、1件の「死亡等の重大事故」の背景には29件の「障害等が残らない事故」があり、300件の「軽微な事故(ヒヤリ・ハット)」があるとされます。

□ 15.人材確保指針は、2007(平成19)年に見直されて新人材確保指針が告示され、人材確保のための措置として5つの視点があげられています。

福祉・介護ニーズに的確に対応できる人材の安定確保のための措置として新人材確保指針に示されている5つの視点は、(1)労働環境の整備の推進、(2)キャリアアップの仕組みの構築、(3)福祉・介護サービスの周知と理解、(4)潜在的有資格者等の参入の促進、(5)多様な人材の参入・参画の促進です。

□ 16.職場研修は、経営管理の視点で人材育成を推進するためには重要な考え方です。

職場研修には、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング:職務を通じての研修)、OFF-JT(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング:職務を離れての研修)、SDS(セルフ・ディベロップメント・システム:自己啓発援助制度)の3つの形態があります。

□ 17.社会福祉法人の資金の流れには、ランニングコスト、イニシャルコスト、財務活動があります。

事業運営に伴う経常的な資金の流れのことをランニングコスト、施設整備のための資金の流れのことをイニシャルコスト、資産運用や借入金に関する資金の流れのことを財務活動といいます。

16.高齢者に対する支援と介護保険制度

わが国の高齢者問題

□ 1.高齢化率とは、総人口に占める65歳以上の人口の割合のことをいいます。

わが国の高齢化のスピードは速く、高齢化率が7%を超えて高齢化社会になったのは1970(昭和45)年、14%を超えて高齢社会になったのは1994(平成6)年、21%を超えて超高齢社会になったのは2007(平成19)年です。

わが国の人口増加率は、65~74歳までの前期高齢者よりも、75歳以上の後期高齢者の方が高くなっている。

□ 2.2012(平成24)年の国民生活基礎調査によると、平均世帯人員は2.57人です。

わが国の平均世帯人員は減少しており、1955(昭和30)年の国勢調査では4.97人であったが、2012(平成24)年の国民生活基礎調査では2.57人と、ほぼ半減しています。

□ 3.平均寿命とは、出生時の平均余命のことをいいます。

わが国の平均寿命は、昭和20年代以降、急速に延び始め、2012(平成24)年には、女性が86.41歳、男性が79.94歳と、世界でも有数の長寿国になっています。

平均寿命の推移

1947(昭和22)年は、女53.96、男50.06

1967(昭和42)年は、女74.15、男68.91

1987(昭和62)年は、女81.39、男75.61

2007(平成19)年は、女85.99、男79.19

2012(平成24)年は、女86.41、男79.94

□ 4.2012(平成24)年の国民生活基礎調査によると、高齢者世帯のうち約半数が単独世帯です。

高齢者世帯とは、65歳以上の者のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯のことをいいます。2012(平成24)年の高齢者世帯数は、1,024万1,000世帯で、そのうちの約半数の486万8,000世帯が単独世帯です。

□ 5.国民生活基礎調査によると、主な介護者で最も多いのは同居の配偶者です。

2010(平成22)年の調査結果によると、主な介護者で最も多いのは、同居の配偶者(25.7%)で、次いで同居の子(20.9%)、同居の子の配偶者(15.2%)となっています。また、主な介護者の性別は、男性が30.6%、女性が69.4%となっています。

□ 6.2012(平成24)年度の養護者による高齢者虐待に係る相談・通報件数は、前年を下回った。

「高齢者虐待防止法」に基づき、厚生労働省は高齢者虐待の対応状況等を把握するため、「養介護施設従事者等によるもの」と「養護者によるもの」について調査を実施しています。相談・通報件数は、2012(平成24)年度で、「養介護施設従事者等によるもの」が736件、「養護者によるもの」が2万3,843件となっています。

「高齢者虐待防止法」の正式名称は「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」で、2006(平成18)年から施行されている。

□ 7.厚生労働省の高齢者虐待に関する調査結果によると、虐待の種別・類型で最も多いのは身体的虐待です。

2012(平成24)年度の調査結果によると、虐待の種別・類型で最も多いのは、「養介護施設従事者等によるもの」および「養護者によるもの」のどちらも身体的虐待で、2番目が心理的虐待です。

□ 8.国民生活基礎調査によると、高齢者の一世帯あたりの平均所得金額は303万6千円です。

2012(平成24)年の調査結果によると、高齢者の一世帯あたりの平均所得金額の内訳は、公的年金・恩給が最も高く、2番目が稼働所得、3番目が財産所得となっています。

高齢社会対策の枠組み

□ 9.高齢化の進展に対処するため、1995(平成7)年に高齢社会対策基本法が制定されました。

高齢社会対策基本法の目的

(1)高齢化の進展に対処するための施策について基本理念を定めること

(2)国と地方公共団体の責務等を明らかにすること

(3)高齢社会対策の基本事項を定めること

□ 10.高齢社会対策基本法を受けて1996(平成8)年に高齢社会対策大綱が閣議決定され、2001(平成13)年には新しい高齢社会対策大綱が閣議決定されました。

新しい高齢社会対策大綱の基本姿勢として、(1)旧来の画―的な高齢者像の見直し、(2)予防・準備の重視、(3)地域社会の機能の活性化、(4)男女共同参画の視点、(5)医療・福祉、情報通信等にかかわる科学技術の活用があります。

□ 11.2003(平成15)年に、高齢者介護研究会が厚生労働省に設置されました。

高齢者介護研究会が厚生労働省に設置された目的は、「ゴールドプラン21」の後の新たなプラン策定の方向性と、中長期的な介護保険制度の課題や高齢者介護のあり方について検討するためです。

高齢者介護研究会の位置づけ

(1)厚生労働省老健局長の私的研究会

(2)会議の庶務は関係課の協力を得て老健局総務課が行う

□ 12.高齢者介護研究会は、2003(平成15)年に報告書「2015年の高齢者介護」を発表しました。

「2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~」は、第一次ベビーブームの時代に生まれた「団塊の世代」が65歳以上になり、高齢者の仲間入りをする2015(平成27)年までに、高齢者の尊厳を支えるケアの実現を図る必要があること、そのためには介護保険制度を持続可能なものとしていくことなどが必要であるとしました。

介護の実践

□ 13.ケアマネジメントとは、社会生活上のニーズを持つ人と、サービス供給システムから提供されるサービスとを結びつけ、必要に応じて調整を繰り返す支援方法のことをいいます。

ケアマネジメントは、1.インテーク・契約、2.アセスメント、3.目標の設定とケアプランの作成、4.ケアプランの実施、5.モニタリング、6.ケアプランの見直しと新プランの実施、7.終結というプロセスに沿って展開されます。

□ 14.片麻痺がある者が段差を上がる場合には、健側の足から上がります。

片麻痺がある者が段差を上がる場合には、健側の足から上がり、段差を下がる場合には、患側の足から下がります。また、片麻痺がある者が浴槽に入るときは、まず健側の足を入れてから、次に患側の足を入れます。

□ 15.整容動作とは、洗面、歯磨き、髭剃り、洗髪、爪切り、化粧などのことを指します。

身なりを整える行為のことを整容動作といいます。人間が生活するうえで1日も欠かすことのできない基本的な動作群を身の回り動作といい、整容動作は身の回り動作の中に含まれます。

□ 16.ボディメカニクスとは、人体力学や身体力学のことをいいます。

人間の骨格、筋肉、内臓などの身体部位や、身体部位に作用する力を活用して、人体の移動や動作を変換する技術をボディメカニクスという。ボディメカニクスを活用することで、介護者の疲労を軽減し、腰痛を予防することができます。

ボディメカニクスの基本原理

対象者の身体を小さくまとめる、重心を低くする、対象者を水平に動かす、大きな筋群を使う、支持基底面を広くする、対象者に近づく、テコの原理を応用する

□ 17.睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠があります。

身体は休み筋肉は弛緩しているが、脳は覚醒状態に近い状態をレム睡眠、身体はある程度の筋弛緩状態を保っているが、脳は熟睡している状態をノンレム睡眠といいます。高齢になるとノンレム睡眠が減少してレム睡眠が増加し、不眠を訴えることが多くなります。

安眠を妨げる要因には、環境要因(室内の温度、湿度、音、光など)、身体的要因(病気の苦痛、精神疾患、かゆみなど)、精神的要因(抑うつ、不安、緊張、心配など)、生活習慣(過度の昼寝、日中の活動不足、睡眠を妨げる嗜好品など)がある。

□ 18.高齢者の寝室は、トイレに近いほうが便利です。

一般的に高齢者は、夜中にトイレに行く回数が多いため、寝室はトイレに近いほうが便利です。

□ 19.入浴介助は、食前と食後の1時間は避けるようにします。

高齢者は熱めの湯を好む傾向があるが、一般的に湯の温度は、40℃ 前後を適温、42℃以上を熱め、38℃以下をぬるめとしています。老人性皮膚掻痒症の高齢者は、皮膚が薄くて乾燥しやすいため、湯の温度はぬるめに設定するとよい。また、降圧剤を服用している高齢者は、服用直後に入浴すると血圧の急激な下降をきたす危険があるため注意しなければならない。

□ 20.歩行困難者は、5mmの段差でもつまずくことがあります。

高齢者は、ADLの低下によって脚が上がりにくくなります。特に歩行困難者は、5mmの段差でもつまずくことがあるので注意します。車いすの場合には、20mmの段差で移動が困難になるため、配慮が必要です。

介護保険法

□ 21.保険給付には、介護給付、予防給付、市町村特別給付の3種類があります。

介護保険法に基づく保険給付には、居宅介護サービス費などの14種類で構成される介護給付、介護予防サービス費などの12種類で構成される予防給付、市町村が条例で定めて行う市町村特別給付の3種類があります。

□ 22.介護保険サービスに係る人員・設備・運営に関する基準は、都道府県または市町村の条例に委任されました。

介護保険のサービス事業者や施設に定められている人員・設備・運営に関する基準は、サービスの種類によって、都道府県または市町村の条例に委任されます。居宅介護支援や介護予防支援の人員・設備・運営に関する基準の委任は、2014(平成26)年4月から実施されました。

都道府県の条例

・指定居宅サービス

・基準該当居宅サービス

・指定介護予防サービス

・基準該当介護予防サービス

・指定介護老人福祉施設

・介護老人保健施設

・指定居宅介護支援

・基準該当居宅介護支援

市町村の条例

・地域密着型サービス

・指定地域密着型介護予防サービス

・介護予防支援

・基準該当介護予防支援

□ 23.保険の被保険者には、第1号被保険者と2号被保険者の2種類があります。

第1号被保険者は、市町村の区域内に住所がある65歳以上の者

第2号被保険者は、市町村の区域内に住所がある40歳以上65歳未満の者で医療保険に加入している者

介護保険では、一定の要件に該当する者は、法律上当然に被保険者となる強制適用の仕組みがとられている。

□ 24.第1号被保険者の保険料の徴収方法には、特別徴収と普通徴収の2種類があります。

特別徴収は、第1号被保険者の保険料を年金保険者が年金から天引きして市町村に納入する方法

普通徴収は、市町村が、納入通知書を第1号被保険者に送付し、保険料の納付を求める方法

第1号被保険者が年額18万円以上の公的年金を受給している場合には、原則として特別徴収が行われる。

□ 25.介護保険の財源は、公費50%と保険料50%によって賄われています。

介護保険の財源は、公費50%と保険料50%によって賄われています。そのうち公費は、国、都道府県、市町村でさらに分けて負担しています。

居宅給付の財源構造(平成24~ 26年度)

第1号保険料 21%、第2号保険料 29%、国20%、国(調整交付金)5%、市町村(一般会計)12.5%、都道府県 12.5%、

施設等給付の財源構造(平成24~ 26年度)

第1号保険料 21%、第2号保険料29%、国15%、国(調整交付金)5%、都道府県 17.5%

市町村(一般会計)12.5%

□ 26.介護保険法に規定されている特定疾病は16種類です。

第2号被保険者が、要介護状態もしくは要支援状態の認定を受けるには、その状態となった原因が、16種類の特定疾病によるものでなければならない。

□ 27.都道府県には、財政安定化基金が設置されています。

財政安定化基金は、市町村の介護保険財政の安定化を図るために都道府県に設置されています。財政安定化基金の財源は、国、都道府県、市町村がおのおの3分の1ずつ拠出します。

□ 28.地域支援事業の必須事業には、包括的支援事業と介護予防事業があります。

地域支援事業は、必須事業、任意事業、市町村の判断により実施する事業で構成されています。包括的支援事業は、介護予防ケアマネジメント事業、総合相談支援事業、包括的・継続的ケアマネジメント支援事業、権利擁護事業の4種類で構成されています。

□ 29.介護認定審査会は、介護認定に関する審査・判定を行う機関です。

介護認定に関する審査・判定を行う機関として、市町村に設置されているのが介護認定審査会です。介護認定審査会の委員は、要介護者等の保健・医療・福祉に関する学識経験者の中から市町村長が任命しています。任期は2年で、再任することができます。

介護認定審査会の委員の定数は、被保険者の人数等を勘案して、政令で定める基準に従い、市町村が条例によって定めています。

□ 30.介護認定の有効期間は、新規認定では原則として6か月間、更新認定では原則として12か月または6か月です。

要介護認定を受けた被保険者が、有効期間満了後も要介護状態が続くと判断される場合には、市町村に対して更新認定の申請を行うことができます。

認定の有効期間

(1)要介護、要支援(新規)認定の有効期間:6ヶ月(市町村が必要と認める場合にあっては、3ヶ月から12ヶ月の間で月を単位として市町村が定める期間)

(2)要介護更新認定の有効期間:12ヶ月(市町村が必要と認める場合にあっては、3ヶ月から36ヶ月の間で月を単位として市町村が定める期間)

(3)要支援更新認定の有効期間:12ヶ月(市町村が必要と認める場合にあっては、3ヶ月から36ヶ月の間で月を単位として市町村が定める期間)

□ 31.地域包括ケアシステムは、住まい、医療、介護、介護予防・生活支援などが一体的に提供される仕組みです。

地域包括ケアシステムは、重度の要介護状態になった場合であっても、住み慣れた地域の中で自分らしい生活を人生の最後まで続けることができるよう、住まい、医療、介護、介護予防・生活支援などが一体的に提供される仕組みです。地域包括ケアシステムは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(中学校区)を想定しています。

□ 32.地域ケア会議は、地域包括支援センターや市町村が主催します。

地域ケア会議は、高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進めることによる、地域包括ケアシステムの実現に向けた手法であり、地域包括支援センターや市町村が主催します。

地域ケア会議には、自治体職員、地域包括支援センター職員、介護支援専門員、民生委員、医師など、議題に合わせて必要な専門職などが参加します。

□ 33.地域ケア会議の機能には、個別課題解決機能、ネットワーク構築機能、地域課題発見機能、地域づくり・資源開発機能、政策形成機能があります。

地域ケア会議の機能には、(1)固別課題解決機能、(2)ネットワーク構築機能、(3)地域課題発見機能、(4)地域づくり・資源開発機能、(5)政策形成機能の5つがあり、取り扱う案件に合わせて、果たす機能や会議の規模などを柔軟に変えていくことを可能としています。

□ 34.居宅サービスには、訪問系サービス5種類、通所系サービス2種類、入所系サービス3種類、福祉用具2種類の合計12種類があります。

居宅サービスの種類

訪問系サービス

(1)訪問介護は、居宅で介護福祉士その他政令で定める者から受ける入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活上の世話

(2)訪問入浴介護は、居宅で浴槽を提供されて受ける入浴の介護

(3)訪問看護は、居宅で看護師その他厚生労働省令で定める者から受ける療養上の世話または必要な診療の補助

(4)訪問リハビリテーションは、基準に適合する居宅要介護者が居宅で受ける理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーシ∃ン

(5)居宅療養管理指導は、病院等の医師、歯科医師、薬剤師、その他厚生労働省令で定める者から受ける療養上の管理と指導

通所系サービス

(6)通所介護は、老人デイサービスセンターに通って受ける入浴、排泄、食事等の介護、その他の日常生活上の世話と機能訓練

(7)通所リハビリテーションは、介護老人保健施設、病院、診療所等に通って受ける理学療法、作業療法等の必要なり八ビリテーション

入所系サービス

(8)短期入所者生活介護は、特別養護老人ホーム等の施設や老人短期入所施設に短期間入所して受ける介護、その他の日常生活上の世話等

(9)短期入所療養介護は、介護老人保健施設や介護療養型医療施設等に短期間入所して受ける、看護 医学的管理下の介護と機能訓練等の必要な医療と日常生活上の世話

(10)特定施設入居者生活介護は、地域密着型特定施設以外の特定施設に入居する要介護者が、計画に基づき受ける介護等

福祉用具

(11)福祉用具貸与は、居宅要介護者に対して、厚生労働大臣が定める福祉用具を貸与

(12)特定福祉用具販売は、居宅要介護者に対して、福祉用具のうち貸与になじまないとして購入扱いとなっている福祉用具を販売

□ 35.介護老人保健施設を開設する際は、都道府県知事の許可を受けなければならない。

介護老人福祉施設は、都道府県知事の指定を受けなければならず、介護老人保健施設は、都道府県知事の許可を受けなければならない。また、介護老人福祉施設で提供する施設サービスを介護福祉施設サービスといい、介護老人保健施設で提供する施設サービスを介護保健施設サービスといいます。

介護保険施設の種類

介護老人福祉施設は、入所定員が30人以上である特別養護老人ホームにおいて、入所者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理および療養上の世話を行うことを目的とする施設

介護老人保健施設は、入所者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護および機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設

これまで介護保険施設の一つとして位置づけられていた介護療養型医療施設は、2011(平成23)年度末に廃止され、既存の施設は2017(平成29)年度末までの猶予(経過措置)が認められることになった。既存の施設については従前の規定が適用されるが、現在の介護保険法の規定からは削除されている。

その他の高齢者支援のための法制度

□ 36.1963(昭和38)年に制定された老人福祉法は、1990(平成2)年に大幅な改正が行われました。

老人福祉法の改正内容

(1)在宅福祉サービスと施設福祉サービスに関する権限を市町村が担う

(2)在宅福祉サービスを推進する

(3)有料老人ホームの設置を事前届出制に変更

(4)市町村および都道府県の老人保健福祉計画の策定を義務づけ

□ 37.老人福祉法は、老人の日と老人週間を規定しています。

老人福祉法は、国民の間に広く老人の福祉についての関心と理解を深めるとともに、老人に対し自らの生活の向上に努める意欲を促すため、老人の日を9月15日、老人週間を9月15日から21日までと規定しています。

「敬老の日」(9月第3月曜日)は、国民の祝日に関する法律(祝日法)に規定されたものであり、老人福祉法に規定された「老人の日」とは別のものです。

□ 38.老人祉法は、老人祉施として7種類の施設を定義しています。

老人福祉施設の種類

(1)養護老人ホームは、65歳以上の者であつて、環境上および経済的な理由によって、居宅において養護を受けることが困難な者を入所させる

(2)特別養護老人ホームは、65歳以上の者であって、身体上、精神上著しい障害があるために、常時介護を必要とし、居宅において養護を受けることが困難な者を入所させる

(3)軽費老人ホームは、無料または低額な料金で老人を入所させ、食事の提供その他の日常生活上必要な便宣を供与する

(4)老人福祉センターは、無料または低額な料金で老人に関する各種相談に応じるとともに、健康の増進、教養の向上、レクリエーションのための便宜を総合的に供与する

(5)老人デイサービスセンターは、65歳以上の者であって、身体上または精神上の障害があるために、日常生活を営むのに支障がある者を通わせる

(6)老人短期入所施設65歳以上の者であって、養護者の疾病その他の理由により、居宅において介護を受けることが一時的に困難になった者を短期間入所させる

(7)老人介護支援センターは、地域の老人の福祉に関する各般の問題につき、老人その他の者を現に養護する者などからの相談に応じ、必要な助言を行うとともに、主として居宅において介護を受ける老人などと関係機関との連絡調整などを図る

□ 39.老人福祉法に規定されている老人居宅生活支援事業の実施主体は市町村で、6つの事業があります。

老人居宅生活支援事業には、老人居宅介護等事業、老人デイサービス事業、老人短期入所事業、小規模多機能型居宅介護事業、認知症対応型老人共同生活援助事業、複合型サービス福祉事業があります。

市町村は、介護保険法に規定する介護サービスを利用すことが著しく困難と認める場合には、措置によって老人居宅生活支援事業のサービスを提供する。

□ 40.老人福祉法には、老人の定義は規定されていない。

老人福祉法には、老人の定義が規定されていないため、施策ごとに対象年齢が定められています。

□ 41.老人居宅生活支援事業は、介護保険制度での利用が基本です。

老人福祉法と介護保険制度の対応

老人居宅介護等事業は、訪問介護(居宅サービス事業)、介護予防訪問介護(介護予防サービス事業)、夜間対応型訪問介護(地域密着型サービス事業)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(地域密着型サービス事業)

老人デイサービス事業は、通所介護(居宅サービス事業)、認知症対応型通所介護(地域密着型サービス事業)、介護予防通所介護(介護予防サービス事業)、介護予防認知症対応型通所介護(地域密着型介護予防サービス事業)

老人短期入所事業は、短期入所生活介護(居宅サービス事業)、介護予防短期入所生活介護(介護予防サービス事業)

小規模多機能型居宅介護事業は、小規模多機能型居宅介護(地域密着型サービス事業)、介護予防小規模多機能型居宅介護(地域密着型介護予防サービス事業)

認知症対応型老人共同生活援助事業は、認知症対応型共同生活介護(地域密着型サービス事業)、介護予防認知症対応型共同生活介護(地域密着型介護予防サービス事業)

複含型サービス福祉事業は、複合型サービス(地域密着型サービス事業)

□ 42.有料老人ホームは4種類あり、設置する場合は、あらかじめ設置しようとする場所の都道府県知事に届け出ることが義務づけられています。

有料老人ホームの種類

(1)介護付(一般型特定施設入居者生活介護)は、特定施設入居者生活介護に指定された介護サービスを義務づけられた施設

(2)介護付(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護)は、介護サービスは委託先の介護サービス事業者が提供する施設

(3)住宅型は、介護が必要になった場合には、訪問介護等のサービスを利用する施設

(4)健康型は、介護の不要な自立生活者だけを入居対象とした施設

□ 43.老人介護支援センターは、第二種社会福祉事業に位置づけられています。

在宅介護支援センターは、1990(平成2)年度から設置されていたが、1994(平成6)年の法改正によって名称が老人介護支援センターに改称され、第二種社会福祉事業に位置づけられました。

17.児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度

児童・家庭福祉の理念の発展

□ 1.1909年にアメリカで、第1回ホワイトハウス会議が開催されました。

1909年にアメリカでルーズベルト大統領のもと、第1回ホワイトハウス会議が開催され、「ホワイトハウス会議宣言」が発表されました。

ホワイト八ウス会議宣言

「家庭生活は、文明の所産のうち最も高い、最も美しいものである。児童は緊急なやむを得ない理由がない限り、家庭生活から引き離されてはならない。」

□ 2.国際連盟は、1924(大正13)年に「児童の権利に関するジュネープ宣言」を採択しました。

国際連盟が1924(大正13)年に採択した「児童の権利に関するジュネープ宣言」は、国際的機関が初めて採択した児童の権利宣言で、「人類は児童に対し、最善のものを与える義務を負う」と明文化されています。

□ 3.児童憲章は、わが国で初めての子どもの権利に関する宣言です。

1951(昭和26)年に作成された児童憲章は、児童福祉法の基本理念を徹底するために作成されました。

児童憲章の前文より

児童は、人として尊ばれる。

児童は、社会の―員として重んぜられる。

児童は、よい環境のなかで育てられる。

□ 4.国連は、1959(昭和34) 年に「児童の権利宣言」を採択しました。

国連は、1924(大正13)年に採択した「児童の権利に関するジュネーブ宣言」と、1948(昭和23)年に採択した世界人権宣言を踏まえ、1959(昭和34)年に「児童の権利宣言」を採択しました。

児童の権利宣言の前文(一部)

「児童が、幸福な生活を送り、かつ、自己と社会の福利のためにこの宣言を掲げる権利と自由を享有することができるようにするため、この児童の権利宣言を公布」

□ 5.国際連合(国連)は、1989(平成元)年に「児童の権利に関する条約」を採択しました。

「児童の権利に関する条約」では、児童の受動的権利だけでなく、能動的権利についても明示しています。子どもが権利を受容する主体であるという考え方が受動的権利、子どもが権利を行使する主体であるという考え方が能動的権利です。

児童の権利に関する年表

1909(明治42)年、アメリカで第1回ホワイトハウス会議を開催

1924(大正13)年、国際連盟が「児童の権利に関するジュネーブ宣言」を採択

1951(昭和26)年、わが国が「児童憲章」を宣言

1959(昭和34)年、国連が「児童の権利宣言」を採択

1989(平成元)年、国連が「児童の権利に関する条約」を採択

□ 6.「児童の権利に関する条約」では、所有、保護、参加などに関する権利が明記さています。

児童は、出生の後直ちに登録され、出生時から氏名を有する権利と国籍を取得する権利を有し、さらに、できる限り父母を知り、父母によって養育される権利を有するとしています。

児童・家庭福祉の法制度

□ 7.児童の福祉に関する法律は、児童福祉法を基本としています。

児童福祉六法の制定年

1947(昭和22)年、児童福祉法

1961(昭和36)年、児童扶養手当法

1964(昭和39)年、特別児童扶養手当等の支給に関する法律、母子保健法(現:母子及び寡婦福祉法)

1965(昭和40)年、母子保健法

1971(昭和46)年、児童手当法

□ 8.児童福祉法は、児童を満18歳に満たない者と規定しています。

児童福祉法の児童の定義

乳児は、満1歳に満たない者

幼児は、満1歳から、小学校就学の始期に達するまでの者

少年は、小学校就学の始期から、満18歳に達するまでの者

□ 9.母子保健法の対象となる子どもは、0歳から小学校就学前までです。

母子保健法の定義

妊産婦は、妊娠中または出産後1年以内の女子

乳児は、1歳に満たない者

幼児は、満1歳から小学校就学の始期に達するまでの者

保護者は、親権を行う者、未成年後見人その他の者で、乳児または幼児を現に監護する者

新生児は、出生後28日を経過しない乳児

未熟児は、身体の発育が未熟のまま出生した乳児であって、正常児が出生時に有する諸機能を得るに至るまでのもの

□ 10.母子及び寡婦福祉法に規定されている母子家庭等とは、母子家庭および父子家庭のことをいいます。

1964(昭和39)年に制定された母子福祉法は、1981(昭和56)年に改正されて母子及び寡婦福祉法となり、対象に寡婦が加えられました。また、2002(平成14)年には対象に、父子家庭が加えられました。

□ 11.2000(平成12)年に、児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)が制定されました。

児童虐待防止法第2条では、保護者によって加えられる行為を前提として、児童虐待を4つに分けて定義しています。

身体的虐待は、児童の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること

性的虐待は、児童にわいせつな行為をすること、または児童をしてわいせつな行為をさせること

ネグレクトは、児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食または長時間の放置、保護者以外の同居人による虐待などの行為の放置、その他保護者として監護を著しく怠ること

心理的虐待は、児童に対する著しい暴言または著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと

□ 12.2001(平成13)年に、DV防止法が制定されました。

「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(D∨ 防止法)が制定された目的は、配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護するための施策を講ずることなどです。

2014(平成26)年1月からDV防止法の適用対象が、配偶者だけでなく、生活の本拠を共にする交際相手を含まれることになった。

□ 13.子ども・子育て支援法は、2015(平成27)年4月から施行されます。

子ども・子育て支援法は、一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与することを目的としており、子ども・子育て支援給付、地域子ども・子育て支援事業、子ども・子育て支援事業計画などを定めています。

同法で定める「地域型保育」には、家庭用保育、小規模保育、居宅訪間型保育、事業所内保育が含まれます。

子ども・子育て支援法の基本理念

(1)子ども・子育て支援は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、家庭、学校、地域、職域その他の社会のあらゆる分野における全ての構成員が、各々の役割を果たすとともに、相互に協力して行われなければならない。

(2)子ども・子育て支援給付その他の子ども・子育て支援の内容及び水準は、全ての子どもが健やかに成長するように支援するものであって、良質かつ適切なものでなければならない。

(3)子ども・子育て支援給付その他の子ども・子育て支援は、地域の実情に応じて、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。

児童福祉の実施体制

□ 14.児童相談所は、都道府県と指定都市に設置が義務づけられています。

児童相談所は、都道府県と指定都市に設置が義務づけられているが、2006 (平成18)年度からは中核市も設置できるようになった。

児童相談所の主な業務

(1)児童に関する家庭等からの相談のうち、専門的な知識および技術を必要とするものに応じること

(2)児童 家庭について必要な調査、医学的・心理学的・教育学的 社会学的・精神保健上の判定を行うこと

(3)児童・保護者に必要な指導を行うこと

(4)児童の一時保護を行うこと

(4)施設入所等の措置を行うこと

□ 15.児童相談所には、児童相談所長、児童福祉司、児童心理司などが配置されています。

都道府県や指定都市の委任を受けて配置されているのが児童相談所長、調査や指導などを行うソーシャルワーカーが児童福祉司、心理面接、心理検査、心理療法などを行うのが児童心理司です。児童相談所に設置されている一時保護所には、児童相談員や保育士などが配置されています。

□ 16.福祉事務所は、都道府県、市、特別区に設置が義務づけられています。

福祉事務所の設置が義務づけられているのは、都道府県、特別区で、町村は任意で設置することができます。

福祉事務所の児童福祉に関する主な業務

(1)児童 妊産婦の福祉に関しての実情を把握すること

(2)地域に密着した相談機関として、児童 妊産婦に対する集団的・個人的な相談窓口の役割を担うこと

(3)専門的な判定や入所措置等を要する場合、児童相談所に送致すること

社会福祉法に「福祉に関する事務所」として規定されているのが福祉事務所です。

□ 17.福祉事務所には、家庭児童相談室を設置することができます。

家庭児童福祉に関する相談業務にあたるため、福祉事務所に設置されるのが家庭児童相談室です。家庭児童相談に従事する社会福祉主事と家庭相談員が置かれています。

□ 18.保健所は、都道府県、指定都市、中核市、その他政令で定められた市、特別区に設置が義務づけられています。

保健所は、地域における公衆衛生の中核的な機関として、地域保健法に規定されています。

保健所の児童福祉に関する主な業務

(1)児童の保健について正しい衛生知識を普及すること

(2)妊娠届出の受理と母子手帳の交付を行うこと

(3)健康相談、健康診査、保健指導を行うこと

(4)未熟児に対する訪間指導を行うこと

(5)身体障害児等に関する療育指導を行うこと

(6)児童福祉施設に対する栄養 衛生面での助言や指導を行うこと

□ 19.都道府県および指定都市は、都道府県・指定都市児童福祉審議会その他の合議制の機関を設置しなければならない。

都道府県には都道府県児童福祉審議会その他の合議制の機関を設置する義務があり、指定都市には指定都市児童福祉審議会その他の合議制の機関を設置する義務があります。市町村および特別区の設置は任意です。また、国には児童福祉を含む社会保障全体の主要事項について審議を行う社会保障審議会が設置されています。

□ 20.家庭支援専門相談員の業務の一つとして、里親委託推進があります。

家庭支援専門相談員は、保護者などに対し、児童の家庭復帰後の相談や養育指導などの業務を取り扱っているほか、里親委託推進のための業務なども取り扱っています。

家庭支援専門相談員には、社会福祉士もしくは精神保健福祉士の資格を有する者、児童養護施設等において児童の指導に5年以上従事した者などの要件が設けられています。

家庭支援専門相談員の主な業務内容

(1)保護者等への対象児童の早期家庭復帰のための相談援助業務

(2)退所後の児童に対する継続的な相談援助

(3)里親委託推進のための業務

(4)養子縁組推進のための業務

(5)地域の子育て家庭に対する育児不安解消のための相談 支援

(6)要保護児童の状況の把握や情報交換を行うための協議会への参画

(7)施設職員への助言・指導および処遇会議への出席

(8)児童相談所等関係機関との連絡・調整

家庭支援専門相談員は、乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設に配置される。

□ 21.障害児相談支援には、障害児支援利用援助と継続障害児支援利用援助の2種類があります。

障害児支援利用援助では、利用する障害児通所支援の種類および内容などを記載した障害児支援利用計画を作成します。

継続障害児支援利用援助では、障害児通所支援の利用状況を検証し、その結果や障害児の心身状況などを踏まえ、障害児支援利用計画の見直し、必要に応じて障害児支援利用計画の変更などを行います。

□ 22.障害児入所施設は、児童福祉施設の一つです。

児童福祉法に基づく児童福祉施設には、助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センターの11種類があります。

障害児入所支援は、障害児入所施設や指定医療機関に入所・入院する障害児に対し、保護、日常生活の指導、知識技能の付与をすることや、知的障害児、肢体不自由児、重症心身障害児に対して治療を行う。

児童福祉のサービス

□ 23.児童福祉施設の利用方法は、利用方式、選択利用方式、契約利用方式、措置に分かれています。

児童福祉施設の利用方法

利用方式は、児童厚生施設、児童家庭支援センター

選択利用方式は、保育所、母子生活支援施設、助産施設

契約利用方式は、障害児入所施設、児童発達支援センター

措置は、乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設

□ 24.認定こども園は、保育と教育を一体的に提供する施設です。

認定こども園は、文部科学省管轄の幼稚園の機能と、厚生労働省管轄の保育所の機能を併せ持った施設で、幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地域裁量型という4つの種類があります。

□ 25.2004(平成16)年の児童福祉法の改正によって、小児慢性特定疾患治療研究事業が法定化されました。

小児慢性特定疾患治療研究事業では、小児慢性疾患のうち、特定の11疾患群(514疾患)については、その治療の確立と普及を図るとともに、医療費の自己負担分を補助しています。

小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患群

(1)悪性新生物(2)慢性腎疾患(3) 慢性呼吸器疾患(4) 慢性心疾患(5)内分泌疾患(6)膠原病(7) 糖尿病(8) 先天性代謝異常(9)血友病等血液・免疫疾患 (10) 神経・筋疾患(11) 慢性消化器疾患患

対象は、18歳未満の児童と、引き続き治療が必要であると認められる20歳未満の者である。

□ 26.家庭的保育事業は、保育に欠ける乳幼児を、家庭的保育者の居宅等において保育する事業です。

家庭的保育事業は、保育に欠ける乳幼児を、保育士等一定の要件を満たす者を市町村長が認定した家庭的保育者の居宅等において保育する事業です。

□ 27.里親制度の里親の種類には、養育里親、専門里親、親族里親、養子縁組里親があります。

里親とは、保護者のない児童または保護者に監護されることが不適当であると認められる児童を養育することを希望する者であって、都道府県知事が適当と認める者です。

里親の種類

養育里親は、要保護児童を養育することを希望する心身ともに健全な者であって、厚生労働省が行う養育里親研修を修了し、経済的に困窮していない者

専門里親は、養育里親のうち3年以上の委託児童の養育経験を有するなどの要件を満たす者

親族里親は、要保護児童の両親等が死亡・行方不明等のため、両親等による養育が期待されない場合に、里親として認定された、要保護児童の扶養義務者およびその配偶者である親族

養子縁組里親は、養子縁組を前提として、家庭で暮らすことのできない子どもを養育する者

□ 28.2008(平成20)年に児童福祉法が改正されて、小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)が規定されました。

小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)とは、要保護児童を里親等の経験豊かな養育者がその住居において養育を行う事業で、社会福祉法の第二種社会福祉事業です。

□ 29.障害児通所支援には、児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援があります。

障害児通所支援には、児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援の4種類があります。

児童発達支援は、障害児につき、児童発達支援センターなどに通わせ、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練などを行う

医療型児童発達支援は、肢体不自由のある児童に対し、指定医療機関に通わせ、児童発達支援や治療を行う

放課後等デイサービスは、学校教育法に規定する学校(幼稚園と大学を除く)に就学している障害児に対し、授業終了後や休業日に児童発達支援センターなどに通わせ、必要な訓練、社会との交流の促進などを行う

保育所等訪問支援は、保育所などに通う障害児に対し、当該施設を訪問し、集団生活への適応のための専門的な支援などを行う

児童福祉をめぐる問題

□ 30.次世代育成支援対策推進法は、2015(平成27)年3月までの時限立法であったが、改正により、2025(平成37)年3月まで10年間延長されました。

次世代育成支援対策推進法では、次世代育成支援対策について、国に対して行動計画策定指針を策定すること、地方公共団体および事業主に対して行動計画を策定すること等の措置を講ずることとしています。

次世代育成支援対策推進法の基本理念には、保護者が子育てについての第一義的な責任を有すると規定されている。

□ 31.小・中学校における長期欠席者のうち不登校を理由とする児童生徒数は、約11万3千人です。

長期欠席者とは、翌日以上の欠席者のことをいいます。2012(平成24)年度の長期欠席者のうち不登校を理由とする児童生徒数は約11万3千人で、その内訳は小学校が約2万1千人、中学校が約9万1千人となっています。

□ 32.児童相談所における相談を種類別にみると、障害相談が最も多い。

児童相談所における相談の種類

障害相談45.6%、養護相談30.4%、育成相談13.6%、非行相談4.3%、保健相談0.7%

□ 33.児童相談所における児童虐待の相談件数は増加しています。

児童相談所における児童虐待の相談(対応)件数は、統計を取り始めた1990(平成2)年度は1,101件であったが、2012(平成24)年度は6万6,701件にまで増加しています。

□ 34.児童虐待を種類別にみると、身体的虐待が最も多くなっています。

児童相談所における児童虐待の相談種類別対応件数

身体的虐待35.4%、ネグレクト28.9%、心理的虐待33.6%、性的虐待2.2%

□ 35.児童虐待を被虐待者の年齢別でみると、小学生が最も多くなっています。

被虐待者の年齢別対応件数

0~3歳未満18.7%、3歳~学齢前24.7%、小学生35.2%、中学生14.1%、高校生・その他7.2%

18.就労支援サービス

雇用に関する基礎知識

□ 1.日本国憲法第28条は、労働三権を保障しています。

日本国憲法第28条が保障している労働三権とは、労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権です。

日本国憲法第28条

「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」

□ 2.労働力人口とは、15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたものをいう。

労働力調査(総務省)では、労働力人口、就業者、休業者などについて定義しています。

15歳以上の人口(就業者+完全失業者)=労働力人口

就業者=従業者+休業者

*従業者とは、調査週間中に収入を伴う仕事に1時間以上従事した者(無給の家族従業者を含む)をいう

完全失業者:3つの要件を満たす者

(1)仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった

(2)仕事があればすぐ就くことができる

(3)調査週間中に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた

□ 3.lLO第89回総会事務局長報告では「ディーセント・ワークの欠損を減らすための世界的な課題」が提案され、政労使の支持を得た。

ディーセントとは、衣食住の点で満たされ、見苦しくない、品格がある、きちんとしたという意味です。権利が保障され、十分な収入を得、適切な社会的保護のある生産的な仕事に従事することをディーセント・ワークといい、適正労働と訳される。

ディーセント・ワークの欠損を生む要因は、雇用のギャップ、権利のギャップ、社会保障のギャップ、社会的対話のギャップ

□ 4.わが国では、労働三法によって安定的な労働を確保するという流れがあります。

わが国では、労働三法といわれる労働組合法、労働関係調整法、労働基準法によって安定的な労働を確保するという流れがあります。

障害者への就労支援

□ 5.障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)の目的は、障害者の雇用の促進と職業の安定を図ることです。

1960(昭和35)年制定された身体障害者雇用促進法は、1987(昭和62)年に改正されて障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)になった。その後、1997(平成9)年、2005(平成17)年、2008(平成20)年にも改正が行われています。

障害者雇用促進法の障害者の定義(第2条)

「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。」

□ 6.障害者雇用促進法に基づき、法定雇用率が規定されている。

法定雇用率

民間企業は、一般民間企業(50人以上規模の企業) 2.0%

国 地方公共団体は、国 地方公共団体(48人以上規模の機関) 2.3%、都道府県等の教育委員会(50人以上規模の機関) 2.2&

□ 7.法定雇用率の算定対象として、精神障害者保健福祉手帳を持っている精神障害者を加えることができるようになった。

法定雇用率の算定対象となるのは身体障害者と知的障害者であったが、2006(平成18)年4月からは、精神障害者保健福祉手帳を持っている精神障害者も加えることができるようになった。

□ 8.法定雇用率が未達成の事業主は、障害者雇用納付金を納付しなければならない。

雇用障害者数が法定雇用率を下回っている事業主は、不足する障害者数に応じて、1人につき月額5万円の障害者雇用納付金を納付しなければならない。

常用労働者200人超300人以下の事業主は2015(平成27)年6月まで、常用労働者100人超200人以下の事業主は2015(平成27)年4月から2020(平成32)年3月まで障害者雇用納付金の減額特例が適用され、納付金が4万円に減額される。

□ 9.法定雇用率を超えて障害者を雇用している事業主には、障害者雇用調整金が支給されます。

常時雇用している労働者数が200人を超える事業主で、法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合には、超えて雇用している障害者数に応じて1人につき月額2万7,000円の障害者雇用調整金が支給されます。

2015(平成27)年4月より、常用労働者100人超の事業主が対象となる。

□ 10.地域障害者職業センターは、高齢・障害者雇用支援機構が運営しています。

地域障害者職業センターは、各都道府県における中核的な職業リハビリテーション機関として、全国に52か所(本所47か所、支所5か所)設置されています。地域障害者職業センターには、障害者職業カウンセラーが配置されています。

低所得者への就労支援

□ 11.2005(平成17)年に、生活保護世帯に対する支援として自立支援プログラムが導入されました。

自立支援プログラムの目的は、生活保護世帯の経済的な自立、ひいては自己実現を可能にすることです。具体的には、就労阻害要因の有無、稼働の状況、就労意欲の有無により被保護者を4つのグループに分け、就労阻害要因のない者に対して就労支援プログラムを実施します。

自立支援プログラムの実施方法

(1)実施機関が管内の被保護世帯全体の状況を把握

(2)被保護者をグループ分け

グループ1 就労阻害要因あり

グループ2 就労阻害要因なし、稼働中・転職や増収が必要

グループ3 就労阻害要因なし、稼働していない・就労意欲あり

グループ4 就労阻害要因なし、稼働していない・就労意欲なし

(3)グループことに就労支援プログラムを実施

グループ1に対して、 就労支援プログラム対象外

グループ2、3に対して

就労支援員の支援により就労が見込まれる者には、就労支援プログラム

事業への参加に同意する稼働能力のある者には、ハローワークとの連携により支援する「生活保護受給者等就労支援事業」プログラム

対象者本人が自主的に求職活動を行う者等には、地区担当員援助プログラム

グループ4に対しては、就労意欲形成プログラム

□ 12.生活保護受給者等就労自立促進事業は、「福祉から就労」支援事業を発展させたものです。

生活保護受給者等就労自立促進事業は、ハローワークと自治体の協定等による連携を基盤にきめ細かいチーム支援を行っていた「福祉から就労」支援事業を発展させたものであり、2013(平成25)年度から就職困難・生活困窮者等を対象に実施されています。同事業では、福祉事務所にハローワークの常設窓口を設置することや、巡回相談を行うことなどによって、ハローワークと自治体とが一体となって就労支援体制の強化を図っています。

19.更生保護制度

更生保護制度の概要

□ 1.更生保護は、更生保護法に基づいて行われます。更生保護法の対象は、犯罪をした者と非行のある少年です。

更生保護は、2008(平成20)年に施行された更生保護法に基づいて行われます。更生保護法は、犯罪をした者と非行のある少年に対し、再び犯罪をすることを防ぎ、非行をなくし、社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに、犯罪予防の活動の促進等を行い、個人および公共の福祉を増進することを目的としています。

更生保護法第1条

「この法律は、犯罪をした者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、又はその非行をなくし、これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに、恩赦の適正な運用を図るほか、犯罪予防の活動の促進等を行い、もって、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とする。」

更生保護法は、1949(昭和24)年に制定されたり犯罪者予防更生法と、1954(昭和29)年に制定された執行猶予者保護観察法が、約60年ぶりの大改革として整理・統合される形で2007(平成19)年に成立し、2008(平成20)年6月から施行されている。

□ 2.更生保護法に規定されている更生保護の方法には、仮釈放等、保護観察、生活環境の調整、更生緊急保護があります。

更生保護の方法

仮釈放等は、矯正施設に収容されている者を収容期間の満了前に釈放して更生の機会を与え、円滑な社会復帰を図ろうとする処分の総称のこと

保護観察は、犯罪を行った者や非行少年に通常の社会生活を営ませながら、指導監督と補導援護を行い、改善更生を図ること

生活環境の調整は、矯正施設に収容されている者の円滑な社会復帰のために、家族関係者などに協力を求め、釈放後の生活環境が安定したものになるよう調整すること

更生緊急保護は、緊急避難的な保護を行うこと

□ 3.2013(平成25)年4月1日現在、全国の更生保護施設は104施設です。

全国に104施設ある更生保護施設の内訳は、男性施設が90施設、女性施設が7施設、男女施設が7施設です。

少年法の概要

□ 4.少年法では、非行のある少年に対して性格の矯正や環境の調整に関する保護処分等を行います。

少年法は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正や環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的としています。

少年法第1条

「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。」

20歳にみたない者を少年、満20戯上の者を成人、少年に対して法律上監護教育の義務ある者および少年を現に監護する者を保護者といいます。

□ 5.少年院に収容できる年齢は、おおむね12歳以上です。

2007(平成19)年に施行された改正少年法によって、少年院に収容できる年齢が、14歳以上からおおむね12歳以上に引き下げられました。

□ 6.少年法は、非行少年を犯罪少年、触法少年、虞犯少年の3種類に分けています。

14歳以上20歳未満の罪を犯した少年を犯罪少年、14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年を触法少年、一定の虞犯事由があり、性格や環境から、将来、罪を犯したり刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年を虞犯少年といいます。

虞犯少年の一定の虞犯事由

(1)保護者の正当な監督に服しない性癖のあること

(2)正当な理由がなく家庭に寄り付かないこと

(3)犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際し、またはいかがわしい場所に出入りすること

(4)自己または他人の徳性を害する行為をする性癖のあること

□ 7.非行少年は、家庭裁判所送致の対象となっています。

非行少年は家庭裁判所へ送致されるが、審判不開始と不処分が大半を占めます。更生保護の対象である保護観察となる者は、保護観察処分少年と少年院仮退院者です。

更生保護の具体的な方法

□ 8.仮出場を許された者は、保護観察には付されない。

仮釈放には、刑事施設からの仮釈放、少年院からの仮退院、婦人補導院からの仮退院、労役場留置からの仮出場があります。仮釈放・仮退院を許された者には保護観察が付されるが、仮出場を許された者には保護観察が付されることはない。

□ 9.保護観察を行う保護観察所は地方裁判所の管轄区域ごとに置かれ、保護観察官が配置されています。

保護観察の対象者には、5種類がある。

保護観察の対象者の種類

1号観察は、家庭裁判所より保護観察処分とされた少年

2号観察は、少年院から仮退院を許された少年

3号観察は、刑務所に収容された後、仮釈放を許された者

4号観察は、執行猶予となり期間中保護観察に付された者

5号観察は、婦人補導院から仮退院を許された者

□ 10.保護観察は、指導監督と補導援護から成り立っています。

指導監督は、対象者に対して権力的・監督的な性格を有する。

補導援護は、対象者に対して援助的・福祉的な性格を有する。

指導監督と補導援護の方法

指導監督は、(1)面接等で保護観察対象者と接触を保ち行状を把握する (2)対象者が遵守事項を守り、生活行動指針に即して生活行動をするよう、必要な支持等を行う (3)特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇を実施する

補導援護は、(1)適切な住居等を提供し帰住するように助ける (2)医療および療養を受けることを助ける (3)教養訓練の手段を得ることを助ける (4)生活環境の改善および調整をする (5)社会生活に適応させるために必要な指導を行う (6)保護観察対象者が健全な社会生活を営むために必要な助言等を行う

□ 11.収容中の者に対する生活環境の調整は、保護観察官または保護司が行います。

生活環境の調整を行う際は、対象者に対して調整を行う事項を示したうえで、書面により同意を求めるものとされています。

□ 12.更生緊急保護は、対象者の意思に反しない場合に限り行うことになっています。

更生緊急保護は、対象者が刑事事件上の手続きまたは保護処分による身体の拘束を解かれた後、6か月を超えない範囲内において行うものとされています。

更生緊急保護の主な内容

(1)金品を給与または貸与する (2)宿泊場所を供与する (3)宿泊場所への帰住を助ける (4)医療または療養を助ける (5)就職を助ける (6)教養訓練を助ける (7)職業を補導する (8)社会生活に適応させるために必要な生活指導を行う (9)生活環境の改善または調整を図る

□ 13.法務大臣が定める処遇プログラムには、3つの種類があります。

(1)性犯罪をした仮釈放者および保護観察付執行猶予者を対象としたもの→性犯罪者処遇プログラム

(2)覚せい剤事犯者のうち一定の仮釈放者および保護観察付執行猶予者を対象としたもの→覚せい剤事犯者処遇プログラム

(3)傷害、暴行等の暴力犯罪をした仮釈放者および保護観察付執行猶予者を対象としたもの→暴力防止プログラム

更生保護制度の担い手

□ 14.保護観察官は、保護観察所と地方更生保護委員会事務局に配置されています。

保護観察官は、常勤の国家公務員です。保護観察所に所属する保護観察官の主要業務は保護観察で、地方更生保護委員会事務局に所属する保護観察官の主要業務は、犯罪をした者および非行のある少年の更生保護です。

□ 15.保護司は、保護司法に基づき法務大臣が委嘱しています。

保護司は非常勤の国家公務員であるが、社会奉仕の精神をもって個人及び公共の福祉に寄与することを使命とし、給与は支給されない。任期は2年で、再任は妨げないことになっています。

□ 16.保護司の定数は、保護司法の規定により、全国で5万2,500人以内とされています。

保護司の定数は,保護司法により5万2,500人を超えないものと定められているところ,その人員は,元年は4万8,338人であり,16年に平成期のピークの4万9,389人となり,その後減少傾向となり,31年は4万7,245人となって平成期で最少を記録した。

医療観察制度の概要

□ 17.医療観察法の目的は、心神喪失または心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った者の社会復帰の促進です。

2003(平成15)年に制定された医療観察法の正式名称は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」です。

医療観察法第1条第1項

「この法律は、心神喪失等の状態で重大な他害行為(他人に害を及ぼす行為をいう)を行った者に対し、その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより、継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することを目的とする。」

□ 18.医療観察法の制定によって、社会復帰調整官が新設された。

医療観察法が制定されたことによって、社会復帰調整官が新設され、保護観察所に配置されることになった。

□ 19.社会復帰調整官は、保護観察所で医療観察制度にかかる業務に従事しています。

社会復帰調整官の医療観察制度にかかる業務には、生活環境の調査、生活環境の調整、処遇の実施計画の策定、精神保健観察などがあります。

精神保健観察の目的は、地域において継続的な医療を確保することである。

□ 20.医療観察法が制定されるまでは、精神保健福祉法に基づく措置入院制度等により処遇が行われています。

医療観察法が制定されるまでは、心身喪失等の状態で重大な他害行為を行った精神障害者については、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(精神保健福祉法)に基づく措置入院制度等により処遇が行われていたが、医師に過剰な責任を負わせているなどの問題が指摘されていた。

社会福祉士試験 重要項目 らくらく丸暗記BOOK

2022年3月28日 発行 初版

著  者:上野和夫
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上野和夫

「資格試験のペネトレイト」で医療・介護・福祉の仕事に携わる方に必須の資格取得のお手伝いをしています。 私は、薬剤師、社会福祉士、介護支援専門員の免許を持っていますが、現在は薬剤師の仕事に従事しています。 資格試験合格のノウハウは1つ、シンプルな学習が大切、そのための教材を公開しています。 ホームページ「資格試験のペネトレイト」http://penetrateblog.com/に教材の販売コーナーと無料の問題集を集めた棚を提供しています。 私と一緒に資格試験合格を目指しましょう。

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