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衛生管理者資格試験 重要項目 らくらく丸暗記BOOK

上野和夫

ペネトレイト



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衛生管理者試験 重要項目 らくらく丸暗記BOOK
ー試験合格には「重要項目を正しい覚える」ことが大切!ー
本書について


本書は、衛生管理者試験の筆記試験によく出題される事項を集めています。


毎年出題される問題の半数以上は過去に出されている内容と同じです。衛生管理者試験の合格ラインは6割以上の正解です。過去の問題をしっかり理解していると、6割以上の点数を取ることができます。ただ、注意しないといけないのは、同じ文章で問いかけているとはかぎらないです。そこで大切なのは、短い文章で正しい内容をしっかりと覚えることが大切です。


短い文章ですので、毎日50の文章を覚えると1月ですべて暗記できます。
読むことにあわせて、耳を使っての短文記憶の努力をされると、さらに短い日数でしっかり暗記することができます。


付属教材として音声テキストを準備していますのでご利用ください。


あとは過去問題集を手に入れて解いてみましょう。問題はスラスラ解けるような感じがします。出題者のワナにはまることがなくなるまで繰り返し過去問題を解いてください。


当社のホームページ(http://penetrateblog.com/)に問題を集めた本棚を準備しています。無料で利用できますので、ぜひトライしてください。すべての問題で合格(7割以上正解で合格)できたら試験に合格できると思います。







目次

本書につて
衛生管理者・労働生理1
衛生管理者・労働生理2
衛生管理者・労働生理3
衛生管理者・労働生理4
衛生管理者・労働生理5
衛生管理者・労働生理6
衛生管理者7
衛生管理者8
衛生管理者9
衛生管理者10
衛生管理者11
衛生管理者12
衛生管理者13
衛生管理者14
ガイダンス

衛生管理者 第1種・第2種 1-1労働生理


血液・循環器系


▢ 1.血液の成分


血液はその約45%が有形成分(血球)で、残りの約55%が液体成分(血漿)からなる。
有形成分(血球)約45%:赤血球、白血球、血小板
液体成分(血漿)約55%:水分(約90%)、タンパク質(約7%)、その他


▢ 2.赤血球


赤血球は、体に酸素を供給する役割を果たす。赤血球中に含まれるヘモグロビンが肺で酸素を受け取り、体の各組織に運搬する。赤血球はほかの血球同様、骨髄(骨の内部)で産生され、その寿命は約120日である。また、血液の容積に対する赤血球の相対的容積をヘマトクリットといい、男性で約45%、女性で約40%と男女で差がある。


▢ 3.白血球


白血球は、体内に侵入した細菌や異物から生体を防御する役割を果たす。白血球には好中球やリンパ球などの種類がある。好中球は、アメーバのような動きをして細菌や異物を取り込む。リンパ球は免疫反応に関与しており、細菌や異物を認識して直接攻撃するTリンパ球や、抗体を産生して細菌や異物を攻撃するBリンパ球などがある。白血球の寿命は、種類によって異なるが一般に、赤血球の寿命より短い。


▢ 4.血小板


血小板は、出血した際に止血の役割を果たす。血管が破壊されると血小板が集まり、その損傷箇所に粘着して止血を行う。また、血漿中の成分とともに働いて、血液を凝固させる働きもある。


▢ 5.血漿


血漿とは血液の液体成分をいい、その約90%は水分で、約7%が蛋白質となっている。蛋白質にはアルブミン、グロブリン、フィブリノーゲンの3種類が含まれる。
●アルブミン:血液浸透圧を維持する役割を果たす
●グロブリン:免疫物質の抗体を含み、免疫反応に作用する(特にγ‐グロブリン)
●フィブリノーゲン:血液の凝固に関与する


▢ 6.血液の凝固


血液の凝固とは、血漿中のフィブリノーゲン(線維素原)がフィブリン(線維素)に変化する現象をいう。


▢ 7.血液の凝固が起こるまで


①出血して、血液が空気に触れる。→②血小板が、血液の凝固を促進させる物質(酵素)を放出する→③②の酵素が血液中のフィブリノーゲンに作用する。→④フィブリノーゲンがフィブリンに変化する。→⑤フィブリンが血球にからまって血液が凝固する


▢ 8.血液の凝集反応


血液の凝集とは、赤血球が互いに集合することをいい、赤血球中の凝集原と、血清(血漿からフィブリノーゲンを除いたもの)に含まれる凝集素との反応によって起こる。例えばA型の血液の場合、赤血球中の凝集原は「A」、血清に含まれる凝集素は「抗B」となる。この「A」「抗B」のように文字が異なっていれば血液の凝集は起こらない。しかし、B型の血液の場合は凝集原が「B」、凝集素が「抗A」なので、血液型がA型の人にもしB型の血液を輸血すると、同じ文字の凝集原と凝集素が混じり合うため血液の凝集反応が起こってしまう。


▢ 9.心臓の構造


心臓は、左心房・左心室・右心房・右心室の4部屋に分かれており、左心房には肺静脈、左心室には大動脈、右心房には大静脈、右心室には肺動脈がつながっている。動脈とは心臓から出ていく血液が通る血管をいい、静脈とは心臓に戻ってくる血液が通る血管をいう。


▢ 10.心筋


心臓は心筋という特殊な筋肉でできている。
心筋は、内臓筋でありながら平滑筋ではなく、横紋筋であっても自由に動かせない(意志と無関係に動く)不随意筋である点で特殊といえる。心臓は、心筋の自律的な収縮と拡張によって拍動する。


▢ 11.冠状動脈


心臓は血液を全身に送り出すポンプの役割を果たすが、心臓自体は冠状動脈という血管から、酸素や栄養素の供給を受けている。冠状動脈は、大動脈起始部(大動脈が心臓から出たすぐのところ)から分かれている。


▢ 12.肺循環と体循環


心臓から出た血液が体内を循環する道筋には、肺循環と体循環の2つがある。


▢ 13.肺循環


右心室から肺動脈を経て肺の毛細血管に入り、肺静脈を通って左心房に戻る血液の循環をいう。この間に肺で二酸化炭素を排出し、酸素を取り入れる。


▢ 14.体循環


左心室から大動脈に入り、肺を除く各組織の毛細血管を通過して、右心房に戻ってくる血液の循環をいう。この間に全身の各組織に酸素を供給し、二酸化炭素を受け取る。


▢ 15.動脈血と静脈血


酸素を多く含んだ血液を動脈血といい、逆に、酸素が少なく二酸化炭素を多く含んだ血液を静脈血という。例えば、肺静脈を通って心臓に戻る血液は、肺で酸素を受け取ったばかりなので、酸素に富んだ動脈血である。これに対し、肺動脈を通って肺へ向かう血液は、二酸化炭素を多く含むため静脈血である。肺循環ではこのように、肺静脈に動脈血が流れ、肺動脈に静脈血が流れていることに注意する。


呼吸器系


▢ 16.呼吸器官


呼吸(外呼吸)をするために発達した器官を呼吸器官という。ヒトの場合、鼻(鼻腔)と口から気管、気管支、肺へとつながっている。気管は、軟骨でできたじょうぶな管で、次々に枝分かれして気管支となる。気管支はさらに細かく枝分かれし、その先端に肺胞と呼ばれる無数の小さな袋が付いている。肺胞は薄い膜でできており、そのまわりを毛細血管が網の目のように取り巻いている。この肺胞と毛細血管との間で、酸素と二酸化炭素のガス交換が行われる。


▢ 17.ガス交換


全身の細胞が生きていくためには、酸素をたえず取り入れ、二酸化炭素を排出する必要がある。このような、酸素と二酸化炭素のやりとりをガス交換という。肺胞を取り巻く毛細血管では、肺胞内の空気から血液へ酸素が取り入れられるとともに、血液から肺胞内へ二酸化炭素が排出されている。


▢ 18.外呼吸と内呼吸


体外から酸素を取り入れ、二酸化炭素を体外へ排出するガス交換の働きを外呼吸という。肺などの呼吸器官を通して行うため肺呼吸とも呼ぶ。これに対し、全身の組織を構成する細胞と血液との間では、組織液を通してガス交換を行っている。組織におけるこのような呼吸を内呼吸、または細胞呼吸という。


▢ 19.呼吸運動


前方の胸骨、後方の胸椎、その間の肋骨で囲まれた籠状の骨格を胸郭という。胸郭内の空間を胸腔といい、この中に肺や心臓などがある。肺には筋肉がないため、主として肋間筋(肋骨をつなぐ筋肉)と横隔膜の協調運動によって胸郭内容積を周期的に増減し、これに伴い肺を伸縮させることで呼吸運動を行っている。


▢ 20.呼気と吸気


胸郭内容積が増加し、内圧が低くなるにつれ、鼻腔や気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気を吸気という。吸気は、呼吸にたずさわる肋間筋や横隔膜などの筋肉(呼吸筋という)の働きにより流れ込む。これに対し、肺から気道を経て鼻や口から体外に吐き出される空気を呼気という。呼気は筋肉を用いず、ふくらんだ肺がしぜんにもとに戻ろうとする力によって吐き出される。


▢ 21.呼吸と血液


外呼吸(肺呼吸)によって血液中に取り込まれた酸素は、赤血球中のヘモグロビンと結合して全身の組織(細胞)ヘと運ばれる。細胞では、この酸素を利用して栄養分(ブドウ糖)を分解し、エネルギーを取り出している。このときに不要な二酸化炭素ができる。二酸化炭素もまた、血液によって肺に運ばれ、体外に排出される。


▢ 22.呼吸中枢


呼吸に関与する筋肉は、延髄にある呼吸中枢によって支配されている。身体活動時には血液中の二酸化炭素の濃度が上昇し、血液が酸性に傾く(pHの値が下がる)。すると呼吸中枢が刺激され、呼吸数が増加し、肺でのガス交換量が多くなる。こうして二酸化炭素が体外に排出され、血液中の濃度が下がる(pHの値が上がる)。なお、呼吸中枢がその興奮性を維持するためには、常に一定量以上の二酸化炭素が血液中に含まれている必要がある。


▢ 23.呼吸数と1回換気量


1分間における呼吸の数を呼吸数という。成人の呼吸数は通常、16~20回だが、運動や食事、入浴、発熱によって増加する。また、安静時に1回の呼吸で出入りする空気(呼気と吸気)の量を1回換気量といい、成人男子で約500mlである。























衛生管理者 第1種・第2種 1-2 労働生理


消化器系


▢ 1.糖質


炭水化物から食物繊維を除いたものを糖質という。栄養素のうち、エネルギー源として最も重要なものであり、1日に摂取するエネルギーの約60%を占める。糖質は、果実や甘味料に含まれる単糖類 少糖類と、穀類やイモ類などに含まれるデンプンなどの多糖類に分類されるが、アミラーゼなどの消化酵素の働きによって消化された糖質は、すべてブドウ糖(グルコース)などの単糖類となって体内に吸収される。また、摂取後すぐに利用されない糖質は、肝臓や筋肉でグリコーゲンや脂肪に変化して蓄えられる。


▢ 2.蛋白質


蛋白質は、約20種類のアミノ酸が結合したもので、内臓、筋肉、皮膚などを構成する主成分となる。蛋白質を構成するアミノ酸のうちの9種類は体内で合成できず、体外から摂取しなければならない。これを必須アミノ酸という。蛋白質は、胃液に含まれるペプシン、膵液に含まれるトリプシンなどの消化酵素の働きによってアミノ酸に分解され、体内に吸収される。血液循環に入ったアミノ酸は、体内の各組織において蛋白質に再合成される。


▢ 3.脂質


脂質には、中性脂肪、コレステロールなどがあり、食品に含まれる脂質のほとんどは中性脂肪である。食物中の脂肪は十二指腸で胆汁と混合して乳化された後、リパーゼという消化酵素の働きによって脂肪酸とグリセリンに分解される。中性脂肪は、エネルギー源として1g当たり9kcalを生み出す。利用されなかった中性脂肪は、体脂肪として蓄えられ、内臓を保護したり体熱の発散を防いだりする。


▢ 4.消化のための器官


分子の大きな栄養素を、体内で吸収できる、分子の小さな物質に分解する働きを消化という。消化の働きをする器官を消化器といい、食物が通る消化管と、消化液を出す肝臓や膵臓などからなる。
消化管は、口→食道→胃→十二指腸→小腸→大腸→肛門 とつながっている。


▢ 5.消化酵素


消化は、消化液中に含まれる酵素(消化酵素)によって行われる。消化酵素は、特定の栄養分にだけ作用する。


▢ 6.消化液と主な消化酵素


口は、唾液を分泌する。唾液に含まれるアミラーゼはデンプンを麦芽糖などに分解する。
胃は、胃液を分泌する。胃液に含まれるペプシンはタンパク質をペプトンなどに分解する。
十二指腸は、膵液を分泌する。膵液に含まれる膵アミラーゼはデンプンをなどを麦芽糖に分解する。膵液に含まれるトリプシンはペプトンなどをポリペプチドに分解する。膵液に含まれるリパーゼは脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解する。胆汁は消化酵素ではないが、脂肪を小さな粒に分解(乳化作用)し、その消化を助ける。
小腸は、腸液を分泌する。腸液に含まれるマルターゼは麦芽糖をブドウ糖に分解する。腸液に含まれるペプチダーゼはポリペプチドをアミノ酸に分解する。


▢ 7.栄養素の吸収


食物中の栄養素は、消化管を通過する間に分解されて吸収可能な形に変えられると、小腸でその多くが吸収される。小腸の内壁(腸壁)にはひだがあり、その表面は絨毛と呼ばれる無数の小さな突起で覆われている。この構造によって腸壁の表面積が広くなり、栄養素を効率よく吸収できる。絨毛には毛細血管とリンパ管が分布しており、これらに栄養素の最終分解物が取り込まれ、体内へと運ばれる。


▢ 8.最終分解物が吸収される場所


糖質(ブドウ糖)と蛋白質(アミノ酸)は小腸の毛細血管から吸収される。
脂質(脂肪酸とグリセリン)は小腸のリンパ管から吸収される。


▢ 9.ミネラル


体を構成する元素のうち、炭素、水素、酸素、窒素以外の元素を総称してミネラル(無機質、無機塩)という。主なものにカルシウム、ナトリウム、鉄、マグネシウム、カリウムがある。分解されず、腸壁からそのまま吸収され、骨や歯、血液、臓器などの構成成分となるほか、体調を整える働きもある。


▢ 10.ビタミン


脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)と水溶性ビタミン(ビタミンB群およびC)に分けられる。どちらも分解されず、腸壁からそのまま吸収され、体調を整える働きをする。糖質、蛋白質、脂質、ミネラル、ビタミンの5つを5大栄養素と呼ぶ。


▢ 11.肝臓


ヒトの肝臓は、横隔膜のすぐ下にあり、成人で約1kg以上にもなる大きな器官である。肝臓には多くの働きがあり、細かいものまで含めると500種類以上に及ぶといわれる。


▢ 12.肝臓の機能


【糖質に関わるもの】
グリコーゲンの合成と分解:ブドウ糖をグリコーゲンに変えて蓄えるとともに、必要に応じて、再びブドウ糖に分解して血液中に放出する。


【蛋白質に関わるもの】
アミノ酸からさまざまな蛋白質を合成する:血漿蛋白質のアルブミンやフィブリノーゲンも肝臓で合成される。なお、フィブリノーゲンは血液凝固物質であるが、血液凝固阻止物質であるヘパリンも肝臓で生成されている。


【脂質に関わるもの】
胆汁をつくる:脂肪の消化を助ける胆汁は、肝臓で生成され、いったん胆嚢という袋に蓄えられてから十二指腸に分泌される。
脂肪酸の合成と分解:肝臓では脂肪酸の合成と分解のほか、コレステロールの合成も行っている。


▢ 13.肝臓の機能


赤血球の分解:赤血球は、骨髄(骨の内部)で産生され、寿命を迎えて古くなったものは、肝臓で分解されて胆汁中に送り込まれる。
有害な物質の無毒化:肝臓は、血液中の有害な物質を分解し、解毒する機能をもつ。また、蛋白質が分解されて生じるアンモニアも有害な物質であり、肝臓で、害の少ない尿素につくり変えられる。
アルコールの分解:アルコールをアセトアルデヒドに分解し、さらに酢酸につくり変える。
糖新生を行う:絶食時など飢餓状態に陥った場合は、アミノ酸や脂質など糖質以外の物質からブドウ糖を合成し、血液中に供給する。


泌尿器系


▢ 14.泌尿器系の役割


腎臓、尿管(輸尿管)、膀洸などからなり、尿の分泌と排泄を行う器官を泌尿器という。有害なアンモニアは、肝臓で害の少ない尿素につくり変えられ、腎臓に送られてくる。
尿素は体にとって不要な物質であり、腎臓ではこれら不要な物質を血液中から濾し出す。これが尿であり、尿は尿管を通って膀胱に蓄えられ、やがて体外に排泄される。このように、尿の生成と排出により、生命活動によって生じた不要な物質を排泄するとともに、体内の水分の量やナトリウムなどの電解質の濃度を調節することが泌尿器系の役割である。


▢ 15.腎臓


腎臓は、背中側の腰の上部に左右1個ずつあるソラマメのような形をした臓器で、大きさは握り拳ほどである。腎臓1個の中には、ネフロンと呼ばれる単位構造が約100万個ある。ネフロンは尿を生成する1個の腎小体と、それに続く1本の尿細管(尿管と混同しないよう注意)からなる。


▢ 16.腎小体


腎小体は、毛細血管が毛糸玉のように集まった糸球体と、糸球体を包み込む袋のようなボウマン嚢(ボーマン嚢)からなる。尿素などの不要物を含む血液が糸球体に運ばれてくると、ボウマン嚢によってろ過される。こうして濾し出されたものを原尿という。ただし、濾し出されるのは尿素などの不要物のほか水分、電解質(塩分など)、栄養分(糖など)であり、血液中の血球および蛋白質は濾し出されない。


▢ 17.尿細管


腎小体に続く尿細管では、原尿に含まれる大部分の水分、電解質(塩分など)、栄養分(糖など)が血液中に再吸収される。これにより、体内の水分の量や電解質の濃度が調節される。原尿のうち、尿細管で再吸収されなかった成分が尿となり、腎孟(腎臓と尿管の接続部分)から尿管を経て膀胱に送られ、やがて体外に排泄される。


▢ 18.尿の成分


尿の成分は約95%が水分で、残りの約5%が固形物である。尿の比重は、水分摂取量が多いと小さくなる。また、健康な状態の尿は弱酸性を示す。


▢ 19.泌尿器系の疾患


尿の成分は全身の健康状態をよく反映するので、健康診断などでは尿検査が広く行われている。主な検査項目に次のものがある。


①尿蛋白
蛋白質は、通常はほとんど尿に含まれないが、腎臓の機能が低下すると尿中に漏れ出してしまう。尿蛋白が陽性の場合は腎臓、膀胱、尿道の病気などが疑われる。
②尿糖
血液中の糖濃度がある値を超える(高血糖)と、再吸収しきれなくなり、尿中に漏れ出してくる。ただし、高血糖を伴わない場合でも腎臓の再吸収の障害(腎性糖尿)などで尿糖が陽性になる場合もあるため、体質的な腎性糖尿と糖尿病との鑑別が必要である。
③尿素窒素(BUN)
血液中の尿素に含まれる窒素成分を尿素窒素(BUN)という。腎臓の機能が低下すると、その数値が高くなる。












 







衛生管理者 第1種・第2種 1-3 労働生理


内分泌系


☐ 1.ホルモンと内分泌器


ホルモンとは、体内の特定の器官で分泌され、血液などを通して体内を循環し、他の特定の組織の機能に一定の影響を与える化学物質の総称である。ホルモンを分泌する器官を内分泌器(内分泌腺)といい、主なものとして視床下部や下垂体、甲状腺、副甲状腺、膵臓のランゲルハンス島、副腎、精巣(男性)、卵巣(女性)が挙げられる。


☐ 2.各ホルモンの働き


ヒトの主な内分泌器(内分泌腺)ごとに、分泌される主なホルモンとその働きを次にまとめる。
①視床下部
成長ホルモン放出ホルモン:成長ホルモンを分泌させる
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH):副腎皮質刺激ホルモンを分泌させる
②下垂体(「脳下垂体」とも)
成長ホルモン:成長と発育を制御する
副腎皮質刺激ホルモン:副腎皮質ホルモンを分泌させる
甲状腺刺激ホルモン:甲状腺ホルモンを分泌させる
③甲状腺
甲状腺ホルモン:代謝機能を正常に保つ
カルシトニン:カルシウムを減少させるよう調節する
④副甲状腺
副甲状腺ホルモン(パラソルモン): カルシウムを増加させるよう調節する
⑤副腎皮質
コルチゾール:血圧と血糖量を上げる
アルドステロン:塩類のバランスを調節する
⑥副腎髄質
ノルアドレナリン:心拍数と血圧を上げる
アドレナリン:心拍数と血圧、血糖量を上げる
⑦膵臓のランゲルハンス島
インスリン:血糖量を下げる
グルカゴン:血糖量を上げる
⑧精巣・卵巣
テストステロン(精巣): 男性器の発達を制御する
エストロゲン(卵巣) :女性器の発達を制御する


☐ 3.副腎


副腎は、腎臓の上方に存在する2~3cmの小さな器官で、90%の皮質が10%の髄質を取り囲む形で構成されている。
副腎皮質からはコルチゾール、アルドステロンなどの副腎皮質ホルモン、副腎髄質からはアドレナリンなどの副腎髄質ホルモンを分泌する。


☐ 4、膵臓


膵臓は、消化酵素を分泌する外分泌腺が90%以上を占め、その中に浮かぶ島のようにランルゲハンス島が存在している。ランゲルハンス島には、α細胞とβ細胞があり、血糖量が低いときはα細胞からグルカゴンが分泌されて血糖量を上げ、血糖量が高いときはβ細胞からインスリンが分泌されて血糖量を下げる。肥満になるとインスリンの働きが鈍り、糖尿病(高血糖)を発症しやすくなる。


感覚器系


☐ 5、眼の構造


ヒトの眼は、物体からの光を水晶体(レンズ)で屈折させ、網膜に像を結ばせることによって光の刺激を受け取る。網膜には、光の刺激を受け取る感覚細胞(視細胞)が並んでいる。


☐ 6.虹彩


ヒトの眼は、まわりの明るさに合わせ、虹彩が伸びたり縮んだりすることによって眼に入る光量を調節している。瞳孔は、まわりが明るいときは虹彩が伸びて狭まり、暗いときは虹彩が縮んで広がる。


☐ 7.水晶体(レンズ)


水晶体(レンズ)は、水と蛋白質などからできており、網膜でピントが合うよう厚さを調節している。近くを見るときは厚くなり、屈折率を大きくしてピントを合わせている。逆に、遠くを見るときは薄くなり、屈折率を小さくしてピントを合わせる。厚さの調節は、毛様体という筋肉の働きによって行われる。


☐ 8.近視と遠視


眼の角膜から網膜までの距離(眼球の長軸)を眼軸という。
眼軸が長すぎたり短すぎたりすると、網膜でピントが合わなくなり、これによって近視や遠視が生じる。
正視:眼軸の長さが標準で、平行光線が網膜上で像を結ぶ
近視:眼軸が長すぎるため、平行光線が網膜の手前で像を結ぶ
遠視:眼軸が短すぎるため、平行光線が網膜の後方で像を結ぶ


☐ 9.乱視


眼軸の長さに異常がなくても、角膜が歪んでいたり、表面に凹凸があったりして、物体の像が網膜上に正しく結ばれない状態を乱視という。


☐ 10.明順応と暗順応


暗い場所から明るい場所に急に出たとき、初めはまぶしく感じるが、やがて正常に戻ることを明順応という。一方、明るい場所から暗い場所に急に入ったとき、初めは見えにくいが、徐々に見えてくることを暗順応という。


☐ 11.錐状体と杆状体


網膜には、錐状体と杆状体という2種類の視細胞がある。
錐状体は、比較的明るいところで働き、色(赤、緑、青)の刺激に反応する。これに対し杆状体は、比較的暗いところで働き、明暗を知覚し、とても弱い光も捕らえる。


☐ 12.耳の構造


耳は、聴覚と平衡感覚をつかさどる器官で、外耳、中耳、内耳の3つの部分に分けられる。


☐ 13.外耳と中耳


外耳は、耳介と外耳道からなり、音を集める働きをする。
一方、中耳は鼓膜、鼓室、耳管および耳小骨からなる。外耳で集められた音の振動が、中耳との境にある鼓膜を振動させ、その振動が耳小骨によって増幅され、内耳に伝えられる。鼓室は、耳管によって咽頭に通じており、内部の圧力が外気圧と等しくなるよう保たれている。


☐ 14.内耳


内耳は側頭骨内にあり、蝸牛(うずまき管)、前庭、半規管からなる。蝸牛の内部はリンパ液で満たされており、耳小骨から伝わった音の振動が液体を揺らし、これを蝸牛にある感覚細胞(聴細胞)が音の刺激として受け取る。一方、前庭と半規管は聴覚にはかかわっておらず、平衡感覚をつかさどる。前庭は体の傾きの方向や大きさを、半規管は体の回転の方向や速度を感じ取る。


☐ 15.鼻の構造と嗅覚


鼻腔の上部に、匂いの刺激を受け取る感覚細胞(嗅細胞)があり、 これが匂いのもととなる物質の粒子を刺激として受け取る。嗅覚は鋭敏で、わずかな匂いでも感じ取れるが、同一臭気に対して疲労しやすく、しばらくすると匂いを感じなくなる性質がある。


☐ 16.舌の構造と味覚


舌の上面には多数の乳頭がみられ、その側面に味蕾が存在する。味蕾は味覚を感じる感覚細胞(味細胞)の集まりで、味覚を感じさせる物質が水に溶けて味細胞に達すると、これを刺激として受け取る。なお、嗅覚と味覚は、どちらも物質の化学的性質を認知する感覚であることから、化学感覚とも呼ばれる。


☐ 17.皮膚感覚


皮膚感覚には痛覚、触覚(圧覚)、温度感覚(冷覚、温覚)がある。それぞれ皮膚の表面に存在する痛点、触点(圧点)、冷点、温点という感覚点が刺激を受けることにより生じる。
感覚点の分布密度は痛点が最大で、触点(圧点)、冷点、温点の順に少なくなる。分布密度が大きいほど感覚は鋭敏になる。


☐ 18.深部感覚


皮膚より深い部分の、筋肉や腱などにある受容器から生じる感覚を深部感覚といい、身体各部の位置や運動などの感覚を生じる。皮膚感覚と深部感覚を合わせて体性感覚ともいう。


☐ 19.感覚器


感覚器は光、音、匂い、味、皮膚感覚(痛さ・冷たさ・熱さなど)といった外界の刺激を受け取るための器官である。受け取る刺激の種類は、感覚器ごとに決まっており、ヒトの感覚器の場合、眼‐視覚、耳‐聴覚・平衡感覚、鼻‐嗅覚、舌‐味覚、皮膚‐皮膚感覚である。どの感覚器にも刺激を受け取る特別な細胞(感覚細胞)があり、そこで受け取った刺激は神経によって脳に伝えられる。





































衛生管理者 第1種・第2種 1-4 労働生理


神経系


☐ 1.神経系の構成


神経系は、中枢神経系および末梢神経系に大別できる。中枢神経系は、脳と脊髄からなり、体の各部位と末梢神経でつながっている。末梢神経系には、脳から発する脳神経と、脊髄から発する脊髄神経とがあるが、機能的には、体性神経系および自律神経系に分けられる。


☐ 2.神経系の構成


中枢神経系は脳と脊髄からなる。末梢神経系は体性神経系と自律神経系にからなる。
脳は大脳(大脳皮質、大脳髄質)、小脳、脳幹(間脳、中脳、橋、延髄)からなる。
体性神経系は感覚神経と運動神経からなる。
自律神経系は交感神経と副交感神経からなる。


☐ 3.脳


脳は、大脳、小脳および脳幹からなる。脳の大部分を占めるのが大脳で、外側の灰白質の部分を大脳皮質、内側の白質の部分を大脳髄質と呼ぶ。


☐ 4.大脳皮質


大脳皮質は、神経細胞の細胞体が集まった灰白質で、感覚や運動、思考などの作用を支配する中枢として機能している。
神経細胞の細胞体が集まった部分は灰白色に見えるため「灰白質」というのに対し、神経線維の多い部分は白色に見えるため「白質」と呼ばれる。
前頭葉は、倫理観、推理、意思などの機能を営む。
頭頂葉は、体の動きを制御する。
側頭葉は、聴覚や言語に関する中枢がある。
後頭葉は、視覚中枢がある。


☐ 5.脳幹


脳幹は間脳、中脳、橋、延髄に区分される。それぞれの機能を次にまとめる。
間脳:視床および視床下部、下垂体からなる。視床下部には自律神経系の中枢があり、交感神経、副交感神経の働きを調整する。
中脳:眼球運動、視覚反射、聴覚反射の調節など、感覚や運動機能をコントロールする。
橋:知覚や運動に関する情報の経路が通っている。
延髄:呼吸中枢のほか、血液循環を調節する中枢など、生命維持にかかわる重要な役割を果たす。また、唾液分泌、嚥下、咀嚼などの反射中枢や、咳くしゃみ発汗などに関する中枢もある。


☐ 6.小脳


小脳では、平衡機能や姿勢の制御、随意運動(自分の意志で行う運動)の調整といった運動系を統合している。このため、小脳が侵されると運動失調を起こす。


☐ 7.脊髄


脊髄は、脳から連続する中枢神経であり、頭蓋骨と連結した脊椎という骨の中に存在する。脊髄は運動系と知覚系の神経の伝導路であり、その中心部は灰白質、外側は白質である。


☐ 8.体性神経系


末梢神経系のうち体性神経系は、感覚神経および運動神経からなる。感覚神経は、皮膚などの感覚器から受け取った刺激(興奮)を中枢神経(脳、脊髄)に伝える働きをする。これに対し、運動神経は、中枢神経からの命令を筋肉などの運動器官に伝える働きをする。


☐ 9.自律神経系


自律神経系は内臓、血管、腺など、意思と無関係に働く不随意筋に分布し、生命維持に必要な諸活動を反射的に調節している。交感神経および副交感神経からなり、自律神経系の中枢である間脳がその働きを調整する。交感神経は興奮時や運動時に活動が活発になるのに対し、副交感神経は休憩中や睡眠中に活発となる。また、同一の器官に分布していても、その作用はほぼ正反対である。


☐ 10.交感神経


瞳孔は広がる、心臓は拍動が早くなる、血圧は上がる、呼吸は促進する、胃腸は活動を抑える。


☐ 11.副交感神経


瞳孔は狭くなる、心臓拍動が遅くなる、血圧は下がる、呼吸促進は抑制する、胃腸活動は活動が進む。


☐ 12.神経細胞とその構造


神経細胞は、神経系を構成する基本的単位で、通常、 1個の細胞体、複数の樹状突起、 1本の軸索(神経線維)からなり、ニューロンとも呼ばれる。


☐ 13.情報の伝導と伝達


感覚器からの刺激や中枢神経からの命令などの情報は、樹状突起で受け取られ、軸索(神経線維)を伝わって運ばれる。このように、 1つの神経細胞内を情報が伝わっていくことを伝導という。対して、 1つの神経細胞から別の神経細胞へと情報が伝えられることを伝達という。伝達はシナプスを介して一方通行的に行われる。


筋肉


☐ 14.筋肉の分類


筋肉は、横紋筋と平滑筋、随意筋と不随意筋の分類があります。


☐ 15.横紋筋と平滑筋


筋肉の組織は筋細胞(筋線維)が主体となっており、そこに多数の神経や血管が入り込んでいる。このうち横紋筋は明暗のしま模様のある筋肉で、体の筋肉の大部分を占め、骨格に広く分布している。平滑筋は消化器や泌尿器、血管などの壁になっている筋肉であり、内臓筋とも呼ばれる。


☐ 16.随意筋と不随意筋


自らの意志によって動かせる筋肉を随意筋という。これに対し、自らの意志で動かせない筋肉を不随意筋という。随意筋は体性神経によって、不随意筋は自立神経によって支配されている。


☐ 17.骨格筋


骨格筋は、骨格や関節を動かし、全身の運動をつくり出すための筋肉である。腕や足の筋肉、腹筋、背筋など、筋肉といえば一般に骨格筋を指す。体性神経によって支配される横紋筋であり、自らの意思で動かせる随意筋である。


☐ 18.心筋


心臓の各部屋の壁をつくっている筋肉を心筋という。心臓だけに存在し、一生の間、状況に合わせながら規則正しく膨らんだり縮んだりする不随意筋である。横紋筋は、一般に随意筋だが、心筋だけは横紋筋でありながら不随意筋という点で特殊である。


☐ 19.筋縮収のエネルギー


筋肉を収縮させるときに必要なエネルギーは、筋肉内に蓄えたグリコーゲンを分解してできるATPという物質などによってつくられる。特に、直接のエネルギーはATPの加水分解(水が作用して起こる分解反応)によってまかなわれている。これらの分解反応は酸素を使わないため、無酸素性運動と呼ばれる。グリコーゲンを分解する際には、乳酸という物質が生成される。乳酸は、筋肉の収縮を阻害するため疲労物質と呼ばれる。


☐ 20.ATPと筋収縮


ATPとは「アデノシン3リン酸」というリン酸化合物の略であり、加水分解するときにエネルギーを放出するが、筋肉(筋線維)の中に蓄えられるATPの量はわずかなので、激しい運動では短時間で使い果たしてしまう。このため、筋肉は収縮する瞬間に最も大きい力が出せるとともに、仕事の効率は、筋収縮の速さがエネルギーの再供給に間に合う程度の適度なときに最も高くなる。また、筋肉に命令を伝える神経細胞に比べ筋肉は、短時間で多量のエネルギーを使うため疲労しやすい。


☐ 21.筋肉の太さ


筋肉が引き上げられる物体の重さは、筋肉の太さに比例し、筋肉の太さは、筋線維の数とその太さによって決まる。激しい運動を行うと、使われた筋肉の筋線維の一部が損傷するが、やがて修復されると以前より太い筋線維になっている。これを筋肉の活動性肥大という。


☐ 22.筋肉の収縮様式


筋肉の収縮様式には、等尺性収縮と等張性収縮がある。等尺性収縮とは、筋肉の長さは変わらないが、外力に抵抗して筋力の発生がある状態(例:動かない壁を押し続ける)をいう。これに対し、筋収縮時に筋肉の長さが変わるものを等張性収縮という。筋肉が短くなる場合(例:腕を曲げて重い物を持ち上げる)と長くなる場合(例:重い物をゆっくりと下ろす)がある。



































衛生管理者 第1種・第2種 1-5 労働生理


代謝系


☐ 1.エネルギー代謝とは


栄養素を摂取して体内で活用し、不要物を排出するまでの過程を代謝という。栄養素のうち糖質、蛋白質、脂質はいずれもエネルギーを発生する。このような体内における代謝を、エネルギーの摂取と消費を中心にとらえた場合をエネルギー代謝という。エネルギー代謝量の表し方には基礎代謝量、安静時代謝量、運動時代謝量の3つがある。


☐ 2.基礎代謝量


基礎代謝量とは、何もせず、ただ横になっている状態で消費されるエネルギー代謝量をいう。一般の成人男子で1日約1500kcal(女子は約1200kcal)である。基礎代謝量は同性、同年齢であれば、体の表面積にほぼ正比例する。
なお、基礎代謝量は睡眠時の代謝量とは異なる(睡眠時代謝量は基礎代謝量よりさらに下がる)。


☐ 3.安静時代謝量


安静時代謝量とは、座った姿勢で休息している状態で消費されるエネルギー代謝量をいう。座る姿勢を保持するためのエネルギー量を基礎代謝量に加えたものであり、基礎代謝量のおよそ1.2倍になる。


☐ 4.運動時代謝量


運動時代謝量とは、身体活動のために必要なエネルギー量を安静時代謝量に加えたものである。
3段階のエネルギー代謝量の比較(20歳男性の場合)
基礎代謝量:1500kcal
安静時代謝量:1800kcal
運動時代謝量:2300kcal


☐ 5.身体活動強度


骨格筋の収縮によって安静時より多くのエネルギー消費を伴う体の状態を身体活動といい、この身体活動の強さを指標として示したものを身体活動強度という。つまり、運動や作業などの身体活動が、どれくらい過酷なものであるかを示すものといえる。エネルギー代謝率(RMR)も、身体活動強度の1つである。


☐ 6.エネルギー代謝率(RMR)


エネルギー代謝率(RMR:relative metabolic rate)は、身体活動に必要なエネルギー量が、基礎代謝量の何倍に当たるかによって身体活動強度を表すものである。作業などの身体活動に必要なエネルギー量は、活動時間中に消費する総エネルギー量から安静時代謝量を差し引いたものなので、エネルギー代謝率(RMR)は次の式で求められる。
RMR=(活動時の総消費エネルギー量)- (安静時代謝量) /基礎代謝量
作業せずに、ただじっと座っているだけなら、式の分子は0なので、エネルギー代謝率=0となる。
エネルギー代謝率で表される身体活動強度(作業強度)は、性別、年齢、体格などの影響を受けず、動的筋作業の強度を表す指標として有用である。しかし、静的な精神的作業の強度を表す指標としては用いられない。


☐ 7.酸素消費量とRMR


エネルギー代謝率(RMR)は、身体活動のために消費される酸素量が、基礎代謝で消費される酸素量の何倍に当たるか(酸素量の容積比)によっても表せる。
RMR=(活動時の総酸素消費量)- (安静時の酸素消費量)/基礎代謝時の酸素消費量


☐ 8.恒常性(ホメオスタシス)


恒常性とは、体温調節にみられるように、外部環境などが変化しても身体内部の状態を一定に保とうとする性質をいう。このような働き(または仕組み)をホメオスタシスといい、主に神経系と内分泌系によって調節されている。


☐ 9.体温調節


体温調節の中枢は間脳の視床下部にあり、産熱と放熱のバランスを維持し、体温を一定に保とうと機能している。産熱は、主に栄養素の酸化や分解などの化学的反応によって行われ、放熱は、放射(ふく射)や伝導、蒸発(発汗、不感蒸泄)などの物理的な過程で行われる。


☐ 10.体温調節の仕組み


寒冷にさらされ体温が正常より下がると、皮膚の血管が収縮し、血流量を減らして体温の低下を防ぐ。また体内の代謝活動を亢進させて(高ぶらせて)熱の産生を増やす。これとは逆に、高温にさらされ体温が正常より上がると、皮膚の血管が拡張し、血流量を増加させて放熱を促進するとともに、発汗によって体温を下げる。また、体内の代謝活動を抑制して熱の産生を減らす。


☐ 11.発汗


発汗により、体表面から汗が蒸発すると、気化熱が奪われるため体温が下がる。体重70kgのヒトの場合、100gの汗が体表面から蒸発すると計算上、体温が約1℃下がる。発汗には、このように体内の熱を放散する役割を果たす温熱性発汗と、精神的緊張や感動による精神性発汗があり、労働時には一般にこの両方が現れる。発汗量が著しく多いときは、体内の水分とともに塩分も減少する。この場合、水分だけを補給すると血液中の塩分濃度が低下し、痙攣を引き起こすおそれがある。


☐ 12.不感蒸泄


発汗のない状態でも、皮膚や呼吸器から1日約850gの水分が蒸発しており、これを不感蒸泄という。不感蒸泄に伴う放熱は全放熱量の25%を占めるといわれている。


☐ 13.肥満の原因とBMI


摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余った分が脂肪として体内に蓄えられる。これが肥満の原因である。
BMI(Body Mass Index)は、肥満の程度を評価するための指標として用いられ、身長と体重によって算出される。BMIが25以上だと肥満と判定され、生活習慣病にかかるリスクが高まるといわれている。


☐ 14.BMIの算出方法


BMIは、体重をW(kg)、身長をH(m)とすると、次の式で算出できる。
BMI=W/H2=体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)
例)体重65kg、身長168cm(=1.68m)の場合
BMI=65÷1.68÷1.68=23.030=約23


☐ 15.健康測定における運動機能検査の項目とその測定種目


筋力検査:握力、上体起こし
平衡性検査:閉眼片足立ち
敏捷性検査:全身反応時間
柔軟性検査:(立位 座位)体前屈
全身持久性検査:最大酸素摂取量


ストレス・疲労・睡眠


☐ 16.ストレスの意味


外部からのさまざまな刺激によって心身に歪みが生じている状態をストレス(ストレス状態)という。ストレス状態を引き起こす原因となる刺激をストレッサーという。ストレス状態は、ホメオスタシスによって保たれていたバランスが崩れた状態であり、生体はこの状態に適応・順応しようと反応する。これをストレス反応という。一般的には、ストレス状態のほか、ストレッサーやストレス反応をも含めて「ストレス」という場合が多い。


☐ 17.ストレスの原因


ストレス状態を引き起こす原因(ストレッサー)は、次のように分類される。
外的ストレッサー
・物理的な環境:職場の騒音、気温、湿度、悪臭など
・社会的な環境:昇進や昇格、転勤、配置替えなど人間関係や経済状況の変化など
内的ストレッサー
・心理的・情緒的な状態:緊張、不安、悩み、寂しさ、怒りなど
・身体的・生理的な状態:疲労、不眠、健康障害など


☐ 18.ストレス反応


ホメオスタシスは、神経系と内分泌系によって調節されており、ストレッサーは、その強弱にかかわらず、自律神経系と内分泌系を介して心身の活動を亢進することになる。
特に、ノルアドレナリン、アドレナリンなどのカテコールアミンや副腎皮質ホルモンが深く関与する。


☐ 19.ストレスによる疾患


ストレスに長期間さらされ続けると、自律神経系や内分泌系によるホメオスタシスが維持できなくなり、心身の健康障害を引き起こすことがある。自律神経失調症(発汗や手足の震え、抑うつなどを生じる自律神経系の障害)をはじめ、ストレスが原因で発生したり、経過が悪化したりする。
主なストレス関連疾患
精神・神経的疾患:自律神経失調症、うつ病、神経症
内科的疾患:本態性高血圧症、狭心症、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、過換気症候


☐ 20.疲労とその予防


疲労には、筋肉の疲労から生じる身体的疲労と神経系の疲労によって生じる精神的疲労がある。疲労によって生理機能が低下した状態では、作業能率が低下してしまう。そこで、職場での疲労を予防するため、作業の分析と作業方法の検討、疲労の原因に応じた対策などが必要となる。また、個人の能力面への配慮や心理的な側面への対策も重要である。


☐ 21.疲労と休息


疲労には、心身の過度の働きを制限し、活動を止めて休息をとらせる役割もある。身体的疲労については、全身を安静に保つことが疲労回復に効果的である。これに対し精神的疲労については、安静に保つよりも適度に体を動かすほうが疲労回復に効果がある。


☐ 22.疲労状態を調べる方法


疲労状態を把握するには、厚生労働省の「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」などの調査表を用いて、本人が自覚的症状を客観的に調べる方法がある。また、他覚的症状をとらえるには次の調査方法がある。


◆疲労の他覚的症状を捉える調査方法の例
作業量の調査:単位時間当たりの作業能率を調べる。
フリッカー検査:高速で点滅する光を見て、点滅するものとして認識できる限界を調べる。
二点弁別閾検査:体の部位を2点同時に刺激し、2点として感じられる最小間隔から、感覚神経の機能を調べる。
心拍変動(HRV)解析:心拍変動(HRV)を解析し、自律神経の機能を調べる。


☐ 23.レム睡眠とノンレム睡眠


睡眠は、レム(「急速眼球運動(Rapid Eye Movement)」の略)睡眠とノンレム睡眠に分けられる。レム睡眠とは、体の力は抜けているが大脳は活発に活動している睡眠をいい、夢を見ていることが多い。一方、ノンレム睡眠は大脳を休ませ、その機能を回復するための睡眠である。睡眠は一般に、深いノンレム睡眠から始まり、約90分の周期でレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返す。


☐ 24.睡眠の役割と睡眠不足の弊害


睡眠中には、体温の低下や心拍数の減少、呼吸数の減少がみられる。これは副交感神経系の働きが活発になり、心身の安定を図るよう調節しているためである。睡眠は、このように脳の疲労回復、成長ホルモンの分泌、免疫力の強化、血圧や血糖値の調節、情報の整理や保存といった役割を果たしている。睡眠が不足すると、感覚機能や集中力が低下するとともに、周囲の刺激に対する反応が鈍るため、作業能率が落ちるばかりか、災害が発生しやすい状況となる。


☐ 25.睡眠と覚醒のリズム


睡眠と覚醒のリズムは、体温やホルモン分泌などと同様、脳の中の体内時計によって約1日のリズムに調節されている。このリズムを概日リズム(サーカディアンリズム)という。ただし、ヒトの体内時計の周期は約25時間であり、これを地球の24時間周期に適切に同調できないでいると睡眠障害を生じる。これを概日リズム睡眠障害という。この体内時計のズレは朝の光を浴びることによって修正できる。


☐ 26.安眠のための生活習慣


安眠のための生活習慣として、次のことに留意しておく。
・睡眠と食事は深く関係しており、就寝直前の過食は肥満を招くばかりか、不眠の原因にもなる。食事は就寝の2~3時間前までに済ませ、就寝前の空腹または満腹状態を避ける。
・就寝前の多量な水分摂取を控える。
・毎朝決まった時間に目を覚ますようにする。日中、適度に疲労を感じる程度の運動などを行うと効果的である。
なお、寝つけない場合には、体を横たえて安静を保つだけでも、疲労はある程度回復することができる。







































衛生管理者 第1種 2-1 労働衛生(有害業務)


空気中の有害物質


☐ 1.有害物質


人体に接触または侵入することによって健康に害を及ぼす化学物質を「有害物質」という。
空気中での有害物質の状態
気体物質:気体(ガスと蒸気)
粒子物質:液体(ミスト)、固体(粉じんとヒューム)


☐ 2.ガス


気体物質のうち、常温、常圧(25℃ 、1気圧)の状態において気体であるものを「ガス」と呼ぶ。
◆代表的な物質:一酸化炭素、シアン化水素、硫化水素、塩素、塩化水素、ホスゲン、ホルムアルデヒド、アンモニア


☐ 3.蒸気


常温、常圧で液体または固体の物質が、蒸気圧に応じて揮発(気化)または昇華(固体が液体を経ずに直接気体に変化すること)により気体となっているものを「蒸気」と呼ぶ。
◆代表的な物質:アセトン、 トルエン、ベンゼン、 トリクロルエチレン、水銀、ニッケルカルボニル、アクリロニトリル


☐ 4.ミスト


液体の微細(5~100μm)な粒子で、空気中に浮遊しているものを「ミスト」と呼ぶ。1lμm(マイクロメートル)=1mmの1000分の1。
◆代表的な物質:硝酸、硫酸、硫酸ジメチル、クロム酸


☐ 5.粉じん


固体に研磨、切削、粉砕など機械的な作用を加えることによって発生した微粒子(1~50μm)で、空気中に浮遊しているものを「粉じん(またはダスト)」と呼ぶ。
◆代表的な物買:石綿(アスペスト)、遊離けい酸、無水クロム酸、炭素、ジクロルベンジジン、金属粉(鉄、アルミニウムなど)、木材粉(米杉、ラワンなど)
粉じんの吸入によって、肺に線維増殖性変化を生じる疾病をじん肺という。ある程度進行すると、粉じんのばく露を中止してもさらに進行する性質があり、肺がんや肺結核を併発することがある。石綿(アスベスト)を原因とするものは、胸膜に肥厚な石灰化を生じ、中皮腫や肺がんを起こす。
また、遊離けい酸の吸入によるじん肺は「けい肺」と呼ばれ、けい肺結節を形成する。金属粉や炭素の粉じんもじん肺を起こすことがある。


☐ 6.ヒューム


気化した金属が空気中で冷やされるとともに酸化され、凝固することにより固体の微粒子(0.1~1μm)となって空気中に浮遊しているものを「ヒューム」と呼ぶ。粒子状物質のうちで、粒径が最も小さい。
◆代表的な物質:酸化鉄、酸化鉛、酸化亜鉛


☐ 7.化学物質の侵入経路


体内に侵入してくる作業環境中の化学物質の経路には、経気道侵入(吸入)、経口侵入、経皮侵入の3つがある。
①経気道侵入(吸入):呼吸器を通って肺に侵入する経路である。化学物質が肺に入ると血液中に容易に取り込まれるため、有害性が高い。吸入による経路は労働衛生上、最も重要視する必要がある。
②経口侵入:化学物質が口腔内に入り、消化器を経て体内に吸収される経路である。
③経皮侵入:皮膚の汗腺などから体内に侵入する経路である。有機溶剤には、無視できない程度に達するものがある。


☐ 8.化学物質の排泄


体内に侵入した化学物質は、肝臓などで分解や抱合(異物に生体成分を結合させる反応)などさまざまな化学変化を受け、その多くが代謝物として体外に排泄される。また化学物質の体内への吸収が長期間に及ぶと、ある時点で吸収量と排泄量が平衡状態となり、それ以上吸収し続けても体内の濃度は上昇しなくなる。吸収が止まって排泄だけになると、体内の濃度は減少する。この場合の、体内濃度が最初の2分の1に減少するまでの時間を生物学的半減期という。


金属による中毒


☐ 9.鉛


鉛中毒は、金属鉛や鉛化合物の粉じん、ヒュームを吸入すると発生する。赤血球に含まれるヘモグロビンの合成が阻害されるため、貧血の症状がみられる。慢性中毒では食欲不振、便秘に続いて、腹部の疝痛(自律神経の障害による小腸の痙攣)や、末梢神経障害などを生じる。末梢神経障害は、手首が垂れ下がったままの状態になる伸筋麻痺が特徴的である。


☐ 10.金属水銀


金属水銀は常温で唯一、液体の金属であり、容易に気化して水銀蒸気となる。水銀の標的臓器は脳であり、吸入された水銀が肺から血液中に取り込まれ、脳に到達する。金属水銀中毒では、手指の震えや判断力の低下、感情不安定、幻覚など精神障害の症状が現れる。急性中毒では、水銀蒸気の吸入による口内炎、気管支炎などがみられる。なお、発がん性は認められない。


☐ 11.有機水銀


体内に取り込むと脳が損傷され、体のしびれ、視野狭窄(視野が狭くなる)などの症状が現れる。有機水銀のうち、メチル水銀は胎盤を通過し、胎児性水俣病の原因となった。


☐ 12.マンガン


マンガンは、粉じんやヒュームとして吸入されるが、肝臓で胆汁との抱合を経て排泄される。しかし、大量に吸入した場合は排泄処理が間に合わず、中毒症状が現れる。マンガンの標的臓器は水銀と同様、脳である。慢性中毒になると精神障害を生じるほか、筋のこわばり、震え、歩行困難といった神経症状が現れる。


☐ 13.カドミウム


カドミウム中毒は、粉じんやヒュームとしてカドミウムを吸入すると生じる。呼吸器系・消化器系の大量のばく露による急性中毒と、長期間にわたる微量のばく露によって起こる慢性中毒がある。カドミウムの標的臓器は肺および腎臓である。
①急性中毒:せき、胸痛、呼吸困難から上気道炎や肺炎を生じる。
②慢性中毒:鼻炎や臭覚消失などの鼻の異常、肺気腫(肺胞の壁が年月を経て壊れていく疾患)、尿細管機能の異常による腎障害(低分子蛋白尿を生じ、進行するとカルシウムが排泄されて骨軟化症となる)などを生じる。さらに、門歯や犬歯の黄色環(歯の黄色い色素沈着)がみられる。


☐ 14.イタイイタイ病


富山県の神通川流域で発生したイタイタイ病は、更年期以降の女性に多く発症した骨軟化症ですが、カドミウムに汚染された米や飲料水の摂取が原因とされています。


☐ 15.標的臓器


体内に吸収された有害物質が、特定の臓器に集中的に障害をもたらす場合、その特定の臓器を標的臓器と呼ぶ。
◆水銀、マンガン、カドミウムの標的臓器
脳:水銀、マンガン
肺:カドミウム
腎臓:カドミウム


☐ 16.ベリリウム


ベリリウム中毒は、粉じんやヒュームとしてベリリウムを吸入すると生じる。急性障害として主に肺炎を起こすほか、接触性皮膚炎(皮膚に接触した化学物質の刺激によって生じる皮膚障害)などがみられる。慢性障害としては肺に肉芽腫(結節)ができ、呼吸困難などを引き起こすベリリウム肺が現れる。


☐ 17.クロム


クロム中毒は粉じん(無水クロム酸)、ミスト(クロム酸)の吸入や、皮膚への接触により発生する。鼻腔を左右に仕切る壁(鼻中隔)に孔があく鼻中隔穿孔を生じるほか、慢性の皮膚ばく露では、接触性皮膚炎や皮膚潰瘍などの皮膚障害を生じる。また、長期にわたる吸入ばく露によって、肺がんや上気道がんを引き起こす。


☐ 18.砒素


砒素中毒は、砒素を含む粉じんやヒュームのばく露により生じる。急性中毒では腹痛、嘔吐、下痢などがみられ、呼吸不全を伴うショック死を起こすこともある。慢性の中毒では、黒皮症(メラニン色素が沈着して皮膚が黒色化する症状)や角化症(皮膚の角質が異常に厚くなる症状)などを生じ、長期のばく露では、鼻中隔穿孔や皮膚がん、肺がんなどを引き起こす。また、砒化水素(砒素と水素の化合物)による中毒の場合は、赤血球が大量に壊れることによって生じる溶血性貧血や、壊れた赤血球が尿に混じる血色素尿(尿の赤色化)などの症状がみられる。


☐ 19.コバルト


コバルト中毒は、コバルトの粉じんやヒュームのばく露によって生じる。気管支炎や肺炎のほか、接触性皮膚炎などの皮膚障害を生じる。経口による吸収の場合は、心臓障害や甲状腺障害などを引き起こす。


☐ 20.主な金属とその中毒症状のまとめ


鉛:貧血、末梢神経障害(伸筋麻痺など)、腹部の疝痛
金属水銀:手指の震え
マンガン:筋のこわばり、歩行困難
カドミウム:腎障害、上気道炎、肺炎、肺気腫、歯の黄色環
クロム:鼻中隔穿孔
砒素:角化症、黒皮症、鼻中隔穿孔、肺がん
有機水銀:視野狭窄
ベリリウム:接触性皮膚炎





























衛生管理者 第1種 2-2 労働衛生(有害業務)


有機溶剤による中毒


☐ 1.有機溶剤とは


有機溶剤とは、塗装、接着、洗浄、印刷などの作業の際に、他の物質を溶かすために用いられる、常温常圧で液体の有機化合物をいう。数多くの種類があり、一般的な性質として、揮発性および脂溶性が挙げられる。


☐ 2.揮発性と蒸気の比重


有機溶剤は揮発性が高く、蒸気になりやすい。有機溶剤の蒸気は空気よりも比重が重いため、低所に滞留しやすい。また、一般に引火性があるため燃えやすい(トリクロルエチレンなどハロゲン化炭化水素には難燃性のものもある)。


☐ 3.脂溶性と侵入経路


有機溶剤は脂溶性(油に溶けやすい性質)であり、脂肪にも溶けやすい。侵入経路は、蒸気を呼吸器から吸入するだけでなく、皮膚や粘膜からも吸収される(アセトンのように脂溶性と水溶性をあわせもつものは特に吸収されやすい)。また、脂溶性のため、脂肪の多い脳などに入りやすい。


☐ 4.有機溶剤による中毒の一般的症状


高濃度ばく露による急性中毒では、中枢神経系抑制作用で酪酎状態となり、重症のときは呼吸不全などで死にいたることもある。低濃度の繰り返しばく露による慢性中毒では頭痛、めまい、記憶力減退、不眠などの不定愁訴(どこが悪いのかが不明な自覚症状)がみられる。皮膚などの刺激作用による皮膚炎、結膜炎、上気道炎なども引き起こす。


☐ 5.二硫化炭素


二硫化炭素は、セロハンやレーヨンを製造するときの溶剤などとして用いられる。蒸気の吸入によるほか、皮膚からも吸収される。中毒症状として意識障害などの精神障害がみられ、長期間ばく露されると、血管障害に基づく病変が起こる。特に、網膜細動脈瘤(眼の網膜の細い動脈に瘤ができる症状)を伴う脳血管障害が顕著である。


☐ 6.ベンゼン


ベンゼンは、化学工業の基礎的な原料として多くの分野で用いられている。主に呼吸によって体内に取り込まれる。高濃度のベンゼンを長期間吸い込むと、造血器障害を引き起こし、再生不良性貧血(造血器である骨髄の働きが低下して起こる貧血)などを生じる。また、低濃度のベンゼンを長期間吸い込むと、白血病(血液のがん)になる危険性がある。


☐ 7.ノルマルヘキサン


ノルマルヘキサンの主な用途は、食用油脂抽出溶剤および接着剤溶剤、塗料、インキなどの各種溶剤である。吸入によって体内に侵入し、頭痛、目まいなどの症状が現れる。慢性中毒になると末梢神経障害が起こり、手足の感覚麻痺や歩行困難などの多発性神経炎(多くの末梢神経が系統的に侵される病気)の症状が現れる。


☐ 8.酢酸メチル


酢酸メチルは、溶剤として接着剤やマニキュア除光液などに用いられ、主に蒸気の吸入によって体内に取り込まれる。長期ばく露では視神経障害を起こし、視力低下や視野狭窄などを生じる。


☐ 9.その他の有機溶剤


その他の有機溶剤による中毒症状は次の通りである。
①メタノール(メチルアルコール):眼の網膜を損傷し、視神経障害による失明を起こす。
② トリクロルエチレン:慢性毒性では、高濃度において肝障害、腎障害を生じる。
③ トルエン:中枢神経系に作用し、めまい、歩行異常、精神錯乱などを引き起こす。
④キシレン:眼や鼻、喉を刺激する。高濃度の蒸気を吸入すると、興奮状態、麻酔状態を経て死亡することがある。
⑤アニリン(アミノベンゼン):メトヘモグロビン(酸素を運搬できないヘモグロビン)が形成され、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる現象)を生じる。
⑥ジメチルホルムアミド:皮膚や眼などを刺激するほか、頭痛、めまい、肝機能障害などがみられる。


☐ 10.有機溶剤と生物学的モニタリング


有害物質の体内摂取量を把握する検査において、血液や尿などの生体試料を分析することを、生物学的モニタリングという。有機溶剤ではキシレンなど、ばく露の指標として尿中代謝物を検査するものがある。


◆有機溶剤と検査する尿中代謝物の例
キシレン:尿中のメチル馬尿酸
ノルマルヘキサン:尿中の2.5-ヘキサンジオン
トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、1,1,1トリクロルエタン:尿中のトリクロル酢酸、尿中の総三塩化物
トルエン:尿中の馬尿酸
ジメチルホルムアミド:尿中のN-メチルホルムアミド
ガスによる中毒その他


☐ 11.窒息性ガスおよび刺激性ガス


窒息性ガスには、ガス自体の有害性は低いものの、密閉された場所で増加すると、相対的に酸素濃度が減少して窒息を引き起こす単純窒息性ガスと、ガス自体に有毒性をもつ化学的窒息性ガスがある。また、刺激性ガスとは、気管や肺をはじめとする組織に炎症などの障害を引き起こすガスのことをいう。
◆主な窒息性ガスと刺激性ガス
窒息性ガスには単純窒息性ガスと化学的窒息性ガスがある。
単純窒息性ガス:二酸化炭素・メタン・エタン
化学的窒息性ガス:一酸化炭素・シアン化水素・硫化水素刺激性ガス:塩素 ・弗化水素 ・二酸化硫黄・二酸化窒素 ・ホルムアルデヒド


☐ 12.一酸化炭素の性質


一酸化炭素は、炭素を含んだ物質が不完全燃焼したときに発生する(完全燃焼した場合は、二酸化炭素が発生する)。空気とほぼ同じ重さであり、無色無臭であるため、極めて毒性が高いにもかかわらず、吸入しても気づかないことが多い。一酸化炭素には、血液中に含まれるヘモグロビンと結合する性質があり、その親和性は、酸素とヘモグロビンとの親和性の200倍以上に及ぶ。このため、一酸化炭素が血液中に取り込まれると、ヘモグロビンの酸素運搬能力が低下し、体内の各組織に酸素欠乏状態を引き起こす。


☐ 13.一酸化炭素による中毒


一酸化炭素による中毒症状は、息切れ、頭痛から始まり、やがて虚脱や意識混濁(意識の清明度が低下した状態)に陥る。そのまま一酸化炭素を吸入し続けると、全身の細胞が酸素欠乏状態となり、窒息死にいたる。一酸化炭素中毒の後遺症では、物忘れなどの精神神経症状がみられたり、植物人間状態となったりすることがある。


☐ 14.シアン化水素


シアン化水素(青酸)による中毒では、細胞の呼吸が阻害されて、酸素欠乏の状態を生じる。急性中毒では、頭痛やめまい、耳鳴り、嘔吐などがある。重症の場合は意識不明の状態となり、呼吸困難や痙攣を起こして死亡する。


☐ 15.硫化水素


硫化水素は、眼、鼻、喉の粘膜を刺激する。高濃度のガスを吸入すると、頭痛やめまい、歩行の乱れ、呼吸障害などを生じる。重症の場合は、意識消失や呼吸麻痺などを起こして死亡する。


☐ 16.塩素


塩素ガスは、消毒や漂白などに用いられる次亜塩素酸塩溶液と、洗浄や水処理などに用いられる酸性溶液の薬品が混触したときなどに発生する。眼、鼻、喉の灼熱感、めまいなどを生じ、呼吸器症状が現れる。肺水腫(肺に液体がたまる疾患)になることもある。


☐ 17.弗化水素


弗化水素ガスを吸入すると、鼻粘膜や気道を刺激され、肺を損傷し、肺水種などを引き起こす。また、弗化水素には骨を侵す性質があり、慢性中毒では骨の硬化、斑状歯(歯の表面に斑状のしみができる症状)などがみられる。


☐ 18.二酸化硫黄


二酸化硫黄は、皮膚や粘膜の水分に溶けて亜硫酸となり、付着した部位に酸としての刺激や腐食作用を示す。このため、慢性中毒では、慢性気管支炎、歯牙酸蝕症(酸の作用で歯が腐食、欠損する症状)などがみられる。


☐ 19.二酸化窒素


二酸化窒素は、水に徐々に反応して硝酸や亜硝酸となる。そのため、吸入直後は無反応であるが、やがて肺水腫へと進行し、慢性気管支炎などを引き起こす。


☐ 20.ホルムアルデヒド


ホルムアルデヒド(水溶液はホルマリン)は、皮膚や眼を刺激し、吸引すると粘膜が刺激されてせきが出る。慢性症状として、肝臓や腎臓の障害を引き起こす。


☐ 21.塩化ビニルによる障害


塩化ビニル樹脂の製造工程で、原料の塩化ビニルモノマーを吸入すると中毒を発症する。症状は、指端骨溶解(指の骨の溶解)や、肝臓の血管肉腫(がんの一種)などがみられる。


☐ 22.職業がん


ある特定の職業に従事して、その職業に特有な発がん要因にばく露して生じるがんを「職業がん」という。
化学物質により発症するがん(悪性腫瘍)の例
石綿(アスベスト): 中皮腫、肺がん
クロム酸:肺がん、上気道がん
砒素(三酸化砒素):皮膚がん、肺がん
ベンゼン:白血病
塩化ビニル:肝血管肉腫
染料中間体(ベンジジン、β-ナフチルアミンなど):膀胱がん
コールタール:皮膚がん、肺がん































衛生管理者 第1種 2-3 労働衛生(有害業務)


温熱、高圧等の作業環境


☐ 1.熱中症とは


高温(暑熱)環境下において発症する急性障害を総称して「熱中症」という。体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻したりすることによって生じる。熱中症の誘因となる高温環境には、夏季猛暑日、エネルギー消費量の多い労働や運動、遮蔽された工事現場その他の労働環境など、さまざまな場合がある。熱中症の症状は、熱虚脱、熱痙攣、熱疲労、熱射病の4種類に分けられる。


☐ 2.熱虚脱


高温環境下では、自律神経を介して末梢血管が拡張され、皮膚の血流量が増加し放熱を促進することで体温の低下が図られる。ところが、これによって血液が皮膚に集まり、脳への血流が少なくなり、めまいや失神(立ちくらみ)を起こすことがある。これを、熱虚脱(または熱失神)という。


☐ 3.熱痙攣


高温環境下では、多量の発汗によって体内の水分と塩分が失われるが、このとき水分だけが補給され塩分の補給が不十分な場合、体内の塩分濃度が低下し筋肉痙攣(大腿や肩など四肢のこむらがえり)を起こすことがある。これを熱痙攣という。


☐ 4.熱疲労


多量の発汗で体内の水分および塩分が失われ、脱水によって体温上昇と脱力をきたした状態を熱疲労という。嘔吐、頭痛、めまい、筋肉痛、頻脈などの症状が現われ、発汗がみられる。ただし、体温は40℃ を超えない。


☐ 5.熱射病


高温環境下で、体温調節中枢が麻痺することによる重篤な熱中症を熱射病という。40℃を超える著しい体温上昇、発汗の停止、意識障害、呼吸困難などの症状がみられる。高体温のため細胞障害が発生し、多臓器に障害を起こし、死にいたることもある。


☐ 6.熱中症に対する処置


涼しい場所で衣類をゆるめて安静にさせ、水分補給を行う。熱虚脱、熱疲労では、足を高く上げて寝かせ、医療機関に受診させる。熱痙攣がみられる場合は、これらの処置とともに塩分を与える。熱射病の場合は冷水をかけるなどあらゆる方法で体を冷却し、一刻も早く救急病院に搬送する。


☐ 7.WBGT指数


WBGT(Wet-bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)指数は高温環境を評価する温熱指標で、気温、気流、湿度、ふく射熱から算出する。「暑さ指数」とも呼ばれ、熱中症を予防するための指標として一般に用いられている。


☐ 8.凍傷


凍傷は、寒冷刺激によって生じる組織の局所障害であり、通常は-4℃以下で発症(0℃を下回る程度であっても長時間さらされると発症)する。表層性の凍傷では、紅斑や水疱を形成し、深部凍傷では、皮膚組織や骨に凍結壊死を生じる。重度の凍傷では、切断を要する場合もある。


☐ 9.凍瘡


凍瘡とは、いわゆる「しもやけ」のことで、慢性的な寒冷刺激に繰り返しばく露されることによって発症する。凍瘡は、凍傷とは異なり、皮膚組織の凍結壊死を伴うものではない。


☐ 10.低体温症


全身が寒気や冷水などに長時間さらされて、体温が35℃以下に低下した状態を低体温症(全身性低体温症)という。皮膚が冷たく蒼白となり、脈拍数や血圧の低下、筋の硬直などがみられる。体温が26℃ 前後になると意識消失を生じる。


☐ 11.減圧症


炭酸飲料の瓶の栓を抜くと気泡が発生する。これは栓を抜くことで瓶内部の圧力が低下(減圧) し、液体に溶けていた気体が気泡として発生する現象である。潜水業務での減圧症も、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた窒素が気泡となり、血管を塞いだり組織を圧迫したりすることにより生じる。皮膚のかゆみ、関節痛、胸痛などの症状が現れる。


☐ 12.酸素欠乏症


空気中の酸素濃度が低下することを酸素欠乏といい、酸素欠乏状態の空気を吸入することによって酸素欠乏症を発症する。酸素濃度15~16%程度の酸素欠乏症では、一般に頭痛、吐き気などの症状がみられ、8%以下の場合には死にいたることもある。


☐ 13.振動障害


振動障害とは、チェーンソー、さく岩機など振動を、手や腕に伝える振動工具を長時間使用する労働者に生じる障害をいう。手のしびれなどの末梢神経障害や手指の蒼白現象(レイノー現象)などの末梢循環障害が発生する。レイノー現象は、寒冷期に全身が冷えたときに手指の血行障害が生じ、手指の皮膚の色調が発作的に白色の状態になる現象で、振動障害特有の症状である。


☐ 14.金属熱


金属のヒュームを吸入して生じる発熱などの症状を「金属熱」という。溶接作業や合金製造に伴う職業性疾病の1つで、亜鉛や銅のヒュームによるものが多く、高温の環境が原因ではない。症状は、発熱のほか悪寒(発熱による寒け)、関節痛、全身倦怠感などを生じることがある。


☐ 15.職業性疾病


例えば、上肢を同一位置に保ったり反復使用したりする作業では、頸肩腕症候群という一連の症状を生じることがある。このように、特定の職業に従事することで発生する疾病を職業性疾病という。これまで学習してきたさまざまな有害因子による中毒や健康障害もこれに含まれる。


騒音およびその影響


☐ 16.音の単位


音とは、媒質(空気など)の圧力変化が伝わることで、 1秒間当たりの圧力変化の回数を周波数と呼ぶ。周波数が大きいほど高音、小さいほど低音として聞こえる。周波数の単位はヘルツ(Hz)で、ヒトが聞くことのできる音は、約20Hzから約2万Hzとされている。これに対し、圧力変化の大きさを音圧という。音圧が大きいほど大きい音、小さいほど小さい音として聞こえる。音圧(音の大きさ)の単位はデシベル(dB)で、騒音レベル(騒音の大きさ)もこの単位で表される。


☐ 17.騒音レベルの測定


「騒音」とは、ヒトにとって好ましくない音のことである。したがって、ヒトが聞くことのできない周波数の音を測定しても意味がない。また、ヒトの耳は周波数によって音圧の感じ方が異なることがわかっている。このため、騒音計で測定するときは、ヒトの聴覚に合わせて補正した「A特性」という方式を用いる(周波数補正回路のA特性で測定する)。騒音レベルとは、こうして測定された数値で、その大きさは「dB(A) (最近では単にdB)」で表示する。


☐ 18.騒音とストレス反応


騒音は、ストレス反応を引き起こすことがある。つまり、騒音ばく露によって自律神経系と内分泌系に影響を与え、交感神経の緊張や副腎皮質ホルモンの分泌の増加がみられる。


☐ 19.等価騒音レベル


騒音は時間とともに不規則かつ大幅に変化することが多いため、騒音を評価するには、単位時間当たりの騒音レベルを平均化した等価騒音レベルという値を用いる。変動する騒音レベルのエネルギーに着目しその時間平均値を算出したもので、騒音に対する人間の生理・心理的反応ともよく対応する。このため、環境騒音を評価するための評価量として多くの国で採用されている。


☐ 20.聴覚障害


外耳から入った音を大脳で音として感じるまでの聴覚経路に何らかの障害があり、聞こえ方に異常をきたした状態を聴覚障害という。聴力の損失の程度は、一般にオージオメーターという機器を使って測定され、聴力をほとんどもっていない状態を聾といい、ある程度音声の識別ができる状態を難聴という。難聴は、障害を受けている聴力経路の場所によって、伝音性難聴と感音性難聴に分けられる。


☐ 21.伝音性難聴と感音性難聴の違い


伝音性難聴:伝音器に生じる障害(外耳~中耳)---小さな音が聞き取りにくい
感音性難聴:感音器に生じる障害(内耳~聴神経)---大きな音も聞き取りにくい


☐ 22.騒音性難聴


騒音性難聴とは、騒音下での長期間の作業などで、内耳の聴覚器官が障害を受けて起こる感音性難聴である。音の刺激を感じて聴神経に伝える蝸牛(うずまき管)の有毛細胞が、連続する音響ばく露で変性し脱落すると起こる。騒音性難聴は通常、会話音域より高い音域から聴力低下が始まる。耳鳴りを伴うことが多いが、初期には気づかないことが多い。また、いったん騒音性難聴になると治りにくい、という特徴がある。


☐ 23.C5ディップ


騒音性難聴の初期には、オージオメーターで測定した値で4000Hz付近の高音域(会話音域より高い音域)で聴力の低下が認められる。この音域はドイツ式の音名表記で「ド(C5)」の音に相当することから、騒音性難聴の初期の特徴的な聴力低下の型を「C5ディップ」と呼ぶ。ディップ(dip)は「低下」の意味。





衛生管理者 第1種 2-4 労働衛生(有害業務)


放射線およびその影響


☐ 1.放射線とは


放射線は、粒子の流れである粒子線と、エネルギーの流れである電磁波に大別される。このうち、物質をイオン化させる能力(電離作用)を有するものを電離放射線といい、それ以外のものを非電離放射線という。


☐ 2.放射線の分類


粒子線:アルファ線、ベータ線、中性子線などー電離放射線
電磁波:ガンマ線、エックス線ー電離放射線
電磁波:紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、レーザー光線ー非電離放射線


☐ 3.電離放射線による障害


電離放射線にさらされることを「被ばく」という。被ばくした生体にはさまざまな障害が起こるが、その症状の現れる時期によって早期障害と晩発障害に分けられる。
早期障害:被ばく後数週間以内に発症---造血器障害(白血病除く)、消化管障害、中枢神経系の障害、皮膚の障害
晩発障害:数か月~数年を経て発症---発がん(白血病含む)、白内障、胎児への影響、遺伝的影響


☐ 4.確定的影響と確率的影響


確定的影響とは、一定量の電離放射線を受けると必ず影響が現れる白内障、皮膚障害などをいう。この一定量を「しきい値」といい、しきい値を超え線量(電離放射線の量)が多くなるほど障害も大きくなる。これに対し、しきい値はないものの被ばく線量が増えるにつれて影響の現れる確率が高まる発がん(白血病を含む)や遺伝的影響などを確率的影響という。確率的影響の場合は、被ばく線量が増えると発生率(被ばくによらない自然発生率を合計して表す)は増加するが、障害が重くなるわけではない。


☐ 5.ガンマ線とエックス線(X線)


ガンマ線は波長の最も短い電磁波であり、コバルト60やイリジウム192などの放射性同位元素から放射される。エックス線(X線)は通常、エックス線装置を用いて人工的に発生させる電磁波である。ガンマ線、エックス線とも電離作用があるため電離放射線に分類され、白内障などを起こすおそれがある。


☐ 6.放射性同位元素


原子番号が同じで質量数だけが異なる元素を同位元素といい、このうち電離放射線を放出するものを放射性同位元素という。ウラン、ラジウムなど天然に存在するものがあれば、コバルト60やイリジウム192など人工的につくられたものもある。








































作業環境の測定と評価



衛生管理者 第1種 2-5 労働生理(有害業務)


作業環境の改善


▢ 1.作業環境を改善するための手法


有害因子へのばく露を少なくするための作業環境改善手法として、一般に次の7つの方法が考えられる。
①有害化学物質の製造および使用を中止し、有害性の少ない物質へ転換する
②生産工程や作業方法を改良し、有害物質の発散を防止する
③有害物質を取り扱う設備の密閉化や自動化などを図る
④有害な生産工程を隔離し、遠隔操作などを採用する
⑤局所排気装置やプッシュプル型換気装置を設置する
⑥全体換気装置を設置する
⑦作業行動の改善によって、異常なばく露や不要な発散を防ぐ
これらは優先順位の高い順に並べられている。したがって、局所排気装置などの換気装置の設置よりも設備の密閉化や自動化を優先するなど、上から順に検討することが重要である。また、 1つの対策に頼るのではなく、複数の対策を併用するほうが大きな効果が得られる。


▢ 2.設備の密閉ができない場合


有害物質を取り扱う装置(有害なガスなどの発散源を密閉する設備などを含む)を、構造上または作業上の理由で完全に密閉できない場合には、その装置内部の圧力を外部の気圧よりわずかに低くする。空気は基本的に気圧の高い所から低い所へ流れる性質があるため、これによって気圧の低い装置内部から気圧の高い外部へと有害物質が漏出することが防げる。


▢ 3.粉じんを発散する作業について


粉じんを発散する作業工程では、密閉化とともに湿式化も検討する。「湿式化」とは、水などの液体を噴射して粉じんを加湿凝集させることをいい、これによって粉じんの飛散を防ぐ。堆積した粉じんを除去するときは、ほうきではくと、かえって粉じんを飛散させてしまうので真空掃除機などを用いる。


▢ 4.騒音・振動を発する作業について


プレス機の振動対策として、防振装置(防振ゴムや空気ばねなど)を使用する。製缶工場の騒音対策として、鋼板の打出しに使うハンマーの頭を、鋼製から合成樹脂製に替える。ビル建設の基礎工事などではドロップハンマー式の杭打機(おもりを落下させて杭を打つ)をアースオーガー(スクリューの回転で地面に穴をあける)に替える。また破砕作業を行う場所に隣接する作業場所では、破砕機の周囲に遮音材としてコンクリートパネルを、吸音材としてグラスウールや穴あきボードを用いた防音壁を設けるなどの対策が考えられる。


▢ 5.放射線を取り扱う作業について


ガンマ線源と労働者の間の鉄製の遮蔽材を、同じ厚さの鉛製のものにすると、放射線ばく露を低減させることができる。レーザー光線を取り扱う作業では、機器を置く部屋の壁を鋼製にするとレーザー光線が反射しやすくなる。レーザー光路の末端は、適切な反射率と耐熱性をもった拡散反射体または吸収体とする。


▢ 6.MSDS(SDS)


労働安全衛生法は、労働者に危険または健康障害を生じるおそれのある化学物質などを譲渡・提供する者に対し、その危険有害性の情報を文書などにして相手方に通知することを義務づけている。健康に有害な物質だけでなく、爆発性などの危険性がある化学物質も対象となる。この文書は、国内では平成23年度まで一般的にMSDS(化学物質等安全データシート)とされてきたが、国際整合の観点から、GHSによりSDS(安全データシート)に統一された。これらの文書は、すべての作業環境で生じる状況を網羅するものではないが、職場における化学物質管理のための重要な情報であり、だれでも閲覧できる。


▢ 7.労働安全衛生法が定める記載事項


化学物質などの情報を通知する文書の記載事項は次の通り。
①名称、②成分及びその含有量、③物理的及び化学的性質、④人体に及ぼす作用(急性毒性、発がん性、皮膚腐食性 刺激性、生殖毒性など)、⑤貯蔵又は取扱い上の注意、⑥流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置、⑦その他厚生労働省令で定める事項


局所排気装置


▢ 8.局所排気装置の基本構造


局所排気とは、高濃度で発生した有害物質が作業場に拡散する前に発生源ごとに捕らえて大気中に放出することをいう。局所排気装置は、フードから吸い込んだ有害物質をダクトで搬送し、排風機(ファン)によって排気する換気装置である。有害物質の有害性、排気濃度により空気清浄装置を介し、清浄化してから屋外へ排気する。
局所排気装置を設置する場合|よ、給気量が不足すると排気効果が極端に低下するため、排気量に見合った給気経路の確保が重要となる。また、空気清浄装置を付設する場合、排風機は、清浄化したあとの空気が通る位置に設置する。


▢ 9.ダクト


ダクトの断面の形状には円形、角形などがあるが、ダクトが細すぎると圧力損失(装置内で降下する圧力)が増大し、逆に太すぎると搬送速度が不足してしまう。ダクト径は、これらを考慮して設計する必要がある。


▢ 10.フードの形式


フードは、囲い式および外付け式に大別できる。有害物質の排気には、フード内部に有害物質の発生源を囲い込める囲い式のほうが効率がよい。外付け式フードの場合は、有害物質の発生源がフードの外側にあるため、フードをできる限り発生源に近づけて設置する必要がある。


▢ 11.囲い式のフード


カバー型は、有害物質の発生源をすっぽりと覆うタイプであり、排気効果が最も高い。グロープボックス型も、両手を差し込む穴以外は覆われているため、カバー型同様、排気効果が高い。ドラフトチェンバー型および建築ブース型は、どちらも作業面を除いてまわりが覆われている囲い式フードであり、外付け式のフードに比べ排気効果が高い。


▢ 12.外付け式のフード


外付け式フードは、空気の吸引方向により、上方吸引型、側方吸引型、下方吸引型に分かれる。上方吸引型は一般に側方吸引型や下方吸引型より吸引効果が小さい。また、フードの形により長方形型、円形型、スロット型、ルーバー型、グリッド型などに分類される。外付け式フードは、フード開口面から捕捉点(作業点)までの距離が長くなると、捕捉点(作業点)において吸引される気流の速度が減少してしまう。


▢ 13.レシーバー式フード


外付け式のフードのうち、吸引するのではなく、有害物質の飛散方向にフードを設置することによって、飛来してくる有害物質を捕捉するタイプのものをレシーバー式フードと呼ぶ。キャノピー型、グラインダー型などがある。


▢ 14.フランジ


フード開口部の周囲にフランジと呼ばれる「縁」を設けると、吸引範囲が狭まるものの、気流の整流作用が増し、少ない排風量で所要の効果を上げることができる。


▢ 15.プッシュプル型換気装置


プッシュプル型換気装置は、吹きだし気流と吸い込み気流を組み合わせて一定方向の気流を形成することで、有害物質を含んだ空気を排出する。自動車など表面積の大きなものの塗装業務などに適している。

































衛生管理者 第1種 2-6 労働生理(有害業務)


作業管理と労働衛生保護具


☐ 1.作業管理とは


作業管理とは作業時間、作業量、作業方法など労働者の作業そのものをコントロールし、有害因子のばく露や業務に起因する健康障害を防止することをいう。作業管理の手法は労働生理学的手法、人間工学的手法など多岐にわたる。具体的には、作業方法の変更など、作業負荷や作業姿勢によって起こる体への悪影響などを減少させること、労働衛生保護具の適正使用によって有害な物質へのばく露を減らすなどのほか、環境を汚染しない作業方法を定めて実施させることも含まれる。作業管理を進めるには、作業の実態を調査・分析し評価することで、作業の標準化、労働者の教育、作業方法の改善などを行っていくことが重要となる。


☐ 2.労働衛生保護具の種類


労働衛生保護具には、次の種類がある。
呼吸用保護具:防じんマスク、防毒マスク
眼の保護具:保護めがね、遮光保護具
防音保護具:耳栓、耳覆い(イヤーマフ)
防熱用保護具:防熱衣(アルミナイズドクロス製)、防熱面
放射線防護用保護具:放射線防護前掛け(プロテクタ)
労働衛生保護衣類:保護服、保護手袋、保護長ぐつ


☐ 3.呼吸用保護具の分類


防じんマスクや防毒マスクなど、ろ過式の呼吸用保護具はいずれも酸素濃度18%以上の場所でのみ使用する。高濃度の有害ガスが存在する場合は、防毒マスクではなく給気式の呼吸用保護具を使用する。


☐ 4.防じんマスク


防じんマスクは、作業に適したものを選択しなければならない。高濃度の粉じんばく露のおそれがあるときは、できるだけ粉じんの捕集効率が高く、排気弁の動的漏れ率が低いものを選ぶ。有害性の高い物質を取り扱う作業では、顔面とマスクの面体の高い密着性が要求されるので、取替え式のものを選ぶ。使い捨て式のものは使用限度時間内でも、著しい型崩れが生じた場合は廃棄する。防じんマスクは、ヒュームなどの微細粒子に対しても有効である。手入れの際、ろ過材に付着した粒子を圧縮空気で吹き飛ばしたり、ろ過材をたたいて払い落としたりしてはならない。


☐ 5.防毒マスク
防毒マスクは、面体と吸収缶で構成されており、有毒ガスの種類や濃度に応じた吸収缶を使用しないかぎり、まったく効果がない(複数の有毒ガスに対応する吸収缶はない)。吸収缶の色は、有機ガス用が黒色、一酸化炭素用が赤色と決められている。防毒マスク着用の際は、顔面と面体の密着性を保つため締めひもを、耳にかけずに後頭部で固定し適切に締める。また、ガスや蒸気状の有害物質が粉じんと混在する作業環境では、防じん機能を有する防毒マスクを選択する。


☐ 6.破過時間


破過時間とは、防毒マスクの吸収缶が除毒能力を喪失するまでの時間をいう。防毒マスクを使用する際は、破過時間とガス濃度の関係を示す破過曲線図(吸収缶に添付)などにより、使用限度時間をあらかじめ設定する。


☐ 7.保護めがね・遮光保護具


保護めがねは、飛散粒子や薬品の飛沫などの障害を防ぐために使用する保護具である。一方、遮光保護具は有害光線から眼を保護するもので、有害光線を生じるアーク溶接・切断作業、高熱作業などの作業内容に応じて適切な遮光度番号のものを使用する。


☐ 8.防音保護具


防音保護具は、耳栓と耳覆い(イヤーマフ)に区分されている。85dB(A)以上になると環境改善または防音保護具の着用が必要とされるが、耳栓と耳覆いのどちらを選ぶかは作業の性質や騒音の特性で決まる。また、両者を併用すると、防音効果を高められる。


特殊健康診断


☐ 9.特殊健康診断


職場で実施される健康診断には、一般労働者を対象とする一般健康診断のほか、特殊健康診断(特殊健診)がある。特殊健診は、労働衛生上有害な業務に従事する労働者を対象に行われる特別な健診で、その業務に起因する健康障害の予防や早期発見を目的としている。このため特殊健診の実施では、従事する作業内容と有害要因へのばく露状況を把握する必要があり、ほかの類似疾患との判別や、業務起因性についての判断が、一般健康診断よりー層強く求められる。また、有害な業務への配置替えの際に行う特殊健診には、業務適性の判断とその後の業務の影響を調べるための基礎資料を得るという目的もある。


☐ 10.法令に基づく特殊健診


特殊健診には、法令に基づくものと行政指導によるものがある。法令に基づく特殊健診には次のものがある。
◆法令に基づく特殊健診の対象業務と健診項目の例
・じん肺健康診断(じん肺にかかるおそれのある粉じん作業):胸部全域のエックス線写真検査
・高気圧作業健康診断(高圧室内業務または潜水業務):関節、腰、耳鳴り等の検査、四肢の運動機能検査
・電離放射線健康診断(有害放射線にさらされる業務):白血球数、赤血球数の検査、白内障、皮膚の検査
・鉛健康診断(鉛等の取扱い業務、鉛蒸気発散場所等での業務):血中の鉛量、尿中のデルタアミノレブリン酸量の検査
・有機溶剤等健康診断(有機溶剤の取り扱い業務その他):尿中蛋白の有無の検査、尿中の代謝物質の検査


☐ 11.行政指導による特殊検診


行政指導(厚生労働省が発する通達)によって特殊健診を必要とされる業務には、強烈な騒音を発する場所における業務、重量物の取扱いなど腰痛の原因となる業務、VDT作業、チェーンソー等の振動工具を取り扱う業務などがある。VDT(Visual Display Terminals)作業とは、パソコン等のディスプレイ画面を見ながらキーボードを操作する作業をいい、眼の疲れ、腰痛・肩こりなどを訴えやすい。また、振動工具の取扱い業務では寒冷期にレイノー現象が生じやすい。このため、振動工具取扱い作業者に対する特殊健診を年に2回実施する場合は、そのうち1回を冬期に行うようにする。


☐ 12.有害物質等による健康障害の特徴


有害物質等による健康障害は、初期または軽度の場合はほとんどが無自覚であるといわれる。そのため、医師が患者に病状などを質問する「問診」より、検査結果などの他覚的所見によって早期に発見されることのほうが多い(検査結果が出るまで気づかない)。これに対し、VDT作業や振動工具を取り扱う業務による健康障害は、他覚的所見より自覚症状のほうが先行して現れる愁訴先行型である。ちなみに愁訴とは苦しみなどを訴えること。


☐ 13.生物学的モニタリング


生物学的モニタリングとは、有害物の体内摂取量や有害物による軽度の影響の程度を把握するために、血液や尿などの生体試料を分析することをいう。特殊健診には鉛健康診断や有機溶剤等健康診断のように、健診項目として生物学的モニタリングを行うものがある。有機溶剤については、生物学的半減期が短いことから、尿中の有機溶剤代謝物の量を検査する際、作業終了後の所定時間に採取しないと信頼性のあるデータが得られない。このため、採尿の時刻を厳重にチェックする必要がある。


☐ 14.有機溶剤の生物学的半減期


主な有機溶剤の生物学的半減期は次の通り。
トルエン:1.5時間
キシレン:3.0時間
ジメチルホルムアミド:4.0時間
ノルマルヘキサン:15.0時間
トリクロルエチレン:75.0時間











































衛生管理者 第1種・第2種 3-1 労働衛生(有害業務以外)


温熱環境および必要換気量


☐ 1.温度感覚と温熱指数


温熱環境は気温、湿度、気流および放射熱(ふく射熱)の4つの温熱要素によって決定される。人が暑さや寒さを感じる「温度感覚」も、これら4つの温熱要素によって影響される。「温熱指数」とはこの温度感覚を表す尺度となるもので、代表的なものに実効温度(感覚温度)、不快指数、WBGT(湿球黒球温度)、TGEがある。


☐ 2.実効温度(感覚温度)


実効温度とは、温熱要素のうち気温、湿度、気流の3要素の組み合わせによる総合的な効果を実験的に求め、その程度を1つの温度指標で表したものである。感覚温度、有効温度とも呼ばれる。気温と湿度は、放射熱(ふく射熱)を防げるアスマン通風乾湿計で測定し、気流の測定には熱線風速計を用いる。


☐ 3.不快指数


不快指数とは、温熱環境の不快度を表す指標で、乾球温度と湿球温度の測定値から求められる(気流は考慮されない)。次の式で算出され、不快指数が75で半数の人が、80以上で大多数の人が、それぞれ不快と感じる。
不快指数=0.72× (乾球温度+湿球温度)+40.6  
(温度が「摂氏(℃ )」の場合)


☐ 4.黒球温度とWBGT


黒球温度とは、放射熱(ふく射熱)を吸収する黒球の温度上昇を測定したもので、黒球温度計で計測される。WBGT(湿球黒球温度)は暑熱環境のリスクを評価するための指標で、自然湿球温度(自然気流の中での湿球温度)、黒球温度、乾球温度の測定値から求める。屋外で太陽照射がある場合、次の式で算出する。
WBGT=0.7× 自然湿球温度+0.2× 黒球温度+0.1× 乾球温度


☐ 5.TGE


TGEは、高温環境下の作業場での評価指数で、T(作業場平均気温)、G(平均黒球温度)、E(平均エネルギー代謝率)をかけ合わせて算出する。


☐ 6.至適温度


暑からず、寒からずの感覚を伴う温度を至適温度という。作業強度が強かったり、作業時間が長かったりするときは、至適温度が一般に低くなる(低温を快適と感じる)。逆に、体温が下がっているときは、至適温度は高くなる(高温を快適と感じる)。


☐ 7.必要換気量


新鮮な外気中の酸素の濃度は約21%、二酸化炭素の濃度は0.03~0.04%。これ対して、ヒトの呼気に含まれる酸素の濃度は約16%、二酸化炭素の濃度は約4%。このため、室内で作業を続けていると二酸化炭素の濃度が徐々に増加していく。必要換気量とは、室内のこうした空気の清浄度を保つために最小限入れ替える必要のある空気の量をいい、通常、 1時間に交換する空気量で表す。送風機などを用いる機械換気の場合、清浄度の目安とされる室内二酸化炭素基準濃度は、0.1%(=1000ppm)である。


☐ 8.必要換気量の算出式


外気によって換気を行うとき、必要換気量は、室内に居る者が1時間に呼出する二酸化炭素量を、室内の二酸化炭素基準濃度から外気の二酸化炭素濃度を引いた値で割ることによって算出する。したがって、必要換気量はそこで働く者の労働の強度によって増減する。
1人当たりの必要換気量(m3/h)=在室者(1人)が呼出する二酸化炭素量(m3/h)/(室内の二酸化炭素基準濃度) - (外気の二酸化炭素濃度)


食中毒


☐ 9.食中毒とその原因物質


飲食物に含まれる有害な物質の摂取によって発症する健康被害を食中毒という。食中毒の原因となる物質には微生物(細菌、ウイルス)、自然毒(フグ、毒キノコ等)、化学物質(農薬、有害金属等)などがある。日本で発生する食中毒の大部分は微生物性食中毒で、細菌性食中毒とウイルス性食中毒に分かれる。


☐ 10.細菌性食中毒


細菌性食中毒はさらに、感染型と毒素型に分かれる。
①感染型:食物に付着した細菌そのものの感染が原因となって食中毒を起こすタイプ。食物とともに体内に取り込まれた細菌が腸管内でさらに増殖し、症状を引き起こす。
例)腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ菌
②毒素型:細菌が増殖する際に産生する毒素が原因物質となって症状を引き起こすタイプ。
例)黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌、ウェルシュ菌


☐ 11.腸炎ビブリオ


腸炎ビブリオは塩分を好み、海水程度の濃度3%前後でよく増殖することから、病原性好塩菌とも呼ばれる。主に海産の魚介類を介して食中毒を起こすため、かつて日本人が魚を多く摂取していたころは発生件数が最も多かったが、近年は減少傾向にある。
・主な症状:胃痙攣様の腹痛、水様下痢、発熱、嘔吐
・潜伏期間:10~ 20時間(感染してから症状が現れるまで)


☐ 12.カンピロバクター


カンピロバクターは鶏、牛、豚などの家畜の腸管内に生息して食肉を汚染する。近年、発生件数の最も多い食中毒で、食肉(特に鶏肉)によるものが増加傾向にある。
・主な症状:腹痛、下痢、発熱
・潜伏期間:2~ 7日間


☐ 13.サルモネラ菌


サルモネラ菌は、ヒトや動物の消化管に生息する腸内細菌で、鶏卵、牛レバ刺しなどが原因食品となりやすい。
・主な症状:激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐、脱力感
・潜伏期間:12~24時間(3日に及ぶこともある)


☐ 14.ブドウ球菌


ブドウ球菌食中毒は、黄色ブドウ球菌に汚染された食品中で産生されるエンテロトキシンという毒素が原因となる。この毒素は熱に強く、多少の加熱では無毒化されない。黄色ブドウ球菌は、化膿した傷口、鼻咽頭などに存在する。
・主な症状:嘔吐、腹痛、下痢
・潜伏期間:3時間程度


☐ 15.ボツリヌス菌
ボツリヌス菌が食品内で産生するボツリヌス毒素によって食中毒が起こる。この毒素は、神経伝達物質の放出を阻害する神経毒で、主に神経症状が現れ、致死率が高い。
・主な症状:筋力低下、視力障害、呼吸困難
・潜伏期間:8~ 36時間


☐ 16.セレウス菌
セレウス菌は、毒素によって嘔吐型と下痢型に分かれる。
・主な症状:吐き気や嘔吐、または下痢や腹痛
・潜伏期間:嘔吐型 1~5時間、下痢型8~16時間


☐ 17.ウェルシュ菌
ウエルシュ菌は、腸管に達すると増殖して毒素をつくる。
・主な症状:下痢、腹痛(給食などでの集団感染が多い)
・潜伏期間:8~20時間



































衛生管理者 第1種・第2種 3-2 労働衛生(有害業務以外)


救急処置


☐ 1.骨折とは


外力によって骨に変形や破壊が起こり、骨の組織の連続性が途絶えた状態を骨折という。完全に連続性を失ったものを完全骨折、連続性が完全には失われていないもの(ひびが入った状態)を不完全骨折として区別する。


☐ 2.単純骨折と複雑骨折


単純骨折は、皮膚の下で骨が折れているが、皮膚にまで損傷が及んでいないものをいう(閉鎖骨折、皮下骨折)。これに対し複雑骨折は、皮膚や皮下組織の損傷を伴う(開放骨折)もので、骨折端が皮膚を破って外に出ている場合もある。感染が起こりやすい。


☐ 3.骨折の応急手当て


骨折部位(または骨折が疑われる部位)は動かさずに、安静を保つ。出血していたら先に止血する。骨折部の固定のため副子(添え木)を当てるときは、骨折した部位の両端の関節を十分に固定できる長さのものを用い、先端が手先や足先から少し出るようにする。負傷者を搬送するとき、脊髄損傷が疑われる場合は、硬い板の上に乗せて搬送する。


☐ 4.出血および止血法


出血は動脈性出血、静脈性出血、毛細血管性出血に分類され、出血により血液成分が体外に移行するものを外出血、体内に移行するものを内出血という。胸部や頭部の打撲の場合は内出血に注意する。ヒトの血液量は体重1kg当たり約80mlで、体内の全血液量の3分の1程度が急激に失われると、出血によるショックを経て生命に危険が及ぶ。このため、大量出血の場合には直ちに止血する。止血の方法には直接圧迫法、間接圧迫法および止血帯法がある。


☐ 5.直接圧迫法


直接圧迫法とは、出血している部分をガーゼやハンカチなどで直接圧迫する(強く押さえる)、最も簡単で効果的な方法である。四肢(両手、両足)の出血では、大きな動脈からの出血以外はほとんどの場合、この方法で止血できる。


☐ 6.直接圧迫法


止血処置を行う際は、感染を防ぐため、ゴム手袋を着用したりプラスチック袋を活用したりして血液に直接触れないようにします。


☐ 7.間接圧迫法


間接圧迫法とは、出血している部分より心臓に近い部位の動脈(止血点)を圧迫する方法で、直接圧迫法を行うまでの応急措置とされる。出血が額、こめかみあたりの場合は、耳の中央前部の動脈を圧迫する。上肢の場合は、上腕中央内側を親指で骨に向かって強く圧迫する。


☐ 8.止血帯法


止血帯法は、直接圧迫法では止血が困難な場合に行う方法である。三角巾、手ぬぐい、ネクタイなど、なるべく幅の広いものを止血帯として用いる。


☐ 9.熱傷とは


熱傷とは熱、化学薬品、放射線などが原因で生じる体表組織の局所的損傷をいう。一般には「火傷」と呼ばれる。熱傷の面積が体表面の30%(広範囲熱傷)に達すると、非常に危険な状態であるといわれる。また、45℃ 程度の熱源ヘの長時間接触による低温熱傷は一見、軽症に見えても深度があり、難治性の場合が多い。


☐ 10.熱傷の深度


熱傷の深度はI~Ⅲ度に分類され、Ⅲ度が最も重症である。
Ⅰ度:赤くなり、熱をもつ---ひりひり痛む
Ⅱ度:水疱(水ぶくれ)ができる---強く焼けるような痛み
Ⅲ度:ただれる、蒼白になる---痛みを感じなくなる


☐ 11.熱傷の応急手当


熱傷の場合、すぐに水をかけて十分冷やすことが応急手当てのポイントである。化学薬品がかかった場合でも、直ちに水で洗浄する。着衣の上から熱傷した場合は、無理に脱がさず、着衣のまま水をかけて冷やす。脱がす場合には熱傷面に付着している衣類を残し、その周辺部だけを切り取る。熱傷が広範囲の場合は、全体を冷却し続けると低体温になるおそれがあるため注意する。熱傷部位が広くショックに陥った場合は、寝かせて足を高くする体勢をとらせる。なお、水疱は破らないよう、清潔なガーゼや布で軽く覆う。


☐ 12.一次救命処置の手順


一次救命処置(BLS)には、胸骨圧迫および人工呼吸による心肺蘇生(CPR)と自動体外式除細動器(AED)の使用が含まれる。


☐ 13.気道の確保


傷病者の気道を確保するときは、仰向けに寝かせた傷病者の顔を横から見る位置に座り、片手で傷病者の額を押さえながら、もう一方の手の指先を傷病者のあこの先端に当てて持ち上げる。なお、人工呼吸を気道が確保されていない状態で行うと、吹き込んだ息が胃に流入して胃が膨張し、内容物が口のほうに逆流して気道閉塞を招くことがある。


☐ 14.胸骨圧迫と人工呼吸


胸骨圧迫は、胸が5cm程度沈む強さで胸骨の下半分を圧迫し、 1分間に約100回のテンポで行う。また、人工呼吸は1回の息の吹き込みに約1秒かけ、傷病者の胸が上がるのが見てわかる程度の量の息を吹き込む。


労働衛生管理統計の指標


☐ 15.病休度数率と病休件数年千人率


病休度数率とは、在籍労働者の延実労働時間100万時間当たり何件の疾病休業があったかを示す。これに対し、病休件数年千人率とは、在籍労働者1000人当たり何件の疾病休業があったかを示す。
病休度数率=疾病体業件数/在籍労働者の延実労働時間数×100万
病体件数年千人率=疾病休業件数/在籍労働者数×1000


☐ 16.病休強度率と疾病休業日数率


病休強度率とは、在籍労働者の延実労働時間1000時間当たり何日の疾病体業延日数があったかを示す。これに対し、疾病休業日数率とは、在籍労働者の延所定労働日数100日当たり何日の疾病休業延日数があったかを示す。
病体強度率=疾病体業延日数/在籍労働者の延実労働時間数×1000
疾病休業日数率=疾病休業延日数/在籍労働者の延所定労働日数×100





衛生管理者 第1種・第2種 3-3 労働衛生(有害業務以外)


作業管理とVDT作業


▢ 1.作業管理の内容


作業環境を良好な状態に維持することを「作業環境管理」というのに対し、労働者の作業そのものをコントロールして有害因子のばく露や業務に起因する健康障害を防止することを「作業管理」という。その内容は作業強度、作業密度、作業時間、作業姿勢、休憩など広範にわたる。作業管理を進める際は、職場の実状を把握することが基本で、衛生管理者が作業者とともに改善方法を検討することが有効である。手順としては、労働負荷の程度、作業手順、作業姿勢など作業そのものの分析から始める。また作業管理の手法としては、心身に対する負荷の少ない作業の手順や方法などを定めることが必要となる。これを作業標準、あるいはマニュアルと呼ぶ。
作業管理には、作業標準による作業の進め方について教育することも含まれます。


▢ 2.産業疲労


産業疲労とは、労働負荷が大きすぎるために引き起こされるもので、作業管理を進める際には無視できない。疲労の回復には日常生活が大きく影響するため、作業管理を進めるには労働者の日常生活についても考慮することが大切である。


▢ 3.照明の種類と照度


作業面に光を直接当てる照明を直接照明といい、天井や壁に光を当て、その反射光で作業面を照らす照明を間接照明という。また、作業場全体を明るくする全般照明は、作業面だけを明るくする局部照明の10分の1以上の照度を確保することが望ましい。照度とは、平面状の物体に照射された光の明るさの度合い(単位:ルクス)をいう。


▢ 4.VDT作業 における労働衛生管理のためのガイドライン


厚生労働省は、VDT作業を行う労働者の心身の負担を軽減するため「VDT作業における労働衛生管のためのガイドライン」を策定している。ポイントは次の通りです。
ディスプレイ画面上の照度は500ルクス以下、書類とキーボード上の照度は300ルクス以上とする(この場合の照度とはディスプレイ画面等への入射光の明るさ)
ディスプレイ画面との視距離はおおむね40cm以上を確保するようにし、ディスプレイ画面の上端は、眼の高さと同じかやや下になることが望ましい
ディスプレイ画面の上端は眼の高さよりやや下になることが望ましい。
単純入力型(作成された資料等を機械的に入力する作業)または拘束型(作業場所に在席することを拘束されるコールセンター業務など)の場合、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10~15分の体止時間を設け、一連続作業時間内に1~2回程度の小休止を設けること


▢ 5.VDT健診


VDT作業従事者に対する特殊健康診断の検査項目には、眼疲労やストレス等に関する「自覚症状の有無の検査」のほか、視力や調節機能等についての「眼科学的検査」、上肢の運動機能等の「筋骨格系に関する検査」がある。なお、VDT健診は、一般健康診断の際に併せて実施してもよいとされている。


健康の保持増進


▢ 6.健康測定


「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」では、労働者の健康保持増進のための具体的な措置として、「健康測定」の実施と、その結果に基づく「健康指導」について定めている。健康測定とは、健康指導を行うために実施する生活状況調査や医学的検査などをいう。疾病や健康障害の早期発見に重点をおいた、従来の健康診断とは目的が異なることに注意する。


▢ 7.健康測定の主な内容


生活状況調査:仕事の内容、通勤状況、趣味・嗜好、運動習慣・運動歴、食生活などを調査する。
医学的検査:労働者の健康状態を主として身体面から調べる。疾病などの発見ではなく、健康指導のための情報入手を目的とする。
運動機能検査:筋力、平衡性、敏捷性、柔軟性、全身持久性の検査を行う


▢ 8.健康指導


健康指導健康測定の結果に基づき、健康指導が行われる。健康指導には運動指導、保健指導、メンタルヘルスケア、栄養指導が含まれる。


▢ 9.運動指導


運動指導担当者が、労働者個々の運動プログラムを作成し、運動を実践しながら指導を行う。労働者が健康状態に合った適切な運動を日常生活に取り入れる方法を習得することを目的とする。


▢ 10.保健指導


勤務形態や生活習慣からくる健康上の問題を解決するため睡眠、喫煙、飲酒、口腔保健など健康的な生活への指導と教育を、職場生活を通して行う。


▢ 11.労働者の心の健康の保持増進のための指針


厚生労働省は、事業場におけるメンタルヘルス対策を推進するため、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を策定している。この指針では、次の事項に留意することとしている。
・心の健康については、客観的な測定方法が十分確立していないため評価が容易でなく、また、心の健康問題の発生過程は個人差が著しいため、そのプロセスを把握しにくい
・労働者の心の健康は、職場の配置や人事異動、組織などの人事労務管理と密接に関係する要因によって大きな影響を受けやすい。このため、メンタルヘルスケアを適切に進めるには、人事労務管理との連携が必要となる場合が多い
・労働者の心の健康は、職場におけるストレス要因のみならず、家庭や個人生活など、職場外のストレス要因の影響を受けている場合も多い
・メンタルヘルスケアを進めるに当たっては、健康情報を含む労働者の、個人情報の保護および意思の尊重に留意することが重要である


▢ 12.4つのケア


「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、以下を継続的、計画的に行うことが重要としている。
セルフケア:労働者自身が心の健康について理解し、自らのストレスの予防や対処を行う
ラインによるケア:管理監督者が、職場環境などの改善や労働者からの相談に対応する
事業場内産業保健医療サービス分野スタッフなどによるケア:産業医、衛生管理者などが労働者や管理監督者に対し支援する
事業場外資源によるケア:メンタルヘルスケアの専門的知識を有する事業場外の機関や専門家を活用し支援を受ける


喫煙と生活習慣病


▢ 13.職場における喫煙対策のためのガイドライン


厚生労働省は、事業場での喫煙対策を推進するため、「職場における喫煙対策のためのガイドライン」を策定している。適切な喫煙対策として、事業場全体を常に禁煙とする「全面禁煙」があるが、本ガイドラインでは一定要件を満たす喫煙室等でのみ喫煙を認め、それ以外を禁煙とすることで受動喫煙を防止する「空間分煙」を中心に対策を講じている。
ポイントは以下の通り。
・空間分煙による施設・設備面の対策では、可能な限り喫煙室(喫煙のための独立した部屋)を設置し、これが困難な場合には喫煙コーナーを設置する
・喫煙室等には原則として、たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式の局所排気装置または換気扇等の喫煙対策機器を設置する。やむを得ず、屋内に排気する方式の空気清浄装置を設置する場合は、ガス状の成分を除去できないことに留意して対策を講じる
・浮遊粉じんの濃度を0.15mg/面以下、一酸化炭素の濃度を10ppm以下とするよう、必要な措置を講じる
・喫煙室等から非喫煙場所へのたばこの煙やにおいの漏れを防止するため、それらの境界で喫煙室等へ向かう気流の風速を0.2m/s以上とするよう必要な措置を講じる


▢ 14.受動喫煙


自らの意思にかかわらず、環境中のたばこの煙を吸入することを受動喫煙という。妊婦や呼吸器等に疾患をもつ労働者は受動喫煙による影響を受けやすいので、空間分煙を徹底する必要がある。また、受動喫煙による健康への影響等について、教育や相談を行うことも重要である。


▢ 15.虚血性心疾患


冠状動脈などに障害があり、心筋への血液の供給が不足したり途絶えたりすることで発症する障害を虚血性心疾患という。発症の危険因子には、喫煙や高血圧、高脂血症(脂質異常症)などが挙げられる。心筋の一部に可逆的虚血が起こる狭心症と、不可逆的な心筋壊死が起こる心筋梗塞に大別される。


▢ 16.狭心症と心筋梗塞


狭心症:胸の圧迫感や痛みが生じ、通常は5分程度、長くても15分以内で消失する
心筋梗塞:激しい胸痛が突然起こり、「締めつけられるように痛い」「胸が苦しい」といった症状が1時間以上に及ぶ場合がある


▢ 17.脳血管障害


脳血管障害は、脳の血管が破れる出血性病変と脳の血管が詰まる虚血性病変(脳梗塞)に分類される。症状として頭痛、吐き気、手足のしびれ、麻痺、言語障害、視覚障害などが現れる。


▢ 18.出血性病変の種類


脳出血(脳内出血):脳動脈の一部が切れ、脳内に血液が流れ出る場合をいう。その血液が固まり、脳を圧迫することによって障害が起こる
くも膜下出血:脳表面のくも膜下腔で出血する場合をいう。「頭が割れるような」「ハンマーでたたかれたような」急激で激しい頭痛が特徴


▢ 19.虚血性病変(脳梗塞)の種類


脳血栓:脳血管自体で動脈硬化が進行し、血液が順調に流れなくなって血栓(血液の塊)ができ、これによって脳血管が詰まる場合をいう
脳塞栓:脳以外の場所(心臓や動脈壁)でできた血栓が剥がれ、血管を流れてきて脳血管を詰まらせる場合をいう


▢ 20.生活習慣病


偏った生活習慣の積み重ねによって発症する病気を「生活習慣病」と総称する。なかでも糖尿病(耐糖能異常)、高血圧症、高脂血症(脂質異常症)および肥満は、合併すると深刻な脳・心臓疾患にいたるリスクが高まるため「死の四重奏」と呼ばれている。日本人の3大死因である悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患もこの生活習慣病に含まれる。偏った生活習慣には食べすぎ・飲みすぎ、運動不足、ストレス、喫煙などが挙げられる。























衛生管理者試験ガイダンス


資格の紹介


常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生管理者免許を有する者のうちから労働者数に応じ一定数以上の衛生管理者を選任し、安全衛生業務のうち、衛生に係わる技術的な事項を管理させることが必要です。
第一種衛生管理者免許を有する者は、すべての業種の事業場において衛生管理者となることができます。
第二種衛生管理者免許を有する者は、有害業務と関連の少ない情報通信業、金融・保険業、卸売・小売業など一定の業種の事業場においてのみ、衛生管理者となることができます。
主な職務は、労働者の健康障害を防止するための作業環境管理、作業管理及び健康管理、労働衛生教育の実施、健康の保持増進措置などです。


衛生管理者は何をする


衛生管理者の主な仕事は、作業環境の管理、労働者の健康管理、労働衛生教育の実施、健康保持増進措置などです。
少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。
また、衛生委員会を設置する場合、構成メンバーとして指名されます。


いつ衛生管理者の選任義務が発生する


衛生管理者を選任する義務が発生するのは、事業場単位で見て常時50人以上の労働者がいる事業場になります。
「事業場」とは、同じ場所で相関連する組織的な作業をできる場所の単位のことで、同じ会社であっても、支店、支社、店舗ごとに1事業場となります。
衛生管理者は専属でなければならず、他の事業場との兼任はできません。
ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合で、衛生管理者の中に労働衛生コンサルタントがいるときは、1人は非専属で差支えありません。


事業場の規模ごとに選任しなければならない衛生管理者の数は変わります。


事業場の規模(労働者数)
衛生管理者の数
50人以上~200人以下 :1人
201人以上~500人以下 :2人
501人以上~1,000人以下 :3人
1,001人以上~2,000人以下 :4人
2,001人以上~3,000人以下 :5人
3001人以上 :6人


事業場の労働者数が50名を超えるタイミングでは、衛生管理者の選任の他にも、衛生委員会の設置、産業医の選任など、複数の義務が発生します。
そのため、何をすればいいかわからずに困っている人事・労務担当者様は非常に多いのです。
法律で義務付けられているこれらの業務を実施していく上で鍵になるのが、企業の健康管理業務の柱として助言ができる「頼れる産業医」を選任することです。


衛生管理者を置かなかった場合の罰則


選任義務があるのに衛生管理者を置かなかった場合、50万円以下の罰金に処するという罰則規定が、労働安全衛生法で第120条に記載されています。
選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告する必要があります。


誰が衛生管理者の資格を取得できる


代表的な受験資格は以下になります。次のうちいずれか一つに該当すれば、受験できます。
大学または高等専門学校(短大を含む)を卒業し、労働衛生の実務経験が1年以上ある。
高等学校を卒業し、労働衛生の実務経験が3年以上ある。
労働衛生の実務経験が10年以上ある。
労働衛生の実務の確認として、事業者証明書が必要です。


衛生管理者の資格取得までの流れ


衛生管理者の免許を取得するには、公益財団法人安全衛生技術試験協会の行う国家試験に合格する必要があります。試験は、全国7ブロックの安全衛生技術センターで、毎月1~3回程度行なわれます。
詳しい試験日・受験場所については、公益財団法人 安全衛生技術試験協会 の試験情報ページをご覧ください。
試験2週間前までに受験申し込みをし、衛生管理者国家試験を受験し、試験に合格すると資格を取得できます。衛生管理者の資格取得までの流れは?
衛生管理者の免許を取得するには、公益財団法人安全衛生技術試験協会の行う国家試験に合格する必要があります。試験は、全国7ブロックの安全衛生技術センターで、毎月1~3回程度行なわれます。


詳しい試験日・受験場所については、公益財団法人 安全衛生技術試験協会 の試験情報ページをご覧ください。
試験2週間前までに受験申し込みをし、衛生管理者国家試験を受験し、試験に合格すると資格を取得できます。


第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の違い


第一種免許は全業種で対応可能ですが、第二種免許では、対応できない業種があります。
第二種は、有害業務と関連の少ない情報通信業、金融・保険業、卸売・小売業など一定の業種においてのみ、衛生管理者となることができます。


第二種衛生管理者免許では対応できない業種は、下記の通りです。
農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業、清掃業


衛生管理者の試験内容


(出題内容、試験時間、配点)
試験科目は第一種衛生管理者と第二種衛生管理者ともに、以下の3つの範囲から出題されます。
(1)関係法令(労働基準法、労働安全衛生法)
(2)労働衛生
(3)労働生理
各範囲の出題数・配点は以下のように、少し異なります。


<第一種衛生管理者>
(1)関係法令 17問(配点150点)
(2)労働衛生 17問(配点150点)
(3)労働生理 10問(配点100点)
※合計44問:試験時間3時間


<第二種衛生管理者>
(1)労働衛生 10問(配点100点)
(2)関係法令 10問(配点100点)
(3)労働生理 10問(配点100点)
※合計30問:試験時間3時間


衛生管理者の試験の合格基準と合格率


合格基準は、範囲ごとの得点が40%以上で、かつ、その合計が60%以上であることです。
2019年度の合格率は「第一種衛生管理者」が46.8%、「第二種衛生管理者」が55.2%と発表されています。衛生管理者の試験の合格基準と合格率は?
合格基準は、範囲ごとの得点が40%以上で、かつ、その合計が60%以上であることです。
2019年度の合格率は「第一種衛生管理者」が46.8%、「第二種衛生管理者」が55.2%と発表されています。


合格後の手続き


衛生管理者試験は第一種と第二種ともに、合格後に自分で免許の申請をしなければなりません。
都道府県労働局及び各労働基準監督署にある免許申請書に必要事項等を記入し、免許試験合格通知書と必要書類を添付のうえ、東京労働局長に免許申請をすることで、はじめて免許証が交付されます。


衛生管理者の資格に、更新の試験は不要


衛生管理者の資格に有効期限はないため、一度取得すると更新手続きは不要です。


安全衛生技術試験協会ホームページ

衛生管理者資格試験 重要項目 らくらく丸暗記BOOK

2022年3月28日 発行 初版

著  者:上野和夫
発  行:ペネトレイト

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上野和夫

「資格試験のペネトレイト」で医療・介護・福祉の仕事に携わる方に必須の資格取得のお手伝いをしています。 私は、薬剤師、社会福祉士、介護支援専門員の免許を持っていますが、現在は薬剤師の仕事に従事しています。 資格試験合格のノウハウは1つ、シンプルな学習が大切、そのための教材を公開しています。 ホームページ「資格試験のペネトレイト」http://penetrateblog.com/に教材の販売コーナーと無料の問題集を集めた棚を提供しています。 私と一緒に資格試験合格を目指しましょう。

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