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福祉住環境コーディネーター2級について
高齢者や障害者を取り巻く社会状況と福祉住環境コーディネーターの意義
障害のとらえ方と自立支援のあり方
疾患別・障害別にみた不便・不自由と福祉住環境整備の考え方
相談援助の考え方と福祉住環境整備の進め方
福祉住環境整備の基本技術と実践に伴う知識
在宅生活における福祉用具の活用
ガイダンス
登録販売者試験 合格のための重要事項短文集 暗記BOOK
ー試験合格には「短文で正しい知識」を身につけることが大切!ー
本書について
本書は、福祉住環境コーディネーター2級の筆記試験によく出題される事項を集めています。
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福祉住環境コーディネーター2級
第1章 高齢者や障害者を取り巻く社会状況と福祉住環境コーディネーターの意義
高齢者の生活状況と住環境整備
▢ 1.日本の人口に占める高齢者の割合は、2035年に33%を超えると予測されています。
人口に占める65歳以上の高齢者の割合を高齢化率といいます。
高齢化率が7%を超えると→ 高齢化社会
14%を超えると→ 高齢社会
21%を超えると→ 超高齢社会
日本では人口の高齢化が急速に進み、2012(平成24)年に高齢化率が24.1%になった。2035年には、高齢化率が33%を超えると予測されています。
▢ 2.世帯主が65歳以上の高齢者世帯、特に高齢者の単独世帯が著しく増加しています。
日本の人口は2005(平成17)年以降、減少に転じているが、単独世帯が増えていることなどにより、世帯数は2019(平成31)年まで増加し続けると予測されています。
世帯主が65歳以上の高齢者世帯は、その時点で総世帯数の38%程度に達し、その後も増加し続ける見込みです。特に高齢者の単独世帯の増加が著しく、2035年には高齢者世帯全体の37.7%を占めるとみられます。
▢ 3.2015(平成27)年に、「団塊の世代」は全員が65歳以上になります。
戦後の第1次ベビーブームの時期に生まれた、いわゆる「団塊の世代」は、 2015(平成27)年には全員65歳以上に、2025(平成37)年には75歳以上になります。
日本の人口構成において非常に大きな割合を占めるこの世代の高齢化により、高齢社会はピークを迎えます。
▢ 4.国民の約4割は、介護が必要になった場合に自宅で介護を受けたいと望んでいます。
介護が必要になったときに介護を受けたい場所
現在の自宅37.3%、介護付き有料老人ホーム・高齢者住宅に住み替え18.9%、特別養護老人ホーム・老人保健施設などに入所26.3%、病院に入院12.9%
▢ 5.高齢者のいる世帯では、持家率は比較的高いが、建築されてから年数の経つものが多い。
65歳以上の高齢者のいる世帯の持家率は83.4%で、全世帯の持家率61.1%に比べて高い水準となっている。しかし、高齢者のいる世帯の住宅の多くは、建築年数がかなり経っている上に、修理が必要なものも少なくないため、住環境の上では必ずしも充実しているとはいえません。
▢ 6.日本の住宅の約6割は木造住宅であるが、その割合は減少しています。
日本の住宅総数に占める木造住宅の割合は58.9%です。しかし木造住宅は次第に減少し、鉄筋コンクリート造などの非木造住宅が増えています。建築年数の古い木造住宅には、バリアフリー化がなされていないものが多い。
▢ 7.日本の従来の木造住宅は床面に段差が生じやすく、つまずきや転倒の原因となっています。
日本の従来の木造住宅の問題点の一つは、床面に段差が生じやすいことです。床面に段差があると、つまずきや転倒の原因になり、車いすなどの福祉用具の使用も困難になるため、高齢者や障害者の生活動作に大きな影響を与えます。
段差が生じる箇所は、玄関の敷居、上がりがまち、廊下と室内の境界、洋室と和室の境界などです。
▢ 8.日本の従来の木造住宅は尺貫法を基準としており、車いすで通行するには幅が狭い。
尺貫法は、日本古来の長さ、質量、面積などを表す単位であり、尺貫法で造られた木造住宅の廊下や階段、開口部などの幅員は、通常、柱芯―芯距離で3尺(910mm)になっています。
尺貫法(日本古来の長さ、質量、面積などの単位)1間(6尺)=1,820mm 半間(3尺)=910mm 1坪(2畳)=1,820mm× 1,820mm
▢ 9.日本の住宅面積の狭さが、高齢者や障害者の移動や福祉用具の使用を困難にしています。
日本の一般的な住宅の面積は欧米諸国などと比較すると狭く、一室当たりの面積も狭い。一方、近年は生活の洋式化や生活用品の多様化などにより屋内で使用する家具類が増え、それらが占める床面積も大きくなった。そのことにより、高齢者や障害者の室内移動が困難になっています。
▢ 10.住宅面積が狭いと、介助のためのスペースを確保することが困難になります。
介助が必要になった場合は、生活空間の中に介助のためのスペースが必要になるが、住宅面積が狭いと、そのスペースを確保することが困難です。
介助歩行では、介助者は通常、本人の真後ろではなく、身体を半分横にずらして歩行することが多い。廊下の幅員が狭い場合はそれが困難になります
▢ 11.床面からの立ち座り動作は、高齢者には不向きです。
日本では、従来、畳などの床面に座る床座という生活様式を基本としてきた。しかし、床面からの立ち座り動作は足腰に大きな負担をかけるため、一般に高齢者には不向きです。いすに腰かける洋風の生活様式のほうが、足腰への負担は小さい。同様に、和式便器からの立ち座り動作も高齢者には負担が大きく不向きです。
▢ 12.日本の従来の木造住宅は夏季の気候に合わせて造られており、冬季の寒さに弱い。
日本の気候は高温多湿なので、従来の木造住宅は、蒸し暑い夏を快適に過ごせるよう、夏季の気候に合わせて造られてきた。そのため、冬季の寒さを防ぐには適していません。
冬季の暖房により室内の温度差が大きくなると血圧が上昇しやすいので、循環器系の疾患をもつ高齢者の場合は特に注意を要します。
住環境整備の重要性・必要性
▢ 13.高齢者が在宅生活を送る期間が長期化しています。
身体機能の低下した高齢者は、従来の住宅構造では生活上の不便や不自由を強いられることが多く、高齢者の在宅生活が長期化することに伴い、住環境整備の重要性が高まっています。
高齢者の在宅生活が長期化している背景には、日本人の平均寿命が伸びたことや、施設福祉を中心とした従来の福祉施策が、在宅における生活支援へと転換してきたことなどがあります。
▢ 14.家族構成の変化や、さまざまな社会的要因により、家庭内の介護力は低下しています。
1960年代に顕著になった核家族化の進行や、女性の社会進出、共働きなどにより、高齢者の介護を家族だけで行うことは困難になってきた。高齢者の在宅生活を支援するためには、ホームヘルバーなどの人的サービスだけでなく、住環境整備も重要です。
▢ 15.不慮の事故は、例年死亡原因の上位に挙げられています。高齢者の場合、特に家庭内の事故による死亡者数が多い。
厚生労働省が毎年発表している「人口動態統計」による死亡原因の順位では、例年、悪性新生物(がん)、心疾患、肺炎、脳血管疾患、老衰などが上位を占めているが、それらに次いで多いのが不慮の事故です。不慮の事故の内訳は、若年層では交通事故が多いが、高齢者では家庭内の事故が交通事故を上回っています。家庭内の事故の中でも最も多いのは、浴槽内や、浴槽への転落による溺死です。
○ 家庭内事故による死亡者数
総数15,343人 65歳以上12,675人、不慮の溺死及び溺水5,498人 65歳以上4,984人、その他の不慮の窒息4,329人 65歳以上3,686人、転倒 転落2,745人 65歳以上2,293人、煙、火及び火炎への曝露1,195人 65歳以上767人、熱及び高温物質との接触115人 65歳以上108人
(参考)交通事故による死亡者数 6,414人 65歳以上3.462人
▢ 16.寝たきり高齢者の多くは「寝かせきり」だといわれています。
高齢者の身体機能が低下し、自力での移動が困難になった場合、移動を介助するより、ベッドに寝たきりの状態でいてくれたほうが介助者の労力が少なくてすむため、高齢者を「寝かせきり」にしてしまう場合があります。しかし、身体機能をできる限り維持し、生活の質(QOL)を向上させるためには、本来はなるべくベッドから離れる生活をすることが望ましい。
▢ 17.介護が必要な高齢者であっても、住環境整備を行うことによって、生活動作が自立することがあります。
生活動作が自立した場合、次のようなメリットがあります。
生活動作の自立が、本人の精神的な自立にもつながる。
介護者の負担が軽減される。
介護者と本人の関係が円滑になる。
介護保険制度の概要
▢ 18.1874(明治7)年に、明治政府による救貧制度「恤救規則」が制定されました。
「恤救規則」の内容は、共同体的な相互扶助を原則としており、救済の対象は、身寄りのない貧困の高齢者や児童などに限定されていました。1950(昭和25)年の新「生活保護法」により養老施設が設立されたが、要保護者の対象は、まだ貧困の高齢者に限られていました。
▢ 19.1963(昭和38)年に「老人福祉法」が制定施行されました。
「老人福祉法」により、低所得者を対象とする従来の救貧制度の枠を越えた、すべての高齢者を対象とする保健福祉制度が成立しました。
・高齢者の健康診査の実施
・老人福祉施設(養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム等)の設置
・老人家庭奉仕員(ホームヘルバー)の制度上への位置づけ
▢ 20.1973(昭和48)年に「老人福祉法」の一部改正が施行され、老人医療費が無料化されました。
「老人福祉法」の一部改正により70歳以上の高齢者の医療費が無料化されたが、過剰な受診や社会的入院などの問題をもたらし、医療費が著しく増大しました。
社会的入院とは、医学的に入院の必要がないか、すでに退院できる状態であるにもかかわらず、家庭に介護の担い手がいないなどの社会的な理由で長期入院を続けることをいいます。
▢ 21.1983(昭和58)年に「老人保健法」が施行されました。
「老人保健法」により、高齢者の医療費無料化は廃止され、医療費の一部は自己負担となった。自己負担分は、当初は定額負担で、負担額が段階的に引き上げられてきたが、2002(平成14)年からは自己負担1割りの定率負担になった。
2008(平成20)年の後期高齢者医療制度の実施に伴い、「老人保健法」は全面的に改正され、「高齢者の医療の確保に関する法律」に改称されました。
▢ 22.介護の社会化とは、高齢者の介護に社会全体で取り組むしくみをつくることです。
次のような要因により、介護の問題を家庭だけで解決することは困難になり、介護の社会化が求められるようになった。
・核家族化による高齢者の子どもとの同居率の低下
・女性の社会進出と共働き世帯の増加
・扶養意識の変化
・介護する側の高齢化 など
▢ 23.2000(平成12)年に「介護保険法」が施行されました。
1997(平成9)年に「介護保険法」が成立した。3年後の2000(平成12)年に施行され、わが国において介護保険制度がスタートした。
1963(昭和38)年 「老人福祉法」施行、1983(昭和58)年 「老人保健法」施行、2000(平成12)年 「介護保険法」施行
▢ 24.介護保険制度では、利用者がサービスを選択できるようになりました。
従来の老人福祉制度は、住民から申請を受けた行政機関(市町村)が、提供するサービスの内容や、サービスを提供する機関を決定する措置制度が基本であったが、介護保険制度ではその点が見直され、利用者本位の制度への転換が図られました。
措置制度から利用者本位の制度になった。
▢ 25.介護保険制度では、民間事業者の福祉サービスヘの参入が推進されました。
介護保険制度は、多様な民間事業者の参入により、福祉サービスに競争原理を導入し、サービスの質を向上させることをねらいの一つとした。設備や人員などが一定の条件を満たし、都道府県知事や市町村長による指定を受ければ、指定事業者として介護サービスに参入することができます。
▢ 26.高齢者の在宅生活を支援し、社会的入院をなくすことが、介護保険制度の基本理念の一つです。
介護保険制度は、従来「老人福祉」と「老人医療」に分かれていた高齢者の介護に関する制度を再編成し、介護を必要とする人が、住みなれた自宅や地域で、できる限り自立した生活ができるようにするため、必要なサービスが提供されるしくみをつくることを目指したものです。
介護保険制度の基本的な考え方
・利用者がサービスを選択できる利用者本位の制度
・ケアプランの作成により、ケアの総合化・パッケージ化を図る
・給付と負担の関係を明確にし、客観性・公平性を保つ
・民間事業者の参入を促進し、サービスの向上を図る
・在宅ケアを重視し、社会的入院を解消する
・利用者の生活の場である市町村が保険者となる
▢ 27.介護保険制度の運営主体となる保険者は市町村です。
保険者である市町村(東京都区部においては特別区)は、要介護認定、保険給付、第1号被保険者の保険料の賦課・徴収などの保険事業を行うほか、地域の介護サービスの基盤整備に努め、地域に密着した介護サービスの充実を図ることとされています。
▢ 28.介護保険制度の対象者は、40歳以上のすべての国民です。
対象者のうち、65歳以上の者を第1号被保険者、40歳以上65歳未満で医療保険に加入している者を第2号被保険者といいます。
介護保険の保険料の納付方法
第1号被保険者の場合は、老齢年金等を月額1万5千円以上受給している者は年金から天引き(特別徴収)、それ以外の者は個別に納付する(普通徴収)
第2号被保険者の場合は、加入している医療保険の保険料と一括して納付する
▢ 29.介護保険の保険給付の財源は、50%が保険料、50%が公費で賄われています。
公費負担の内訳は、国が25%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%です。
介護保険の財源構成
公費負担50%(国25%・都道府県12.5%・市町村12.5%)、保険料負担50%
▢ 30.介護保険の保険給付の受給要件は、第1号被保険者と第2号被保険者とで異なります。
介護保険の保険給付による介護サービスを利用することができるのは、日常生活において介護や支援を必要とするようになったときです。ただし、第2号被保険者の場合は、16種類の特定疾病(がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、骨折を伴う骨粗鬆症、認知症、パーキンソン病、脊髄小脳変性症など)が原因であるときに限られます。
▢ 31.介護保険のサービスを利用するためには、介護認定を受けることが必要です。
市町村の担当窓口に要介護認定の申請を行うと、調査員が家庭を訪問し、利用者の心身の状態や生活状況の調査を行います。要介護認定を受け、介護保険の居宅サービスを利用する場合は、要介護のレベルに応じて設定された利用限度額の範囲内で、介護サービスの利用計画(ケアプラン)を作成します。
▢ 32.要介護認定には、要介護1~ 5、要支援1、2のレベルがあり、数字が大きいほど程度が重い。
要介護1~ 5の認定を受けた人は介護給付を、要支援1、2の認定を受けた人は予防給付を受けることができます。
要支援の認定を受けた人に給付される予防給付は、介護給付の居宅サービスの名称に「介護予防」を冠したものです。
例:「訪問介護」→「介護予防訪問介護」
▢ 33.介護保険制度がスタートしてから5年余りの間に、要介護認定者は約2倍に増加しました。
介護保険制度がスタートしてからの要介護認定者の増加は、高齢者人口の増加をはるかに上回った。特に軽度者の増加が著しく、保険給付費も約2倍に増大したため、このままでは、将来、介護保険制度の維持が困難になることが予測されました。
▢ 34.在宅サービスの利用者数が伸びる一方、在宅ケアの基盤整備が不十分であることが明らかになりました。
護保険制度のスタートから5年余りで、サービスの利用者数は約2.3倍に増加した。特に在宅サービスの利用者数の伸びが著しく、約2.7倍に達した。しかし、重度者が在宅生活を続けることは難しいのが実情で、サービスの充実が求められていた。施設サービスに比べて、在宅サービスのほうが実質的な利用者負担が重いことも問題になった。
▢ 35.介護保険制度は、3年ごと(最初は5年目)に見直しが行われます。
介護保険制度のスタートから5年を経て最初の見直しが行われ、2005(平成17)年に「介護保険法」が改正(一部を除き翌年施行)され、予防重視型システムヘの転換が図られました。
予防重視型システム
非該当者:介護予防のスクリーニング(地域支援事業)
要支援・要介護者:要介護認定(予防給付、介護給付)
▢ 36.2005(平成17)年10月から、介護保険3施設の居住費、食費が利用者負担となりました。
在宅サービスと施設サービスの利用者負担の公平性を考慮して、2005(平成17)年10月から、介護保険3施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)の居住費、食費は、保険給付の対象外とされ、利用者が負担することとなりました。
▢ 37.2006(平成18)年から、地域の保健・医療・福祉・介護の充実を図るための中核機関として、地域包括支援センターが設置されました。
2006(平成18)年に改正「介護保険法」が全面施行され、地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みとして、地域包括支援センターが設置されました。地域包括支援センターには、保健師、主任介護支援専門員、社会福祉士が配置され、3者によるチームアプローチで地域住民への支援を行います。
▢ 38.2006(平成18)年から、介護支援専門員の1人当たり標準担当件数を引き下げ、1件当たりの単価を引き上げました。
2006(平成18)年に改正「介護保険法」が全面施行され、介護支援専門員の資質の向上を図るため、1人当たりの標準担当件数が50件から35件に引き下げられました。また、業務の実態を適切に反映するため、利用者の要介護度に応じた報酬体系が取り入れられました。
▢ 39.2008(平成20)年の法改正では、介護サービス事業者の不正再発防止策が講じられました。
介護サービスの事業所開設に関する不正が行われていたことが発覚し、社会問題になったことから、2008(平成20)年に「介護保険法」「老人福祉法」が一部改正され、不正再発防止策が盛り込まれました。
▢ 40.2011(平成23)年の「介護保険法」改正で、地域密着型サービスに、定期巡回・随時対応サービス、複合型サービスが創設されました。
介護保険制度の3度目の改革(改正法の施行は2012(平成24)年)が行われ、地域密着型サービスに、24時間対応の定期巡回。随時対応サービスや、複数の居宅サービス等を組み合わせて提供する複合型サービス等が創設されました。
高齢者向けの住宅施策の変遷と概要
▢ 41.1971(昭和46)年度に、自炊設備の付いた軽費老人ホーム(B型)が新たに創設されました。
軽費老人ホームは、1963(昭和38)年に施行された「老人福祉法」により創設された老人福祉施設の一つで、住宅事情や家庭環境のため自宅での生活が困難な高齢者が、比較的低額な料金で入居できます。軽費老人ホーム(B型)の創設に伴い、給食サービスのある従来のタイプをA型として区別しました。
▢ 42.1980(昭和55)年に、高齢者の公営住宅への単身入居が認められました。
従来、公営住宅には単身者の入居は認められていなかったが、1980(昭和55)年に「公営住宅法」が改正され、高齢者の単身入居が認められるようになりました。
公営住宅は、原則として同居する親族がいることが入居資格の要件とされ、高齢者や障害者には例外的に単身入居が認められていたが、2012年の「公営住宅法」改正により同居親族要件は廃止され、各地方公共団体の判断に委ねられることになりました。
▢ 43.1987(昭和62)年に、住宅行政と福祉行政の連携による、シルバーハウジング・プロジェクトが始まりました。
シルバーハウジング・プロジェクトは、高齢者等の生活特性に配慮してバリアフリー化がなされた公営住宅等と、生活援助員(ライフサポートアドバイザー)による日常生活支援サービス(安否の確認、緊急時の対応、一時的な家事援助など)を併せて提供します。高齢者世帯向けの公共賃貸住宅の供給事業です。
生活援助員の派遣は、介護保険制度の地域支援事業のうち、市町村が地域の実情に応じて実施する任意事業に含まれます。
▢ 44.1990(平成2)年に、軽費老人ホームの一形態としてケアハウスが制度化されました。
ケアハウスは、日常生活は自立しているが、身体機能の低下や高齢のため独立して生活するには不安がある60歳以上の人を入居対象とし、食事や入浴などの生活サービスを提供します。65歳以上の要介護者を対象とした介護型ケアハウスもあります。
軽費老人ホームの種類(在宅扱いとなり、介護が必要になったときは訪問介護などの在宅サービスを利用できる。)
・軽費老人ホーム(A型)は、 食事付き・所得制限あり
・軽費老人ホーム(B型)は、 自炊が原則・所得制限なし
・ケアハウスは、。食事付き・所得制限なし
▢ 45.1991(平成3)年度から、新設のすべての公営住宅・公団賃貸住宅において、一定の高齢化対応仕様が標準化されました。
1991(平成3)年度から、新設のすべての公営住宅、公団賃貸住宅において、床段差の解消、共用階段への手すりの設置などの高齢化対応仕様が標準化されました。
▢ 46.1997(平成9)年に、認知症高齢者グループホームが制度化されました。
認知症高齢者グループホームは、認知症の診断を受けた要介護認定者を対象とする施設で、認知症高齢者が5~9人の少人数で一つのユニットを構成し、家庭的な環境の中で、食事・入浴・排泄など生活全般の支援を受けながら、介護職員とともに共同生活を送ります。
▢ 47.1998(平成10)年に高齢者向け優良賃貸住宅制度が創設されました。
高齢者向け優良賃貸住宅は、高齢者に対応したバリアフリー化がなされ、緊急時対応サービスの利用が可能な賃貸住宅で、供給する事業者には、国・地方公共団体から建設・改良費や家賃の減額に要する費用が補助される制度であった(2011(平成23)年に、「サービス付き高齢者向け住宅」の制度に移行したため廃止)。
▢ 48.2000(平成12)年に、「住宅品確法」に基づく住宅性能表示制度が実施されました。
1999(平成11)年に制定された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品確法)」は、翌年施行され、住宅性能表示制度が実施されました。この制度は、建築主等の申請に応じて、第三者の評価機関が定められた基準に基づいて住宅の基本
性能を評価するもので、性能表示事項の一つに「高齢者等ヘの配慮に関すること」があります。移動時の安全性や介助のしやすさなどが5段階の等級で表示されます。
▢ 49.2001(平成13)年に「高齢者住まい法」が制定施行されました。
2001(平成13)年に制定・施行された「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」は、高齢者が安心して、快適に暮らせる住環境の整備を、持ち家、賃貸住宅の両面から推進することを目的とした法律です。
▢ 50.2011(平成23)年に「高齢者住まい法」が改正され、サービス付き高齢者向け住宅が新設されました。
2011(平成23)年に「高齢者住まい法」が改正されたことにより、高齢者向け優良賃貸住宅、高齢者円滑入居賃貸住宅、高齢者専用賃貸住宅の既存3施設は廃止され、新たに創設されたサービス付き高齢者向け住宅に一本化されました。
▢ 51.「高齢者住まい法」により、バリアフリーリフォームにおける高齢者向け返済特例制度が実施されました。
「高齢者住まい法」により、高齢者が居住する住宅をバリアフリー化する際の改修費用の融資について、リバースモーゲージのしくみを用いた特例制度が設けられました。
リバースモーゲージとは、住宅を担保にして金融機関から融資を受け、本人の生存中は利息のみを返済し、死亡後に担保の売却などにより返済するしくみです。
▢ 52.2006(平成18)年に「住生活基本法」が施行されました。
「住生活基本法」は、住宅の量を確保することを主眼とした戦後以来の住宅政策から、豊かな住生活の実現を目的とする政策への転換を図るための基本理念を示した法律です。同法に基づき、国と都道府県では、住生活基本計画を策定しています。
▢ 53.2006(平成18)年に「バリアフリー法」が制定・施行されました。
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」は、従来の「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)」と、「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」を統合・拡充したものである。従来、商業施設などの建築物のパリアフリー化と、道路や駅などの交通施設のバリアフリー化は、それぞれ別々の施策により行われてきたが、「バリアフリー法」の施行により、それらが総合的・一体的に推進されることになりました。
▢ 54.高齢者向けの住宅施策には、新築住宅のバリアフリー化の推進、既存の住宅の改修支援、公的住宅への入居支援などがあります。
高齢者向けの住宅施策
高齢者の自立や介護に配慮した住宅の建設および改良の促進
・高齢者が居住する住宅の設計に係る指針
・公共賃貸住宅のバリアフリー仕様の標準化
・住宅性能表示制度による等級表示(「高齢者等への配慮に関すること」)
・バリアフリー住宅に対する住宅金融支援機構による融資の優遇
・介護保険による住宅改修費の支給
・市町村による高齢者住宅改造費助成事業
・バリアフリーリフォームにおける高齢者向け返済特例制度等
・地域包括支援センター等による相談・助言
高齢者のニーズに対応した公的賃貸住宅の供給
・公営住宅への単身高齢者の入居、高齢者世帯に対する入居優遇
・地域優良賃貸住宅(高齢者型)の供給
・都市再生機構(UR)賃貸住宅への高齢者世帯の入居優遇
高齢者の民間賃貸住宅への入居の円滑化
・家賃債務保証制度
・居住支援協議会による情報提供・相談対応
高齢者の持ち家ニーズヘの対応
・親子リレー返済
高齢者の住み替え支援
・マイホーム借上げ制度による住み替え支援
生活支援や介護の付いた高齢者住宅等の供給
・サービス付き高齢者向け住宅の登録制度
・シルバーハウジング
・ケアハウス、有料老人ホーム、認知症高齢者グループホーム等の供給
▢ 55.在宅の要介護者、要支援者は、介護保険制度による住宅改修費の支給を受けられます。
制度上の名称は、居宅介護住宅改修費(または介護予防住宅改修費)といい、必要と認められた特定の住宅改修を行う場合に支給を受けることができます。
介護保険による住宅改修費の支給の対象になる住宅改修
①手すりの取り付け ②段差の解消 ③滑りの防止及び移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更 ④引き戸等への扉の取り替え ⑤洋式便器等への便器の取り替え ⑥その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
▢ 56.介護保険による住宅改修費の支給限度基準額は20万円です。
住宅改修費の支給限度基準額は20万円で、そのうち9割(上限18万円)が、原則として償還払いにより支給されます。残りの1割は利用者の自己負担となります。要介護度が3段階以上重くなった場合と、転居した場合は、再度20万円の支給限度基準額が設定されます。住宅改修費の支給限度基準額は、要介護認定の区分による違いはなく、定額です。
▢ 57.有料老人ホームには、介護付、住宅型、健康型の3種類があります。
有料老人ホームとは、常時1人以上の高齢者を入居させ、食事や家事などのサービスを提供する居住施設で、「老人福祉法」が定める老人福祉施設でないものをいいます。介護付有料老人ホームが提供する介護サービスは、介護保険制度による在宅サービスとして位置づけられており、制度上の名称は「特定施設入居者生活介護」といいます。
有料老人ホームの種類
介護付有料老人ホーム
・一般型特定施設入居者生活介護は、介護が必要になった場合は、ホームの職員が介護サービスを提供する。
・外部サービス利用型特定施設入居者生活介護は、介護が必要になった場合は契約を解除して退去しなければならない。
住宅型有料老人ホームは、介護が必要になった場合は、入居者の選択により地域の訪問介護サービスなどを利用できる。
健康型有料老人ホームは、介護が必要になった場合は、契約を解除して退去しなければならない。
「老人福祉法」第5条の3が定める老人福祉施設とは、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター、及び老人介護支援センターです。
障害者の生活と住環境
▢ 58.障害者の総数は、約788万人と推計されています。
厚生労働省の実態調査などによると、障害者の総数は787.9万人で、そのうち、身体障害児・者が393.7万人、知的障害児・者が74.1万人、精神障害者が320.1万人です。単純計算では、国民の約6%が何らかの障害をもつことになります。
▢ 59.身体障害者、精神障害者の高齢化が進んでおり、特に身体障害者の高齢化が著しい。
2011(平成23)年の厚生労働省の調査によると、身体障害者手帳を所持する在宅の身体障害児・者のうち、65歳以上の高齢者の割合は68.7%で、同時期の総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)23.3%に対して3倍以上です。
精神障害者も、65歳以上の割合が36.0%と多い。知的障害者では、65歳以上の割合は9.5%と低い。
▢ 60.障害者の大部分が在宅で生活しています。特に身体障害者は、ほとんどが在宅です。
障害者に占める在宅者の割合
身体障害児・者は、在宅者 386.4万人(98.1%)、施設入所者 7.3万人(1.9%)
知的障害児・者は、在宅者 62.2万人(83.9%)、施設入所者 11.9万人(16.1%)
精神障害者は、外来患者 287.8万人(89.9%)、入院患者32.3万人 (10.1%)
▢ 61.在宅の65歳以上の障害者の6割が自分の持ち家に住んでいます。
在宅の障害者の住まい状況
65歳未満は、自分の持ち家28.2%、家族の持ち家41.9%、民間賃貸住宅15.2%、公営住宅7.1%
65歳以上は、自分の持ち家60.9%、 家族の持ち家23.6%、民間賃貸住宅5.8%、公営住宅5.4%
▢ 62.身体障害者の居宅には、改修の必要があっても改修できていない住宅が多い。
身体障害者の住宅の改修状況
改修を行った17.3%、資金がないため改修できない25.4%、借家のため改修できない6.1%、構造上困難なため改修出来ない5.9%、改修の必要がない25.8%、回答なし19.6%
▢ 63.身体障害者で住宅を改修した人の改修場所で最も多いのはトイレ、次いで風呂である。
18歳以上の身体障害者で住宅を改修した人の改修場所
トイレ67.2%、風呂63.4%、玄関35.1%、廊下32.7%、居室29.8%、台所26.8%、階段20.3%、訪問灯等設置7.7%
障害者福祉施策の概要
▢ 64.1993(平成5)年に「障害者基本法」が制定されました。
従来の「心身障害者対策基本法」が全面的に改正され、1993(平成5)年に、ノーマライゼーションの理念に基づいた「障害者基本法」が制定されました。
ノーマライゼーションとは、障害者と健常者が互いに区別されることなく生活を共にできる社会の実現を目指す理念で、1990年にアメリカで制定された「障害をもつアメリカ人法(ADA法)」や日本の「障害者基本法」に影響を与えました。
▢ 65.「障害者基本法」の規定に基づき、国は障害者基本計画を策定します。
2013(平成25)年度からの5年間を対象期間とする障害者基本計画は、次の5つを横断的視点としています。
①障害者の自己決定の尊重および意思決定の支援
②当事者本位の総合的な支援
③障害特性等に配慮した支援
④アクセシビリティの向上
⑤総合的かつ計画的な取組の推進
▢ 66.「障害者総合支援法」では、難病患者等が新たに法の対象に加えられました。
従来の「障害者自立支援法」を改正・改称して2013(平成25)年に施行された「障害者総合支援法」では、難病患者等が新たに障害者の範囲に加えられました。これにより、身体障害者、知的障害者、精神障害者(発達障害者を含む)、難病患者等、ならびに「児童福祉法」に規定する障害児が「障害者総合支援法」の対象となりました。
▢ 67.自立支援給付の申請は、市町村に行います。
「障害者総合支援法」に基づく自立支援給付とは、障害者が居宅介護、重度訪問介護などの福祉サービスを利用した場合に、その費用を助成するしくみです。申請を受けた市町村は認定調査等を行い、支給が決定すると、障害福祉サービス受給者証が交付され、障害者は指定事業者や指定施設と契約してサービスを利用する。費用の9割が給付され、1割が自己負担となるが、所得に応じた負担上限額が設定されるなど、大幅な軽減措置がとられています。
障害者向けの住宅施策の変遷と概要
▢ 68.1967(昭和42)年に、身体障害者向け特定目的公営住宅の供給が始まりました。
特定目的公営住宅とは、社会的事情により特に住宅困窮度が高い者を優先的に入居させるため、用途(入居者)を特定した公営住宅です。身体障害者向け特定目的公営住宅は、1971(昭和46)年からは心身障害者向け公営住宅として供給されています。特定目的公営住宅には、このほかに、老人世帯向け公営住宅、母子家庭向け公営住宅などがあります。
▢ 69.1980(昭和55)年に、身体障害者の公営住宅への単身入居が可能になりました。
従来、公営住宅には単身者の入居は認められていなかったが、1980(昭和55)年に「公営住宅法」が改正され、高齢者とともに、身体障害者の公営住宅への単身入居も認められるようになりました。
2012年の「公営住宅法」改正により、公営住宅の同居親族要件は廃止され、各地方公共団体の判断に委ねられました。
▢ 70.シルバーハウジング・プロジェクトでは、障害者世帯の入居も可能になりました。
1987(昭和62)年に始まったシルバーハウジング・プロジェクトは、住宅行政と福祉行政の連携による高齢者世帯向けの公共賃貸住宅の供給事業で、事業主体の長が特に必要と認める場合は、障害者世帯も入居できます。
▢ 71.1995(平成7)年に「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略」が策定されました。
「障害者プラン」に掲げられた住宅施策
・新設されるすべての公共賃貸住宅のバリアフリー化
・障害者等を優先入居の対象とする公共賃貸住宅の供給促進
・身体障害者に配慮した住宅の取得・建設・改修の促進
・生活支援機能をもつグループホーム、福祉ホームの整備
・障害者世帯向け公営住宅の建設推進
・福祉施設を併設した公共住宅団地の建設推進
・知的障害者通勤寮の整備
▢ 72.「バリアフリー法」では、すべての障害者を法の対象とすることが明確化されました。
「ハートビル法」「交通バリアフリー法」では、「高齢者、身体障害者等」が法の対象だったが、2006(平成18)年に施行された「バリアフリー法」では、知的障害者、精神障害者、発達障害者を含むすべての障害者が明確に法の対象となりました。
3法の正式名称
ハートビル法は、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律
交通バリアフリー法は、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律
バリアフリー法は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
▢ 73.2006(平成18)年に、知的障害者、精神障害者の公営住宅への単身入居が認められました。
高齢者や身体障害者には1980(昭和55)年から認められていた公営住宅への単身入居が、知的障害者、精神障害者にもようやく認められるようになりました。
▢ 74.住宅のバリアフリー化をはじめとする高齢者向けの住宅施策は、障害者にも有用であり、障害者も視野に入れて実施されています。
障害者向けの住宅施策
障害者の自立や介護に配慮した住宅の建設および改修の促進
・高齢者が居住する住宅の設計に係る指針
・公共賃貸住宅のバリアフリー仕様の標準化
・住宅性能表示制度による等級表示(「高齢者等への配慮に関すること」)
・バリアフリー住宅に対する住宅金融支援機構による融資の優遇
・在宅重度障害者住宅改造費助成事業
・障害者住宅整備資金貸付制度
・生活福祉資金貸付制度
・都道府県・市町村の担当窓口による相談・助言
障害者のニーズに対応した公的賃貸住宅の供給
・公営住宅への単身障害者の入居、障害者世帯に対する入居優遇
・地域優良賃貸住宅(高齢者型)の供給
・都市再生機構(UR)賃貸住宅への障害者及び障害者世帯の入居優遇
障害者の民間賃貸住宅等への入居の円滑化
・家賃債務保証制度
・住宅入居等支援事業(居住サポート事業)
・居住支援協議会による情報提供・相談対応
日常生活用具の給付・貸与
・日常生活用具給付等事業
障害者の生活に関連したサービスを備えた住宅の供給
・シルバーハウジングの供給
・グループホーム、ケアホーム、福祉ホーム等の供給
福祉住環境コーディネーターの意義と役割
▢ 75.高齢者や障害者の福祉住環境整備には、多くの専門職がかかわれます。
高齢者や障害者に対応する福祉住環境整備には、ソーシャルワーカー、介護支援専門員(ケアマネジャー)、理学療法士、作業療法士、建築関係者などをはじめ、医療、保健、福祉、建築の各分野にわたる専門職がかかわっています。
▢ 76.従来、福祉住環境整備は、相談を受けた人の専門性に影響される傾向がありました。
従来、福祉住環境整備は、相談を受けた人が個人的な努力によって進めてきたケースが多く、その人の専門性に強く影響され、アプローチが一面的になる傾向がありました。しかし、高齢者や障害者の生活上のニーズは多様なので、総合的な視野に立った、多面的なアプローチが必要です。
▢ 77.福祉住環境コーディネーターは、福祉住環境整備にかかわるすべての関係者から情報を収集し、課題を整理し、意見を調整します。
福祉住環境コーディネーターの役割
生活者の視点に立って生活上の問題点を抽出し、住環境整備のニーズを発見します。
高齢者や障害者の生活上の不便や不自由について、本人と一緒に考え、改善策を提案します。
福祉住環境整備にかかわるすべての関係者から情報を収集し、課題を整理します。
利用者本人や家族を含むすべての関係者と良好な関係を築き、可能な限り情報を共有します。
▢ 78.福祉住環境コーディネーターには、専門職としての厳しい職業倫理が要求されます。
福祉住環境コーディネーターには、次のような職業倫理が求められます。
・論理的知識に基づく技術を身につけ、提供すること
・個人情報の保護を厳守すること
・公共の福祉に奉仕すること
・社会的地位を確立すること など
▢ 79.医療の分野と同様に、住環境整備においても「説明と同意」を遵守することが重要です。
福祉住環境コーディネーターは、利用者の自己決定を尊重しなければならず、「説明と同意(インフォームド・コンセント)」を遵守することが重要です。
「説明と同意」とは、利用者が、十分な説明を与えられた上で自発的に同意することを意味します。主に医療行為について用いられる言葉です。
第2章 障害のとらえ方と自立支援のあり方
障害の定義ととらえ方の変遷
▢ 1.「障害者権利条約」は、長期的な機能障害と環境による障壁の相互作用で社会参加が困難になっている者を障害者ととらえました。
国連が2006年に採択した「障害者権利条約」は、障害者を次のように規定しました。
障害者権利条約第1条
障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。
▢ 2.「障害者基本法」は、何らかの心身の障害があり、それに伴う生活上の制限を受けている人をすべて障害者としました。
障害者基本法第2条(2011(平成23)年改正、一部抜粋)
1 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む) その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
▢ 3.国際障害分類(lCIDH)は、障害を「機能・形態障害」「能力障害」「社会的不利」の3つの次元に分類した。
国際障害分類(ICIDH)は、1980年に世界保健機関(WHO)が出版したもので、障害者への社会保障やリハビリテーションに関する国際交流を促進するための、世界共通の指標として作成されました。
▢ 4.ICIDHは、障害のとらえ方が固定的で、一方向的であるという批判がなされていました。
ICIDHのそれぞれの次元の流れは一方向的であり、環境による影響なども考慮されていないという問題点がありました。
国際障害分類(ICIDH)による障害のとらえ方
病気や変調→機能・形態障害→能力障害→社会的不利
障害のとらえ方が一方向的であり、環境などの要因も考慮されていません。
ICFの障害のとらえ方
▢ 5.ICIDHへの批判を踏まえて、2001年に国際生活機能分類(ICF)が出版されました。
ICIDHが「障害」というマイナス面だけに注目していたのに対し、ICFは「生活機能」というプラス面に注目した分類です。
「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つを生活機能とし、それらに問題が生じた状態(機能障害、活動制限、参加制約)が障害であると考えました。
▢ 6.ICFには、環境因子、個人因子という概念が取り入れられました。
ICIDHは、障害を医学的な観点でしかとらえていなかったが、障害は人間と環境の相互作用において理解されるべきであるという考え方から、ICFには「環境因子」という概念が導入されました。また、性別や年齢、その他の「個人因子」も現象をとらえる上で考慮する必要があると考えました。環境因子と個人因子を合わせて「背景因子」といいます。
▢ 7.ICFは、生活機能、健康状態、背景因子のそれぞれを双方向的な関係概念としてとらえています。
ICIDHの障害のとらえ方が一方向的だったのに対し、ICFは生活機能、健康状態、背景因子のそれぞれが相互に関係しているという、より現実に即した考え方を取り入れています。
それぞれの要因が相互に関係した例として、次のような場合が挙げられます。
・パリアフリー化が実現したこと(環境因子)によって外出の機会(活動、参加)が増え、その影響により心身機能が向上する。
・環境が悪化したために活動が制限された結果、心身機能が衰える。
・引きこもり(社会活動に「参加」しない)に陥ったことにより、新たな精神疾患(「心身機能」の障害)を引き起こす。
▢ 8.「活動」は、「能力」と「実行状況」に分けられます。
ICFの生活機能の概念の一つである「活動」は、さらに「能力」(やればできること)と「実行状況」(日常的にしていること)に区別することができます。リハビリテーションの分野では、両者を分けて考えることにより、目標設定がしやすくなります。
▢ 9.ICFの考え方は、医療保険制度や介護保険制度にも取り入れられています。
医療保険制度では、2000(平成12)年度から、診療報酬の算定に際して、ICFの考え方に基づく「リハビリテーション総合実施計画書」「リハビリテーション実施計画書」の作成が求められるようになりました。また、2003(平成15)年度から介護保険制度のリハビリテーション給付の算定要件にも、これらの計画書が導入されました。
高齢者の生活機能の低下と予防・リハビリテーションのあり方
▢ 10.高齢者リハビリテーションの3つのモデルとは、脳卒中モデル、廃用症候群モデル、認知症高齢者モデルです。
高齢者リハビリテーションは、急性期、回復期、維持期、終末期の段階に沿って進めます。
● 高齢者リハビリテーションの3つのモデル
脳卒中モデルは、生活機能が急性に低下します。急性期からベッド上で関節可動域訓練などを開始します。
廃用症候群モデルは、生活機能が徐々に低下します。閉じこもりがちな生活に起因。軽度のうちにリハビリテーションを開始します。
認知症高齢者モデルは、環境の変化への対応が困難。住み慣れた環境や人間関係の中での介護が必要
▢ 11.高齢者リハビリテーションは、急性期、回復期、維持期、終末期の段階に沿って進めます。
● 高齢者リハビリテーションの進め方の例
急性期(早期)リハビリテーションは、急性期病棟で行う、ベッド上での機能訓練など
回復期リハビリテーションは、回復期リハビリテーション病棟などで行う。歩行訓練、在宅復帰に向けたADL訓練など
維持期(生活期)リハビリテーションは、在宅、施設などで行う。機能の維持・改善、ADLの拡大を目指す
終末期リハビリテーションは、在宅、施設、病院などで行う。苦痛の軽減、寝たきりによる廃用症候群の予防
地域包括ケアと地域リハビリテーションの必要性
▢ 12.「ケア」とは、狭義では「介護」のことだが、生活支援一般を指す場合もあります。
「地域ケア」という場合の「ケア」は、介護のような個人への援助だけでなく、環境整備や社会資源の活用・整備なども含めた、地域住民への生活支援一般を指します。医療、保健、福祉などの各分野にわたる、地域での生活や在宅生活の自立を支援する活動のすべてが「地域ケア」に含まれます。
▢ 13.「地域包括ケアシステム」とは、日常生活圏域において、医療・福祉・リハビリテーションなどを一体的に提供するしくみです。
厚生労働省は、市町村の中学校区程度の日常生活圏域において、「地域包括ケアシステム」を構築するという目標を掲げています。「地域包括ケアシステム」は、地域住民が、支援が必要になった場合でも安全に安心して暮らせるよう、地域全体で支える体制です。
▢ 14.地域リハビリテーションとは、地域のあらゆる機関や組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行う活動すべてを指します。
医療機関や福祉施設で行われるリハビリテーションだけでなく、リハビリテーションを目的として実施される活動はすべて地域リハビリテーションに含まれます。地域リハビリテーションは、地域包括ケアシステムの重要な柱の一つです。
▢ 15.地域リハビリテーションの目標は自立支援です。
高齢になっても、障害をもっても、必要とする支援を受けながら、地域社会の中で誰もが自立した生活を送れるようにすることが、地域リハビリテーションの目標です。
1960年代後半にアメリカで始まった自立生活運動(IL運動)は、障害者の自立は支援を必要としなくなることでなく、必要な支援を受けながら社会参加することだと主張しました。
高齢者の身体的特性
▢ 16.心身の生理機能は、加齢とともに低下します。
一般に、30歳をピークに、運動機能、神経機能、呼吸機能、腎機能などは低下し始めます。しかし、肝臓、肺、腎臓などの機能には、もともと、日常生活に必要とされる働きの数倍もの予備能力があるため、それらの生理機能が少々衰えたとしても、すぐに生活に支障が生じることはない。
老化は血管から始まるといわれます。動脈硬化により動脈が弾力を失うため、大動脈の血流の速さは、70歳では10歳の子どもの約2倍になります。腎臓や肺の機能においても、毛細血管が大きな役割を担っています。
▢ 17.高齢者は速く歩く能力が低下している。
加齢による身体能力の低下の影響は、歩く速度に現れやすい。歩行速度が低下する原因は、下肢の筋力の低下や、関節可動域の減少などによると考えられます。農村部の高齢者は、都市部の高齢者に比べて歩行速度が低下していることや、高齢者の歩行速度と数年後の死亡率の間に相関が認められることなどが、いくつかの調査結果により知られています。
▢ 18.歩行能力の低下は、転倒や交通事故の危険性を高めます。
一般的な信号機の青信号の点灯時間は、歩行速度が低下した高齢者にとっては短く、横断歩道を渡りきらないうちに信号が変わってしまうことがあるため、高齢者の交通事故には、青信号が点滅を始めてからの無理な横断による事例が少なくない。また、下肢の機能が低下した高齢者は、道路上や住宅内のわずかな段差でも、つまずき、転倒することが多い。
▢ 19.老化現象には、通常老化と病的老化があります。
加齢による心身の生理機能の低下を老化現象といい、個人差があります。老化がゆるやかに進行する状態を通常老化といい、不適切な生活習慣の積み重ねなどにより老化が急激に進行する状態を病的老化といいます。病的老化の状態になると、さまざまな疾患を生じやすくなります。
▢ 20.病的老化には原因と現れやすい症状がります。
病的老化をもたらす原因は、不適切な食習慣、過度の飲酒、睡眠不足、栄養状態の悪化、疾患による影響、有害物質の摂取・被ばく
病的老化症状は、低栄養、摂食・嚥下障害、認知機能の低下、歩行障害、排尿障害などです
老化現象が通常老化の範囲であれば、QOL(生活の質)の高い充実した老後生活を送ることは十分に可能です。生活習慣を改善し、病的老化を予防することが「サクセスフルエイジング」の秘訣といえます。
▢ 21.高齢者特有のさまざまな疾患や症状をまとめて、老年症候群といいます。
老年症候群には多くの臓器が関係しており、複数の原因が重なりあって生じることが多い。その諸症状には、互いに関連性があります。
老年症候群の諸症状は、精神機能の脆弱化・低下、円背等の異常姿勢、歩行障害、医療性疾患、低栄養・脱水、免疫機能の低下
▢ 22.廃用症候群とは、安静状態が長く続いたため、心身の機能が低下することをいいます。
廃用症候群は、老年症候群をもたらす原因の一つです。廃用症候群により低下した機能を回復させるには非常に長い時間を要するため、予防が最も重要です。
高齢者の心理と精神的特性
▢ 23.高齢者は4つの喪失体験を通じて、孤独感や不安に陥ることが多い。
高齢者の4つの喪失体験は、知的機能の喪失、社会的役割の喪失、身体機能の喪失、配偶者・兄弟・友人の喪失、孤独感や絶望感、死ヘの不安、意欲の低下する人や喪失体験を克服し、人生の価値を見いだす人もいます。
▢ 24.高齢者を支援する人は、高齢者特有の心理に配慮し、危機感を和らげるようにします。
高齢者の危機感を和らげる解決策
職業的地位を失うことへの危機感は、仕事以外の活動に満足感を見いだせるよう支援する
身体機能の低下に対する危機感は、精神面での充実感が得られるよう支援する
死が近づいていることへの危機感は、人生の最終段階でも目的を持ち、達成感が得られるよう支援する。
▢ 25.記憶力は加齢とともに低下します。記憶を登録する働き、記憶を貯蔵する働き、記憶を検索する働きのいずれも、能力が低下します。
外界からの情報は、眼や耳などの感覚器官から入り、脳に送られるが、特に関心のない情報は、1秒後には消失します。関心のある情報は、とりあえず覚えておくために、短期記憶として登録されます。登録した情報は整理され、貯蔵されるが、何度も反復して思い出さないと消えてしまいます。
繰り返し思い出した情報は、長期記憶に転送され、その内容は、検索して取り出すことにより再現できます。しかし、このような記憶のメカニズムのどの段階においても、加齢とともに能力が低下することが知られています。
▢ 26.流動性知能は加齢とともに低下するが、結晶性知能は60歳頃まで上昇します。
流動性知能は、変化する課題を解決し、新しい環境に適応する能力を意味します。先天的な素質で、20歳頃が最も高く、その後は徐々に低下します。
結晶性知能は、経験の積み重ねにより蓄積された知識に基づく知恵、賢さを意味します。比較的高齢になるまで上昇し、その水準を生涯維持できる人もいます。
▢ 27.健常な高齢者にもみられる健忘状態(もの忘れ)と認知症とは異なります。
健忘状態と認知症には、新しい記憶を忘れやすいという共通点もあるが、多くの点で明確な相違がみられます。
健忘状態と認知症の違い
健忘状態は、もの忘れを指摘されれば訂正が可能、自分のいる場所や時間の認識は正常、人間関係に支障はなく、人格が保たれる
認知症は、忘れていることを自覚できない、自分のいる場所や時間の認識が異常、人格の崩れとしてとらえられる。
障害をもった時期に起因した特性
▢ 28.先天的障害とは、胎児の段階、および周産期に生じた障害です。
先天的障害の主な原因として、染色体異常や、母体を通した薬害、感染症などの影響が挙げられるが、原因が特定できない場合もあります。また、先天的障害であっても、出生時には明らかな障害がみられず、その後の成長過程で障害が顕在化する場合もあります。
▢ 29.後天的障害とは、出生時には障害や障害の原因となる疾患がなく、その後の人生の途上において生じた障害です。
後天的障害は、人生のどの段階でも起こり得るもので、中途障害ともいわれます。後天的障害を引き起こす主な原因としては、交通事故などの事故による受傷や、脳血管疾患や心臓病の後遺症、関節リウマチ、パーキンソン病などの進行性疾患などが挙げられます。
▢ 30.成長発達段階において障害が生じた場合、その後の成長や発達に影響を与えます。
身体的な面と、知的・精神的な面とは、相互に影響しながら成長・発達をとげるため、そのどちらかに障害が生じた場合、もう一方にも影響を与える可能性が高い。また、障害が一過性のものであっても、回復に長期間を要した場合や、その時期によっては、成長や発達に影響することがあります。
▢ 31.成人期以降に障害が生じた場合は、心身ともに、適応に困難を伴うことが多い。
成人期以降に生じた障害、特に、突発的な事故や、急性の疾患による後遺症などに起因する障害の場合は、それまで当たり前にできていたことが突然できなくなるため、行動が制限され、精神的な喪失感も大きい。そのため、障害をもつ以前の生活において確立していた社会的役割を果たすことが難しくなることもあります。
リハビリテーションの経過に伴う変化
▢ 32.障害をもってからの時間の経過とその経緯により、障害者の心身の特性は変化します。
後天的障害の代表例として、脳卒中モデルのリハビリテーションの過程に注目すると、急性期から回復期、維持期に至るそれぞれの段階で、障害者の心身の特性に変化がみられます。
▢ 33.急性期を脱したばかりの段階では、状況を冷静に受け止めることは困難です。
急性期を脱し、回復期にさしかかる段階では、疾患の影響を最小限に抑えるための治療やリハビリテーションが行われます。後遺症として何らかの障害が残ることが避けられない場合も多いが、本人や家族は、順調に回復することを信じて疑わず、退院後の生活についてイメージすることはまだ難しい。
▢ 34.回復期の段階では、障害がより現実的に認識されてきます。
回復期の段階では、疾患の症状もある程度治まり、障害の程度をできる限り小さくするためのリハビリテーションが行われます。この時期には、病院から自宅に戻るか、必要に応じて施設に入所することが選択されるが、ADLに障害が残っている場合、今後の生活への不安や、リハビリテーションによる回復が思うように進まないことへの焦りやいらだちなどの感情にとらわれやすい。
▢ 35.維持期の段階では、障害について冷静に考えられるようになっていることが多い。
維持期の段階では、疾患の症状は安定し、予後の見通しもはっきりしています。この時期には、本人も障害とつきあいながらの生活を受け入れ、将来についても冷静に見通しを立てられるようになっていることが多いが、介助者への遠慮などから自宅に閉じこもりがちになる傾向もあります。
障害に対する態度
▢ 36.障害をもった時期により、障害に対する態度は大きく異なります。
先天的障害をもつ人や、幼い頃に障害をもった人は、健常者としての経験がほとんどないため、障害とつきあいながら生きることを、当たり前のように受け入れていることが少なくない。一方、青年期や成人後に突然障害をもった場合、障害の受容には非常に困難を伴います。本人以上に家族が動揺してしまい、現実を直視できない場合もあります。
▢ 37.障害の受容に至る過程では、多くの人が苦悩にさいなまれ、心の葛藤を経験します。
障害をもった人は、さまざまなマイナスの感情の間を揺れ動いたのちに、ようやく障害を受け入れ、障害をもった今の生活を豊かなものにしていこうという意思をもつことができます。
障害の受容に至るまでのさまざまな葛藤は、障害の否定、絶望、あきらめ、怒り、回復への期待、抑うつなど
在宅介護での自立支援の在り方
▢ 38.在宅介護においては、安全で快適な暮らしを確保することが最も優先されます。
安全性と快適性の確保は、ADLが安全に行えること、災害や緊急時への対策、動線・スペースの確保、介護者の目が行き届くこと、居室などの快適性・利便性、プライバシーの確保
▢ 39.在宅介護においては、その人らしい暮らしを実現することも大切です。
福祉住環境整備を行う際は、安全性や利便性、機能性、コストなどを考慮することはもちろん重要であるが、利用者本人の生活習慣や、暮らしに対する考え方をよく知った上で取り組む必要があります。本人がこれまで大切にしてきた環境の意義を理解し、できる限り尊重すべきです。
3章 疾患別・障害別にみた不便・不自由と福祉住環境整備の考え方
高齢者に多い疾患の特徴
▢ 1.高齢者の死因の第1位はがん、要介護となる原因の第1位は脳血管疾患です。
要介護となる原因は、脳血管疾患、認知症、高齢による衰弱、関節疾患の順です。
死因は、悪性新生物(がん)、心疾患、肺炎、脳血管疾患、老衰の順です。
▢ 2.60歳以上の高齢者の6割以上が、月に1回以上医療サービスを受けています。
▢ 3.高齢者の疾患の多くは、加齢による身体機能の低下や不適切な生活習慣が原因です。
高齢者の疾患は、病因が静かに潜行して発病に至ることが多い。自分は健康であると自覚している人も、自治体が行う特定健康診査などを定期的に受け、危険因子の早期発見に努めることが重要です。
▢ 4.住環境の問題は、医療やケアの内容にも影響します。
高齢者の健康にとって、質のよい医療や介護などのサービスが提供されることは重要であるが、どこでどのように暮らすかという住環境の問題も同じように重要です。住環境整備は、高齢者の医療やケアの内容に影響を与えることが多いといえます。
脳血管障害
▢ 5.脳血管障害は、脳の血管の異常により、脳の組織が損傷されることにより生じる疾患です。
脳血管障害は、脳血管疾患、脳卒中とも呼ばれます。主な脳血管障害としては脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞があるが、病気を引き起こす原因から大きく2つに分けることができます。
脳出血、クモ膜下出血は、脳の血管が破れることで起こります。
脳梗塞は、脳の血管が詰まることで起こります。
▢ 6.脳血管障害で最も多いのは脳梗塞で、全体の7~8割を占めます。
脳梗塞は、次の3つのタイプに分けられます。
脳梗塞の3つのタイプ
1.アテローム血栓性脳梗塞
2.ラクナ梗塞
3.脳塞栓
▢ 7.脳血管障害の症状の現れ方や症状の程度は、障害が生じた脳の部位や、その大きさによって決まります。
脳血管障害の代表的な症状である片麻痺は、身体の左右どちらかの半身が麻痺するもので、麻痺は損傷した脳の部位と反対側に生じます。
▢ 8.脳血管障害の急性期には、手術や薬物による治療が行われ、早期からリハビリテーションが開始されます。
急性期とは、通常、脳血管障害が生じてから2~4週間程度の期間を指します。かつては、急性期には安静を保つべきであると考えられていたが、現在では、なるべく早期からリハビリテーションを行うことが、機能改善を目指す上で非常に有効であることが知られています。
▢ 9.脳血管障害の回復期には、リハビリテーション病棟などで本格的なリハビリテーションが行われます。
脳血管障害の回復期に行うリハビリテーション
理学療法は、起き上がり動作、移乗動作の訓練、平行棒や下肢装具を使用した歩行訓練など
作業療法は、麻痺側の上肢機能の訓練、排泄、入浴をはじめとするADL訓練など
その他に言語障害がある場合、言語聴覚士による言語訓練
▢ 10.脳血管障害の維持期には、自宅や施設での生活に移行します。
脳血管障害の維持期には、病院外来や、通所リハビリテーション(デイケア)、通所介護(デイサービス)、訪問リハビリテーションなどのサービスを利用し、回復した機能の維持や改善を図ります。さまざまな生活上の問題点が生じる時期でもあり、介護支援専門員(ケアマネジャー)、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)などが協力して支援する必要があります。
▢ 11.脳血管障害では、対象者の移動能力に応じた住環境整備が必要になります。
移動動作のレベル
屋外歩行レベルは、つえや下肢装具を使用する場合も含めて、屋外を一人で歩行できる。
屋内歩行レベルは、屋内では、つえや伝い歩きにより歩行できる。外出時は介助者か車いすが必要。
車いすレベルは、立位での歩行は困難で、屋内でも車いすを使用する。座位の保持ができる。
寝たきリレベルは、ベッドからの起き上がり動作が困難で、座位の保持ができない場合もある。
▢ 12.屋外歩行レベルでは、手すりの設置などの簡単な住環境整備を検討します。
屋外歩行レベルでは、ADLはほとんど自立しているが、片麻痺の場合は、両手を使う動作ができないため不便を感じることがあります。将来のことも考えて、手すりの設置や、段差の解消などを行っておくと安全です。下肢装具を使用している場合は、装具をはずす浴室での移動に配慮します。
▢ 13.屋内歩行レベルでは、屋内の移動動作に配慮した住環境整備が必要です。
屋内歩行レベルでは、食事や整容などのADLは自立するが、更衣、排泄、入浴などは一部介助か、見守りが必要となります。
住環境整備では、廊下や階段、浴室、 トイレヘの手すりの設置や、屋内の段差の解消を行います。生活空間はできるだけ1階に限定することが望ましい。畳からの立ち座り動作は困難を伴うため、テーブル、いす、ベッドを使用します。
▢ 14.車いすレベルでは、車いすでの移動に配慮した住環境整備が必要です。
車いすレベルでは、下肢の機能低下が著しく、立位や立ち上がりなどの動作が困難です。住環境整備では、車いすでの移動に配慮したスペースの確保や、段差の解消が必要です。寝室には特殊寝台を導入します。寝たきリレベルでは、ADLのほとんどに介助が必要で、介助者の負担が大変大きくなるため、リフトなどの福祉用具の活用を検討します。
廃用症候群
▢ 15.廃用症候群とは、長期臥床などにより、心身の機能に現れるさまざまな病的な症状の総称です。
長期間にわたって身体を動かさないでいると、全身のさまざまな器官の機能が低下します。また、脳への刺激が少なくなると、精神的な機能も低下し、無意欲、抑うつ状態に陥りやすい。それらの症状をまとめて廃用症候群といいます。
廃用症候群の諸症状
心臓は、起立性低血圧、頻脈
消化器は、食欲不振、便秘
骨は、骨粗鬆症
関節は、関節拘縮
静脈は、下肢静脈血栓症、肺塞栓
脳・神経は、精神活動性の低下、うつ傾向
肺は、息切れ
膀胱は、排尿障害、膀胱炎
筋肉は、筋力・耐久力の低下
皮膚は、褥瘡
長時間同じ姿勢でいると、下肢の大腿部の奥にある静脈に血栓が生じ(深部静脈血栓症)、その血栓が肺に流れると肺の血管が詰まり(肺塞栓)、最悪の場合、死に至ることもある。この症状はエコノミークラス症候群という名でも知られている。
▢ 16.廃用症候群の予防の基本は、身体をよく動かすことです。
たとえば、病気やけがによって入院生活を余儀なくされた場合も、過度の安静を避けて早期離床を目指し、早期にリハビリテーションを開始することが、二次障害としての廃用症候群を予防するために最も重要です。
二次障害とは、疾患や障害の症状に起因して生じる、新たな障害のことをいいます。
▢ 17.骨粗鬆症の予防には、運動療法、食事療法、日光浴の3つが効果的です。
骨粗鬆症の食事療法の基本は、カルシウムの摂取に加え、力ルシウムの吸収をよくするビタミンDを摂取することです。ビタミンDは、魚や干ししいたけなどの乾物類に多く含まれます。また、日光に含まれる紫外線は、ビタミンDの生成にかかわっています。
▢ 18.廃用症候群の予防や改善のためには、対象者の行動範囲を拡大することが重要です。
廃用症候群による下肢の筋力の低下や、関節の拘縮、起立性低血圧などの症状は、移動動作に大きく影響します。移動が不自由になったために活動量が低下すると、廃用症候群がさらに進行するという悪循環に陥ります。住環境整備により移動できる範囲を広げ、ADLを本来の場所で行えるようにすることが望ましい。
▢ 19.寝たきり状態になった場合は、できる限り介助者の負担を軽減します。
寝たきり状態になると、褥瘡予防のために寝返り介助が必要になるほか、ADLのほとんどに介助を要するため、介助量は著しく増大します。介護保険制度による訪問看護、訪問介護、訪問リハビリテーション等の居宅サービスや、短期入所生活介護(ショートステイ)の利用、リフト等の福祉用具の導入を検討します。
骨折
▢ 20.骨折とは、骨に外力が加わることにより、骨が折れたり、ひびが入ったりして、骨の構造上の連続性が断たれた状態をいいます。
骨折が生じると、痛みや皮下出血を伴い、骨折部に腫れや変形がみられ、骨が完全に離断している場合は、異常な可動性が認められます。骨の機能の一つである支持性も低下します。
骨折の原因による分類
外傷性骨折は、正常な骨に、その抵抗力を上回る大きな外力が加わったことにより生じる骨折をいう。
病的骨折は、骨粗鬆症などの病変によりもろくなった骨が、小さな外力でも簡単に骨折してしまうことをいう。
疲労骨折は、骨の同じ部分に繰り返し力が加わることにより、骨にひびが入ることをいう。スポーツ選手に多い。
骨の連続性による分類
完全骨折は、骨折線が骨の全周に及び、骨の連続性が完全に断たれている骨折をいう。
不全骨折は、骨折線が部分的で、骨の連続性が一部に残っている骨折をいう。いわゆる、骨にひびが入った状態。
骨折の状態による分類
皮下骨折(単純骨折)は、受傷部の皮膚に損傷がなく、骨折部が露出していない骨折をいう。
開放骨折(複雑骨折)は、受傷部の皮膚が損傷され、骨折部が外部に露出している骨折で、感染の恐れがある。
▢ 21.高齢者は、さまざまな要因により、骨折を生じやすい。
高齢者は、筋力の低下や関節可動域の減少、平衡感覚の低下などにより転倒しやすい。特に、骨粗鬆症により骨がもろくなっている場合は、軽く尻もちをついた程度の外力でも骨折に至ることが少なくない。
▢ 22.高齢者に多い骨折は、脊椎椎体圧迫骨折、大腿骨頸部骨折、橈骨・尺骨遠位端骨折、上腕骨外科頸骨折などであります。
高齢者に生じやすい骨折
脊椎椎体圧迫骨折は、尻もちをついたときや、中腰で物を持ち上げたときに生じやすい脊椎椎体の骨折。
大腿骨頸部骨折は、つまずいたり、転んで膝をつき、太ももをひねったり、打ちつけたりしたときに生じやすい大腿骨の骨折。
橈骨・尺骨遠位端骨折は、転倒時に手をついたときに生じやすい手首の骨折。
上腕骨外科頸骨折は、転倒時に肘をついたときに生じやすい上腕部の付け根の骨折。
▢ 23.骨折の治療は、整復、固定、リハビリテーションという過程を経て行われます。
骨折の治療過程は、①整復、折れた骨を元の位置に戻すこと。徒手整復、牽引療法など、② 固定、ギプス等による外固定術、手術による内固定術など、③リハビリテーション、関節可動域訓練、筋力強化訓練、歩行訓練など
▢ 24.骨折の予防、再発防止のための住環境整備では、転倒の予防が重要です。
高齢者の骨折の多くは転倒が原因なので、住宅内から、転倒の原因になりそうなものをできるだけ取り除くようにします。段差の解消や手すりの設置のほか、移動の距離をなるべく短くし、動線を単純にすることも有効です。室内をよく整理整頓し、じゅうたんのめくれや、電気製品のコードなどにつまずかないよう配慮します。
認知症
▢ 25.認知症とは、正常な水準に発達していた知的機能が低下し、日常生活や社会生活に支障が生じた状態をいいます。
認知症の患者数は増加の一途をたどっており、2010(平成22)年9月の段階で、要介護(要支援)認定者498万人のうち280万人が、日常生活自立度Ⅱ以上の認知症高齢者と推計されています。
▢ 26.認知症で最も多いのはアルツハイマー型認知症で、全体の約半数を占めます。
認知症の原因となる疾患は100以上に及ぶといわれるが、患者数が多いのは、多い順から ① アルツハイマー型認知症、② 脳血管性認知症、③ レビー小体型認知症
▢ 27.認知症の中核症状は、認知症のすべての患者に現れる症状です。
認知症の中核症状は、脳の神経細胞が破壊されることによって生じます。代表的な中核症状は記憶障害で、新しいことが記憶できなくなり、進行すると、覚えていたはずの記憶も失われます。他の中核症状に、見当識障害、実行機能障害、判断力の低下などがあります。
▢ 28.認知症の周辺症状は、中核症状を背景として二次的に生じる症状です。
周辺症状は、中核症状に、本人の心身の状態や、生活環境、人間関係など、さまざまな要因がかかわることによって生じます。その現れ方には大きな個人差があり、周辺症状がほとんどみられないこともあります。主な周辺症状には、妄想・幻覚、抑うつ、徘徊、多動・興奮、暴言・暴力などがあります。
▢ 29.認知症の治療は、薬物療法、非薬物療法、介護によって行われます。
認知症の中には、原因疾患の治療を行うことにより、軽減、もしくは完治するものもあるが、ほとんどの認知症は不可逆的であり、現在のところ根治療法が存在しない。そのため、残された心身の機能をできる限り長く維持することを目標とした治療が行われます。薬物療法では、症状の進行を遅らせる薬や、周辺症状を抑える薬が用いられます。
▢ 30.認知症の非薬物療法では、脳を活性化させるリハビリテーションが効果的です。
認知リハビリテーションに用いられる手法
回想法は、過去の懐かしい思い出を、言葉に出して話す。
音楽療法は、好きな音楽を聴いたり、歌ったり、演奏したりする。
芸術療法は、絵画、ちぎり絵、粘土細工、書道などの創作活動を行う。
▢ 31.認知症の初期にはIADLが低下し、症状が進行するとADLも低下する。
IADL(手段的日常生活動作)は、道具などを使って行う複雑な動作、買い物、調理、掃除、洗濯、金銭の管理など
ADL(日常生活動作)は、日常生活を営む上での基本的な動作、食事、着替え、整容、入浴、排泄など
▢ 32.認知症により知的機能に問題が生じていても、人間的な感情は保たれていることが多い。
知的機能に問題が生じていても、好き嫌いなどの人間的な感生は保たれていることが多いため、本人の個性や意思、考え方を尊重し、個性をもつ一人の人間として接することが重要です。無理な要求をされた場合も、最初から否定するのではなく、本人の立場になって共感する姿勢を示すことが望ましい。
▢ 33.周辺症状への対応を誤ると、かえって症状を増悪させてしまうことがあります。
認知症高齢者の介護においては、周辺症状への対応を誤ったことにより症状を増悪させてしまうことがあるので、注意が必要です。本人の訴えを頭ごなしに否定したり、強くしかりつけて自尊心を傷つけたりすることは対応として禁物です。また、本人を急がせるような言動も控えるべきです。
▢ 34.認知症高齢者にとっては、規則的な生活リズムを整えることが重要です。
認知症高齢者は、生活のリズムを崩しやすく、昼間うとうとして夜は眠れない、昼夜逆転の生活に陥ることが少なくない。夜中まで介護が必要になるため、家族にとって大きな負担となるばかりでなく、夜間の不眠はさまざまな精神症状を悪化させる原因にもなります。日課を規則的に行わせ、日中の活動性を高めることが不眠の防止につながります。
▢ 35.認知症高齢者を介護する家族への支援も必要です。
認知症高齢者の介護は、身体的にも精神的にも極めて負担が大きい。家族が一人で介護するケースも多いが、長期間にわたる介護を一人で続けるのは困難であり、少しでも多くの人が役割を分担して介護にあたることが望ましい。介護支援専門員と相談して、さまざまな福祉サービスを利用することも必要です。また、周囲からの精神的な支援も欠かせない。
▢ 36.認知症高齢者に対応する住環境整備では、常に家族の目が行き届く環境を整えます。
認知症高齢者に対応する住環境整備においては、環境の変化をなるべく避ける、転倒を防止する、人の不始末による火災の危険に備える、その他、危険につながる物をあらかじめ遠ざけておく点などに配慮します。
関節リウマチ
▢ 37.関節リウマチは、全身の関節に腫れや痛みを生じる全身性の病気です。
関節リウマチは、自己免疫疾患の一つで、全身の関節を覆う滑膜が、免疫系による攻撃を受けて炎症を起こす病気です。進行に伴い、関節の軟骨や骨が少しずつ侵食され、関節が変形して動かしにくくなります。
生体内に侵入した異物を攻撃し、排除するしくみである免疫系が、自身の体内の正常な組織まで攻撃してしまうことにより生じる疾患を、自己免疫疾患といいます。
▢ 38.関節リウマチは、女性に多い病気です。
関節リウマチの患者は、日本に70~80万人いるといわれており、男女比では、女性が男性の2.5~4倍と圧倒的に多い。どの年代でも発症するが、好発年齢は30~ 50歳代で、家事に支障を生じることが多く、負担を軽減することが課題となります。
▢ 39.関節リウマチの代表的な症状として「朝のこわばり」があります。
「朝のこわばり」は、関節リウマチの初期にみられる特有の症状で、朝起きてからしばらくの間、手指がこわばって動かしにくくなり、物がつかめない、手が握れないなどの症状が生じます。関節の腫れや痛みは、手足の指などから肘、肩、膝、股関節など、身体の中心に近い関節へと次第に広がっていきます。症状が左右対称に現れるのも特徴です。
▢ 40.関節リウマチの治療には、薬物療法、手術療法などがあります。
関節リウマチは、病因が明らかでないため、根治療法は確立されていない。そのため、症状の緩和を図ることを目的として、免疫の異常に働きかける薬や、痛みを軽減する薬を投与する薬物療法が行われます。
手術療法では、炎症により肥大した滑膜を切除し、関節の破壊を防ぐ滑膜切除術や、股関節や膝関節を人工関節に置き換えて関節の機能を回復する人工関節置換術が行われます。
▢ 41.関節リウマチでは、適度な運動を伴うリハビリテーションが重要です。
痛みのため身体を動かさずにいると、筋力が低下し、関節可動域も減少します。
▢ 42.関節リウマチの症状が進行すると、日常生活に困難が生じるため、自助具を活用することによりADLを自立させます。
関節リウマチでは、手指関節の痛みや拘縮を予防するために自助具を使用したり、日常生活における工夫が必要です。
関節リウマチ患者の生活に役立つ自助具の例
リーチャーは、遠くの物をつかんだり、地面にある物を拾ったりできる。
ボタンエイドは、ボタンを指でつままなくても掛けはずしができる。
ストッキングエイドは、前傾姿勢をとらずに靴下がはける。
ドアノブグリップは、ドアノブに取り付けると、楽に回せるようになる。
自助スプーン・自助フォークは、握る力が弱くても保持しやすい形状になっています。
パーキンソン病
▢ 43.パーキンソン病は、脳内のドパミンという神経伝達物質の不足により、身体にさまざまな機能障害が生じる病気です。
ドパミン(ドーパミン)は、中脳の黒質という部分でつくられるが、パーキンソン病では、何らかの原因により黒質の神経細胞が変性し、 ドパミンの産生が阻害されます。中年以降に発症することが多く、高齢になるほど発症率が高くなります。
▢ 44.パーキンソン病の代表的な症状である、振戦、筋固縮、無動・寡動、姿勢反射障害・歩行障害を、パーキンソン病の四徴といいます。
パーキンソン病には、特徴的な症状があり、パーキンソン病の四徴と呼ばれます。
パーキンソン病の四徴は、振戦:手足が震える。筋固縮:筋肉がこわばる。無動・寡動:動作が緩慢になる。姿勢反射障害・歩行障害:バランスがとりにくくなる。
▢ 45.パーキンソン病の症状では、振戦が最初にみられることが多い。
振戦(手足の震え)は、まず片側の上肢に現れ、続いて、同じ側の下肢、反対側の上肢、下肢の順に現れることが多い。
振戦は手指にみられることが多く、その場合、丸薬をまるめるような動き(ピルローリングという)に見える。
▢ 46.筋固縮は、筋肉がこわばって固くなり、身体をうまく動かせなくなる症状です。
肘や手首などの、手足の関節の曲げ伸ばしがしにくくなり、医師が関節を伸ばそうとすると、歯車が回るときのような、カクン、カクンという断続的な抵抗を感じるのが特徴です。筋力は正常であるが、力を抜いてリラックスすることができない。
▢ 47.無動・寡動とは、動作が緩慢になり、動作の開始までに時間がかかる症状です。
まばたきの回数も減り、表情もとぼしくなり、眼を見開いたまま一点を見つめているような、仮面様顔貌と呼ばれる特有の顔つきになる。話し方も、小声で抑揚がなく、聞き取りにくくなる。文字を書いているうちにだんだん字が小さくなってしまう小字症という症状もよくみられます。
▢ 48.姿勢反射障害とは、身体のバランスをとりにくくなる症状です。
姿勢反射障害が生じると、身体のバランスが崩れたときに、反射的に立て直すことができないため、軽く押されただけでも簡単に倒れてしまう。とっさに受身をとることもできないので、転倒すると大けがにつながる。
▢ 49.パーキンソン病による歩行障害には、すくみ足、小刻み歩行、前方突進歩行、すり足歩行などがある。
パーキンソン病では、特徴的な歩行障害がみられる。
パーキンソン病による歩行障害の種類は、すくみ足:歩きだすときの最初の一歩が踏み出せない。小刻み歩行:歩行が遅く、歩幅が小さい。前方突進歩行:前に進みだすと止まらなくなる。すり足歩行:かかとを地面につけたまま歩く。
▢ 50.パーキンソン病の症状は緩やかに進行し、重症になると寝たきり状態になることもあります。
ホーン・ヤールによるパーキンソン病の重症度分類
ステージIは、身体の片側のみにごく軽い症状がある状態
ステージⅡは、 身体の両側または体幹に症状がある状態
ステージⅢは、姿勢反射障害がある状態
ステージⅣは、日常生活の一部に介助を要する状態
ステージVは、日常生活の全てに介助を要する状態
▢ 51.パーキンソン病の治療は、主に薬物療法とリハビリテーションにより行われます。
パーキンソン病は原因がわかっていないため、根治療法は確立されていない。治療の中心は薬物療法で、ドバミンの不足を補うことにより症状を緩和します。運動機能を維持するためのリハビリテーションも重要である。ホーン‐ヤールの重症度分類に対応して、リハビリテーションのプログラムが作成されます。
▢ 52.パーキンソン病の症状には、日内変動、週内変動がみられます。
国内変動、週内変動とは、1日(1週間)の間に、症状が良くなったり、悪くなったりを繰り返すことをいいます。このような変動があると、ADLに介助が必要かどうかを見きわめるのが難しくなります。そのときの状況をよく観察し、臨機応変に判断することが重要です。
▢ 53.パーキンソン病では、歩行時の困難に対応した住環境整備が必要です。
すくみ足に対処する住環境整備の例
足を踏み出すための目印として、廊下などの床に、20~30cm間隔でカラーテープを貼っておく
▢ 54.パーキンソン病の患者は、話そうとしても、とっさに声が出ない場合があります。
困ったときに介護者を呼ぼうとしても声が出ないことがあるので、ワイヤレスコールなどを活用する。会話による意思の伝達が困難になってきた場合は、携帯用会話補助装置を使用する方法もある。手指の振戦を考慮して、文字盤に1文字ずつ枠を設けたものを用います。
糖尿病
▢ 55.糖尿病は、インスリンの分泌量が不足するか、その働きが不十分になったことにより、血糖値が高くなる病気です。
健康な人の血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)は、常にほぼ一定の濃度に保たれています。食後は血糖値がやや上昇するが、膵臓から分泌されるインスリンの働きにより、上昇が抑制されるしくみです。その機能が何らかの原因により阻害され、慢性的に高血糖になった状態が糖尿病です。
▢ 56.糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病があります。
1型糖尿病は、膵臓内のインスリンを分泌する細胞が破壊され、インスリンの絶対量が不足することにより高血糖になる。
2型糖尿病は、インスリンの分泌量が少ない。分泌のタイミングが遅れる。インスリンがうまく作用しないなどの原因で高血糖になる。`
日本人の糖尿病患者の95%は、2型糖尿病です。
▢ 57.糖尿病の典型的な症状は、口渇、多飲、多尿です。
糖尿病は、初期にはあまり自覚症状がなく、血糖値がかなり高くなってから、口渇、多飲、多尿などの症状が現れてきます。さらに、高血糖の状態が長く続くと、体内の多くの器官・臓器の機能が低下し、罹患してから数年経つと、さまざまな合併症を引き起こします。
▢ 58.糖尿病の3大合併症とは、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、糖尿病腎症です。
糖尿病の3大合併症
糖尿病網膜症は、網膜の血管の異常により視力が低下する。悪化すると眼底出血や網膜剥離を起こし、失明に至ることもある
糖尿病神経障害は、末梢神経障害、自律神経障害、運動神経障害がある
糖尿病腎症は、進行すると腎不全になり、人工透析を要する
▢ 59.糖尿病の治療は、薬物療法、食事療法により行われます。
1型糖尿病の場合、体内でインスリンが作れないので、インスリン注射が必要です。2型糖尿病では、必要に応じてインスリン注射が行われるほか、インスリンの分泌を促進する薬や、糖の吸収を抑える薬などが投与されます。食事療法では、標準体重から算出した適正な摂取エネルギー量に基づいてカロリー制限を行います。
▢ 60.糖尿病のリハビリテーションは、運動療法が中心です。
全身の筋肉を使った運動を行い、筋肉内のブドウ糖の利用を促進します。毎日決まった運動を、食後1、2時間後に行うことにより、食後の血糖値の上昇を抑えられます。運動療法には、インスリンの働きをよくする効果もあります。
▢ 61.糖尿病の合併症により、視力障害を生じた場合の住環境整備では、段差の解消や照明への配慮が必要となります。
糖尿病網膜症になると、視界がぼんやりとかすみ、視力が低下します。屋内の段差の見分けがつきにくくなり、つまずいて転倒する恐れがあるため、段差を解消するとともに、室内を整理整頓し、照明を明るくします。
▢ 62.糖尿病の合併症により、運動神経障害がみられる場合も、転倒予防の配慮が必要です。
運動神経障害により筋力が低下し、動作の機敏性も衰えるため、転倒のリスクが高まります。玄関、浴室、 トイレなどに手すりを設置し、家具の配置にも工夫して、バランスをくずしたときにいつでも身体を支えられるようにしておきます。感覚障害がある場合、暖房は局所暖房を避け、部屋全体を暖めます。
心筋梗塞
▢ 63.心筋梗塞は、冠動脈の血流がとだえ、心筋が壊死する病気です。
冠動脈は、心臓を動かしている心筋に、酸素や栄養を供給しています。冠動脈の一部が、動脈硬化などの原因で狭くなり、そこに血栓ができると血流がとだえてしまいます。これが、心筋梗塞の主な原因です。心筋梗塞の発作が起きると、胸部に激痛が生じ、その痛みが30分以上も続きます。
▢ 64.狭心症は、心筋梗塞と同じく虚血性心疾患の一つであるが、冠動脈の血流の減少・とだえが一時的で、心筋は壊死には至らない。
虚血性心疾患とは、冠動脈の障害による血流の不足に起因する疾患の総称で、心筋梗塞と狭心症が代表的です。狭心症は、一時的な心筋の酸素不足によるもので、胸が締め付けられるような痛みを伴う発作が数分間続くが、心筋は壊死には至らない。
▢ 65.心筋梗塞の治療には、血栓溶解療法、カテーテル治療、バイパス手術があります。
心筋梗塞の治療の種類
① 血栓溶解療法は、薬を投与して冠動脈の血栓を溶かす
② カテーテル治療は、冠動脈にカテーテルを挿入し、狭窄した部位を広げる。バルーン療法とステント療法がある
③ バイパス手術は、胃や太ももなどの血管を移植して、新しい血液の通り道を作る。
▢ 66.心筋梗塞の回復期には、運動療法を中心としたリハビリテーションを行います。
心筋梗塞のリハビリテーションでは、運動強度の設定が重要です。運動強度が低すぎると効果が得られないし、強すぎると危険を伴います。退院が可能になり、自名での生活に戻ってからも、階段の昇降や、急激な温度差などにより、心臓に大きな負担をかけないように注意します。―方、安静にしすぎるのも禁物で、心臓機能の低下を招くことにつながります。
肢体不自由(脊髄損傷)
▢ 67.肢体不自由とは、上肢、下肢、あるいは体幹の運動機能障害により、日常生活に支障をきたしている状態をいいます。
肢体不自由が生じる原因はさまざまであるが、脳や脊髄などの中枢神経系の疾患に起因する場合は、感覚障害や高次脳機能障害、自律神経機能障害、膀胱・直腸機能障害などを合併していることが多い。
▢ 68.脊髄に損傷を受けると、運動機能、知覚機能、自律神経に障害が生じます。
脊髄とは、脊柱(背骨)の中を通る神経の束で、脳とともに中枢神経系を構成しています。脊髄は、脳から末梢に命令を伝え、末梢から脳に感覚情報などを伝えています。脊髄損傷は、脊椎の骨折や脱臼などにより、脊髄が圧迫されることによって生じます。原因は、交通事故、高所からの落下、転倒、打撲、スポーツ事故などが多い。
▢ 69.脊髄は、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄の髄節に分けられます。
脊髄から出た神経線維は、脊柱を構成する脊椎の間を通って出入りし、全身の末梢神経とつながっています。脊椎の部位に対応して、脊髄には、31の髄節があります。
▢ 70.脊髄損傷では、損傷を受けた脊髄の部位により障害の程度が異なります。
脊髄が高い位置で損傷されるほど、障害は重くなります。脊髄損傷のレベルは、正常に機能しているいちばん下の髄節の名で表されます。
▢ 71.脊髄損傷による麻痺には、完全麻痺と不全麻痺があります。
脊髄損傷による麻痺の種類
① 完全麻痺は、脊髄が完全に切断された状態。失われた機能が回復する可能性はほとんどない。
② 不全麻痺は、脊髄が部分的に切断された状態。リハビリテーションにより機能の改善がみられることがある。
▢ 72.脊髄損傷では、残存した機能の維持を目的としたリハビリテーションが行われます。
脊髄損傷の原因が脊椎の骨折や脱臼である場合は、脊椎固定術や、コルセットによる固定を行います。損傷した脊髄を修復、再生することはできないので、リハビリテーションにより、残存する機能を使って、できる限りADLを自立させることを目指します。
▢ 73.脊髄損傷では、損傷のレベルに合わせた住環境整備が必要です。
損傷のレベルにより、獲得可能なADLが異なるため、住環境整備の方針も変わってきます。
四肢、体幹のすべてが麻痺する高位頸髄損傷では境制御装置の導入を検討します。
環境制御装置とは、呼気、唇、舌、顎の動きなど、残存した機能を利用して、さまざまな機器の操作ができる装置です。
▢ 74.感覚障害がある場合は、その特性に配慮した住環境整備が必要となります。
感覚障害がある場合は、障害の特性に配慮し、身体をぶつけそうな箇所にクッション材をつける、浴室に温度調節機能付きの給湯器を設置するなどの住環境整備を行います。
長時間車いすに座っているときは、褥瘡予防のため、最低1時間に1回、プッシュアップを行います。
肢体不自由(進行性疾患)
▢ 75.進行性疾患とは、運動機能障害が徐々に進行する疾患です。
運動機能障害が徐々に進行し、肢体不自由の原因となる進行性疾患には、代表的なものとして、筋ジストロフィー、脊髄型変性症、筋萎縮性側索硬化症(ALS) の3つがあります。
▢ 76.筋ジストロフィーは、筋肉の組織が破壊され、筋萎縮、筋力の低下が進行する遺伝性疾患です。
筋ジストロフィーは多くの病型に分類されているが、最も患者数が多いのはデュシェンヌ型筋ジストロフィーで、1~3歳頃に、基本的に男児のみに発症します。歩き方がおかしい、転びやすい、走れない、階段を上れないなどの初期症状が現れることにより、発病に気づくことが多い。現在のところ、根本的な治療法はない。
▢ 77.デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、動揺性歩行、登攀性起立などの症状が現れます。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状の進行
小学校入学前後は、下腹部を突き出し、腰を振るようにして歩く動揺性歩行が現れる。
小学校低~中学年は、膝や太ももに手を付いて起き上がる登攀性(とうはんせい)起立がみられるようになる。
中学校前後は、歩行が困難になり、車椅子での生活に移行する。
中学校入学後は、座位の保持が困難になる。呼吸機能が低下する。
▢ 78.デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、症状の進行に対応した住環境整備が必要です。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状の進行に対応した住環境整備
歩行能力の低下は、手すりの設置
車いすへの移行は、車いす移行に対応した住環境整備
さらに筋力が低下は、リフト、特殊寝台の導入
感染症の危険は、室内の温度や湿度への配慮
▢ 79.脊髄小脳変性症は、脊髄から小脳にかけての神経細胞の変性により、運動失調などの症状を呈する疾患の総称です。
脊髄小脳変性症では、両下肢、体幹の運動失調により、歩行にふらつきがみられ、進行すると歩行が困難になります。また、言葉が不明瞭で聞き取りにくくなる、失調性構音障害も生じます。発症後2~5年経過すると、パーキンソン病に似た固縮・無動などの症状が現れます。
▢ 80.脊髄小脳変性症では、進行とともに低下する移動能力に応じた住環境整備が必要となります。
脊髄小脳変性症の進行に伴う住環境整備
歩行自立期から進行期では、手すりの設置
歩行不安定期(伝い歩き期)では、屋外での車椅子の設置、トイレ・浴室の改修、手膝這い期では、屋内での車いすの使用
移動不能期(臥床期)では、特殊寝台、背もたれ付きポータブルトイレ、尿器の使用
▢ 81.筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンの変性による進行性疾患です。
筋肉を動かす命令を伝える神経細胞の運動ニューロンが変性することにより、筋萎縮と筋力の低下が進行します。40歳以降に発症することが多く、男性の患者数が女性の1.5~2倍と多い。進行は速く、発病後2~4年で全身の筋力が低下し、さらに進行すると呼吸困難を生じ、人工呼吸器が必要になります。
▢ 82.筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、進行の初期、中期、後期で住環境整備の必要性が異なります。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行に伴う住環境整備
進行の初期では、ADLはおおむね自立するので、住環境整備の必要性は低い。
進行の中期では、上肢の筋力低下で上肢装具、自助具などを使用、下肢の筋力低下で下肢装具の使用、手すりの設置、段差の解消
進行の後期では、特殊寝台、リクライニング機能付き車いすの使用、人工呼吸器を使用する場合は、環境制御装置の導入を検討
肢体不自由(脳性麻痺)
▢ 83.脳性麻痺とは、胎生期から新生児期までに起きた脳の病変により、運動機能に障害が生じた状態をいいます。
脳性麻痺には、障害が生じた時期によって、脳性麻痺の原因が考えられます。
妊娠中の原因は、胎内感染、妊娠中毒症、脳形成障害、胎盤機能不全など
出産時の原因は、新生児仮死、頭蓋内出血、胎盤剥離など
出産後の原因は、頭部外傷、髄膜炎、脳炎など
▢ 84.脳性麻痺による運動障害には、痙直型、不随意運動型(アテトーゼ型)、失調型があります。
脳性麻痺による運動障害の種類
痙直型は、筋肉が硬直して動かなくなる
不随意運動型(アテトーゼ型)は、手足や首が自分の意思と無関係に動き、制御できなくなる
失調型は、力がうまく入らず、動きがふらふらする
▢ 85.麻痺の現れ方には、単肢麻痺、対麻痺、片麻痺、四肢麻痺などがあります。
麻痺の現れ方の種類
単肢麻痺は、四肢のうち一つが麻痺する
対麻痺は、両下肢が麻痺する
片麻痺は、左右どちらかの上下肢が麻痺する
四肢麻痺は、四肢すべてが麻痺する
▢ 86.脳性麻痺は、知的障害、視覚障害、聴覚障害、構音障害などを伴うことが多い。
脳性麻痺の基本的な症状は運動障害であるが、多くの場合、知的障害や、視覚障害、聴覚障害、構音障害などを合併します。
重度の知的障害を有する場合は、運動障害が軽度であっても、日常生活の自立度に大きく影響します。
▢ 87.脳性麻痺のリハビリテーションは、健常な子どもの発達過程と同じように、段階を追って進められます。
脳性麻痺のリハビリテーションの進め方
首のすわり、寝返り、座位の保持、手膝這い保持・手膝這い移動、立位保持・立位
▢ 88.脳性麻痺では、残存した機能をうまく活用することにより、ADLが自立することがあります。
年長の脳性麻痺者には、本来その目的に使う部分とは異なる身体の他の部位を利用して、多くのADLを自立させている例がみられます。たとえば、座位の保持が困難で、かつ、上肢がうまく動かせない場合、上肢と下肢をベルトで固定し、下肢でスプーンを把持して食事動作を行うことが可能です。
▢ 89.脳性麻痺者は幅広い年齢層にわたるため、幼児期から中高年期のそれぞれの時期に合わせた住環境整備が必要です。
患者や介助者が直面する生活上の問題点は、時期に応じて変わってきます。
脳性麻痺者の年齢に合わせた住環境整備
生活住環境整備
幼児期は、はいはい、お座りなどの運動の発達を促すため、畳や床の上での生活が中心となる。住環境整備は、介助者が幼児を抱き上げて車いすに移乗させるが、幼児の体重が重くなってくると負担が大きいので、リフトの導入を検討する。
学齢期は、学校では、車いすでの生活になることが多い。自宅では、座位移動、車いす移動、両者の併用のいずれかを選択する。住環境整備は、座位移動の場合、移動する範囲を平面にし、床材はリノリウムなど弾力性のあるものにする。車いすの場合はフローリングがよい。
青年期は、両親の高齢化、兄弟姉妹の独立などの家族構成の変化が起こる。本人の自立意識が高まり、家事などを行うようになる。住環境整備は、介助者の負担軽減につながる住環境整備を行い、福祉用具を活用する。本人が家事を行うために必要な住宅改修を行う。
中高年期は、加齢に伴い身体機能が低下し、歩行が自立していた人も、つえ、車いすなどを使用するようになることがある。住環境整備は、新たに車いすを使用する場合は車いすに対応するなど、見直しが必要になる。
肢体不自由(切断)
▢ 90.切断とは、四肢の一部もしくは全部が、身体から切り離された状態をいいます。
切断に至る原因は、外傷、疾患、先天的奇形などです。切断は運動機能障害を伴うが、その程度は、切断された部位によって異なります。なお、関節の部分で切り離された場合は離断と呼ばれます。切断は、上肢切断と下肢切断に大きく分けられます。
切断の主な原因と切断部位の割合
上肢切断は、業務中の事故や交通事故による外傷、切断部位は、指切断(82%)、前腕切断(8%)、上腕切断(6%)
下肢切断は、糖尿病や動脈硬化症などの疾病による末梢循環障害、交通事故、腫瘍など、切断部位は、下腿切断(50%)、大腿切断(37%)、サイム(足首)切断・足部(足の一部)切断(6%)
疾患を原因とする切断では、患者の年齢、性別、社会生活の便宜などを考慮して切断部位が決定されます。一方、事故などで手足を切断された場合は、数時間以内であれば接合できる可能性があります。その場合、切断された部分を冷却するなど、適切な処置を行うことが重要になります。
▢ 91.切断者は、義肢の使用や、残存した機能の活用により、ADLの自立を図ります。
切断術後は、ギプスや弾性包帯を巻いて断端のむくみを防ぎ、義肢の装着に備えた断端管理を行います。また、関節可動域訓練、断端の強化訓練などのリハビリテーションを、なるべく早期から開始します。義肢装具士により義肢が製作されると、義肢の装着訓練や、義肢を使用したADL訓練が行われます。
▢ 92.片側股関節離断の場合、一般に股義足を使用します。
股関節離断は、下肢切断の中で最も高い位置での切断です。
高齢者や女性の場合は、股義足だけでは歩行が不安定になるため、松葉づえやT字型つえを使用する。屋内で股義足を使用する場合は、玄関、廊下などに手すりを設置し、床材はすべりにくい材質のものにします。義足をはずしたときは、両松葉杖か、車いすでの移動になります。
▢ 93.両側大腿切断者の移動は、主に車いすでの移動となります。
両側大腿切断者は、外出時は義足を装着するが、自宅でははずすことが多い。屋内での移動は、両手を使用しての床上移動か、自走用車いすでの移動となります。切断者用の車いすは、フットサポート、レッグサポートを取りはずして回転半径を小さくし、後方への転倒を防止するため、後輪の車軸の位置を後方にずらしてあります。
▢ 94.片側大腿切断の場合は、大腿義足を使用します。
片側大腿切断者には、吸着式ソケットやライナーを使用した大腿義足が用いられることが多い。このタイプは、断端とソケットがしっかりと吸着し、歩行が安定するが、着脱に手間がかかるため、入浴時や就寝前に義足をはずした後は、再度装着せずに、両松葉づえで移動することが多い。したがって、義足を使用する場合、使用しない場合の両方に対応した住環境整備が必要となります。
▢ 95.サイム(足首)切断、足部切断の場合、屋内では義足をはずしての歩行が可能です。
下腿切断では、下腿義足を使用します。大腿義足にくらべて着脱が容易であるが、着脱は腰かけて行うため、玄関など、屋内の必要な箇所にいすを設置します。浴室では義足をはずすので、手すりを設置します。サイム切断、足部切断では、義足をはずしての歩行に配慮し、居室にクッション性のあるカーペットを敷くなどして、足部への衝撃を吸収します。
▢ 96.片側上肢切断の場合、健側の上肢を使用することによってADLが可能になることが多い。
健側の上肢を用いることによりADLが自立する場合、義手は装飾的な目的で使用されます。両側上肢切断の場合は、少なくともどちらかの上肢に能動義手を装着する必要があります。
能動義手とは、物をつかむ、握るなどの動作が可能な義手です。
内臓障害(心臓機能障害)
▢ 97.内部障害とは、身体の内部の臓器などに生じる機能障害です。
内部障害とは、身体障害者福祉法に定められた身体障害のうち、7つの障害をいいます。
内部障害の種類
心臓機能障害、腎臓機能障害、膀胱直腸機能障害、肝機能障害、呼吸器機能障害、小腸機能障害、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
▢ 98.心臓機能障害とは、血液を全身に送り出す心臓の機能が、何らかの疾患により低下した状態をいいます。
心臓機能障害を伴う疾患は、心筋梗塞、狭心症などの虚血性心疾患や、弁膜症、心筋症などです。先天性の疾患を除くと、その多くは不適切な生活習慣に起因します。
不適切な生活習慣とは、運動不足、偏った食生活、肥満、喫煙、ストレスなどです。
▢ 99.心臓機能障害をもつ人は、日常生活において、心臓に負担をかけすぎないよう常に配慮しなければならない。
心臓機能障害をもたらす疾患の症状は、薬物療法、カテーテル治療、手術などの治療により安定することが多いが、再発予防のためにはリハビリテーションが重要です。日常生活においては、重い物を持って急に立ち上がらない。手を心臓より高い位置に上げての作業を避ける。温度差の激しい場所への移動を避ける。入浴時は全身浴を避け、半身浴やシャワー浴にする。などの配慮が必要です。無理のない日常生活を送るには、ADLに必要な酸素の消費量を把握することも重要です。
日常生活に必要な酸素の量(単位:METs)
1~2は、食事、洗面、自動車の運転、かなりゆっくりした歩行、事務作業
2~3は、調理、モップでの床拭き、ゆっくりした歩行
3~4は、シャワー、膝をついての床拭き、少し速歩きの歩行
4~5は、入浴、立て膝での床拭き、速歩き
5~6は、かなり速い歩行、農作業
6~7は、シャベルで掘る作業、雪かき
7~8は、ジョギング、水泳
▢ 100.心臓機能障害をもつ人は、発作への不安から社会生活に制約を受けることがあります。
症状がおさまっていても、発作がいつどこで起きるかわからないので、心臓機能障害をもつ人は不安を抱えながら生活を送っていることが多い。そうした事情は周囲からはわかりにくいが、できる限り本人の不安を取り除くよう支援することが望ましい。
▢ 101.心臓ペースメーカーは、電磁波により誤作動を起こす可能性があります。
度の不整脈などで適応となるペースメーカーは、電気的な刺激により、心拍数が一定の値以下に下がらないようにする装置であるが、下記の電気製品等は、ペースメーカーを誤作動させる危険性が指摘されているので注意が必要です。
電磁調理器、電動工具、IH式電気炊飯器、盗難防止装置
内部障害(呼吸機能障害)
▢ 102.呼吸器機能障害とは、呼吸器の3つの機能のうち、いずれかに障害を生じた状態です。
呼吸器は、人体の生命維持に重要な3つの機能をもっており、そのいずれかに障害が起きたものを呼吸器機能障害といいます。
呼吸器の3つの機能
外界の空気を肺に出し入れする換気機能
空気中の酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出する肺胞ガス交換機能
気道を浄化し、通気性を維持する機能
▢ 103.呼吸器の機能が障害され、血液中の酸素や炭酸ガスの分圧が異常な値になることを、呼吸不全といいます。
呼吸不全が1か月以上続く状態を、慢性呼吸不全といいます。慢性呼吸不全を引き起こす疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が最も多く、肺結核後遺症、間質性肺炎、肺がんなどがそれに続く。COPDの主な原因は喫煙です。
▢ 104.1985(昭和60)年から、在宅酸素療法に医療保険が適用されるようになりました。
在宅酸素療法(HOT)は、慢性呼吸不全の状態にあるが、病状が安定している患者が、自宅で酸素吸入を行えるようにしたもので、酸素を供給する装置には、液体酸素装置と酸素濃縮装置の2種類があります。HOTにより、多くの患者の自宅療養や社会復帰が可能になりました。
▢ 105.在宅人工呼吸療法は、人工呼吸器が必要な人の自宅療養を可能にした。
在宅人工呼吸療法(HMV)は、主に、肺結核の後遺症や、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経・筋疾患の進行により呼吸困難になった患者に適応されます。気管切開人工呼吸療法と、気管切開を必要としないマスク式人工呼吸療法があります。
▢ 106.呼吸器機能がうまく働かないと、経皮的酸素飽和度が低下します。
経皮的酸素飽和度(SpO2)は、動脈血の中のヘモグロビンのうち、何%が酸素と結合しているかを示す値で、呼吸器機能の状態を知るための指標となります。
SpO2は、パルスオキシメーターという医療機器で計測します。器具を指先などにはさむことにより、簡単に測定できます。
▢ 107.前かがみの姿勢をとると、経皮的酸素飽和度が低下しやすい。
前かがみの姿勢での洗顔、和式便器での排便、入浴時の洗髪・洗体の動作などを行ったときに、経皮的酸素飽和度(SpO2)が低下することがあるため、注意が必要です。
内部障害(腎臓機能障害)
▢ 108.腎臓機能障害とは、腎臓の機能が低下し、恒常性を維持できなくなった状態をいいます。
恒常性とは生体内の状態を一定に保つ働きのことであり、腎臓の機能が低下し、恒常性を維持できなくなった状態を腎臓機能障害といいます。
人体の恒常性を維持する腎臓の働きは、血液中の老廃物や余分な水分を尿として排出する。体内の水分や塩分の量を一定に保つ。
▢ 109.腎臓機能障害が急激に発症した場合を急性腎不全といい、数か月から数年かけて徐々に機能が低下した場合を慢性腎不全といいます。
腎臓機能障害をもたらす原因には、腎臓そのものの疾患と、全身性の疾患があります。前者は急性腎炎やネフローゼ症候群など、後者は糖尿病、痛風、膠原病などです。
透析患者の原因疾患として最も多いのは、糖尿病腎症です。
▢ 110.腎不全の進行を知るための指標としては、糸球体濾過値が用いられます。
糸球体は、腎臓の腎小体という部分にある毛細血管の塊で、血液を濾過し、尿のもとになる原尿を生成します。糸球体濾過値とは、腎臓内のすべての糸球体が単位時間当たりに濾過する血液の量で、その値が正常値の30%以下になると慢性腎不全と診断されます。さらに10%以下になると、尿毒症と呼ばれる危険な状態になるため、透析療法や腎移植が必要です。
▢ 111.透析療法は、体内の老廃物などの排泄を人工的に行う治療です。
透析療法は、失われた腎臓の機能を人工的に代替するもので、腎臓の機能を回復させる効果はない。したがって、透析療法は、腎移植を行わない限り、生涯続けなければならない。長期にわたって透析療法を続けると、手のしびれや痛み、骨の障害、動脈硬化、心不全などの合併症が現れることがあります。
▢ 112.透析療法には、血液透析と腹膜透析があります。
血液透析は、体外の透析器に血液を循環させ、老廃物を濾過したのちに再び体内に戻す方法です。通常は週3回通院し、毎回4~5時間程度透析を受けます。これが生涯続くため、透析患者は著しい時間的拘束を受けることになります。自宅に透析器を設置して行う在宅血液透析という方法もあるが、導入する場合は、本人、介護者とも訓練を受ける必要があります。
▢ 113.腹膜透析は、体内の腹膜を利用して行う透析療法です。
腹膜透析は、胃や腸などの腹部の臓器を覆う腹膜を利用した透析療法で、手術により腹腔内にカテーテルを留置して行う。患者自身が透析液を交換する連続的携帯式腹膜透析(CAPD)と、装置により就寝中に自動的に透析液を交換する自動腹膜透析(APD)があります。
腹膜透析では、カテーテルを通して透析液を腹腔内に注入しておくと、血液中の老廃物や余分な水分などが透析液ににじみ出てくるので、その液を一定時間後に入れ替えます。
内臓障害(小腸・直腸・膀胱機能障害)
▢ 114.小腸機能障害とは、小腸の切除、もしくは疾患による機能低下のため、栄養素が欠乏する状態をいいます。
小腸機能障害を引き起こす原因疾患としては、上腸間膜血管閉鎖症(上腸間膜動脈血栓症・塞栓症により腸管壁が壊死する)、小腸結核、小腸クローン病などがあります。
小腸は、十二指腸、空腸、回腸からなり、胃から送られてきた食物を、胆汁、膵液、腸液などの消化液と混合し、蠕動運動(波状の運動)により攪拌、移送しながら、栄養素の消化・吸収を行います。
▢ 115.直腸・膀胱機能障害とは、直腸、膀洸、尿管、尿道などの切除、もしくは機能低下により、排便や排尿の機能が障害された状態をいいます。
直腸・膀胱機能障害を引き起こす原因疾患としては、直腸がん、大腸がん、クローン病、潰瘍性大腸炎、膀胱腫瘍、神経因性膀胱(二分脊椎、脊髄損傷、糖尿病、脳血管障害などにより起こる)などがあります。
▢ 116.経口からの食物摂取ができない場合に栄養を維持する方法には、経管栄養法や、中心静脈栄養法などがあります。
経管栄養法と中心静脈栄養法
経管栄養法は、鼻腔からチューブを挿入して栄養剤などを流し込む経鼻経管栄養法と、腹部に孔を開けてチューブを挿入する胃瘻・空腸瘻があります。
中心静脈栄養法は、鎖骨の下にある中心静脈にカテーテルを挿入し、高カロリー輸液を注入する。カテーテルが体外に露出する体外式と、皮下に埋め込むポート式があります。
経鼻経管栄養は、誤嚥性肺炎や逆流性食道炎を起こす危険性があります。中心静脈栄養法は、細菌感染への注意が必要です。
▢ 117.排尿障害により尿の排出が不十分な場合は、自己導尿や膀胱留置カテーテルを行います。
自己導尿と膀胱留置カテーテル
自己導尿は、尿道口から定期的にカテーテルを挿入し、膀胱内の尿を排出する。
患者自身か介助者が行う。
膀胱カテーテルは、畜尿バックを接続したカテーテルを膀胱に留置する。
自己導尿ができない場合に行う。
自己導尿を行う際は、十分な手洗い、尿道口周辺の消毒などを行い、清潔にしてから行うことが重要です。
▢ 118.直腸の切除や膀胱の摘出などにより、排便、排尿が困難な場合は、ストーマを造設します。
ストーマには、消化器ストーマ(人工肛門)と尿路ストーマ(人工膀胱)があります。ストーマにより排泄をコントロールすることはできないため、孔の周囲に排泄物を受けるためのストーマ袋(パウチ)を貼りつけます。
ストーマを造設した人をオストメイトといいます。
内部障害(ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害)
▢ 119.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)への感染により生じる免疫機能障害をAIDSといいます。
後天性免疫不全症候群(AIDS)は、HIVの感染により免疫細胞が減少し、免疫不全になる病気で、多くの場合、HIVの感染後、数年から十数年の潜伏期を経て発症します。免疫機能が低下すると抵抗力が弱まり、健康な状態では感染しない病原体にも感染するようになる(日和見感染症)。カリニ肺炎、口腔カンジダ症など、23の疾患がAIDS指標疾患とされ、そのいずれかが発症した場合にAIDSと診断されます。
▢ 120.HIV感染者のリハビリテーションでは、精神面のサポートが重要です。
HIV感染者の治療は、HIVウイルスの増殖を抑える抗HIV薬の投与と、日和見感染症の予防・治療が中心です。また、HIV感染者は、AIDS発症への不安や死への恐怖により抑うつ状態になりやすく、精神的なケアが必要です。
内部障害(肝臓)
▢ 121.2010(平成22)年から、肝機能障害者も身体障害者として認定されるようになりました。
肝臓は、食物の消化を助ける胆汁の生成、腸から吸収した栄養素の代謝、解毒、貯蔵など、さまざまな機能を有します。何らかの原因により、こうした肝臓の機能が低下した状態を、肝機能障害といいます。肝臓は再生力が強く、軽度の障害が生じても治癒することが多い反面、重症になると、治療による改善は困難になります。
▢ 122.肝機能障害をもたらす主な疾患は、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、アルコール性肝障害などであります。
B型肝炎、C型肝炎などのウイルス性肝炎は、血液を介して感染するので、予防のためには、他人の血液を素手でさわらない。歯ブラシ・カミソリなどを共有しない。ピアスの穴あけは適切に消毒した器具で行う。性交渉にはコンドームを使用する。などに注意します。
視覚障害(視力障害/視野障害)
▢ 123.視覚障害とは、眼から大脳の視覚中枢に至る経路のどこかに障害が生じ、視覚機能が低下した状態です。
視覚障害は、視覚が全くない全盲と、視覚機能が残存するロービジョンに分けられます。
世界保健機関(WHO)は、両眼に眼鏡を装用したときの視力が0.05~0.3未満の状態を、ロービジョンと定義しています。この定義には、視野障害に関する規定はありません。
▢ 124.視覚障害の症状は、視力障害、視野障害、その他の視覚障害に分けられます。
視力障害は、全盲とロービジョン
視野障害は、狭窄、暗点、半盲
その他の視覚障害は、順応障害、色覚障害、しょう明、コントラスト感度の低下など
▢ 125.屈折異常による視力障害に、近視、遠視、乱視があります。
屈折異常による視力障害
近視は、眼の調節力が働いていないとき、眼球に入ってきた平行光線が網膜の前方に像を結んでしまう状態。遠くの物が見えにくい。
遠視は、平行光線が網膜の奥で像を結んでしまう状態。眼が疲れやすく、物がぼやけて見える。
乱視は、平行光線がどこにも像を結ばない状態。すべての物がぼやけて見える。
▢ 126.視野障害には、狭窄、暗点、半盲などがあります。
視野障害の種類
狭窄は、視野が狭くなる状態。視野全体が中心に向けて狭まる求心狭窄、視野が不規則に狭まる不規則狭窄がある。
暗点は、視野の一部に見えない部分が生じる。中心部が見えにくい場合は、中心暗点という。
半盲は、視野の半分が欠損する。両眼とも同じ側の視野が欠けるのが同名半盲、、両眼とも耳側(または鼻側)の視野が欠けるのが異名半盲。
▢ 127.順応障害とは、暗順応や明順応に支障をきたしている状態です。
暗順応と明順応
暗順応は、明るい所から急に暗い所に移ると、一瞬ほとんど何も見えなくなるが、しばらく経つと見えるようになる
明順応は、暗い所から急に明るい所に移ると、最初はまぶしくて見えないが、徐々に眼が慣れてくる
網膜にある視細胞には、カン体細胞と錐体細胞があり、暗い所では前者が、明るい所では後者が主に機能します。
▢ 128.色覚障害は、錐体細胞の異常や欠如によって起こります。
色覚に関与するのは、視細胞の中の錐体細胞で、青錐体、緑錐体、赤錐体の3種類があります。色覚障害は、これらのうちいずれかの異常や欠如により生じます。色覚障害には遺伝による先天的なものと疾病による後天的なものがあります。
先天的な色覚障害のうち、3種類の錐体すべてが障害され、色がまったく識別できない状態を、1色覚といいます。
▢ 129.視覚障害者の多くは羞明を訴え、コントラス卜感度も低下しています。
普通の光をまぶしく感じることを羞明といいます。コントラストとは対比のことで、色対比と輝度対比(明るさの対比)があります。注目する対象と背景のコントラストにより物を見分けることができるが、視覚障害者はコントラストの感度が低いため、見分けることが難しい。
▢ 130.視覚障害の原因になる代表的な疾患は、網膜色素変性症、緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性症などです。
視覚障害の原因疾患と現れる症状
網膜色素変性症は、夜盲、視野狭窄、視力低下、色覚障害、失明
緑内障は、視野狭窄、失明
糖尿病性網膜症は、視力低下、眼のかすみ、飛蚊症、失明
加齢黄斑変性症は、中心暗点、視力低下、変視症、色覚障害、失明
▢ 131.人間が外界からとり入れる情報の80%は視覚情報であるといわれます。
人間の活動は視覚情報に多くを負っているため、視覚障害が生じると、日常生活上の物にぶつかる、物を探しにくい、危険を察知するのが遅れる、物につまずいて転倒する、自分がいる位置がわからない、読み書きができないなどさまざまな不便・不自由が生じます。
▢ 132.視覚障害者は、障害の症状や程度に応じた住環境整備を必要とします。
視覚障害に対しては安全性への配慮が最も重要であることはいうまでもないが、全盲とロービジョンでは、住環境整備の内容がまったく異なってきます。また、視覚障害には視力障害の他にも視野障害(狭窄、暗点、半盲)、順応障害、色覚障害、羞明などがあり、症状や程度もさまざまであるため、それぞれのケースに応じた住環境整備が重要です。
聴覚・言語障害
▢ 133.聴覚障害とは、耳から大脳の聴覚中枢に至る経路のどこかに障害が生じ、聴覚機能が低下した状態です。
聴覚障害は、伝音難聴と感音難聴に分けられます。
伝音難聴は、外耳から中耳までの、音の振動を伝える器官の機能に障害が生じたことによる難聴
感音難聴は、内耳の蝸牛で音波を電気信号に変え、聴神経を通して大脳に送るまでの経路に障害が生じたことによる難聴
▢ 134.音の聞こえの程度は、その人が聞き取れる最も小さい音の大きさで表されます。
世界保健機関(WHO)による難聴の程度の分類
聴力レベルとは、その人の耳が聞き取れる一番小さな音の大きさのことをいいます。音の大きさはdB(デシベル)で表され、数字が大きいほど大きな音を示します。
25デシベルまでは、正常
26~40デシベルは、軽度難聴
41~55デシベルは、中等度難聴
56~70デシベルは、準重度難聴
71~90デシベルは、重度難聴
91以上デシベルは、最重度難聴
▢ 135.言葉の聞き分け能力を語音明瞭度といいます。
音としては聞こえているものの、言葉として聞き取れない場合は、語音明瞭度が低い状態です。
語音明瞭度を測定する際は、言葉を1音ずつ聞き取って、紙に書いてもらい、正しく聞き取れた音の割合を計算します。音の大きさを段階的に変えて測定し、一番よく聞き取れたときの値を最高語音明瞭度とします。
▢ 136.語音明瞭度は、伝音難聴では比較的高いが、感音難聴では低下が認められることが多い。
伝音難聴の場合、音を大きくすれば聞き取れるので、補聴器を導入した際に高い効果が得られます。感音難聴では、音が聞こえにくいだけでなく、語音明瞭度も低下し、音のゆがみが加わるために、補聴器で単に音を大きくしても聞き取れないことがあります。
▢ 137.感音難聴では、ダイナミックレンジが狭くなります。
音は、小さすぎると聞き取れないが、大きすぎるとうるさく感じます。不快に感じることなく聞き取れる音の大きさの範囲を、ダイナミックレンジといいます。感音難聴ではダイナミックレンジが狭くなり、うるさく感じる音の大きさは、正常耳と同程度またはもっとうるさく感じることがあります。
▢ 138.伝音難聴の原因は中耳炎が多い。感音難聴にはさまざまな原因があるが、原因不明の場合も多い。
伝音難聴・感音難聴の主な原因疾患
伝音難聴は、中耳炎(ウイルスや細菌感染などにより、中耳に炎症が起こる)、耳硬化症、外耳道閉鎖症
感音難聴は、加齢性難聴(加齢に伴い起こる聴力低下。言葉が聞き取りにくくなる)、音響外傷性難聴(強い音や長時間の騒音などによる聴力低下)、突発性難聴(原因不明で、一側性の場合が多い)、メニエール病(めまい、難聴、耳鳴りを伴う難病)
▢ 139.言語習得期以前に聴覚障害が生じた場合、音声言語の習得が困難になることがあります。
音声言語は聴覚を通して習得されるため、健聴児は、基礎的な語彙をはじめ、正確な発音や文法的な規則、難しい言い回しまで耳で聞くだけで覚えてしまいます。しかし、乳幼児期に聴覚障害をもった場合は、音声言語の習得が困難であり、手話を第一言語とする人もいます。
▢ 140.聴覚障害はコミュニケーションの障害といわれます。
聴覚障害者の多くは会話が困難であり、音声による情報の入手も難しい。生活上の不便や不自由が生じる原因の多くもそこにあります。そうした意味で、聴覚障害は、情報・コミュニケーションの障害といえます。また、聴覚障害者は、外見からは障害があることがわかりにくく、そのことが原因で、周囲から適切な支援を受けることができない場合もあります。
▢ 141.聴覚障害者のための住環境整備では、できる限り静かな環境を整えます。
聴覚障害者の生活空間への配慮
「雑音や反響を少なくする」は、遮音性の高い壁・窓の設置、吸音性の高い壁・床の設置
「衝撃音が出ないようにする」は、じゅうたん、テーブルクロスの使用、ドアクローザーの設置
「電話のベル・玄関のチャイム等」は、音量を大きくする、聞きやすい音域、音質にする。光や振動で知らせる。
▢ 142.聴覚障害者にとっては、視覚情報が非常に重要です。
聴覚障害者は、聴覚による情報の入手が困難なハンディキャップを、視覚情報(非音声情報)により補っています。したがって、生活空間の中に、見えない場所をなるべく少なくすることが必要です。不要な仕切りは取りはずして、できる限り広い範囲を見通せるようにします。
▢ 143.言語障害とは、言葉を話したり、聞いて理解したりする過程のどこかに障害が生じている状態をいいます。
脳で言葉を組立て、脳の命令に従って、肺、声帯、口腔、舌、鼻腔などの発声発語器官が動かされ、言葉を発音する過程や耳から入った音声が電気信号として脳に伝えられ、脳がそれを言葉として理解する過程の2つの過程のどこかに障害が生じた状態が言語障害です。
言語障害には、失語症、構音障害、音声障害などがあります。
言語障害のタイプ
失語症は、大脳言語野の障害、症状は、言葉を組み立てて話すこと、聞いて理解すること、文字を読むこと、文字を書くことのうちの一部、もしくは全部に障害が生じる。
構音障害は、発声発語器官(肺、声帯、口腔、舌、鼻腔など)の障害、症状は、正しい発音ができない。ある特定の音を別の音に置き換えてしまうことがある。音の省略、転倒、ゆがみがみられる。
音声障害は、声帯の障害、症状は、声がかすれる。声が出ない。
▢ 144.失語症の症状は、損傷された脳の部位によって異なります。
大脳言語野のウェルニッケ領域が損傷された場合は、言葉の理解が困難になります。ブローカ領域が損傷された場合は、言葉は理解できるが、発語が困難になります。
ウェルニッケ領域は、大脳の側頭葉にあり、言語の理解にかかわっています。
ブローカ領域は、大脳の前頭葉にあり、言語の表出にかかわっています。
失語症の主な症状
喚語困難は、言いたいことがあるのに言葉が出てこない。
錯誤は、言葉の音を言い間違える(字性錯語)。意図したものとは別の単語が出てくる(語性錯語)。
ジヤーゴンは、意味不明な言葉を話す。
発語失行は、言葉が出てこない。構音が一定しない。プロソディ(言葉の抑揚、リズムなど)が平坦になったり、不自然になったりする。
失文法・錯文法は、助詞の省略など(失文法)。助詞の誤用など(錯文法)。
聴理解障害は、相手の言葉が理解できない。
反響言語は、相手の言葉をオウム返しにする。
読字障害・失読は、文字や文章が読めない。
書字障害・失書は、文字や文章が書けない。
認知・行動障害
▢ 145.言語障害をもつ人との会話では、相手の理解に合わせて、ゆっくり、はっきりと話すことを心がけます。
言葉の理解に問題のある言語障害者は、聞いた言葉を一時的に記憶する能力(聴覚把持力)が低下しているため、早口で一度に話されると、理解がますます困難になります。言語障害者とのコミュニケーションでは、以下の点も重要です。
複雑な表現を避け、平易で短い表現で話す。
言葉を先取りせず、相手が言い終わるのを待つ。
言葉を聞き取りやすい静かな環境を整える。
表情や身振り手振りにも注目し、理解に努める。
▢ 146.言語障害の症状によっては、ノートでの筆談や、カード、文字盤などを利用したコミュニケーションが有効です。
言語障害では、コミュニケーションの方法として、ノートでの筆談や、カード、文字盤などの利用が有効であるが、文字を読むことに障害がある場合は、図や絵で示したほうがわかりやすいこともあります。介護者は、症状によって対応を考慮することが大切です。
▢ 147.高次脳機能障害とは、複雑な精神活動を司る大脳の機能が障害されることをいいます。
高次脳機能障害は、脳の損傷により、注意・言語・記憶・思考・認知・推論・学習・行為などの機能に支障をきたした状態です。高次脳機能障害の主な原因は、脳血管障害、交通事故による外傷性脳損傷、低酸素脳症、脳炎、脳腫瘍などです。
高次脳機能障害の症状
注意障害は、気が散りやすく、一つのことに長く集中できない。周囲の状況に目が行かない。同時に二つのことができない。
記憶障害は、物の置き場所などを忘れる。同じことを何度も聞く。予定が覚えられない。現実になかったことを、現実と取り違えて話す。
遂行機能障害は、目標を持ち、計画を立て、効率よく実行し、その結果を評価するという一連の行動をなしとげることが困難になる。
▢ 148.社会的行動障害は、感情がコントロールできない。欲求が抑えられない。対人関係がうまくつくれない。
失語は、話す・聞く・読む・書くの言語機能の一部、もしくは全部に障害が生じ、コミュニケーションが困難になる。
失行は、動作が不器用になったり、動作を取り違えたりする。
失認は、視覚、聴覚、触覚などの感覚機能には問題がないにもかかわらず、対象が何であるのかがわからない。
半側空間無視は、左右どちらか片側の空間を認識できなくなる。
身体失認は、自分の身体に異物感がある。身体の―部が麻痺しているのに、麻痺していないように感じ、そのように振舞う。
▢ 149.発達障害とは、低年齢において発現する、脳の機能障害ととらえられています。
発達障害は、自閉症、アスペルガー症候群などの広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3つに大きく分けられます。
発達障害は、2005(平成17)年4月に施行された「発達障害者支援法」に定義されています。
▢ 150.いつも同じ行動をとることに執着することは、自閉症の特徴の一つです。
自閉症は、対人関係・社会性、コミュニケーション、想像力とそれに伴う行動の障害です。自閉症の特徴として、限定的・反復的・常同的な行動をとることや、知覚が過敏になることなどが挙げられます。
自閉症の人は同じ状況へのこだわりが強いため、住環境の変化に対応することが難しい。
▢ 151.注意欠陥多動性障害(ADHD)は、多動性、衝動性、不注意を特徴とし、その症状は7歳以前に現れるとされます。
多動性は、じっとしていられない
衝動性は、衝動的、短絡的な行動をとる
不注意は、一つのことに集中できない
多動性、衝動性は成長とともに目立たなくなるが、不注意は思春期、成人期まで続くこともあります。
▢ 152.学習障害(LD)では、全般的な知的発達には遅れがなく、ある特定の能力にだけ問題が生じます。
学習障害(LD)は、全般的な知的発達には遅れがないことが特徴で、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力の習得や使用に著しい困難を示す。
学習障害は、注意欠陥多動性障害と重複して出現することが多い。
▢ 153.知的障害とは、18歳以前の成長発達期に、知的機能に障害が生じ、日常生活に支障をきたしている状態をいいます。
18歳以前の成長発達期に知的機能に障害が生じ、日常生活に支障をきたしているものを知的障害といいます。知的障害者は、動作を習得するのに時間がかかるが、繰り返し学習するとできるようになることが多い。あきらめずにじっくりとADLの拡大に取り組むことが重要です。
▢ 154.精神障害には、外因性精神障害、内因性精神障害、心因性精神障害があります。
精神障害とその原因
器質性精神障害(外因性精神障害)は、脳炎、脳腫瘍、脳の外傷など、脳そのものの疾患に起因する精神障害。
症状性精神障害(外因性精神障害)は、バセドウ病、肝臓病など、脳以外の身体の疾患に起因する精神障害。
中毒性精神障害(外因性精神障害)は、アルコールや薬物、毒物など、外部から取り込んだ物質に起因する精神障害。
内因性精神障害は、原因は不明だが、脳の機能の障害に起因すると考えられる精神障害。統合失調症、躁うつ病など。
心因性精神障害は、心理的なストレスに起因する精神障害。神経症、心身症など。
4章 相談援助の考え方と福祉住環境整備の進め方
介護保険制度とケアマネジメント
▢ 1.介護保険制度の居宅サービスを活用することにより、要介護者の自立支援と、家族の介護負担の軽減を図ることができます。
介護保険制度による居宅サービスのうち、福祉住環境整備に関係するものとして、住宅改修費の支給、福祉用具の貸与、特定福祉用具の購入費の支給などがあります。福祉住環境整備を行うことにより、通所系のサービスも利用しやすくなります。
▢ 2.介護保険制度の居宅サービスを利用するには、ケアプランを作成することが必要です。
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、利用者の身体機能やADLの自立度、社会参加の状況、家庭の介護力などを把握し、それらの状況をふまえた上で、本人や家族の意思を尊重しつつ、住環境整備を含むさまざまなサービスを組み合わせてケアプランを作成します。
▢ 3.ケアマネジメントとは、ケアを必要とする人が適切なサービスを受けられるよう支援する活動です。
利用者のニーズとサービスを結びつけるケアマネジメントの手法は、日本では介護保険制度に導入され、障害者へのケアにも取り入れられています。
▢ 4.ケアマネジメントは、相談→ アセスメント→ ケアプランの作成→ ケアプランの実施→ モニタリングという流れで進められます。
ケアマネジメントの援助過程と住宅改修のプロセス
ケアマネジメントの援助過程 相談、アセスメント、ケアプランの作成、ケアプランの実施、モニタリング
住宅改修の流れ 住宅改修の依頼、改修内容の整理・検討、住宅改修事業者の選定と工事内容の検討、工事の実施、改修後の生活状況の確認
介護支援専門員は、モニタリングによリ、サービスの提供状況を定期的にチェックします。
福祉住環境整備におけるアセスメント
▢ 5.ケアマネジメントにおけるアセスメントとは、利用者の心身の状態を把握し、自立支援のための導き出す過程です。
住宅改修の流れに当てはめると、利用者のADLを把握し、改修が必要かどうか、必要な場合はどの箇所に、どのような改修をすべきかを検討する段階がアセスメントです。
アセスメントは、「評価」「査定」を意味する言葉で、「環境アセスメント」など多くの分野で使われます。
▢ 6.生活全般について評価するアセスメントの視点として、ICFの考え方が応用できます。
国際生活機能分類(ICF)の概念でいうと、住環境は「環境因子」に含まれる。ICFでは、生活機能と環境因子は相互に影響しあう関係にあると考えます。すなわち、住環境の問題は、単独で考えるのではなく、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つの生活機能との関係性を考慮して、全体的にとらえるべきです。
▢ 7.動作を見るアセスメントでは、動作が行われる場所ごとの状況を確認します。
移動動作を評価する場合は、「屋外では車いすを使用するが、屋内ではつえ歩行や伝い歩きが可能」というように、場所ごとの実行状況をとらえておく必要があります。見た目の印象だけでなく、本人が動作に不安を感じているかどうかという、主観的な事実を把握することも重要です。
▢ 8.要介護状態になるのを防ぐ、介護予防の観点からもアセスメントを行う必要があります。
介護予防の中でも、特に重視されているのが、転倒による骨折の予防、心身機能の低下の予防です。アセスメントにおいては、過去に転倒したことがあるか、外出が困難なため閉じこもりがちな生活になっていないかを調べ、住環境整備のニーズを探ります。
▢ 9.介護保険制度を利用して福祉住環境整備を行う場合は、介護支援専門員との協力関係が欠かせない。
介護支援専門員と福祉住環境コーディネーターの連携
介護支援専門員が、アセスメントを通して住環境整備の必要性があると判断し、福祉住環境コーディネーターが相談を受けた場合は、福祉住環境コーディネーターは、介護支援専門員とともに、利用者の生活改善のためにどのような住環境整備が必要かを検討します。
利用者が、介護保険制度を利用する以前に、福祉住環境コーディネーターに住環境整備の相談をした場合は、福祉住環境コーディネーターは、介護支援専門員に話をつなげて、利用者が介護保険制度を利用できるよう取り計らいます。
▢ 10.介護支援専門員が開催するサービス担当者会議に、福祉住環境コーディネーターも積極的に参加すべきです。
福祉住環境コーディネーターは、会議に参加し、住宅改修や福祉用具の活用などの福祉住環境整備について提案を行うとともに、さまざまなサービスの提供者から情報を収集し、利用者の生活全般への理解を深めるべきです。
相談援助の基本的視点
▢ 11.相談援助とは、主に面接を通して、対象者の抱えている問題を明らかにし、解決の手助けを図ることです。
福祉の分野では、社会福祉士等のソーシャルワーカーが、相談援助を専門的活動として行っています。福祉住環境コーディネーターも、利用者から相談を受け、ニーズを把握し、住環境整備に関する助言を行う上で、相談援助の技術を身につけることが必要です。
▢ 12.相談援助においては、個別化の視点をもつことが重要です。
相談援助の対象者は、年齢、性別、家族構成、障害の原因や障害の程度、ADLの自立度など、さまざまな点で一人ひとり異なるため、共通のものさしを当てはめて画一的な対応をしても問題解決につながらない。本人の価値観や障害の受け止め方などの主観的な要因への理解も必要です。
▢ 13.相談援助においては、対象者が「できないこと」だけでなく「できること」に注目します。
加齢による身体能力の低下や障害というマイナス面にばかりとらわれることなく、「できること」に目を向けるストレングスの視点をもつことが重要です。「できること」とは、単に残存する身体機能の活用を意味するだけでなく、本人の意欲や前向きな姿勢を引き出すことも含みます。
▢ 14.相談援助においては、対象者が自分で問題解決できるように援助することが必要です。
援助者と対象者の間には、援助する側と援助される側という構図が生まれ、後者が前者に依存する関係、いわゆる「パターナリズム」に陥りがちです。しかし、あくまで本人の自己決定を支えることが援助者の役割です。
パターナリズムとは、強い者が弱い者に干渉し、本人に代わって意思決定を行うことで、父親的温情主義などと訳されます。
▢ 15.相談援助の活動には、信頼に基づく援助関係を築くことが不可欠です。
対象者と援助関係を結ぶためには、対象者と援助者が同じ空間に一緒にいること、対象者のありのままの状態を受け入れること、対象者の感情にアプローチすること、会話を重んじ、対象者の話を傾聴すること、対象者と協働作業を行うことが重要です。
▢ 16.援助者は、相談援助の過程で対象者について知り得た情報を外部に漏らしてはならない。
守秘義務の遵守とプライバシーの保護は、あらゆる専門職に求められる職業倫理です。対象者の個人情報を漏洩することは、援助者と対象者との信頼に基づいた援助関係を壊すことにもつながります。職務上、他の専門職と連携を図るためには情報を共有することが必要だが、それ以外の者には一切情報を漏らしてはならない。
相談援助の方法
▢ 17.相談援助においては、対象者のニーズヘの「気づき」を促すことが必要です。
住環境整備に関する相談援助を行う上では、対象者本人が住環境整備の必要性についてどのように感じているのかが重要です。本人が自ら要求することを「聞き出す」だけでなく、本人が意識していない潜在的なニーズを「引き出す」ことが必要になります。そのためには、本人の感情にできる限り接近し、本人が現在置かれている状況をよく理解しなければならない。
▢ 18.相談面接では、対象者がリラックスして臨めるような環境づくりをします。
福祉住環境整備に関する相談面接は、多くの場合、対象者の自宅で行われます。住み慣れた自宅は、本人にとってリラックスしやすい場所であるが、援助者との十分な信頼関係が築かれていない場合は、自分の生活空間に立ち入られたことを不快に感じ、話に集中できないこともあります。対象者と対面するときの距離や角度にも注意を払うべきです。
▢ 19.言葉を用いないコミュニケーションを、ノンバーバルコミュニケーションといいます。
コミュニケーションンはバーバルコミュニケーションとノンバーバルコミュニケーションで成り立っています。
バーバル(言語)コミュニケーションは、言葉の選び方、話すスピード、声の質、声量、発音
ノンバーバル(非言語)コミュニケーションは、表情、しぐさ、視線、外見、服装、スキンシップ
関連職とのかかわり方
▢ 20.高齢者の心身の状態は、変化しやすい。
高齢者の中には、かぜで数日寝込んだだけで、そのまま寝たきりになってしまう人もいます。一方、病気にかかって入院し、一時的に要介護状態になっても、回復して在宅で自立した生活を送ることができるようになる人もいます。日ごとに変化する高齢者の状況に対応するには、介護支援専門員などを中心に、医療、介護などの専門職が連携して包括的・継続的マネジメントを行うことが必要です。
相談援助の実践的な進め方
▢ 21.地域の高齢者の支援にかかわる各分野の専門職が協働し、チームアプローチを行うことが必要です。
チームアプローチとは、支援にかかわるさまざまな専門職が、自らの領域を超えて協働し、課題や目標を共有しながらサービスを提供する体制です。それぞれの専門職は、日常的には顔を合わせる機会が少ないため、介護支援専門員が開催するサービス担当者会議などを情報交換の場として活用します。
▢ 22.福祉住環境整備に関する相談では、対象者の生活全般を広い視野で見渡す必要があります。
相談においては、本人が生活する場所の状況を確認する、本人の立ち会いの下で相談する、本人と家族の意向を把握する、身体状況の変化への対応を考慮する、相談者側のキーバーソンを確認する、対費用効果について配慮します。
▢ 23.福祉住環境整備の具体的な方法を検討するためには、現地調査が欠かせない。
現地調査で確認すべき事項は多岐にわたるが、対象者や家族の事情、時間的な制約などにより、何度も現地に足を運ぶことができない場合もあります。調査項目をまとめた福祉住環境チェックシートを活用して、効率よく調査を進めるとよい。
▢ 24.福祉住環境整備の施工の段階では、あらかじめ決定した方針に沿って工事が進められるよう、各段階でチェックを行います。
工事完成までの流れ
工事費見積もりの検討、工事内容の決定、施行者への依頼、工事着手前の配慮事項の確認、工事手前の工事内容の再確認、工事中の工事内容の変更等への対応、工事完成後のチェック
▢ 25.福祉住環境整備では、工事完成後のフォローアップも重要です。
福祉住環境整備を行ったことによる効果は、しばらく生活してからでないとわからないことも多い。工事中や工事後に、対象者の身体状況が変化したために、期待した効果が現れない場合もあります。当初の目標が達成されたかどうかを確認するためのフォローアップが重要です。
5章 福祉住環境整備の基本技術と実践に伴う知識
段差の解消
▢ 1.「建築基準法」により、1階居室の木造床面は、原則として直下の地面から450mm以上高くするよう定められています。
この規定にあてはまる住宅では、必然的に屋内と屋外との間に450mm以上の高低差が生じます。この高低差は、通常、屋外のアプローチ部分に設けられたスロープや階段、玄関の上がりがまちなどの高さに相当します。
▢ 2.屋外のアプローチに設置するスロープの勾配は、1/12~1/15を目安とします。
スロープの勾配は緩やかなほうが安全であるが、その分、スロープの設置に大きなスペースを要します。
▢ 3.屋外のアプローチにスロープを設置する場合、玄関の出入り口や道路に面した部分には、1,500mm× 1,500mm以上の水平面を設けます。
玄関の出入り回の前が傾斜面になっていると、車いすを停止させ、玄関戸の開閉動作を行う際に危険です。また、道路の境界線からすぐにスロープが始まっていると、車いすがうまく停止できず、道路に飛び出してしまう恐れがあります。
▢ 4.アプローチに階段を設ける場合、蹴上げの寸法を110~ 160mm、踏面を300~330mm程度にすると、昇降しやすい。
階段は、蹴上げと踏面から構成されています。
蹴上げは、階段の1段の高さ
踏面は、階段の、足を乗せる平面の部分(の奥行き)
昇降しやすい階段を設置するためには、蹴上げを110~160mm、踏画を300~ 330mm程度にするとよい。
▢ 5.屋内外の高低差が大きく、スロープの設置が困難な場合は、段差解消機の設置を検討します。
高低差が大きい場合は、スロープよりも段差解消機のほうが設置に要するスペースが小さくてすむ。据置式の段差解消機は、介護保険制度による福祉用具貸与の対象種目の一つとなっています。
▢ 6.床下に防湿土間コンクリートを敷設した場合は、「建築基準法」による地面からの高さの規定は適用されない。
1階居室の木造床面を、直下の地面から450mm以上高くするという「建築基準法」の規定は、床下の通気をよくし、地面からの湿気を防ぐことを目的としたもので、床下に防湿処理を施した場合は適用されない。
▢ 7.一般に、和室の床面は洋室より10~40mm程度高くなっています。
一般に、和室の床面は洋室より高くなっているが、床段差が生じる理由は、畳床とフローリング床の厚さが異なるためです。床面を支える床束、大引、根太などの部材の寸法は同じなので、床材の厚さの違いが、そのまま床面の段差となって現れます。
▢ 8.新築住宅の場合は、床束の長さを変えることにより、和室と洋室の床段差を解消することができます。
新築住宅の場合、洋室の床下の床束を和室よりも長くすることにより、和室と洋室の床段差をなくすことができます。
床束は、床面を支える部材の一つで、束石の上に垂直に立てる。
床束の上に大引を掛け渡し、大引の上に根太を打ち、根太の上に床材を張る。
▢ 9.既存の住宅で、和室と洋室の床段差を解消する場合は、洋室の床をかさ上げします。
既存の住宅を改修する場合は、床面を支える部材を変更するのは難しいので、洋室の床の上に合板などを張って高さを調節し、その上からフローリングなどの仕上げ材を張って、和室と同じ高さに揃える方法がとられます。
▢ 10.敷居段差を解消する最も簡易な方法は、すりつけ板を設置することです。
すりつけ板の配置
すりつけ板の端部にもスロープをつくり、通る人がつまずかないようにします。
▢ 11.建具の下枠や敷居と床面との段差は、小さなものであっても、つまずきの原因になりやすく、車いすの走行も不安定になります。
最近の住宅では、従来にくらべて住宅内の段差が解消され、建具の下枠段差なども小さくなっている。しかし、実際の工事において段差を完全になくすことは困難なので、「住宅品確法」に基づく日本住宅性能表示基準では、5mm以下の段差を許容し、段差のない構造とみなすことにしています。
▢ 12.床仕上げの見切りとして敷居が設けられている場合、敷居を床面のレベルまで埋め込むか、敷居を撤去します。
敷居を撤去した場合は、上から「への字」プレートをかぶせて仕上げます。
見切りとは、部材の端部や異なる部材の継ぎ目を美しく見せるため、別の細長い部材を入れて仕上げることをいう。
▢ 13.引き戸の敷居段差を解消するには、床面にV溝レールを埋め込む方法があります。
V溝レールを直接埋め込む場合、床仕上げ材との間に隙間が開かないようにレールを固定します。
引き戸下枠に∨溝レールの埋め込まれた部材を使用すると、隙間ができない。部品化されているため、施工しやすい。
▢ 14.異なる階への移動が必要で、階段を利用することが困難な場合は、階段昇降機やホームエレベーターを設置する方法があります。
階段昇降機を設置するためには、階段の踊り場などにスペースの余裕が必要です。設置後は階段の通行幅員が狭くなることも考慮します。ホームエレベーターは、通常は新築時に設置します。増改築時に設置する場合は、建物の外部にエレベーター棟を建てることになります。
床材の選択
▢ 15.床材の選択にあたっては、滑りにくさと強さを考慮します。
滑りにくさは、サンプルを使って確認する。300mm×300mm以上の大きめのサンプルを用意し、なるべく普段の使用状況に近い条件でテストします。特に、水にぬれたときに足が滑りにくい床材がよい。強さについては、傷つきにくさ、重量物への強さ、水ぬれへの強さなどを考慮します。
▢ 16.屋内で車いすを使用する場合は、車いすの走行に適した床材を選択します。
屋内で車いすを使用する場合は、フローリングのような硬い床材を選択します。車いすの使用により車輪のゴム跡が床面に付着すると掃除してもなかなか取れないため、汚れが目立ちにくい色のものを選ぶとよい。たとえば、車輪のゴムの色がグレーの場合は、ライトオーク調の床材がよい。
▢ 17.屋外で使用する車いすを屋内でも使用する場合、車輪に付着した砂ぼこりなどで床面を傷つけることがあります。
フローリング材は、合板の上に仕上げ用の板(つき板)を張り付けたものが多い。仕上げ板の厚さが0.3mm程度のものでは、車いすの車輪に付いた砂ぼこりなどで下地の合板まで傷つけてしまい、補修が必要となるため、仕上げ板の厚さが1mm以上あるものを選ぶようにします。
▢ 18.重量の重い電動車いすを屋内で使用する場合は、床の強度への配慮が必要です。
電動車いすは重いので、屋内で使用する場合には、床を支える大引や根太などの下地の強度が十分かどうかを確認することが重要です。
店舗などで使用する重歩行用の床板は、傷つきにくく、水ぬれや重量物への耐久性に優れています。
手すりの取り付け
▢ 19.手すりは、使用方法によリハンドレールとグラブバーの2通りに大きく分けられます。
ハンドレールとグラブバー
ハンドレールは、移動時に手を滑らせながら使用する。門扉から玄関までのアプローチ、廊下、階段などで使用します。太さは、太めのほうが安定するため、直径32~36mm程度にする。
グラブバーは、立ち座りや移乗の際につかまって使用する。玄関、トイレ、洗面・脱衣室、浴室などで使用します。太さは、しつかり握れるように、直径28~32mm程度にする。
▢ 20.手すりの取り付ける向きによって、横手すりと縦手すりがあります。
手すりは、用途に応じて取り付ける向きが異なります。
横手すりと縦手すり
横手すりは、廊下などの床面や階段など、からだが平行に移動する場所に、床面や勾配に対して平行に取り付ける
縦手すりは、立ち座りなど、からだの垂直移動を行う場所に、床面に対して垂直に取り付ける。
▢ 21.手すりを取り付ける壁の強度が十分でない場合は、壁に手すりの受け材を入れて下地を補強します。
手すり受け金具は手すりを下部から支持するタイプにする。金具が横に出ていると手を滑らせるときに邪魔になる。
半ネジの木ネジでは利きが甘くなることがある。
全ネジの木ネジを使用するとしっかり固定できる。
▢ 22.手すりの端部は、衣服の袖口などが引っかからないよう、壁側に曲げ込む。
手すりの端部の処理
端部を壁側に曲げ込む。
エンドキャップをかぶせる方法では、衣類の袖口などが引っかかりやすい。
建具の配慮
▢ 23.一般に、高齢者や障害者が開閉しやすい建具は引き戸です。
住宅で使用される建具には、引き戸、開き戸、折れ戸などがあるが、開き戸は、開閉時に身体を大きく前後に動かさなければならず、姿勢が不安定になりやすい。折れ戸は、身体の移動は少なくてすむが、開閉動作が難しい。また、戸の折りたたみ部分の厚さの分だけ、開口部の有効幅員が狭くなります。
▢ 24.開き戸の把手は、ノブよりもレバーハンドルのほうが、握力の弱い高齢者や障害者にも扱いやすい。
把手がノプの場合、開閉時には、握る、回す、引く(押す)の3つの動作が必要で、ある程度の握力も要する。レバーハンドルの場合は、レバーを下げ、引く(押す)という2つの動作ですみ、操作も容易です。
▢ 25.在来工法の木造住宅では、建具の枠の内法寸法は700~720mm程度であり、車いすの使用には困難を伴う。
介助用車いすを使用して、廊下から直角に曲がって室内に入る場合は、建具の開口部の有効幅員が750mm以上必要なので、従来の木造住宅では、車いすの通行が困難です。有効幅員を拡げる最も簡単な方法は、建具を取り外すことで、建具の枠の分だけ開口部を広くとれる。建具を取りはずす際は、丁番も取りはずしておかないと、身体を傷つけたり、衣類をひっかけたりする恐れがあります。
介助用車いすが通行可能な幅員寸法は、廊下有効幅員が780mmであれば、開固有効幅員は、少なくとも750mmが必要。介助用車いすの寸法や操作能力などを検討して有効な幅員を割り出すこと。
スペースへの配慮
▢ 26.在来工法の木造住宅では、廊下の有効幅員(内法寸法)は最大で780mmです。
自立歩行が可能な場合は特に問題ないが、歩行に介助が必要になった場合は、この幅員では十分とはいえず、車いすや床走行式リフトなどの使用には困難を伴う。
介助歩行では、通常、介助者は介助される人の真後ろでなく、身体を半分横にずらして立つため、通行に必要な幅員は約1.5倍になる。
▢ 27.スペースを確保する手段には、壁や柱を取りはずす方法、モジュールをずらす方法があります。
壁や柱には構造上取りはずすことができないものもあるので、設計者や施工者とよく相談します。モジュールをずらす方法は、新築や大規模な増改築の場合に有効です。
モジュールとは、建築物の設計の基準になる寸法で、在来工法では910 mm (3尺)である。
家具・収納への配慮
▢ 28.家具の配置を検討する際は、日常生活での動線を考慮します。
トイレと寝室のように、頻繁に行き来する場所を結ぶ動線はなるべく短いほうがよいので、通行の妨げになる位置に家具を置かないようにします。実際に何度も家具を並べ替えるのは大変なので、使用する家具の寸法を測り、平面図に配置を描いてみるとよい。
▢ 29.いすの選択では、立ち座りのしやすさが重要です。
座面が低すぎると、立ち座り動作のときに、足腰に大きな負担がかかる。逆に、座面が高すぎると、足の裏全体が床面につかないので、立ち座り動作が安定しない。軟らかすぎるソファーも立ち座りがしにくい。
いすに肘かけがあると、座位姿勢の保持や、立ち座り動作の補助に用いることができる。
▢ 30.机・テーブルの選択は、使用するいすに合わせて検討します。
車いすを使用する場合、テーブルの天板が厚すぎると、車いすのアームサポートが天板に当たることがあります。また、テーブルの脚に車いすのフットサポートが当たるため、テーブルヘのアプローチの方向が限定される場合があります。
▢ 31.収納の戸はなるべく引き戸にし、頻繁に出し入れする物は、眼の高さより下に収納します。
通常、物を出し入れしやすい高さは、眼の高さ程度(1,400mm~1,500mm程度)である。それ以上の高さの部分には日常的に使用しない物を収納し、出し入れは介助者が行うようにします。収納の奥行きが深い場合は、収納の内部に足を踏み入れて出し入れを行うことがあるので、戸の下枠につまずかないよう、下枠を設けずに、底面を部屋の床面と同じ仕上げにします。
色彩・照明計画、インテリアへの配慮
▢ 32.部屋の一部分に明るい色彩を取り入れることにより、全体の雰囲気を変えることができます。
高齢者には落ち着いた色が似合うと考えられているためか、家具やインテリアには、ダークオーク調のものがよく選ばれます。しかし、部屋全体をそのような色彩で統一してしまうと重苦しい雰囲気になってしまうため、小さな部分に明るい色や好きな色を取り入れるなどの工夫をするとよい。
▢ 33.外出の頻度が低い場合や、居室の日照条件がよくない場合は、室内に高照度の照明を取り付けるとよい。
明るさが心理面に及ぼす影響は大きく、照明を明るくすることにより、生活に活気を与えることができます。ただし、まぶしすぎる照明は眼に疲労を与えるため、光源が直接眼に入ることがないよう、照明器具の取り付け位置などについて配慮することが必要です。
▢ 34.高齢者は、おっくうがって照明を点灯せずに移動していることがあります。
高齢者は、視覚機能の低下を自覚していないことも多いので、そのような場合は、廊下や階段の照明に明るさ感知式スイッチ、人感スイッチなどを利用するとよい。
明るさ感知式スイッチは、周囲が暗くなると点灯するもの
人感スイッチは、人が近づくと点灯するもの
▢ 35.快適なインテリアは、生活者に安心感を与えます。
高齢者や障害者が生活する住宅では、身体機能の低下に対応することがまず優先されるが、それだけでは機能一辺倒の味気ない部屋になってしまう。細かい部分の仕上げやレイアウト、飾りつけなどには、本人の意見を尊重して積極的に取り入れ、本人がリラックスできる雰囲気をつくるとよい。
冷暖房への配慮
▢ 36.高齢者にとって、急激な温度差は、血圧の上昇をもたらす危険な要因となります。
急激な温度差は、高齢者にとって血圧の上昇をもたらす危険な要因です。特に冬季は、暖房をしている部屋としていない部屋の温度差が非常に大きくなるため、注意が必要です。トイレや洗面・脱衣室などの暖房にも配慮し、屋内に大きな温度差が生じないようにします。
▢ 37.暖房には、対流暖房と輻射暖房があります。
対流暖房と輻射暖房
対流暖房の原理は、温風を吹き出し、対流により循環させて部屋を暖める。主な暖房器具エアコン、フアンヒーターなど、特徴は、短時間で暖まる、天丼付近と床面付近の温度差が大きい(足もとは暖まりにくい)
輻射暖房の原理は、暖房器具から出る赤外線の輻射、熱により暖める。主な暖房器具は、床暖房、パネルヒーターなど、特徴は、暖まるのに時間がかかる、ほこりが立たない、部屋の中の温度差が小さい。
▢ 38.エアコンは、冷風や温風が直接身体に吹き付けないように設置します。
エアコンは、冷風と温風では吹き出す方向が異なるので注意します。特に、エアコンとベッドの位置関係に配慮します。
トイレや洗面・脱衣室のような狭い場所で対流暖房を行うと、身体に一方向から温風が吹きつけるため、低温やけどの恐れがあります。感覚障害がある場合は特に危険なので、輻射暖房を用いるようにします。
▢ 39.寒冷地・積雪地の全室暖房には、セントラルヒーティングが適しています。
寒冷地・積雪地では、各室にエアコンやファンヒーターなどを設置するとランニングコストが高くつくので、セントラルヒーティングを導入するとよい。
セントラルヒーティングを導入する場合は、ボイラーなどの熱源装置と、燃料タンクを設置する場所が必要です。
非常時の対応
▢ 40.「消防法」により、すべての住宅に住宅用火災警報器の設置が義務づけられています。
2004(平成16)年に、「消防法」が一部改正され、既存住宅についても、2011(平成23)年6月1日までに住宅用火災警報器を設置することが義務づけられました。
住宅用火災警報器を設置しなければならない場所は、すべての寝室と、寝室のある階の階段です。市町村によっては、条例により台所や居室への設置も義務づけています。
▢ 41.都市ガス用のガス漏ね感知器は天丼付近に、LPガス用のガス漏れ感知器は床付に設置します。
一般に、都市ガスは空気よりも軽いため、都市ガス用ガス漏れ感知器は、ガス器具より上の天井付近に設置します。一方、LPガスは空気より重いため、LPガス用ガス漏れ感知器はガス器具より下の床付近に設置します。
▢ 42.電気錠は、玄関の施錠・解錠を遠隔操作で行える装置です。
電気錠と、 ドアホン、テレビドアホンなどを併用することにより、来訪者が誰であるかを確認してから解錠することができるため、防犯面で高齢者世帯には有効です。また、居室と玄関が離れている場合には、移動による家庭内事故を防止するという意味でも高齢者世帯には効果的といえます。
▢ 43.緊急時には、屋内だけでなく、外部に通報する手段も用意しておく。
一人暮らし、あるいは、家族が不在の場合は、緊急時に外部に連絡をとる必要があります。侵入者があったときに警備会社に通報する装置や、コールボタンを押すと特定の連絡先に自動的に通報する装置があるが、連絡先が親戚や知人の場合は、通報があったときにどのように対処してもらうか、あらかじめ相談しておくことが必要です。
経費、維持管理(メンテナンス)への配慮
▢ 44.住環境整備を行う場合、その費用は誰が支払うのか、自己負担できる限度額はいくらなのかを、あらかじめ明確にしておく。
福祉住環境整備においては、経費への配慮も必要です。安全性や利便性の高い住環境整備が、なるべく少ない費用で実現することが望ましいのはいうまでもないが、工事開始後に追加の費用が発生しないように、工事が始まる前に入念な現場確認を行うことが重要です。
▢ 45.福祉住環境整備においては、住宅改修と福祉用具の活用を連携させて考えることが必要です。
住宅改修を行っても、福祉用具を使用しなければその目的が達せられない場合もあれば、福祉用具を効果的に使用するために住宅改修が必要になる場合もあります。
一般に、住宅改修には高額な費用がかかるが、福祉用具の導入は、比較的少額の費用ですむことが多い。
▢ 46.福祉住環境整備を行う場合は、介護保険制度やその他の制度を活用します。
介護保険制度による住宅改修費の支給、福祉用具の貸与、購入費の支給のほか、地方自治体が行う住宅改造費の助成制度などがあります。自治体により制度の内容は異なるが、世帯の収入により助成金額などの条件を定めていることが多い。
▢ 47.住宅改修を行う場合、改修後のメンテナンスのしやすさも考慮する必要があります。
ホームエレベーターや階段昇降機のように、大掛かりで複雑な機構をもつ福祉用具を導入する場合は、イニシャルコストだけでなく、ランニングコストについても考慮します。
福祉用具の利用に必要な費用(コスト)
イニシャルコストは、設備や機器などを導入する際にかかる、工事費などの初期費用
ランニングコストは、導入後にかかる電気代や、消耗部品の調達費用、保守点検などのメンテナンス費用
外出
▢ 48.積雪・寒冷地では、冬季に高齢者や障害者が外出しにくくなるため、玄関やアプローチ部分への配慮が必要です。
積雪・寒冷地で行われている工夫
無落雪屋根は、屋根を水平、もしくは内側に流れる勾配にし、建物の周囲に雪が落ちないようにしてある。
玄関風除室は、外気が直接室内に入るのを防ぐため、玄関の出入り口付近を覆う小部屋。
ロードヒーティングは、道路に電熱線や温水を流すパイプを埋設し、道路上の雪を溶かして、積雪や凍結を防ぐ装置。
▢ 49.道路と敷地の境界にあるL字溝の立ち上がり部分の段差は、車いすの通行の妨げになります。
道路と敷地の境界にあるL字溝の立ち上がり部分の段差で車いすの通行を可能にするには、コンクリートやゴム製のブロックを置いてスロープ化する方法があります。しかし、車いすの使用が長期にわたる場合や、屋外アプローチを全面的に改修する場合は、自治体にL字溝の切り下げを申請することも検討します。
▢ 50.アプローチの階段に設置する手すりは、下りのときに利き手で使用できる側に設置します。
アプローチの階段に設置する手すりは、スペースに余裕があれば、両側に手すりを取り付けることが望ましいが、片側にしか取り付けられない場合には、下りのときに利き手で使用できる側に手すりを設置します。
片麻痺がある場合は、常に健側に手すりを必要とするため、通路の両側、もしくは中央に手すりを設置します。
▢ 51.アプローチの通路面には、雨などにぬれても滑りにくい仕上げにします。
通路面は、ジェットバーナー仕上げ、サンドブラスト仕上げのように、表面の粗い仕上げにすると、足を滑らせにくい。アプローチに面した壁面は、バランスをとるために手をついたり、もたれかかったりすることがあるので、皮膚を傷つけないような仕上げにします。
▢ 52.玄関の周囲に十分なスペースがない場合は、車いすでの出入りに、寝室の掃き出し窓を利用する方法があります。
玄関の周囲に十分なスペースがなく玄関から車いすで出入りできない場合は、寝室の掃き出し窓の外側にスロープを設置することにより、車いすでの出入りが可能になります。その場合、窓の開閉動作を安全に行うため、スロープの上下の端部に水平面を設けます。
▢ 53.玄関戸は、開き戸よりも引き戸のほうが、身体のバランスをくずしやすい高齢者には適しています。
高齢者にとって、玄関戸は、開き戸よりも引き戸のほうが適しています。車いすを使用する場合も、開閉時に車いすの向きを変えなくてすむ引き戸がよい。
自走用車いすと介助用車いすでは、開閉時の車いすの停上位置や向きが異なる点に注意する。後者の場合、玄関ポーチには介助者のためのスペースも必要である。
▢ 54.玄関戸の開□部の有効幅員は、通常は700~750mm程度です。
玄関戸の開口部の有効幅員は、バリアフリー仕様の玄関戸では、800~850mm程度にしたものもあるが、通常は700~750mm程度です。壁芯―芯距離を通常の倍の1820mmにし、3枚引き戸の玄関戸を設置すれば、1000mm以上の有効幅員を確保できます。
▢ 55.引き戸の把手は、彫り込み型よりも棒状の引き金具のほうが開閉しやすい。
引き戸の把手は棒状の引き金具にすると開閉しやすいが、その場合、戸枠内に引き残し分が生じるため、有効幅員がその分だけ狭くなります。
▢ 56.玄関に必要なスペースは、車いすを使用するかどうかによって異なります。
将来、車いすを使用することが想定される場合は、玄関土間や玄関ホールなどに、あらかじめ十分なスペースを確保しておくことが望ましい。玄関で屋外用の車いすから屋内用の車いすに移乗する場合、移乗に介助を必要とする場合など、車いすの使用状況に対応した配慮も必要となります。
玄関に必要なスペース
車いすを使用しない場合(自立歩行)は、間口の有効寸法1200mm程度(壁芯一芯距離1365mm)
車いすを使用しない場合(ベンチや式台の設置が必要)は、間口の有効寸法1,650mm程度(壁芯―芯距離1,820mm)
車いすを使用する場合は、奥行きの有効寸法1,200mm以上、間口の有効寸法は最低でも1,650mm程度(壁芯―芯距離1820mm)、できれば2100mm程度(壁芯―芯距離2275mm)
▢ 57.玄関の上がりがまちの段差が大きい場合は、式台を設置します。
玄関の上がりがまちの段差が大きい場合に設置する式台は、段差を等分する高さにし、奥行きは400mm以上確保します。
▢ 58.上がりがまちの段差が比較的小さい場合は、スロープを設置して段差を解消する方法もあります。
玄関土間のスペースが足りない場合は、可動式スロープを玄関ホールと玄関ポーチに掛け渡して使用する方法もあります。ただし、利用するたびに介助者が設置、取り外しを行わなければならず、また、スロープを収納しておく場所を確保することも必要になります。
▢ 59.玄関土間に式台やスロープを設置できない場合は、段差解消機を設置します。
上がりがまちの段差が大きい場合や、玄関土間のスペースが小さい場合は、式台やスロープで段差を解消することは困難です。その場合は段差解消機を設置するが、段差解消機には、立位姿勢で利用でき、あまリスペースをとらないタイプのものもあります。
▢ 60.玄関土間をかさ上げして上がりがまちの段差を解消する方法もあります。
玄関土間や玄関ポーチを上がりがまちと同じ高さまでかさ上げすれば、上がりがまちの段差はなくなります。ただし、その分の段差が屋外に生じることになるので、屋外に長めのスロープを設置できるような、敷地の余裕があることが条件になります。また、玄関戸の取り付け高さを変更する工事も必要になります。
▢ 61.上がりがまちを安全に昇降するためには、手すりの取り付けが有効です。
上がりがまちの昇降を補助する手すりには、縦手すりと横手すりがあります。縦手すりは、上がりがまちの鉛直線上の壁面に取り付けるのが基本です。横手すりは、階段の手すりと同様に勾配を合わせて設置し、手すりの両端は床面に沿って水平に伸ばします。
▢ 62.上がりがまちの昇降と、靴の脱ぎ履きを腰かけて行うために、玄関にベンチを設置する方法もあります。
玄関ホールにベンチを設置し、上がりがまちの昇降や靴の脱ぎ履きなどの動作をベンチに腰かけた状態で行う方法もあります。その場合、ベンチの座面端部から水平方向に200~250mm程度離れた位置の壁面に、立ち上がり動作を補助するための縦手すりを設置するとよい。玄関ホール側と土間側では床面の高さが異なるので、手すりの取り付け高さに注意します。
屋内移動
▢ 63.自走用車いすの全幅は620~630mm程度、介助用車いすの全幅は530~570mm程度です。
在来工法の木造住宅では、廊下の有効幅員は最大で780mmです。車いすで廊下を直進する場合は、車いすの全幅に100150mmを加えた程度の幅員があれば通行できるので、在来工法の寸法でも問題は生じない。
▢ 64.自走用車いすで廊下を直角に曲がる場合、廊下の有効幅員は850~900mm必要です。
在来工法の木造住宅では、廊下の有効幅員は最大でも780mmしかないため、直角に曲がった廊下を車いすで通行することは不可能です。住宅改修により廊下の幅員を拡げることは現実的に難しいので、廊下に面した各室の出入り口の開口部の幅員を拡げることで解決を図ることが多い。
▢ 65.廊下に設置する横手すりの取り付け高さは、通常は750~800mm程度とします。
横手すりの高さは、大腿骨大転子の位置を目安とします。前腕部を乗せて身体のバランスをとるために使用する場合は、やや高めの位置に設置します。
手すりの適切な取り付け高さは、障害の特性によっても異なるため、理学療法士や作業療法士の評価に基づいて決めることが望ましい。
▢ 66.横手すりが途切れる場合、手すりの端部間の空き距離は最小限にとどめます。
廊下などの横手すりは、連続するように取り付けるのが原則であるが、途中に出入り口などがあるため、どうしても手すりが途切れる部分が生じます。その場合には、戸の幅員を考慮し、手すりの端部間の空き距離が900mm以下になるようにします。
▢ 67.廊下の床仕上げは、滑りにくく、適度な弾力性があるものにします。
床面の仕上げは、転倒防止と、転倒した際のけがの予防を考慮し、滑りにくく、適度な弾力性があるものを選択します。また、床材に弾力性がないと、歩行時に膝に負担がかかり、疲れやすくなります。
床の下地がコンクリートの場合は、コンクリートの上に転がし根太を置き、その上から床材を張ることにより、ある程度の弾力性が得られます。
▢ 68.車いすを使用する場合、廊下の壁面に「車いすあたり」として幅木を設置します。
車いすのフットサポートで壁面を傷つけないように、幅木を4~5枚張り上げる 。
▢ 69.廊下の壁仕上げは、転倒したときに身体が当たっても、けがをしにくいものにします。
廊下の壁仕上げは、腕や肘などをすり当てても、すり傷を負わないような壁材を使用します。サンプルが入手できる場合は、あらかじめ感触を確かめておくとよい。清掃のしやすさも考慮します。
壁と床が似たような色だと、視覚機能が低下した高齢者には見分けがつきにくく、衝突などの恐れがあるため、コントラスト比の高い色のものを選ぶ 。
▢ 70.廊下の照明は、照度調整のできるものがよい。
高齢者は、暗い所に目が慣れる(暗順応)までに時間がかかるので、照明は、全点灯のほかに、夜間常用の中点灯ができるものにするとよい。また、スイッチは、暗がりでも見つけやすい明かり付きスイッチにし、出入り口付近や寝室からトイレまでの動線の要所に足もと灯も設置するとよい 。
▢ 71.階段では、転倒・転落などの事故が起こりやすいため、できれば生活空間の範囲を同一階にすることが望ましい。
階段での転倒・転落は大けがにつながり、死亡事故に至ることもあります。高齢者や障害者の場合、生活空間を同一階に限定することが望ましいが、日常的に階段を使用しなければならない場合は、事故防止のための住環境整備に十分配慮する必要があります 。
▢ 72.寝室が2階にある場合は、寝室と階段の下り口、トイレの位置関係に配慮します。
夜中にトイレに立ったときに、寝室からトイレヘの動線の途中に階段の下り口があると、誤って転落する恐れがあるため非常に危険です。そのような配置は絶対に避け、 トイレヘの動線はなるべく短くすることが望ましい 。
▢ 73.階段の途中に踊り場があると、昇降の途中でひと休みでき、方向転換も安全に行うことができます。
階段の形状と安全性
踊り場付き階段は、広い踊り場の部分でゆっくり方向転換できるため、最も安全である。
吹き寄せ階段は、60度の段が比較的広く、踊り場のように使えるため、比較的安全である。
踊り場+3段折れ曲がり階段は、3段曲がり部分では方向転換しながらの昇降となり、安全性がやや劣る。
直線階段は、方向転換の必要がなく昇降しやすいが、階下まで一気に転落する恐れがある。
従来の回り階段は、曲がり部分では常に方向転換しながらの昇降となり転倒の危険性が高い
階段では、昇降と方向転換の動作を同時に行わなければならない場合に、転倒の危険性が増す 。
▢ 74.階段は、勾配が緩やかなほうが安全だが、勾配を緩やかにするにはより大きなスペースを要します。
階段の理想的な勾配は7/11とされるが、この勾配では、一般の住宅に設置する階段としてはスペースをとりすぎます。高齢者等配慮対策等級では、勾配が6/7以下で、かつ、蹴上げの寸法の2倍と踏面の寸法の和が550mm以上650mm以下であることが、等級4以上に評価される条件となっています。
「建築基準法」では、住宅に設けられる階段の勾配を、蹴上げ230mm以下、踏面150mm以上と定めているが、この規定は高齢者への配慮としては十分でない 。
▢ 75.「建築基準法」により、住宅の階段には、両側または片側に手すりを取り付けることが義務づけられています。
階段の手すりは、基本的に利き手で握る方が安全であり、上り下りとも利き手で握るためには両側に取り付けることが望ましい。やむをえず片側のみに取り付ける場合は、転落の危険性の高い下りに利き手で握れる側に取り付けます 。
▢ 76.階段の段鼻部分には、転落防止のためノンスリップを取り付けます。
転落防止のため、階段の段鼻部分にはノンスリップを取り付けるが、ノンスリップが踏面から突出していると、つまずいて転倒する恐れがあるため、ノンスリップは薄型のものやテープ状のものにする。または、段鼻部分を切り欠いてノンスリップを収める方法もあります 。
▢ 77.階段の照明は、足元に影ができないように設置します。
階段の照明は、最低でも階下と階上の2か所、できれば、さらに中央付近にも設置します。足元灯も併用すると、より安全です。
階段の照明は、―般に、居室などと比較するとやや暗めであるが、視覚機能が低下した高齢者が安全に移動できるようにするためには、適度な明るさが必要です 。
排泄
▢ 78.一般に、高齢者には和式便器よりも洋式便器が適しています。
加齢により、下肢機能や姿勢保持能力が低下してくると、和式便器からの立ち座り動作に困難を伴うため、洋式便器への変更が必要になります。
手すりの設置なども含め、 トイレは住宅改修の希望が多い場所の一つになっています。排泄行為の自立は、人間としての尊厳にもかかわるため重要な問題です。
▢ 79.排泄の自立を促すためには、トイレへの動線をなるべく短くします。
寝室からトイレまでの移動距離が約4mを超えると、高齢者にとっては遠く感じられるといわれており、動線をなるべく短くすることが望ましい。また高齢者は、一般にトイレの使用頻度が高く、夜間に移動することも多いため、寝室からトイレヘの動線には、照明などの配慮も必要です。
▢ 80.一般的な住宅のトイレのスペースは、間口750mm×奥行き1,200mm程度です。
歩行と排泄動作が自立している場合は、通常のトイレのスペースであれば問題はない。奥行きが1650mm(壁芯―芯距離1,820mm)程度あると、立ち座りなどの動作をゆったりと行えるが、伝い歩きで移動する場合は、かえってスペースを拡げないほうがよいこともあります。
▢ 81.排泄時に介助が必要な場合は、便器の側方か前方に、幅500mm以上の介助スペースを確保する必要があります。
トイレに必要な介助スペース
介助する場合には、前傾姿勢をとることが多く、介助者の臀部が突出するので、便器側方あるいは前方に介助スペースを有効で500mm以上確保します。
▢ 82.自走用車いすを使用して移動する場合、トイレに必要なスペースは、便器へのアプローチの方法によって異なります。
最も多いアプローチの仕方は、便器の側方、もしくは斜め前方から車いすを近づける方法です。この場合に必要なトイレのスペースは、間口1,650mm× 奥行き1,650mm(壁芯一芯距離1,820mm× 1,820mm)程度です。出入り口と便器の位置関係にも配慮する必要があります。
▢ 83.自走用車いすで便器の前方からアプローチする場合は、トイレの奥行きが1800mm以上必要です。
一般的な自走用車いすの全長は約1,100mmなので、便器の前方にそれ以上のスペースが必要になります。
▢ 84.自走用車いすを便器と平行に近づけて移乗する場合は、便器の側方に800mm程度のスペースが必要です。
出入り口と便器の位置関係は、本人と相談の上、使い勝手がよい配置にします。
▢ 85.車いすから便器への移乗に介助が必要な場合は、介助用車いすと介助者のためのスペースが必要になります。
移乗の介助には、側方から臀部の持ち上げを補助する方法や、本人の正面に立ち、身体を抱きかかえるようにして移す方法などがあります。また、排泄後の清拭や、着脱衣などの介助が必要な場合もあります。介助方法と介助者が立つ位置を考慮し、間口1,650mm× 奥行き1,650mm程度のスペースを確保します。
▢ 86.トイレに設置する手すりには、縦手すり、手すり、L型手すりなどがあります。
縦手すりは、立ち座り動作の補助に用いる
横手すりは、座位姿勢を保持するために用いる
L型手すりは、縦手すりと横手すりの機能を兼ね備えたもの
横手すりには、車いすからの移乗や介助のじゃまにならないよう、可動式にしたタイプもあります。
▢ 87.片麻痺者の場合、健側の上肢で使用できるように手すりを設置します。
片麻痺者を介助する場合、原則として介助者は麻痺側に立つので、麻痺側に介助用のスペース、健側の壁面に手すりを設ける必要があります。したがって、右片麻痺と左片麻痺とでは、トイレの内部の配置が左右対称になります。
▢ 88.便器の座面が高すぎると、排泄時の座位姿勢が安定しない。
洋式便器の座面の高さは、通常は370~390mm程度です。座面を高めにしたほうが立ち上がりの動作はしやすくなるが、座った状態で踵が床面に届かないと、排泄時の座位姿勢が不安定になります。その場合は、座位姿勢の安定を優先して高さを調整します。
車いすから立ち上がらずに便器に移乗する場合は、便器の座面と車いすの座面の高さを揃える。
▢ 89.トイレの床仕上げは、清掃しやすい材質のものにします。
トイレは住宅の中でも汚れやすい場所で、飛び散った尿などの汚れが蓄積すると、悪臭の原因になります。拭き掃除のしやすい床材を選び、こまめに清掃するようにします。また、転倒予防のため、水にぬれたときに滑りにくいものにします。
トイレにマットを敷くと、マットに足をひっかけたり、マットことすべったりして転倒する恐れがある。
▢ 90.温水洗浄便座は、一般に、高齢者や障害者に適しています。
高齢者や障害者は、排泄後の清拭の動作に困難を伴うことがあるが、温水洗浄便座の使用により、その不便を解消することができます。ただし、下半身に麻痺がある場合は、温水が肛門周辺や陰部にうまく当たっているかどうかわからないことがあるので、温水の出る位置をよく確認します。
▢ 91.汚物流しは、ベッドで使用する差し込み便器や、ポータブルトイレの排泄物を捨て、それらの器具を洗浄するための流しです。
汚物流しを設置するスペースがない場合は、便器に水栓ユニットを備え付けて代用することができるが、専用の汚物流しがあると、より便利です。オストメイト(人工膀肌、人工肛門造設者)が使用する場合は、汚物流しの縁の位置を、腹部を近づけやすい高さにします。
▢ 92.トイレにも暖房機器を設置し、居室との温度差が大きくならないようにします。
冬季の夜間などは、暖房をしていないトイレの温度はかなり低くなります。暖かい居室から寒いトイレに移動した際に、急激な温度変化にさらされることにより、虚血性心疾患や脳卒中、急性の呼吸器疾患などに見舞われることもあり、大変危険です。
入浴
▢ 93.入浴は、ADLの中で最も難しい動作であるといわれます。
浴室は、床面がぬれている上に、石鹸などを使用するため、大変滑りやすい。そのような環境の中で、洗体、洗顔、水栓金具の操作、浴槽への出入りなど、姿勢が不安定になりやすい複雑な動作を行うため、入浴はADLの中で最も難しいといわれ、安全に行うにはかなりの能力を必要とします。
▢ 94.浴室の戸は、内開き戸が使用されることが多いが、引き戸のほうが開閉動作はしやすい。
浴室の戸を内開き戸にすると、万―洗い場で転倒したときに、外部からの救助が困難になる恐れがあります。折れ戸は、開閉時にあまリスペースをとらない点はよいが、高齢者や障害者には開閉動作がしにくい場合があります。引き戸が最も適しているが、スペースや出入り回の位置などの制約により、設置できないことがあります。
▢ 95.浴室の出入り口の開□部の有効幅員は、通常は600mm程度しかないことが多い。
入浴に介助を必要とする場合や、車いすを使用する場合は、600mm程度の有効幅員では通行が困難であり、改修が必要になります。
浴室の開□部の取付寸法を、柱芯―芯距離で1,800mm程度とれれば、3枚引き戸の設置が可能で、1,000mm以上の有効幅員が確保できる。
▢ 96.浴室の出入り口と洗い場の床面には、通常、100~150mm程度の段差があります。
段差を解消する方法としては、浴室用すのこの設置が最も簡便であり、改修工事も不要です。浴室用すのこには、木製のほか、樹脂製で表面に滑りにくい加工を施したものがあります。
浴室の平面寸法や床面の傾斜に合わせて加工してから設置する製品もあり、使用時のがたつきがなく、安全性が高い。
▢ 97.洗い場の床面をかさ上げして出入り口との段差を解消する場合は、出入り口の洗い場側に排水溝を設け、グレーチングを設置します。
湯水が浴室の外にあふれ出るのを防ぐために、出入り回側に補助的な排水溝を設けるが、洗い場の床面は、出入り口とは反対側に水が流れる勾配にし、主排水溝から排水します。グレーチングは、穴のあいたバンチング型グレーチングよりも、角パイプかT型バー状のもののほうが強度の点で優れる。
▢ 98.洗い場の床面と出入り口の段差を解消した場合、床面から浴槽縁までの高さは低くなります。
すのこの設置などにより、洗い場の床面が高くなった分、浴槽縁までの高さが相対的に低くなるので、浴槽への出入りに支障はないか、あらかじめ検討しておく必要があります。水栓金具と床面の間も狭くなるため、使用が困難になることもあります。
▢ 99.通常、浴室のスペースは、間口1,200mm×奥行き1,600mm程度だが、介助が必要になった場合は、より大きなスペースを要します。
浴室に必要なスペース
介助が必要な場合は、間口160mm0×奥行1600mm、または、間口1800mm×1400mm程度
介助者が2名の場合は、間口1,600mm× 奥行き2,100mm程度
屋内で車いすを使用し、浴室外で降りる場合または座位移動の場合は、間口1,600mm× 奥行き1,600mm程度(浴室内の移動距離を短くしたい場合は、間口1,200mm×奥行き1,600mm程度)
車いすで浴室内に入る場合は、間口1,600mm× 奥行き1,600mm以上で、出入り口の間口部を広くとれるレイアウトにする。
▢ 100.浴室には、対象者の身体状況や入浴動作に合わせて、手すりを設置します。
入浴時に行うさまざまな動作に対応して、それらの動作を安全に行えるようにするための手すりを、必要な場所に取り付けます。通常、浴室によく設置される手すりには、浴室への出入り用の縦手すり、洗い場での移動用の横手すり、洗い場での立ち座り用の縦手すり、浴槽への出入り用の縦手すり、浴槽内での立ち座りと姿勢保持用のL型手すりなどがあります。
▢ 101.座位で浴槽をまたいで浴槽への出入りを行う場合は、浴室のスペースなどを考慮して座位位置を決めます。
座位で浴槽をまたぐ場合の座位位置
座位位置が浴槽上の場合は、バスボードを使用する。浴室のスペースが小さい場合に有効。バスボードの取り付け・取り外しの際に介助が必要になることがある。
座位位置が浴槽の長辺方向の場合は、浴槽の長辺方向に移乗台を設置する。最も動作が安定するが、浴室の間口、奥行きともに1.600mm程度のスペースが必要である。
座位位置が浴槽の洗い場側の場合は、洗い場側に移乗台を設置する。バスボードのような取り付け・取り外しの手間は不要。浴槽奥の壁の手すりには手が届きにくい。
バスボード、移乗台(浴槽縁にかけて利用するタイプのもの)は、介護保険制度による福祉用具購入費支給の対象になっています。
▢ 102.高齢者や障害者には、和洋折衷式の浴槽が適しています。
浴槽は、主に次の3タイプに分けられます。
1.和式は、短く、深い浴槽で、肩までつかるのに向いている。
2.洋式は、縦に長く、浅い浴槽で、背もたれが大きく傾斜しています。寝た姿勢で入浴する。
3.和洋折衷式は、和式と洋式の中間的なタイプで、適度に身体を伸ばして入浴でき、浴槽内での姿勢が安定する。
▢ 103.浴槽は、入浴時につま先が浴槽壁に届く長さでなければならない。
つま先が浴槽壁に届かないと、身体が前方にずれておぼれる恐れがあります。高齢者や障害者に適した浴槽の外形寸法は、長さは、1100mm~1300mm、幅は、700~800mm、深さは、500~550mm、洗い場の床面から浴槽縁までの高さは、400mm程度
▢ 104.浴室のシャワー水栓は、サーモスタット付きのものを使用します。
浴室のシャワー水栓は、誤って身体に熱湯や冷水をかけてしまうことがないように、温度調整が確実にできる水栓を使用します。入浴に介助を要する場合は、介助者の手が届きやすい位置、高さにシャワー水栓を増設すると便利です。あるいは、シャワーヘッドで吐水、止水の操作ができる製品を使用すれば、介助者は水栓の操作をしなくてすみます。
▢ 105.洗面・脱衣室や浴室にも、暖房機器を設置することが望ましい。
冬季に、暖房の行き届いた居室から洗面・脱衣室へ移動し、冷たい空気に肌をさらしたのちに、浴室で熱い湯につかるという行為は、急激な温度変化を伴い、身体に大きな負担をかけます。入浴前に、あらかじめ洗面・脱衣室や浴室を暖めておくことが望ましい。
更衣・洗面・整容
▢ 106.高齢者や障害者が使用する洗面・脱衣室のスペースは、いすに腰かけての動作や、車いすの使用を想定して、広めに確保します。
壁芯―芯距離で1,820mm四方のスペースがあれば、洗面・脱衣用のベンチが置ける。ただし、出入り回の位置や動線の確認をあらかじめしておく
▢ 107.洗面・脱衣室とトイレの間の仕切り壁を撤去してワンルーム化し、スペースを確保する方法もあります。
仕切り壁を撤去できるのは、撤去しても建物の構造に影響がない場合に限られます。
▢ 108.洗面・脱衣室の床仕上げは、水にぬれても滑りにくいものにします。
洗面・脱衣室は、洗面台で湯水を使うほか、浴室の出入り口から湯水があふれてくることもあり、非常に水にぬれやすい。そのため、床仕上げは、水ぬれに強いフローリングやPタイル、シート状の塩化ビニル系の床材、リノリウム床などを使用し、床下地にも耐水合板などを用いるとよい。
▢ 109.車いすを使用する場合の洗面カウンターの取り付け高さは、床面から720~760mm程度にします。
家族も使えるように、鏡は立位でも車いすに座っていても見える高さまでカバーできるものにする
洗面カウンターの取り付け高さは、一般には床面から720~760mm程度
車いすで使用したときも、アームサポートや膝がぶつかりにくい
調理と食事、団らん
▢ 110.代表的なキッチンの配置として、I型配置とL型配置があります。
キッチンの配置と特徴
I型配置は、コンロ、調理台、シンクを、横並びに一直線に配置する。特徴は、動線が単純で、身体の向きが常に一定である。小規模なキッチンに適する。大きなキッチンの場合、移動距離が長くなる。設置に要するスペースが比較的小さい。
L型配置は、コンロ、調理台、シンクを、直角に配置する。特徴は、身体の向きを変える必要がある。大きなキッチンでも、移動距離が比較的短くてすむ。車いすでのアプローチがしやすい。I型配置に比べて広いスペースを要する。
キッチンと食堂の間は、完全に仕切らずにハッチやカウンターにしておくと、家族とのコミュニケーションがとりやすく、配膳も楽である。
▢ 111.標準的なキッチンカウンターの高さは、床面から800mm、850mmの2種類です。
下肢の機能が低下した高齢者にとって、長時間立って調理作業をすることは大きな負担です。そのため、高齢者はいすに座って調理を行うこともあるが、その場合、通常のキッチンカウンターの高さでは高すぎるので、キッチンの下部の台輪部分(下枠)を小さくするなどして、高さを調節する。シンクの下の扉をはずすと、膝を入れるスペースが確保できます。
▢ 112.車いす対応型のキッチンカウンターの高さは、床面から740~800mm程度にします。
シンクの深さは、通常は180~200mm程度だが、車いすで調理する場合は、120~ 150mm程度の浅めのものに変更することにより、シンクの下に膝や車いすのアームサポートが入るスペースができます。シンクを浅くした場合は、水栓金具を泡沫水栓にして水はねを防止します。
▢ 113.キッチンに収納棚を設置する高さは、通常は、作業する人の目線の高さを上限とします。
立位で作業する場合は、収納棚を1,400~1,500mm程度の高さに設置します。いすや車いすで作業する場合は、目線の位置に合わせると設置高さが900~ 1,000mmになり、キッチンカウンターとの間隔が狭くなるため、作業面と収納棚の下端の間隔を400mm以上確保し、調理中に頭がぶつからないよう、収納棚の奥行きは250mm以下とします。
▢ 114.キッチンで使用するコンロには、電気コンロとガスコンロがあります
。
コンロの種類
電気調理器は、天板の鍋を置く部分が、赤外線により加熱される。鍋を下ろしたあとも天板に余熱がある。
電磁調理器(IHヒーター)は、電磁気により鍋底自体を発熱させる。使用できる調理器具が限定されることがある。
ガスコンロは、入力が強く、鍋の種類も問わない。通常は五徳が突出しているが、鍋を上げ下ろししやすいよう、コンロ部分を段落ちした製品もある。
就寝
▢ 115.一般に、高齢者にはベッドでの就寝が適しています。
加齢により身体機能が低下すると、床面からの立ち座りや、布団の上げ下ろしなどの動作が困難になるため、布団よりもベッドを使用したほうが身体への負担は少ない。長い間の生活習慣を変えることに抵抗を感じる人も少なくないが、身体状況をよく見きわめて判断します。
▢ 116.寝室は、なるべく日当たりのよい位置に配置に配置します。
身体機能が低下するにつれて、寝室で過ごす時間はどうしても長くなるため、寝室を居室の一つととらえて、できる限り快適な空間にします。
寝室を居間などに隣接させると、家族とのコミュニケーションがとりやすくなる。しかし、本人のプライバシーに配慮するなら、ある程度独立した環境にすべきである。どちらをより重視するかは、本人の意思を尊重して決める。
▢ 117.ベッドを使用する場合、1人用の寝室でも、6~8畳のスペースが必要です。
夫婦用の寝室の場合は、8~12畳のスペースを確保することが望ましい。車いすを使用する場合は、1人用でも最低8畳の広さが必要です。ベッドのほかに家具などを置く場合は、車いすの通行や移乗動作、介助などの妨げにならないよう、配置に工夫します。
▢ 118.寝室の一部を床上げして、畳スペースを設けると便利です。
寝室のスペースに余裕があれば、床面から400~450mm程度の高さに、2、3畳程度の畳スペースを設けておくと、腰かけて利用したり、車いすの移乗に使用したり、介助者の就寝スペースとして利用したりできるので便利です。
畳スペースの下部に車いすのフットサポートが入るようにしておくと、使い勝手がよい。
▢ 119.寝室の窓は、屋外との出入りができる掃き出し窓にするとよい。
掃き出し窓の開口部に必要な有効幅員を確保することにより、車いすでの通行も可能になる。屋内外の段差が生じないバリアフリー対応のサッシもあります。また、掃き出し窓の外部にデッキを設け、デッキからスロープを設置することにより、外出時の出入り回としても使用できるようになります。
▢ 120.寝室の床仕上げには、コルク床、タイルカーペットなどが適しています。
一般に、洋室の床仕上げはフローリングが多いが、コルク床は、適度な弾力性と高い断熱性があり、高齢者や障害者に適しています。コルク材の厚さは3~10mm程度のものが多いが、なるべく厚いものを選ぶとよい。タイルカーペットには、 抗菌・防汚処理の施されたものもあり、汚れてもその部分だけ取りはずして洗濯したり、交換したりできるので便利です。
▢ 121.寝室の照明は、ベッドに横になっているときに、光源が直接眼に入らないように設置します。
源が直接眼に入らないようにするためには、照明器具を間接照明にするか、器具の取り付け位置に配慮する。JISの照度基準では、寝室全体の推奨照度は20ルクスとやや暗めに設定されているが、高齢者の視力の低下や移動動作を考慮すると、居間と同程度の50ルクスは必要です。
▢ 122.寝室には、緊急時に備えた通信手段を確保しておく。
寝室と居間などの間で通信できるインターホンやコールスイッチなどを設置しておくと、緊急時にも対応できる。無線通信が可能で、配線工事の不要なタイプもあります。
「消防法」により、寝室には、住宅用火災警報器の設置が義務づけられています。
6章 在宅生活における福祉用具の活用
福祉用具とは
▢ 1.福祉用具とは、高齢者や障害者が、住み慣れた地域や家庭でできる限り自立した生活を営むために必要とする用具です。
1993(平成5)年に制定された「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律(福祉用具法)」と、介護保険制度の保険給付について定める「介護保険法」では、それぞれ、福祉用具を定義しています。
福祉用具法第2条
この法律において「福祉用具」とは、心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具をいう。
介護保険法第8条第12頂より抜粋
福祉用具(心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある要介護者等の日常生活上の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練のための用具であって、要介護者等の日常生活の自立を助けるためのものをいう。)
福祉用具に含まれるもの
福祉機器、自助具、補装具、日常生活用品、介護用補助用具、機能回復訓練機器
▢ 2.介護保険制度による居宅サービスとして、福祉用具の貸与と、特定福祉用具の購入費の支給が行われています。
1.貸与の対象となる福祉用具
車いすは、自走用標準形車いす、普通形電動車いす、介助用標準形車いす
車いす付属品は、クッション、電動補助装置等
特殊寝台は、背部または脚部の傾斜角度の調整、床板の高さの調整のいずれかの機能をもつもの
特殊寝台付属品は、マットレス、サイドレール等
床ずれ防止用具は、体圧を分散する効果がある空気マット等
体位変換器は、身体の下に挿入し、体位の変換を容易にするもの
手すりは、取り付けに工事を伴わないもの
スロープは、取り付けに工事を伴わないもの
歩行器は、車輪を有するもの(歩行車)も含まれる
歩行補助つえは、松葉づえ、カナディアンクラッチ、エルボークラッチ、プラットホームクラッチ、多点づえ
認知症老人徘徊感知機器は、対象者が屋外に出ようとしたときなどに、センサーで感知して家族や隣人に通報する装置
移動用リフト(つり具の部分を除く)は、床走行式リフト、固定式リフト、据置式リフト
自動排泄処理装置は、尿または便が自動的に吸引されるもの
2.購入費支給の対象となる特定福祉用具
腰掛便座は、据置式便座、補高便座、立ち上がり補助便座、ポータフルトイレ
自動排泄処理装置の交換可能な部品は、尿や便の経路となる部品で、容易に交換できるもの
入浴補助用具は、入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト
簡易浴槽は、容易に移動でき、取水、排水工事を伴わないもの
移動用リフトのつり具の部分は、移動用リフトに連結して使用するもの
▢ 3.「障害者総合支援法」に基づいて、障害者(障害児)の身体機能を代替、補完するための福祉用具(補装具)を給付する制度があります。
「障害者総合支援法」に基づく補装具費支給制度の対象種目は、16種目です。車いすなどの種目は介護保険で貸与される福祉用具と共通しており、介護保険の受給者は、原則として介護保険による給付を受けます。
補装具費支給制度の対象種目
義肢、装具、座位保持装置、盲人安全つえ、義眼、眼鏡、補聴器、車いす、電動車いす、歩行器、歩行補助つえ、重度障害者用意思伝達装置、(以下は身体障害児のみに支給)座位保持いす、起立保持具、頭部保持具、排便補助具
▢ 4.「障害者総合支援法」に基づく地域生活支援事業として、日常生活用具が給付されています。
「障害者総合支援法」では、対象種目について、用途、形状のみが定められており、具体的な品日は、事業主体である市町村が決めます。
福祉用具の選択・適用のプロセス
▢ 5.高齢者や障害者のADLの自立度を高め、介護者の負担を軽減するには、福祉用具による支援を効果的に行うことが重要です。
高齢者や障害者のニーズに合う適切な福祉用具を選択・適用するには、必要性の判断、実施、効果確認、目標設定、プランニング、モニタリングのプロセスを経ることが必要です。
福祉用具による支援のプロセス
プロセス1、必要性の判断は、生活上の課題を把握し、分析する。
プロセス2、目標設定、プランニングは、福祉用具の利用計画を策定する。
プロセス3、実施、効果確認は、福祉用具の適合を確認し、使用方法を説明する。
プロセス4、モニタリングは、福祉用具の利用状況と効果を確認する。
起床・就寝
▢ 6.特殊寝台とは、背部または脚部の傾斜角度を変化させる機能か、床板の高さを調整する機能のいずれかをもつベッドです。
背上げ・脚上げの機能は、ベッドからの起き上がり等の動作を補助し、介助が必要な場合は、介助者の負担を軽減する効果があります。床板を昇降させる機能は、ベッドからの立ち上がり動作や、車いすへの移乗を容易にします。特殊寝台は、これらの機能のいずれか、もしくは両方を兼ね備えています。
背上げ・脚上げの機能をもつ特殊寝台には、それらが運動するものと、別々に行えるものがあります。
▢ 7.特殊寝台の付属品のマットレスには、ベッドの動きに対応する柔軟性が必要です。
マットレスは、特殊寝台の背上げ、脚上げの動きにぴったりと運動するものでなければならない。また、寝返りや起き上がりなどの動作をしやすくするためには、ある程度の硬さも必要です。対象者の好みの硬さなども考慮して選択します。
▢ 8.褥瘡を生じる恐れがある場合は、床ずれ防止用具の使用を検討します。
床ずれ防止用具には、通常のマットレスの上に敷く簡易なものから、エアマットや、ウレタンフォーム、水、グルなどのクッション材を使用したものまでさまざまなタイプがあるが、いずれも、体圧を分散させることにより褥瘡を予防します。ただし、寝床が柔らかいと、寝返りや起き上がりの動作がしにくくなるため、要介護度が低い場合に使用すると、かえって対象者の自立を妨げる恐れがあります。
▢ 9.サイドレールは、ベッドからや寝具のずれ落ちを防ぐもので、起き上がりなどの動作の補助には用いない。
サイドレールは、特殊寝台のフレームに差し込んで使用するものが多く、簡単に着脱できるが、体重を支えるほどの強度はもたない。動作の補助には、ベッド用手すり(グリップ)を使用します。
▢ 10.ベッド用手すりは、寝返り、起き上がり、立ち上がり、車いすへの移乗などの動作の補助に使用します。
ベッド用手すり(グリップ)は、サイドレールと同様に、特殊寝台のフレームに差し込んで使うものが多いが、動作の補助に使用できるよう、しっかりと固定されます。扉のように開閉することができ、立ち上がりや車いすへの移乗の際は、外側に開いた状態で固定して使用します。
▢ 11.ベッド用テーブルは、特殊寝台での食事などの際に使用します。
特殊寝台などで食事をする際に使用するベッド用テーブルには、掛け渡し式と可動式があります。
ベッド用テーブルの種類
掛け渡し式は、ベッドのサイドレールに掛け渡して使用する。設置が簡単で、収納にもスペースをとらない。
可動式は、テーブルの脚部にキャスターがついたもの。ベッドをまたぐように設置し、前後に動かすことができる。使い勝手がよいが、収納には大きなスペースを要する。
ベッド用テーブルは便利なものであるが、常時使用することによってベッドを離れる機会が少なくなり、廃用症候群を招く恐れがあることに注意しなければならない。重度の障害がある場合や、一時的に絶対安静が必要な場合はやむを得ないが、いすや車いすに座ってテーブルにつくことが可能な場合は、できる限りそうするべきです。
ベッド用テーブルには、上の2つのほかに、ベッドの端に腰掛ける端座位の姿勢を保持し、食事やその他の作業を行う場合に使用する、背もたれ付きの端座位保持テーブルもあります。
▢ 12.スライディングマットは、ベッド上で身体の位置をずらすときなどに使用します。
スライディングマットは、筒状に縫製されたシーツで、内側に滑りやすい特殊な生地が使われています。対象者の身体の下に敷き込んで使用することにより、身体を容易に移動させることができ、介助者の負担が軽減されます。車いすへの移乗の際にも用いられます。
▢ 13.スライディングボードは、ベッドから車いす、ポータブルトイレヘの移乗の際に使用します。
スライディングボードは、プラスチック製の板状の福祉用具で、特殊寝台と車いす、または、特殊寝台とポータブルトイレの間に掛け渡し、ボード上で臀部を滑らせることにより、座位姿勢のまま移乗を行う。車いすに移乗する際は、車いすのアームサポートは着脱できるものがよい。
▢ 14.体位変換用クッションは、体位の変換や、体位の保持を容易にする福祉用具です。
体位変換用クッションは、ベッド上で、背部、腰部、上肢、下肢などの下に差し込んで使用します。褥瘡予防のための寝返り介助などの際に用いられます。
褥瘡は、皮膚の一定の部分に継続的に圧力が加わることにより血流が阻害され、組織が壊死した状態です。
▢ 15.起き上がり補助装置は、床からの起き上がり動作を補助する福祉用具です。
室内を座位移動する場合や、寝室が狭いため特殊寝台が導入できない場合、あるいは、長年の生活習慣を変えたくないなどの理由で床に布団を敷いて就寝していて、起き上がり動作が困難な場合に用います。布団の下に敷くだけで使用でき、スイッチ操作により、電動で背部が昇降するしくみです。
移動
▢ 16.歩行補助つえには、歩行を安定させ、歩行速度を改善する効果があります。
歩行補助つえは、加齢とともに下肢機能が低下した場合に、歩行時の動作を補助するために使用します。また、下肢に麻痺や痛みがある場合には、患側の下肢にかかる荷重の一部、あるいは全部を免荷する役割をもちます。つえをついていることにより安心感が得られることも効果の一つです。
▢ 17.つえの高さは、一般に、握り部が大腿骨大転子の位置にくるようにします。
つま先の前方150mm、外側150mmの所につえをついたときに、肘が30度くらい曲がる程度の高さがよく、大腿骨大転子の位置が目安となります。大腿骨大転子は、大腿骨の付け根にある、外側に出っ張った部分です。
▢ 18.T字型つえは、握り部の形状が床面に対してほぼ平行で、外観がT字状のつえです。
T字型つえは、脳血管障害による片麻痺者や、下肢機能が低下した高齢者に広く用いられています。握り部や支柱の形状が異なるC字型つえ、L字型つえと比較すると、T字型つえが、安定性や軽さの点で優れてます。
▢ 19.多脚つえ(多点つえ)は、脚部を分岐させることにより、支持面を広くしたつえです。
多脚つえは、3~5本に分かれた脚部で荷重を受けるので、T字型つえよりも免荷機能に優れ、安定性もあります。T字型つえでの歩行に不安がある場合に用いられるが、やや重く、つえをつく床面や路面に凹凸があると不安定になりやすい。
▢ 20.エルボークラッチは、握り部の上で前腕部を固定して使用するつえです。
エルボークラッチ(ロフストランド・クラッチ)は、握り部の上でやや屈曲した支柱に、前腕部を固定するカフが備えられ、肘を軽く曲げた状態で荷重できる構造をもちます。握力の不足や、肘が伸ばしにくいなどの理由でT字型つえの使用が困難な場合に用いられます。
▢ 21.プラットホーム・クラッチは、上部に前腕部を乗せて使用するつえです。
プラットホーム・クラッチは、肘を直角に曲げた状態で、つえの上部にある前腕受けに前腕部を乗せて固定し、肘から手首までの前腕部全体で荷重します。関節リウマチなどで手指や手関節に痛みがあり、つえがしっかり握れない場合に用いられます。
▢ 22.松葉づえは、腋で挟んで支持するつえで、左右両側について歩行することが多い。
松葉づえは、支柱の上部が松の葉のように二股に分かれ、上端に腋当てがあります。腋当てを腋に挟み、支柱の中間にある握り部を手で握って支持します。松葉づえを両側につくと、片側の下肢には一切荷重をかけずに歩行することができます。
▢ 23.片麻痺がある場合は、健側の手でつえを持って歩行します。
片麻痺の3動作歩行は、1.前方につえをつく。2.患側の足を踏み出す。3.健側の足を出して揃える。
また、上の1.と2.を同時に行う歩行方法もあり、2動作歩行という。
▢ 24.つえ歩行では安定性や支持性が十分でない場合は、歩行器・歩行車を使用します。
歩行器・歩行車は、握り部、支柱フレーム、脚部からなり、脚部に車輪のないものを歩行器、車輪を有するものを歩行車といいます。つえよりも高い安定性や支持性が得られるが、段差や路面の傾斜には対応しにくく、方向転換に大きなスペースを要するなどの欠点もあり、屋内外ともに、使用を制限される場合があります。
▢ 25.固定型歩行器は、歩行時に両手で持ち上げて使用します。
固定型歩行器は、フレームにつながった4本の脚をもち、上部の握り部を持って使用します。
1.歩行器を両手で持ち上げ、前方に移動させます。2.両足を片方ずつ前に出す。要領で前進する。
▢ 26.交互型歩行器は、フレームが斜めに変形するため、片側ずつ前に押し出せます。
交互型歩行器は、1.歩行器の片側を前に出す。2.同じ側の足を前に出す。3.歩行器の反対側を前に出す。4.同じ側の足を前に出す。要領で前進する。1.と2.、3.と4.を同時に行う場合もあります。
▢ 27.2輪歩行車は、固定型歩行器に似た形状で、前2本の脚に車輪が付いたものです。
二輪歩行車には車輪が付いているため、全体を持ち上げる必要がなく、後方の2脚を持ち上げて前輪を転がして前進させます。比較的小さな力で操作できるが、前方に押し出しすぎると転倒の恐れがあります。また、段差の多い場所での使用は難しい。
▢ 28.肘当て付き四輪歩行車は、下肢の運動機能が著しく低下している人の歩行を補助します。
フレーム上部に付いた馬蹄形のパッドに前腕部を乗せ、姿勢を安定させて歩行します。骨折、脳血管障害などによりわずかしか歩けない人が、主に施設内での歩行訓練に用います。段差やスペースの制約のため、一般の住宅での使用は困難です。
▢ 29.シルバーカーは、自立歩行のできる人が補助的に使用するものです。
シルバーカーは、高齢者が買い物や散歩に使用する手押し車で、前方にかごを備えたものが多い。かごのふたが座面になり、疲れたときにいすとして使用できるものもあります。歩行器。歩行車のように身体の荷重を十分に支える機能はない。
▢ 30.車いすは、歩行の困難な人や、長時間の歩行ができない人が使用する福祉用具です。
車いすは、移動の手段であるだけでなく、離床を促し、寝たきりによる廃用症候群を予防するためにも有用です。自立支援の観点からは、できる限り利用者自身が車いすの操作を行うことが望ましい。身体のサイズに合った車いすを選択することも重要です。
▢ 31.自走用標準形車いすは、利用者自身が操作するタイプの、標準的な車いすです。
自走用(自操用)標準形車いすは、後輪(駆動輪)が直径20~24インチ程度と大きく、後輪の外側に付いたハンドリムを手で回すことにより、前進、後退、方向転換などの操作ができます。片麻痺者の場合は、健側の手でハンドリムを回し、健側の足で床(地面)を蹴って駆動します。
足で床(地面)を蹴って使用する場合は、シートを低くしたり、下腿後面のレッグサポートを取り外すなどして、しっかりと蹴れるように設定します。
▢ 32.介助用標準形車いすは、介助者が手で押して操作するタイプの、標準的な車いすです。
介助用標準形車いすは、介助者がハンドグリップ(手押しハンドル)を押して操作します。一般に、後輪が直径14~16インチと小さめで、狭い場所で小回りが利くように配慮されています。
介助用標準形車いすのハンドグリップには、介助者用のブレーキが付いています。
▢ 33.リクライニング式車いすは、背もたれが後方に傾斜する機能をもつ車いすです。
リクライニング式車いすは、座位姿勢の保持が困難な場合などに用いられます。背もたれが後方に傾斜する機能をもつが、標準形の車いすにくらべて大きく、重量も重く、小回りが利かない。
シートと背もたれが一定の角度を保ったまま傾斜するティルト&リクライニング式車いすもある。
▢ 34.電動車いすは、バッテリーとモーターを搭載し、電動で駆動する車いすです。
電動車いすは、手動車いすの操作が困難な人の移動を自立させることを目的とした福祉用具です。一般に、手動車いすよりも重量が重く、屋外での使用に適しています。バッテリーの充電その他のメンテナンスや、使用しないときの置き場所の確保などが必要です。
▢ 35.標準形電動車いすは、ジョイスティックレバーで操作します。
標準形電動車いすには、通常、肘当ての前方にコントロールボックスが装備されています。コントロールボックスにあるジョイスティックレバーを進みたい方向に傾けるとその方向に動き、手を離すと制動がかかって停止します。
上肢機能に障害がある場合は、顎や足などでも操作できるようにコントロールボックスを設置することができます。
▢ 36.ハンドル形電動車いすは、専ら屋外で使用する車いすです。
ハンドル形電動車いす(電動三輪・四輪車いす)は、ハンドルで前輪を操作して方向を決め、アクセルレバーで速度を調節します。重量がかなり重く、回転半径が大きい。使用は屋外に限定され、歩道を走行することができます。
歩道のない場所では車道の右側を通行し、最高速度は時速6km以下に制限されています。
▢ 37.簡易形電動車いすは、手動車いすにユニットを装着し、電動化したものです。
簡易形電動車いすは、自走用標準形車いすに、バッテリー、モーター、コントロールボックスからなるユニットを装着することで電動車いすとして用いる車いすです。ユニットは手で簡単に着脱できるので、手動車いすとしても使用でき、汎用性が高い。重量も約30kgと、電動車いすとしては軽量で、折りたたみもできるので、自動車への積載も容易です。操作は、基本的に標準形電動車いすと同様です。
▢ 38.段差解消機は、人や車いすを乗せた台を垂直に昇降させる装置です。
段差解消機には、据置式、設置式、移動式の3タイプがあります。据置式、移動式は、導入後も機器の厚みによるわずかな段差が残ります。設置式は、大掛かりな工事が必要で費用もかかるが、段差を完全に解消することができます。
▢ 39.階段昇降機には、階段に固定する固定型と、工事の不要な可搬型があります。
固定型階段昇降機は、階段に設置したレールに沿って、駆動装置の付いたいすが人を乗せて昇降するものです。可搬型(自走式)階段昇降機は、車いすに装着して使用するものと、装置に備え付けられたいすに座って昇降するものがあります。
▢ 40.移動用リフトは、吊り具で身体を吊り上げて移動や移乗を行う装置です。
移動用リフトの種類
1.床走行式リフトは、吊り具を掛けるアーム、支柱、キャスタ付きの架台からなる。対象者を吊り上げた状態で任意の場所に移動できるが、段差を乗り越えることは困難で、実際は寝室でベッドから車いすへの移乗に用いられることが多い。
2.固定式(設置式)リフトは、居室、浴室、玄関などに設置し、車いすへの移乗や、浴槽への出入りの介助に用いる。
3.据置式リフトは、フレームでやぐらを組んでレールを設置し、その範囲でリフトを走行させる。主にベッドから車いすへの移乗に用いられる。設置が簡単である。
4.天井走行式リフトは、天井面にレールを敷設してリフトを走行させる。レールの設置に大掛かりな工事を必要とする。
排泄
▢ 41.据置式便座は、和式便器や両用便器を、腰かけ式(洋式)便器に変換する福祉用具です。
据置式便座は、和式便器や両用便器の上に置いて腰かけ式(洋式)便器に変換する便座です。通常、和式便器を洋式便器に交換するには大掛かりな工事が必要で費用もかかるが、据置式便座は、和式便器の上に置くだけで、水道工事などは一切不要です。
据置式便座を使用すると、排泄時の身体の向きが設置前と逆になることに注意する。
▢ 42.補高便座は、洋式便器の座面を高くし、立ち座りを容易にする福祉用具です。
補高便座は、洋式便器の上に置いて高さを補うものであり、下肢機能が低下して通常の便器からの立ち座りの動作に困難を伴う場合に使用します。ただし、座面を高くしすぎると、排泄時の座位姿勢が不安定になるため、適度な高さになるよう調整します。
▢ 43.立ち上がり補助便座は、洋式便器からの立ち座りを補助する装置です。
立ち上がり補助便座は、便座を電動で昇降させることにより、立ち座りの動作を容易にするもので、洋式便器に設置する重置式の機器です。装置を床面に固定するため、便器の周囲に若干のスペースが必要です。
立ち上がり補助便座には、便座が垂直方向に昇降するタイプと、斜め前上方に昇降するタイプがある。
▢ 44.ポータブルトイレは、トイレに移動して排泄することが困難な場合に用います
ポータブルトイレは、内部に尿や便をためる容器が組み込まれたいすで、 トイレヘの移動が難しい場合に、主にベッドサイドで使用します。形状は、標準形、スツール形などさまざまなものがあり、排泄後は容器を取り出して処理します。
できる限リトイレでの排泄を基本にし、ポータブルトイレは補助的に用いることが望ましい。
▢ 45.トイレ用車いすは、座ったまま便座に乗り入れて排泄を行える車いすです。
トイレ用車いすは、固定式フレームとシート(座面)に便座を装備したもので、4輪キャスタが付いているため、居室などからトイレに移動し、車いすに座ったまま、後方から洋式便器に乗り入れることができます。
▢ 46.収尿器は、トイレでの排泄が困難な場合に、ベッドや車いすで尿を採る福祉用具です。
収尿器は、ベッド上や車いすに乗った状態で尿を採る用具で、尿を受ける受尿部、流すチューブ、ためる蓄尿部からなっています。センサーで尿を検知し、真空方式で自動的に尿を吸引する自動吸引タイプもあり、自動排泄処理装置といいます。同時に排尿と排便の両方に使用できるものもあるが、継続的に使用すると、寝たきりによる廃用症候群を誘発する恐れがあります。
自動排泄処理装置の本体は、2012(平成24)年4月より、介護保険の福祉用具貸与の対象となった。尿や便の経路となるタンク、チューブ、レシーバーなどの交換可能部品については、従来どおり福祉用具購入費支給の対象です。
入浴
▢ 47.福祉用具の入浴用いすは、一般に使用されているものよりも座面が高い。
福祉用具の入浴用いすは、下肢の機能が低下した人や立ち座りの動作が困難な人が用いるもので、立ち座りや座位姿勢の保持をしやすくするため、一般用より座面が高くなっています。また、座面の高さを調節できるものが多い。背もたれや肘かけを備えたものもあるが、洗体や浴槽への出入り、介助などのじゃまになる場合もあります。
▢ 48.福祉用具の浴槽用手すりは、浴槽縁を挟んで固定して使用します。
福祉用具の浴槽用手すりは、住宅改修により浴室の壁面に設置する手すりとは異なり、工事が不要で、簡単に取り付けられます。ただし、強度には限界があり、強く体重をかけると、手すりがずれたり、はずれたりする恐れがあるので、浴槽ヘの出入りの際に、軽くつかまってバランスをとる程度の用途に適しています。
▢ 49.浴槽内いすは、浴槽の中に置いて、姿勢の保持などに用います。
浴槽内いすは、浴槽内で腰かけて使うほか、浴槽への出入りの際にも、踏み台として用います。浴槽の底に置くタイプ以外に、浴槽の底に吸着させて固定するタイプ、浴槽縁から吊り下げるタイプのものもあります。浴槽内でいすに腰かけると、座面の高さの分だけ、身体が湯につかる深さが浅くなることに注意します。
▢ 50.入浴台は、座位で浴槽をまたいで出入りする際に用いる福祉用具です。
入浴台には、両端を浴槽縁に掛け渡して使用するバスボードと、浴槽の外側に脚を立てる移乗台(ベンチ型シャワーいす)があります。後者は、入浴用いすとしての用途を兼ねることが多い。入浴台が浴槽縁などにしつかり固定されていないと、腰かけた際に転倒する恐れがあり、危険です。
▢ 51.浴室内すのこは、浴室の洗い場の床面と出入り口の段差を解消するために用いられます。
浴室内すのこを設置すると、洗い場の床面から浴槽縁までの高さが低くなり、またぎ越しがしやすくなる効果があります。洗い場の広さや床の勾配はそれぞれ異なるため、置いたときにずれたりがたついたりすることのないよう、洗い場の形状に合ったものを作成する。
浴室内すのこには、すのこの天板と脚部が分離できるタイプのものもあり、清掃や日干しなどのメンテナンスを行う際に便利です。
▢ 52.浴槽内すのこは、浴槽の中に置いて深さを調整する福祉用具です。
洗い場側に浴室内すのこを設置すると、洗い場の床面から浴槽縁までの高さは低くなるが、浴槽の深さはそのままなので、洗い場の床面と浴槽の底に高低差が生じる。浴槽内すのこを設置することにより、この高低差が小さくなり、またぎ越しの動作が安定します。
▢ 53.入浴用介助ベルトは、入浴時に、介助者が対象者の身体を支えるために用います。
入浴用介助ベルトを対象者の腰部に巻き付けて装着し、介助者がベルトに付いた持ち手の部分を握ることにより、身体を支える際に力を入れやすくなる。浴室への出入り、浴室内の移動や立ち座り、浴槽への出入りなどの動作を介助するときに、介助者の負担を軽減する効果があります。
▢ 54.シャワー用車いすは、車いすのまま入浴する場合に使用します。
シャワー用車いすは水回りでの使用を前提に作られており、トイレ用車いすの機能を兼ねていることが多い。浴室の外で脱衣し、車いすに座ったまま浴室に入り、そのまま洗体を行うことができます。その場合、洗面・脱衣室から浴室の出入り回、洗い場の床面までの段差がすべて解消されていなければならない。
生活動作補助用具
▢ 55.自助具とは、身体機能の低下により困難になった日常の動作を、自力で容易に行えるように工夫された道具です。
自助具には、片麻痺のため片手が使えない。関節リウマチなどにより関節可動域が制限され、手足を伸ばすことが出来ない。物がうまくつかめない。などの問題に対処するものが多い。
自助具の例
1.ドレッシングエイドは、長い柄の先に付いたフックで、衣類を引っかけて、引き上げたり下ろしたりする。
2.リーチャーは、長い柄の先に閉じ開きのできるフックがあり、遠くの物をつかんで引き寄せることができる。
3.ストッキングエイドは、本体に靴下をかぶせて足を差し入れ、ひもで本体を引き抜くと、前傾姿勢をとらずに靴下がはける。
4.ボタンエイドは、柄の先に付いた針金をボタン穴に通し、片手でボタンを留めることができる。
5.固定式爪切りは、爪切りが台に固定されているため、爪切りを持たずに手のひらや肘で押すだけで爪が切れる。片麻痺者に対応したものもある。
6.長柄ブラシは、腕を高く持ち上げなくても整髪できる。
▢ 56.認知症老人徘徊感知機器は、認知症高齢者が自宅や自室から出たことを家族などに知らせる装置です。
認知症老人徘徊感知機器は、認知症高齢者が屋外に出ようとしたときや、屋内のある地点を通過したときなどに、センサーで感知し、家族や隣人等に通報する装置です。徘徊を見つけたときの対応についても、あらかじめよく考慮しておく必要があります。
▢ 57.環境制御装置とは、上下肢などに障害のある人が、電化製品などのスイッチ操作を行えるようにする装置です。
環境制御装置には、ごく軽い力で押せる押しボタンや、呼気で操作するスイッチ、まばたきを感知する光ファイバースイッチなど、さまざまな入力方式があります。残存した身体機能を活用することにより、照明や電化製品、通信機器などのスイッチ操作が可能になります。
聴覚・言語障害関連の用具
▢ 58.携帯用会話補助装置は、合成音声や録音音声で相手にメッセージを伝える装置です。
携帯用会話補助装置は、構音障害などで発声・発語が困難な人が用いる福祉用具で、文字盤のキーで入力したメッセージを音声で伝えることができます。上肢にも障害があり、文字盤の操作が困難な場合は、メッセージの選択その他の操作を1つのスイッチで行うことができる重度障害者用意思伝達装置を使用します。
▢ 59.補聴器は、難聴により低下した聴力を補うために用いる補装具・医療機器です。
補聴器には、箱状の本体とイヤホンからなるポケット型補聴器をはじめ、耳掛け型、耳あな型などの種類があります。骨伝導を利用した骨導式補聴器もあります。補聴器は、音を電気的に増幅する装置で、感音難聴にみられる音のゆがみや、言葉の聞き取りにくさを補う効果は期待できない。また、遠くからの音や、複数の人の声が重なる会話などは、補聴器では間き取りにくい。
▢ 60.補聴器対応電話は、受話器の音声を磁気信号に変えて発信し、補聴器に伝えます。
補聴器対応電話では、補聴器に直接音声が送られるため、雑音が入らず、聞き取りやすい。補聴器側にも、受信した磁気信号を音声に変える磁気誘導コイル(Tモード)が内蔵されている必要があります。
Tモード付きの補聴器は、磁気誘導ループ(補聴器向けの放送設備)が設置された公共施設などでも利用できる。
▢ 61.聴覚障害者用情報受信装置は、聴覚障害者向けのCS放送などを受信できる装置です。
聴覚障害者用情報受信装置を用いることにより、手話・字幕付きの番組を放送する聴覚障害者向けのCS放送のほか、通常の地上波デジタル放送が受信できます。災害時には地域の緊急災害放送を受信し、光警報で知らせる機能をもちます。
地上波デジタル放送を受信できるテレビには、通常、字幕表示機能が備えられており、聴覚障害者でも放送を楽しむことができます。
視覚障害関連の用具
▢ 62.拡大鏡は、文字などを拡大して見るための補助具です。
拡大鏡は近見で文字や絵などを拡大して見るための補助具で、レンズ、ルーペとも呼ばれます。
拡大鏡の種類
手持ち式のルーペは、一時的な使用に適する。
スタンド付き拡大鏡は、対象物の上に置くと焦点が合う。
クリップオン式ルーペは、眼鏡に装着して使用する。両手を使った作業に適する。
▢ 63.弱視眼鏡は、通常の眼鏡で矯正しても見えにくい場合に処方されます。
弱視眼鏡は、眼鏡に小型の単眼鏡(双眼鏡のレンズが一つになった、望遠鏡を小さくしたようなもの)を装着したもので、視力の低下が著しい場合に処方されます。焦点を調節することにより、遠方の物を見るときに使用できます。
▢ 64.点字器は、点字を書くための道具で、点字板、点字定規、点筆からなる。
点字器は、点字板に紙を挟み、穴のあいた点字定規を当てて、点筆で裏側から点字を打ち込む(紙の表側が盛り上がる)くみです。
通常使用される点字は6点式点字で、横2X縦3の6か所の点の組み合わせで1文字を表しています。
▢ 65.盲人用安全杖(白杖)には、使用者が視覚障害者であることを周囲の人に知らせる役割があります。
盲人用安全杖(白杖)は、視覚障害者が歩行時に前方の路面の状態や障害物の有無などを確かめるために用いるものであるが、同時に、車のドライバーや他の歩行者、警察官など周囲にいる人に視覚障害者であることを知らせ、注意を喚起する役割があります。
義肢・装具
▢ 66.義手には、装飾用義手、能動義手、作業用義手、電動義手があります。
義手は、上肢を切断した場合に用いられるもので、機能によって分類されます。
義手の種類
装飾用義手は、外観を再現するための義手
能動義手は、つかむ、握るなどの動作が可能な義手
作業用義手は、特定の作業に従事するために使用する義手
電動義手は、断端の筋肉の活動を利用して電動で手先を動かせる義手
▢ 67.義足の種類は、切断した下肢の部位によって異なります。
義足は、下肢を切断した場合に用いられるもので、切断した部位によって分類されます。
義足の種類
股関節離断は、股義足
大腿切断は、大腿義足
膝関節離断は、膝義足
下腿切断は、下腿義足
距腿関節離断は、サイム義足
▢ 68.装具とは、四肢や体幹に機能障害が生じた場合に、障害がある部分に装着し、固定、変形の予防、矯正などを行う器具です。
装具には、医学的治療のために使用される治療用装具、ADL等の向上のために使用される更生用装具があります。また、装着する部位により、上肢装具、体幹装具、下肢装具に分かれます。義肢ならびに装具は、医師の処方に基づいて義肢装具士が製作します。
福祉住環境コーディネーター2級ガイダンス
福祉住環境コーディネーターとは
福祉住環境コーディネーターは、高齢者あるいは障害者の住む家や日々使う道具などを、より使いやすく、そしてより生活しやすい環境に整えるためのアドバイスを行います。
要介護者や障害者、あるいは高齢になり体の動きが難しくなった時、一般的な住居は移動しにくかったり不便だと感じたりする点がいくつもあります。
そうした人々の視点にたち、知識をもってより快適な生活が送れるよう手助けをすることができます。
どんな人が取得するの
福祉住環境コーディネーターは、1999年に設立された民間資格です。介護や福祉に関する仕事をしている人がより専門性を高めるために取得したり、工務店に働く人等が介護保険制度を使った住宅改修の時に役立てるために取得するケースが多いです。
福祉住環境コーディネーターの仕事内容とは
福祉住環境コーディネーターの仕事内容ですが、主に以下の3つになります。
● 住環境を整えるためのアドバイス
● 福祉用具、介助用具のアドバイス
● 住宅改修費支給申請の理由書作成
では、それぞれの仕事内容について詳しくみていきましょう。
住環境を整えるためのアドバイス
福祉住環境コーディネーターは、医療や福祉、建築に関わる専門家と連携をとりながら高齢者や障害者に合った住環境のアドバイスを行います。
例えば、怪我や病気、老化などで足腰に不自由が生じた人がいるとします。その人にとっては、これまで何ともなかった玄関の上がり框や敷居といった、ちょっとした段差を乗り越えることが難しくなるかもしれません。
段差を解消したり、楽に上れるようにする手段はたくさんありますが、その人に応じた方法で住環境を整えるためのアドバイスを行います。介護保険のサービスを利用している要介護高齢者の住環境を整備する時に具体的な案を提案したり、場合によっては介護施設のコーディネートといった大役を担う人もいます。
また、バリアフリー住宅の建設やリフォームを検討する方の相談に応じるケースもあります。
福祉用具、介助用具のアドバイス
福祉住環境コーディネーターは、住まいだけでなく福祉用具や介助用具などのアドバイスも行います。障害の程度に合わせて、便利な道具はたくさんあります。しかし、実際にどのような道具があるのかは知らない人が多いでしょう。
福祉住環境コーディネーターは、介護が必要な人に合った道具の情報提供をしたり、選ぶ時の手助けもします。
住宅改修費支給申請の理由書作成
福祉住環境コーディネーター2級以上であれば、自治体によって介護保険の住宅改修に関する書類を作成することができます。住宅改修費支給申請とは在宅の要介護者・要支援者が、段差の解消や手すりの取り付けなど、日常生活に必要な改修工事を、実際に居住する住宅で行う際、必要と認められれば自治体より住宅改修費が支給される仕組みです。
福祉住環境コーディネーターになるためには
それでは、福祉住環境コーディネーターになるには、どのような手続きや勉強をすれば良いのでしょうか。その手順について、みていきましょう。
資格の種類
福祉住環境コーディネーターには、1級から3級まであり、3級が一番難度が低いです。そのため、初めて受験する場合は3級から挑戦するのが一般的ですが、2級から受験することも可能です。
ちなみに、2級以上になると介護保険の住宅改修の際に必要となる理由書の作成も行うことができます。ただし、自治体によって認められない場合もあるため確認が必要です。
また、受験資格はありません。学歴や年齢、性別、国籍問わず誰でも試験に挑戦できます。試験を受けるために講座等を受講する必要もないため、独学で受験することもできます。空いた時間にコツコツと勉強しながら資格取得を目指せます。
受験から資格取得までのスケジュール
福祉住環境コーディネーターは、東京商工会議所が主催する認定試験です。受験申込は、東京商工会議所のウェブサイトの申込ページにアクセスするか、電話で行います。
2・3級の試験は年2回、だいたい7月と11月頃に実施されます。
1級のみ年1回、11月頃の実施です。
試験日の2か月半くらい前から約1か月間、申込登録期間が設けられています。
これは毎年変わるため、受験したい年の試験日や申込期間は事前に確認しておきましょう。
試験は各都道府県の指定された会場で受験します。
合格した場合、試験日から約1か月後に合格証が届きます。
STEP.1 申し込み (個人・団体)東京商工会議所の検定試験情報より申し込み頂けます。
STEP.2 受験料の支払い受験料は級によって異なります。
STEP.3 受験票が届く試験の約1週間前に届きます。受験票が届かない場合は、受験者本人が電話で問い合わせるようにしましょう。
STEP.4 試験当日
STEP.5 成績照会試験日から約3週間後に、WEB上で成績照会が行えます。
STEP.6 合格証が届く合格の方には、カード形式の合格証が届きます。
試験の難易度
1級ー「A」 難関
2級ー「B 」 普通
3級ー「C」 やや易
資格の難易度レベル
この試験は2級、3級は難しくありませんが、1級になると一気に難易度が上がり、合格率が10%以下の難関資格へと変貌しますので注意が必要です。ただ、トータル的に見れば難易度は「B」です。合格率は1級10%以下、2級40~50%、3級40~55%くらい。
1級は2級取得者でなければ受験できず、試験は1次がマークシート、2次は論述と記述で難易度が高い。2級、3級は実務経験がなくても独学で突破可能なレベルです。
受験対策・資格の将来性
高齢者や障害者に対して住みやすい住環境を提案するアドバイザー。試験を受ける人の大半が建築関係、医療関係、福祉関係の職に就いています。中でも、不動産関係の仕事の人なら持っているとこれからは有利になるでしょう。
2002年から設置された1級は、新築や住宅改修の具体的なプランニングができ、安全で快適な街づくりへの参画など、広い範囲で活動できる能力が問われます。
例年、試験の合格者は3級~1級を合わせると2万人以上になります。すでに関連業種で仕事についている人の受験が多く、その割合は受験者の平均41%になります。福祉関係の住宅の設計事務所などでは、2級以上を取得すれば介護保険法により「住宅改修の理由書作成者」になれるため求人は増えることが予想されます。他には福祉機器メーカーなども機器の開発段階で協力を要請したい考えをもっているようです。
この資格所有者は、設計建築事務所、住宅業界、福祉用具や介護用品を扱う会社に勤務し、設計や商品開発に携わることが多いようです。ケアマネなど福祉系の資格を合わせて取得し、福祉サービスを提供する会社に所属することも出来ます。また、バリアフリー対策が重要視される老人ホームや介護施設、病院などの福祉・医療現場でも、この資格所有者は求められています。
高齢化社会を迎える今、福祉的観点に立った住宅の改善が行える福祉住環境コーディネーターには、「医療」「福祉」「建築」の3分野にまたがる活躍が期待されています。
ただ、福祉住環境コーディネーターを取得したからと言って、すぐに就職が決まるほど甘くはありません。福祉系の知識、経験、資格(ヘルパーの経験、ケアマネージャーなど)と合わせて、建築系の能力、資格(建築士、インテリアコーディネーターなど)を取得できれば、大きな力になり効果が発揮されるでしょう。
2022年3月28日 発行 初版
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