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福祉住環境コーディネーター2級について
高齢者や障害者を取り巻く社会状況と福祉住環境コーディネーターの意義
障害のとらえ方と自立支援のあり方
疾患別・障害別にみた不便・不自由と福祉住環境の考え方
介護保険制度とケアマネジメント
福祉住環境整備の基本技術および実践に伴う知識
在宅生活における福祉用具の活用
ガイダンス
登録販売者試験 合格のための重要事項短文集 暗記BOOK
ー試験合格には「短文で正しい知識」を身につけることが大切!ー
本書について
本書は、福祉住環境コーディネーター2級の筆記試験によく出題される事項を集めています。
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福祉住環境コーディネーター2級
第1章 高齢者や障害者を取り巻く社会状況と福祉住環境コーディネーターの意義
高齢者の生活状況と住環境整備
▢ 1.「介護保険制度に関する世論調査」(内閣府・2010年)によると、介護を受けたい場所を「自宅」と回答した割合は、女性より男性のほうが多かった。
ー介護を受けたい場所を「自宅」と回答した人の割合は全体の37.3%で、性別で見ると男性44.7%、女性31.1%と、男性のほうが多かった。
▢ 2.2000(平成12)年にスタートした介護保険制度の利用者数は、2018(平成30)年4月には3倍を超える規模になった。
ー介護保険制度の利用者数は、2018(平成30)年4月には、当初の149万人から543万人に増え、3倍を超える規模になった。
▢ 3.介護保険制度により要介護・要支援の認定を受けている人の2人に1人は、認知症高齢者である。
▢ 4.日本の従来の木造住宅は、伝統的な尺管法に基づいて、910mm=3尺という寸法を基準にして造られている。
▢ 5.畳などの床面にじかに座る床座という日本の伝統的な生活様式は、高齢者の生活に一般に高齢者には不向きである。
ー日本では多くの人々が今も、畳などの床面にじかに座る床座という生活様式に慣れ親しんでいるが、床からの立ち座り動作が大きな負担になる。
▢ 6.日本では総人口は減少傾向にあるが、世帯数は増加しており、世帯主が65歳以上の単独および夫婦世帯が多くを占めている。
ー増加のピークは2023年と推計され、特に単独世帯が増加していくと見込まれている
▢ 7.日本の従来の木造住宅は、夏季の気候に合わせて造られており、冬季の寒さを防ぐのには適していない。
ー高温多湿な気候のため、日本の住宅は夏季に過ごしやすいように造られてきた。そのため、冬季には暖房をしている場所としていない場所で大きな温度差が生じる。
住環境整備の重要性・必要性
▢ 8.高齢者や障害者の福祉施策は、福祉施設での生活支援から在宅における生活支援に変わってきている。
ー平均寿命が延びたことなどから、高齢者が在宅生活を送る期間が長くなり、住環境整備の必要性が高まっている。
▢ 9.高齢者の場合、家庭内事故で死亡する人は、交通事故で死亡するよりも多い。
ー家庭内事故で死亡する人の大部分は65歳以上の高齢者のであり、高齢者に限ると、家庭内事故による死亡者数が交通事故による死亡者数を上回る(2017年「人口動態統計」による)。
▢ 10.高齢者の家庭内事故死の原因として最も多いのは、浴室内での溺死である。
ー高齢者の家庭内事故の原因を上位から順にあげると、溺死、その他の不慮の窒息、転倒・転落、火災である(2017年「人口動態統計」による)。
▢ 11.寝たきり高齢者の多くは「寝かせきり高齢者」だといわれる。
ー高齢者の移動を介助するよりも、ベッドに寝かせたほうが介護の労力が少なくてすむことから「寝かせきり」になる高齢者が多いといわれている。
▢ 12.ADLとは、「日常生活動作」を意味する。
ー「日常生活動作」はADL(Activities of Daily Living)の略語である。QOL(Quality of Lre)は「生活の質」、つまり、どれだけ人間らしい充実した生活を送れているかを表す尺度である。
▢ 13.高齢者に配慮した住環境整備を行うためには、「建築基準法」に基づいて造られた住宅でも多くの家庭内事故が起きているため、高齢者の特性にさらに配慮した住環境整備が必要である。
▢ 14.介護者の負担の軽減も、住環境整備の目的の一つである。
ー住環境整備により高齢者の生活動作が自立すれば、介護者の負担が軽減される。
介護保険制度導入までの高齢者保健福祉施策
▢ 15.高齢化率(総人口に占める65歳以上の高齢者の割合)が14%を超えた社会を、高齢社会と呼ぶ。
ー高齢化率が7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会、21%を超えると超高齢社会と呼ぶ。
▢ 16.介護の社会化とは、高齢者や障害者の介護を家族だけでなく社会全体で担うしくみを構築することである。fふ
ー核家族化や、介護する側の家族の高齢化などにより、介護の問題に家族だけで取り組むことが困難になり、介護の社会化が求められるようになった。
▢ 17.1874(明治7)年に制定された「恤救規則」では、救済の対象となる高齢者は、身寄りのない貧困の老衰者に限られていた。
ー「恤救規則」は、明治政府が制定した公的救済制度である。救済の対象とされたのは、疾病や老衰のために働くことができず、頼れる身寄りもない高齢者などであった。
▢ 18.1963(昭和38)年に「老人福祉法」が制定され、新たな老人福祉施設として、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター等が創設された。
ー「老人福祉法」が制定され、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター等が創設され、老人家庭奉仕員(ホームヘルパー)も制度上に位置づけられた。
▢ 19.1973(昭和48)年に「老人福祉法」が一部改正され、老人医療費が無料化された。
ー安易な受診や社会的入院などの問題が生じ、医療費が増大した。
▢ 20.1991(平成3)年に「老人保健法」が改正され、老人訪問看護制度が創設された。
▢ 21.介護保険法は1997(平成9)年に成立し、 2000(平成12)年に施行された。
介護保険制度の概要
▢ 22.介護保険制度以前の老人福祉制度では、市町村が住民の申請に対して必要性を判断し、サービス内容や提供機関を決定・提供してきた。このような行政処分のことを、措置制度という。
▢ 23.介護保険制度により、それまで「老人福祉」と「老人医療」に分かれていた高齢者の介護に関する制度が再編成された。
▢ 24.介護保険制度は、40歳以上の全国民による社会保険のしくみにより運営されており、「社会連帯による客観性と公平性」が介護保険制度の基本的な考え方の一つである。
▢ 25.介護保険制度の運営主体である保険者は、市町村(東京都区部では特別区)である。
▢ 26.介護保険制度の第1号被保険者とは65歳以上の者、第2号被保険者とは40歳以上65歳未満の医療保険加入者をいう。
ー第1号被保険者は、区域内に住所を有する65歳以上の者、第2号被保険者は、区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者である。
▢ 27.介護保険のサービスを利用するためには、要介護認定もしくは要支援認定を受ける必要がある。
ー要介護認定を受けた者は介護給付、要支援認定を受けた者は予防給付を受けられる。
▢ 28.介護給付、予防給付は、それぞれ、国・都道府県が指定・監督を行う居宅・施設等サービスと、市町村が指定・監督を行う地域密着型サービスに分かれている。
ー居宅・施設等サービスは、都道府県・政令市・中核市が、地域密着型サービスは市町村が指定・監督を行う。
▢ 29.第1号被保険者の保険料は、市町村ごとに基準額が定められ、その基準額を中心に、所得状況に応じて数段階に設定されている。
▢ 30.第1号被保険者で、年金支給額が月額1万5,000円以上の人は、介護保険の保険料が老齢退職年金・障害年金・遺族年金から天引きされる。
ー年金から天引きされる徴収方法を特別徴収という。年金支給額が月額1万5,000円に満たない人は、普通徴収として個別に徴収される。
▢ 31.市町村は、3年を1期とする介護保険事業計画を策定し、3年ごとに見直しを行う。保険料の見直しも3年ごとに行われる。したがって、保険料は、所得が大きく変わらなければ、3年度を通じて同一である。
▢ 32.介護保険の財源は、50%が公費(税金)、50%が保険料で賄われている。公費の内訳は、市町村12.5%、都道府県12.5%、国25%である。
ー公費の内訳は、市町村12.5%、都道府県12.5%、国25%である。ただし、介護保険3施設等については、市町村12.5%、都道府県17.5%、国20%となった。
▢ 33.要介護認定の結果に対して異議がある場合は、都道府県に設置された介護保険審査会に不服申し立てをすることができる。
▢ 34.介護保険の第2号被保険者が、保険給付による介護サービスを受けられるのは、老化に伴う16種類の特定疾病が原因である場合に限られている。
ー第2号被保険者は、特定疾病が要件となる。第1号被保険者の場合は、要介護者や、要支援者になった場合に保険給付を受けることができる。
▢ 35.要介護認定には非該当でも要支援・要介護になるおそれのある人に対して、市町村は地域支援事業として介護予防事業を行っている(2017年4月までに、新しい総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)に移行した)。
介護保険制度の改正
▢ 36.2005年の介護保険法改正により、地域の保健・医療・福祉・介護の中核機関として、地域包括支援センターが設置された。
▢ 37.2005年の介護保険法改正により、介護支援専門員の資質の向上を図るため、報酬体系を要介護度別にし、1人当たりの標準担当件数を、50件から35件に引き下げ、 1件当たりの単価を引き上げた。
▢ 38.2005年の介護保険法改正で導入された地域密着型サービスの目玉として、小規模多機能型居宅介護が創設された。
ー小規模多機能型居宅介護は、「通い(通所)」を中心として、要介護者の状態や希望に応じて随時「訪問」や「泊まり」を組み合わせることにより、切れ目のないケアを提供するサービスの形態である。
▢ 39.2005年の介護保険法改正では、悪質事業者に対する規制のために、欠格事由に5年以内の指定取消履歴を加え、事業者を6年ごとに指定する指定更新制が導入された。
▢ 40.2005年の介護保険法改正では、介護支援専門員の資質の向上を図るため、秘密保持義務が課され、名義貸しの禁止、5年ごとの資格更新制などの規定が設けられた。
▢ 41.2005年の介護保険法改正では、一定年数以上の実務経験を有する介護支援専門員を対象とする「主任介護支援専門員」制度が新設された。
▢ 42.2011年の介護保険法改正では、24時間対応の定期巡回・随時対応サービスが創設された。一つの事業所で訪問介護と訪問看護を一体的に提供する「介護・看護一体型」と、事業所どうしが連携して提供する「介護・看護連携型」がある。
▢ 43.介護予防・日常生活支援総合事業は、介護予防や配食・見守り等のサービスを市町村の判断により総合的に提供するもので、2014年の制度改正により「新しい総合事業」に再編された。
▢ 44.2012年度から、たんの吸引等は、原則として、医師、看護職員のみが実施できる医療行為であったが、―定の研修を受けた介護職員等も実施できるようになった。
▢ 45.2012年度から、福祉用具貸与と特定福祉用具販売を行う事業者に対し、福祉用具サービス計画の作成が義務づけられ、介護支援専門員が行うこととされた。
▢ 46.2015年4月から、介護療養型医療施設への新規入所は、原則として要介護3以上の者となった。
▢ 47.2015年4月から、介護保険制度による住宅改修の対象に「便器の位置・向きの変更」が追加された。
ー2015年度から、洋式便器などへの便器の取り替えに「便器の位置・向きの変更」が加えられた。
▢ 48.2015(平成27)年8月から、介護保険の利用者のうち、一定以上の所得のある者については、サービス利用料の自己負担の割合が引き上げられた。
ー2015(平成27)年8月から、一定以上の所得のある利用者の自己負担が2割に引き上げられた。さらに、2018(平成30)年8月からは、特に所得の多い利用者については、3割に引き上げられた。
▢ 48.2017年の介護保険法改正により創設された介護医療院は、「日常的な医学管理」や「看取り・ターミナル」等の機能と、「生活施設」としての機能を兼ね備えた新たな介護保険施設である。
▢ 49.共生型サービスは、2017年の介護保険法改正により導入された。高齢者と障害児者が同一事業所でサービスを受けやすくするため、介護保険と障害福祉制度に位置づけられたサービスである。
▢ 50.2018年8月より、利用者負担が2割だった者のうち、現役並みの高い所得を有する者については、利用者の負担割合が3割に引き上げられた。
▢ 51.2017年の介護保険法改正により、各医療保険者が納付する介護納付金(第2号保険料)について、被用者保険間では「総報酬割」となった。
ー各医療保険者が納付する介護納付金(第2号保険料)は、それまでの「加入者割」から「総報酬割」となった。導入は2017年8月より段階的に行われ、2020年度から全面導入となった。
▢ 52.介護給付費の財源は公費と保険料がそれぞれ50%で、2018~2020年度における保険料の内訳は、第1号被保険者分相当が20%、第2号被保険者分相当が30%となっている。
ー介護給付費の財源は公費(50%)と保険料(50%)で賄われており、2018~2020年度における保険料の内訳は、第1号被保険者分相当が23%、第2号被保険者分相当が27%となっている。
▢ 53.2017年の介護保険法改正により、福祉用具貸与は、すべての商品の全国平均貸与価格の公表や、貸与価格の上限設定が行われることになった。
ー福祉用具貸与については、月平均100件以上の貸与件数がある商品について、国が全国平均貸与価格を公表し、貸与価格の上限設定を設定する。
▢ 54.福祉用具専門相談員に対しては、商品の特徴や貸与価格、当該商品の全国平均貸与価格を説明することが義務づけられている。
ー2017年の介護保険法改正により、福祉用具専門相談員に対して、商品の特徴や貸与価格、当該商品の全国平均貸与価格を説明し、機能や価格帯の異なる複数の商品を提示することが義務づけられた。
高齢者向けの住宅施策の変遷と概要
▢ 55.1980(昭和55)年に「公営住宅法」が改正され、高齢者の公営住宅への単身入居が認められた。
▢ 56.1989(平成元)年に策定された「ゴールドプラン」では、特別養護老人ホームなどの施設の整備や、ホームヘルパーの養成が目標に掲げられた。
ー1989(平成元)年に「ゴールドプラン」、1994(平成6)年に「新ゴールドプラン」、1999(平成11)年に「ゴールドプラン21」が策定された。
▢ 57.1995(平成7)年に策定された「長寿社会対応住宅設計指針」は、加齢などにより身体機能の低下や障害が生じた場合もそのまま住み続けられるよう、設計上配慮すべき事項をまとめたものである。
▢ 58.1991(平成3)年度から、新設するすべての公営住宅において、床段差の解消、共用階段への手すりの設置などが標準化された。
▢ 59.「住宅品確法」に基づく「住宅性能表示制度」の性能表示事項の一つである「高齢者等への配慮に関すること」においては、移動時の安全性や介助のしやすさが5段階の等級により評価される。
▢ 60.2006(平成18)年に制定・施行された「バリアフリー法」は、従来の「ハートビル法」と「交通バリアフリー法」を統合・拡充したものである。
▢ 61.2001(平成13)年に制定された「高齢者住まい法」の基本方針に基づいて「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」が示された。
▢ 62.サービス付き高齢者向け住宅は、単身や夫婦のみの高齢者世帯が安心して住まえる賃貸や利用権のある住宅で、国土交通省、厚生労働省の共管により、2011(平成23)年に登録制度が始まった。
▢ 63.2017(平成29)年に改正、施行された「住宅セーフティネット法」は、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進を図るものである。
ー改正法では、住宅確保要配慮者を、①低額所得者、②被災者(災害発生から3年)、③高齢者、④障害者、⑤18歳未満の子どもを養育している者、⑥その他外国人等のいずれかと定義している。
▢ 64.「住宅セーフティネット法」の改正により、住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅事業を行う場合、賃貸人が住宅確保要配慮者向けの賃貸住宅を都道府県、政令市、中核市に登録する。
▢ 65.高齢者は単身でも公営住宅に入居できる。なお、2012(平成24)年の「公営住宅法」改正により、同居親族要件は廃止されたが、実際に廃止するかどうかの判断は各自治体に任されている。
▢ 66.高齢者住宅整備資金貸付制度の対象となるのは、60歳以上の高齢者世帯と、高齢者と同居する世帯が対象となる。
▢ 67.「マイホーム借り上げ制度」は、50歳以上の人が所有する住宅を借り上げて子育て世帯などに転貸し、賃料を保証する制度である。
▢ 68.高齢者住宅改造費助成事業は、おおむね65歳以上の要介護・要支援の高齢者に対して、介護保険制度の給付対象となる住宅改修工事以外の工事に、一定の費用を助成する。
▢ 69.「シルバーハウジング・プロジェクト」により供給される高齢者向けの公的賃貸住宅では、生活援助員(LSA)による日常生活支援サービスを提供する。
ーバリアフリー化された公的賃貸住宅に生活援助員(LSA)が配置され、安否の確認、緊急時の対応、一時的な家事援助などのサービスが提供される。
▢ 70.有料老人ホームは、常時1人以上の高齢者を入居させ、(1)食事の提供、(2)介護の提供、(3)洗濯・掃除などの家事、(4)健康管理のいずれかのサービスを提供する高齢者向け居住施設である。
▢ 71.有料老人ホームの設置者は、入居の選択が適切に行われるための情報を都道府県知事に報告し、都道府県知事はそれを公表する。
ー2017年の「老人福祉法」の改正により、有料老人ホームの入居者保護の強化が図られた。また、福祉に関する法律等の違反があり、入居者保護の必要があるときは、設置者に事業の制限・停止を命じることができるとされた。
▢ 72.介護付有料老人ホーム(一般型特定施設入居者生活介護)では、入居者が介護を必要とするようになった場合は、ホームが提供する介護サービスを利用しながら生活を継続することができる。
▢ 73.健康型有料老人ホームでは、入居者が介護を必要とするようになった場合、契約を解除して退去しなければならない。
▢ 74.ケアハウスは軽費老人ホームの一種で、60歳以上で自炊ができない程度の身体機能の低下が認められる高齢者などが利用する老人福祉施設である。
▢ 75.認知症高齢者グループホームでは、認知症高齢者が5~9人で一つのユニットを構成し、介護サービスを受けながら生活する。
障害者の生活と住環境
▢ 76.身体障害者手帳に記された障害等級が1、2級の人は、重度身体障害者とされる。
▢ 77.障害者のうち在宅で生活している人は、障害者全体の約9割以上である。
ー障害者のうち在宅で生活している人は、約886万人で、障害者全体の9割以上(94.6%)を占めている(厚生労働省「平成30年版障害者白書)。
▢ 78.在宅の身体障害者手帳所持者のうち、障害等級1、2級の人が47.7%を占めている(厚生労働省「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」)。
▢ 79.在宅の身体障害者の約7割が、65歳以上の高齢者である。
ー身体障害者手帳を所持する在宅の身体障害者のうち、65歳以上の人が72.6%を占める(厚生労働省「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」)。
▢ 80.身体障害者で住宅改修を行った人が改修した場所で、最も多い改修場所はトイレで67.2%、次いで風呂の63.4%となっている(平成18年「身体障害児・者実態調査」)。
▢ 81.入院治療の必要がないにもかかわらず、本人や家族の生活上の都合により長期入院を続けている状態を社会的入院という。
▢ 82.「居宅訪問型児童発達支援」は、外出が著しく困難な重度の障害児の居宅を訪問して発達支援を行う新たなサービスである。
ー「障害者総合支援法」「児童福祉法」の一部改正により2018(平成30)年度より始まった「居宅訪問型児童発達支援」では、重症心身障害児の居宅を訪問し、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与等の支援を行う。
障害者福祉施策の概要
▢ 83.国連は、1981(昭和56)年を「国際障害者年」としノーマライゼーションの理念に基づいて障害者の「完全参加と平等」という目標を掲げた。
▢ 84.日本では、1993(平成5)年に、ノーマライゼーションの理念を導入した「障害者基本法」が制定された。
▢ 85.2013(平成25)年に施行された「障害者総合支援法」では、難病患者等が障害者の範囲に追加された。
▢ 86.「障害者総合支援法」には、発達障害者が精神障害者に含まれることが明記されている。
▢ 87.2018(平成30)年4月にスタートした障害福祉サービス等情報公表制度は、事業者に対して障害福祉サービスの内容等を都道府県知事へ報告することをを求め、都道府県知事が報告された内容を公表する仕組みである。
▢ 88.障害福祉サービスの確保等に関する計画である「障害福祉計画」は、3年ごとに策定され、「障害児福祉計画」と一体のものとして作成することができる。
ー国の基本指針に即し、市町村・都道府県は、「障害福祉計画」と「障害児福祉計画」を策定する。第5期障害福祉計画・第1期障害児福祉計画の策定期間は、2018~2020年度となっている。
▢ 89.「障害者基本計画」は「障害者基本法」の目的を達成するために5年ごとに策定されるもので、第4次計画では、目標値を含めた成果目標が掲げられた。
ー「障害者基本計画(第4次)」では、駅や空港など旅客施設のバリアフリー化率や、ノンステップバスの導入率などの目標値が盛り込まれた。策定期間は、2018~2022年度の5年間となっている。
障害者向けの住宅施策の変遷と概要
▢ 90.1980(昭和55)年に身体障害者の公営住宅への単身入居が認められたが、知的障害者、精神障害者の単身入居はまだ認められなかった。
ー知的障害者、精神障害者の単身入居が認められたのは2006(平成18)年である。
▢ 91.高齢者を対象とした「シルバーハウジング・プロジェクト」では、事業主体の長が特に必要と認める場合は、障害者世帯の入居も可能である。
▢ 92.建築物のバリアフリー化について定めた「ハートビル法」は「交通バリアフリー法」と統合され、「バリアフリー法」が制定された。
▢ 93.新「障害者基本計画」の後期5年間の施策を定めた「重点施策5か年計画」では、新設するすべての公的賃貸住宅をバリアフリー化することが目標とされた。
▢ 94.従来のケアホームとグループホームは、2014 (平成26)年の「障害者総合支援法」改正により、グループホームに一元化された。
ー一元化後のグループホームは障害支援区分にかかわらず利用することができ、①介護サービス包括型、②外部サービス利用型、③日中サービス支援型(2018年度創設)の3類型がある。
▢ 95.障害者住宅整備資金貸付制度の対象者には、実施主体により異なるが、おおむね身体障害者手帳1~4級、または療育手帳Aの交付を受けている者が対象で、所得制限はない。
▢ 96.「住宅セ-フティネット法」の定義する住宅確保要配慮者には、障害者も含まれる。
ー2017年に改正・施行された「住宅セーフティネット法」は、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進を図るものであり、住宅確保要配慮者には障害者も含まれている。
福祉住環境コーディネーターの役割
▢ 97.福祉住環境コーディネーターは、生活者である高齢者や障害者の視点に立って、生活全般にわたる問題点を抽出し、解決策を提案する。
▢ 98.専門職の条件の一つは、高度の教育・訓練をうけていることである。福祉住環境コーディネー検定試験2級に合格しただけでは、高度の教育・訓練を重ねてきたとは言い難く、さらなる研鑽が必要である。
▢ 99.専門職とは、倫理的知識に裏打ちされた技術でなければならない。
▢ 100.福祉住環境コーディネーターと相談者の関係は、相談の開始をもって始まり、終了をもって終わる契約関係である。
▢ 101.福祉住環境コーディネーターの役割は、住環境に関するニーズの発見から、関係者の意見調整、住環境整備をした後のフォローアップに至る一連の流れをコーディネートする重要な役割を持つ。
▢ 102.2003(平成15)年に「個人情報保護法」が制定され、個人情報の扱いにはより慎重を要するようになった。
ー個人情報とは、生存する個人に関する情報で、氏名、生年月日その他の記述等により個人を特定できるものをいう。
▢ 103.「改正個人情報保護法」では、個人情報の定義が見直され、個人識別符号、要配慮個人情報、匿名加工情報などの定義が示された。2017(平成29)年5月30日より全面施行されている。
▢ 104.座式生活から椅子式生活への変更、和式便器から洋式便器への取り替えなどといった生活様式の変更を提案することも、福祉住環境コーディネーターの役割の一つである。
ー福祉住環境コーディネーターには、高齢者や障害者の生活上の不便・不自由について本人と一緒に考え、改善策を出していくことが求められる。生活様式の変更もその一つである。
▢ 105.利用者の個人情報を知り、個人の生活と深くかかわることなどから、福祉住環境コーディネーターも倫理網領(「福祉住環境コーディネーターが遵守すべき項目」)を遵守すべき職種といえる。
▢ 106.福祉住環境コーディネーターがより円滑に仕事を進めていくうえで、社会的地位の確立は、充足すべき課題の一つである。
▢ 107.福祉住環境コーディネーターは、職能団体を持っている。
ー2002(平成14)年に福祉住環境コーディネーター協会が設立され、職能団体としての活動が可能になった。
▢ 108.簡単な住環境整備の場合であっても、福祉住環境コーディネーターが一人で対応することは望ましくない。
ー福祉住環境整備はの仕事は一人ではけっして果たせず、常にチームアプローチが必要でである。
▢ 109.福祉住環境コーディネーターの仕事においては、当事者への「説明と同意」なしに仕事を進めることは許されない。
▢ 110.福祉住環境コーディネーターは、強い人権意識を持つ必要がある。
ー福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障害者の自己決定を尊重し、その人権を守るという強い人権意識を持つことが必要である。
第2章 障害のとらえ方と自立支援のあり方
障害のとらえ方
▢ 1.国際連合が2006(平成18)年に採択した「障害者権利条約」では、障害者を、長期的な機能障害と環境による障壁との相合作用によって社会参加が困難になっている者として考えている。
▢ 2.「障害者基本法」の障害者を定義する条文には、「社会的障壁」という言葉がもちいられている。
ー2011(平成23)年の「障害者基本法」の改定により、「社会的障壁」という言葉が加えられ、従来の障害(者)観の転換が法的にも求められることになった。
▢ 3.ICIDHでは、障害を生物学的レベルの「機能・形態障害」、個人レベルの「能力障害」、社会レベルの「社会的不利」の3つの次元に分けている。
▢ 4.lCIDHは障害のとらえ方の流れが一方的であるという批判がなされ、改定の動きにつながった。
ーlCIDHの障害のとらえ方への批判を受けて、2001(平成13)年に国際生活機能分類(lCF)が承認・出版された。
▢ 5.ICFは、生活機能を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つに分類し、それらに問題が生じた状態を障害ととらえている。
ーlCFは、障害というマイナス面だけでなく「生活機能」というプラス面に注目し、その一部に問題が生じている状態を障害ととらえた。
▢ 6.わが国の医療保険制度では、ICFの考え方に基づく「リハビリテーション総合実施計画書」等の作成が診療報酬の算定条件になっている。
ー2003(平成15)年度から、介護保険制度ののリハビリテーション給付においても算定要件として導入された。
▢ 7.2011(平成23)年に「障害者基本法」が改正され、発達障害が精神障害の範囲に含まれることが明示された。
予防・リハビリテーション
▢ 8.定期的な健康診断等により疾患を早期発見し、早期に治療することで重度化を防ぐことを、二次予防という。
ー一次予防とは、生活習慣を改善し、健康の増進と疾患の予防に努めることである。
▢ 9.高齢者リハビリテーションの3つのモデルとは、脳卒中モデル、廃用症候群モデル、認知症高齢者モデルである。
▢ 10.高齢者リハビリテーションの脳卒中モデルとは、生活機能が急性に低下するタイプである。
ー脳卒中モデルは生活機能が急性に低下するタイプ、廃用症候群モデルは生活機能が徐々に低下するタイプである。
▢ 11.高齢者リハビリテーションの認知症高齢者モデルでは、環境の変化への対応が困難なので、生活の継続性や人間関係が維持される環境での介護が必要である。
▢ 12.高齢者リハビリテーションは、急性期(早期)、回復期、生活期(維持期)、終末期の各段階に沿って行われる。
▢ 13.高齢者リハビリテーションでは、生活機能の維持・改善と向上、予防介護をめざす、地域や在宅での生活期リハビリテーションが重要である。
▢ 14.高齢者リハビリテーションの究極の目標は、QOLの向上である。
地域包括ケアと地域リハビリテーション
▢ 15.地域ケアとは、地域で暮らす人々への生活支援一般をさす。
▢ 16.地域ケアの対象は、乳幼児から人生の終末期までのすべての人にわたり、ケアの内容も、保健、医療、介護、リハビリテーション、環境整備、まちづくり、防災の支援など、多岐にわたる。
▢ 17.厚生労働省が提唱する「地域包括ケアシステム」とは、市町村の中学校区程度のエリアごとに医療・福祉・リハビリテーションなどのサービスを一体的に提供するしくみである。
▢ 18.障害のある人と家族が、住み慣れたところで、その人らしい生活ができることを目指すリハビリーションを、地域リハビリテーションという。
ー地域リハビリテーションとは、障害のある子供・成人・高齢者とその家族が、住み慣れたところで、一生安全に、その人らしくいきいきとした生活ができるようにする活動をいう。
▢ 19.地域リハビリテーションは、保健・医療・福祉・介護および地域住民を含め生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織が、リハビリテーションの立場から協力し合って行う。
▢ 20.自立生活運動(IL運動)は1960年代後半にアメリカで始まり、1970年代に大きく発展し、1981(昭和56)年の国際障害者年を契機に日本にも大きな影響を与えた。
▢ 21.障害者の自立とは、障害者が必要とする支援を受けながら活発に社会参加し、充実した人生を送れるような社会を実現させることを意味する。
高齢者の身体的特性
▢ 22.80歳代の生理機能を30歳代と比較すると、肺で酸素を交換する働きは50%以下となるが、肺の働きなどの生理機能は、日常の働きの数倍の予備能力をもっているため、機能が半分に低下しても通常の生活をおくることができる。
▢ 23.70歳の高齢者の大動脈の血流の速さは、10歳の子どもの約2倍である。
ー加齢に伴う動脈硬化により、大動脈内の血流はだんだん速くなる。70歳の高齢者の大動脈の血流の速さは、10歳の子どもの約2倍である。
▢ 24.加齢に伴い、下肢の筋力や平衡感覚機能が低下するため、転倒しやすくなる。
ー高齢者は、下肢の筋力低下や平衡感覚機能の低下により、立位保持に際し体幹動揺が大きくなり、転倒しやすくなる。
▢ 25.老化現象には個人差がある。老化の進行が緩やかで、心身の機能低下が少ない状態を通常老化という。
ー老化現象が緩やかに進行する状態を通常老化といい、生活習慣や疾患の影響により、老化が急速に進行する状態を病的老化という。
▢ 26.高齢者に現れやすいさまざまな疾患や症状をまとめて、老年症候群と呼ぶ。
ー高齢者に現れやすい視力や聴力の低下、摂食・囃下障害、誤嚥性肺炎、排尿障害、円背、褥瘡などの疾患・症状をまとめて老年症候群と呼ぶ。
▢ 27.背中が丸い高齢者は歩く速さが遅いという傾向がある。
ー背中が丸い高齢者は、膝関節の伸びが悪く、歩幅が狭くなり、歩く速度が遅く、すり足で歩くなどの傾向がみられる。
▢ 28.高齢者に高頻度に現れる褥瘡は、からだの骨ばった部分が長時間圧迫され、血液の循環障害を起こして組織が壊死することにより生じる。
高齢者の心理と精神的特性
▢ 29.高齢者特有の心理のベースになる4つの喪失体験とは、知的機能の喪失、身体機能の喪失、社会的役割の喪失、配偶者や兄弟・友人の喪失である。
▢ 30.短期記憶は、何度も繰り返し思い浮かべることよって長期記憶として貯蔵される。
ー短期記憶は、そのままではすぐに忘れ去られてしまうが、何度も繰り返し思い浮かべると、長期記憶として貯蔵される。
▢ 31.外界から入ってきた情報を短期記憶として登録する能力、長期記憶として貯蔵する能力、貯蔵した記憶を検索して想起する能力のいずれもが、加齢とともに低下する。
▢ 32.記憶力の衰えは、大量の情報を与えて一定時間後に想起させる実験を行うと、想起能力は30歳代から10歳ごとにほとんど直線的に低下する。
▢ 33.流動性知能は20歳代をピークとして、それ以降は徐々に低下するが、結晶性知能は60歳頃まで上昇する。
ー経験の積み重ねによる知恵や賢さ、総合的な判断力を意味する結晶性知能は、60歳頃まで上昇し、その後も生涯にわたって維持される場合もある。
▢ 34.健常な高齢者にもみられる一時的な健忘状態は、認知症とは異なる。新しい記憶を忘れてしまうのは、一時的な健忘状態にもみられる特徴である。
▢ 45.認知症によるもの忘れでは、忘れているという自覚がなく、他人から指摘されても訂正できない。
障害をもった時期に起因した特性
▢ 46.先天的障害とは、胎児の段階および周産期(妊娠満22週から出生後満7日未満)に生じた障害のことである。
▢ 47.先天的障害であっても、出生時には明らかな障害がみられず、その後の成長過程で障害が顕在化する場合もある。
▢ 48.後天的障害とは、生まれた時点では何の障害も、障害の原因となる疾患ももたなかった人が、その後の人生の途上で障害をもつことをいう。
ー中途障害とも呼ばれる後天的障害は、すべての人のライフステージのどの段階においても生じる可能性がある。
▢ 49.身体的な発達と型的・精神的な面での発達は互いに影響し合うため、そのどちらかに障害が生じると、もう一方にも影響する可能性がある。
▢ 50.脳性麻痺による障害は、出生前、出生時、出生後の時期にかかわらず、さまざまな原因により障害が現れる。
▢ 51.成人期以降に障害をもった場合、人間関係や家族関係に起因した問題が生じることがある。
ー障害をもつ以前の人生で行ってきた役割を果たすことが難しくなるため、人間関係や家族関係に問題が生じることがある。
▢ 52.障害の程度や回復の見通しについては、本人が理解しやすいように配慮しながら正しい情報を伝え、そのうえで、障害を補いながら生活する方法を助言するべきである。
リハビリテーションの経過に伴う変化
▢ 53.急性期においては、生命の危機を回避することが最優先される。
ー急性期においては、生命の危機を回避することが最優先され、併せて傷害を引き起こした原因疾患の治療が行われる。
▢ 54.回復期においては、リハビリテーションの効果が目に見えないことへのいらだちや焦りなどの感情にとらわれやすい。
ー障害をもった事実は徐々に認識されるが、リハビリテーションによる回復が思うように進まないことへのいらだちや焦りなどの感情にとらわれやすく、心のケアが重要である。
▢ 55.生活期以降は、本人、家族ともに、障害をかかえながらの生活について、より冷静に考えられるようになっていることが多い。
▢ 56.生活期以降は、個人因子や環境因子の影響により、活動や社会参加レベルでの障害が顕在化する。
ー例えば、介助者への遠慮から自宅に閉じこもりがちになることがある。
▢ 57.視覚や聴覚などの感覚受容器の障害や言語障害がある場合は、コミュニケーションに支障をきたすことから外出や人との接触、社会参加に対して消極的になりやすい。
▢ 58.複数の障害を有することを重複障害という。
ー肢体不自由と知的障害、肢体不自由と言語障害などのように、複数の障害を有することを重複障害という。
▢ 59.1日のうちに心身の状態が変化することを日内変動という。
ー疾患や障害などによる心身の状態が1日のうちに変化することを日内変動といい、関節リウマチや認知症、うつ病などでみられる。
障害に対する態度
▢ 60.先天的障害をもつ人や、幼い時期に障害をもった人は、健常者としての経験が全くないか、少ないため、比較的自然に障害を受容していることが少なくない。
▢ 61.障害そのものや障害の内容が理解できていない状態のことを、病識の欠如という。
▢ 62.障害の受容は、家族の問題でもある。本人以上に家族が動揺してしまい、現実を直視できないケースもある。
▢ 63.障害の受容とは、あきらめというマイナスの感情を克服して、新たな価値観を求めて努力することである。
▢ 64.成長段階や成人後に突然障害をもった後天的障害の場合、障害の受容には困難を伴うことが多い。受容に至る過程で混乱や葛藤を繰り返すことが多い。
▢ 65.突然障害をもった場合、本人は非常にショックを受けているので、なるべく周囲の人間が、以前と変わりない自然な態度で接することが、本人の不安や混乱を鎮めることにつながる。
▢ 66.自己概念の形成以後に障害をもった人は、障害をもったこと自体が理解できない場合や、それを認めない場合がある。
在宅生活を支える介護の基本姿勢(1)
▢ 67.在宅介護において第一に優先すべきことがらは、本人と家族の安全で快適な暮らしを実現することである。
▢ 68.在宅介護においては、快適な暮らしを実現するうえでは、プライバシーを確保することも重要である。
▢ 69.介護保険制度の導入以降、在宅介護に関する情報やサービスが急速に拡大し、情報の収集力が足りないことにより的確なサポートを受けることが難しくなることや、サービスの多様化や情報の氾濫が混乱を招くこともある。
▢ 70.福祉住環境整備においては、従来の環境が本人や家族にとってどのような意味を持っていたのか、十分に理解し尊重する必要がある。
▢ 71.その人らしいADLを実現するには、ADLの各動作を一人で行えることにこだわる必要はなく、うまく人の手を借りたり、道具を用いたりして一連の生活行為を成立させ、それを維持できるようにすることが重要である。
▢ 72.介護を必要とする人が社会参加し、社会に貢献できるようにすることが、在宅介護による自立支援の最終目的である。
▢ 73.福祉住環境整備を行ったら、使用状況の評価を行うことが必要である。
ー使用状況の評価を行い、福祉住環境整備後の環境を上手に活用できていない場合は、その要因を検討することが必要である。
在宅生活を支える介護の基本姿勢(2)
▢ 74.季節や1日の時間帯などによって自立度が変化する場合は、不調のときを基本に自立に向けた福祉住環境整備を検討することが望ましい。
▢ 75.つえや歩行器などを使用して屋外を単独歩行できる人は、活動の水準が高い人ほど、転倒などの危険性は高くなる。
▢ 76.屋内ではつえ、下肢装具、歩行器、手すりなどを使用して歩行できる人の場合、 基本的な生活空間であるトイレや浴室、寝室などは、なるべく玄関と同じ階に配置する。
▢ 77.屋内で車椅子を使用する人の場合、ベッドの高さは車椅子の座面の高さにそろえるよう検討する。
▢ 78.屋内で車椅子を使用する人の場合、車椅子を方向転換させるためには、より広いスペースが必要になる。
▢ 79.座位移動が可能で、車椅子を併用する人の場合、壁スイッチやドアノブ、インターホンの高さなどに配慮を要する。
ー家族と共用するのか、専用設備とするのかの判断が必要となる。
▢ 80.常時臥位の人の場合、移動用リフトの使用を検討する。
ー常臥位の人の場合、長時間同じ姿勢のままでいることを防ぐため、体位変換がしやすい福祉用具を使用するとよい。移動用リフトや、高さ調節機能付きの特殊寝台など、介護の負担を軽減する福祉用具の導入を検討する。
第3章 疾患別・障害別にみた不便・不自由と福祉住環境整備の考え方
高齢者に多い疾患
▢ 1.60歳以上の高齢者の約6割が、「ほぼ毎日」から「月1回くらい」医療サービスを受けている(2015年度「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」による)。
▢ 2.1人当たりの平均年間医療費は、45~64歳は28.0万円、65歳以上は72.7万円(うち75歳以上は91.0万円)と高齢になるほど高額になっている(2016年度「国民医療費の概況」による)。
▢ 3.高齢者の死亡原因の第1位は悪性新生物(がん)で、第2位が心疾患、第3位が老衰となっている。(2017年「人口動態統計」による)。
▢ 4.高齢者によくみられる疾患は、多くの場合、病因が静かに潜行して発病する。
ー不適切な生活習慣の積み重ねや、加齢による身体機能の低下により、病因が静かに潜行して発病に至ることが多い。
▢ 5.自分は健康だと自覚している高齢者でも、自治体などが実施する特定健康診査を積極的に受けるベきである。
ー潜行する病因の早期発見、未病対策のために、特定健康診査や、介護予防事業として実施される生活機能評価などを積極的に受けることが望ましい。
▢ 6.身体機能が低下しがちな高齢患者や要介護高齢者へは、身体活動、栄養摂取、睡眠の3要素である。それらとともに、どこでどのように暮らすかという住環境が重要である。
▢ 7.住環境の整備は住環境は、要介護状態の高齢者が受けられる医療やケアの内容にも影響を与える。
脳血管障害
▢ 8.脳血管障害(脳卒中)の代表的なものに、脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞があり、脳出血とクモ膜下出血は脳の血管が破れることによって、脳梗塞は脳の血管が詰まることによって起こる。
▢ 9.脳血管障害の中でも最も多いのは、脳血管障害の7~8割を占める脳梗塞である。
▢ 10.脳血管障害は、長い間、わが国の死因別死亡率の第1位を占めていたが、近年は、救命処置と治療薬の進歩により脳血管障害による死亡率は低下し、死因別死亡率では第3位になっている。しかし、高齢者が要介護となる原因の第2位である。
▢ 11.クモ膜下出血は、クモ膜下腔に出血を生じ、突然激しい頭痛に襲われる。
ー頭蓋内の出血には脳出血、クモ膜下出血がある。クモ膜下出血はクモ膜と軟膜の間のクモ膜下腔に出血し、激しい頭痛や嘔吐がある。
▢ 12.脳梗塞や脳出血で、病変を起こした脳の部位とは反対側の半身に麻痺が現れることを片麻痺と呼ぶ。
ー片麻痺に加え、手足のしびれや感覚が鈍くなる感覚障害、意識がもうろうとする意識障害などが現れる。
▢ 13.脳出血の治療では、血圧を下げる降圧薬や、脳のむくみを防ぐ抗浮腫薬による薬物療法とともに、血腫を除去する手術療法も検討される。
▢ 14.急性期とは、脳血管障害が発症して2~4週間までをさすことが多い。以前は、急性期は絶対安静を保つことが原則とされていたが、最近では早期から治療が開始される。
▢ 15.脳出血や脳梗塞では、損傷を受けた脳の部位によって症状が異なる。後頭葉に障害を生じると、視力が低下したり、失明したりする。
▢ 16.脳血管障害によるADLの低下に対応した住環境整備は、本人の移動レベルに対応して検討する。片麻痺の場合、日常の動作を可能な限り片手で行えるようにするための住環境整備が必要である。歩行時に下肢装具を装着する場合は、入浴時には装具を外すので、浴室内の住環境整備を検討する。
▢ 17.屋内歩行レベルとは、屋内でつえ歩行か伝い歩き、または、介助歩行などで移動できるレベルをさす。
ー屋内歩行レベルの場合、テーブル、椅子、ベッドを導入して洋式の生活にし、起き上がり動作や移動の不自由さに対応した住環境整備を行う。
▢ 18.車椅子レベルとは、外出時は車椅子を使用し、屋内でも車椅子を使用するため、車椅子の走行に適するような住環境整備が必要になる。
▢ 19.車椅子レベルでの住環境整備では、特殊寝台(介護用ベッド)やリフトの導入を考慮する。
ー特殊寝台(介護用ベッド)やリフトの導入により、起き上がりや移乗動作などに関して、介助の負担の軽減を図ることができる。
▢ 20.寝たきりレベルはADLのほとんどに対して介助が必要になるため、多岐にわたっての住環境整備や介護サービスの利用を検討する。
ーポータブルトイレや車椅子への移乗には、リフトの導入を検討し、訪問入浴サービスの利用も考慮するとよい。
▢ 21.寝たきリレベルでは、通所介護や緊急入院などで外出する場合に備えて、車椅子やストレッチャーが出入りできるよう、段差解消機やスロープなどを設置する必要がある。
廃用症候群
▢ 22.長期にわたる臥床やギプスによる固定などにより安静状態が続き、心身の機能にさまざまな病的な症状や病気が現れることを、廃用症候群という。
ー全身やからだの一部を使わない状態が長く続いたことにより、二次障害として心身の機能に病的な症状や病気が現れることを廃用症候群という。
▢ 23.廃用症候群の症状は、筋肉の萎縮による筋力低下、骨粗鬆症、関節拘縮などに加え、心肺機能や消化機能、腎機能、脳・血管・神経・皮膚など、身体機能全般に機能の低下がみられる。
▢ 24.廃用症候群を予防するためには、過度の安静臥床を避け、なるべく頻繁に身体を動かすことが重要である。
ー関節や筋肉の廃用症候群を予防するには、運動を中心としたリハビリテーションが効果的である。
▢ 25.過度の安静により下肢の静脈に血栓ができるのが深部静脈血栓症である。その血栓が肺に流れ、肺の血管を詰まらせると肺塞栓になる。
▢ 26.骨粗鬆症の予防において重要なのは、運動療法、食事療法、日光浴の3つである。
▢ 27.廃用症候群では、身体機能の低下とともに、意欲の低下、うつ傾向など、精神機能の低下が現れることもある。
▢ 28.廃用症候群は、全身や身体の一部を使わない状態が続くことによって生じるが、廃用症候群が進むと、回復には時間がかかり、回復が不十分となることが多い。したがって、予防に努めること、進行させないことが重要である。
骨折
▢ 29.骨に骨粗鬆症やがんなどの病変があり、骨がもろくなっていると、小さな外力でも骨折してしまう。そのような骨折を、病的骨折という。
▢ 30.疲労骨折は、骨の同じ部分に繰り返し力が加わり、スポーツ選手などに多い。
▢ 31.皮下骨折(単純骨折)は、開放骨折(複雑骨折)に比べ治癒が早い。
ー骨折部の皮膚に損傷がない皮下骨折(単純骨折)に比べて、皮膚が破れ、骨折端が露出している開放骨折(複雑骨折)は感染のおそれもあり、治癒に時間がかかる傾向がある。
▢ 32.骨折の治療後は、廃用症候群を予防するため、できるだけ早期にリハビリテーションを開始する。
▢ 33.骨折の治療は、整復、固定、リハビリテーションという段階を経て行われる。
▢ 34.高齢者によくみられる橈骨・尺骨遠位端骨折の治療では、転倒時に手をついたときに生じる手首の骨折で、ギプスによる固定が行われることが多い。
▢ 35.高齢者の骨折の原因の多くは転倒によるものである。福祉住環境整備のアセスメントの際には、転倒の原因になるものがないか細かくチェックする。
ー座布団の角、絨毯のめくれ、電気製品のコードなどが高齢者が足をひっかけて転倒する原因となる。
認知症
▢ 36.認知症は、正常な水準に発達した知的機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態である。記憶障害があっても生活に支障のない状態は、軽度認知機能障害と呼ばれる。
▢ 37.認知症では、約半数を占めるのがアルツハイマー型認知症で、次いでレビー小体型認知症、脳血管性認知症である。
▢ 38.認知症では、中核症状は記憶障害、見当識障害、判断力の障害、実行機能障害などで、妄想、抑うつ状態、徘徊、暴言などは、中核症状を背景として生じる周辺症状である。
▢ 39.認知症の中核症状は認知症に共通してみられる症状であるが、周辺症状の現れ方には個人差があり、ほとんど現れない場合もある。
▢ 40.認知症の原因疾患は100以上あるが、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症などに起因する認知症は、それらの原因疾患を治療することにより治まることが多い。
▢ 41.認知症高齢者は新しいことを覚えるのが苦手だが、昔のことは比較的よく記憶にとどめている場合が多い。
▢ 42.認知症高齢者には、日常生活の中で、さまざまな活動を通して知的刺激を与える環境を用意することが望ましい。
ー認知症対応のデイケアやグループホームなどでは、さまざまな活動を通して知的刺激を与えるリハビリテーションのプログラムが用意されている。
▢ 43.認知症では、まず買い物、調理など複雑な行動が必要とされるIADLに困難が生じ、進行するに従い、食事、入浴、排泄といったADLに支障をきたす。
▢ 44.認知症高齢者の住環境整備では、安全面に配慮して、急激な環境の変化に適応できないため、家具の配置を大きく変更することは望ましくない。
▢ 45.認知症による徘徊への対応では、外出したいという本人の意思を尊重することも必要である。
ー本人の意思を尊重し、介護者等が安全を確認しながらついて歩くこともときには必要である。近所の苦情対策や交番への協力要請、迷子札の使用なども検討する。
▢ 46.壁や床のしみは幻覚を生じさせる原因になるので、取り除く。花柄などの模様のある壁紙は避け、無地のものにする。
▢ 47.室内の物が整理されていないと、しまい忘れのもとになり、被害妄想を誘発するので、一気に片付けるとさらに混乱するので、たまらないように少しずつ片付ける。
▢ 48.認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)は7つの柱に沿って認知症施策を推進するもので、その基本的な考え方は介護保険法にも明記されている。施策ごとの具体的な目標設定年は、2020年度末等とされている。
▢ 49.認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の改訂により数値目標の変更が行われ、「認知症サポーターの人数(累計)」の目標人数については、2020年度末に1200万人と設定された。
関節リウマチ
▢ 50.関節リウマチは関節の滑膜に炎症を起こす自己免疫疾患である。好発年齢は30~50歳代で、女性に多い自己免疫疾患である。
▢ 51.関節リウマチの代表的な症状は関節の腫れや痛みで、多くの場合、症状は身体の左右対称の関節に現れる。
▢ 52.関節リウマチでは、関節症状だけでなく、疲労感、微熱、食欲不振、貧血などの全身症状が現れる。肘や後頭部などの皮下に、リウトマイド結節という、こぶのような硬いしこりを生じることもある。
▢ 53.関節リウマチは、動かさないでいると筋力が低下し、関節可動域が狭まるため、適度な運動を伴うリハビリテーションが必要である。
▢ 54.関節リウマチの患者は、関節の痛みや可動域の制限のため、すり足になり、わずかな段差につまずいて転倒することがある。
▢ 55.手指が痛んで重い物を持てないなど、日常生活に支障が生じた場合は、自助具の利用を検討するとよい。
ー物を引き寄せたり引っかけたりするための、長柄の先にフックのついたリーチャー、靴下をはくときに用いるストッキングエイド、握りやすいスプーンなどの自助具を活用して、日常生活の不便さを解消することができる。
▢ 56.関節リウマチによる関節の痛みは、寒さや高い湿度により悪化するため、暖房設備や日当たりなどの室内環境を整備する必要がある。
パーキンソン病
▢ 57.パーキンソン病は、脳内のドパミンの不足により起こる神経疾患である。
▢ 58.パーキンソン病は、高齢期に発症することが多いので、介護者も高齢者の老老介護が多くなる。
▢ 59.パーキンソン病の四徴とは、振戦、筋固縮、無動・寡動、姿勢反射障害・歩行障害である。付随症状として、立ちくらみ、便秘、嚥下障害、認知障害やうつなどが現れることがある。
▢ 60.パーキンソン病の代表的な症状である振戦は、片側の上肢から発症し、続いて同じ側の下肢、反対側の上肢、下肢の順に進むことが多い。
▢ 61.パーキンソン病による歩行障害の症状の一つに、歩き始めの1歩目がなかなか踏み出せないすくみ足がある。パーキンソン病による歩行障害の症状は、すくみ足、小刻み歩行、前方突進歩行などである。
▢ 62.「ホーン・ヤールの重症度分類」の5段階のうち、ステージⅠ~Ⅲの時期には、動作能力の維持や向上を目的としたリハビリテーションを行う。
ーステージⅠは片側のみ、ステージⅡは両側性または体幹の障害で、平衡障害はない。ステージⅢでは姿勢反射障害の初期徴候がみられる。
▢ 63.パーキンソン病のステージⅢは、身体機能は軽度から中等度に低下するものの、仕事によっては継続することも可能であり、日常生活では介助を必要としない状態である。ステージⅣは、日常生活の一部に介助を必要とする状態であり、ステージVは、全面的な介助を必要とする状態である。
▢ 64.パーキンソン病の症状には、1日の中で良い状態と悪い状態を繰り返す日内変動がみられることが多い。
ーパーキンソン病の症状には、日内変動や週内変動がみられることが多く、介護の要否を見極めることを難しくしている。
▢ 65.パーキンソン病には歩行障害があるが、閉じこもりがちになると廃用症候群に陥るため、歩行障害がみられる場合であっても、なるべく外出の機会をもつことが大切である。
▢ 66.パーキンソン病の患者は、手足を使う動作などが困難になるが、声が咄嵯に出てこない「声のすくみ現象」が起こったり、早口になったりして、コミュニケーションに困難を伴うことがある。
▢ 67.パーキンソン病による姿勢反射障害では、初期症状として、歩行中に方向転換を行う時にバランスを崩すことがあげられる。
▢ 68.すくみ足が起きる場合は、vvcc床にカラーテープなどの目印をつけ、踏み出しの動作を行いやすいように工夫する。介助バー付きのつえを使用する方法もある。
▢ 69.パーキンソン病患者の住環境整備では、屋内での転倒防止と、夜間の排泄手段の改善が特に重要な課題となる。
▢ 70.トイレには便器からの立ち上がり動作が不安定になるため、両側に手すりを取り付けることが望ましい。立ち上がり動作や、ズボン・下着の上げ下げの動作の補助に使用するとよい。また、将来の介助も考慮する場合は、片側の手すりを可動式にしておくとよい。
糖尿病
▢ 71.わが国において糖尿病が強く疑われる人は約1,000万人、糖尿病の可能性が否定できない人は約1,000万人、合わせて約2,000万人と推定されている。(2016(平成28)年の国民健康・栄養調査)
▢ 72.食事をすると血糖値が上昇するが、通常は膵臓から分泌されるインスリンの作用により上昇が抑えられ、血糖値は一定に保たれる。
▢ 73.1型糖尿病は、インスリンを分泌する細胞が破壊され、インスリンの絶対量が不足する。
▢ 74.2型糖尿病は、インスリンの分泌量が必要量より少ないか、作用が不十分であるために高血糖になる。
▢ 75.日本人の場合、2型糖尿病が、全糖尿病の約95%を占める。
▢ 76.糖尿病の初期には、自覚症状はほとんどみられない。高血糖状態が続くと、口渇、多飲、多尿の症状が現れる。
▢ 77.糖尿病の3大合併症とは、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、糖尿病腎症である。
▢ 78.糖尿病の治療は、食事療法と薬物療法により血糖値をコントロールすることが中心となる。
心筋梗塞
▢ 79.冠動脈のいずれかが細くなったり、詰まったりして心筋に必要な血液を供給できなくなった状態を、虚血性心疾患という。心筋梗塞が、その代表的なものである。
▢ 80.心筋梗塞は、冠動脈の血流が途絶えて心筋が酸素・栄養不足になって、壊死する病気である。
ー狭心症は、血流が一時的に減少、または途絶えた状態で、心筋は壊死しない。
▢ 81.心筋梗塞による激しい胸痛は、30分以上の激しい胸痛と圧迫感がある。
▢ 82.心筋梗塞の治療法として、冠動脈の狭窄部分をまたぐような形で、体内の他の血管を用いてバイパスを通す手術法がある。
ー心筋梗塞の治療には、バイパス手術のほか、カテーテルにより冠動脈を拡大する治療(バルーン療法、ステント療法)、薬物療法などがある。
▢ 83.心筋梗塞の再発を防ぐには、動脈硬化を抑える青魚や、野菜を中心とした低コレステロール食をとるようにする。喫煙や過度の飲酒を避ける。
▢ 84.心筋梗塞の回復期リハビリテーションでは運動療法が中心となる。運動強度が低すぎるとリハビリテーションとしての効果が望めず、高すぎると危険性が増すので、適度な運動強度の設定が必要となる。
▢ 85.心臓に$x負担をかけないようにするためには、住宅内に大きな温度差が生じないように配慮する必要がある。特に、浴室から老化、寝室からトイレなどの移動の際に、大きな温度差が生じないように配慮する。
肢体不自由/脊髄損傷
▢ 86.肢体不自由とは、上肢、下肢ないし体幹に永続的な運動機能障害があり、日常生活に不自由をきたしている状態で、脳や脊髄など中枢神経の障害が原因となる場合が多い。
▢ 87.肢体不自由が中枢神経の障害に起因する場合、感覚障害、高次脳機能障害、膀胱・直腸機能障害、自律神経機能障害などの障害を伴うことが多い。
▢ 88.脊髄損傷では、脊髄が高い位置で損傷されるほど、障害の程度が重くなる。
▢ 89.脊髄損傷に至る受傷原因としては、交通事故と高所からの落下が多い。転倒、打撲・下敷き、スポーツ外傷などがそれに続く。
▢ 90.脊髄損傷による麻痺のレベルで「T1レベル」とは、第1胸髄までの機能が残存じている状態である。上肢は正常で、車椅子でのADLが自立している。
▢ 91.脊髄が完全に切断された完全麻痺の場合、麻痺した機能が回復する可能性は極めて少ない。脊髄が部分的に切断された不全麻痺の場合は、リハビリテーションにより機能の改善がみられることがある。
▢ 92.脊椎の骨に損傷がなくとも、脊髄損傷に至ることがある。脊髄損傷は、脊椎の骨折や脱臼により脊髄が圧迫・挫滅されて起こることのほかに、脊椎の骨に損傷がなくても、脊柱管狭窄症などにより起こる場合もある。
▢ 93.頸髄損傷のC1~C3レベルでは、上肢、下肢、体幹のすべてが麻痺し、ADLは全介助となる。自発呼吸が不可能で、人工呼吸器の使用が必要になる。C4では自発呼吸が可能である。
▢ 94.C5レベルより高位の頸髄損傷の場合は、環境制御装置の導入を検討する。呼気スイッチや音声スイッチなどの入力方法を持つ環境制御装置を導入することにより、テレビ、エアコン、特殊寝台などを操作することができるようになる。
▢ 95.頸髄損傷のC5、C6レベルでは、自助具を使うことにより、食事、書字などの動作が自立する。C6レベルでは、上半身の更衣も可能である。
▢ 96.頸髄損傷のC8レベルおよび胸髄損傷では、上肢を正常に動かすことができるので、車椅子でのADLが自立する。
▢ 97.C7レベルではプッシュアップが可能で、起き上がりや寝返りの動作が自立する。プッシュアップはC6レベルでもわずかに可能である。
▢ 98.骨髄損傷では、両上肢は正常である。
▢ 99.C7レベルでは、改造自動車の運転が可能である。C6レベルでも、一部の人は運転できる。
▢ 100.脊椎の圧迫骨折や粉砕骨折が原因で脊髄損傷に至った場合は、8~12週間、コルセットで脊椎を固定する。
▢ 101.脊髄や胸髄の損傷では、運動障害に加え、膀胱機能障害や直腸機能障害が生じる。温冷覚、触覚、痛覚などの感覚障害があり、身体を傷つけたり、長時間皮膚を圧迫して褥瘡をつくったり、入浴時にやけどをしたりするおそれがある。
▢ 102感覚障害がある場合、身体をぶつけそうな所にクッション材をつける、角を丸くするなどの工夫をする。
ー特に、ベッドから車椅子への移乗動作や、浴槽ヘの出入りのときに身体をぶつけやすいので注意する。
▢ 103.車椅子に長時間座っている場合は、最低でも1時間に1度はプッシュアップするか、身体を側方に傾けるなどして、坐骨部への圧迫を除き、褥瘡を予防する。
▢ 104.温覚麻痺がある場合は、浴室には温度調節機能付きの給湯器やサーモスタット付きの水栓金具を設置し、熱湯でのやけどを防ぐ。
▢ 105.直腸機能障害では、多くの場合、正常な便意と排便コントロール機能を失い、便秘傾向になるため、緩下剤、座薬、浣腸などを使用する。
▢ 106.直腸機能障害があると、 トイレでの排便が可能であっても、排便に長時間を要することがある。
ー排便に長時間を要する場合は、 トイレの冷暖房や、便器の種類の選択、クッション性のある便座の使用などに配慮する。
肢体不自由/進行性疾患
▢ 107.進行性疾患とは、筋ジストロフィーや脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、運動機能が徐々に(進行的に)障害される疾患をいう。
▢ 108.筋ジストロフィーは、遺伝形式などによりさまざまな病型に分類されるが、わが国で最も多いのは、1~3歳ころ、主に男児に発症するデュシェンヌ型筋ジストロフィーである。
▢ 109.デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状の一つである腹を前に突き出し、腰を大きく揺らすようにして歩く動揺性歩行は、小学校入学前後に現れる。自分のももや膝に手をついて立ち上がる登攀性起立は、小学校低学年から中学年にかけて多くなる。
▢ 110.脊髄小脳変性症は、脊髄から小脳にかけての神経細胞が変性、萎縮して生じる進行性疾患で、運動失調と失調性構音障害を特徴とする。
ー運動失調、失調性構音障害のほか、発症後2~5年のうちに固縮・無動などのパーキンソン病に似た症状を生じることが多い。さらに進行すると発声・嚥下困難、尿失禁、起立性低血圧などを伴う。
▢ 111.脊髄小脳変性症で最初に現れる症状は、歩行中のふらつきである。また、失調性構音障害や、上肢の運動失調なども現れる。
▢ 112.筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンの変性による進行性疾患で、男性の罹患数は女性の1.5~2倍であり、40歳代以降に多くみられる。
▢ 113.筋萎縮性側索硬化症(ALS)は非常に進行が速く、2~4年で全身の筋力が低下する。呼吸筋麻痺に至ると人工呼吸器が必要になる。誤嚥性肺炎による死亡例も多い。
▢ 114.デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、小学校入学前後から住環境整備が必要になり、進行とともにその必要性が増してくる。
ー小学校入学前後になると下肢機能が低下し、動揺性歩行が現れるため、階段には手すりを設置し、段差を解消する。
▢ 115.デュシェンヌ型筋ジストロフィーの進行により歩行能力が低下した場合、和式生活では座位移動、洋式生活では車椅子移動を行う。
ー和式生活では座位移動、洋式生活では車椅子移動を行うようになるので、それぞれに適した住環境整備をする必要がある。
▢ 116.デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、中学校の時期は、車椅子や便器への移乗、浴槽への出入りなどに介助が必要になるので、リフトの導入を検討する。入浴は全介助となるので、訪問入浴サービスの利用を検討する。
▢ 117.脊髄小脳変性症は、運動機能障害が慢性的に進行し、移動能力が日常生活を規定することが多い。移動能力に合わせた福祉住環境整備が必要である。
▢ 118.脊髄小脳変性症の歩行不安定期は、歩行不安定期は屋内の一部で歩行車を使い、屋外では車椅子を使用する。
▢ 119.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行により構音障害が現れた場合には、コミュニケーションを図るための福祉用具の活用を検討する。パソコンや携帯用会話補助装置などを活用する。
▢ 120.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の初期には、ADLが比較的自立し、住環境整備の必要性は低い。筋力が低下する中期からは、上下肢装具や自助具などの活用、室内の段差の解消や手すりの設置などの住環境整備を始める。
肢体不自由/脳性麻痺
▢ 121.脳性麻痺は脳の非進行性病変に基づく永続的な運動、姿勢の異常であり、進行性のものや一時性のものは含まれない。
▢ 122.脳性麻痺の主な原因は、妊娠中では、胎内感染、妊娠中毒症、脳形成障害、出産時では新生児仮死、頭蓋内出血、出生後では頭部外傷、髄膜炎、脳炎などである。このほか、妊娠中では胎盤機能不全、出産時では胎盤剥離などがあげられる。
▢ 123.脳性麻痺には痙直型、不随意運動型(アテトーゼ型)、失調型があり、いずれも早期にリハビリテーションを開始するのがよい。早期の機能訓練や指導でADLの向上をめざすことができる。
▢ 124.脳性麻痺で最も多いのが痙直型で、筋肉が硬直して動かなくなり、運動が困難になる。
ー不随意運動型(アテトーゼ型(ジスキネティック型)脳性麻痺)は、手足や首が自分の意思と関係なく動き出し、制御できなくなる。
▢ 125.対麻痺は両下肢の麻痺である。四肢のうちの一つに麻痺があるのが単肢麻痺、身体の片側に麻痺があるのが片麻痺である。
▢ 126.脳性麻痺には、運動障害に加えて、知的障害、視覚障害、聴覚障害、構音障害などが生じることが多い。
▢ 127.脳性麻痺の治療の基本は、機能訓練・指導によるリハビリテーションで、脳性麻痺そのものは治せないが、早期に開始することで発達の促進が期待できる。
▢ 128.脳性麻痺の場合、年齢層によって住環境整備のニーズが異なる。
ー幼児期から中高年までの各年齢層によって生活上の問題点が異なるため、それぞれの時期に合わせた住環境整備が必要になる。
▢ 129.脳性麻痺の幼児期は、床や畳の上での生活が中心になる。
ー幼児期は、はいはい、お座りなどの機能訓練を行うため、床や畳の上での生活が中心になる。
▢ 130.脳性麻痺の幼児期には、車椅子の使用を考慮する。
ー屋内の移動に車椅子を使用する場合は、床はフローリングにし、段差を解消する。座位を保持できない場合も車椅子を使用する。通園、通院、通所などの外出時に備えた住環境整備も必要になる。
▢ 131.脳性麻痺の学齢期は、学校では車椅子の生活になることが多いが、自宅では、座位移動を行う場合と、車椅子移動を行う場合、両方を使い分ける場合があり、それぞれに対応した住環境整備が必要である。
▢ 132.脳性麻痺の青年期になると、自立意識の高まりや家族への配慮などから、本人が家事を行う場合もある。本人が家事を行う場合は、それに対応した住環境整備が必要になる。
▢ 133.脳性麻痺患者の中高年期は、加齢による身体機能の低下を考慮した住環境整備の見直しを図る。それまで歩行ができていた人も、つえや車椅子が必要になるなどの変化がみられるため、住環境整備を見直す時期である。
▢ 134.脳性麻痺により歩くことができない場合は、本人の運動能力の程度に応じて、首のすわり、寝返り、座位の保持、手膝這い保持、手膝這い移動、立位保持と起立という段階的な訓練を、能力に応じて進めていくことが望ましい。
肢体不自由/切断
▢ 135.切断とは、四肢の一部もしくは全部が切り離された状態のことである。ただし、関節の部分で切り離された場合は離断と呼ぶ。
▢ 136.上肢切断は、業務上の事故や交通事故などの外傷によるものが多く、切断部位は、指切断が約82%と最も多く、前腕切断が8%、上腕切断が6%である。
▢ 137.下肢切断の原因では、糖尿病や動脈硬化症による末梢循環障害が60%以上を占める。切断部位は、下腿切断が約50%、大腿切断が約37%、サイム(足首)切断および足部切断が約6%であり、下腿切断が最も多い。
▢ 138.切断術後は、断端にギプスもしくは弾性包帯を巻いて、義肢の装着に備えた断端管理を行う。
▢ 139.下肢切断の中で最も高い位置での切断は、股関節離断である。片側股関節離断の場合、通常、股義足を装着する。
▢ 140.吸着式ソケットを使用した大腿義足は、差し込み式の大腿義足よりも歩行が安定する。
▢ 141.片側上肢切断の場合、義手は、健側の上肢でADLが自立することが多く、機能を求めるよりも装飾的な意味で使用されることが多い。
▢ 142.片側股関節離断で、股義足を使用して歩行する場合、立位では靴の着脱ができないため、玄関にベンチや椅子を置き、手すりを設置する。
▢ 143.片側股関節離断で義足を脱いだ場合は、両松葉づえ、もしくは車椅子を用いて屋内を移動する。車椅子の場合は、廊下の有効幅員を十分に確保する必要がある。
▢ 144.両側大腿切断の人が屋内を車椅子で移動する場合、切断者用車椅子を用いる。自走用標準形車椅子のフットサポート、レッグサポートなどを外し、転倒防止のため駆動輪の車軸を後方にずらした切断者用車椅子を使用する。
▢ 145.片側大腿切断や膝関節離断の場合、屋内では義足を装着せず、両松葉づえで移動することもある。
ー入浴後などに再度義足を装着するのは手間がかかるため、両松葉づえで移動することが多い。両方の移動方法に対応した住環境整備が必要になる。
▢ 146.両側大腿切断でも、義足を用いて歩行できる場合がある。両側ともに長断端(大腿の下3分の1程度の切断)で、体力のある若年者の場合は、実用的な義足歩行が可能である。
▢ 147.サイム切断や足部切断では、義足を外しての室内歩行も可能である。居室などにはクッション性のあるカーペットを敷き、足部への衝撃を和らげる。
▢ 148.両側上肢切断の場合、電灯のスイッチは通常より低い位置に設置する。
内部障害/心臓機能障害
▢ 149.内部障害は、「身体障害者福祉法」に規定された7つの障害の総称である。
ー内部障害は、心臓機能障害、腎臓機能障害、呼吸器機能障害、膀胱・直腸機能障害、小腸機能障害、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害、肝臓機能障害の7つの障害の総称である。
▢ 150.内部障害の種類別に身体障害者・児の数をみると、心臓機能障害が約73万人と最も多く、2位の腎機能障害の3倍近くを占めている(厚生労働省「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」)。
▢ 151.心臓機能により重度の不整脈がある場合、胸部にペースメーカーの埋め込みが行われることがある。
▢ 152.心臓機能障害は、先天性の疾患によるものよりも、運動不足、肥満、喫煙、ストレス、偏った食生活などの生活習慣や加齢が原因となることが多い。
▢ 153.心臓機能障害をもつ人が安全に日常生活を送るためには、ADLに必用な酸素消費量を把握することが重要である。
ーADLに必要な酸素消費量(METsという単位で表される)を把握することが重要である。
▢ 154.心臓の機能が著しく低下すると、浮腫やチアノーゼが生じる。
ー顔や四肢の浮腫や、四肢の末梢が紫色になるチアノーゼがみられる。
▢ 155.電磁調理機から発生する電磁波は、ペースメーカーを誤作動させる可能性があると指摘されている。
ーIH式電気炊飯器、電磁調理器、盗難防止装置、電気自動車の充電器、電動工具などから発生する電磁波の影響により、ペースメーカーが誤作動を起こす可能性があると考えられている。
内部障害/呼吸機能障害
▢ 156.呼吸器機能障害とは、呼吸器の重要な3つの機能、換気機能、通気性を維持し気道を浄化する機能、肺胞ガス交換機能のうちのいずれかに障害を生じた状態である。
▢ 157.動脈血中の酸素や炭酸ガスの分圧が異常な値になり、生体の正常な機能が維持できなくなる状態を呼吸不全という。呼吸不全の状態が長く続くと慢性呼吸不全になる。
▢ 158.呼吸器疾患のうち、慢性呼吸不全を引き起こすことが最も多い疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が最も多い。
▢ 159.経皮的酸素飽和度(SpO2)は、特に前かがみの姿勢になると低下しやすい。洗面や、和式便器での排便、入浴時の洗髪や洗体の動作のとき経皮的酸素飽和度(SpO2)が低下しやすいので注意が必要である。
▢ 160.在宅酸素療法(HOT)を実施している場合、入浴時も鼻カニューレは付けたままにする。酸素吸入装置と鼻カニューレをつなぐチューブを浴室の扉にはさみ込まないよう注意する。
▢ 161.酸素吸入装置は、火気から2m以上離れて使用しなければならない。
▢ 162.1985(昭和60)年に在宅酸素療法(HOT)が医療保険適用となったことにより、多くの慢性呼吸不全の患者が病院から在宅へと生活の場を移すことが可能になった。
内部障害/腎機能障害
▢ 163.腎臓機能障害とは、何らかの原因により腎臓の機能が低下し、生体の恒常性が保たれなくなった状態のことである。
ー腎臓機能障害が急速に生じた場合を急性腎不全、数か月から数年かけて持続的に機能不全に陥った場合を慢性腎不全という。
▢ 164.腎臓機能障害の原因となる疾患には、腎臓そのものの異常による疾患と、糖尿病などの全身性疾患があるが、最も多いのは糖尿病の合併症として知られる糖尿病性腎症である。
▢ 165.慢性腎不全と診断されるのは、糸球体濾過値が正常値の30%以下になった場合である。
▢ 166.糸球体濾過値が正常値の10%以下になった状態を、尿毒症という。
ー尿毒症になると、尿の異常、高血圧、貧血、心肥大、骨粗鬆症、眼・皮膚・肺・胃腸の障害、神経障害などが生じ、透析療法か腎移植が必要になる。
▢ 167.血液透析では、通常、週3回通院し、毎回4~5時間程度の透析を受けなければならず、患者にとって大きな負担になる。
▢ 168.透析療法は生涯続けなければならず、それに伴い、手のしびれや痛みなどの合併症が生じることがある。
▢ 169.腹膜透析には、就寝中に自動的に透析液を交換する方法もある。
ー装置により就寝中に自動的に透析液を交換する自動腹膜透析(APD)という方法もある。
内部障害/膀胱・直腸、小腸機能障害
▢ 170.膀胱・直腸機能障害とは、直腸や膀胱・尿管・尿道の切除や機能低下などにより、排便や排尿機能が障害されている状態である。
ー膀胱・直腸機能障害を起こす原因疾患として、クローン病、直腸がん、大腸がん、漬瘍性大腸炎、膀胱腫瘍などがある。
▢ 171.小腸機能障害とは、小腸の機能が低下したために、身体に必要な栄養素が欠乏する状態である。
▢ 172.中心静脈栄養法は、鎖骨下にある中心静脈にカテーテルを挿入し、そこから高力ロリー輸液を投与する方法である。
▢ 173.中心静脈栄養法には、体外式とポート式があるが入浴やスポーツなどが自由に行えるのはポート式である。
ーカテーテルを体外に出す体外式と、皮下にポートを埋め込むポート式がある。後者の場合、カテーテルが露出しないので、入浴やスポーツなどが自由に行える。
▢ 174.本人あるいは家族などが、カテーテルを一時的に尿道口に入れ、定期的に膀胱内の尿を排出する方法を、自己導尿という。
▢ 175.オストメイトとは、消化器ストーマ(人工肛門)や尿路ストーマ(人工膀胱)を造設した人のことである。
▢ 176.自己導尿、膀胱留置カテーテル、ストーマなどで排尿、排便を行う場合、排泄物の臭気への対策として、換気に配慮する。排泄物の処理や器具の洗浄を行う専用の部屋があるとよいが、 トイレで行う場合は器具などを置くスペースを確保する。
内部障害/免疫機能障害・肝臓機能障害
▢ 177.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した直後は、通常の血液検査を受けても陽性にならない。通常のHⅣ 抗体検査で抗体が検出されるのは、HIVに感染してから6~8週後である。
▢ 178.HIVに感染してからAIDSが発症するまでには多くの場合、数年から十年の潜伏期がある。
▢ 179.HIV感染者が免疫不全状態になり、日和見感染症や悪性腫瘍などのさまざまな合併症にかかる状態がAIDSである。
ーカリニ肺炎、口腔カンジダ症などの日和見感染症をはじめ、AIDSの指標とされる23の疾患がある。
▢ 180.HIV感染後の治療法は、投薬と日和見感染症の予防や治療が中心である。
ーAIDS発症や死への恐怖から、不安や抑うつ状態に陥りやすいため、精神的なサポートも重要である。
▢ 181.2010(平成22)年4月から、肝臓機能障害者も身体障害者として認定されるようになった。
▢ 182.B型・C型肝炎は血液を介して感染するため、感染者とは歯ブラシやかみそりなどを共有しないよう注意する。
▢ 183.肝臓は再生力の強い臓器なので、肝臓機能障害になっても治療により治癒または改善することが多い一方、重症化すると治療による改善が見込めなくなる。
視覚障害
▢ 184.外界から眼に入った光は、網膜で電気信号に変換され、視神経を通って大脳の後頭葉にある視覚中枢に伝えられる。
▢ 185.網膜に分布する視細胞には錐体細胞と杵体細胞があり、明るいときは前者が、暗いときは後者が働く。
▢ 186.外界から入った光は、角膜→水晶体→硝子体という順路を経て網膜に達する。
▢ 187.水晶体は光を屈折させるレンズの役割をしている。水晶体の厚みを調節してレンズの屈折率を変えるのが毛様体の役割である。虹彩は瞳孔の大きさを調節する。
▢ 188.糖尿病網膜症では、物がかすんで見えたり、視野にごみのようなものがちらついたりする症状が現れる。
▢ 189.緑内障は、視神経が障害され、視野が狭くなる病気で、眼圧の上昇が原因の一つといわれる。放置すると障害範囲が広がり、失明することもある。
▢ 190.加齢黄斑変性症は、多くの視細胞が分布する網膜の黄斑部が加齢などにより変性したために起こる障害で、中心暗点や変視症、色覚障害などが生じる。
▢ 191.視覚障害は、眼球に入った外界の光が網膜で電気信号に変換され、大脳の視覚中枢に伝えられるまでの経路のどこかに障害が生じることによって引き起こされる。
▢ 192.世界保健機構(WHO)の定義によると、ロービジョンとは、両眼に眼鏡を装用しても視力が0.05以上0.3未満の状態で、視野障害に関しては言及されていない。
▢ 193.「身体障害者福祉法」による視覚障害認定基準は、視力障害と視野障害の両方の機能レベルで重症度を分類している。
▢ 194.遠視とは、眼球に入った光が、網膜より奥で焦点を結んでしまう状態である。
▢ 195.近視、乱視、遠視の原因は、水晶体の屈折異常である。
▢ 196.視力障害者の住環境整備では、視力障害者を含む視覚障害者は羞明にも敏感で、光に対する許容範囲が狭いため、その人に合った適度な明るさの照明にする。
▢ 197.視力障害者が拡大鏡(ルーペ)を使用する場合、なるべく必要最小限の倍率の物を選び、視野の中になるべく多くの文字が入るようにすると使いやすい。
▢ 198.視野とは、眼を動かさず、一点を注視した状態で見ることのできる範囲である。
▢ 199.視野狭窄には求心狭窄と不規則狭窄があり、求心狭窄は、視野全体が周辺から中心に向けて狭窄する。視野狭窄の原因となる主な疾患に、緑内障がある。
▢ 200.暗点による視力の低下は認める。
ー中心暗点は、視野の中心部、つまり、注視している部分が見えにくくなるため、通常、視力の低下を伴う。
▢ 201.両眼の同じ側の視野が欠損する状態を同名半盲といい、両眼の耳側、もしくは両眼の鼻側の視野が欠損する状態を、異名半盲という。
▢ 202.視野狭窄があると、人や物が突然目の前に現れるため、ぶつかったりつまずいたりしやすい。
▢ 203.同名半盲の場合、道を歩くときに片側に寄っていくことがある。
▢ 204.視野狭窄の場合、段差や障害物の有無や路面の状態を知るため、また、周囲の人に注意を促すために、白杖を使用する。
▢ 205.羞明とは、光をまぶしく感じる感覚が過剰で、普通の光でもまぶしく感じることをいう。
▢ 206.暗い所から明るい所に移動したときに、最初はまぶしく感じるが、徐々に眼が慣れてよく見えるようになる。これを明順応という。
▢ 207.明るい所から暗い所に移動したときに、最初は見えないが、しだいに眼が慣れてよく見えるようになることを暗順応という。
▢ 208.順応には、網膜の視細胞が関係している。視細胞には、明るいときに働く錐体細胞と、暗いときに働く粁体細胞がある。それらの働きが切り替わるのが順応のしくみである。
▢ 209.視覚障害があると、段差に気づかずに転倒する可能性が高くなるので、できるだけ段差を解消することが望ましいが、それが困難な場合は、スロープにするか、色対比を利用して色テープを張るなどして、段差をわかりやすくする。
▢ 210.順応障害がある場合は、昼間は玄関の照明を屋外に近い明るさにし、中に入るにつれて徐々に暗くなるようにするとよい。
▢ 211.色が全く識別できない状態を1色覚という。
▢ 212.問6 色覚障害がある場合、グラデーション付き遮光眼鏡は、順応障害への対策として用いられる。
▢ 213.視覚障害者の多くは羞明を訴え、コントラストの感度も低い。住環境整備では、羞明への対策として、照明が眼に直接入らないよう間接照明にする。また、屋内で特に注意を必要とする箇所は、配色に工夫してコントラストを強める。
聴覚・言語障害
▢ 214.聴覚障害では、音としては聞こえるが、言葉の聞き分け能力が低い場合がある。このような能力を語音明瞭度という。
▢ 215.伝音難聴は、耳介から蝸牛に至る経路のどこかに障害が生じたことによる難聴である。
▢ 216.感音難聴は、蝸牛から大脳に至る経路のどこかに障害が生じたことによる難聴である。
▢ 217.伝音難聴は、言葉の聞き分け能力を意味する語音明瞭度が比較的よいので、補聴器の使用により低下した聴力を補うことができる。
▢ 218.感音難聴の場合、快適に聞き取れる音の大きさの範囲であるダイナミックレンジが狭くなる傾向がある。補聴器の使用が困難になることもある。
▢ 219.伝音難聴の代表的な原因疾患は中耳炎である。
▢ 220.感音難聴の代表的な原因疾患に、加齢性難聴、音響外傷性難聴、突発性難聴、メニエール病などがある。
▢ 221.加齢性難聴の特徴は、高い音域の聴力から徐々に低下することと、言葉が聞き取りにくくなることである。
▢ 222.音の強弱を表す単位はデシベル(dB)で、数値が大きいほど大きな音として聞こえる。ヘルツ(Hz)は音の高低を表す単位である。
▢ 223.失語症は、大脳の言語野の損傷により、言葉を組み立てたり理解したりすることが困難になる状態である。
▢ 224.構音障害は、発声発語器官の機能や形態の異常により、正しい発音ができない状態である。
▢ 225.大脳の言語野のウェルニッケ領域は主に言葉を理解する機能に、ブローカ領域は主に言葉を語る機能に関与している。
ーウェルニッケ領域が損傷されると言葉の理解が困難になる。ブローカ領域が損傷されると、言葉は理解できるが発語が困難になる。
▢ 226.喚語困難は、言いたいことがあるのに言葉が出てこない状態、錯語は、意図したものとは別の音や単語が出てきてしまう状態である。
▢ 227.言語野は、右利きの人のほとんどは大脳の左半球に言語野があるが、左利きの場合は、言語野が右半球にある人も、左半球にある人もいる。
▢ 228.失語症では、言葉を話すこと、言葉を聞いて理解すること、文字を書くこと、文字を読むことのうちの一部、もしくは全部に障害が生じる。
▢ 229.構音障害や音声障害の場合、言葉を理解する能力に問題はない。
▢ 230.喉頭の摘出により音声障害になった場合は、食道発声法の訓練や、電気式人工喉頭の使用法の訓練を行う。
▢ 231.聴覚障害者は、雑音や残響音があると目的の音をよく聞き取れないので、屋内はできる限り雑音を少なく、必要以上に反響しないようにする。
▢ 232.聴覚障害者のための住環境整備では、視覚による情報が重要なので、不要な仕切りを取り外してなるべく見通しをよくする。
▢ 233.補聴器の適応外の内耳障害による重度の難聴の場合は、人工内耳植込術を受けて、人工内耳を装用することがある。
▢ 234.重度の聴覚障害者の場合、夜間はいつでもすぐに照明を点灯できるようにしておく必要がある。
ー重度の聴覚障害者は、手話などの視覚的コミュニケーションが中心になるため、暗闇ではコミュニケーションが困難になる。リモコンを用意するなどして、いつでも照明を点灯できるようにする。
▢ 235.失語症で話すことに障害がある人との会話では、相手のペースに合わせ、相手が言葉を言い終わるまで待つ。相手の言いたいことを確かめるときは、「はい」「いいえ」で答えられる質問をするとよい。
▢ 236.失語症で言葉の理解に障害がある人との会話では、簡潔な表現でゆっくり話すようにする。
ー耳で聞いた言葉を一時的に記憶する聴覚把持力も低下しているため、早口で一気に話したり、複雑で長い表現を用いたりすると理解が困難になる。
▢ 237.構音障害の場合、筆談や文字盤のほか、携帯用会話補助装置を使用することもある。
認知・行動障害
▢ 238.大脳の機能中でも、複雑な精神活動の機能に障害が生じた状態を、高次脳機能障害という。
ー注意・言語・記憶・思考・認知・推論・学習・行為などの複雑な精神活動の機能に障害が生じた状態を、高次脳機能障害という。
▢ 239.高次脳機能障害の症状は、自宅などの慣れた場所や、決まりきったことをする場所では現れにくい。新しい場所や慣れない作業をするときなどに症状が現れやすい。
▢ 240.脳の損傷により、損傷した部位と反対側の空間を認識できなくなることを半側空間無視いい、左半側空間無視が圧倒的に多く、左側にある障害物に気づかずぶつかったり、食事の際に左側だけ食べ残したりする。
▢ 241.自閉症は、脳の機能障害により発症すると考えられている。
ー自閉症は、以前は親の育て方などに問題があるといわれていたが、近年は脳の機能障害ととらえられている。
▢ 242.いつも同じ行動をとることに執着するのは、自閉症の特徴の一つである。限定的・反復的・常同的な行動をとることが自閉症の特徴の一つである。
▢ 243.注意欠陥多動性障害(ADHD)は、多動性、衝動性、不注意を特徴とし、その症状は7歳以前に現れる。成長するにつれて多動性、衝動性は改善されるが、不注意は成人しても続くことがある。
▢ 244.軽度の知的障害者は、知的レベルが小学校6年生程度で、食事、排泄、更衣、洗面などのADLは自立している。
▢ 245.知的障害の原因疾患には、ダウン症候群などの染色体異常、フェニールケトン尿症などの先天性代謝異常などがあるが、原因不明のものも多い。
▢ 246.自閉症の場合、扇風機の羽に指を入れたり、本棚や冷蔵庫によじ登ったり、 ドアの開閉を何度も繰り返したりすることがあるので注意が必要である。
▢ 247.学習障害では、基本的に全般的な知能の遅れはなく、ある特定の能力のみに障害が現れるのが特徴である。
▢ 248.学習障害は、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではないと定義されている。
▢ 249.知的障害者の場合、ADLの自立を促すために、介助者の姿が見えないと不安になるので、介助者は本人の視界に入る場所にいるようにする。ただし、過介助にならないように注意する。
▢ 250.知的障害者は動作を習得するのに時間がかかるが繰り返し学習するうちにできるようになることが多い。今すぐにできないことでもあきらめてしまわずに、粘り強くADLの拡大に取り組むことが重要である。
▢ 251.精神障害は、外因性精神障害、内因性精神障害、心因性精神障害に大きく分けられる。心理的なストレスが原因となって生じるのは、心因性精神障害である。
第4章 介護保険制度とケアマネジメント
介護保険制度とケアマネジメント
▢ 1.介護保険制度の居宅サービスの中で福祉住環境整備に関係するのは、住宅改修費の支給と、福祉用具の貸与・購入費の支給なのである。
▢ 2.住環境整備を行うことにより、訪問サービスや通所サービスも利用しやすくなる。
▢ 3.介護保険制度では、介護支援専門員(ケアマネジャー)、ケアマネジメントにおける中心的な役割を担う。
▢ 4.ケアマネジメントの概念と手法は、わが国では介護保険制度に導入され、障害者ケアにも取り入れられている。
▢ 5.ケアマネジメントは、相談→アセスメント→ケアプランの作成→ケアプランの実施→モニタリングという流れで進められる。
▢ 6.ケアマネジメントにおいて、サービスの提供状況を定期的・継続的にチェックする援助過程のことをモニタリングといい、それをもとにケアプランが作成される。
▢ 7.ケアプランを作成するうえでは、利用者の日常生活動作(ADL)能力を把握することが重要である。
ーケアプラン作成にあたっては、利用者の身体機能、ADL能力、社会参加の状況、家族の介護力などを把握することが重要である。
福祉住環境整備におけるアセスメント
▢ 8.ケアマネジメントにおけるアセスメントとは、介護支援専門員が、利用者に関する基本的知識を得たうえで、自立支援のための課題を導き出す段階である。
▢ 9.住環境は、国際生活機能分類(ICF)が提示した概念の中では「環境因子」に位置づけられる。
▢ 10.福祉住環境整備におけるアセスメントには、「生活を見るアセスメント」「動作を見るアセスメント」「介護予防のアセスメント」の3つの視点がある。
▢ 11.動作を見るアセスメントでは、移動動作、立ち座り動作、段差昇降動作、姿勢保持、排泄動作を確認することが必要である。
▢ 12.移動動作を見るアセスメン卜では、歩くときに不安を感じているかどうかという主観的な事実を把握することも必要である。
▢ 13.立ち座り動作を見るアセスメントでは、床からの立ち座り動作と椅子からの立ち座り動作の両方について確認する必要がある 。
ートイレでは便器から、浴室では浴槽や入浴用椅子から、玄関では上がりがまちからなど、場所に応じた立ち座り動作を確認する。
▢ 14.段差昇降動作には、階段のような段差を上り下りする動作と、敷居などのまたぎ動作があるので、そのどちらともできることを確認する。
ー利用者の動線を確認したうえで、一つひとつの動作をすべて把握することが重要である。動作が一人でできるのか、介助が必要かなども確認する。
▢ 15.要支援・要介護状態となるおそれのある65歳以上の人は、市町村が行う介護予防事業(二次予防事業)の対象である。
▢ 16.介護予防とは、要介護状態になることを防ぐこと、及び、要介護状態をそれ以上悪化させないようにすることである。
▢ 17.外出に配慮した住環境整備で最も重要なのは、出入り口から道路までの動線上の確認を行うことである。
▢ 18.福祉住環境整備は、利用者の生活を支援するための総合的な計画の一部であり、住環境の問題だけを解決すれば、すべてが解決されるわけではない。
▢ 19.介護保険制度に係るアセスメントにおける課題分析標準項目の一つにIADLがある。IADLの内容は、調理、掃除、買物、金銭管理、服薬状況などである。
▢ 20.介護保険制度では、施設入所要介護者については、施設の介護支援専門員がケアプランを作成する。
▢ 21.居宅サービスを利用する場合、利用者が自らケアプランを作成することもできる。
▢ 22.介護支援専門員がアセスメントを通して住宅改修の必要性を認識し、福祉住環境コーデイネーターに相談した場合は、福祉住環境コーディネーターは介護支援専門員とともに、利用者のためにはどのような住宅改修が望ましいかを検討する。
▢ 23.介護保険制度をまだ利用していない人から住宅改修について相談を受けた場合、福祉住環境コーディネーターは介護保険制度の利用について、介護支援専門員に話をつなげる。
▢ 24.住宅改修においては、住宅改修事業者の意向どおりに改修しても、結局改修した箇所が利用されず、改修の効果が得られない場合もある。
▢ 25.介護支援専門員が開催するサービス担当者会議に福祉住環境コーデイネーターも積極的に参加すべきである。
ー住宅改修だけでなく福祉用具の活用も含めた福祉住環境整備プランを提案したい。
▢ 26.地域リハビリテーション広域支援センターが設置される二次医療圏域とは、市町村単位の一次医療圏域よりやや広範囲な圏域である。
▢ 27.福祉用具・住宅改修支援事業は、市町村の任意事業である。
ー福祉用具・住宅改修支援事業は、福祉用具・住宅改修に関する相談、情報提供、連絡調整、住宅改修費の支給申請に係る理由書の作成などを行う。
▢ 28.利用者の疾患や障害の特性、基本的な身体動作能力などを把握している PT や、 ADL 能力を把握しているOT との連携は重要である。
相談援助の基本的視点
▢ 29.相談援助とは、面接などにより本人が直面している課題やニーズを明確にすることによって、課題解決の手助けをすることである。
▢ 30.相談援助においては、対象者はあらゆる面で個人差が大きく、千差万別である。したがって対象者を個人として捉える個別化の視点を持つことが重要である。
▢ 31.福祉住環境コーディネーターの活動では、被援助者の「できること」や強み、長所にも目を向けることが重要である。これを「ストレングス」の視点と言う。
▢ 32.相談援助においては、援助する側と援助される側の関係が「パターナリズム(父親的温情主義)」に陥らないよう、常に本人の自己決定を促すことが重要である。
▢ 33.信頼に基づく援助関係を形成するために必要なことの一つは、援助者と対象者が同じ空間で一緒にいることである。
▢ 34.対人援助において、守秘義務は最も重要な原則であるが、保健・医療・福祉等の専門職の連携を図るためには、必要な情報を関係者間で共有することが求められている。この場合、業務上知り得たことを協働・連携に関わる者以外に漏らしてはならない。
▢ 35.相談援助においては、対象者を「状況の中の人」として捉え、社会環境という「面」の中にある存在として認識することが大切である。
相談援助の方法
▢ 36.医療の分野では「説明と同意」(インフォームド・コンセント)を遵守することが重視されるが、住環境整備においても同様である。
▢ 37.相談面接において、援助者は、言葉を繰り返したり、言い換えたり、要約したりすることは、面接を効果的に進める技術である。、
▢ 38.相談援助においては、被援助者の「ニーズ」を引き出すことが重要になる。「ニーズ」は、本人が意識しないものまでを含む「客観的に見て本人が必要な事項」を意味する。
▢ 39.表情やしぐさ などによるコミュニケーションをノンバーバル・コミュニケーションという。
▢ 40.相談援助においては、主体はあくまで対象者なので、対象者のメッセージに心を傾けて聴く「傾聴」の姿勢が必要である。
▢ 41.相談面接の場面では、「開かれた質問」をして、被援助者が自分の言葉で話せるように促すとともに、「はい/いいえ」で答えられる「閉じられた質問」をして必要な情報を的確に収集することも重要である。
▢ 42.対象者が認知症や知的障害などのために自己決定できる能力が十分でない場合は、成年後見人等を交えて話を進めていくことも重要となる。
福祉住環境整備関連職への理解と連携
▢ 43.チームアプローチとは、支援にかかわるさまざまな専門職が、それぞれの活動の領域を超え、協働してサービスを提供することである。
▢ 44.インテリアプランナーは、公益財団法人建築技術教育普及センターが実施している資格制度で、インテリアの企画設計と工事監理を行う。
▢ 45.建築士は「建築士法」に規定された国家資格で、一級建築士、二級建築士、本造建築士3種類の資格があり、住宅改修を行う場合は助言を受けることができる。
▢ 46.運動療法、物理療法によるリハビリテーションを実施するのは理学療法士(PT)、食事・入浴・排泄などのADL訓練や作業療法を実施するのは作業療法士(OT)である。
▢ 47.社会福祉士は、福祉事務所、児童相談所、障害者支援施設などで、相談・援助業務を勤める。
▢ 48.介護福祉士は、訪問介護員や介護老人保健施設の職員として、介護や、介護に関する指導を行う。
▢ 49.義肢装具士は、義肢・装具の装用部位の採寸を行い、義肢・装具を製作し、身体への適合を図る。
▢ 50.介護保険制度を利用した福祉用具の貸与・販売を行う事業所には、福祉用具専門相談員を2名以上置くことが定められている。
福祉住環境整備の流れ
▢ 51.福祉住環境整備の具体的な計画を立てるには、現地調査を行い、利用者本人が生活している場所の状況を確認する必要がある。
▢ 52.設計者、施工者を決める前に、複数の設計者、施工者にプランの提示と概算費用を示してもらう。
▢ 53.介護保険制度による住宅改修のような比較的小規模な工事では、契約書が作成されないことも多いが、施工後のトラブルを避けるためには工事内容を文書に残しておいたほうがよい。
▢ 54.工事中に被援助者又は家族が、工事内容にない修理等を施工者に直接依頼した場合、費用の支払い等でトラブルになることが多いので、あらかじめ、施工者に、本人や家族から直接依頼をされた際には連絡をしてくれるよう頼んでおく。
▢ 55.工事完成後は、福祉住環境コーディネーターは、本人に実際に動作をしてもらい、工事部位の使い勝手や安全性を確認する。
▢ 56.福祉住環境整備により十分な効果を得られたかどうかは、すぐに判断できないこともあるので、しばらく生活してみてからでないと判断できない場合も多いので、工事完成後のフォローアップが重要になる。
▢ 57.福祉住環境整備相談では、本人から直接意見を聞くことが基本である。入院中であれば病院に出向いて意向を確認したり、体調の良い時に改めて立ち会ってもらうよう、検討する。
第5章 福祉住環境整備の基本技術および実践に伴う知識
段差の解消
▢ 1.「建築基準法」により、1階居室の木造床面は、原則として直下の地面から450mm以上高くするよう定められている。
▢ 2.屋外のアプローチ部分に設置するスロープの勾配は、1/12~ 1/15程度が目安とされる。
▢ 3.スロープ上部の踊り場の水平部分が2,000mm×2,000mm、スロープ部分の水平距離が5,800mm、踊り場と地盤面の高低差が650mmの場合、スロープの勾配は(5,800mm÷650mmなので)約1/8.9である。スロープ上部の踊り場の水平部分の長さは、スロープの勾配を求める計算に関係ないので、この場合は考慮しなくてよい。
▢ 4.屋外のアプローチ部分の段差を解消する改修は、介護保険制度による住宅改修に該当する。
▢ 5.段差解消のためのスロープで、取り付けに際して工事を伴わないものは、介護保険制度による福祉用具貸与の対象である。
▢ 6.据置式段差解消機の設置は、介護保険制度による福祉用具貸与の対象となっている。取り付けに際し住宅改修を伴わない据置式段差解消機は、福祉用具の移動用リフト(据置式)として、福祉用具貸与の対象となっている。
▢ 7.1階の木造床面の高さに関する「建築基準法」の規定は、個別に国土交通大臣の認定を受けた場合には適用されない。
▢ 8.一般に、和室の床面は洋室よりも10~40mm程度高くなっていることが多い。畳とフローリング材の厚さの違いなどにより、このような高低差が生じる。
▢ 9.新築の住宅では、床を支える床束という部材の長さを変えることにより、和室と洋室の床段差をなくすことができる。改築の場合は洋室の床の上に合板を張り、その上に床材を張ってかさ上げする方法がある。
▢ 10.すりつけ板の設置は、屋内の段差を解消するのに最も簡便な方法である。
▢ 11.実際の工事においては、屋内の段差を完全になくすことは難しいため、5mm以下の段差は段差のない構造とみなされている。
ー「住宅品確法」に基づく「日本住宅性能表示基準」では、5mm以下の段差は段差のない構造とみなされている。
▢ 12.床仕上げの異なる部分を分けるためには、建具敷居を用いる代わりに、床仕上げの端部をへの字プレートで上から押さえる方法がある。
▢ 13.引き戸の敷居周辺の段差を解消するには、フラットレールを床面に取り付ける方法と、床面にV溝レールを埋め込む方法がある。
▢ 14.階段昇降機やホームエレベーターは、介護保険制度による住宅改修項目の対象になっていない。
床材の選択
▢ 15.床材を選択する場合は、滑りにくさと強さを考慮する。強さとは、傷つきにくさ、重量物への強さ、水などへの強さである。
▢ 16.床材を選択する場合は、300mm×300mm以上の大きめのサンプルを使って、実際の使用状況に近い状態でテス卜するとよい。滑りやすい履物で踏んでみて確認するとよい。
▢ 17.室内で車椅子を使用する場合、自走用車椅子の車輪のゴム跡が床面に付着すると取り除くのが困難なので、ゴム跡が目立たないような色の床材を使用するとよい。
▢ 18.屋外と室内で同じ車椅子を使用する場合、屋外で車輪に付着した砂ぼこりなどが床材を傷つけることがあるので、フローリング材は表面仕上げ部分の厚さが1mm以上ある床材を選ぶ。
▢ 19.洗面・脱衣所やトイレの床面仕上げに塩化ビニルシートを用いる場合は、表面の強さとクッション性のあるものを選ぶ。
ー発泡系の塩化ビニルシートはクッション性がよいが、表面仕上げの部分が薄いと耐久性に劣る場合がある。
▢ 20.電動車椅子は重量が重いので、室内で使用する場合は床の強度をよく確かめることが必要である。
ー床の構造を支えている大引や根太などの強度が十分かどうか確認する。根太が傷んでいる場合などは改修工事が必要である。
▢ 21.店舗などに使用される重歩行用の床板は、住宅用にくらべて設置費用は高いが、傷つきにくく、水濡れや重量物への耐久性も優れている。
手すりの取り付け
▢ 22.移乗動作や立ち座り動作のときにしっかりとつかまって使用する手すりをグラブバーという。
▢ 23.からだの位置を移動させるときに手を滑らせながら使用する手すりをハンドレールという。
▢ 24.手すりの形状は円形が基本で、直径はグラブバーよりもハンドレールのほうがやや太めである。
ー手すりの直径は、ハンドレールの場合32~36mm程度、グラブバーの場合28~ 32mm程度とする。
▢ 25.便器での立ち座り動作には縦手すりが、浴室でシャワー用車椅子からバスボードに移乗して浴槽に入るときには横手すりが適している。
▢ 26.横手すりの端部にエンドキャップを取り付けるだけでは、衣服の袖口などが引っかかりやすい。手すりの端部を壁側に曲げこむとよい。
▢ 27.横手すりをしっかり握ることができない場合は、手のひらを軽く乗せて使用することが多いので、手すりを通常より高い位置に取り付けるとよい。
▢ 28.せっこうボードの下地に合板を入れて補強し、手すりを設置する場合は、ネジがしっかり利くように、全ネジタイプの木ネジを使用する。
▢ 29.屋内の水回りで使用される手すりは、ぬれた手で握っても滑りにくい樹脂被覆製のものがよい。
建具への配慮
▢ 30.一般に、住宅内の戸の中でも、玄関は他の戸より幅が広く、トイレ、浴室の戸は幅が狭い。居間、寝室、台所などの戸はその中間くらいである。
▢ 31.開き戸と引き戸を比較すると、高齢者や障害者にとって開閉動作がしやすいのは引き戸である。
ー開閉時に身体の前後移動を伴う開き戸よりも、引き戸のほうが姿勢が安定するので、開閉動作がしやすい。
▢ 32.開き戸がゆっくり閉まるよう調整するには、 ドアクローザーを用いるとよい。ドアクローザーを用いると、体の移動動作をあわてずに行えるので安全性が高まる。
▢ 33.開き戸は丁番で支持される。開き戸の把手側に幅300mm以上の袖壁を設けると、開閉動作の際に身体をよけるスペースができる。車椅子使用の場合は、袖壁の幅を450mm以上にする。
▢ 34.910mm(3尺)を基準寸法として造られた従来の木造住宅では、建具の幅は枠の内法寸法で700~720mmである。介助用車椅子を使用して、廊下から直角に曲がって室内に入る際は、開口部の有効幅員が750mm以上必要である。
▢ 35.開き戸の把手は、ノブよりもレバーハンドルのほうが形状が大きく扱いやすく、操作も容易である。
▢ 36.引き戸の把手は、彫り込み型よりも棒型の把手はつかみやすく、指先に力の入らない人でも開閉しやすい。ただし、戸を開けたときに引き残しが生じるため、開口有効幅員がやや狭くなる。
スペースへの配慮
▢ 37.在来工法による木造住宅の場合、廊下の有効幅員は最大で780mmである。
▢ 38.背後から歩行を介助する場合、介助者は高齢者や障害者の少し横に、少なくとも半身分は身体をずらして歩行するため、廊下の有効幅員は1.5人分必要となる。
▢ 39.モジュールとは、建築物の設計の基準になる寸法のことである。在来工法による木造住宅の場合は910mm=3尺を基準とする3尺モジュールが用いられている。
▢ 40.車椅子の通行など屋内に必要なスペースを確保するために壁・柱を取り外す方法があるが、軸組構法の住宅には、取り外せる壁・柱と、取り外せない壁・柱がある。
▢ 41.車椅子などの福祉用具を利用して屋内をスムーズに移動するためのスペースに配慮した増改築は、介護保険制度による住宅改修項目に含まれていない。
▢ 42.トイレと洗面・脱衣所の間の壁に筋かいが入っている場合は、建物の構造を支えているので、撤去してはならない。
▢ 43.スペースを確保するには、建築物のモジュールをずらす方法もあるが、改修の場合、大掛かりな工事が必要である。高齢者や障害者の生活動線に配慮して、必要な部分の幅員を確保する。
家具・収納への配慮
▢ 44.家具の配置を検討する際には、家具の寸法を測り、平面図に配置を描いて、高齢者や障害者の生活動線や通行幅員が十分に確保できるかどうか確認するとよい。
▢ 45.椅子の座面の高さは、立ち上がり時に足底面全体がしっかり床に着かない椅子は適当でない。また、座面が低すぎるソファーなどは、立ち上がり時に足腰に負担がかかり、バランスを崩しやすい。
▢ 46.くつろいだ姿勢で用いるソファーは、軟らかすぎると立ち座りが難しくなる。座位保持に加えて、立ち座り時のことを考慮して座面の硬さを考える。
▢ 47.家具を選ぶ際は、ショールームなどで実物を見て、実際に使い勝手などを確認してから購入することが望ましい。
▢ 48.収納の奥行きが600mm程度と深い場合は、内部に脚を踏み入れて物を出し入れするため、戸の下枠を設けないようにし、底面の床仕上げは部屋の床と同じにする。
▢ 49.収納の戸は開き戸よりも引き戸がよい。開閉時の身体の動きが少なくてすむ。
▢ 50.日常的によく出し入れする物は、眼の高さ程度(1,400~1,500mm程度)までの高さに収納するようにする。それ以上の高さは、日常的に使用しない物の保管に使用し、出し入れは介助者が行うようにする。
色彩・照明計画、インテリアへの配慮
▢ 51.高齢者は落ち着いた色を好む傾向があるが、壁や家具などをダークオーク調の色彩で統一すると室内が重い雰囲気になりやすい。部屋の一部分でも明るい色彩を取り入れると雰囲気が変わる。
▢ 52.同じ部屋の中では、床面の色や仕上げは統一したほうがよい。
▢ 53.曇りがちで屋外が暗い季節には、家族が集まる居間などの照明を晴天時の昼間のような明るさにすることにより、生活に活気を与えることができる。
▢ 54.照明は、光源が直接眼に入らないように設置することが望ましい。特にベッドに寝ているときに光源が直接眼に入るとまぶしく感じるので、照明の配置に工夫する。
▢ 55.高齢者は、視力が低下し、暗い場所では物が見えにくくなっているが、そのことを自覚していないことも多い。
▢ 56.人感スイッチは、人が近づいてくるのを感知して自動的に照明を点灯・消灯する。
▢ 57.明るさ感知式スイッチは、周囲の明るさを感知して自動的に照明を点灯・消灯する。
▢ 58.高齢者や障害者のための住環境整備では、細かい部分の仕上げや飾り付け、小さな家具のレイアウトなどは、なるべく本人の意見を取り入れて行うようにすると、本人がリラックスできる雰囲気になる。
冷暖房への配慮
▢ 59.急激な温度差は血圧の上昇をもたらし、高齢者の身体には大きな負担となるため、冬季の暖房には特に配慮が必要である。冷房は暖房ほど身体への影響は大きくないといわれているが、外気温が高いときは適度な温度調節が必要である。
▢ 60.寒冷地・積雪地では、各室で個別に暖房を行う方法は、ランニングコストが大きくなりやすいので、セントラルヒーティングが広く用いられている。
▢ 61.エアコンやファンヒーターなどの対流暖房は、短時間で室内を暖めることができることができる。
▢ 62.対流暖房をトイレや洗面・脱衣室などの狭い室内で用いると、温風が一方向から吹きつける場合が多く、低温やけどの原因になることがある。感覚障害がある場合は特に危険である。
▢ 63.エアコンの温風の吹き出し口は天井近くにあるが対流により、足元は暖まりにくく、天井付近と床面付近の温度差が大きくなる。
▢ 64.床暖房やパネルヒーターなどの輻射暖房は、使用しても室内にほこりが立たない。室内全体を暖めるには時間がかかる。
▢ 65.寝室の冷暖房では、エアコンの冷風や温風がベッドの位置に直接当たらないように配慮する。冷風と温風では吹き出す方向が異なるので注意が必要である。
非常時の対応
▢ 66.「消防法」により、すべての住宅に住宅用火災警報器を設置することが義務付けられている。
ー2004(平成16)年に「消防法」が改正され、2011(平成23)年6月1日までに、すべての既存住宅に住宅用火災警報器を設置することが義務づけられた。
▢ 67.住宅用火災警報器には、温度を感知する熱式(定温式)と、煙を感知する煙式(光電式)がある。
▢ 68.空気より軽い都市ガス用の警報器は使用するガス器具より上に、空気より重いLPガス用の警報器はガス器具より下に設置する。
▢ 69.電気錠は、 ドアホンやテレビドアホンと併用することにより防犯に役立つ。玄関に出なくとも、来訪者を確認してから解錠できる。
▢ 70.自治体によっては、緊急時にペンダント型無線発報機のボタンを押すことにより、警備会社を通じて消防署などに緊急通報するシステムを提供している。
▢ 71.窓防犯装置は、雨戸やシャッターなどのない大きなガラス窓に取り付ける。窓が開閉されたり、ガラスを割られたりすると警報を発する。
▢ 72.ワイヤレス式コールスイッチは、マンションのコンクリート壁などに電波がさえぎられて使用できない場合がある。壁が厚かったり、送・受信機の距離が遠かったりすると、電波が届かない場合がある。
経費、維持管理(メンテナンス)への配慮
▢ 73.福祉住環境整備にかかる経費がいくらかかるか、その経費を誰がどのように負担するかを、常に明確にしておくべきである。
▢ 74.福祉住環境整備が必要になった場合は、本人の身体状況やADL能力をよく見極め、住宅改造で対応するか、福祉用具の活用で対応するか、両者を併用すべきかを検討する。
▢ 75.住宅用火災警報器の本体は10年をめどに交換することを目安とし、感知部分は1年に1回、清掃するようにする。
▢ 76.一定の条件を満たす住宅改修は、介護保険制度による住宅改修費の対象となり、20万円までの部分について支給される。
ー介護保険の適用対象となる住宅改修工事にかかる費用が20万円の場合は、そのうちの1割である2万円は自己負担となり、残りの18万円が介護保険から支給される
▢ 77.介護保険制度による住宅改修費の支給限度基準額は、世帯の収入に関係なく一定であるが、地方自治体における住宅改造費助成制度では、多くの場合、世帯の収入に応じて支給金額が異なる。
▢ 78.浴槽内昇降機を設置した場合、そのままでは浴槽底面の掃除がしにくいので定期的に取り外す必要がある。
ー定期的に取り外して掃除を行う必要があるため、取り外しや再設置が簡単にできるかどうか検討する必要がある。
▢ 79.設備や機器を導入する際にかかる初期費用をイニシャルコストという。
▢ 80.導入後の使用時にかかる電気代やメンテナンス費用などをランニングコストという。
外出
▢ 81.道路と敷地の境界線に設けられたL字溝の立ち上がり部分の段差がある場合、車椅子移動の自立を図るためには、L字溝の変更を検討する。
ー長期にわたる車椅子移動の自立を図るためには、道路管理者にL字溝の切り下げを申請し、立ち上がり部分が低いL字溝への変更を検討する。
▢ 82.片麻痺の場合、道路から玄関へのアプローチ部分の両側に手すりを設置するか、通路幅を広くして中央に手すりを設置する。
▢ 83.車椅子から自動車に乗車する場合、駐車スペースの床面は平坦にする。
▢ 84.スロープの勾配はできるだけ緩やかにし、通路幅は900mm以上確保する。自走用車椅子を使用する場合は1,000mm程度にすることが望ましい。
▢ 85.車椅子を自力駆動する場合は、スロープの長さは、段差の高さの10倍程度、介助による駆動では6倍程度必要である。
▢ 86.階段の手すりは、通常、下りのときに利き手で握れる側に取り付ける。可能な場合は両側に取り付けるとなおよい。
▢ 87.アプローチ部分の照明の照度について、JIS(日本工業規格)では、門・玄関や庭の通路の照明については、推奨照度を5ルクスとし、表札、門標、押しボタン(インターホン)、新聞(郵便)受けなどの付近については30ルクスとしている。
▢ 88.道路面から玄関ポーチまでのアプローチに高低差があり、スロープと緩やかな階段のどちらを採用するかは、対象者の将来の身体状況の変化も考慮して、慎重に判断する。パーキンソン病では、スロープが適さない場合がある。
▢ 89.アプローチの階段やスロープの通路面は、表面を粗い仕上げにして滑りにくくする。アプローチに面した壁面は、肌に触れてもけがをしないように、表面を粗面仕上げにしない。
▢ 90.スロープに折り返しが必要な場合は、スロープの折り返し部分には水平面(踊り場)を設ける。その寸法は、1,500mm x1,500mmを標準とする。
▢ 91.アプローチに階段を設ける場合は、蹴上げ寸法を110~160mm程度にし、踏面寸法を300~330mm程度にする。
▢ 92.手すりの取り付け高さは、階段の場合は段鼻から、スロープの場合は斜面の床面から、手すりの上端までを750~800mmとするのが目安である。
▢ 93.開き戸の把手には、軽く押したり引いたりするだけで開閉できるプッシュ・プル式のものがある。
ーレバーハンドル型の把手や、軽く押したり引いたりするだけで開閉できるプッシュ・プル式の把手は、高齢者も操作しやすい。
▢ 94.壁芯-芯距離を1,820mmにした3枚引き戸の扉は、有効幅員を1,000mm以上確保できる。
▢ 95.玄関戸には、開閉時に身体の移動動作が大きくなる開き戸よりも、引き戸のほうが、高齢者、車椅子使用者のどちらにも適している。
▢ 96.雨水の浸入を防ぐため、玄関戸の下枠と外部の玄関ポーチの段差は最小限にとどめるべきで、高低差20mm以下にすることが望ましい。
▢ 97.玄関の土間にベンチや式台を設置する場合は、土間部分の間口の有効寸法は1,650mm程度(壁芯-芯距離1,820mm程度)必要である。
▢ 98.玄関土間から屋外用の車椅子を使用する場合、玄関土間の奥行きは標準的な車椅子の全長が1,100mmなので、それに100mm程度の余裕をみて1,200mm以上の奥行きを確保する。
▢ 99.玄関土間での車椅子への移乗や、介助者のためのスペースを考慮すると、土間には車椅子の全幅より1,000mm程度広い幅員が必要で、最低でも間口の有効寸法1,650mm(壁芯-芯距離1,820mm)、できれば2,100mm(壁芯-芯距離2,275mm)を確保したい。
▢ 100.上がりかまちを挟んで、屋内用の車椅子から屋外用の車椅子に乗り換える場合、玄関ホールの奥行きは1,500mm 以上必要である。
▢ 101. 玄関の上がりがまちの段差が100mm 程度までで、玄関土間に適切なスペースがあれば段差解消のためのスロープの設置が適している。
▢ 101.玄関土間に式台を設置して上がりがまちの段差を緩和する場合は、式台は、上がりがまちの段差を等分するように設置し、式台の奥行きは400mm以上とする。1段ずつ両足を揃えて昇降する場合は、式台の幅は500mm以上必要である。
▢ 102.可動式(携帯式)スロープを設置すると、玄関ホールから外部の玄関ポーチまでの段差を解消できる。ただし、段差が比較的小さく、介助者がスロープの設置や取り外しを行えることが条件になる。
▢ 103.玄関の上がりがまちを安全に昇降するためには、通常は上がりがまちぎわの壁面に縦手すりを取り付けるが、横手すりを取り付ける場合もある。
ー握力が弱く、縦手すりをしっかりと握れない場合は、階段の手すりと同じように、勾配に合わせて横手すりを取り付ける。
▢ 104.上がりがまちを昇降するために縦手すりを設置する場合、手すりの下端の高さを、土間の床面から750~800mm程度にする。
▢ 105.玄関ポーチや玄関土間を、上がりがまちの高さまでかさ上げして段差を解消するには、屋外の敷地に余裕が必要である。解消した分の段差が屋外に生じることになるので、屋外に長めのスロ―プを設置するなどの対策が必要になる。
▢ 106.玄関の上がりがまちをまたいでベンチを設置する場合は、ベンチ座面の端部から200~250mm程度の位置に立ち上がり動作の補助のため縦手すりを設置する。
▢ 107.上がりがまちに腰かけて靴の脱ぎ履きをする場合は、玄関ホールの奥行きは上がる場合に配慮して、少なくとも1,200mm程度の奥行きを確保する。
屋内移動
▢ 108.在来工法による木造住宅の廊下の幅員は、通常750~780mm程度である。伝い歩きの場合、この程度の幅員があれば特に問題ない。
▢ 109.車椅子を使用して廊下を直進する場合は、車椅子の全幅に100~150mmを加えた幅員があればよい。
▢ 110.車椅子で廊下を直角に曲がるときは、通常の自走用車椅子を使用する場合、廊下の有効幅員が最低でも850~900mmは必要である。この幅員を確保するためには、壁芯-芯距離が1,000mm以上でなければならない。
▢ 111.廊下に取り付ける横手すりの床面からの高さは、通常は、大腿骨大転子の位置に合わせた750~800mm程度にする。
▢ 112.横手すりはできる限り連続するように取り付ける。やむを得ず手すりが途切れる場合も、戸の幅員を考慮して900mm以内とする。
▢ 113.廊下の横手すりは、主にハンドレールとして使用するので、直径32~36mm程度にする。立ち座りや移乗などの動作を補助するグラブバーとして使用する手すりは、直径28~32mm程度がよい。
▢ 114.在来工法による木造住宅の廊下の幅員を広げるために柱を移動することは可能であるが、費用が多くかかるため現実的な方法ではない。
▢ 115.車椅子を使用する場合、車椅子の車軸やフットサポートで壁面を傷つけるのを防ぐため、廊下の壁面に幅木を数枚張り上げて、350mm程度の「車椅子あたり」にする。
▢ 116.つえ歩行の場合には、歩行音や衝撃音を吸収するタイルカーペットのような床仕上げとすることが望ましい。
ー毛足の長いじゅうたんは、つま先を引っ掛けやすく危険である。
▢ 117.車椅子を使用する場合は、床面の段差をなくすことが望ましいが、段差にすりつけ板を取り付けて対応できる場合もある。
▢ 118.脳血管障害による片麻痺者や関節リウマチによる車椅子使用者の場合、居室への出入り口の床段差を解消する方法としては、すりつけ板の設置は足部への負担が大きく、適切でない。
▢ 119.床上移動の場合は、床面に少々の段差があっても手膝這いで段差を昇降できる場合もあるが、膝に段差の角が当たり、負傷の原因になる。
▢ 120.3尺モジュール(910mm=3尺を基準寸法)で造られた住宅の場合、開き戸の内法寸法は700~720 mm程度で、車椅子の通行が困難である。
▢ 121.廊下の幅員が750~780mmの場合、自走用車椅子で通行可能な出入り口の標準的な有効幅員は850~900mmであるが、車椅子の操作能力が低い場合は、これでは通行が困難なことがある。
▢ 122.寝室が2階にある場合、寝室とトイレ、階段の位置関係に配慮することが特に重要で寝室からトイレへの動線の途中に階段の下り口があると、夜間に転倒・転落するおそれがあり、危険である。
▢ 123.階段のうち、方向転換を必要としない直線階段は昇降しやすいが、安全であるとはいえない。
ー直線階段は方向転換を必要としないので昇降しやすいが、万一転落した場合には、階下まで一気に落下するおそれがある。
▢ 124.階段の形状を、180度回り部分を60度+30度+30度+60度の4ツ割にしたらせん階段にすると、60度の段に広い平坦部分ができ、これを利用して方向転換ができるので、転落の危険性が低い。
▢ 125.吹き寄せ階段と、踊り場+3段折れ曲がり階段を比較すると、吹き寄せ階段のほうが安全性が高い。
▢ 126.「建築基準法」は、階段の勾配を蹴上げ230mm以下、踏面150mm以上と定めているが、この寸法では高齢者や障害者にとっては危険である。
▢ 127.階段には、必ず蹴込み板を設けて足先が入り込まないようにし、蹴込み寸法は30mm以下にする。
▢ 128.高齢者等配慮対策等級の等級5と4に評価される階段の勾配は6/7以下で、かつ、蹴上げの寸法の2倍と踏面の寸法の和が550mm以上、650mm以下と規定されている。
▢ 129.階段の両側、もしくは片側に手すりを設置することが、「建築基準法」により義務づけられている。
▢ 130.階段の片側に手すりを設置する場合は、転落の危険性がより大きい下りの際に、利き手側に手すりがくるようにする。階段から転落する危険性は、上りのときよりも下りのときのほうが大きい。
▢ 131.階段の手すりの壁からの突出が100mm以内であれば、階段の有効幅員を算定する際に手すりの部分を含めてよい。
▢ 132. 階段の手すりは連続していることが望ましいが、どうしても階段の手すりを連続させることができない場合は、端部の空き距離を400mm以内にする。
▢ 133.「階段の踏面の段鼻部分に、滑り止めのために取り付けるノンスリップは、金属製や、金属の枠にプラスチックやゴムなどをはめ込んだノンスリップは、転倒した際にけがの原因になるため使用を避ける。
▢ 134.壁と階段、階段の蹴上げと踏面が同系色だと、特に夜間などは見分けがつきにくく、壁にぶつかったり、階段を踏み外したりすることがある。色彩を変え、コントラスト比を高くしたほうがよい。
▢ 135.足もとに影ができないよう、少なくとも階下と階上の2か所に、できれば中央付近にも照明を設置する。さらに足元灯も併用すると、より安全である。
排泄
▢ 136.トイレ出入り口の段差は、つまずきにも配慮して、出入り口下枠とトイレ床面の高低差を5mm以下とすべきである。
▢ 137.トイレの戸を開き戸にする場合は、外開きにする。内開きだと、万一トイレの中で倒れたときに外からの救出が困難になる。
▢ 138.通常、トイレの戸の有効幅員は600mm程度だが、800~850mm程度確保したものもある。
▢ 139.排泄時に介助を必要とする場合、便器の側方や前方に幅500mm以上の介助スペースを確保する必要がある。
ー介助者は前傾姿勢をとることが多く、臀部が突出するので、介助者が立つ便器の側方、もしくは前方に、幅500mm以上のスペースが必要である。
▢ 140.便器の側方、もしくは斜め前方から自走用車椅子でアプローチする場合、 トイレのスペースは間口1,650mmx1,650mm(壁芯-芯距離1,820mm×1,820mm)が標準的である。
▢ 141.トイレの立ち座り用の縦手すりは、通常は便器の先端から200~300 mm程度前方の側面に設置する。身体機能が低下するにつれて、手すりをより前方の低い位置に設置したほうが使いやすくなる。
▢ 142.座位保持用の横手すりは、便器の中心線から左右に350mmの位置に、左右対称に取り付ける。高さは便座面から220~250mm程度上にする。
▢ 143.車椅子使用の場合、横手すり(またはL型手すりの横手すり部分)の取り付け高さは、車椅子のアームサポートの高さにそろえるのが基本である。
▢ 144.自走用車椅子で便器の側方からアプローチする場合、出入り口から車椅子を直進させたときに、車椅子が便器と直角に近い配置になるように、あらかじめ便器と出入り口の配置を考慮する。
▢ 145.便器の側方の壁のない側に手すりを固定すると、車椅子からの移乗や介助の際に邪魔になるので、可動式手すりを設置することが望ましい。
▢ 146.便座からの立ち上がり動作を介助する場合、介助者は本人の側方に立つことが多い。
ー介助者が本人の側方に立ち、臀部に手を添えて立ち上がりを補助することが多いが、正面に立って身体を支える場合もある。
▢ 147.片麻痺の場合、便器に座った状態で健側に壁面と手すり、麻痺側に車椅子や介助のためのスペースを設けるのがよい。
ー右片麻痺と左片麻痺では、便器や手すりの適当な設置位置が異なり、左右対称の配置になる。
▢ 148.洋式便器における便座の座面高さは、通常370~390mm程度である。
▢ 149.高齢者の場合、便座の座面の高さを検討する際には、踵が床面に届かないと、座位姿勢が安定しない。高齢者の場合、立ち上がり動作のしやすさよりも座位姿勢の安定性を優先する。
▢ 150.車椅子から一度立ち上がってから移乗できる場合は、歩行できる場合の便器の座面の高さと同様にする。立ち上がらずに車椅子から便器に直接移乗する場合は、便器の座面の高さを車椅子の座面の高さにそろえる。
▢ 151.便器のかさ上げをして座面を高くした場合、壁面の手すりの位置も変更する必要がある。
ー座位保持用の横手すり、または、L型手すりの横手すりの部分の取り付け位置を、便座の座面から220~250mm上方にする。
▢ 152.トイレの床面は汚れやすいが、マットを使用すると、端に足を引っ掛けて転倒したり、マットごと滑ったりすることがあるので、使用は避ける。
▢ 153.オストメイト(人工肛門、人工膀胱造設者)が使用する汚物流しは、縁の高さが、腹部を近づけやすい位置になるようにする。
▢ 154.JIS(日本工業規格)では、 トイレの照明の推奨照度を75ルクスとしている。この推奨照度は、廊下や階段よりも高い設定である。
▢ 155.トイレの臭気は便器内から発生するので、排気口は床面に近い壁面に設置する。
▢ 156.ペーパーホルダーを横手すりの上方に設置する場合は手すりから200mm以上、下方に設置する場合は50mm以上の間隔を空ける必要がある。
入浴
▢ 157.浴室の戸には内開き戸が使用されることが多いが、スペースなどの制約がなければ引き戸にしたほうがよい。
ー内開き戸は、万一浴室内で転倒したときに、外からの救助が困難になることがある。引き戸は開閉動作がしやすい。折れ戸は高齢者や障害者には操作が困難な場合がある。
▢ 158.浴室出入り口の開口部の有効幅員は、通常、600mm程度しかなく、車椅子を使用する場合は通行が難しい。幅員の拡張が必要である。
▢ 159.浴室の戸を3枚引き戸にするためには、開口部の取付寸法が柱芯-
芯距離で1,800mm程度必要だが、開口部の有効幅員が1,000mm以上得られるため、車椅子での出入りも容易である。
▢ 160.浴室の出入り口と洗い場の床面には、通常、100~150mm程度の段差があるが、歩行で移動できる場合でも、この段差を20mm以下、介助用車椅子やシャワー用車椅子を使用する場合は5mm以下にすることが望ましい。
▢ 161.洗い場の床面をかさ上げする場合、床面の水勾配は、湯水が出入り口の反対側に流れるようにし排水溝から排出する。
▢ 162.T型バー状のグレーチングは、穴の開いたパンチング型グレーチングよりも強度が高い。
▢ 163.浴室内すのこを設置して段差を解消した場合、洗い場の床面から浴槽縁までの高さは相対的に低くなる。
ーすのこを設置すると、洗い場の床面から浴槽縁までの高さは低くなり、水栓金具と床面の間は狭くなるため、使い勝手への配慮が必要である。
▢ 164.高齢者等配慮対策等級の等級5、4の評価基準では、浴室の内法寸法は短辺で1,400mm以上、かつ、面積が2.5㎡以上とされている。
▢ 165.介助者が2名必要な場合、浴室のスペースを間口1,600mmx奥行き2,100mm程度確保することが望ましい。
▢ 166.出入り口の正面に浴槽があるレイアウトの欠点は、シャワー水栓に向かって歩行する際に手すりを使用できないことである。
ー出入り口の開口部の幅員を広くしやすい利点がある一方、シャワー水栓に向かって歩行する際に手すりを使用できないという欠点もある。
▢ 167.車椅子での移動が自立していて、車椅子で浴室内に乗り入れる場合には、浴室のスペースが間口1,600mmx奥行き1,600mm(壁芯-芯距離で間口1,820mmx奥行き1,820mm)以上必要である。
▢ 168.浴室内を座位移動する場合は、床面に直接座ることは避ける。褥瘡予防のため、床面に直接座ることは避け、浴室用マットを使用する。
▢ 169.浴槽への出入りを立ちまたぎで行う場合、身体を壁面に向けてまたぐ方法が一般的である。
ー身体を壁面に向け、壁面に設置した縦手すりを両手で握って浴槽をまたぐ方法が一般的である。
▢ 170.浴槽を座位でまたぐ場合、座位位置は、浴槽上、浴槽の洗い場側、浴槽の長辺方向の3か所のいずれかになる。座位位置が浴槽上の場合はバスボードを使用する。
▢ 171.立位、もしくは座位で浴槽に出入りする場合、浴槽縁の高さは、洗い場の床面から400mm程度が適しているので、浴槽縁が洗い場の床面から400mm程度の高さになるよう、浴槽を洗い場の床面より低い位置に埋め込むとよい。
▢ 172.浴槽縁の全体を厚くしておくと、またぎ越しの動作が不安定になりやすい。浴槽縁に腰かける場合は、腰かける部分だけを厚くして、他の部分はなるべく薄くする。
▢ 173.2階以上に浴室を設ける場合は、在来工法では必ず防水工事を行わなければならないが、ユニットバスを設置する場合は、その必要がない。
ーユニットバスは防水性能の信頼性が高いため、床面等の防水工事を行う必要がない。
▢ 174.浴槽の種類には、和式浴槽、洋式浴槽、和洋折衷式浴槽があるが、高齢者や障害者に適しているのは、背もたれの部分が少し傾斜している和洋折衷式の浴槽が適している。
▢ 175.浴槽の長さは1,100~1,300mm程度が使いやすい。つま先が浴槽壁に届くことが重要で、届かないと身体が前方にずれて、おぼれるおそれがある。
▢ 176.シャワー水栓は、目盛りを合わせて温度調節ができるサーモスタット付き水栓がよい。
▢ 177.居室との温度差が大きくならないように、浴室や洗面・脱衣室にも暖房設備を設置する。
更衣(着脱衣)・洗面・整容
▢ 178.洗面・脱衣室では、プライバシーにかかわる動作の内容を把握することは難しいが、住環境整備の趣旨を説明し、細かいところまで確認をとりながら、動作に必要なスペースなどを検討する。
▢ 179.洗面・脱衣室のスペースは、高齢者や障害者の場合、間口1,650mm×奥行き1,650mm程度確保する必要がある。
▢ 180.洗面・脱衣室用の床仕上げ材として通常よく使用されるものに、フローリング材やPタイルなどがある。
▢ 181.車椅子対応の洗面カウンターの取り付け高さは、通常、床面から720~760mm程度である。
▢ 182.洗面台の鏡は、座った状態でも立った状態でも見やすいように、縦方向の寸法を長くする。鏡を重けて設置すると、どちらの姿勢でも見にくくなる。
▢ 183.洗面台の水栓金具はシングルレバー混合水栓で、操作レバーが長めのものがよい。
▢ 184.冬季は洗面・脱衣室にも暖房を行うことが望ましいが、暖房器具は温風を吹き出すものより、輻射暖房が適している。
ー濡れた身体に温風が当たると、水分が蒸発して身体が冷えてしまうため、パネルヒーターのような輻射暖房が適している。
調理と食事・団らん
▢ 185.キッチンと食堂・居間の間は、壁や建具で仕切るよりも、ハッチやカウンターを設けて適度に視線をさえぎる程度に仕切ると、家族とのコミュニケーションがとりやすく、配膳にも便利である。
▢ 186.キッチンカウンターの代表的な配置にI型配置とL型配置があるが、車椅子での移動に適しているのはL型配置である。
▢ 187.標準的なキッチンカウンターの高さは、800mmと850mmの2種類だが、車椅子で調理する場合はもっと低くしたほうがよい。
ー車椅子で調理する場合のキッチンカウンターの高さは、740~800 mm程度が目安である。
▢ 188.シンクの深さは、通常180~200mm程度だが、車椅子で調理する場合は120~150mm程度の浅いものが適している。シンクの下部に車いすや膝を入れやすくなる。
▢ 189.キッチンの収納棚は、目線の高さを上限にすることが望ましいが、車椅子で使用する場合は、キッチンカウンターの作業面から収納棚の下端までに400mm以上の間隔をとり、さらに、調理中に頭がぶつからないように、収納棚の奥行きを250mm以下にする。
▢ 190.電気調理器は、天板の鍋を置く部分が加熱される。電磁調理器は、電磁気を利用して鍋自体を発熱させる。鍋や調理器具が制限されることがある。
▢ 191.身体機能の低下した高齢者や障害者が調理を行うことは少ないのが、料理をつくる楽しみは高齢者や障害者の生活にメリハリを与えるので、主に家族が調理を行う場合も本人専用のミニキッチンの設置などを検討する。
就寝
▢ 192.高齢者や障害者の寝室は、家族のいる居間などに隣接させたほうが、コミュニケーションがとりやすい。ただし、本人がプライバシーを重視する場合は独立性を優先する。
▢ 193.コルク床は弾力性があり、しかも断熱性が高いので、高齢者や障害者に適している。コルク材の厚さ3~10mm程度の製品が市販されているが、できるだけ厚いものを選択する。
▢ 194.ベッド、車椅子を使用する場合、1人用の寝室でも8畳程度のスペースが必要である。ベッドのほかに棚やテレビなどを置く場合、車椅子の移動や移乗を妨げないよう配置する。
▢ 195.寝室の窓は、屋外に直接出入りできる掃き出し窓にし、車椅子でも出入りできる有効幅員を確保する。
▢ 196.寝室の照明は、ベッド上から光源が直接眼に入らない位置に設置するか、間接照明を用いる。
▢ 197.上肢に障害があり腕を高く上げられない場合は、床面から800~900mm、あるいはそれ以下の位置に設置するが、700mm以下ではかがむ必要があり、かえって操作しづらい。
▢ 198.JISでは、寝室全体の照明の推奨照度を20ルクスとしているが、高齢者の移動を考慮するとそれでは暗すぎる。少なくとも居間と同程度の50ルクス程度は必要である。
高齢者等への配慮に関する評価基準
▢ 199.高齢者等配慮対策等級の等級5に評価されるためには、特定寝室、玄関、便所、浴室、洗面所、脱衣室、食事室が同一階に配置されていなければならない。
▢ 200.高齢者等配慮対策等級の等級5~2に評価されるためには、玄関のくつずりと玄関外の高低差は20mm以下でなければならない。
▢ 201.高齢者等配慮対策等級の等級5に評価されるためには、浴室の出入り口の段差は5mm以下でなければならない。
ー等級5に評価されるためには、浴室の出入り口の段差を無くさなければならない。ただし、5mm以下の段差ならば段差のない構造とみなされる。
▢ 202.高齢者等配慮対策等級の等級5、4に評価されるためには、階段の勾配が6/7以下で、かつ、蹴上げの寸法の2倍と踏面の寸法の和が550~650mmでなければならない。
▢ 203.高齢者等配慮対策等級の等級5に評価されるためには、階段の両側に手すりが設置されていなければならない。ただし、階段の勾配が45度以下で、ホームエレベーターが設置されている場合は、手すりは片側に設置されていればよい。
▢ 204.高齢者等配慮対策等級の等級5に評価されるためには、通路の有効幅員は850mm以上(柱等の箇所は800mm以上)でなければならない。
▢ 205.高齢者等配慮対策等級の等級5、4に評価されるためには、特定寝室の面積が内法寸法で12㎡以上でなければならない。等級3は9㎡以上である。
建築図面のルールと読み方
▢ 206.建築図面には、基本設計図と実施設計図がある。基本設計図は、主に建築主と設計者の打ち合わせのために作成される。
▢ 207.建物の外観を横から見た壁面の姿を示す図面は、立面図である。通常、建物の平面は四角形なので4面の立面図が描かれる。
▢ 208.設計図書によって記載内容が食い違っている場合は、現場説明に対する質問回答書が最も優先される。
▢ 209.建築図面の表現方法は、大筋ではJIS(日本工業規格)が定める規格に沿った作図方法になっていが、慣習的に用いられている方法などが混在している場合がある。
▢ 210.一般に、図面上で敷地境界線を表すのは、一点鎖線の中間の線である。
▢ 211.敷地内の門扉、フェンス、通路、駐車スペース、テラスなどの形状が描かれる図面は、外構図である。
ー外構図には、敷地内の門扉、フェンス、通路、駐車スペース、テラスなどの形状や仕上げ材料、門灯、庭園灯、植栽な どの位置、種類などが示される。
住環境整備における留意事項
▢ 212.住環境整備において、木造住宅の耐震診断では、筋かいがなくても耐震上評価できる壁は耐震要素にできる。筋かいがなくても、その壁を撤去してよいとは限らない。
▢ 213.JISの認証またはJASの認定により表示できる等級表示記号のF☆☆☆☆(エフフォースター)は、シックハウスの原因になるホルムアルデヒドの発散量が最も少ない建築材料であることを表している。
▢ 214.住宅改修を行う場合、壁や床などの断熱性能が十分でない場合は、同時に断熱材の交換を行うことを検討するとよい。
▢ 215.キッチンと食事室が一体になっているダイエングキッチンの場合、その部屋全体が「建築基準法」による内装制限を受ける。ただし、キッチンと食事室の間に、天井から50cm以上の垂れ壁を設ける場合は、キッチンのみに内装制限が適用される。
▢ 216.分譲共同住宅(マンションなど)の住戸内部の居住空間を、専有部分という。
▢ 217.賃貸共同住宅の専用部分を改修した場合、通常は退居するときに入居時の状態に戻さなければならないが、許可を得て福祉住環境整備を行った場合であっても、原則として退居時に原状回復を行わなければならない。
▢ 218.分譲共同住宅の、コンクリートの躯体に孔を開けて手すりを設置する場合は、管理規約などを確認し、住環境整備の承認を得る必要がある。
ー分譲共同住宅の躯体は共用部分で、通常、躯体の損壊や穿孔は原則として禁止されているが、安全や生活上の必要のために小規模な穿孔を許可している場合もある。
介護保険制度における住宅改修
▢ 219.介護保険制度における住宅改修費は、保険者(市町村)が必要であると認める場合に支給される。
▢ 220.「手すりの取り付け」や「段差の解消」は、介護保険制度による住宅改修費の支給の対象となる。
ー介護保険制度による住宅改修費の支給の対象になるのは、手すりの取り付け、段差の解消、床や通路面の材料の変更、扉の取り替え(扉の撤去を含む)、便器の取り替えなどである。
▢ 221.老朽化に伴う家屋の改修や、生活動作の自立に資さない住宅改修は、介護保険制度による住宅改修費の支給の対象にならない。
▢ 222.介護保険制度による住宅改修費の支給限度基準額は20万円で、要支援・要介護度にかかわらず定額である。
▢ 223.介護保険制度による住宅改修は、20万円以上を要する住宅改修についても適用されるが、20万円を超えた部分については全額が自己負担となる。
▢ 224.介護保険制度における住宅改修費の支給は、要介護状態区分が3段階以上重くなった場合には、再度20万円までの支給限度基準額が設定される。
ー要介護状態区分が3段階以上重くなった場合、転居により再度住宅改修が必要になった場合には、支給限度基準額がリセットされ、再度、支給限度基準額の20万円まで支給を申請することができる。
▢ 225.同一住宅に複数の要介護者が居住する場合は、同時期であっても被保険者ごとに住宅改修費の支給を申請することができる。
▢ 226.介護保険制度による住宅改修費の自己負担割合は、他のサービスと同様、原則として1割(一定以上所得者については、2割または3割)となっている。
▢ 227.介護保険制度における住宅改修費の支給は、原則として償還払いであり、利用者は工事費用の金額をいったん支払い、後日、保険給付対象部分が変換される。
▢ 228.住宅改修費の給付を受けるには、原則として住宅改修を行う前に、介護支援専門員等が記載した理由書、費用の見積もり等が記載された書類を保険者(市町村)に申請する。
ーさらに、改修工事が完了した後には、領収書、工事完成後の状態を確認できる書類等を保険者(市町村)へ提出し、正式な支給申請を行う。
▢ 229.事前申請の際に提出する理由書では、住宅改修の目的、改修の内容とその効果を明確にすることが重要である。介護支援専門員等が作成する。
▢ 230.住宅改修の効果には、「生活動作の自立促進」のほか、「介護負担の軽減」も含まれる。
ー住宅改修の効果として、①生活動作の自立促進、②介護負担の軽減、③地域社会への参加、④介護費用の軽減などがあげられる。
▢ 231.2017年度介護保険法改正により、事前申請時に利用者が市町村(保健者)に提出する見積もり書類の様式は、改修内容、材料費、施工費などの内訳が明確になるよう、国が定めたものに統一することになった。
▢ 232.住宅改修の際には、介護支援専門員等が複数の住宅改修事業者から見積もりをとるよう、利用者に対する説明を促進する。
第6章 在宅生活における福祉用具の活用
福祉用具の意味
▢ 1.介護保険制度による福祉用具の給付は、貸与が原則とされているが、入浴や排泄に供するものなどの特定福祉用具は、販売の対象となっている。
▢ 2.介護保険の福祉用具貸与については、国が全国平均貸与価格を公表し、貸与価格の上限を設定する。
ー上限は、商品ごとに「全国平均貸与価格+1標準偏差(1SD)」となっている。
▢ 3.公表された全国平均貸与価格や設定された貸与価格の上限については、概ね1年に1度の頻度で見直しが行われる。また新商品については、3ヶ月に1度の頻度で同様の扱いとする。
▢ 4.福祉用具貸与事業者は、利用者に対して、機能や価格帯の異なる複数の商品を提示しなければならない 。
▢ 5.福祉用具貸与事業者は、利用者に対して、全国平均貸与価格とその事業者の対応価格の両方を提示し、説明しなくてはならない 。
▢ 6.介護保険の給付対象となる福祉用具の範囲に含まれるのは、日常生活の場面で使用するものに限られ、治療用等医療の観点から使用するものは含まれない。
▢ 7.「障害者総合支援法」に基づいて給付される補装具と、介護保険で貸与される福祉用具のうち、共通する種目については、介護保険による給付が優先される。ただし、障害者の身体状況に個別に対応する必要がある場合は、補装具として給付することができる。
起居・就寝
▢ 8.特殊寝台と特殊寝台付属品は、介護保険制度による福祉用具貸与の対象である。特殊寝台付属品とは、サイドレール、マットレス、ベッド用手すりなどである。
▢ 9.介護保険制度における、特殊寝台の給付対象となるのは要介護2~5である。
▢ 10.介護保険制度で福祉用具貸与の対象となる特殊寝台は、「背部または脚部の傾斜角度が調整できる機能」と「床板の高さが無段階に調整できる機能」のいずれかを有するものとされている(両方の機能を持つものもある)。
▢ 11.特殊寝台を操作するときは、ベッドの曲がる部分に臀部が位置するようにする。
ーベッドの曲がる部分に臀部が位置するようにする。身体がずれていると、腰部や背部が圧迫される。
▢ 12.特殊寝台のフレームに取り付けるサイドレールは、強く引いたり、体重を支えたりするようには作られていない。寝返りや起き上がりの動作の補助には、ベッド用手すりを用いる。
▢ 13.ベッド用手すりは、寝返り、起き上がり、立ち上がりのほか、車椅子への移乗動作の補助にも用いられる。
▢ 14.介助用ベルトは、ベッドからの立ち上がりや車椅子への移乗などの介助を容易にするためのベルトで、介護保険制度では、特殊寝台付属品として、貸与される。ただし、入浴用介助ベルトは、入浴補助用具として販売の対象となっている。
▢ 15.スライディングマットは、身体の下に敷き、身体を滑らせて体位の変換や移動を行う福祉用具で、筒状に縫製されたものが多い。
▢ 16.スライディングボードは、ボード上で臀部を滑らせ、ベッドから車椅子やポータブルトイレヘの移乗を座位姿勢のまま行う際に使用する。
▢ 17.体位変換用クッションは、背部や腰部、上肢、下肢などに差し込んで、体位の変換や保持を容易にするために使用する。
▢ 18.起き上がり補助装置は、床上からの起き上がり動作を補助する福祉用具である。
移動/つえ
▢ 19.つえの高さは、つま先より斜め前方150mmにつえをついたときに、肘が約30度曲がつている程度がよい。握りの部分が大腿骨大転子の位置にくるのが目安である。
▢ 20.片麻痺の場合の2動作歩行の動作は、つえと同時に患側の足を出す、健側の足を出す、の順に動作を行う。
▢ 21.下肢機能が低下している人に広く用いられているT字型つえは、介護保険制度の給付対象ではない。
▢ 22.多脚つえは、歩行障害が重度な場合に適応される。構造上、床面の凹凸に影響を受けやすく、やや重いため、屋外での使用は制限されることが多い。
▢ 23.松葉づえを両側につくと、片側の下肢に一切荷重をかけることなく歩行できる。骨折後など、患側に荷重できない場合に用いられる。
移動/歩行器
▢ 24.歩行器や歩行車は、つえよりも歩行時の安定性や支持性が高い。方向転換に広いスペースを要し、段差や傾斜に対応しにくい。
▢ 25.固定型歩行器は、歩行時に両手で歩行器全体を持ち上げる必要があるので、握力が低下している人には使いにくい。
ー固定型歩行器は、歩行器を両手で持ち上げて前に出し、続いて両下肢を交互に前に振り出して前進する。握力が低下している人や、肩や肘の動きが制限されている人には使いにくい。
▢ 26.フレームが斜めに変形する交互型歩行器は、歩行器全体を持ち上げることなく、片側ずつ交互に前に出せる。歩行訓練にも使用される。
▢ 27.脚部に車輪を有する歩行車は、歩行器に比べて軽い力で前方に押し出すことができる。反面、前方に押しすぎると転倒するおそれがあるので注意が必要である。
▢ 28.シルバーカーは、自立歩行ができる人が補助的に用いるもので、歩行器・歩行車のように身体を十分に支える機能はもたない。
移動/車椅子
▢ 29.JIS(日本工業規格)により、手動車椅子の寸法は全長1200mm以下、全幅700mm以下、全高1200mm以下にするよう定められている。
▢ 30.自走用(自操用)標準形車椅子の後輪の直径は20~24インチ程度、介助用標準形車椅子は14~16インチ程度で、自走用のほうが大きい。
▢ 31.車椅子の後輪の空気圧が減少すると、ブレーキ制御が不十分になるため、定期的に空気圧の点検が必要である。
▢ 32.車椅子の座面に通常使われているスリングシートは、クッション性や姿勢の保持機能は乏しい。座位の姿勢保持や安定性を高め、臀部に加わる圧力を分散するためにクッションを用いる。
▢ 33.リクライニング式車椅子は、背もたれが後方に45度、あるいは90度傾斜する。シートと背もたれが一定の角度を保ったまま後方に倒れる機構を持つのは、ティルト&リクライニング式車椅子である。
▢ 34.六輪車椅子は、前輪キャスタと後輪の距離を短くし、回転半径を小さくした車椅子である。
▢ 35.貸与の対象となる標準形電動車椅子には、方向操作機能がジョイスティックレバーによるもの、ハンドルによるもののどちらも含まれるが、各種のスポーツのために特別に工夫されたものは含まれない。
▢ 36.標準形電動車椅子は、顎や足部などで操作できる位置にコントロールボックスを設置することにより、上肢機能に障害がある人も使用できる。
▢ 37.ハンドル形電動車椅子は、屋内での使用には適さない。重量が重く、回転半径が大きいことなどから屋内での使用には適さない。
▢ 38.簡易形電動車椅子は、自走用標準形車椅子に、バッテリー、モーター、コントロールボックスからなるユニットを装着し、電動化したものである。
▢ 39.パワーアシスト型車椅子は、電力などの動力によって動きを補助する機能が付いた車椅子で、長距離の移動に適している。
移動/その他
▢ 40.庭の掃き出し窓や玄関の上がりがまちなどの、おおむね1m以内の段差で、スロープを設置することが困難な場合は、段差解消機が有効である。駆動方法は、電動で昇降するものが主流である。
▢ 41.階段に設置したレールに沿って椅子が昇降する固定型階段昇降機は、移動中に座位姿勢を保持できることが適応条件となる。座位姿勢の不安定な人に適していない。
▢ 42.移動用リフトは介護保険制度による福祉用具貸与の対象である。ただし、移動用リフトの吊り具の部分は、福祉用具購入費支給の対象である。
▢ 43.床走行式リフトは、ベッドの下のスペースが空いていないと使用できない。
▢ 44.天井に敷設するレールを延長すれば、部屋間の移動も可能である。ただし、大がかりな工事が必要となる。
排泄
▢ 45.据置式便座は、和式・両用便器の上に置いて腰かけ式に変換する用具である。既存の洋式便器の上に置いて座面高さを補う用具は、補高便座である。
▢ 46.便座を高くしすぎると座位姿勢が不安定になり、排泄動作が困難になることがある。洋式便器に補高便座を置いて高さを補う際は注意が必要である。
▢ 47.立ち上がり補助便座は、洋式便器からの立ち座りを補助する据置式の機器である。
▢ 48.ポータブルトイレを導入する場合も、できる限りトイレで排泄を行うようにするのが基本である。ポータブルトイレの使用は、プライバシーや自尊心が保護されにくいため、 トイレヘの移動ができない場合や間に合わない場合に限るべきである。
▢ 49.福祉用具のトイレ用手すりは、下肢の麻痺、筋力の低下、痛みや平衡機能障害のある高齢者や障害者等の立ち座りや排泄姿勢の保持を助けるもので、洋式便器をはさむようにして固定するなど、工事を伴わず簡易に設置できる手すりで、壁や柱に強固に設置する手すりに比べると強度は劣る。
▢ 50.トイレ用車椅子は、車椅子の座面が便座になっていて、座ったまま後方から洋式便器に乗り入れて排泄を行う。
▢ 51.介護保険制度は、自動排泄処理装置の本体は貸与の対象であるが、尿や便の経路となるレシーバー、チューブ、タンク等の交換可能部品は販売の対象になっている。
入浴
▢ 52.入浴用椅子は、洗体や洗髪動作を支援する福祉用具であり、脚部に高さの調整機能がついているものがほとんどである。背もたれ、アームサポートを有するものは、座位姿勢が安定するが、介助者スペースが狭められることに留意する。
▢ 53.浴槽縁を挟んで固定するタイプの浴槽用手すりは、強固な固定性が得られないため、体重を大きくかけるとずれたり外れたりするおそれがある。浴槽をまたぐときに体重を軽く支えるために用いる。
▢ 54.浴槽内椅子は、浴槽内で座位姿勢を保持するための椅子として使用するほか、浴槽に出入りする際の踏み台としても使用できる。
▢ 55.入浴台には、両端を浴槽縁にかけて使用するバスボード、一方の端を浴槽縁にかけ、もう一方の縁を脚で支える移乗台などがある。
▢ 56.福祉用具の浴室内すのこは、ずれやがたつきを防ぐため、洗い場の形状に合わせて作成する。
▢ 57.入浴用リフトの使用時に身体を支える吊り具には、シート状のものと椅子式のものがあるが、シート状のほうが深く浴槽につかれる。
ー椅子式の吊り具は、関節の保護が必要な場合や、座位のバランスが悪い場合に用いられるが、座面の高さにより、肩まで湯につかれないことがある。
▢ 58.シャワー用車椅子は、車椅子で浴室に移動し、そのまま洗体用の椅子として使用できるが、浴室までの段差が解消されていることが必要である。
ーシャワー用車椅子は、キャスタ径が小さいため、小さな段差も解消しておかないとスムーズに移動できない。
生活動作補助用具
▢ 59.筋力や関節の動きなどを代替し、自力でできない動作を自力で行えるようにするための道具を自助具という。筋力や関節の動きの代替、物の固定、姿勢の維持などの機能を持つ。
▢ 60.入浴時に使用する柄付きブラシは、上肢の関節の変形や痛み、筋力の低下などで、頭、首、背中、足部など洗いたい場所に手が届かない場合に用いる自助具である。
▢ 61.ストッキングエイドは、前傾姿勢がとれない、肩や肘の関節に障害がある、などの理由で足部に手が届かない人が、自力で靴下をはけるようにした道具である。
▢ 62.バネ箸は、手元側が連結しており、ピンセットのように食物をつかめる。手指の巧緻性が低下している場合に用いられる。
▢ 63.上下肢の運動機能に障害のある人が、残存する機能を活用して電化製品などのスイッチ操作を行えるようにした装置を、環境制御装置という。
ー環境制御装置には、呼気・吸気スイッチ、まばたきを感知する光ファイバースイッチなど、さまざまな方式の操作スイッチがある。
聴覚・言語障害関連の用具
▢ 64.携帯用会話補助装置は、合成音声または録音音声などによって、言葉や意思を相手に伝えることができる装置である。
▢ 65.屋内信号装置は、聴覚に障害のある人が、玄関のチャイム、電話の着信、時計の目覚ましアラームなどを知る手段として用いる装置である。
▢ 66.補聴器は、音を電気的に増幅する機器で、音のゆがみや言葉の聞き分けにくさに対する効果はあまりない。
▢ 67.反響の多い場所での会話は、補聴器では聞き取りにくい。複数の人の声が重なる会話、遠くからの音、反響の多い場所での音声などは、補聴器では聞き取りにくい。
▢ 68.補聴器対応電話を使用する場合、補聴器に受信用の磁気誘導コイルが内蔵されていなければならない。
▢ 69.骨伝導式の補聴器や電話は、伝音難聴の場合には効果が期待できるが、感音難聴には効果がない。
▢ 70.会話を行う際に聴覚障害者が用いるコミュニケーション機器としては、補聴器が代表的であるが、軽度の難聴者は伝声管や集音器なども利用できる。
ー伝声管とは、音声を伝えるための細長い管で、細いほうを難聴者の耳に当て、話者は、ラッパ状に広がった側に口を当てて話す。
▢ 71.聴覚障害者用情報受信装置は、聴覚障害者向けCS放送の受信機能を持ち、災害時には、緊急災害放送の開始をフラッシュによって知らせる。
視覚障害関連の用具
▢ 72.卓上式の拡大鏡は、焦点調節の必要がなく、扱いやすい。卓上式の拡大鏡は、対象物の上に置くと焦点が合うようになっているので、前後に動かして焦点調節をする必要がない。
▢ 73.羞明の原因となるのは波長の短い青い光なので、波長の短い光を遮る黄色や赤系統の遮光眼鏡が用いられる。
▢ 74.低視力者が単眼鏡を用いる場合、処方しようとする眼が完全矯正されていることが重要である。
▢ 75.点字器は点字を書く道具で、板、点筆、定規からなる。板に紙を挟み、穴のあいた定規を当て、点筆で紙の裏側から点字を打つ。
▢ 76.歩行時間延長信号機用小型送信機は、弱者感応式信号機を遠隔操作して、青信号の時間を延長できる。
▢ 77.罫プレート(タイポスコープ)の黒い囲みは光の反射によるまぶしさを軽減し、文書を読みやすくする効果がある。
▢ 78.矯正眼鏡、遮光眼鏡、弱視眼鏡、コンタクトレンズは、「障害者総合支援法」に基づいて給付される補装具に含まれる。
義肢・装具
▢ 79.義肢・装具ともに、医師の処方に基づいて、義肢装具士が製作する。
▢ 80.能動義手は、物をつかむ、握るなどの日常的な動作を行うための義手であり、作業用義手は、特定の作業に用いる義手である。
▢ 81.股義足は股関節離断の場合に装着する器具である。
▢ 82.装具とは、四肢または体幹に機能障害を生じた場合に、固定・保持・補助、変形の予防、矯正等を目的として用いられる器具である。
ー装具には、医学的治療のために使用される治療用装具と、ADL等の向上のために使用される更生用装具がある。
▢ 83.「障害者総合支援法」の補装具費について支給範囲が拡大し、「貸与」が支給の対象となった。
ー2018(平成30)年4月より、「障害者総合支援法」の補装具費について、成長に伴い短期間で取りかえる必要のある障害児など「貸与」が適切と考えられる場合に限り、新たに補装具費の対象となった。
福祉住環境コーディネーター2級ガイダンス
福祉住環境コーディネーターとは
福祉住環境コーディネーターは、高齢者あるいは障害者の住む家や日々使う道具などを、より使いやすく、そしてより生活しやすい環境に整えるためのアドバイスを行います。
要介護者や障害者、あるいは高齢になり体の動きが難しくなった時、一般的な住居は移動しにくかったり不便だと感じたりする点がいくつもあります。
そうした人々の視点にたち、知識をもってより快適な生活が送れるよう手助けをすることができます。
どんな人が取得するの
福祉住環境コーディネーターは、1999年に設立された民間資格です。介護や福祉に関する仕事をしている人がより専門性を高めるために取得したり、工務店に働く人等が介護保険制度を使った住宅改修の時に役立てるために取得するケースが多いです。
福祉住環境コーディネーターの仕事内容とは
福祉住環境コーディネーターの仕事内容ですが、主に以下の3つになります。
● 住環境を整えるためのアドバイス
● 福祉用具、介助用具のアドバイス
● 住宅改修費支給申請の理由書作成
では、それぞれの仕事内容について詳しくみていきましょう。
住環境を整えるためのアドバイス
福祉住環境コーディネーターは、医療や福祉、建築に関わる専門家と連携をとりながら高齢者や障害者に合った住環境のアドバイスを行います。
例えば、怪我や病気、老化などで足腰に不自由が生じた人がいるとします。その人にとっては、これまで何ともなかった玄関の上がり框や敷居といった、ちょっとした段差を乗り越えることが難しくなるかもしれません。
段差を解消したり、楽に上れるようにする手段はたくさんありますが、その人に応じた方法で住環境を整えるためのアドバイスを行います。介護保険のサービスを利用している要介護高齢者の住環境を整備する時に具体的な案を提案したり、場合によっては介護施設のコーディネートといった大役を担う人もいます。
また、バリアフリー住宅の建設やリフォームを検討する方の相談に応じるケースもあります。
福祉用具、介助用具のアドバイス
福祉住環境コーディネーターは、住まいだけでなく福祉用具や介助用具などのアドバイスも行います。障害の程度に合わせて、便利な道具はたくさんあります。しかし、実際にどのような道具があるのかは知らない人が多いでしょう。
福祉住環境コーディネーターは、介護が必要な人に合った道具の情報提供をしたり、選ぶ時の手助けもします。
住宅改修費支給申請の理由書作成
福祉住環境コーディネーター2級以上であれば、自治体によって介護保険の住宅改修に関する書類を作成することができます。住宅改修費支給申請とは在宅の要介護者・要支援者が、段差の解消や手すりの取り付けなど、日常生活に必要な改修工事を、実際に居住する住宅で行う際、必要と認められれば自治体より住宅改修費が支給される仕組みです。
福祉住環境コーディネーターになるためには
それでは、福祉住環境コーディネーターになるには、どのような手続きや勉強をすれば良いのでしょうか。その手順について、みていきましょう。
資格の種類
福祉住環境コーディネーターには、1級から3級まであり、3級が一番難度が低いです。そのため、初めて受験する場合は3級から挑戦するのが一般的ですが、2級から受験することも可能です。
ちなみに、2級以上になると介護保険の住宅改修の際に必要となる理由書の作成も行うことができます。ただし、自治体によって認められない場合もあるため確認が必要です。
また、受験資格はありません。学歴や年齢、性別、国籍問わず誰でも試験に挑戦できます。試験を受けるために講座等を受講する必要もないため、独学で受験することもできます。空いた時間にコツコツと勉強しながら資格取得を目指せます。
受験から資格取得までのスケジュール
福祉住環境コーディネーターは、東京商工会議所が主催する認定試験です。受験申込は、東京商工会議所のウェブサイトの申込ページにアクセスするか、電話で行います。
2・3級の試験は年2回、だいたい7月と11月頃に実施されます。
1級のみ年1回、11月頃の実施です。
試験日の2か月半くらい前から約1か月間、申込登録期間が設けられています。
これは毎年変わるため、受験したい年の試験日や申込期間は事前に確認しておきましょう。
試験は各都道府県の指定された会場で受験します。
合格した場合、試験日から約1か月後に合格証が届きます。
STEP.1 申し込み (個人・団体)東京商工会議所の検定試験情報より申し込み頂けます。
STEP.2 受験料の支払い受験料は級によって異なります。
STEP.3 受験票が届く試験の約1週間前に届きます。受験票が届かない場合は、受験者本人が電話で問い合わせるようにしましょう。
STEP.4 試験当日
STEP.5 成績照会試験日から約3週間後に、WEB上で成績照会が行えます。
STEP.6 合格証が届く合格の方には、カード形式の合格証が届きます。
試験の難易度
1級ー「A」 難関
2級ー「B 」 普通
3級ー「C」 やや易
資格の難易度レベル
この試験は2級、3級は難しくありませんが、1級になると一気に難易度が上がり、合格率が10%以下の難関資格へと変貌しますので注意が必要です。ただ、トータル的に見れば難易度は「B」です。合格率は1級10%以下、2級40~50%、3級40~55%くらい。
1級は2級取得者でなければ受験できず、試験は1次がマークシート、2次は論述と記述で難易度が高い。2級、3級は実務経験がなくても独学で突破可能なレベルです。
受験対策・資格の将来性
高齢者や障害者に対して住みやすい住環境を提案するアドバイザー。試験を受ける人の大半が建築関係、医療関係、福祉関係の職に就いています。中でも、不動産関係の仕事の人なら持っているとこれからは有利になるでしょう。
2002年から設置された1級は、新築や住宅改修の具体的なプランニングができ、安全で快適な街づくりへの参画など、広い範囲で活動できる能力が問われます。
例年、試験の合格者は3級~1級を合わせると2万人以上になります。すでに関連業種で仕事についている人の受験が多く、その割合は受験者の平均41%になります。福祉関係の住宅の設計事務所などでは、2級以上を取得すれば介護保険法により「住宅改修の理由書作成者」になれるため求人は増えることが予想されます。他には福祉機器メーカーなども機器の開発段階で協力を要請したい考えをもっているようです。
この資格所有者は、設計建築事務所、住宅業界、福祉用具や介護用品を扱う会社に勤務し、設計や商品開発に携わることが多いようです。ケアマネなど福祉系の資格を合わせて取得し、福祉サービスを提供する会社に所属することも出来ます。また、バリアフリー対策が重要視される老人ホームや介護施設、病院などの福祉・医療現場でも、この資格所有者は求められています。
高齢化社会を迎える今、福祉的観点に立った住宅の改善が行える福祉住環境コーディネーターには、「医療」「福祉」「建築」の3分野にまたがる活躍が期待されています。
ただ、福祉住環境コーディネーターを取得したからと言って、すぐに就職が決まるほど甘くはありません。福祉系の知識、経験、資格(ヘルパーの経験、ケアマネージャーなど)と合わせて、建築系の能力、資格(建築士、インテリアコーディネーターなど)を取得できれば、大きな力になり効果が発揮されるでしょう。
2022年3月28日 発行 初版
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