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ある王国の外れの森に小さな花屋さんがありました。
「虹の花屋さん」と呼ばれるそのお店は、七色の不思議な種を売っています。
その種は真心を込めて育てると、種の色に応じた願いが叶うのです。
でも、誰もが種を買えるわけではありません。
真実な心を持った人にしか辿り着けないお店なのです。
その王国の王族には一つのしきたりがありました。
それは、王様になるためにはそのお店の種を育てて花を咲かせないといけないというものです。
今の王様には三人の子どもがいます。
第一王子はとても好奇心旺盛です。
第二王子は少し引っ込み思案です。
そして、第一王女は思慮深いです。
さて、第一王子が花屋さんに行く時になりました。
第一王子は森を一週間さまよって、ようやく花屋さんに辿り着きました。
花屋さんの店主が聞きます。
「あなたが欲しいのは何色の種かしら?」
第一王子は希望に満ちて答えました。
「勇気が欲しいから、青い種をください」
しかし、花屋さんは少し渋い顔をしました。
「王子様、あなたには他の種が良いと思いますよ」
でも、王子は譲りませんでした。
「いや、僕に必要なのは勇気なんだ」
それで、花屋さんは青い種を渡しました。
お城に戻った第一王子は早速種を植えました。
毎日、「種よ、早く育って僕に勇気をおくれ」と真心を込めて話しかけながら水をやりました。
やがて、種は育って、鮮やかな青い花が咲きました。
その時、第一王子の心には今までなかった強い勇気が湧いてきました。
そこで、好奇心旺盛な王子は思いました。
「これだけの勇気があれば、この国から出ても大丈夫だろう。僕はもっと世界を見たい」
そうして、第一王子は国を出て旅に出てしまいました。
困った王様は、第二王子に花屋さんに行くように言いました。
そこで第二王子は森に出かけていきました。
第二王子はすぐに花屋さんに辿り着きました。
お兄さんよりよほど早くお店を見つけた次男は喜びました。
花屋さんが出てきて聞きました。
「あなたが欲しいのは何色の種かしら?」
第二王子はワクワクする心で答えました。
「希望が欲しいから、黄色の種をください」
しかし、花屋さんは少し渋い顔をしました。
「王子様、あなたには他の種が良いと思いますよ」
でも、王子は譲りませんでした。
「いや、僕に必要なのは希望なんだ」
それで、花屋さんは黄色の種を渡しました。
お城に戻った第二王子は、早速種を植えました。
「種よ、頑張って育って僕に希望をおくれ」
そう話しかけながら、第二王子も毎日真心で水をやりました。
種は育って、とても綺麗な黄色い花を咲かせました。
その時、第二王子に今まで持てなかった強い希望が湧きました。
そこで第二王子は王様に言いました。
「王様、僕には心に決めた人がいます。その人は町で育った普通の人ですが、その人と一緒に生きることが僕の希望です」
そう言って、第二王子もお城を出て行ってしまいました。
王様はとても困りました。
その王国では代々、男の人が王様になる決まりだったのです。
でも、残ったのは王女だけです。
背に腹は変えられません。
王様は王女に森に行くように言いました。
森を歩くことに慣れていない王女は三日半の間、森の中でとても苦労しました。
でもついに花屋さんに辿り着きました。
花屋さんが聞きました。
「あなたが欲しいのは何色の種かしら?」
王女は答えました。
「花屋さん、あなたは長いことこの王国を見てきました。この王国を王様よりもよく知っていると思います。だから、あなたのオススメの種を選んで欲しいです」
そこで花屋さんは王女のために一つの種を選びました。
「あなたにはこの赤い種が良いと思いますよ」
王女は赤い種をもらってお城に帰りました。
お城の庭にその種を植えて、王女も種に話しかけながら、真心で水をやりました。
「種よ、あなたはきっととても素敵な花を咲かせるでしょうね。どんな心を私にくれるのかしら。とても楽しみだわ」
そしてついに赤い花が咲きました。
その時、王女の心には暖かな愛が満ちました。
王女は王様に言いました。
「王様、私の心にこの国を愛する心が溢れています。今まで女の人が王様になったことはないけれど、私はこの国の王様になってこの国を愛して生きたいです」
その言葉を聞いて、王様はとても喜びました。
そして、王女はやがて女王になりました。
女王はとても国を愛したので、いつも国のためになることを行いました。
その国はとても栄えて、周りの国々もとても羨ましく思う素敵な国になりました。
女王の愛は生涯変わることなく、その国をいつも照らしていました。
それを見て花屋さんもとても嬉しく甲斐を感じました。
それからもその国では王様になるためには、花屋さんの種を育てなければなりませんでした。
そのおかげで、国は永く栄えました。
おしまい
2022年6月15日 発行 初版
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