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 大人になることを皆さんはどう思っているだろう。
 人は自分の人生がどうなるかを期待しながらも、大人への抵抗もあるかもしれない。どんなタイミングで、「これから新しい人生に一歩を踏み出す」「これからの人生も頑張る」など自発的に、未来のことを期待することができるか。この本は三人の作者が自分の出来事や一から創作した小説のそれぞれを読んでもらい、自分の未来を考えてほしい。
 友人と理解し合わなくても、その一緒に過ごす時間が好きであれば、それでもいいじゃない? 人間関係や自分の悩みを無くすために、一番いい解決策は何だろう? 趣味のなかった自分がどのように趣味を探しながら明日を迎えるか?
 家族が自分のことを理解できない場合、感染症拡大防止のせいで友達となかなか会えない場合、就職が上手く行けない場合、などなど。完璧な人生はない。他人と比べないで、自分のままで生きていくことを、この本を通して一番伝えたい。人生の転換点はいくつかある。例えば、高校から大学への時期、就職の時期、結婚の時期などがあげられる。こんな時期に無理せず、迷わないためのアドバイスとして、この本を勧める。

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Life Style

久方しづ子  雪  マッチョ

二松学舎大学



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 目 次

デイセッション

無理せず程よく生きるということ

人生を明るくするには

デイセッション

久方しづ子

 当時、部室は四階にあった。音楽室はどうして必ず一番上の階にあるのだろう。音が響いてしまうからかもしれない、と勝手に結論付けたのは、中学を卒業する前のことだったように思う。
 セッション練習を終えたその日。家路につくために開けた音楽室のドアから伸びる廊下は、突き当たりにある奥の窓から差し込む西日にまっすぐ照らされて気味が悪かった。べったりしたオレンジ、ぬるい空気。人は夕日を見て口々にきれいだと言うけれど、私はその感覚を一生理解できそうにない。なぜ夕日が嫌いなのか自分でも分からない。
 差し込んだ西日から、得体の知れない何かが地上に降りて来たとしたら——なんて無意味なことを思ったあの一瞬は、もう五年も前のことだ。けれどその情景が未だ脳裏に張り付いている。
 どうしたことだろう。もう当時の部員全員分の名前さえ、はっきり覚えていないのに。西日そのものが私にとっては得体の知れない何かで、それに当てられた時からとうにおかしくなってしまったのかもしれない。そうだとしたら話は余程簡単だろうか。
「あー、そういうの何となくわかる。あたし、満月が嫌いなんだよね。怖いっていうか気持ち悪いっていうか……」
「きれいだと思えない?」
「そうそれ」
 その夜、私はYと市民館で大学受験の勉強をしていた。一面がガラス張りの施設だったので、室内でも空の様子がよく見えた。丁度窓に背を向けていた私は、Yのその言葉に振り向く。
「……あ。今日は満月じゃないね」
「だね、まだ半月ちょいくらいじゃん?」
「月かー、……満月を怖いって思ったこと、私はないかも」
 普通にきれいだと思うと言えば、Yは笑った。
「あたしはむしろ夕日のが全然きれいだと思うんだけどなあ。分かり合えないねぇ……」
「あはは」
 いつ聞いた話だったろうか。前世の自分が見た、つらい瞬間の景色を私たちは今世で嫌うらしい。そんな取るに足らない話題の種をYに蒔いてみれば、彼女はなるほどねと一瞥を寄越した。
「じゃあうちら、前世はそこで死んだのかな」
「えー、満月と夕日の前で?」
「そ。打首だったりしたらウケるね」
「確かに」
 Yは小さく笑った。私もつられて笑んだ。
 その時私は、人がいいと呼ぶものを、自分ではいいと思えないのも仕方がないことだとぼんやり悟ったのだ。人は決して完全には理解し合えないこと。そして、そうと認め合うために言葉を交わすこと。相手に少しでも近付いてみること。
 夕日を見ると今でも複雑な気持ちになる。自分と他人との間に引いた線に意固地になっている私の性格のひずみを感じて、余計に気分が難しくなる。
 それでも、人はそれぞれの自意識を抱えながらここにいなければならないのだ。誰かが良いと言うものを自分ではそうと思えなくとも、それは決して間違いではない。おかしなことでも何でもない。
 テンポが噛み合わない譜面でも、どこか一点で噛み合うところを探して、ひずみながら通じていく。やがて生じるリズムがどんなに破天荒でも、少しずつ合ってゆくかもしれない。不思議とクセになるかもしれない。好きになるかもしれない。
 きっとそれこそが、一緒に過ごす時間、セッション——誰かと共に生きるということだ。
「……初日の出。三保の松原とかからさ、一回は見てみたいよね」
「いいね、私も見たい! 富士山もいいけど江の島なんかはどう? 旅館泊まって早起きして、まだ人がいないうちに島登ったらさ。絶対気持ちよくない?」
「それ最高じゃん」
 ペン先を私に向けて朗らかに笑う。Yと過ごす時間が好きだった。そして私はこれからも、ずっとこんな時間を大切にしたいと思うのだ。

無理せず程よく生きるということ

はじめに


 本稿を読んでいる方はストレスを抱えているでしょうか。学生であれば、学校での課題や学校行事の準備、社会に出るとプレゼンの資料作りや職場での人間関係など、身の回りにはストレスの要因になるものが多くあります。また、こんにちではコロナ禍での行動制限や自粛生活、三密の回避など、コロナ禍以前より考えなくてはならないことが増え、ますます我々はストレス社会を生きていかなければならなくなりました。
 しかし日常で自身に降りかかってくるストレスと、誰しもがうまく付き合えるわけではなく、ため込んでしまう方も多いのではないでしょうか。本稿ではそんな社会でストレスをなくすことは難しくても、その要因と向き合うことはできるのではないか、というテーマでストレスとうまく付き合う方法について書いていきたいと思います。

ストレスと向き合う


 ストレスを抱えた時の解消法は人それぞれかと思います。一晩寝たら嫌な出来事も全て忘れるタイプもいれば、カラオケで満足するまで熱唱するなど……解消法というのは数えきれないほどありますが、それは根本の解決にはなっていないのではないかと私は考えます。それらは実は一時的な気分転換でしかなくて、また何かきっかけがあるとストレスが再燃してしまいます。
 そこでおすすめしたいのが、「ストレスをなくす」ことに注力するのではなく、「ストレスと向き合う」ことに力を注いでみてほしいということです。私もストレス解消のために好きなことをしても、また次の日職場に行ったらまたストレスが溜まって、解消した意味がないのではないかと思うことがありました。その時に自分、そしてストレスの要因と向き合い、何が自分にとって負担なのか、どうしたら改善できるかというのを考えました。私の場合は友人や家族に相談し、職場が合わないから一度離れてみるという結論になり、「ここで頑張らなくてはいけない。辞めるのは負け。」という固定概念を覆すことで、心身共に健康状態を改善することができました。

 本稿では自身の職場での例をあげ、ストレスを一時的に解消して一つのものに固執するのではなく、自分が疲れてしまう要因を突き止め、その場から離れるという決断をしたことで頑張りすぎなくてもいいのだと理解することができました。しかし、どうしても離れられないストレス要因もあると思います。その時に思い出してほしいのは頑張りすぎなくても何とかなるということです。「無理せず程よく頑張って時には休む」という心持ちで生きていくと少し未来は明るくなるかもしれません。

さいごに

 本稿では自身の職場での例をあげ、ストレスを一時的に解消して一つのものに固執するのではなく、自分が疲れてしまう要因を突き止め、その場から離れるという決断をしたことで頑張りすぎなくてもいいのだと理解することができました。しかし、どうしても離れられないストレス要因もあると思います。その時に思い出してほしいのは頑張りすぎなくても何とかなるということです。「無理せず程よく頑張って時には休む」という心持ちで生きていくと少し未来は明るくなるかもしれません。

人生を明るくするには

マッチョ

 人生を明るくするには。なんでもいいから何か打ち込めるものを見つけること、自分にとって全力でやれることなら楽しくて仕方がなくなり、明日が待ち遠しくなる。
 例えば僕は筋トレにハマっている。それも脚、スクワットが一番好きだ。脚のトレーニングは特にきついと言われていて、確かにやっている最中は本当にきついし辛いし酸欠でぶっ倒れそうになる。でも不思議なもので終わって家に帰る頃にはまたやりたくなっていて、次にやる日が待ち遠しいのだ。
 僕の中学時代は典型的な無趣味だった。かといって勉強が好きなわけでもなく、むしろ嫌いだった。運動もできなかったし、顔もよくない、無気力だったといってもいいだろう。だからといって別に不登校になったりということもなかったが(たしか皆勤賞はもらった)当然ものすごく楽しみだということもなかった。友達は運動部が多かったが、当時は拘束されるのが嫌で運動部に入ることは微塵も考えていなかった。しかし高校に上がって軽い気持ちで陸上部に入ってみた。いざ入ってみると練習はきつく、いきなり入った身ではなかなかついていくことはできなかった。だがそれなりに楽しくもあり、結果現在まで続いている。

 何かひとつ得意なことができれば、得意だと思えることがあれば自信がもてる。内面の変化というのは本当に大きく、物事のとらえ方が変わってくるはずだ。中学生や高校生という時期はなんせ多感な時期だから、大人になるにつれ変わってきた部分もあるのかもしれない。それでも、今の僕の考え方は大きな影響を受けていると思う。
 また人と繋がりをもつというのも人生を明るくする方法のひとつだ。仲良くなるきっかけとして、ひとつ共通の趣味があれば、たとえ人が苦手だったとしても関わりやすくなるだろう。そしてそれは学校内や身近に作らなければいけないというものでも無い。つまり直接話すのが苦手であれば、SNSで繋がることだってかまわない。
 そんなに打ち込めるようなことを探すのは大変だというのもよくわかる。少しでも興味のあることがあればそれでいいし、何にも興味がわかないというならいっそ手当たり次第にいろいろやってみるというのも一興だろう。ここまで読んでくれたみなさんの人生が明るく楽しいものになることを願っている。

Life Style

2022年7月30日 発行 初版

著  者:久方しづ子  雪  マッチョ
発  行:二松学舎大学

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周之揚

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