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メジャーデビューを果たしたボカロPたちの曲からボカロの沼に入った皆さんは、最近流行りの曲しか知らないと思う。有名どころを紹介してもつまらないので、昔の曲を紹介していこう。
今回取り上げる曲のタイトルは『妄想ナルシスト』である。『妄想ナルシスト』はBecky Pop Sound Research.のBecky.さんが作曲している。この曲は二〇一三年九月六日にニコニコ動画、二〇一四年四月九日にYouTubeにて投稿された、現在より九年前の曲となる。そして、ニコニコ動画では六万、YouTubeでは七十二万と九年前の曲としては割と高い再生数だと思う。しかし残念ながら、Becky.さんは二〇二一年にラストアルバム『さようなら。いつかまた、』をリリースした後に活動休止している。
では、曲について詳しく紹介していこう。
この曲はボーカロイドのGUMIとGUMIYAによる歌唱となっている。ここでGUMIYAというボカロに疑問を持つ人もいるのではないだろうか。GUMIYAというのはGUMIの声の調整を男性っぽくしたものである。昔のニコニコ動画では、そういったボカロの声を異性にする性転換があり、元となったボカロとのカップリングが存在する。他の例を挙げれば、初音ミクの性転換バージョンはミクオとなっている。
そんなGUMIYAとGUMIのデュエット曲、『妄想ナルシスト』のGUMIYAはナルシストとして描かれていて、GUMIに一目ぼれをし、アタックしていくストーリーとなっている。この曲は非常にかわいらしい曲調が魅力的なのだが、ここで注目して欲しいところは歌詞とMVである。この曲の歌詞は基本的に心の声とセリフで構成されている。サビの部分の口喧嘩をしているようなところがとても微笑ましいのだ。そして、MVは当時の多くのボカロ曲と同じようにストーリー性が溢れている。実際にGUMIとGUMIYAがこの曲においてどういうことになったのかを映像化しているのだ。かわいらしい曲調もあいまって元気が出るMVとなっている。
筆者はこの曲を、中学時代によく聞いていた。筆者の青春には欠かせない一部である。ゆえに、この場を借りてもっと色々な人にこの曲を知ってもらおうと思い、紹介をさせて頂いた。
【GUMI・GUMYA】妄想ナルシスト【オリジナルPV付】
https://www.nicovideo.jp/watch/sm21747941
ニコニコ動画のぼくのマイリストを確認してみたら、最古のボカロ曲は二〇〇七年九月四日に投稿されたOtomaniaさんの『VOCALOID2 初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた』だった。伝説のネギ振り「はちゅねミク」生誕の地だ。マイリスト登録日は二〇〇七年十月二十二日なので、投稿から約二カ月遅れだ。なにぶん古い話なので、なにをきっかけに知ったのかは覚えていない。ごく初期のころ、ぼくはこういうある意味素朴な、ちょっとネタっぽい面白初音ミク動画を好んで見聞きしていた記憶がある。
しかし、ぼくはほどなく初音ミクのボーカリストとしての可能性に驚嘆させられた。それはTuKuRuさんの『初音ミクが本気で「奇跡の海」 を歌ってくれた(Ver.1.1-Release)』(原曲:坂本真綾)。マイリスト登録は二〇〇七年十一月二十二日。合成音声なのに、魂が入っているように感じられたのだ。
ぼくが一番好きな曲は、くちばしさんの『初音ミクオリジナル「私の時間」』だ。二〇〇七年十月二十二日の投稿動画だが、ぼくのマイリスト登録は二〇一一年六月二十六日と少々遅れている。これまた古い話なので詳細は覚えていないのだが、同じくちばしさんの『初音ミク(Θ)私の世界』(投稿日二〇一一年六月九日)とセットでマイリスト登録しているので、もしかしたら『私の世界』を先に知ったのかもしれない。
『私の時間』の歌詞には、
「めざせスーパーアイドル!」
「もしかしたらオリコン一位も遠くないかもね」
という一節がある。実は、初音ミクの楽曲は二〇一〇年五月十八日付オリコンデイリーCDアルバムランキングで初の一位に輝いている。ぼくは、ちょっとネタっぽい面白初音ミク動画を面白がっていたころ、まさかこのネギを振るキャラクターがオリコン一位を獲得することになるなんて想像さえしていなかった。『私の時間』は、そんな未来を予言している曲なのだ。残念ながら『私の時間』は初の一位を獲得したアルバムには収録されていないのだが、歌詞が現実になったのは確かだ。そして『私の世界』は、『私の時間』の四年後に投稿された、オリコン一位を獲得し名実ともにスーパーアイドルとなった後の曲だ。聞き比べてみるといい。ぼくは十年以上経ったいま聞いても胸が熱くなる。
『VOCALOID2 初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた』
https://www.nicovideo.jp/watch/sm982882
『初音ミクが本気で「奇跡の海」 を歌ってくれた(Ver.1.1-Release)』
https://www.nicovideo.jp/watch/sm1250829
『初音ミクオリジナル「私の時間」』
https://www.nicovideo.jp/watch/sm1340413
『初音ミク(Θ)私の世界』
https://www.nicovideo.jp/watch/sm14690047
ITmedia NEWS「初音ミクCD、初のオリコン1位:ねとらぼ」(2010年5月20日)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1005/20/news049.html
私が今回ご紹介するのはwowakaさん作成の『アンノウン・マザーグース』だ。
wowakaさんは日本のミュージシャンでありボカロPである。動画投稿サイト「ニコニコ動画」で初音ミクなどの音声合成ソフトをボーカルに用いたオリジナル曲を発表していた。2011年からはロックバンド「ヒトリエ」のボーカル・ギターとしても活動していた。wowakaさんの代表曲には、『アンノウン・マザーグース』の他にも、『裏表ラバーズ』や『ローリンガール』、『ワールズエンド・ダンスホール』などがある。
まず曲名から見ていこうと思う。『アンノウン・マザーグース』のアンノウンとは不明の、誰も知らない、という意味である。マザーグースとは、イギリスに伝わる伝承童話のことで、要約するとガチョウおばさんとなる。日本で言うと昔話のようなものだ。その中には、今でも日本に伝わるものが数多くあり、「きらきら星」や「メリーさんの羊」などもマザーグースのひとつとして知られている。これらのことから意味を単純につなげると、「不明な童話」や「誰も知らない童話」ととれる。なぜこのようなタイトルをつけたのか。歌詞やMV、そしてwowakaさんの発言などから読み取って、おすすめしようと思う。
この曲を作る前、wowakaさんは「発表して自分の手を離れた曲に対して、今ここに生存している生身の自分自身とはなんなのかを考え、俺はどうすればいいんだと自問自答を繰り返していた」「いわゆるwowakaのうわべだけを拾われ、全然心を感じられない。そういう感覚が増えてきた」(※1)という。「〝wowaka〟らしさを〝ボカロ〟」(※2)らしさに置き換えて、消費されていく感覚を味わっていた。
そのような半年間を経て、ヒトリエを結成し、自分が矢面に立ち、自分の口で自分の言葉を発する場所を作った。ヒトリエとは「1人のアトリエ」の略で、彼の思いからそうつけられた。ヒトリエとして精力的に活動し、人気を得ることができ、彼が自分の居場所を見つけたタイミングとボーカロイド「初音ミク」の10周年のタイミングがちょうど重なった。彼は「初音ミク」の10周年記念コンピレーションアルバムとして依頼を受け、『アンノウン・マザーグース』を作り上げたのだ。
この曲はwowakaさんと初音ミクが重なって描かれていて、彼の思いを初音ミクの声で表現した作品となっている。その証拠にミクの声の裏には自分で録った声を重ねている。自分とミクを重ねて作られたこの曲だからこそ、そうしているのだろう。歌詞についても、彼とミクが重なって描かれているという観点から見るとまた解釈も変わってくると思う。歌詞の解釈は人それぞれだが、私は前述したwowakaとして見られないような悲しさ、虚しさのようなものを感じる。特にサビは初音ミクと彼の両方の気持ちを重ねた詞のような気がする。
「あたしの全部にその意味はあると…」という歌詞があるのだが、ミクからの観点だと、2017年当時、初音ミクの人気は最盛期よりも下火になってきていた。そのことと自分がかつて人気のボカロPとして存在していたこと、その二つを歌を聴いているあなたに肯定してほしい、そう歌っているように解釈できる。
ここで、タイトルの『アンノウン・マザーグース(誰も知らない童話)』と言う意味は、彼が心の中に秘めていた思い=誰も知らないという意味を持つのではないかと思う。初音ミクを通じて曲を作る意義や、自分が表現できる可能性を伝えようとしているように感じた。自分の中で、発散できない思いを抱えている人に、初音ミクや音楽を媒介に自分を表現してもらいたいと思っているのではないだろうか。wowakaさんの曲は、このように深い意味が込められていることが多いように感じる。
しかし彼は2019年に急性心不全でお亡くなりになってしまった。結果的に彼の最後の作品がこの曲になってしまったのはとても悲しい。が今回これをきっかけに『アンノウン・マザーグース』ならびにwowakaさんの曲を是非聴いてほしいと思う。
※1
https://natalie.mu/music/pp/wowaka_deco27
※2
https://twitter.com/wowaka/status/900747444283097089
wowaka『アンノウン・マザーグース』feat.初音ミク
https://www.nicovideo.jp/watch/sm31791630
2022年7月30日 発行 初版
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