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この本はタチヨミ版です。
この本を手にする方は、タクシー会社で採用を担当されている方だと思います。しかし、採用を専門にお仕事をしている方はほんのひと握りで、その多くが労務や総務などの仕事の合間に採用業務をしていらっしゃるのではないでしょうか。
さらに言えば「採用担当者としての研修を受けた経験もない」「正しい採用がわからず、見よう見まねで採用業務を行っている」そんな方も多いのではと推測します。事実、そういった体制で思ったような採用成果が出ないことに悩むタクシー会社さんをいくつも見てきました。
それも今日で終わりにしましょう!
申し遅れました。私は、タクシー支援サービス株式会社の人財開発部で営業を担当している杉山智樹と申します。現在、タクシードライバーの採用人事を中心に担当しています。
これまで私は人材業界に10年身を置き、さまざまな方を転職へと導いてきました。その中でも特にタクシードライバー採用は、他の職種の採用と全く違う、採用困難業種だと感じています。その大きな理由は――言葉を選ばずに言えば――タクシードライバーが「不人気業種だから」です。
一般的にタクシードライバーの仕事は、(今でこそイメージが改善されつつありますが)長時間労働・安月給・不規則な勤務時間といった悪印象を持つ人が多いため、それが世間のネガティブイメージとなり不人気業種ととらえられています。
つまり、タクシー会社は「ネガティブイメージの業種」というハンデを抱えたまま採用を勝ち取らなければならないのです。そう考えると自ずと「タクシードライバーに適した採用方法」が必要になると思いませんか?
しかし、残念ながら世の中には、タクシードライバーの採用に適したハウツー本はほとんどありません。採用に関するハウツー本の多くは「良い人材だけを選び抜く」ノウハウ本ばかり。そうした有能な人材を見抜くためのテクニックや、採用基準の定義などが書かれた本は、入社希望者が何百人と応募してきて、その中の数名を選ぶような人気企業であれば役立つかもしれません。ところが、タクシー会社の採用において、このノウハウはまず通用しません。
前述したようにタクシー業界は不人気業種。まず応募者がなかなか集まりません。しかし、来てくださった応募者の方の中には「タクシードライバーになるつもりはないけど、ちょっと話を聞きに来た」方もいらっしゃいます。ということは、応募者がいたとしても「転職しようと思わせる」だけの高度なテクニックがないと採用に繋がらないのです。
タクシー業界での採用がいかに難しいか、改めて述べてまいりましたが、私は悲観することはないと思っています。実際私は年間数十人もの方々をタクシー業界へ転職させてきました。その核ともいえる考え方が「応募者を活かす」採用です。
大手企業の採用が、応募者をふるいにかけて「捨てる採用」だとするなら、タクシー会社は会社側から応募者に手を差し伸べる「活かす」採用のスタイルです。
活かす採用の大きな特長は、それほど入社意欲の高くない人であっても入社してから活き活きと働いてくれる点にあります。
この本には、応募者を募る段階から応募者が入社するまでの「応募者を活かす」採用がどんなものなのか、概要や姿勢を述べた後、具体的な採用活動の方法まで入れ込みました。
この本を読んだタクシー会社の採用担当の皆さんが「タクシードライバーの採用」で大切なことをつかんでいただくと共に、皆さんの会社に「応募者を活かす」採用の波が巻き起こってくれることを期待しています。
【著者】
杉山 智樹(すぎやま ともき)
タクシー支援サービス株式会社 人財開発部で営業を担当。全国の人材不足に悩むタクシー会社への人材紹介事業と採用コンサルティング事業を担う。人財開発部を立ち上げて2年で20のタクシー会社と取引を行う。
アドバイザーである関根コウ氏との出会いは2021年。関根氏は「1か月に1人も応募がない会社へ応募者を送り込むプロ」、著者は「応募者を入社まで導くプロ」として、タッグを組む。
取引継続率は93パーセント。取引が終わった会社も「社員は充足したので一区切り」というポジティブな契約満了を獲得している。応募者集めから面接に誘導、さらには入社まで離脱させないテクニックを多数持ち、採用成功に結び付けている。応募者を集めるスピード感とコストパフォーマンスが全国のタクシー会社から高評価を得ている。
【アドバイザー】
関根 コウ(せきね こう)
一般社団法人求人広告ライター協会代表理事。著者とともに伴走し、全国のタクシー会社を採用成功へと導く。1万件以上の求人広告の作成・運用に携わった知見を企業の採用担当者に伝授し「採用に強い会社作り」をサポート。
外部の採用専門会社に頼りきることなく「採用を内製化し、自走できる採用組織」確立のため全国で採用支援を行っている。
1章では、タクシー支援サービス株式会社の採用コンサルチームが実践する「効果の出る求人広告」の手法を解説していきます。タクシー支援サービス株式会社は、全国各地のタクシー会社の採用シーンに携わり、各地でエリアナンバーワンの応募数を獲得しています。そのため、会社の規模を問わず全国のタクシー会社の皆さんの参考になる情報をお届けできると思います。
タクシードライバーの採用活動で最初の難関は、何といっても求人広告を出しても応募が来ないことではないでしょうか。名の知れた求人広告会社で広告を出しても、応募が来ない。給料を上げたり勤務条件面を見直したりしても、問い合わせすらせいぜい数件で、応募に繋がらない。もう何をしてもダメなんだ、この地域にはタクシードライバーに応募する人がいないんだ……と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかしあきらめるのはまだ早いです。あなたの会社の採用活動、改革しちゃいましょう!
私のコンサルを受けたタクシー会社からは、
・毎月安定してドライバー希望者が応募してくるようになった!
・半年応募ゼロだったのに、1ヶ月に5人も応募が来るようになった!
という喜びの声をいただいています。
もちろん、応募が来るだけではなく、入社まで繋がらなければ意味がありません。説明会や面接に行きたいと思わせる求人広告を書く必要があります。今回はその点にも留意してお伝えしていきます。
あなたの会社の求人広告も、入社まで繋がる「効果の出る求人広告」に変身させちゃいましょう!
では、「効果の出る求人広告」とはどのようにしたら書けるのでしょうか。
私はコンサルの場面でよく「大きく2ステップに分けて考えましょう」とお伝えしています。1ステップ目は「分析」です。書くためにはまず、自社のことをよく分析しなければなりません。2ステップ目が「落とし込み」、実際の執筆に入ります。分析結果を踏まえたうえで、求職者に響くような会社の特徴を洗い出し、求人広告に落とし込んでいくのです。この2ステップについて、この章で詳しく話していきますね。
ここまで読んで「ええ? 求人広告を採用担当者が書かなきゃいけないの?」と驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか? おそらく、多くの方が自分の手で一から求人原稿をつくったことがないと思います。それどころか、求人広告会社に作成を任せきりで、求人広告の内容を把握できていない担当者も多いはずです。
間違えてほしくないのですが、求人広告のプロに求人を任せることは決して悪いことではありません。業務を任せることで、業務負担の軽減や効率化がはかれるからです。
しかし、外部の会社に求人広告の作成を任せていたとしても、自社の求人が良いか悪いかを「見極めるスキル」が担当者には必要だということを覚えておいてほしいのです。
その理由は2つあります。
1つは「『入社』に繋がる求人広告は、自社のことを知る社内の人間でないと分からない」からです。求人広告会社はトレンドや市況感をもとに求人広告の提案をしてきます。しかし、その提案は必ずしも会社の現状とマッチするとは限りません。
例えば「『ママさんドライバー』というワードがよく検索されているので、このワードを入れて求人広告を出しましょう!」と提案が来たとします。しかし自社には保育所がなく、シフトも選べない。せっかく雇えたママさんドライバーは夜ふけまで帰れず、毎日おじいちゃんおばあちゃんが保育所まで送り迎えに行っている……そういった状況になってしまったら、ドライバーとして長続きするでしょうか。そんなことはありませんよね。これでは、ママさんも、そして会社もお互い不幸な結果になってしまいます。
こういったミスマッチを防ぐためにも、自社の現状とマッチした求人かどうかの判断をきちんと採用担当者が握るべきなのです。でなければ応募者に「求人広告に書いてあることと違う」と入社前に見破られるか、入社しても早期退職に繋がってしまうでしょう。
もうひとつの理由は「入社まで見届けるのは採用担当者のみ。求人広告会社は応募までしか関与してこない」からです。求人広告会社は「応募人数をいかに獲得するか」がゴールです。そのため入社がゴールの採用担当者とはどうしても考え方がずれてしまいます。
どんなふうにずれているのか、具体例で解説してみたいと思います。
例えばある月、多くの応募が来たとしましょう。しかし、そのほとんどの人が面接日に現れない、もしくは面接まで来ても挨拶すらできない方。結果、その月の採用人数はゼロ人でした。それでも求人広告会社は「今月はたくさん応募が来ましたね!」と喜んでいる……。しかし、こちらとしては「応募者だけたくさん来ても意味がない」と思いますよね。みなさんも、そういった経験があることと思います。
自社できちんと求人広告を管理しない限り「応募は来ても入社までたどり着かない」、そういった状況が続いてしまうのです。まずはこのことをしっかり認識してほしいと思います。
求人広告の最終責任者は採用担当者です。求人広告会社に丸投げせず、自社の採用力を高め、求人広告を自ら見極める。それが採用数を増やす第一歩にもなります。
本書の作成でアドバイザーを務める、一般社団法人求人広告ライター協会の関根氏の著書『採用1・9』の中でも、求人ライティングについて学んだ会社の中には、求人広告会社を使わずに自社の求人広告を書いている会社もある、と述べています。しかもそういった会社では応募人数が増え、採用も順調に増えているのです。
自社のことを一番分かっている採用担当者が求人広告の良し悪しを判断することが、効果の出る求人広告をつくる一番の方法なのです。
では「効果の出る求人広告」とは何でしょうか。
私は「会いたくなる求人広告」だと思います。
求人を募集し、応募ボタンが押されると、その後に行うのは面接で顔を合わせること。選考が進めば入社となり、それこそ毎日のように会うことになります。いずれにしても企業側と応募者とが「会う」ことが待ち受けているのです。応募者が「この求人広告の会社の人に会って、話を聞いてみたい」と思わない限り、応募ボタンが押されることはありません。
同じように「会う」を目的にしている文章の1つにマッチングアプリのプロフィール文がありますね。
ここで、会いたくなる文章とはどんなものなのか、マッチングアプリの例で考えてみましょう。あなたならAさん・Bさんどちらの方と会ってみたいですか?
A:30代独身。都内の飲食店のゼネラルマネージャーとして働いています。小柄な女性がタイプです。よろしくお願いします。
B:渋谷のイタリアンレストランの厨房で働いています。趣味の釣りに夢中になっていたら35歳になってしまいました。これまではルアーにお金をかけていましたが、もしお付き合いできたらデートにお金をかけたいと思っています(笑)。美味しいご飯も作れるので、ご飯担当は任せてください!
……きっと多くの方がBの方に会ってみたいと思われたのでは? イタリアンレストランの厨房で働いているなら、料理も美味しそう。一方Aさんがどんな人なのかは、ほとんどわかりません。Aさんのことをこんな風に思うはずです。
「30代と言っても……30歳? 39歳?」
タチヨミ版はここまでとなります。
2022年9月13日 発行 初版
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