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昨晩、中国の音楽と西洋の音楽共同の歌舞大会で、管弦楽に乗せて清らかな歌が三曲歌われたが、まさに心を奪われた。
晩春の早朝、立ち込める霧雨の水滴が音もなく顔に落ち、潤沢で軽やかな感覚を引き起こした。手に吹いた愛する人の息のように、新鮮なそよ風が袖を動かした。私が立っているミョウバン石の石畳の道は、薄くクリームを塗ったみたいに、踏みしめていると愛しいほどに滑らかになる。
花園の中だ。花たちは清らかな夢を見ている。かすかな雨はひっそりと花たちのよごれを取り去り、甘くて柔らかな輝きを増す。洗い取られた浮いたあでやかさの下に、天気のいいときには花たちが深く隠していた静かな赤とひんやりとした紫、苦笑している白と緑が見える。以前は錦繍のようなものであったものが、今は暗みを帯びた色になっている。芳しい春の停滞を憂いているのか?芳しい春の疲労を感じているのか?
立ち込めた霧雨のためだろう。花園に濃厚な香りはない。かすかな東風が飢えているような一筋の花の香りを乗せてきた。水気を含んだ草むらの吐息と土の味も含んでいる。園の外と田んぼと沼から、植えたばかりの苗と育ち始めた麦、そして陰を作っている柳の木の清新な蒸気が吹き込んでくる。甘美ではないが、強烈に私の鼻を刺激し、愉快な倦怠を感じた。
見てごらん。それらは皆歌の中にある。私は耳を用いて、目と鼻、舌と体を用いて、聞いている。心を用いて、歌っている。私はついに健康なる麻痺に受け継がれてしまった。歌の所有するところとなってしまった。それ以降は歌だけが歌い、聞いている。世界にあるのは歌声だけだ。
1921.11.3
2022年10月9日 発行 初版
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