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jacket

世界中 
愛と笑顔しかない
そんな一日があったら
どんなに素敵だろう

メリークリスマス!

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ほっとクリスマス2

クリスマスエッセイ集制作委員会

TSUMUGU出版



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目次

クリスマスのウエディングドレス    作・一ノ瀬 音
苦しいのがクリスマス         作・白沢 清美
20歳のクリスマスの夜に       作・弓吉サトル
大学最初のクリスマスの話       作・中田 翔
みっちゃんのクリスマス        作・名島也惟
最後のラブレター           作・橘 祐介
教会のクリスマス           作・三愛はな
バタースコッチラテ          作・YUMI YASUNO


クリスマスのウエディングドレス

僕はすごく悩んでた。
そう、とても。
もうすぐクリスマス。
まだサンタを信じてたあのころ。
家の煙突から入ってきてプレゼントを枕元に置いてくれる、
やさしくて気前がいい、白いおひげのおじいさん。
我が家は五右衛門風呂で(ご存じだろうか?鉄の窯の浴槽で、底が暑いので
木の板を沈めてそれを踏んで入る。ミスると超あっちっち)。
煙突はとても細い。
サンタさんがこれじゃ入れない。
4歳だった僕は真剣に悩んだ。
つまり僕はプレゼントがもらえない。
なんて考えながらも夜を迎えて、クリスマスケーキのキャンドルの灯りを
父さんと母さんと僕でフー、と消して、きよしこの夜を歌って、
みんなでおいしいねとか笑いながら楽しく食べた。
そしてお布団に。

いつのまにか寝落ちして、翌朝。
枕元にすごく欲しかったサンダーバードのプラモデルが置いてあった。
超嬉しい。
でも、どうやってあの細い煙突をサンタさん入ったのだろう?

時は流れ、ドキドキしながら娘の枕元にプリキュアの人形を置いている
僕がいた。サンタになったような気持ちで…。
娘のあどけない寝顔。となりで眠る妻。しあわせな時間。

さらに時は流れ、明日は娘が嫁ぐ日。
ベッドですやすやと眠ってる。
ずっと大切にしまっておいた、幼いころ描いた、ウエディングドレスを着た彼女の姿。
パパのお嫁さん。と、小さな文字が書き添えられている。
もうそんなのを描いたのは覚えていないだろう…。

その絵をそっと枕元に置いた。

しあわせなお嫁さんになれよと…。

メリークリスマス!

【作・一ノ瀬 音】





苦しいのがクリスマス

クリスマスといえば飾り付けられたきらびやかなツリーに色とりどりのネオンの装飾。賑やかなパーティに素敵なプレゼント。大勢の家族や友人で集まってケーキやチキンを食べる夜。そしてサンタクロースの正体はお父さん……!?

山深い寒村のはずれで、母と祖父とだけ暮らす子供の頃のわたしには、クリスマスはただの暦の上の符号。そんな華やかなイメージとは程遠い、いつもの日常の延長線上にありました。

そんなわたしの思い出として残っているのは、毎年おこなわれる子供会のクリスマス会です。それは滅多にクリスマスやイブの日に重なることはなく、12月中のどこかの日曜日にありました。

都会から離れた狭い村のなかで、きっと大人も子供も日常的に娯楽に乏しかったのだと思います。毎年毎年、自治会館で行われるクリスマス会の夜だけは、子供も大人とおなじぐらい遅くまで起きていることが許される、無礼講のとくべつな日でありました。

大人たちは昼間から集まり、自治会活動の会計報告や次年度の役員選出など、一年間の活動の締めくくりをしていたのでしょう。

子供会の会員は幼稚園児から小学六年生までです。小学校の高学年の五、六年生は早くに呼ばれて準備を手伝っていたのかもしれません。そして、わたしたち子供が呼ばれるのはいつも夕刻をすぎ日の落ちた後でした。

母か祖父のどちらかに連れられて懐中電灯で照らされた寒い夜道を歩き、ストーブのついた温かい自治会館にたどり着きます。扉を開けたわたしの目に飛び込んでくるのは、日常を離れたクリスマスという名の別世界。

吐く息の白さも消えて、人いきれに包まれて真冬とは思えないような汗ばむような熱気。手作りの飾り付けが施されたきらびやかなネオンのツリー。

普段は一度に見ることのないようなたくさんの人の顔。それらはみんな朗らかな笑顔で、会議用のテーブルは中央のストーブを囲んで四角の輪になるようにセッティングされています。

そのテーブルのうえに並んでいるのはチキンにポテトに果物にお菓子、カレーやパンにチャーハン……どれもこれも子供の好きなものばかりです。何故か気の早いお正月に食べるぜんざいまで大鍋に煮てあります。

この一年間でいちばんのご馳走に圧倒されながら、子どもたちは甘いシャンパンで乾杯し、虫歯になるからと夜には止められているジュースも好きなだけ飲むことができます。

子供のしつけや食習慣の管理にうるさい大人たちがこの日だけはいつもより寛大で陽気でした。いま思えばその理由は、昼間から一杯ひっかけてこの時間になるとすっかり出来上がっていたからかもしれません。

いまではすっかりおっさんたちも顔負けの酒豪に育ったわたしですが、当時は酒の味も大人たちが酒を飲む意味さえもわかりません。おそらく一年間の仕事や生活や、自治会活動をねぎらう忘年会も兼ねていたのでしょう。

そして陽気になった大人たちは、やたらとわたちたち小学校低学年の子供になれなれしく接します。背が伸びたとか太ったとか、お母さんに目がにているとか鼻がにていないとか、しこたまイジられてご馳走をたくさん食べるように勧められます。

兄弟がたくさんいる子どもたちは食べることも競争なので、一度に早くたくさん食べることにも慣れています。しかし一人っ子のわたしは当時、食が細く食べるスピードも給食を最後の掃除の時間まで残されて食べさせられるほど遅かったのです。

しかも大人しく内向的な性格で、大人のいうことに逆らうことなど到底できませんでした。勧められるままにチキンやポテト、お菓子やご馳走を口にしていると、だんだんと胃袋が限界に近づいてきます。

そしてもう食べられない……と気分が悪くなり顔が青ざめて限界に近づきつつあるそのときーー

クラッカーの弾ける音とともに姿をあらわすのが生クリームといちごのたっぷりと盛り付けられた二段重ねのクリスマスケーキでした……!

大人たちは子どもたちがケーキの登場に目を輝かせる姿にとても満足しています。おそらく前日に街まで買い出しに行ってくれたのでしょう。

そして切り分けられ、紙皿いっぱいの大盛りに乗せられた甘いケーキが目の前に出されます。フォークに乗せて二三口、口に運んだとき……ついに、わたしの胃袋は限界を超えるのでした……!

年に一度のクリスマス会は、決まってリバース(嘔吐)するまで食べさせられ続ける苦行の日でした。しかし、成長とともにわたしの胃袋も年々容量を増していきます。

そして毎年リバースしていたご馳走も、ついに小学校高学年になると、勧められるまま口に入れてもなんとか吐かずに最後まで食べ切れるようになりました。

現在は飽食の時代、食べきれないほどの食べ物を量産し捨てられる食品ロスは年間643万トンにも上るといわれています。いっぽうで戦争が起こっている国や発展途上国のひとびとは飢餓に苦しんでいます。

このような時代に、クリスマスというイベントにかこつけて食べきれないほどのご馳走を出されるのも、問題であり罪悪感を持つべきでしょう。

しかしただひとつ、世界中のひとびとに共通していることは、お腹がいっぱいになると理屈抜きに幸せな気分になるということです。

極限まで体中が満たされて、ほかに何も入らなくなる。酒やタバコ、コーヒーなどの嗜好品などもそのときは欲しくなくなる。

そして胃や腸が頑張って働くので体が疲れて、ほどよい眠気に襲われます。お腹がいっぱいになって眠ってしまうと、もう余計なことは考えられなくなる。日々の心配事や、人間関係の悩みなどもどこかに消えてしまいます。

昨今はコロナ渦のなか、この頃のように狭い会館に大勢のひとが集まるような密なクリスマス会は行われなくなりました。大人たちのどんちゃん騒ぎに子どもたちが巻き込まれる機会もなくなりました。

しかし、寒い冬の日にほっと心温まるクリスマス会の空間は、きっとこれからもどこかで受け継がれていくのでしょう。

【作・白沢 清美】


20歳のクリスマスの夜に

「クリスマス・イヴ」は既にクリスマスに含まれている。もともと、起源をたどるとクリスマスは、イエス・キリストの降誕を記念する祭である。僕にとっては、ハロウィーンと同様で西洋のお祭りに含まれているので、仏教徒の僕には「関係がない行事」と思っていた。
しかし、20歳のクリスマスはこれまでと全く異なっていた。クリスマスは、一人でさみしく過ごすと、そう感じる日だが、
二人で過ごすと別次元の時間・空間となる。そう、20歳の僕には彼女がいたからだ。
 「クリスマスイブはどこに行く?」彼女が聞いてきた。
「そうやなー。神戸のルミナリエにでも行ってみる?」僕は、大阪にある大学に通っていて、大阪・京都・神戸で最も有名なイルミネーションは、ここしかないと決めていた。
「えーでも、きっと、人がめちゃ多いよねー。」彼女は、いらち(いらいら症)で人が多いところは、苦手だった。
「でも、今年は、特別なクリスマスにしたいからさー。行こうよー。二人ならきっと楽しいよ。」僕は、期待を持たせる笑顔で彼女の表情をうかがった。彼女は、「うーん。わかった。じゃあさ、私の手を離さないでよ。わたし、良く迷子になっちゃうからさー。」彼女は子供っぽく、僕の考えに応じてくれた。この頃の会話はいつも、電話で出掛ける約束をして、デートするのが僕のセオリーだった。
 彼女とつきあい始めてもう半年になる。5月に、サークルの合コンで知り合い、何度かデートをして付き合うことになった。彼女とは友達感覚もあり広島から大阪の大学に来て初めての彼女だった。よくけんかもしたけど、夏と秋の時間を、毎週どこかに出掛けては、ともに過ごした。そして、始めて過ごす、クリスマスというイベントは、二人にとって大きな意味のある日だ。
街は、クリスマスソングのBGMにあふれ、山下達郎の「クリスマス・イブ」が繰り返しリフレインされた。「雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるだろう♪」恋人たちは、素敵な聖夜の夜を期待していた。
 彼女は、大阪の本町の商社につとめるOLで、短大卒だったから、僕よりも大人びており、社会人として毎月給料をもらっていたし、僕は大学生のお小遣いで、僕と比較しても、経済的にも精神的にも大人だった。そこが彼女の魅力で、同じ大学のキャンパスに通う、カジュアルな服装とは一線を画していた。ジャン ポールゴルチエのようなシックな服装を身にまとい、アナ スイの香水をいつもつけていた。
そして、クリスマス・イブデートに着てきた服装は、ツイードのスカートに黒のストッキング、ゴルチエの黒のコートとフェイクファーのロシア帽子を被って登場した。
 僕は、彼女の服装とも一線を画し、モッズコートに黒のジーンズにコンバースのスニーカーを履いて、音楽性でいうと90年代のモッズパンクロックのファッションを気取っていた。
彼女とは、いつも淀屋橋前で待ち合わせをして、御堂筋線に乗り換えて、梅田からJR神戸線に乗り換える。JR元町駅で降りて、そこから三宮方面に歩いて行くのだが、予想通り人が多い。行列のようにごった返していた。イルミネーションに輝く街並みはBGMのWHAM!- LAST CHRISTMASとともにムードを向上させた。恋人たちのテンションはより一層に盛りが上がる。僕は、彼女の手を握り、冬の街並みの中で寒さを暖かさに替えて彼女の手の温もりを感じながら歩く。
三宮の百貨店あたりで、ショーウインドウに映る二人は笑顔で楽しそう。全てがキラキラと輝いている。
しかし、ここで大きなミスに僕は気づいた。夜街並みを歩きながら気づいた。「そういえば、ディナーのレストランを予約してない・・・。やばい、彼女に怒られる(..;)。」20歳の頃の当時は、デートした後に、ワインで乾杯でして1泊する口実で、その夜彼女を抱く。一夜を共にすることで目的が達成されるはずだった。
しかし、僕の自宅は、大阪と京都の間に位置しており、神戸からは遠い。無計画なデートプランは彼女のいらいら性を増幅させた。 
彼女は聞いてきた。「今日は楽しかったね。おなかすいちゃった。どこかお店を予約してるんでしょ?」僕は、ここで、開き直るか、謝るかの選択肢しかない。
「いや、予約してない。どこかお店を探そうか・・・」開き直ることを選んだ。さすがにクリスマスの夜は、どの店も混雑していて、現代のようなスマホで検索して、食べログなどでお店を選択するようなデバイスもない。 
なにせガラケーが主流の時代だから。僕は、辺りを見回してお店がいっぱいなので、
どうすることもできない。彼女のいらちが、勃発した。「えー、まじで?予約してないの?じゃあさ、もう、帰るね・・・。」 彼女はそう言って僕を電化製品の不良品でも見るかのような目で、見切ったような口調で言い放ち、握った手を離し、一人ですたすたと駅の方に歩いて行ってしまった。
僕は、彼女を見送ることしか出来なくて、「ごめん。本当にごめん。予約するのを忘れてた・・・(..;)。」僕は、彼女の機嫌を取り戻すために必死になって謝った。
最初から、ミスに気づいた時に、「ごめん、予約してないわ!ごめんなー。」と言ってしまえば、彼女はあっさりと許してくれたかもしれない。しかし、当時の僕は、優柔不断で責任を逃れようと、ずるずると、その職にしがみつ政治家のように、彼女の怒りを増幅させしまった。
彼女はそのままいなくなってしまった。クリスマスの夜に、僕に笑顔も残さずに。僕は夜空を見上げた。白い粉雪が降ってきた。僕は、一人になり、その冷たい雪を感じるしかなかった。
雪が降り注ぎ、僕の体温が冷たくなって反省していた時だった。僕の目を暖かい手袋が包んだ。
「だーれだ?」振り向くと笑顔の彼女が立っていた。「おなかすいたからさ、私の地元でご飯食べようよ。」僕は、驚きとうれしさのあまり涙がこぼれた。「この手袋、私の手縫いなんだよ。はい、クリスマスプレゼント♡」そう、彼女にとって、僕の無計画さは、想定の範囲内だった。女性は、いつも男を試している。僕たちは試されているのだ。そして、その結果がどうであろうと、彼女は素敵なクリスマスを過ごしたいだけなんだ。僕は、その後、彼女の実家で、手作りのチキンとクリスマスケーキを家族と共にすることになった。クリスマスは誰か大事な人と過ごすイベントだ。それまで、関係がないと構えていた僕は、考えが180度転換することができた二十歳のクリスマスだった。

【作・弓吉サトル】

「大学最初のクリスマスの話」

「いらっしゃいませー!!」
回転寿司屋さんで握り担当の私はもちろん、従業員全員であいさつする。
全席満員、店内での食事ではなくお寿司お持ち帰りの方など、オーダーが複雑になりパンクしそうになりながらも従業員全員が笑顔で手早く作業を進めていく。

クリスマスというイベント時期は飲食店にとっては書き入れ時の時期で、バイトしている回転寿司屋さんも例外ではない。
運よくお休みをとれたバイトやパートの人以外はほとんどの人が出勤となり、私も休みがもらえなかった一人として、講義終わりに出勤することになった。
生活費の為ではあるけど、クリスマスというイベントのある時期に働くというのは、新鮮な経験だ。

働き始める前はドキドキしながらタイムカードを押したけど、夕方の時点で休日のお客様がとても多い日よりオーダーが多く、出勤時の挨拶が終わってすぐに対応に追われることとなった。

「お客さん、めっちゃ多いですね!」
「まだ夕方だから、この後の19時から21時が本番よ
 今の間にレーンにお寿司流しておかないと、後がきつくなるよ」

同じ場所の担当となった社員さんに声をかけると、そんな返答がきたので、急いでレーンにお寿司を流す作業に入る。
表の握り担当がオーダー作業に追われている時は、裏でレーンにお寿司を載せる作業をしてくれているのだけど、今日は裏も作業がいっぱいで手が回らないようだ。

「いつもクリスマスはこんな感じなんですかー?」
「そういえば、たいしょうはバイト初めて初のイベントか。クリスマスもそうだけど、新年の1月3日、4日も人が多いから覚悟しておいた方がいいよー」

雑談の中、忙しい時期が続くという絶望的な宣告を聞いてしまって苦笑が出てしまう。
飲食店のイベント時期って大変なんだなーと思っている間に19時になり、余計なことを考えている余裕がなくなってきた。
必死にオーダーをこなしていたら、いつの間にかラストオーダーの22時になっていた。

「今日、めっちゃ忙しかったですねー」
「イベント時はこんなもんよー、書き入れ時だから頑張らないとね」

片付けをしながら話しかけると、社員さんは疲れているけど慣れた雰囲気で教えてくれた。
売上的にはこれくらいないと困るだろうけど、慣れたくないなーと私は正直思いつつ、「頑張りましょう」と答えた。

「お疲れ様でしたー」
「はーい、お疲れ様―」

片付けや次の日の仕込みをしていたら、23時30分になっていた。
いつもは遅くても23時には帰っているので、今日は一段と遅い。

「お腹空いたな」

つい独り言をいってしまうくらいお腹が空いた。
片付けの途中、レーンに乗っているお寿司を破棄する時に、食べられるお寿司は食べてもよかったのだけど、ほとんどレーンに残ってなく小腹を満たしたくらいだった。
帰る前に24時間空いているお店で食べてもよかったのだけど、早く帰って休みたいのでコンビニで買って帰ることにした。

「いらっしゃいませー」

コンビニ店員さんの挨拶聞こえる。
適当に選んで帰るかと見ていたら、ホールケーキが残っていた。
買う予定はなかったのに見つけた瞬間、目が離せなくなる。
実は一度、ホールケーキを丸々食べてみたかったのだ。
買おうか買わないか悩みながら価格を見ると2,980円と書かれている。

「2.980円かー」

趣味にお金を使い、生活費がかつかつの私には大金だ。
結局、ホールケーキは買わずに出た。

「来年はホールケーキ買うぞー」

そんな独り言を呟き、今日の事を思い出しながら携帯を見ると0時になった。

【作・中田 翔】

「みっちゃんのクリスマス」

「みっちゃぁん、ごはんよ! 」
 ママの声がしました。夕食の時間です。
 みっちゃんは、ママが大好きです。ママの声も、もちろん大好き。
 お友達と遊んでいたみっちゃんは、急にソワソワしだしました。
 早く帰んなきゃ。
 もうすぐ、もうすぐクリスマスイブ。パパとママと一緒に過ごすんだ。
「まっちゃん、またね」
 うん、またね。
 まっちゃんと呼ばれた友達は、みっちゃんの頭の上から返事をしました。
 まっちゃんは、この大きな樹でいつもみっちゃんを待っていて、いつもいつも遊んでくれる。
 また明日ね、まっちゃん♪

「あらあら、みっちゃん。衣服が汚いじゃない。早く着替えてらっしゃい」
「うん、ママ! 」
 みっちゃんのママは、夕食を作ってくれていました。ママが作ってくれる食事が大好きです。着替える前に食べたかったけど、怒ったママは怖いので我慢することにしました。
「みっちゃん、着替えたら汚れた服は洗濯機に出してね♪ 」
「はあい」

 着替えて台所のテーブルに付いて、夕食を食べだしたみっちゃんを見て、ママは言いました。
「みっちゃん、また樹に登って遊んでいたの? 落ちたら危ないって前にも言ったのに……」
 ママが怒っちゃう。ママの怒った顔は見たくありません。でも、ママが知ってるお友達も遊んでくれるから、大丈夫なはずです。
「……まっちゃんが樹の上で待ってくれるから、あたしもあの樹に登るんだよ。まっちゃんって、樹に登るのがあたしより上手いんだよね♪ 」
 しょうがないわね、ってママが言いました。もう、仕方ないなって顔をしていました。

 みっちゃんが登っている樹というのは、町の中にある一番大きなモミの樹です。なんでも、パパやママよりだいぶ年上だそうで、パパもママもよく知っている樹です。みんなが住んでいる二階建ての家より高いです。近くにあるビルと同じくらい、高い高い。
 元々は、戦前には大きな家の庭に立っていたらしいですが、戦争で大きな家が無くなってしまって、樹も無くなってしまうところだったんですけど、町おこしのシンボルとしてこの樹を残そうとしたんだそうです。勿論こんな事、みっちゃんは小学生になってまだ三年しか経ってないから、まだよくわかってないんですがね。
 それよりも、みっちゃんの楽しみは、この大きなモミの樹が、町を上げてクリスマスの飾りつけを行っていることです。町の大人たちがクリスマスの飾りつけをしているなか、みっちゃんは、まっちゃんと一緒に樹に登って、大人たちが飾りつけを行うさまを、まっちゃんと一緒に見ているのが最近の楽しみでした。
 きれーい……♪ 
 うん、きれいだね♪

「──やめなさい」
 パパが仕事から帰って来て、ママがみっちゃんが樹登り遊びしている、と言ったらしく、途端にパパが怖い顔になって、みっちゃんに言いました。
「あの樹は、町の人が、頑張ってクリスマスツリーとして飾りつけをしてるんだ。邪魔しちゃ駄目じゃないか」 
「……邪魔なんかしてないもん。飾り付けをしてくれる人みんな、親切にしてくれるもん」
「今はいいよ、今は。もうちょっとしたら、あの樹の上に星の飾り付けをするんだ。クレーンとか工事現場で使うような機械でないと、出来ないんだ。
もしみっちゃんが、樹登りして危ないことになったらどうすんだ? 危ないからやめなさい」
「うん……」
「いい子だね」パパは、みっちゃんの頭を撫でてくれました。

 みっちゃんは、パパも最近怒るのが、なんだかママよりも怖くなった気がしていました。鬼気迫るっていうのか。ここは言うとおりにしよう。
 みっちゃんは、パパの話は知っていました。でもあそこで飾り付けをやっている人に教えてもらったんだけど、確か頂上に星の飾り付けって、クリスマスイブの日の夕方に飾るって言っていた。その時には子どもたちをいっぱい呼んで、側にいある公民館で、クリスマスパーティーを行うって言っていたはずです。
 
 でも、みっちゃんはほっとくわけにはいきませんでした。
 だって、まっちゃんが寂しがるから。樹を登ったところにある洞(うろ)の中に、まっちゃんがじっとして動かない状態で、みっちゃんが待っているから。

 あの日、まっちゃんは死んでしまった。
 パパやママが言っていることがそうなんだったら、まっちゃんはあの時死んでしまったんだ。
 他愛ない遊びだった。
「みっちゃん、この蔓で遊ぼう! ほら、ぶら下がってさあ! 」
「うん! 」
 ぶらんっ!
「ほうら! 楽しい! 」
 ぶらんっ!
「うんっ! 」
 
 ぐんっ!
 それは、あっという間でした。
 まっちゃんが蔓にぶら下がっていた時────まっちゃんの手が滑った。
 それが始まりでした。
「みっちゃん、助けて!」
 みっちゃんはまっちゃんを助けようとして、思わずまっちゃんの手を掴んだつもりでした。実際手を掴んだ。と思ったら、
 みっちゃんが、両手で掴んだのはまっちゃんの首だったのです────。
「まっちゃん、大丈夫?」
 みっちゃんは、まっちゃんの首を掴んだまま、まっちゃんに訊きました。
 でも、まっちゃんの返事はありませんでした。

 それでもみっちゃんは、まっちゃんは動かないんだけど、なんとか自分の力で引き上げることが出来ました。
 でもまっちゃんを休ませないと……。
 思いついたのが、近くにあった樹の茂った奥にあった、太い枝の中にあった洞でした。
「まっちゃん、ここなら休めるね! 」
 実は洞の中で休んでいたのは、まっちゃん一人だけじゃ無かったのです。みっちゃんは、それを知っていたからまっちゃんを洞の中に入れてあげた。
 まっちゃん一人だけじゃないんだよ。ここで休んでいる子どももいっぱいいるからね。

 その洞の中には、まっちゃんと同じように死んじゃったんだけど、ここで休んでいる子どもがいっぱいいました。
でもそこにいる子どもは……、モミの木に、まるで取り込まれていってしまったみたいでした。洞の中にいる子どもたちは、みんなまっちゃんみたいに死んじゃった子どもたちを、栄養にして取り込んでしまっていたのです。
でも、みっちゃんにはそんな難しいことなんてわかりませんでした。だって、取り込まれていったといっても、何年も何年も、じわじわと、少しずつだけど、モミの木の中に吸収されていったのですから。

みっちゃんは、知っているのです。
パパも小さい時に、子どもを死なせてしまって、みっちゃんと同じようにあの洞の中に隠してしまったんだ。だから、あのモミには登るなって言ったんだ。
確証はありません。でも、長い年月を掛けて取り込まれた子どもたちの死体には、パパと同い年だった子どももいる筈なんだ。
だからなんだ。
この近所には、必ず神隠しみたいに子どもが行方不明になる事件が、たびたび起こるのです……。

何日か経って、みっちゃんは、モミの木の側にある公民館で、子どもたちがいっぱい集まったクリスマスパーティーに参加しました。
 モミの木の、クリスマスツリーの飾り付けもクライマックス、頂上に銀色の星の飾り付けも終わったみたいです。
 電飾や飾りもキレイに飾られて見事なクリスマスツリー……!
 夜になって、電飾のイルミネーションもキレイに輝いています。
 みっちゃんは、ふと気がつきました。
 電飾の灯りに外れて、ほのかな灯りが見えたのです。
 その場所は、ちょうどその奥には洞がある位置でした。でも他の子ども達は気付いていない。大人達も気付いていません。
 まっちゃんだ。
 別れに来たんだ。……ごめんね。
 ふと、みっちゃんは、自分が泣いていることに気が付きました。でも涙は誰にも気づかないうちに止まっていました。
 しかも今は夜だ。誰にもわかりはしない。

 みっちゃんは、もう樹登りは止めようと思いました。
 パパとママに樹登りを止めるから、一番聞きたかったことを聞いてみたいなって思いました。
 パパもママも小さいときに、よくあの樹に登って遊んでいたのって。
 そんでもって……、
 ひょっとして、行方不明になった友達っていなかったか。って……。

【作・名島也惟】
https://estar.jp/users/196714135/novels


最後のラブレター

「あなたがこの手紙を読んでいるということは、わたしはもうこの世にはいないよ。
ねえ、最後のわがまま聞いて」

えっ、うそっ、ナンダ、うそっ、うそっ、冗談…パニクってしまった。
僕はテーブルに置かれた2つのワイングラスを思わず倒しそうになった。

クリスマスイブ、僕は彼女莉緒の手紙を読んで自分を失った。

…出会いは、偶然というか、必然というか、僕と莉緒は映研だった。
エリアの映研の研究会&親睦会でのことだ。
野外の特設会場で昼は、各大学の作品の上映会。
それからパネルディスカッションがあって、日が傾きかけてきたころ、
パーティーが始まった。
彼女にふられたばかりの僕は、ノー天気な性格なのか、次の相手を探していた。
下心が服を着て歩いているようなもんだ。
でも何だかあぶれてしまって、一人で安普請のパイプ椅子にこしかけてた。
会場の席はほとんど埋まってる。
手持無沙汰なのでスマホでゲームをしてた。
こんなことしてる場合ではないのだが…。
ちょと疲れたので、スマホを置いて一息入れた。
ふとテーブルの向こうに目をやると、ダサイ感じの女の子がオレンジジュースと
フライドポテトを持ってうろうろしてる。
どうやら、友人たちは男をみつけて彼女のもとから消えたようだ。
動きがトロくて、いつまでも席をみつけられないでいる。
まるで何かに対する欲みたいなものがないようだ。
僕は好みとか、下心とかでなくて、ちょっと気の毒になって思わず
「ここ空いてるよ」と、隣の椅子をすすめた。

「どこの学校?」
「清徳」
「あれ、お嬢さん学校」
「そんなことないよ」
何だかあまり話が弾まない。

「映研で何やってるの」
「うん、ナイショ」
「教えてよ」
「イヤ」
「ケチ」
たわいのない話をした。
話を積み重ねるうちに最後はそれなりに盛り上がった。
素直でいい子だ。
帰り際、莉緒はくもりを拭くために眼鏡を一瞬外した。
はっ、とした。
ありがちな話だが、超かわいい。
ただ、シャイすぎるのだ。

現金なものだ、3分後、LINE交換をしていた。

それから、なんだかごく自然にデートに行くようになり、
恋に落ちた。
8月の花火大会の夜、僕たちは結ばれた。

秋の自主製作映画の上映会で驚いたのだが、主演女優が莉緒なのだ。
最初、彼女がスクリーンにアップで映った瞬間、椅子からころげ落ちそうになった。

だからずっと映研で何やってるのか教えてくれなかったのか。
上映会のあとキャンパスのカフェで、「わたし、どう?」
と照れくさげに聞いた。
「宇宙一綺麗だ」と言った。
もっと他の言い方ないの?といいたげな顔で彼女は微笑んだ。

はじめてのクリスマスイブ、莉緒は手編みのセーターをプレゼントしてくれた。
「北の宿から」、よ。
えっ、僕の目はまんまるになった。
ほら、「♪着てはもらえぬセーターを 寒さこらえて編んでますぅ あなたぁ~恋しい北のぉ~宿♪」てね。
「なるほど、でも良くそんな曲知ってたな」
「お母さんが大好きだったの、子守歌がわり」
「子守歌か、何だか迷惑だな」
「うん、いいのよ、わたしお母さん大好きだから、2年前に癌で死んじゃったけど…。
でもこのセーターはちゃんと着てよ」
いたずらっぽい顔で、僕と目を合わせた。
シャイなだけで、けっこうユーモアあるんだな、思わず惚れ直してしまった。

クリスマスも終わり、新年、バレンタイン、ホワイトデー…と、なんだかんだ楽しく
過ごした。
ホントに僕は宇宙一しあわせものなのかもしれない、密かに思った。

肩を並べて歩く、桜の花が散る通学路の舗道で彼女はふいに立ち止まった。

僕にいきなり。
「わたし死ぬよ」
「えっ」
「わたし死ぬよ」
莉緒はあっけらかんと僕に告げた。
「なに、えっ、うそ、何のこと」
「癌が見つかったの、それも悪性の膵臓癌、ステージ3」
「ホントか?」
「うん、うそはつかない、スティーブジョブズと同じ癌、でも大丈夫、
すぐには死なないみたい…」

周りのすべての景色が厚いパラフィンで覆われたようにモノクロになった。

「ねえ、うんとたくさん思い出をつくろう、両手で持ちきれない、いや東京ドームに入り
きらないくらい」

僕は静かにうなずいた。
そうするしか出来なかった。

それからの毎日は光にあふれてた、何があっても死ぬまで忘れられない日々。
もちろんケンカも沢山した。
でも、それさえも愛おしい。

10月に映画を観に行った。
古いフランス映画。
主演はカトリーヌドヌーブ、じゃなかったけど、美しい大人の女性だった。
甘くて、切なくて、ロマンチック。
主演女優が手紙を渡すシーンがあった。
これからの2人の未来を左右する…。

11月ポプラ並木の落ち葉が黄色い絨毯になってる路を肩を並べて歩いてた。
「ちょとわがまま聞いてくれる?」
「なに?」
「パリに行ってきたいの、映画観たでしょ、はずかしいけどわたしも女優の真似事してる」
「うん、とても綺麗だった、驚いたけど」
「パリで自分の写真を撮りたいの」
「えっ、でも身体が…」
「たぶん大丈夫、旅費は癌の保険金がもらえたから心配ない」
1分、3分、5分…
「うんわかった僕も一緒に行きたい、けど旅費が…」
「でしょ、うん、今回は何故か一人だけで行きたい、理由はうまく説明できないけど」
「わかった」
「ありがとう、じゃ、今度のクリスマスイブ、あのイタ飯屋で再開しましょう、
そうだ、その時このわたしのブレスレットをつけて来て」
「なんで?」
「いいからっ、ぜったいよ、ゆびきりげんまん」
「わかった、くれぐれも気を付けて行けよ、何かあったら連絡くれ、マッハで飛んで行く」
「ありがとう…」

そしてクリスマスイブ、約束の時間に店に行った。
彼女はまだ来てない。
LINEも電話もずっと通じていない。少し不安だ。
店長が席にやってきた。

「穂高様ですか、店長の沢田です、お客様にお渡しして欲しいとお預かりしているものが
あります」。
そう告げて、水色の封筒を僕に手渡した。
莉緒からの手紙だ。

丁寧に開封した。
見慣れた少し右上がりの文字。

「あなたがこの手紙を読んでいるということは、わたしはもうこの世にはいないよ。
ねえ、最後のわがまま聞いて」

そう前置きして、

よくケンカもしたけど、あなたと出会えてホントしあわせだった。
こんな取り柄のないわたしを心から愛してくれた。
宝石のような思い出が数えきれないよ。
東京ドーム何個分かな?

お願い
その1.しあわせになってください。
その2.わたしのことは忘れていいよ。いや、忘れて。
その3. あなたはあなたのままで変わらないで。

3つのことちゃんと守ってね。

メリークリスマス

その文字の下に、緑色のインクで小さく書いてる。
「いや、やっぱり2は微妙」

しばらくは何が起こったかわからなかった。
そして、事態が理解できた時、ダムが崩壊したように涙があふれてきた。
他の客が何事か、という顔でみている。
かまうもんか、
人目をはばからずに嗚咽して泣きじゃくった。

後で知ったのだが、彼女はパリになんか行かなくて、そのまま入院したようだ。
僕に知られないように…。

閉店で店の灯りが消えて店長が僕の肩をポンポンと叩いた。
ドアを開けてこの店から出るのがこわかった。

そして祈った。
サンタさん、そこにいるのなら、僕を今すぐ迎えにきて、
そして、遠く、遠い、知らない街、彼女が待ってるまだ見知らぬ街につれて行って。
どうかお願いだから。

彼女の水色のブレスレットを強く握りしめて、星の向こうに祈り続けた。

【作・橘 祐介】


教会のクリスマス

ここは長崎駅。駅内のステンドグラスが美しい。
なおみは大好きな祖父が住む長崎へ、冬休みもやってきました。

駅には優しい祖父が迎えにきていました。
祖父を見つけた瞬間、なおみは顔がほころびました。

「おじいちゃん、会いたかったよ」

「なおみ、よく来たね」

「クリスマスにおじいちゃんと過ごせるから嬉しい!
 サンタさんもやってくるかな?」

長崎へはいつも夏休みに行っていました。

なおみは10歳。
大好きな祖父が住む長崎へ、長期休みのときは遊びに行っていた。

12月の長崎は雪が降っている。

「クリスマスはホワイトクリスマスになるんだろうな」

なおみは祖父が大好きで、クリスマスの祖父に会えるのをとても、お楽しみにしていました。

なおみは10歳ながらに、サンタクロースの存在を信じていた。
教会が大好きで、長崎に行く度に、大浦天主堂や、浦上天主堂へ通っていた。

さて、クリスマスがやってきました。
今日はおじいちゃんと一緒に大浦天主堂へ。

大きいクリスマスツリーが飾られていて、とっても綺麗です。

教会内のステンドグラスがとても美しく、ロマンチック。
クリスマスのミサは、厳かで美しかった。

ミサとは、神に感謝と祈りをささげる祭儀。
クリスマスのミサは、イエスキリストの生誕を祝う意味が込められているので、クリスマスソングが歌われます。


なおみの大好きな「きよしこの夜」を
なおみもみんなと共に合唱しました。

神父さんの聖書の朗読も素敵でした。

ステンドグラスから、マリア様が降りてくるような雰囲気でした。
なおみはステンドグラスや、教会が大好きだったのでこの空間に入れるのが嬉しかった。


「おじいちゃん、サンタさんっているの?」

「うん、サンタさんは天からクリスマスにやってくるんだよ」


突然、教会内の灯りが消えました。

そして、キャンドルナイトに灯りが変わりました。

「おお、オレンジで灯りがきれいだね、おじいちゃん!」

「なおみちゃん、メリークリスマス!」

おじいちゃんがなおみに差し出したものは・・・

大きな赤い靴の中に、クマのぬいぐるみとお菓子が詰まったギフト!

「わあ嬉しい!おじいちゃんありがとう!!」

「教会の中で大好きなおじいちゃんに、素敵なクリスマスプレゼントがもらえて、なおみは幸せだよ」

「サンタクロースはおじいちゃんだったんだね笑」


教会内では、みんなに苺の生クリームショートケーキがふるまわれました。

おじいちゃんと一緒に食べるクリスマスケーキは、格別でした!

教会の外は、しんしんと雪が降り、ホワイトクリスマスになりました。

帰りは、赤い手袋をしながら、おじいちゃんと手をつなぎながら帰りました。

「おじいちゃん、最高のクリスマスをありがとう!とっても楽しかったよ!」

クリスマスの聖なる夜、なおみは幸せな気持ちで、眠りにつきました。


最後にクリスマスに関する聖書の名言を少しご紹介します。

テサロニケ人への第一の手紙 5:16-18

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい。

ローマ人への手紙 8:28

神は、神を愛する者たち、すなわち、ご計画に従って召された者たちと共に働いて、万事を益となるようにして下さることを、わたしたちは知っている。


ローマ人への手紙 5:5

そして、希望は失望に終ることはない。なぜなら、わたしたちに賜わっている聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれているからである。

コリント人への第一の手紙 13:4-8

愛は寛容であり、愛は情深い。また、ねたむことをしない。愛は高ぶらない、誇らない、不作法をしない、自分の利益を求めない、いらだたない、恨みをいだかない。不義を喜ばないで真理を喜ぶ。そして、すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてを耐える。愛はいつまでも絶えることがない。しかし、預言はすたれ、異言はやみ、知識はすたれるであろう。

ローマ人への手紙 5:5

そして、希望は失望に終ることはない。なぜなら、わたしたちに賜わっている聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれているからである。


【作・三愛はな】
著書一覧↓
https://note.com/hanasakka333/n/n619a857b222e


バタースコッチラテ

あまーいブランデーの香りと、

ぷっくりふくよかに乗せられたクリーム。

真ん中に添えられた塩気の効いたこっくりバターがゆっくりと沈んでゆく。

口の中で溶け合うと、勝手に幸せのため息が溢れた。

その声まで甘く蕩けちゃって、思わず笑みが溢れる。

口に運ぶだけで、こんなにも至福の時間をくれる飲み物ってすごい。

冬の足音が聞こえてくる今だからこその贅沢。

ふと、目線を外にやれば、いつもよりおめかしして貰ったもみの木達が華やかに並んでいて楽しそう。

耳をすませば、大好きな鈴の音のクリスマスソング。


ああ、あったかいなぁ…。


幸せは、こんな小さなことでいい。

ううん、こんな小さなことがいい。

だって、こんな小さなことなら毎日見つけられる。

毎日幸せでいっぱいになっちゃうから、もうこれは大きな幸せだね。

こんな些細なことかもしれない。

けどね、今の時間を幸せって感じられる自分になれたことが嬉しいの。

この気持ちを胸いっぱいに感じて、私はまたマグカップに口をつけた。

今の、私だけの、幸せの味。

【作・YUMI YASUNO】

ほっとクリスマス2

2022年12月20日 発行 初版

著  者:クリスマスエッセイ集制作委員会
発  行:TSUMUGU出版

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