───────────────────────
───────────────────────
今日は朝からどうやら一日中、雨のようである。
いつもと変わらない朝が、いつもと違う朝に変わった。
何も飾り気のなかった部屋。
その部屋に素敵な春が来た知らせのように、幸せを運んで僕と出逢ってくれた、一枚の女の子の絵。
絵の中の彼女の周りを幸せそうに桜の花弁が舞っている。
彼女は天使のような、妖精のような、少女のような、大人のような、そんな存在感。
とてもいい子なのだということも絵から伝わってくる。
僕の朝が変わった。
その絵が癒しの音を奏でる雨音と一緒に、心に優しさをこの朝に運んでくれているからだ。
朝から温かい珈琲を淹れて、その香りを楽しんでいると、その絵の女の子がとっても何だか楽しそうだ。
なんて優しい絵なのだろう。
絵の温かさから心を正しい方に持っていこうとも思わせるし、そして勿論、優しい気持ちにもさせてくれる。
ずっと昔に住んでいた家。
二階の窓から西日が差し込んで、その光に包まれては心が落ち着いた、小さな頃に感じたあの優しい光の温かさにも似ている。
心地が良い、その時の夕日が僕にくれた太陽の光と香り。そんな安心感のある温かさ。
この絵には、きっと描かれた方が持つ心の素晴らしさが投影されているのだろう。
いつも僕に微笑みかけてくれているようにも感じる。その流れる線の一つ一つに温かみと優しさがある特別な絵。
一目見ただけで、時には厳しい社会でやさぐれそうになる心や感情をも落ち着かせてくれる。人を幸せにする愛がある絵だ。
人と人は見たり触れたりすることができなくても、心で何かを感じることのほうが、その人のことがよく見えるのかもしれない。
その優しい絵が春のかけがえのない記憶となって、永遠にこの絵と一緒に幸せという名の喜びを僕にくれている。
雨粒の音に耳を傾けては幸せの感情に浸る。
珈琲の癒しの香りに包まれながら、その絵が与えてくれる幸福感と一体になる。
一口、珈琲を口に入れると、絵の優しさで包まれた空間と心が混ざり合っては喉をゆっくりと通り過ぎていく。そして、胸のあたりが熱くなる。
今、珈琲の宣伝の面接にでも行こうものなら、一発で合格するオーラがきっと僕には出ているのだろう。
そして、絵の方を見る。絵の女の子がこんな風に言っているように感じた。
「なんでもできるで」
そして、こうも言っているようにも感じる。
「大丈夫やで」
「なんも心配せんでええんよ」
「ええ日になるで」
それから静かで、穏やかな時間がしばらく流れる。
出掛ける準備をすると、着慣れた服を着て、履き古した少し緩んだ靴を履き、傘をしっかりと手に握り締める。
扉を大きく開けた。
外に出ると、新しい一日を迎えてくれるそんな優しい雨と、男前やろ? と言わんばかりの渋いグレー色をした空が、僕を出迎えてくれた。
そんな空が僕の心を何だかとても爽やかにもしてくれて、思わず僕も、男前やろ? と言わんばかりのキリッ! とした渋い顔を空に見せた。
そして、僕は空に向けて、こう挨拶をするのだ。
「おはよう。いってきます」
2023年4月9日 発行 初版
bb_B_00176301
bcck: http://bccks.jp/bcck/00176301/info
user: http://bccks.jp/user/150337
format:#002t
Powered by BCCKS
株式会社BCCKS
〒141-0021
東京都品川区上大崎 1-5-5 201
contact@bccks.jp
http://bccks.jp
巡り会えた皆様に、
幸せが訪れますように…。