この本はタチヨミ版です。
サ談会#014 @渋谷SAUNAS
静岡県浜松市生まれ。「銭湯を日本から消さない」をモットーに兄の湊三次郎氏が創業したゆとなみ社に所属し、銭湯の継業に携わる。'20年より同社の東京初進出となる十條湯(北区)再生プロジェクトを手掛け、クラウドファンディングで500万円を上回る支援額を達成。喫茶併設の特色を活かす方針に基づいて「喫茶深海」を中心にリニューアルし、銭湯・サウナファンだけでなくレトロ喫茶ファンも足を運ぶスポットとして存在感を確立した。取材直後の'23年7月からは十條湯を離れ、神戸に拠点を移して湊河湯の事業に注力する。
編集部 ゆとなみ社(*1)は、現在どれくらいの規模なんでしょうか。
*1 社名は「湯を営む」「湯と人々の営み」に由来。
湊研雄 全体で50名ほどで、そのうち約20名が社員雇用です。独立志望の方には店長ポジションに就いていただいて、大丈夫そうな感じになってきたら独立という形をとっています。今、自分以外のメンバーはみんな京都・大阪・滋賀にいます(*2)。
*2 取材後の'23年7月、湊研雄氏も関西へ異動。
編 今回オファーした際にマネージャーさんを通しましたが、吉本興業にも所属されているんですね。

湊 ゆとなみ社の社員でありつつ、吉本興業にエージェント契約という形で籍を置いています。実は、スター諸星(*3)とNSC(吉本総合芸能学院)の同期で地元も同じ静岡なんです。養成所時代からよく遊んでいました。
*3 K-PRO所属のアウフグース芸人。アウフグースアカデミーも運営する。
編 それは初耳です。お二人とも、偶然また近い業界に。
湊 スター諸星が熱波師をやるようになったのは何となく知っていて、十條湯の経営再生プロジェクト(*4)が始まった頃に久しぶりに会いました。当時はまだそんなにサウナが好きじゃなかったので、「入り方教えてよ」と言って北欧(*5)に連れて行ってもらいました。4~5分で無理だと思ったんですが、彼が「ここから先があるから」ともう1分カウントしてくれて。
*4 '20年より湊研雄氏がゆとなみ社の出向社員として参画した。
*5 上野にある「サウナ&カプセルホテル北欧」。『ドラマ サ道』のホームとしておなじみ。
編 北欧の水風呂はかなり冷たいと思いますが、大丈夫でしたか。
湊 めっちゃ冷たいので1~2秒程度でしたが、もう一撃でハマりました。「これはヤバいだろ、めちゃくちゃいいぞ」と。東京の銭湯は300軒ほど回っていたんですが、それからは有名なサウナ施設を片っ端から回るようになって。その中で得た知見や、良いと思ったものを十條湯に落とし込んでいった感じです。十條湯にはもともと喫茶スペースがあったんですが、パッと見「ここは入っていい場所なの?」という印象だったんですよ。それを良くするためには、やはりガツンとお金をかけたいなと。認知度を上げて、応援してくれる方も集めるために、クラウドファンディング(*6)をやることにしました。
*6 1カ月で718名の支援を獲得、524万1895円を集めた。
編 結果は大成功でしたよね。看板も非常に雰囲気があります。
湊 あの看板は、ゆとなみ社でいつもお世話になっている上堀内美術(*7)さんの仕事です。センスが本当に素晴らしいので、看板から喫茶の内装までディレクションをお任せして一緒に作り上げました。
*7 ロゴデザインからインテリア設計や施工までを手掛ける看板職人の上堀内浩平氏。
編 喫茶のメニュー内容も本格的で、ちゃんとしたプリンアラモードが出てくるのでびっくりします。
湊 もともと、喫茶店がめちゃくちゃ好きなんですよ。ただ、飲食は自分でやるよりはもっとセンスのいい人材を入れたいと思ったので、信頼できる友人のれいなさんをスカウトしました。最初に会ったときから「銭湯で喫茶店をやるのが夢」と言っていたのが頭に残っていて、連絡してみたらちょうど仕事を辞めるところだったんです。

編 バッチリのタイミングですね。
湊 いつも人に恵まれていると思います。れいなさん自身がとにかく全国各地の喫茶店に行きまくる人なので、今までに得てきたものを思う存分アウトプットしてもらっている感じです。
編 海がテーマの小物なども置いてあって、絶妙です。
湊 以前は「喫茶SPA」だったんですが、雰囲気をガラッと変えて名前も一緒にリニューアルすることになりました。もともと女湯に「深海」というタイトルのタイル絵があって、響きもいいのでそれを採用しました。なるべく昔の空気が漂う感じにしたくて、什器や椅子は武蔵小山の喫茶店で40年ほど使われていた物を持ってきました。大きな柱時計も、近くにあった銭湯で使われていた物が放置されているのを見つけて、飾ってみようかなと。
編 今でもちゃんと動くのがすごいと思います。
湊 まさかと思って巻いてみたら、ちゃんと動き始めたんです。一応音も鳴りますが、何回鳴るかはランダムというお茶目な感じです(笑)。喫茶がきっかけで知った若い子が来てくれたらいいなと思っていたところ、実際フタを開けてみると世代が全然バラバラなのが面白いですね。40~50代の男性が1人でフラッと来て、クリームソーダを飲んで帰って行かれたりします。
編 カウンターを挟んでお客さんと店員さんがお喋りする姿もよく見ます。
湊 常連の方が来店のたびにフルーツを買ってきてくださったりして、お客さんからいただくものも多いです。お店というのは、そこに集まる人の流れと空気感で完成するものなんだと思います。お風呂のオプションではなく、ちゃんと喫茶店として成立するように本気で力を入れています。
タチヨミ版はここまでとなります。
2023年8月8日 発行 初版
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