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我々が『景』という文字を見て、最初に思いつくのは『景観』という言葉だろう。ただ、この『景観』という言葉の歴史は意外にも浅いのである。
大正時代のはじめに、感性で捉えた自然資源の様子であるドイツ語の「ランドシャフト」や、英語の唯物的な自然環境を意味する「ランドスケープ」の日本語訳として案出されたという。
ただ、日本語に訳出される際に最も重要視されたのは、唯物的・視覚的な自然環境を、古来日本人はどのように捉えてきたのか、ということであったらしい。
すなわち、短歌や俳句、また中世に記述された紀行文などに、風物や季節感がどのように描写されたかということである。
それは、景色・風景・風土といった総合的な自然・社会環境を、過去の日本人は物理的な視覚のみで把握したのではなく、森羅万象すべてを心象風景として表現してきたのであり、それが『観』という行為であったということを意味している。
言ってみれば、『観』という行為があってはじめて、『景』という文字の持つ世界は無辺に広がっていくということなのかもしれない。
近代化以降の社会では、「知」を識る(知識)に重きがおかれてしまい、「知」の恵み(知恵)は蔑ろになりがちである。脳の浅い層にある意識下で事物を捉える能力の高さが競われ、記録された識の量を誇示する社会は限界点に来ている。
これからの時代では、五感を超える六感などの無意識下の深層領域にて獲得した、森羅万象からの「知の恵み」に謙虚に向き合うことが求められるだろう。『景』を『観』する行為とは、その出発点なのかもしれない。
この本は、そんな『景からの知の恵み』の数々を、テーマ別に写真でまとめたものである。
※ 各テーマ
〇 時間的な陰陽の狭間
〇 季節の色彩美世界
〇 祈りと巡礼の記憶
〇 天地が胎動する場
〇 人々の営み世界
〇 歴史の遺産時空を遡る


2023年5月22日 発行 初版
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二十歳の時にダライ・ラマ十四世と個人的に出会った事が、世界の山岳・辺境・秘境・極地へのエスノグラフィック・フィールドワークへのゲートウェイだった。その後国内外の「辺(ほとり)」の情景を求めて、国内外各地を探査する。 三十歳代にて鍼灸師と山岳ガイドの資格を取得した後は、日本初のフリーランス・トラベルセラピストとして活動を始める。そのフィールドは、国内の里地・里山から歴史的、文化的、自然的に普遍価値を有する世界各地のエリアである。 また、健康ツーリズム研究所の代表として、大学非常勤講師を務めながら、地方自治体における地域振興のアドバイザーとしても活躍している。 日本トラベルセラピー協会の共同創設者でもある。