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『地域おこし協力隊にならない方がいい、これだけの理由(シルバー施策が日本を滅ぼす)』
前略。
当初、筆者はこの記事を書くべきかどうか、すごく悩みました。
地域おこし協力隊という仕組みへの問題定義のみならず、公務員への批判も多く記述していたからです。
筆者自身は地域おこし協力隊員となったことをマイナスに捉えています。
それでも「地域おこし協力隊を経験して満足した」「その後の人生の実りになっている」という人も数多くいるかもしれません。
しかし、筆者は隊員として活動していた期間、他の地域の隊員などからも「活動はうまくいっていない」「地域おこしが出来るとは思えない」という意見を多数、耳にしていました。
そして、あるネットニュースが最後の一押しとなり、やはりこの記事を書くことに決めたのでした。
そのネットニュースとは、奥さんと子供2人と共に赴任したある地域おこし協力隊員が「活動を続けるのがつらくてリタイアした」とYouTubeでその実状を訴える動画をアップしたというものでした
その動画やネット記事のコメント欄には『元地域おこし協力隊員』からの意見も寄せられており、やはり「地域おこしには無理があった」という内容のものが多くありました。
おそらく3年の任期を満足と共にまっとうした隊員もいるだろうし、その後、引き続き赴任地へ定住した隊員も、また総務省の狙い通りその地で起業し、産業を生み出し地域貢献している隊員もいると思います。
また本記事では、まるまる一章を割いて公務員批判をしているのですが、筆者は運が悪かっただけで、熱意のある公務員と出会って心打たれた隊員も多いのかもしれません。
しかし、ネットニュースの彼や、筆者のように「嫌な思いをして離職した隊員も多くいるのでは・・?」と考えて、やはりこの記事を公にすることにしました。
だからこの記事は、成功例ではない『ある元協力隊員の失敗例の体験記』として読んで欲しいと思っています。
『地域おこし協力隊』。
新聞やTVのローカルニュースでこの言葉を聞いた事のある方は多いと思います。
或いは自治体の広報誌などで紹介されている地域おこし協力隊の活動記事を目にした事もあるかもしれません。
地域おこし協力隊とは、過疎や高齢化の進行が著しい地方へ、都市部の若者を1~3年の任期で派遣し、地域の活性化を図る事業です。
卒隊後は、その地へ定住・起業するのが望ましいとされています。
管轄する総務省の発表しているデータによると「卒隊後の定住率は65%」となっています。
つまりは「そこそこ上手くいっている」とアピールしたいのだと思いますが、実はこの数字にはカラクリがあります。
地方へ赴任はしたものの、そこで上手くやっていく事ができなかったり、または3年の後に起業する事は難しいと判断した隊員は、任期途中で隊員を辞めるのですが、その「卒業を待たず、途中でリタイアした隊員」はこの総務省の数字に含まれていないのです。
筆者は、過去にある土地で2年、その後、別の土地で1年半、地域おこし協力隊として活動に携わりました。
それらの地は「そこそこ上手くいっている」どころか、むしろ「総務省が世間に知られたくない」事例で満ちていました・・
本書では、そういった事例を紹介し、地域おこし協力隊の問題点や改善点またどうしたら地方創生がうまくいくのかを筆者なりの考えでつづっていきたいと思います。
しょっぱなに答えを記しておきます。
「変わらなくては、地方は生き残れない」
「でも、何一つ変えたくない」
「地域おこし協力隊員に来てもらって、全てをこれまでと同じ様に維持してもらおう」
『地域おこし協力隊』とは、そんな施策です。
まず最初に、その隊員期間中に参加した研修会での話をしたいと思います。
筆者が隊員になって1年が過ぎた頃、他の隊員の活動を知る為に、中国地方でのある研修に参加しました。
そこは山間の寒村(と言っては失礼か?)で、棚田の担い手として地域おこし協力隊を募っている地域でした。
講師であるA氏は、5年前にその村に赴任し、3年の協力隊員としての任期を終えた後も、棚田の担い手として、その地に留まっていました。
忙しそうだったので研修中は遠慮して聞けなかったのですが、自分の赴任地に戻ってからメールで質問してみました。
「棚田でなく、平地の田んぼの方が、耕しやすく、その分収入も安定するのでは?」と。
A氏からは「確かにそうだけど、地域の人も期待しているから棚田でがんばっていくつもりだ」という返事が届きました。
棚田にはいくつものデメリットがあります。
・棚田は斜面での上り下りもあり、体力的に負担
・平地と違い、上から来る水量が限られている
・側面に孔が開くと、それが拡がり水が抜けるので、常にチェックと補修が必要
・幅の狭い場所も多く、トラクターや田植え機が入らないので手植えが必要
等々。
メリットとしては、高地なので害虫が平地より少ない、という点でしょうか。
それでも圧倒的にデメリットの方が多いのです。
もし僕がその自治体の移住促進担当者であり、稲作希望の移住者が相談に来たとしたなら、迷わず平地の田んぼでの就農を勧めると思います。
その方が、作業の負担が少なく、収量も安定するし、つまりは経営が安定して移住が成功するからです。
ではなぜ、彼は平地の田んぼではなく棚田を耕しているのでしょうか?
これこそが『地域おこし協力隊』の一番の問題点です。
つまり、本来『移住者と受け入れ地域の両方がWinWin』でなくてはならないものが、移住者が割りを喰って(苦労をして)地域を支えている、という構図になっているのです。
これを深く掘り下げると「少子化・国の税収減の時代に、山間部の棚田を維持し続ける」という課題自体にそもそも無理があるのですが、不思議とその点を指摘する意見に出会った事はありません。
田舎の自治体の取り組みは、そして政府の地域振興策は経済原理の外にあるのです。
例えば軍艦島は石炭が採れなくなると、人が住まなくなり、全員が撤収し、いまでは廃墟の観光地となっています。
もし軍艦島に長く暮らした人が「我々の思い出の地がなくなるのはイヤだ。地域おこし協力隊を呼んで復興させて欲しい」と訴えたならどうでしょう?
それは無謀な話だとは思わないでしょうか。
え?、山間部の棚田の維持はそれとは違う?
いえ、同じです。
棚田も、元々は平地では自分の土地が持てなかったものだが、自分のスペースを求めて仕方なく山に行き、田を作ったのが始まりです。
タイムスパンが違うだけなのです。
ただ何代にも渡って、長く住んだ為に「ここで生まれ育った思い出の土地」になったのであり、その思い出を維持したいが為に、移住者を呼び込みたいのです。
採算が合わなくなった所からは撤退する。それが経済原理ですが、地方自治体の取り組みのほとんどは、採算の合わない土地に無理矢理、人や資金を投じるもので、その割の合わない事業の維持要員として地域おこし協力隊が派遣されているのです。
先の『移住者だけが割りを喰って地域を支えている』というのは、言い換えると『年配者の思い出(ノスタルジー)を守る為に、若者の背中に荷物を載せる』という事でもあります。
地域おこし協力隊に限らず、この『年配者の思い出(ノスタルジー)を守る為に若者が苦労する』という現象は様々な所で発生しています。
先日、「アイヌ語を話せる人間が減少している。このままではアイヌ語が絶えてしまうので、アイヌ語を話せる若者を募り育てる」という取り組みがTVのニューススポットで紹介されていました。
そして、ある20代の男性が手を挙げてアイヌ語を学んでいる姿が映し出されていました。
しかし、もし筆者が彼の父親だったとしたなら「待て待て、息子よ。アイヌ語を話せるようになったとしても、もう数百人としか会話できない。その数百人もほとんど高齢者なので、20~30年後には数十人としか会話できなくなる。ならば、スペイン語や中国語を学んだ方がお前の将来に活かせるのではないか?」と助言すると思います。
確かにスローガンは立派に聞こえます。
「この価値ある文化を残していこう」「伝統を絶やしてはいけない」
しかし、ひとつの言語を学習するのに数百時間の学びが必要となります。
そのコストは誰が負うのでしょうか?
苦労して勉強してアイヌ語を話せるになっても、40年後には5人位の間でしかアイヌ語を使う機会はなくなります。
同様に、頑張って山間部の棚田を維持しても、この少子化のご時世に、そこに数十人・数百人の移住者が来るとは、とても思えません。
しかし「この俺達が守ってきた棚田を遺してくれよ」と要望した土地の年配者は30年後にはいなくなり、ただ都会からやってきたかつての若者数人が苦労して効率の悪い棚田で作業を続ける。
そんな未来図になるのではないでしょうか?
負け戦の地からは、早目に兵を撤退させるのがセオリーです。
無理に兵を送り込んでも、それは被害を拡大させるだけです。
しかし、ほとんどの僻地の年配者は、「若者・子育て世代を呼び込めば、この土地はにぎわいを取り戻すはずだ」とかたく信じています。
「この伝統の棚田を、若い世代が守っていくのは当然の事だ」と思っている節もあります。
究極の『シルバー民主主義』国家である日本(地方自治体・総務省)は、そんな年配者の声に応えるべく、施策を押し進めます。
そうでなくとも若者の間には「若者が税金を納め、それが高齢者の福祉に充てられている」という税の不公平感があります。
この上、若い世代の時間と労力まで、年配者の思い出を維持する為に捧げなくてはならないのでしょうか?
そのように若者の人生を都合よく使ってよいものでしょうか?
もし前述のA元隊員が「平地の耕作放棄地も多いようですし、棚田でなく、やはり平地の田んぼに移して欲しい。その方が生活も楽になるし・・」と要望しても、それは通らないでしょう。
地方自治体の公務員の顔は、ずっと古くからの付き合いのある、そして死ぬまでその地に住み続けるであろう地元の年配者の意向に耳を傾けるからです。
いつ、その地を離れるかもしれない移住者より、地元民が大事なのは当然かもしません。。
少し過激な表現をすると『地域おこし協力隊』とは『年配者の思い出を守る為に、負け戦の土地へ若い兵士を送り続け、被害を拡大させ続ける』、そんな施策なのです。
2023年6月4日 発行 初版
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