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この本はタチヨミ版です。
ストレスチェック実施後の対策はこれ!
うつ予防3法 虎の巻
合同会社パラゴン
櫻 澤 博 文
【特記事項】
ご覧になる端末により、表示の差が認められることがあります。
はじめに
第1部 メンタル不調の基礎知識
1.主な症状と病名、原因について
2.ストレスとの関係
第2部 メンタル不調の予防
1.メンタル疾患に“ならない”工夫 ―ABC―
2.メンタル疾患を“出さない”工夫 ―DEF―
3.管理職教育の実施 ― 3G : Guard, Gauge and Guide ―
4.メンタルヘルスアクションチェックリスト(ACL)を使った改善方法とは
第3部 “こじらせない”工夫
1.休職が必要だと言われた従業員の支援
2.休職に入ったら
3.睡眠時間が安定してきたら
4.午後からの外出が出来るようになってきたら
5.午前中からも外出が出来るようになってきたら
6.模擬出勤が出来るようになってきたら
7.復職可能と主治医から判断されたら
ご購入特典
おわりに
あとがき
ストレスチェック制度が法制化されました。ストレスチェック制度の構築にも四苦八苦している企業が多いこと、多くの企業を対象に「実施者」として支援している当方、理解しています。しかしながらストレスチェックを受けさせるだけではメンタル不調者を減らすことにはなりません。 ストレスチェックの結果を踏まえ、ストレスを原因とするメンタル不調に“ならない”、“出さない”、“こじらせない”『予防3法』の実践が必要です。
第1の方法 “ならない”:メンタル不調にならなくて済む予防方法
第2の方法 “出さない”:同僚・家族・上司等の支援者が行う支援方法
第3の方法 “こじらせない”:メンタル不調にて休職を余儀なくされた方が、早くかつ確実に職場に復帰する方法
事実として厚生労働省による平成26年10月の「患者調査」では、ある1日、メンタル不調で入院している患者は26.6万人。通院している推定患者数は25.8万人と糖尿病患者の22.2万人や高血圧患者の17.1万人を上回っている実際があります。風邪を含めた呼吸器系の疾患が80万人である事からすると、風邪で2回通院する方は年に1回はメンタル不調になってもおかしくないといえます。風邪もひどいと仕事を休まなければなりません。メンタル不調の場合もそうです。しかし風邪のように1日2日と、寝て起きてを繰り返す事で体調が良くなってくる事を感じられる病気と違い、うつ病と診断されるとたいていは「X月Y日より休職が必要」と医師から診断されます。いきなり休職と言われた社員が出たとして、ご本人も、そして支援する読者の皆様も戸惑うことばかりという実際が待っています。何しろ診断書に書かれた休職期間は、最初は1週間や2週間の単位だったのが、そのうち、1か月や2か月単位に変わってきたりします。
“休ませているのに、悪くなっているとはどういう事だ!”、“いったい、どんな治療をしているのだ!”といった職場側からの疑問の声が出てきます。
それに対して“職場にどう説明したらよいのか?”、“代替人員の確保はどうしたものか”と人事労務担当者は見通しが立てられずに困ってしまいます。
そうしているうち、診断書に「X月の3か月後1日から復帰可能」と出てきたとします。それを信じて復職させたとします。ところが、「プリゼンティーズム」といいますが、決まった時刻に出勤できず、出勤できたとしても居眠りが目立ち、早退が続く場合が少なくありません。出勤しても机に突っ伏している状況に病気なのか当人の怠慢なのか判断は難しく感じます。迷った末復帰してもらったとしても、現場から“ちゃんと判断したのか!”といった疑問の声を受けてしまうと“こちらがどれだけ苦労しているのかわかってもらえないのだな”とやるせない気持ちを感じるはめになってしまいます。
このように“こころの病”についてよくわからないままの対応をとってしまうと、その社員と向き合う期間中、人事労務担当者は悩み続けなくてはならない現実が生じます。
“そもそも診断書は何だったのか? 医者は何を診ているのか?”と途方にくれるばかりです。
同じような不安は、休職に至った社員側も抱えています。
風邪のように1日2日と寝て起きて、を繰り返す事で体調が良くなってくる事を感じられる病気と違い、何週間も同じ状況が続くと、“くすりが合っていないのではないか?”とか、“いつまでかかるのだろうか?”とか、“元のように仕事に戻れるのだろうか…?”と、気もそぞろになり焦ってしまいます。そして治りきっていない状態なのに“収入が得られないと困る!”、“居場所がなくなるのではないか?”と不安が重なり、無理をおして仕事に戻る方が多数います。
戻った後も、“遅れを取り戻そう!”、“迷惑をかけた分、挽回しなくちゃ!”と無理を重ね、更に体調を悪化させる場合も少なくありません。
なお、休職者についてですが違うパターンも確認されています。週刊誌に「新型うつ」と報じられたこと、記憶にありませんでしょうか。休職中の収入保障として知られる健康保険法に基づく傷病手当金制度は、支給上限期間が1.5年です。ところが、企業によっては2年も3年も休職が可能な制度が構築されているケースがあるのみならず、その延長されている間も所得補償保険の受給権が与えられている場合もあります。確かに、治す事はご本人にしか出来ない仕事とはいえ、何度もその仕事をしようとする方々が確認されています。むろん、そうなる背景には、何度も診断書を出す精神科医がいるという現実があるのですが、とはいえ、人事労務担当者は医師ではないため、どこまでが病気なのか、どこからが本人の心構えなのか釈然としないまま処理せざるをえないでしょう。これでは正直者が報われず、企業の成長性にまで悪影響を及ぼさないとも限りません。実際の話ですが、採用担当者と人事労務担当者とが、険悪な間柄になっている企業も確認されています。
この「新型うつ」の増加の背景は、少子化のせいだとか、核家族化のせいだとか、共働きのせいだとか、ゆとり教育のせいだとか、ネット社会の発達で人対人のコミュニケーションが貧弱になったからだといった諸説があります。しかし犯人探しをしていても、問題は解決できません。
グラフ1は、そんな現実を如実に現しています。
職場復帰出来ない休職者の割合が3割を超えている企業が半分もあるという現実が確認されています。そういった事態に対して厚生労働省は平成21年3月に「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(以下、手引き)を用意しています。しかしながら、「衛生管理者等」や「事業所内産業保健スタッフ」といった専門用語が理解を妨げているだけではなく、こうした専門職が社内にいて対応をとる事を前提にしているかのような記載や内容であり、更には診断書が出されてからの記述は充実しているものの、休職者発生直後からの対応記載はないに等しいため、対応に苦慮している実態が多く残っています。
上記のような実情がある中、著者は長年、メンタル不調にて休職した社員が確実かつ着実に仕事に復帰出来るというプロフェッショナルサービスを数多くの企業で社員と会社側の双方に対して提供してまいりました。その背景には「労働衛生コンサルタント」資格を持つ医師という立場があります。「労働衛生コンサルタント」という資格は公平性や公共性がある立場にあることを国家が保証している資格です。従ってここに記載された内容は、公益性に基づいた中立な立場から提案する、仕事への復帰方法になります。
また、当書の内容はご本人、ご家族・同僚・上司(以下、「支援者」)に加え、会社の人事労務担当者まで満足できるような内容にしております。それぞれの立場から、どのような時にどのような事をしたら良いのか、状況に応じた具体的かつ実践的な対応方法がまとめられています。
必ずや、参考になるものと自負しております。
【解説】
「実施者」:ストレスチェックの実施主体となる者であり、「医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者」(労働安全衛生法第66条の10第1項)とされています。ここでの「厚生労働省令で定める者」とは、厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師もしくは精神保健福祉士であって、ストレスチェックを実施する者を指します。マニュアルでは、日頃から当該職場の状況を把握していることより、産業医が実施者になることが最も望ましいとされており、次いでその事業場の産業保健活動に携わっている場合にのみ、精神科医や心療内科医等の医師、そして前述要件を満たした保健看護職が担当できます。従ってかかりつけ医は担えません。また産業医が実施者を担当する場合には労働者本人からの同意を得るプロセスが不要なため、高ストレス者の早期把握と素早い対応が可能です。
最初に、メンタル不調になった際に現れる症状の特徴と、それに対する病名や原因に関する基本を記載します。
いつ、どこで、自分や相手が誰なのかが判らない…「見当識障碍」
更には日中でも話しかけないと眠り込む…「傾眠傾向」
これらがあると、『中毒性精神障碍』または『症状性精神障碍』という重い区分がなされます。
●『中毒性精神障碍』とは、覚せい剤、脱法ドラッグ等の合成麻薬、アルコールが原因の代表です。脱法ドラッグによる交通事故は、まさにこの運転中に「傾眠傾向」が出ているから歩道に車両ごと突入し、痛ましい大事故を引き起こしているのです。
●『症状性精神障碍』とは、からだの病気のダメージが、いよいよ脳にまで及んだ事を言います。腎臓が体にたまった毒物を捨てる事が出来なくなって起こる「尿毒症」や、体内にたまった毒を分解する肝臓が破壊されておこる「肝不全」時などに生じます。
【対応について】 緊急を要するので、一刻も早く救急車を呼ぶと共に、その後は入院治療が必要になります。
記憶、計算力、判断力が低下します。これらがあると『脳器質性精神障碍』という区分がなされます。高齢になって脳がもろくか弱くなる事で生じる「脳萎縮」や脳への栄養を送る血管が詰まってしまうという「脳梗塞」による認知障碍が代表です。職場ではあまりみかけませんので仔細は割愛します。
実際にはないものを知覚する事を「幻覚」といいます。五感の全てで出てきます。
“枕元におばあさんが来て手招きしている”→「幻視」
“「お前はダメなやつだ」という声が聞こえる”→「幻聴」
“屋根が焼けている匂いがする”→「幻臭」
“何者かが手を掴んでいる”→「幻触」
“口の中が苦い”→「幻味」
★ 幻視がある場合には、前述の『症状性』『中毒性』『脳器質性』の精神障碍があると考えてください。入院加療が必要になります。
★ 幻視以外の幻覚がある場合には、『妄想性障碍』や『統合失調症』が疑われるため、精神科医の診察が必要になります。
「妄想」とは誤った思い込みです。周りが説得しても訂正出来ない事が特徴です。
“私は高貴な方の隠し子”、“自分の行動が全国に報道されている”
“悪口をいわれている”(具体的な声が聞こえる場合には「幻聴」ですが、雰囲気を感じる場合には「妄想」です)
★説得しても訂正出来ないため、説得することはせず、精神科医に診察してもらいましょう。
★後述する「うつ病」でも、“生きる価値がない”、“お金がない”、“死ぬ前かもしれない”といった悲観的な「妄想」が出る場合があります。対応は後述します。
普段よりも元気一杯になり眠らなくても済むようになり、突き抜けるような感覚を味わえる状態を「躁」といいます。
次から次へと話題が切り替わりつつしゃべりがとまらない「多弁」や落ち着かずそわそわする「集中困難」、金遣いが荒くなったり、中には借金をこしらえたり…更には異性関係が派手になったりします。気も大きくなり、すぐ腹を立てるという「易怒性」が出る場合もあります。人間関係にトラブルが生じやすいのに「躁」状態の時は力がみなぎっているため、本人は“調子が良い”、“気分爽快だ!”と、いわば中毒になっており、辛さを感じる事はありません。従って本人に病気だと認識してもらう行為(「病識」を持たせる努力)は通じず、病識を持ったとしても症状が悪化してきたら治療を中断し、周囲に迷惑をかけ続ける事例も多くあります。あたかも映画「マスク」のマスクをかぶった状態を手放したくないと思うようなものです。でも、調子が良い期間だけが続くわけではありません。裏では神経が消耗されています。従って、「躁」という山が高ければ高いほど、「抑うつ」という谷も比例して深くなる辛い期間が到来する『双極性障碍』になります。「躁」の期間は1~3か月に対して「抑うつ」の期間は3~6か月と長いため、『うつ病』として見逃されている場合が少なくありません。
★『双極性障碍』は『うつ病』と似たような病状を示しますが、原因は脳波の乱れであり、脳のけいれんである『てんかん』に近いと考えられています。従って、脳波検査が必要になります。
★ 脳波検査の結果、使う薬が選択されるので、きちんと脳波検査をしてくれる精神科医にかかりましょう。
★ 「躁」状態になると、いわば“ナチュラルハイ!”。その気持ちよさという未練を切らせる指導が出来る精神科医が名医です。
★ 名医による指導例のうち、支援者が真似られる方法は以下です。
気分の波の高さを患者さん自身にてプラスマイナス10段階で評価出来るように指示してください。
そして山が低ければ谷もまた浅し…マイナス1程度の「低め安定」を狙わせてください。
“ゆううつ”、“気分が重い”、“おっくうだ”、“悲しい”という「悲哀感」や、どうでも良いような事でも自分を責める材料にするという自責の念がみられる事が特徴です。更には“生きていてもしかたがない”という自死への欲求(「希死念慮」)が生じる場合も少なくありません。これらのこころの辛さが出る事なく、頭痛や腹痛、下痢、嘔吐、めまい、手足のしびれ、冷え、脱力感、食欲低下や食欲増進といった身体症状(「自律神経失調」)が中心に出る方もいます。その場合、専門用語ではないのですが、「仮面うつ」という病名で呼ばれます。
以上のように、『抑うつ性障碍』には多彩な症状を呈するのが特徴で、人によっては見過ごされる場合も多くありますので、最悪、自死(当書では、自殺という言葉は使いません)に至ってしまうのです。脳細胞の疲れが一定水準を越えた時に出る脳の病気であり、疲れた脳の場所によって様々な症状が出ます。世間では『うつ病』と言われています。
(1)~(4) の症状を伴わない場合、いわゆるうつ病である『抑うつ性障碍』である可能性が高いです。一般的に谷だけが3~6か月続きます。
★『抑うつ性障碍』の怖い点は、本当に自死にまで至ってしまう点にあります。 したがって、通院をためらわせてはいけません。また、脳細胞の働きを回復させるための薬が用意されていますので、きちんと服用させましょう。
★疲れが大脳以外にも及ぶようになると、治療には何年もかかる事になってしまいます。従って脳の疲れを早めに発見する事や、更には日頃から疲れがたまらない、ためにくい方法を選択することで、かかりにくくしたり、かかっても早く回復させる事も可能になります(後述)。
一般にいう“不安”と違い、不安になる理由が不明確で、気持ちの面では“落ち着かない”、“漠然とした不安”、“いらいらする”で語られる症状があると共に、人によっては動悸、息苦しさ、胸を締め付けられる感じ、いてもたってもおられない焦りを伴う症状が認められる場合が『不安障碍』という病気レベルに達した「不安」になります。『不安障碍』はいわゆる『パニック障碍』であり、神経細胞の疲れが一定水準を超過した時に出ます。
★疲れが全身の神経細胞に広範囲に及ぶようになると、治療には何年もかかる事になります。従って『うつ病』と同じように疲れを早めに発見する事や、更には日頃から疲れがたまらない、ためにくい方法を選択することで、かかりにくくしたり、かかっても早く回復させる事も可能になります(後述)。
人生には、以下のような心身の不調の原因となるストレス源があります。
心身の不調をきたすきっかけとなる出来事(例) 仕事に関すること失敗、失注、昇進、降格、転勤、転籍、出向、労働時間の変化、勤務時間帯の変化、海外赴任、単身赴任、ハラスメント、退職、失業、定年 家族に関すること子供の進学、子供の就職、子供の独立、子供の結婚、家庭内不和、介護、親戚付き合い、親族とのトラブル、養子縁組 健康に関することからだの病気、がん、月経、妊娠、出産、流産、死産、閉経、事故、薬の副作用 結婚に関すること失恋、婚約、結婚、離婚、浮気、不貞 金銭に関することギャンブル、借金、相続問題、税金問題、貧困 状況の変化引越し、近隣住居の再開発、旅行、会社の統廃合、経済環境 喪失体験家族の不幸、近親者との死別・離別、病気 その他詐欺等犯罪の被害、近所付き合いでのトラブル 生活する中で遭遇する可能性があるものがストレス源になるのです。このようや嫌なことや辛いことがあると誰でも落ち込み憂うつな気分になります。それらが脳を疲れさせ、ダメージを与え、ダメージが蓄積し回復不可能なレベルに到達すると、水が0度を過ぎると突然氷になるように、主に『うつ病』や『不安障碍』というメンタル不調を起こさせます。理由はまだ明白ではありませんが、中には『双極性障碍』や『統合失調症』を招く場合もあります。
したがって、ここにある出来事は続いて起こらないようにする工夫が必要です。そして脳細胞や神経細胞を休ませるために、日々の睡眠や栄養、そしてこころの栄養になる趣味や友人との飲食やカラオケといった楽しい時間を過ごすことで気をまぎらわすように心がけることも大切な発症予防の工夫になります。
TIPS 緊急時連絡先は アクティブですか?
メンタル疾患の治療には週というよりは月の単位、場合によっては年の単位で数えられるだけの時間を要します。それだけの長丁場、ご本人だけ病気と向き合わせるのは酷です。いざ、ご家族に連絡をする段になってはじめて緊急連絡先を確認していなかったり、住所変更があって連絡がつかないケースが多く確認されます。“変更があったら連絡するように”との指示をしていてもです。
従って、“大切なお子様をお預かりしている”という姿勢で、年に一度は、ご家族に、ご本人の状況を報告する意味も込めて、定期的に社長メッセージや会社へのご希望・ご期待を記載できるアンケートはがきを送付するようにしてみてはいかがでしょうか。きちんとした親御さんなら、社長からの手紙には返事を出してくるものです。
* * *
【ねらい】
交通事故発生はゼロには出来ませんが、交通事故にあわない工夫や起こさない方法はあります。
また、交通事故にあった場合でも、シートベルトやエアバッグのように、悪影響を防止する手段があります。
メンタル疾患による休職者についても、発生をゼロにすることは難しい現実(少子化・核家族・ネット社会等)があったとしても休職者を出さない工夫と、出たとしても影響を少なくする工夫を用意しました。
朝食抜きは学力低下だけではなく、自覚的ストレスやうつ症状にまで及んでいた実態が文部科学省「平成22年度全国学力・学習状況調査」で明らかにされました。この国家的課題は企業レベルでいうならば、生産性と効率性低下として位置づけられます。
では、どうして朝食を摂ると、自覚的ストレスを減らしたり、生産性を向上させることが出来たりするのか考えてみましょう。
朝食を摂ると消化という能動的な活動が体内で始まります。決して消化は受け身ではないのです。実際に、交感神経という“アクセル”役を担う神経活動が活発になります。そして体温が上がります。すると、血管が広がります。その広がった血管を通じて、ブドウ糖という消化された栄養素が脳に届けられます。脳細胞や神経線維はブドウ糖がないと、焼けついてしまいます。届けられると働き始めます。朝食を摂らない空腹時間の延伸が生じてしまうと、その間は頭の働きが落ちてしまいます。加えて、元々ある自律神経リズムに、ずれが生じてしまいます。そのずれが大きくなると、1日24時間という自然のリズムに体がリズムをあわせられなくなり、『自律神経失調』という様々な体調不良が生じます。更に夕食を食べる時刻が遅くなってしまうと、寝ている間に消化をしなくてはいけなくなります。消化が難しくなり、体に影響が出ること、想像できますよね。“ぐっすり眠った感じがしない”と、熟睡不良を感じる方に対して朝ごはんをきちんと摂る習慣があるか、または夜21時より前に夕食を済ませているか聴いてみてください。たぶん「いいえ」と答えるでしょうから。
ところで、和食は健康に良いと言われています。その理由をご存じでしょうか。和食だと、胚芽や糠を摂りやすいのです。胚芽や糠には『γ-オリザノール』という、自律神経を安定に働かせる効果がある成分が含まれています。この『γ-オリザノール』には、体内の細胞や組織を安定させる抗炎症作用はじめ、多くの有益作用が認められています。パン食を止めさせ、米食も胚芽米や玄米を選択してもらい、更に味噌汁や納豆か豆腐にて麦や大豆の胚芽を摂取してもらう工夫は、難しくなく明日からすぐ実践出来る改善方法なのです。
魚を食べると頭がよくなるということを耳にしたこと、ありませんか。これには理由があります。魚の油にはEPA(エイコサペンタノン酸)やDHA(デキサヘキサノン酸)というオメガ6脂肪酸が含まれます。このオメガ6脂肪酸は、運動をすることで、脳内で『BDNF』という脳由来神経栄養因子に変わります。つまりは魚を食べて運動をすると、脳の栄養源が増えるという理屈です。朝食には煮干、鮭、メザシが似合いますよね。他には鰹節や煮干による出汁もそうです。和食中心を心掛けることで、自然と魚を食べる機会が増やせます。魚を積極的に食べて、メンタル疾患発症を防止しましょう。
日頃から心身を鍛錬しておくことで、運動にはうつ病発生予防や治療効果がある事が証明されています。特に有酸素運動と言われる、脈拍は1分間に100前後の、きつくなく(指標:会話し続けられる程度のきつさ)、20分でも30分でも続けられる運動(指標:うっすらと汗ばむ位の負荷、家事や早歩きが好例)をすると、体にかかった負担を軽減するために、我々の体は、眠っていた細胞まで総動員させるようになります。それを続けていくと、全身の細胞は眠ることなく、細胞の一つひとつのレベルから活性を高められるようになります。そして同じ負担をかけても疲れにくくなります。その結果、ストレスへの抵抗や耐性が向上します。これには理由もあります。細胞の一つひとつには、ミトコンドリアという発電機(原動機)が備わっています。運動を継続すると、そのミトコンドリアの発電力や駆動力を高めることが証明されています。つまりは、運動すると、細胞の一つひとつの生み出す力を高めることが可能になります。それは脳細胞が疲れ果て、神経が焼けついたメンタル疾患に罹った方も同じです。運動をさせる事で、脳細胞の生み出す力を高め、新たな神経線維を構築しなおすことが可能になります。他にも運動にメンタル疾患を治す働きがある理由は検証されています。例えば、運動すると筋肉から、筋肉由来内分泌因子(マイオカイン)が分泌されます。このマイオカインは精神機能に好影響を与えています。自らの意志で、自らに辛いことを課し続けなければ心身は鍛錬されません。克己心なくしてはより高い負荷に耐えて限界を超える努力を繰り返す行為は出来ないでしょう。このように運動にはストレス耐性を強化する効果もあります。その効果も実証されています。7年もの間、運動を続けているグループは、そうではないグループより8割もうつ病発症は少なく済んでいた事から、予防効果があるという群馬大学研究班による研究成果が出ています。
トレーニングの成果は所要時間や回数など数値に明確に現れます。そしてこれらの克己心練成機会の継続にて「やればできる」という、いわば対処可能性という精神的な自信が強化される事は読者の皆様も同意される事でしょう。
更にスポーツとなると、一人では出来ずチーム力が問われる種目があります。球技・リレー・メドレー等。チーム一丸となって勝利という共通の目標に打ち込み続けるためには、入念な計画づくりから入念なコミュニケーションまで、組織運営力が求められます。企業が体育会系出身者をこぞって採用する理由はここにあるのかもしれません。
タバコは嗜好品ですが、喫煙という行為は『ニコチン関連障碍』という立派な精神科で治療すべき対象となっている病気です。また自死にまで影響するので嗜好品ではなく“死向品”と言われています。何しろ、健康に良いと信じて吸っている人は誰もいないでしょう。からだにも財布にも悪いと知っていながらする事は、いわば自死行為です。
なお、禁煙外来に通う事で服薬にて喫煙から容易に卒業できる時代です。実際、卒煙すると以下の抑止効果が期待できます。
睡眠障碍 57% 抑うつ性障碍(いわゆるうつ病) 56% 不安障碍(いわゆるパニック障碍) 75% 自死 46% 喫煙する時間について着目してみましょう。喫煙している間、魔法のように仕事が処理されるはずはありません。そこで1本につき10分、勤務時間が浪費されると仮定します。職場で10本吸うとしたら、10分×10本となり、100分も労働時間が浪費される事になります。会社は残業代という割増賃金を支払う必要も出てきます。喫煙のためにその従業員が席を立っている間、代わりに電話応答をせざるをえない同僚が感じている不公平感も解消可能になります。
ここで一日につき20本、吸っていると仮定してみましょう。
10分/本×20本/日×365日より 73,000分、その方は1年のうち喫煙のためにこれだけの時間を浪費しています。
73,000分とは何日でしょうか?なんと50.7日になります。そうです。合計すると朝から晩まで50日以上、喫煙のために時間が浪費されている現実があるのです。卒煙すれば、もったいない人生を送っている現実を解消できることになります。
健康診断結果とは、医師が対象者一人ひとりの健康状態について単にその医学的評価を行うだけではありません。健診結果表には、その方に対して、どんな支援が必要なのかまで詳しく記載があります。健康診断は受けさせたらそれで終りではありません。健診結果を確認し、例えば治療が必要とされていたら、受けさせてください。そうすることで次の年にはより良い結果まで導けます。なお、健診結果を考慮せずに働かせ続ける事は、無理に労働提供を強いている事になり得ます。それは法律違反になります。具体的には、労働安全衛生法第66条の4、第66条の5、第66条の7に違反します。健診結果を知り得る立場にいるにもかかわらず、きちんとした対応をとらない場合には、民法でいうところの善管注意義務を怠ったとみなされたり、故意責任が問われたりする場合があります。勤め先に産業医がいたら確認してもらうなど、健康診断結果を十分活用しましょう。
なお、特定健康診査の受診率は平成24年度33.7%、平成25年度34.3%(いずれも速報値)と芳しくありません。自身の健康情報を確認していない方は、受診することが大切です。
糖尿病の三大合併症の一つに神経症がある事はご存知でしょう。そうです!糖尿病患者は神経に障碍が生じるのです。実際問題、糖尿病患者のうちうつ病の生じる確率は一般の約3倍にものぼり、その9~27%が何らかの精神医学的治療の対象となり、10年間の追跡調査によると、うち半数が何らかのメンタル疾患に罹ってしまっていました。また、糖尿病にかかっていると、うつ病の再発リスクは70%以上もあります。更には5年間で平均4回も再発していたそうです。糖尿病に限らず血糖値が高い状態にさらされ続けていると、神経細胞は常に興奮させられ続けています。つまりは休む暇がなくなり疲労回復が図られません。実際、糖尿病患者は不眠に悩む割合が多い結果が確認されています。健診で糖尿病と判断されたら、今は教育目的の入院まで提供されている時代です。休暇を与えてでもこの教育入院を受けることをお勧めしています。
メタボリック症候群とは、糖尿病になる一歩手前をあらわした概念であり、2006年から始まった特定健康診査や同保健指導の対象疾患になっています。7年間の経過を追った研究では、メタボリック症候群にかかった患者は男女共に、そうではない方々と比較するとなんと2.2倍もうつ状態が多かった結果が示されていました。では、メタボ予防にはどれだけうつ状態発生を防止出来る効果があるのでしょうか?
答えは以下です。
2.2-1÷2.2 =1.2÷2.2 =0.545 以上より、55%近いうつ状態抑止効果が期待出来ます。
メタボにさせない食生活の工夫とは、どうしたら良いのでしょうか。Suzukiらによると、夕食を摂る時刻を21時までに終わらせることでした。21時以降の夕食が避けられない場合には、食べさせない工夫が有用とのことでした。
メンタル疾患と関連性が高い不眠の背景には3ケタもの理由があります。不眠症という病気ではないにもかかわらず、不眠症として対処や治療をしてしまうと、逆に睡眠障碍を悪化させるものも少なくありません。
しかしながらこれまで述べた運動を通じたメタボ対策や糖尿病治療を行うと、熟睡効果が得られることが解ってきています。誰しも経験があるはずです。運動をしてスッキリ、シャワーや入浴にてサッパリ、その後の睡眠はグッスリ という “スッキリ・サッパリ・グッスリ効果”を。理由は単純です。(2)健康診断でわかるメンタルに悪影響が出る病気 その1 糖尿病 (D: Diabetes)で書きましたが、血糖値が高いと体は興奮してしまいます。運動すると血糖値が下がります。すると、体は鎮静化作用が得られるからなのです。
メンタル疾患にさせない工夫や出さない工夫を知ってもらうためにも、どう対処したら良いのか学ぶ機会を設けましょう。 管理職を対象に、メンタル不調対応に長けた医師による社内教育を行っておけば、対応力の強固化(guard)が可能です。
管理職は日々、従業員と顔を合わせる機会がある最前線に立っています。従業員と日々接する状況にあるので、軽微なレベルから、従業員の変調を把握(gauge)しやすい立場にいることになります。そこで以下に把握可能な変調をまとめます。
<把握可能な変調>
□笑顔が見られなくなる。
□視線を合わせる事がなく、伏し目がちになる。
□集中力が低下して仕事の能率が落ちる。
□仕事のミスが増える。
□イライラしがちで、ちょっとした事でも腹をたてるようになる。
□ちょっとした決断が出来なくなったり、判断に時間がかかるようになる。
□なんでも悪い方に考えたり、捉える。
□自分を責めたり、他人に責任転嫁しがちになる。
□仕事中に居眠りするようになる。
□身だしなみに気を使わなくなり、美容衛生面がルーズになる(ひげ剃りがされてなかったり、しわがよったシャツを着ていたり、体臭がきつく感じられたり)。
□遅刻や早退がみられるようになる。
□新聞や定期購読雑誌を読まなくなる。
□机の上や作業場が散らかっていることが多くなる。
□“眠い”、“疲れた”とよく言っている。
□“食欲がない”、“砂を噛むようだ”と言う。
□声をかけると“心配ない”、“大丈夫だ”とか弱い声で答えるので、かえって心配が募る。
□“休むと、かえって仕事がたまる”、“私がやらないと、誰もやってくれない”と、心配をよそに、無理に出勤しようとする。
□無断欠勤する。
こういったサインがみられる背景にあるメンタル不調の代表が「うつ病」です。ストレスの多い現代社会、誰でもかかりえる病気です。ストレスによる脳の疲れが、土日祝日のような休日を経ても回復する事がなく、月曜以降、疲れがたまった脳に対して新たなストレスが降りかかる事を想像してください。これらが続くと、こなすべき仕事・家事・勉強の量に対して、処理量が追い付かず、ますますストレスが加わり、いよいよいつかは破たんに至りかねないという事、ご理解いただけるでしょう。
そこでメンタル不調の代表である「抑うつ性障碍」を例にどのような症状が出るのか、次に把握してみましょう。
<抑うつ気分>
●気分が落ち込む。
★毎日のように、ほとんど1日中憂うつな気分が続いている(最低2週間以上)。
●悲しい気持ちになる。
●自分に希望が持てなくなり、いなくなってしまいたい。
●自分は価値がない人間だと思う、自分が悪い・自分の責任だと罪の意識を感じる。
●仕事・家事・勉強などに集中できない、あるいは決断や判断が難しいと感じる。
●この世から消えてしまいたい…死ねばよかったと考えてしまう。
<不安・焦燥感>
●いつもなんとなく不安(理由のない不安感が持ち上がる)。
●居てもたってもいられない(理由がない焦りの気持ちが湧きあがる)。
<意欲の低下>
★これまでは楽しかったことが楽しめなくなり、興味が持てない(最低2週間以上)。
●友人や家族と話すのも面倒で、話していてもつまらない。
●洗顔や着替え、食事といった基本的なこともするのがおっくう。
●新聞・雑誌を読む気がしない、テレビを見る気がしない。
<睡眠の乱れ>
●夜、寝付けない、夜中に目が覚めてしまう。
●朝、目覚ましよりも早く目が覚める。
●寝た気がしない、寝すぎる。
<食欲の低下または増加>
●食欲がない。
●何を食べてもおいしくない。
●ダイエットをしているわけでもないのに、体重が1か月で数キロも減った、または逆に食欲が増して体重が増えた。
<疲労・倦怠感>
●からだがだるい。
●ひどく疲れる、疲れやすい。
●からだが重い。
●からだがいう事をきかない。
<ホルモン系の異常>
●月経不順。
●性欲低下。
●勃起障碍。
<からだの症状>
●頭痛、肩こり、腰痛、背中の痛みなど、ざまざまな部位が痛む。
●便秘または下痢しがち。
●心臓がドキドキしたり、息苦しくなったり、のどが渇く。
★をつけた症状には“最低2週間以上”という条件があります。米国精神学会が決めたうつ病の診断基準ではそれらが1か月以上続くと、「抑うつ性障碍」という、つまりはうつ病だと診断できます。
“インフルエンザにかかった時のような体の重さ、鈍さ、思い通りのなさ、意欲ゼロ感、寝込んでいたい感が連日連夜続くようなものだ”と述べた方がいました。
これらの症状が最低2週間、実際には1か月も、しかも毎日のように、かつ朝から寝ている間まで1日中続くことを想像してみましょう。そんなに苦しいと、将来に希望も展望も持てなくなるくらい、明日生きていくことさえも辛く、死んでしまいたい!と思いたくなる気持ちが理解できるでしょう。
前述の症状を示している従業員です。本人は外出することさえ辛く、病院に行くことさえおっくうに感じているものです。困ったことに、通院させようと電話してもすぐに予約がとれるところばかりではありません。
予約なしに通院した場合でも、その日のうちにすぐ診てくれないクリニックさえあります。診てくれる場合でも何時間も待たされるのは当たり前です。何しろうつ病だけで毎日、70万人もの患者さんがいるのに対して、精神科医は約1万4千名しかいません。しかも精神科医が対象としている病気には認知症、依存症、自死未遂者…現実の大変さはおわかりになりましょう。
したがって「把握可能な変調」が出た段階で人事労務担当者に相談してもらう必要があります。人事労務担当者は、産業医がいたら、対応を相談したら済むのですが、産業医がいなくても、以下の対応をとると大丈夫です。
それは、配偶者を筆頭とした緊急連絡先に記載があるご家族への情報通知です。
ただ、ご家族に通知する場合に気をつけることがあります。産業医に相談していない限り、“病気が疑われるので”という話はしないでください。病気かどうかを判断するのは医師にしかできません。出来ないのにすると、“病人扱いされた!”との不満感を与え、しこりを残してしまう場合があります。
そこで管理職が確認した「把握可能な変調」のうち、定量化しやすい内容を次に記載しますが、これらを、より具体的に管理職より数値で表現してもらうようにしてもらってください。
□仕事の能率低下
□増えた仕事のミス
□イライラしがちで、ちょっとした事でも腹をたてている状況
□決断力低下
□悪い方に考えたり、捉える傾向
□自分を責めたり、他人に責任転嫁しがちになった実際
□仕事中の居眠り
□整容不足
□遅刻や早退しがちな現実
□新聞や社内回覧雑誌、書類の停滞
□机の上や作業場の散乱
□“眠い”、“疲れた”といった発言に代表される意欲の低下
□声をかけると“心配ない”、“大丈夫だ”とか弱い声で答えるので、かえって心配を募らせている現実
□“休むと、かえって仕事がたまる”、“私がやらないと、誰もやってくれない”と、心配をよそに、無理に出勤しようとする困った状況
□無断欠勤
無断欠勤に至らなくても、上記項目に該当する同僚が出たら、部署への影響も懸念材料になりましょう。そこで上記内容をチェックし、チェックされた数を根拠に、人事労務担当者は「会社として、当人の体調を心配していて、無理に仕事をさせられる状況にない」という事をご家族に伝えて欲しいのです。ご家族のほうでも心配の言葉をかけていたとしても、ご本人から“大丈夫。俺がやらないと、誰もやってくれない。今、がんばれば、後は楽になる!”と、心配の声を振り切り、無理を重ねている場合があるからです。ご家族との情報の風通しを良くすることで、ご本人の体調不良も良くなるきっかけになるのです。
その際には、この書籍を供覧することも一つの方法でしょう。ご家族も、どんな対応を今後とったら良いのか明確に理解できるので安心感が違ってきます。
以下の生活記録表を支援者はつけ始め、かつ通院時に主治医に提示する事で、どうご本人を病院に連れて行ったら良いのか、知恵を得る事も可能になります。
日々、その日の体調、気分、熟睡度、食欲といった項目について、一番良い時をプラス10。一番悪い時はマイナス10で記録し始めてもらいましょう。
一般的に通院を促しやすくする言葉かけは以下になります。
「一緒についていくから」
「医者から、“心配ない”と 言ってもらったら、あなたも、みんなも、安心するよ」
との声かけをしながら、一緒に通院(同伴通院といいます)してください。
抑うつ性障碍になると判断力や決断力が低下しますので、調子が悪くても、決められた日時に通院できるよう、支援をしてください。具体的には、調子が悪くても通院するにはどうしたらよいのか、例えばタクシーを呼ぶといった早め早めの支援を提供する事になります。
TIPS 同伴通院のメリットとは
① 同伴通院のメリットの一つは病気で落ちてしまった考える力や表現力を補える事です。いつから、どんな症状が出ているのか整理するのが辛かったり、特定の症状に敏感になったり、逆に鈍感になっている症状についてご本人は主治医に伝えられません。それらをより客観的に伝える事が可能です。
② 二つ目は治療内容や方針、回復に要する期間を正確に把握しておく事で、理解力が低下した本人の支援が可能になります。どのような支援が必要なのか、適切なアドバイスが得られます。
③ 三つ目は通院し辛さの解消です。行き慣れていない道を歩くだけでも不安になります。待合室で一人、待っているだけでも心細くなります。本当に治るのだろうかといったおそれが、心を苦しめます。そういう時の支えになれるのです。
④ メリットの最後としては、医師からの治療内容を、より良いものにする場合があります。何しろ忙しい外来の中、医師は限られた診察時間において判断を下さないといけません。患者さん本人からの断面写真的な情報だけではなく、家族や会社からのより多い情報があった方が、より的確に状況を医師は確認できます。このように主治医側の苦悶をも解消出来るメリットがあるのです。
同伴通院には、ご家族、ご友人だけでなく、会社の方も来られるのでしたら同行してもらうと良いでしょう。
長期戦です。支援者が多いほど、一人当たりの負担は少なくなります。なお、同伴通院の際には当書に基づいた支援をする事も主治医に伝えておくと良いでしょう。
職場におけるメンタルヘルスケアにおいて、個別対策だけでは効果が一時的かつ限定的です。職場全員で話し合いながら、働きやすい職場環境づくりが可能となるツールが利用可能です。それが「メンタルヘルスアクションチェックリスト(ACL)」(http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/ACL/ACL2004春バージョン.pdf)です。このACLは6領域に区分された働きやすい職場環境づくりの方法が把握出来るヒント集です。わが国の職場にて役立ったとされた改善事例集から抽出されました。中小企業でも簡単に、職場環境の評価と改善が出来るように、いわば参考事例集の構成になっています。
A.作業計画への参加と情報の共有:情報の共有、作業量の調整
B.勤務時間と作業編成:ノー残業デー設定、ピーク作業時の作業変更、交代制導入、休日確保
C.円滑な作業手順:物品の取扱い、情報入手、反復作業の改善、作業ミス防止
D.作業環境:温熱、騒音、有害物質、受動喫煙防止、休憩設備整備、緊急時対応
E.職場内の相互支援:相談しやすさ、チームワーク作り、職場間の相互支援
F.安心できる職場のしくみ:訴えへの対応、教育研修、仕事の見通し、評価の公平・公正化、メンタルヘルスケア
ストレスチェックと同様に、芳しくない部署の把握や同定ではありません。点数化さえしません。ある職場で実施可能な仕事環境の改善方法を検討し、取り組みやすい改善点があれば、参考にして取り組んでもらうことを目的としています。従ってヒント集にある各項目は、その職場の欠点を指摘するのではなく、どのように改善すればより働きやすい環境づくりにつなげられるのか、具体的な取り組み方が示されています。
・このチェックリストを照らし合わせることでその職場にて元より出来ている良い点がわかります。
・改善が必要な箇所も簡単に把握可能です。
・把握された要改善箇所、改善点をグループ討議の題材とすることで、優先して改善すべき点が把握できるだけではなく、改善のためのヒントが理解可能です。
・働きやすい職場環境形成を学ぶことが可能になります。
・様々な角度から職場を捉える視点が得られます。
・改善を重ねることで、ストレスの多い職場環境とはどういうところなのかまで、理解可能になります。
・職場の様々な立場の労働者が参画することで、それぞれの立場から、働きやすい職場環境づくりに寄与することが可能になります。
・厚生労働省が定めた「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」(いわゆる「メンタルヘルス指針」)を満足することも可能になります。
・中小企業でも、産業保健スタッフが常勤でいなくても、取り組むことが可能です。
・創意工夫を重ねることで費用を抑えながら、効果的な職場環境の改善の実施が可能です。
以下がヒント集の一例です。実際に職場にて有用だったとされた改善事例で構成されています。中小企業でも簡単に、職場環境の評価と改善が出来る項目が挙げられています。
働きやすい職場環境づくりのためにACLを活用する方法は以下の順に実施します。
イ:対策への合意形成
職場全体が一丸となって改善に取り組んだ方が、仕事はよりしやすくなります。そのためには関係者全員に対して合意形成を行い、改善へ取り組むのだ!という機運を高めたいものです。そこで職場のトップからの理解を求め、安全衛生方針として取り上げてもらいます。キーパーソンとなる職場の管理監督者へのストレス調査結果などのフィードバックや、内外の指針や先進企業・職場の取り組みの紹介を通して、働きやすい職場環境づくりがメンタルヘルスケアの一つとしてとても重要であることを伝えます。
ロ:参加と周知
働きやすい職場環境づくりを効果的に進めるためには、その職場の状況や情報を収集します。例えばすでにストレス対策として取り組まれた事例を収集します。直接ストレス対策を目的としていなくても、快適な職場づくりに役立った職場環境改善、たとえば受動喫煙防止や長時間残業対策、最近行なわれたレイアウト変更など、すでに職場で取り組むことができた改善に注目します。改善された職場の写真などがあるとなお良いでしょう。また、ストレスの原因について上司や労働者に意見を聞き、ストレスの原因となる要因について職場内の情報を収集します。その上で、より仕事しやすくするための職場環境改善に向けた話し合いへの参加者を募ります。その話し合いの場は勤務時間内に、そして業務の一環として設けられることが望ましいです。
ハ:改善の討議と立案
以上の下準備を経た上で、ACLを使った複数によるグループ討議とその結果発表の場が設定できることになります。グループ討議では1グループは5~8人になるようにし、各グループにて進行役、書記、発表者を決めます。そしてACLを参考にしながら、既に実施されている良い工夫や改善事例を3つ挙げてもらいます。よい実施済みの事例をまず取り上げることで、議論が活発になり、自由に意見がでるようになります。次にこれから改善したい点を3つ挙げてもらいます。改善策を検討する際には、心身の負担に関連する職場環境や労働条件にも幅広く目配りして優先順位をつけていきます。「ストレスチェック」による集団分析結果も参考にすると良いでしょう。職場の上司がメンバーに入ることで、労働者が話しにくくなることが想定できるのであれば、まずは労働者だけでグループ討議を行い、全体発表会から上司に参加してもらうという工夫を加えると良いかもしれません。
討議のおおまかな流れ例は図のとおりです。持ち時間について説明し、後はグループの自主的運営にまかせます。全グループの発表が終わったら、優先的に実施する改善提案について職場の管理監督者が中心となってできるだけその場でまとめます。
討議結果は文書記録しておくと、今後の対策実施計画への参考資料とすることにもなります。また、仔細は成書に譲りますが、厚生労働省が実施を推奨している「リスクアセスメント」にも繋がります。
ニ:対策の実施と評価
グループ討議の結果から出てきた改善提案を、誰が責任者として、その実施に必要な調整・交渉を行うかをあらかじめ決めておくことが大事です。人事・労務や他部署との調整や予算措置が必要な対策が提案される場合もあるからです。この責任者には多くの場合その職場の管理監督者がなることが多いですが、場合によっては人事・労務担当者であったり、小さな事業場では提案を検討した職場グループそのものが改善の実行責任者となる場合もあります。
討議された結果(職場改善のアイデア)を、職場の管理監督者や安全衛生担当者が部署ごとに取りまとめ、具体的な実施の手順をきめます。
改善提案を踏まえた対策の実施状況を確認するために、定期的なフォローアップと評価も必要になります。ストレスチェックの結果が改善しているのかも大切な指標になります。良好な実践事例については表彰を行うと、モチベーションの維持と向上をはかることが出来るのみならず、横展開が容易になります。
この頃の状態:回復初期
所要期間:1~3週間 (あくまで目安)
手引き:『<第1ステップ>病気休業開始及び休業中のケア』
・インフルエンザに罹って寝込んでいる時のような体の重苦しさ、だるさがある。
・寝る時間、起きる時間がバラバラ。食欲がなく食べても味わえず砂を噛むよう。
・寝つけずイライラ。寝ても仕事をはじめとした嫌なことを思い出したり、夢を見たりして熟睡できない。
・朝になっても寝床から起き上がる力が湧かない。
・ようやく昼過ぎに起きられたとしても新聞・雑誌は見たくもなく、テレビの音や家族からの声かけさえもうるさく感じられる。
・何かの拍子に突然ドキドキしたり息苦しくなったり、気が遠のく感じがしたり、めまい/ふらつきを感じたり、頭痛や顔のほてり、冷や汗、手足のしびれ、腹痛、下痢といった様々な全身の不調症状が出る(自律神経失調症状といいます)。
ご本人は無理せず、支援者は無理させずに、眠りたい時に寝てもらい、起きたいときに起きてもらい、食べたい時に食べてもらうという、療養生活モードへの変換がキモである事、認識ください。
TIPS どうして、励ましが良くないの
よく、“がんばれ”と言ってはいけないといわれます。どうしてでしょうか。理由2点と、励ましが必要になる段階がある事をコメントします。
1点目は、そもそも頑張れるだけの気力や体力が枯渇していて、頑張れずに、苦悩を深めるだけだから。
2点目は、“がんばれ”という声かけが、上から目線だから。
必要になる段階はお分かりですね。気力や体力が回復してきたら、頑張れるようになれます。「生活安定期②」以降です。この頃になってもそれまでと同じように、“ゆっくりしていなさい。寝ていても良いよ”という愛護的な指導は逆効果です。なぜなら、1日寝ていると体力は1%落ちてしまう中、寝てばかりいたら体力は悪化し続けてしまいます。そして会社に戻る際に求められる“カン”も戻すことはできません。
ここに書いてある事を実行するようにしてください。むろん、「急いては事を仕損じる」です。所要期間にある通り時間がかかります。脳の一番奥にある脳下垂体というところまで、疲れがたまりにたまってしまったからです。従って一歩一歩、段階的に階段を上り続けられるような息の長い対応が必要です。
通った先のクリニックや病院の先生(以下、主治医)から休職が必要と言われたら、“休みが必要なくらい、無理をおしていたのだ。無理をおすと、死んでしまうところだったから、ドクターストップがかかったのだ”と考えてもらい、しっかりと休む事を 心に刻んでもらう事が、この時期の最重要支援です。
“みんなに心配かけたくない”と休もうとせず無理を重ねようとしがちですが、それは「焦燥感」という病気の症状です。休みが必要なのだということをきちんと認識してもらうためにも、主治医から、診断書を出してもらいましょう。そして、診断書には休職が必要な期間を記載してもらいましょう。
休職期間の希望を主治医から確認されるでしょうが、短めに書いてもらう事は避けましょう。
それは、ご本人に病状を正確かつ客観的に専門家から診てもらった結果をきちんと認識してもらうだけの意味合いではありません。診断書は発行をお願いする度にお金がかかります(安くて3千円程度。高いと1万円を超える事も)ので、最低1か月単位で書いてもらうようにしましょう。長くなる場合には3か月単位もありと考えます。
診断書は、会社の人事担当者に届けるようにしましょう。ご家族をはじめとした支援者が会社に行ける場合には、有給休暇の残り日数、社内の病気休暇・療養制度の有無とある場合の内容、健康保険法に基づく傷病手当金の申請方法、休職できる期間の上限を確認したり、十分な支援を引き出すためにも会社の人事担当者ともよく相談できるように情報交換をしておきましょう。そしてその際には「主治医の元に赴いてもらって病状を直接確認してもらっても構わない」と人事担当者には伝えておきましょう。
主治医から服用を指示された薬(以下、処方薬)を飲んでもらうようにしましょう。処方薬を飲んで、眠気やだるさがひどくなったとしても、それは副作用ではありません。風邪薬でも眠気やだるさが来て、実際に寝ると治るように、自己治癒力/自然治癒力という生命力が回復するサインなのです。
処方薬を飲んで、のどの渇き、腹痛や気持ち悪さ、吐き気、胃のむかつき、便秘がち、尿が出にくい、急な発熱・発疹(おでき)といった症状(治療反応ともいいます)が出たときには、遠慮なく主治医に相談するようにご本人に提案しましょう。支援者が同伴通院の上、伝えることも積極的に肯定します。おもんばかって、実際には処方薬を飲んでいない事を言わない事は絶対避けるべきだからです(薬代が無駄になるばかりか、治りが遅くなる)。
① “睡眠薬を飲んでも眠れない”という訴えが出たときには、飲むタイミングや時刻が体調にあっていない可能性があります。前日、睡眠薬を使わずに寝つけた時刻より1~2時間前に飲む時刻を変えてみるよう提案してください。
② 起きている間、休んでいる自分を不甲斐なく思ったり、周りを責めたくなったり、“生きる事は辛い”といった話が出たら、その辛い気持ちや苦しい症状をノートに書きだすよう提案してください。それと共に、「主治医にその『治療日記』を見せる事が今の仕事だ」と伝え、ノートに書き出し続けるよう指示してみましょう。社長であっても代わりはいますが、治療という仕事は、代わりはいません。社長より大切な仕事といえましょう。
③ 指示された通りの間隔で通院する中で、“いよいよ死にたくてたまらない”という言葉が確認されたら、ためらわず、予約していなくても同伴通院しましょう。
④ ご本人が一人暮らしの場合、ご家族に実家での療養を考えてもらいましょう。
⑤ 一人暮らしにもかかわらず、実家での療養が得られなかったり、家族と同居していても家族の協力が得られなかったり、更には家族が攻撃的だと感じられる場合には、入院を主治医に希望するよう提案してみましょう。ストレスケア病棟といった名称での入院施設もありますので。
① この時期は、生活リズムが昼夜逆転していても全く構いませんし、支援者は、それが普通なのだと、どうぞご理解ください。寝たい時に寝て、起きたい時に起きて構わないです。ただし起きた後はカーテンを開け、明るさを感じる事で心のスイッチを入れると共に、米一粒からで構いません。 米食を摂る事で、体のスイッチを入れるという事をご本人に意識してもらいましょう。
体に、朝が来たのだというリズムを刻み、安定した回復を遂げさせる基本だからです。それ以外には、この頃は食べる内容や時間は食べたい時に食べたいもので構いません。
② 本人が一人暮らしの場合には、実家での療養が可能な支援をお願いします。
うつ病で最悪な事は、本人が苦痛や苦悩から逃れるために、自死という、自ら死を選ぶケースが少なからずある事を忘れてはならないからです。目の届く範囲で療養に専念させてください。では、ご家族は何をしてあげたら良いのでしょうか。
前述の『生活記録表』をつける以外に特別な事を提供する事は不要です。
一緒にご飯を食べたり、不安にさいなまされる夜に近くで寝てもらうだけで、心強いと思い、支えになっているものなのです。
③ 同伴通院時には『生活記録表』を主治医に確認してもらってください。
① 主治医から休職が必要だとの診断書が届く前から、休職前の勤怠表を基に有給休暇の残りや休職可能な期間を確認・把握すると共に、体調を崩した背景で思い当たる事はないものか、同僚、上司、顧客、そしてご家族から情報を収集しましょう。健康診断の結果も確認しましょう。
② 管理職から現場での状況や背景が把握出来たら、時系列に沿ってA4用紙1~2枚程度にまとめてみましょう。勤怠表も別途、整理しておきましょう。
把握する際の資料としては、以下が実施事例です。
③ 主治医から、休職が必要だという診断書を出された後でも、“引き継ぎが必要だ”、“周りに迷惑をかけるわけにはいかない”、“戻る場所がなくなっては困る”といった理由で、仕事を続けようとする方がいる場合があります。
確かにある程度の引き継ぎをさせる配慮は、療養に専念してもらう為に必要ですが、それはあくまで引き継ぎであって、1日もあれば終えられるでしょう。1日で済む程度で終える必要があります。何しろ体調や病状を悪化させない支援が必要な状況なのです。
従って、就業規則に照らし合わせて、休職命令を出すよう、そしてその旨が書かれた文書(「休職命令書」)を用意しましょう。
④ ご本人が、会える体調であれば、ご本人の自宅近くの喫茶店で、ご本人の状況も確認してみましょう。難しければ、ご家族をはじめとした支援者と③で準備してもらった勤怠表をはじめとした調査した情報を基に、相談の機会を設けてください。その際には残りの有給休暇期間と休職制度の説明を行いながら「休職命令書」を渡すようにしましょう。
⑤ ご本人が都会に一人暮らしをしていて、家族が地方在住の場合には、まずは電話で、ご本人の状況を伝えると共に、早めにご家族にも、同伴通院し、家族の元での療養を提案してください。
その際には、会社としても同伴通院可能だと提案してください。
⑥ 同伴通院出来た際には、②の整理した書類(含:健康診断結果)を主治医に渡すと共に、会社の休職制度を説明してください。その際には、主治医に、 「会社としては、先生が最善と思う方法を本人に提供してください。長く療養する事になろうとも、それが結果的には、治療効果を高め、確実かつ着実な回復につながるものと期待しているからです」と述べてください。
⑦ ご本人が一人暮らしの時には、家族の元での療養を主治医にも希望してください。医師からすると、うつ病の治療で要する休職期間は3か月から半年は普通の事で、長ければ1年2年の単位になるのも珍しくはないという感覚がありますが、勤め人には、その間隔の長さは普通ではありません。治療効果を高めるためにも、更には万が一を防止するためにも、ご家族の支援を確保してください。
TIPS 生活記録表をつけるメリットとは
2013年3月10日に山形県の小国では、午前6時20分の気温マイナス3度が、1時間後には18.3度へと、なんと1時間の間に21.3度も気温が上昇したそうです。このように天気や気象は時々刻々と目まぐるしく変化します。でも、日よりは週、週よりは月の単位で天候や気候変動を捉えると、寒い冬もいつの間にか暖かい春になっている事に気が付くように、週や月の単位で体調変化をトレンドとして確認する方法があると、段階的に変動の幅が落ち着いたり、日中の活動量に増加が顕れたりと、改善が認識しやすくなります。実際、日々、行動記録をつけることは様々な精神科的な専門的治療法(例:森田療法、認知行動療法、社会生活リズム療法、生活臨床)の中で、共通して実施する内容として位置づけられています。
この頃の状態:生活安定期 ①
所要期間:2~3週間 (累計 3~6週間 約1か月前後)
手引き:『<第1ステップ>病気休業開始及び休業中のケア』
・インフルエンザに罹って寝込んでいるような体の重さ、だるさはまだある。
・寝る時間、起きる時間が一定化してくる。食欲も出てくる。
・寝られる事で落ち着きを取り戻してくる。
・テレビがついていたら、何となく見られる。
・早ければ、くすりの効果がみえだす人もいるが、仕事や辛い出来事を思い出すと、まだ突然ドキドキしたり息苦しくなったり、気が遠のく感じがしたり、めまい/ふらつきを感じたり、頭痛や顔のほてり、冷や汗、手足のしびれ、腹痛、下痢といった色々な体の不調症状が出てしまう。
・同居家族以外、誰とも会いたくない。
① 主治医から言われたように、定期的に通院や服薬を続けさせましょう。週に一度の通院が望ましいです。
② くすりの効果があらわれるのは、早くて2週間。だいたい1か月経過してからです。
世の中便利な時代で、いろいろな情報がネットを通じて世界中から集められます。中には、出されているくすりに対して不安を与える情報源もあります。それを鵜呑みにしてしまい、また、よくなったからといって、自己判断で飲む量を減らしたり、更にはやめてしまう方もいます。
*くすりの調整で迷ったら、“減らしたい。なぜなら○○○だから”という○○○に入る心配事と共に、きちんと主治医に伝えるよう支援してください。そして、減らしてもらうためには、客観的な理由が必要です。その有力な理由の一つが『生活記録表』に記載されている事実です。それをもとに判断してもらうよう支援してください。
③ この頃が一番、自死リスクが高くなります。あまりにも辛いと、死ぬ事さえもおっくうなので自死すらできません。でも、回復してくると、自死する力が出てくるので危険になるのです。本当によくなるのか、不安を感じるようになります。でもそれまでに感じていた不安が、息苦しくて心臓が止まってしまうのではないかといった根拠に基づかない不安だったのに比べるとどうでしょうか。不安の内容が具体的になってきていますよね。思考力が回復してきていると理解できるのです。ちなみに当書は、これまで数えきれないほどの仕事に戻る支援を実際に提供し、職場復帰へと導いてきた医師のノウハウを凝集しています。今は効果が判らないかもしれませんが、うち、“そんな時期もそういえばあった”と思い起こせる日が来るものです。
世界的に健康食と言われている和食を中心に調理してください。食べられる量は少なくても構いません。代わりに米は胚芽米を混ぜるとかゴマを振るとか、味噌汁は煮干しやイリコ出汁にするといった工夫を加えてみてください。これらの工夫にて、神経細胞の回復力が違ってきます。
胚芽米やゴマにて微量栄養素を補給する事が出来ます。煮干しやイリコの出汁汁を飲むと、神経細胞の栄養成分になるEPA(エイコサペンタノン酸)やDHA(デキサヘキサノン酸) が補給可能です。
寝ている時間が8時間程度になり、寝る時間と起きる時間が、前後して1時間の幅に落ち着いてきたら、主治医に当書を見せつつ、以下の②以降を開始して良いのか確認を取ってください。許可が出たら開始してみましょう。
*『生活リズム立て直し法』とは、「睡眠衛生教育」と「社会生活リズム療法」という、それぞれ確立された効果が認められた治療法のうち、“いいとこ取り” をした健康度改善方法です。当書の著者が編み出し、専門書にすでに記載されている内容です。その内容を今回、容易に出来るように記述しております。
①夕食
寝る時刻の3時間前までに済ませ、それ以降はコーヒーや更に多くのカフェインを含む緑茶は飲まないようにしてもらいましょう。
また、「ブルーライト」という、覚醒効果が危惧されている液晶テレビ、PCモニター、スマフォも夜21時以降は極力使わないようにしてもらいましょう。特にテレビは、脳神経を興奮させてしまう内容が、不用意に放映されてしまいますし、PCやスマフォは、脳細胞を興奮させてしまい、寝付きを悪くさせてしまいます。
②入浴
お風呂のお湯はぬるめにしましょう。お風呂にはゆっくりとつかるよう心掛けてもらいましょう。
③寝室
空調や除湿機で快適な温湿度になるように調整しておきましょう。照明器具も、白熱球のような暖色系にするとよいでしょう。
④入眠の工夫
この頃は特に、次から次に、辛い事が思い浮かんで寝付きが妨げられる事が続くものです。その時には『治療日記』をつけてみましょう。辛い事が思い浮かばなくなるまでです。
そして、布団に入るのは、いよいよ眠くなってからという工夫をお願いします。眠れないのに布団に入ると、「条件不眠」といいますが、本能が目覚めてしまい、寝付けなくなります。
⑤熟睡の工夫
眠れないときには、いったん、布団から出て、寝付けるまで待つようにしてもらいましょう。そして、『治療日記』に、寝付けなくて辛い事を追記してもらうよう提案してください。
*④と⑤で述べた内容は、他力本願的に睡眠薬に頼るのではなく、自力救済的にくすりに頼らなくても済むくらいの効果がある「睡眠制限療法」という治療方法の“キモ”です。
⑥通院時の配慮
不眠が続く場合には、どうしたらよいのか、『治療日記』を示しながら主治医に相談してみましょう。
⑦起床
起きる時刻をこの頃は決めるよう意識してもらいましょう。今朝まで無理なく起きる事が出来ていた時刻です。
⑧起床時の工夫
明朝、起きる時刻になったら、必ず布団を離れさせましょう<鉄則>。その点、和室の方が布団を片付けやすい利点があります。
⑨日光を意識する
起きたら、カーテンやブラインドを上げ、15分程度は、朝が来たのだという事を意識してもらうようにしましょう。新聞受けに新聞を取りにいってもらったり、庭に出てもらったりしてもらうことも一つです。
⑩朝食
起きた後に摂る朝食の量を、おにぎり一つは食べられるようにしていきましょう。
パンと違い、長い時間、脳細胞に栄養を補給し続ける効果があるので、イライラする気持ちが出にくくなります。
また、味噌汁や納豆で胚芽成分を摂る事も、GABA(γアミノ酪酸)やγ-オリザノールという神経の栄養因子を補給する効果がある事からもお勧めです。
⑪日中の過ごし方
日中は好きな事をしてもらうことを心掛けてください。「食う、寝る、遊ぶ」という回復の三元素の補給が可能になっていきますので。
⑫とっておきの工夫
とても大切な内容を書きます。
その晩は、「明日は今日より5分早く起きる」と決めて、かつ、夕食以降、5分切り上げて過ごすようにしてもらいましょう。
⑬繰り返し
以降、22時入眠6時起床の8時間睡眠をゴールに、これまでの①~⑫の繰り返しを実施してもらうように支援しましょう。
休職期間中、期間の切れ目が出ないよう診断書が提出されるのか確認しましょう。
傷病手当金の申請書や主治医からの証明が得られているのか、手続きが実施されているのか確認しましょう。
給与明細が出るタイミングが好ましいです。月に一度は、ご本人かご家族と会う機会を設けて、状況を確認しあいましょう。実家に帰省して休んでいる場合には、電話で状況を確認しましょう。
復職手続きが整備されていたらよいのですが、整備されていなければ整備する良い機会です。
手続き整備の依頼先候補として、身近な順に記載します。
イ:社会保険労務士の先生。給与計算や社会保険手続きを依頼されている先です。
ロ:都道府県毎に設置されている『産業保健総合支援センター(http://www.johas.go.jp/shisetsu/tabid/578/Default.aspx)』
無料で相談に応じてくれます。電話やEM、そして専門家による直接相談も可能です。
ただ、無料な分、多数の対応をしているため、細かい点までの対応は望めません。
ハ:復職支援に長けた医師の支援を得る。
『プロフェッショナル産業医サービス』(http://pro-sangyoui.com)
が一例です。
以上で挙げた各種相談先は、ある程度の雛形は示してくれます。しかしあくまでも外部アドバイザー。相談される前に、休職者がどういう状況になった場合と、誰が復職可能だと認めたら復職させてよいのか、事前に社内で検討しておいてください。
・主治医だけの診断書でよいのか。
・会社側の状況を踏まえて判断してくれる「産業医」という立場の医師を確保してあるのであれば、その医師にお願いするのか。
・産業医がいない場合、メンタルヘルスに明るい独立した医師の意見を確認したいのか。
・更には「リワーク」という専門家による仕事への復帰支援プログラムを経る支援も求めるのか。
本書での復職出来る状況とは以下を示しています。
イ:休職者ご本人が、本書に記載された内容をこなした末、復帰したいという意欲を自然に持てるようになる。それは焦燥感や金銭的緊迫感によるものではない。
ロ:休職前の業務に、所定労働時間の勤務が可能との判断を主治医に加え産業医または復職支援に長けた医師(産業医等)が認める。
TIPS 診断書の精確さについて
主治医の中には、“隔日勤務や半日勤務なら就労可能”という軽減勤務を求めてくる場合があります。回復レベルは当書での「復職準備期①」に相応し、そのような場合の回復度合はよくて3割程度です。3割の回復レベルに対し、いくら軽減勤務にて負担を軽くしても、仕事をしながら回復レベルを好転させることは困難です。そのような場合には、半日勤務がズルズルと半年続くことも稀ではありません。そうなると、復職判定そのものの是非まで問われてしまいます。主治医からの判断は、それが診断書に書かれていた場合であっても主治医としての本人の気持ちの安定化を尊重した判断と意見でしかありません。強制力は伴いません。逆に、その判断に従って復職させた場合、その後何らかの支障や損害が生じた場合の責任は会社側が負う必要が生じます(安全配慮義務)。
復職のハードルを下げると、円滑な復帰に繋がりやすいのが事実ですが、一定レベルの回復があってこそ、順調な職場復帰につながる原則を忘れてはいけません。従って「手引き」には、以下の記載があります。
「主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限りません。このため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等が精査した上で採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要です。」
☆当書には、産業医等が求める判断材料になり得るくらいの、科学的根拠があり、かつその有効性が示されていたリワーク方法を最低限ではありますが記載しております。本文中に記載されている内容は最低でも実施するようご本人にご指示ください。更に専門家による2週間~3か月程度の専門的プログラムで構成された「リワーク」を経ると、病気に対する理解の深まりや複数のセルフケア方法を習得出来る事から、よりスムーズな職場復帰と、復帰後の安定した就労が可能になります。
この頃の状態:生活安定期 ②
所要期間:2~3週間 (累計 5~9週間 約2か月前後)
手引き:引続き『<第1ステップ>病気休業開始及び休業中のケア』
・睡眠リズムが安定してくる。日中は起きていられるようになる。
・テレビや新聞を見られるようになる。
・近所に散歩に出かけられる。
・ただ、この頃はまだ完全に治った状態(完全寛解)ではなく、取り戻そうと無理をすると体調を崩してしまう(最近まで外出もままならない位の体調だったわけです)。
・近所の人とはまだ顔を合わせたくない。
・電話なら、同居以外の親族との対応が出来る場合がある。
① 服薬が継続されているのか、もしくは、余計に飲んでいないのか、確認を続けてください。“体調が良くなった”とご本人が述べたとしても、それは休職にて、ストレスを遠ざけているからであって、本質からの改善はまだ先です。従って服薬内容や量を勝手に変更していたり、変更したのに主治医には飲んでいるとウソをついたりすると、これまで培った体調が崩れてしまいますので、絶対にさせないでください。
② ①を防止させるためにもこの頃からは、「生活記録表」は本人につけさせ始めてください。本当のことを隠しての記載は、ご本人自身だけではなく、主治医までだます事につながるだけではなく、病気を悪化させる危険性が高まりますので、ご本人の記載内容は忘れずに確認し続けてください。
③ 食事内容は、世界的にも健康食と言われている和食中心を引続き継続してください。量は少なくても構いません。米は胚芽米を混ぜるとかゴマを振るとか、味噌汁は煮干しやイリコ出汁にするといった工夫を加えてみてください。
体調が良くなったからといって、勝手に服薬内容や量を変更させずに、通院加療を続けさせましょう。
この頃は、辛い事が次々に思い出される頃です。それは、悪いことではなく、活動が停止していたり、切れて傷ついていた神経細胞や神経線維がつながり始めたのです。かつ、つながり始めるのは痛みを感じる神経の方が先です。従って、辛さや苦しさという感覚や思いが先に思い出されてきます。
それらの辛さや苦しみが出てきたら、『治療日記』や『生活記録表』、更には裏面に記録するよう提案しましょう。
☆日々、その日の体調、心の状態、熟睡度、食欲といった項目について、一番良い時をプラス10。一番悪い時はマイナス10で記録し始めてもらうと良いでしょう。
主治医から指示された心の状態を調べる尺度を実施し、その点数を『生活記録表』にもつけているか、確認してみましょう。指示がなければ無料で出来る『簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)』(https://www.cbtjp.net/qidsj/)がありますので実施し、その点数を『生活記録表』に記載しておくと共に、主治医に報告してもらいましょう。
これまで実施してもらってきた『生活リズム立て直し法』は継続させましょう。この頃は19時代までに食事は済ませ、20時以降はテレビ、パソコン、スマフォ使用はしないようにし、22時就寝→6時起床→朝日浴→朝食摂取、という体力の維持増進の基盤中の基盤を強固に出来る頃です。
富士山は裾野が広いからこそ、高いいただきがそびえたつように、基盤がしっかりしていると安定感が違ってきます。
ご飯、味噌汁、納豆か豆腐、または焼き鮭が食べられるようになる事を目指してもらいましょう。パンだと脂肪を1割、余計に摂取する事になってしまいますし、脂肪を多くとっていると、神経の働きが鈍り、治療に逆効果です。
料理・調理する事も、集中力や注意力を養成するのに役立ちます。むろん、おいしく作れると、やる気も湧きやすくなります。
出歩く気力がわかない日や天候が悪い日でも、家の中で、ストレッチやラジオ体操を始めてもらいましょう。辛い中でもめげずに“自分はこれだけやったのだ!”という達成感が、後々、自信につながります。
ちなみに「自信」とは、自分という人の言葉と書きます。『生活記録表』をつける事も、自信につながる背景には、こういう意味があるのです。
ネットで探すと動画がいくつも出てきますが、「自律訓練法」という方法も実践する価値があります。緊張を解したり、寝付けない時に眠りやすくコントロールできるようになれます。
『生活リズム立て直し法』にて外出したいという意欲が戻ってきたら、この方法の出番です。
① 出歩ける気力が戻ってきたら、1週間、まずは新聞や郵便をとり始めてもらいましょう(行動療法に基づいた支援方法の開始です)。
② ①が簡単に出来るようになったら、次は歩いて10分程度にあるコンビニに通ってもらってみてください。
③ コンビニに1週間、通い続けられるようになったら、歩いて20分程の距離(1キロ程度以内)にある本屋やスーパーに、読みたい本や食べたい食料を買いに、2~3日に一度外出してもらいましょう。
④ ③が疲れずに、かつ1週間、連続して出来るようになったら、毎日出かけてもらいましょう。
⑤ 毎日出来るようになって1週間経過したら、歩いてたどり着ける外出先の距離を、延ばしてもらいましょう。その際に大切な事は、一気に延ばさせない事です。出来そうだと思える距離の半分位でとどめさせましょう。なぜなら、大切なのは、無理をするのではなく、無理なく継続できるようになることです。無理なことをするのではなく、出来ていたことを取り戻すだけだから、出来ないことはありません。出来なくても、それは病気のせいで出来ないでいるだけなのです。つまりはそのうち、体力が戻り、元気になったら、出来るようになるのです。
この頃は、これまでのように、100点満点ありきの減点法ではなく、0点や、更にはマイナスからのスタートでも、続けていたら、加算法の末、自分を良い方向に導けるということがわかってくるでしょう。これは、「認知行動療法」という専門的な治療法の応用です。
① 引き続き、前項の①診断書確認、②手続き確認、③状況確認を継続ください。復帰するまで続きます(以後省略)。
② 復職手続きが整備されているか、状況を確認ください。
③ “働かせてみなければ本当に復帰が可能なのか判らない”と思われるのは無理もありません。だからといって復職支援をせずに解雇する事も、一方、中途半端な状況で復職を認める事も、訴訟リスクが生じます。後者は、業務に耐えられない場合には、耐えられるような支援を提供しなかったという病状悪化の責任を追及される場合があるからです。
従って、整備に手をつけていない場合には、2.休職に入ったら D.(4)以降を再度、ご参考ください。
TIPS 復職手続きの整備が必要な理由
復職手続きを整備する事は、『枠組みつくり』といいますが、客観的かつ合理的で社会性あるルールに沿った対応を会社も、そして社員も協同してとる事は、治療効果を上げられます。なぜなら、一番まずい対応は、中途半端な対応をとる事です。何しろ治りきっていない中途半端な段階でも主治医は診断書に、“復帰可能”と記載してくる場合が多くあります。体調が芳しくないのに仕事をする事は、当人にとっても大変、辛いものです。かつ、“後戻りできない”と、無理を重ねてしまいます。治っていない以上、周囲の期待に応えることは難しい現実が待っています。簡単な業務しかこなせなくなるため評価にまで悪影響が波及してしまいます。当人への悪い評価が社員内で一旦出来てしまうと、挽回には相当な時間が必要となりますし、当人の将来にも悪い影を落としてしまいます。このような非合理的で透明性がない対応がとられるのは主治医が、患者側からしか職場の状況を確認できなかった場合や、診察時に、患者側の言葉からしか状況を把握しなかった場合に多く生じてしまいます。この当書は、そうなる可能性を極力回避出来る内容で構成されているものの、ゼロには出来ません。そこで同伴通院をお勧めし、かつ客観的に状況を把握可能な『生活記録表』や後述の『体調管理表』等への記載を提案しています。
この頃の状態:復職準備期 ①
所要期間:3~4週間 (累計 8~13週間 約2~3か月)
手引き:まだ『<第1ステップ>病気休業開始及び休業中のケア』
・午後中心だが外出が可能になる。
・テレビや新聞を見られるようになる。
・外出する距離や時間を一気に延伸すると、体力の回復が伴っていないため体調を崩してしまう。
・中には、躁状態になる事もある。
・趣味を再開する事ができる。
・職場からの電話に対応できるが、少し疲れを感じる。
・自室の片づけや掃除なら出来る。
・近所の人に会った際、隠れたり、避けることなく挨拶が出来るようになる。
「抑うつ性障碍」で治療を受けている場合に心配しておいた方がよいことがあります。それは体調が突然よくなった場合です。体調が良くなるのに、なぜ心配しないといけないのか、不思議に思われるでしょう。なぜなら急によくなる場合には、以下の見逃してはいけない二つの可能性があり、精神科医でも見逃している場合が少なからずあるからなのです。
イ:「抑うつ性障碍」ではなく、より軽い(「適応障碍」)で済んでいた場合
ロ:躁状態を伴う躁うつ病(「双極性障碍」)だった場合
イ なら、引き続き、この書籍に沿った対応を続けてもらえばよく、想定より早めに職場復帰も可能になりますから、めでたしめでたしなのですが、ロなら、単なる「抑うつ性障碍」とは異なる病気であり、治療法も違います。
治療法を変えてもらうには、主治医にも認識を改めてもらう必要性が出てきます。その時に有用なのが、本人がつけている『生活記録表』です。マイナス評価がついていたのが、睡眠時間が短くなっているにも関わらず、気分、体調にプラス評価がついている場合が要注意です。
以上より、『生活記録表』の確認は続けてください。それと共に、主治医の元への同伴通院は、おっくうがらずに継続してください。
体調の変化をより細かく確認してもらうようにしましょう。「精度を高めよう」と提案してみてください。『生活記録表』についても、1日単位ではなく、時間単位で調子を確認しても良いと考えます。
① 体調が良くなったからといって、勝手に服薬内容や量を変更させずに、通院加療を続けさせましょう。
② この頃、主治医の中には、“状況が良いから”との理由で、それまで週に一度の診察間隔を、2週間に一度へと延伸する場合があります。2週間に一度になったからといって、診察時に2倍の時間をかけて診察や対応してくれるわけではありません。病状の見落としや確認不足が生じないために、『生活記録表』には特に困難なことを詳しく記載するように心がけてもらうと共に、主治医にきちんと確認してもらいましょう。
同伴通院をしなくなっている場合もあるかもしれませんが、月に一度は同伴通院をし続けてください。
この頃、以下の症状がみられたら、『躁転』といいます。
・自分の存在を大きく、爽快に感じている。
・どんどんアイデアが湧いてきて止まらないといった発言が出る。
・怒り易くなる(易怒性)。
・しゃべり続けている。
・眠る必要性がないように感じるといい、実際 夜遅くまで起きて活動している。
・気持ちが突っ走るような、つき抜けるようなハイテンションさを感じている。
以上のような症状が感じられたときには、治療薬や治療方針の変更が必要になる場合がありますので、すぐ主治医に相談しましょう。
これまで実行してもらっている『社会機能回復訓練』は継続してもらうと共に、以下の方法でグレードアップが可能になるので提案してみましょう。
①外出距離の延伸
1週間単位で、外出する距離を延伸するよう提案しましょう。歩いて1時間の距離まで外出できるようになったら、それは往復で8キロは歩行できるだけの体力と自信が回復した事を意味します。
結構な量ですよね。
②運動の効果実感
運動には、軽すぎもせず、重すぎもしない中等度のうつ病の治療においては、抗うつ薬と同程度の治療効果があるとする研究結果もあります。更には、再発防止効果は抗うつ薬より高いことが示されていました。経験があるはずです。運動するとスッキリし、シャワー浴びるとサッパリし、その後、グッスリ眠れた経験が。
グッスリ眠る事が治療効果を促します。また、運動すると体の最小構成単位である細胞の一つ一つの性能が回復してきます。したがって継続して運動を続けていると、疲れにくくなるのです。それは、以前は耐えられなかった負荷に対して、楽に耐えられるようになったという、耐力や抵抗力がついたことを示します。
③外出開始時刻の前倒し
片道1時間、続けて出歩けるまで体力が向上してきたら、次は外出の時刻を午前側に、週に1時間ずつ前倒ししてもらいましょう。ゴールは8時出発です。
この頃は、外出できる分、仕事している方をみると、辛い気持ちが湧きあがったり、不安が背景にある様々な体調面での不調がぶり返したりする事があります。それらが出たら『治療日記』に記載してもらうよう提案してください。それと共に、どれだけの時間続いたのか、観察するようにしてみてください。
胸が締め付けられて、死にそうな思いで表わせられる「不安発作」も、発作の最中は、一生続いて、本当に死んでしまうのではないかと思うくらい、苦しい思いをしますが、ストップウォッチで計測したら15分程度と、実際は短い事が確認できます。それと共に、客観的な把握がなされる事で、“一生続くのではないか!?”との不安な気持ちに整理をつけさせることが可能になり、安心感を与えるようになります。
この頃、会社側から以下のような『体調管理表』記載を指示される事もあります。
『生活記録表』と『体調管理表』の大きな違いは、日常生活が安定しているのは当然とした上で、治療の上、就労し続けられるようにするにはどうしたらよいのか、どうしているのか、「日報」のように振り返りながら、上手に周囲の支援が引き出せるような構成になっている点にあります。
ちなみに、この例を記載した方は復帰成功者でかつこの『体調管理表』の制作者でもあります。
① 会社が定めてある復職手続きについて、ご本人やご家族、更には同伴通院の上主治医にも説明をしてください。
② その際には、どういう状況になったと、どういう書類を用意したらよいのかの供覧と誰が認めたら復職してよいのかも示してください。
・主治医だけの診断書でよいのか。
・会社側の状況を踏まえて判断してくれる、産業医等の意見も確認するのか。
・それとも、「リワーク」という専門家による仕事への復帰支援プログラムを経てくる必要があるのか。
③ 復職支援の目的は仕事へ戻るためにあるのではなく、仕事へ戻った後も継続して仕事し続けられるためにあります。そのために、この頃からは前述の『体調管理表』記載を提案しています。
★ここで注意して欲しいことがあります。この頃、主治医から、復職に向けた話が出る事もあります。その際には、「リワーク」という専門家による仕事への復帰支援プログラムの利用が可能のかの主治医への確認と、利用できない場合には、独立行政法人 高齢・障碍・休職者雇用支援機構の「職場復帰支援(リワーク支援)」プログラム(利用者例:https://www.jeed.or.jp/disability/person/om5ru800000008j6-att/om5ru800000008my.pdf)を利用してよいのか、確認されてください。
TIPS 「リワーク」を利用するメリット
「リワーク」とは、職場復帰(return to work)の事で、高齢・障碍・休職者雇用支援機構や地方自治体、そして中にはクリニックに施設が併設されている場合があります。リワークを提供している医療機関の集まりである「うつ病リワーク研究会」(http://utsu-rework.org/)も組織されています。リワークでは、毎朝、決まった場所、決まった時刻までに通う事による通勤訓練や、職業能力回復訓練、抑うつ性障碍の再発予防教育プログラムなどが行われます。卓球などの運動を通じた体力回復、今後も出会うであろう困難な状況に遭遇した際に、柔軟に対応する考えや方法の獲得、そして久しぶりの集団生活になじませやすい方法の修得が組まれていたりします。
風邪で1週間、休んでいた後、仕事に戻る場合でも、いわゆる仕事のカンを取り戻すのに思いのほか時間を要します。それが“うつ”で数か月も休んでいた場合、簡単に仕事に戻れないこと、想像は容易でしょう。この書籍は、普通のメンタルクリニックの外来診察時間において提供される復帰支援方法以上の、専門書に記載がなされた内容を平易に言い換えた、体力回復法とストレス耐性向上法を紹介する内容となっています。しかしながら専門的内容を平易に改める中で落とされた内容もあり、結果として限界があります。そんな中、「リワーク」施設に通うと、同じように病気と闘っている、いわば“戦友”を見つける事が可能です。そして患者会を通じて施設を卒業した“先輩”の姿をみたり話を聴いたりすると、自分には出来ないと思っていた課題も徐々に出来るようになる実際から、借り物ではない本物の自信を深める事が可能になります。通っていた方が述べていました。最初は自分が先輩の話を聴く番だった。今は先輩として仕事に戻り続けられている事を話す先輩になった事は感無量だと。
この頃の状態:復職準備期 ②
所要期間:3~4週間 (累計 11~17週間 約3~4か月)
手引き:まだ『<第1ステップ>病気休業開始及び休業中のケア』
・午前からも外出が可能になる。
・テレビ視聴に加え、新聞・雑誌を最後まで読むような集中力や理解力が戻ってくる。
・短文だが、与えられたテーマでの文書作成やメールへの返事が書ける。
・復職に向けての準備も出来るようになる。
・体調を崩した背景や原因についても考えが及ぶようになる。
・趣味を再開したり、気分転換方法を見つけられたりする。
・家の掃除や洗濯が出来るようになる。
・隣人との挨拶や立ち話ができる(社会性の回復)。
・同居以外の親族の来訪に対応できる(社会性の回復)。
『社会機能回復訓練』を通じて日に日に、手に取るように体調が回復している事が把握できる頃です。外出範囲や時間が延伸するので、ほぼ治ったものとご本人も、そして周囲の方々も考えたくなる頃です。でも、休職中だからという事を忘れてはいけません。つまりは、体調を崩した原因が、もし会社にあったとしたら、その原因が消去できるものであれば良いのですが、消去や除去が難しい状況で職場に復帰し、またその原因と遭遇してしまったら、それまでの努力がうそのように症状がぶりかえして再発してしまう可能性があることを忘れてはなりません。
この時期は、体調が悪くなった原因や背景をご本人に洞察してもらうと共に、更には病気を繰り返さない対策を講じられるようになるといった、心の準備をしてもらうようになる段階です。それらを主治医が、ご本人と向き合うなかで、ご本人に応じた、個別かつ具体的な内容を、しかも懇切丁寧に考案かつ提供してくれたら良いのですが、外来の診察時間15分枠の中に、予約者が6~8人も入っているのみならず、予約外の患者さんも押し寄せる精神科医療という現実が、許してくれません。
この段階の患者さんをめぐる現実を書きます。
一人あたりの診察時間は、以下のように1分を切る場合が少なくありません。
主治医: 「体調はどうですか?」
本 人: 「よくなりました」
主治医: 「良かったですね。薬が効いたのですね。では次回」
本 人: 「はあ……」(クスリが良かったのだろうか? 休んだからではなくって??)
したがってこの節では実施可能な簡単な「リワーク」を記載します。これを実施すると、再発防止できるようになります。つまりはとても重要な内容だという事を、機会をとらえ、めげそうになる当人に、「このリワークを実施すると、きっとあなたは良くなる!」といった、当人が期待をもてるような言葉かけをしてみてください。
当書が紹介している『体調管理表』にある、とっておきの工夫とは何だと思いますか。
それは家族や主治医記載欄をわざわざ設けるという工夫になります。
回復してきたといってもまだ万全ではありません。元々、言いたいことも言えずに溜め込みがちな方も多くいるものです。更には、どういう言葉かけをしていいのかわからない支援者側の気持ちも踏まえる必要があります。以上のどの場合でも、「体調が悪くなった原因は、何だと思っているの?」と、口頭で確認し辛い内容をその欄に記載することで、対応が可能になります。あたかも職場で使われている「日報」や「週報」が、仕事力の成長を促す効果があるように、『体調管理表』を通じ、「レジリエンス」という精神的回復力や復元力が発揮できるような支援を行うことが出来るようになっています。
『生活記録表』に加え『体調管理表』もつけ始めてもらいましょう。『体調管理表』での点数は、0~100点の間で記載するよう指示ください。
無理して良い点をつける必要はないと説明してください。
最初は主観的にしか、点数や記載が出来ずに苦しむ場面もあるかもしれません。続けていくと、より詳しく、自分自身を振り返りながら、より客観的な記載や点数つけが出来るようになりますので心配はいりません。
主治医から指示された尺度か、「抑うつ性障碍」の場合には『うつ度チェック 簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)』(https://www.cbtjp.net/qidsj/)といったように、体調を数値化できる尺度の点数を、継続的に記録し続けてもらいましょう。主治医から指示がなければ、主治医に、通院時の体温計や血圧計のように、心身の調子を客観的に測定できる尺度を提供するよう要望してみてください。信頼できる医師や医療機関であれば、毎回ではなくても、客観的に、自身でも把握可能な尺度を提供するものです。
「リワーク」施設を利用していない場合には、これまでの「社会機能回復訓練」の続きとして以下の「模擬出勤」を開始してもらいましょう。
外出先には、近所の図書館や集会所、公民館といった自習スペースがあるところ(以下、図書館)と、出来ればジムや体育館、公園のように運動が出来るところを加えてもらいましょう(以下、運動)。
なお運動の代わりに、食材購入や調理、料理も立派な運動ですし、良い頭の体操になります。
①図書館の活用
図書館では、最初は好きな本や雑誌で構いません。かつ滞在時間は1時間からで構いません。読み込んでも疲れないで済む時間、滞在するというリハビリを開始するよう指示しましょう。運動や料理もまずは疲れない程度の内容で構いません。開始してもらいましょう。
②図書館滞在2時間への延伸
図書館での滞在時間が1時間でも気疲れしなくなったら、2時間、滞在してみるように指示しましょう。運動や調理は変わらず続けてもらいます。
③図書館滞在3時間への延伸
2時間滞在が1週間続いても気疲れしなくなったら、滞在時間を3時間まで延伸してもらいます。その頃読む本は、好きな本や雑誌だけではなく、興味があれば病気の解説書や、職場復帰支援を取り扱ったものも含めてみると良いと伝えてください。「読んだ際には、ノートに内容の要約は学んだ事を記録すると、後々役に立つ」というアドバイスもしてください。
④開館直後からの利用へ前進
3時間滞在が1週間続いても気疲れしなくなり、かつ運動や調理が変わらず続けられている事が確認できたら、次には図書館の開館時刻からのリハビリを開始するよう指示しましょう。
⑤図書館滞在時間の午後への延伸
朝から午前中の図書館滞在が1週間続いても気疲れせず、かつ運動や調理にも影響が出ていないことが確認されたら、滞在時間を午後の時間帯にまで、②~④と同じように1週間かけて1時間ずつ、徐々に伸ばすよう指示しましょう。つまりは、昼食も図書館周辺で摂るようにすると共に、午後も滞在できるように段階的に負荷を増やしてみて、疲れが残らないか、確認していきましょう。
⑥到達目標
朝から夕方まで8時間は図書館に滞在かつ、運動や調理もこなせるようになることがこの段階の目標です。どうでしょうか。休職し始めた時には想像出来ない位の回復度合です。
一歩一歩、あきらめずに継続けると、「継続は力」よろしく、「変化是進化」出来るようになるのです。
⑦疲れが出た場合の対処
図書館への通所が辛くなる日が出たとしても、休館日以外、全く行かない日が出るのは避けるよう指示しましょう。午後から行くように努力したり、行けなくても運動や調理だけは続けるようにしたりと、“ここが踏ん張りどころだ”と、踏み留まれるように支援しましょう(これは、悪くなって、ズルズルと悪くなり続けることを、自身の意欲と工夫で改善できる事を学んでもらうという、『社会リズム療法』という治療法のエッセンスです)。
この段階で、上記のような対処方法を訓練していたら、以下の場合に対応が可能になります。
復職した後でも、たまに遅刻や早退する場合があります。その時に、遅刻し続けたり、早退し続けたり、更には丸一日休む日が続いたりすると、“再発したのではないか?”という誤解を、ご自身のみならず周囲にも与えてしまいかねません。その場合でも落ちるところまで落ちるのではなく、踏ん張りどころで、どう踏ん張るのかの予行練習ととらえて、自分なりの気分転換方法を考え出したり、実行したり、わからなければ主治医に相談したり、うまくいかなければ「リワーク」施設の利用を考えたりと、休職出来るうちに出来るだけのことを試すという訓練になります。
エジソンも言っています。成功か失敗かではなく、成功か学ぶ機会か、だと。
未熟でも構いません。成熟したら後は腐敗が待っているだけなので、学べるうちに学んでもらっておきましょう。
この頃は、趣味を再開してもらうよう提案するか、自分なりの気分転換方法を見つけてもらい、むろん始めてもらいましょう。なければ運動か調理をお勧めします。どちらも運動要素が含まれています。運動すると、魚の油に含まれているEPA(エイコサペンタノン酸)やDHA(デキサヘキサノン酸) という成分が、神経の栄養に代わるのです。つまりは、疲れた神経がリフレッシュできるからです。
以上の「模擬出勤」が難なくこなせるようになったら、次は、以下で構成される「通勤訓練」を始めましょう。
①職場がある最寄り駅まで
職場がある最寄り駅まで行けるのか、試してもらってください。
ドキドキしたり、辛い気持ちが生じて体調が悪化した場合には、一歩だけの後退として、ターミナル駅近くにある図書館に通いなおしてもらいましょう。
これまでやってきた図書館滞在8時間活動先をそこに変更の上、1週間続けるよう指示してください。趣味や運動、調理の継続も必要です。
②自宅と職場の間にある図書館まで
職場がある最寄駅まで、1週間連続して行くことが確認出来た翌週には、自宅と職場との間にある図書館まで行ってもらいましょう。これまで「模擬出勤」してきたように、その、自宅と職場の間にある、ある程度離れた図書館への出社を目標に、同じように8時間、図書館滞在活動を1週間続けるよう指示しましょう。趣味や運動、調理の継続も必要です。
③職場近傍の図書館まで
翌週は、更に職場に近い図書館まで通い始めるよう指示しましょう。そしてそこで同じように8時間、図書館滞在活動を1週間続けられるか確認しましょう。趣味や運動、調理継続も必要です。
この頃、大切になってくる内容が、会社側の意向確認です。従ってこの頃には、人事担当者と会う機会を設ける必要があります。
その際、以下のような書類記載を求められる場合があります。これは「手引き」に記載がある大切な書類になります。どういう効果があるのか説明すると、主治医から、会社側に対して、診断書だけでは書けなかったより詳しい支援方法を書いてもらえるようになる書類です。この文書にサインするように求められたら、ご本人にはサインするよう指示してください。この書類を会社が求めるということは、きちんとした対応をとる会社だと認識できます。
「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」が会社から主治医あてに出される場合、会社が提供すべき十分な支援内容とは何なのか、会社はどう支援したら良いのかを、事前に主治医と一緒に考察しておいてもらう必要があります。
従って、主治医にも、“どんな情報でも構わないので、良い支援を引き出すお手伝いをしてください”との言葉を添えて、お願いするようご本人に指示しておいてください。
コラム:上手な職場復帰に対する心構え…ストレスとの上手な付き合い方とは
職場でのストレスがゼロにならない以上、職場でのストレスと上手に付き合っていく必要があります。職場のストレスと向き合う事が辛いからといって、いつまでも気分転換が必要だと、現実から逃げ続けるわけにはいきません。
では、ストレスと上手に向き合うにはどうしたらよいのでしょうか。ストレスとの上手な付き合い方が得られる治療法の一つとして、凝り固まった考え方や物事のとらえ方に柔軟性を持たせられるようになる「認知行動療法」という治療体系があります。「リワーク」では定番として提供プログラムのメニューに入っています。
ちなみに本文中の記載内容も、課題を細かく切り分け、それらを一つひとつstep by stepでこなす(行動療法)ことで、自身の改善に気が付く効果が得られる(認知療法)という、この「認知行動療法」のエッセンスが腑に落ち自明となるような設計としています。
職場でのストレスと上手に付き合う方法についての記載を続けます。
会社での仕事は、すべて一人で完了させなければならないわけではありません。体調を崩す方に共通している背景があります。一人で抱え込み過ぎ、解決方法が解らないのに、確認しないままやりすごそうとしていた背景があるのではないでしょうか。従って当書では、『体調管理表』を通じたリハーサルをしてもらいます。ご本人が挙げる課題に対して、ご家族をはじめとした支援者の皆々様、当然に主治医、更には会社側までもが課題だと確認かつ共有し、そしてそれぞれが出来る事を担うという支援体制づくりまでもが、本文中に記載されている通りに実行したら、難なくできるように記述しました。同じことを今後、会社でも繰り返したら、“なんだ。仕事は一人だけでするものではないのだな。会社は俺ひとりで成り立っているわけでもないのだな”という事がすんなりと解るようになり、つまりは協働という言葉を、自明で理解できるようになることが期待できるような構成になっています。
自死者数について…最近は2万人台になっていますが、それでも毎年、自ら命を絶ってしまう方が跡を絶ちません。仕事の失敗やトラブルは、またやり直せます。でも、死んでしまってはやり直せません。
“生きていてくれてよかった”という素直な感謝の気持ちをこの頃は表明してください。
そして、“成功か失敗か”という、ゼロか100か?または是か否かという判断ではなく、成功に至るために学ぶ機会なのだという理解を得るプロセスの中にあり、「夜明け前が一番暗く、寒い」よろしく、苦しいからこそ、日の出は近いということと、きっとよくなるのだということを、繰り返し、語ってあげてほしいです。
そのうち、掛け値なしの自分自身を、ご自身で受容出来るという「自己肯定感」を持つに至れるようになりますので。この「自己肯定感」が育つと、自分で出来ることは確実に自分でやるという意欲を持つと共に、自分の能力の限界も把握するようになれます。限界が判ると、上手に周囲に頼る事が出来るようになります。
① 産業医がいない場合でも、復職支援に長けた医師による復帰判断を得るのであれば、それら医師から、「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」(以下、依頼書)を主治医に出してもらうよう、指示があると思います。その際には、会社の就業規則や休職規程の確認があるので、その医師に説明しておきましょう。そして、サンプルを例に依頼書の返信先や内容を詰めておきましょう。
② ご本人と会う機会に、体調の回復が確認されると共に、“そろそろ復帰したい”との希望が述べられる場合が出てきます。その場合に備えて、主治医に対して、「依頼書」を出してもらうようご本人に依頼しておいて下さい。「依頼書」はご本人の手から主治医に手渡してもらう事で、ご本人は同意しているとの外形を与える事が可能ですが、念のため本人に同意したとの記名欄を設けることも考慮可能です。
③ 「依頼書」送付をご本人に依頼する場合には、返信用切手が貼付され、返信先の記載がある会社封筒を手渡してください。そしてその用意された封筒を使って返送してもらうよう主治医にお願いするようご本人に伝えてください。主治医は本当に繁忙です。外来診察15分枠に、なんと6人も8人も、予約が入っているクリニックさえあります。いちいち主治医に、返送先の医師の連絡先を書かせるような状況を作り出してごらんなさい。返送は後回しにされてしまいます。中には紛失する医師さえも複数も確認されています。それらを防止出来るだけではありません。主治医に、その社員を復職させて欲しいという会社側の要望をより強く意識してもらう事が可能になります。更には“正しい事を正しくする”という見上げた姿勢がある会社だという事を、対外的に説明出来るにいたれます。
④ 正式な職場復帰決定の前に、『試し出勤制度』を設ける事が「手引き」では勧められています。
社内に保健師がいたり、慣れた産業医がいたり、もしくはいなくても、復職支援に長けた医師の支援を得る会社であれば、正式復帰前に2週間程度の「試し出勤」制度を導入しても良いと考えます。この「試し出勤」とは、本当に復帰可能なのかを判断するために、休職中の本人に、会社まで始業時刻に間に合うように来てもらい、そして終業時刻になるまで滞在してもらい、終業時刻になったら帰ってもらう制度です。休職中なので、労務の提供を受ける事は出来ません。では、どのような作業を提供したら良いのでしょうか。
例としては以下になります。
◎パスワードが切れたPCのセットアップをしてもらう。
◎仕事に関係ある業界紙や関連雑誌を読んでもらう。
◎業界紙や関連雑誌をA4用紙2枚までに簡単にまとめてもらう。
◎業務に関係する資格を取得できるよう、勉強してもらう。
以上のような“肩慣らし”に取り組んでもらうことになります。ただ、その“肩慣らし”とはいえ、本人が滞在できる場所を用意する必要があります。そして身分は休職中である以上、体調が崩れたら、会社側にもある程度の責任が生じます。その責任を担保するために「試し出勤」中には、保健師や産業医に定期的に面談してもらい、体調が崩れる前に中止指示を出してもらうような支援が必要になります。
更には「試し出勤」中の身分は休業中にあたるため、つまりは勤務ではないので、特別な福利厚生制度が用意されていない以上給与支払いは発生しませんし、健康保険組合から支給される傷病手当金以外の給与や交通費は支給されず、更には通勤途上災害や体調悪化といった状況が生じた場合でも、労働災害保険の適用は受けられません。このように、「試し出勤」は会社側にも本人側にも負担が生じます。でも、復帰可能な体力が戻り、体調が安定しているのか確認するには良い制度です。
⑤ 「手引き」で規定がある「試し出勤制度」には、「試し出勤」、「出勤」、「通勤訓練」の説明があります。
著者は「職場復帰支援プログラム」として、「慣らし出社」を設ける事をお勧めします。この「慣らし出社」とは、正式に職場復帰が決まった後、2週間程度は午前中半日勤務から開始し、体調悪化がなければ6時間勤務を2週間経た後、8時間の定時勤務に戻すという方法です。これだと、労働災害保険の適用になりますし、勤務した分の給与と交通費は受け取る事が出来ます。休職中に支払われていた傷病手当金よりは当初の受取額は少なくなりますが、仕事から受けるストレスを段階的に受け止めるという、それより大切な心の準備が出来るので、復職出来る可能性が高まります。
TIPS 模擬出勤や通勤訓練と、それらを行う意義とは
①模擬出勤
勤務時間と同様の時間帯に、リワーク施設で用意された特別な作業環境や図書館にて、仕事に関連がある軽作業を試みてみたり、業務に関係する資格取得に向けた勉強を行ったりして仕事に戻れるような準備をする方法。
②通勤訓練
最終的には、自宅から職場までの通勤経路を、気分不快になることなく移動し、その職場付近にある図書館を対象に、「模擬出勤」してもらう。勤務時間分、体調を崩すことなく滞在できることを確認したあと帰宅してもらう方法。
最初は自宅最寄りにある図書館への通所を目標としてもらう。かつ、滞在時間は1時間から。
1~2週間単位で滞在時間を延伸し、8時間滞在できるようになったら、職場に近い図書館に移って同じように環境や雰囲気に慣れてもらう。
この頃の状態:復職準備期 ③
所要期間:4~8週間(累計 15~25週間 約4~6か月)
手引き:『<第2ステップ>主治医による職場復帰可能の判断』及び『<第3ステップ>職場復帰可否の判断及び職場復帰支援プランの作成』が一気に来る
・熟睡感があり、日中の眠気はほとんどない。
・リワーク施設や図書館などを利用した通勤訓練が週5日、続けられる。
・継続して仕事をこなすだけの基礎体力が回復する。
・仕事に必要な判断力や集中力が戻ってくる。
・仕事に関する専門書も集中して読めるようになる。
・長文や簡単な事務文書作成が可能になる。
・趣味のために知人などに連絡し交流を持てる。
・家事をほぼこなせる。
・短文だが、与えられたテーマでの文書作成やメールへの返事が書ける。
・復職に向けての準備も出来るようになる。
・体調を崩した背景や原因についても考えが及ぶようになる。
・趣味を再開したり、気分転換方法を見つけられたりする。
・同居以外の親族を訪問できる(特に配偶者の親族の家)。
・主治医から、復職可能だとの判断と共に、会社と相談するよう提案が出る。
正式な復職まであと一歩の段階まで回復してきました。飛行機が着陸の際に軟着陸できるのは、パイロットの力量が問われるのは当然として、それだけでは足りません。管制塔からの指示や各種計器類からの精確な情報です。ご本人の安定した仕事への復帰には、このようにご本人の休職中に培った体力や自信は当然として、主治医、ご家族や同僚をはじめとした支援者による誘導。そして会社の人事担当者側からの安全面に対する配慮が欠かせません。
会社側からの連絡が遅れたりすると、ご本人は焦ったり、イライラしたりする事があるかもしれません。でもです。晴天の日だと軟着陸しやすいように、会社の方で、仕事に戻りやすいように手配している状況なのかもしれません。着陸を強行し、着陸地点や高度を見誤って墜落しては元も子もありません。
そこで、気もそぞろになっている場合には“復帰する事が目的なのではなく、復帰した後、再発せずに仕事をし続けられる事を目的にしているのだ”と言い聞かせてみてください。
夜明け前が一番寒く、暗いものです。
会社の人事担当者と連絡をとるようにしましょう。その際には、主治医から、復帰出来る状況に至っているとの判断がなされていることと、復職に向けての必要な対応とは何なのかを確認しましょう。
会社の人事担当者と会う際には、これまで実施してきた事を簡単にA4用紙1~2枚でまとめて臨むよう指示してください。図や表を使ったり、時系列的にまとめたりする工夫もありです。
どうしても会社の方と会って話をする時には緊張するものです。緊張するあまり、思い出せずに焦ってしまった時でも、書いた文書を見直したり、図表に対して説明を加えたりすることで、冷静に対応しなおすきっかけが得られます。
これまで記載していた『体調管理表』は、見せる相手はご家族や主治医で済んでいました。鉛筆書きや単語による記載でも済まされてきたでしょう。でも、会う会社側の方々は、“果たして、仕事をし続けられるだけの体調の回復は遂げてきているのだろうか?”という視点で判断を行う方々です。従って、これまで記載してきた『体調管理表』に抜けや漏れがなく、客観的な記載になっているのか吟味し、品質を向上させるよう指示しましょう。
向上できたら、その改訂版の複写を会社側との協議の際には提出するようにしましょう。順調に回復してきている事を客観的に証明出来ます。
会社によっては、「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」を主治医より出してもらうよう指示がある場合や産業医や特別に用意された医師との面談を受けるように指示される場合があります。産業医や特別に用意された医師は、休職者の集中力やその持続性、記憶力など、仕事に復帰した際に必要とされる能力がどの程度回復したのかを確認する立場で臨んでいます。(2)や(3)で用意してもらった文書類、「リワーク」施設で記載指示があった記録や、読んだ雑誌や書籍のまとめを提示すると、“文章に対する読解力と要約力が回復している”という評価を得ることが出来ます。
ご本人と産業医や特別に用意された医師との面談の際に伝えるべき重要な情報は他にもあります。それは服薬内容です。眠気が出るくすりの影響が思いもよらないところで生じてしまうと大きな事故につながる恐れがあるため医師は必ず確認したいと考えている内容です。従って交付された処方内容の説明書やお薬手帳を持参することを、忘れないでください。
ご本人に対して会社側から「通勤訓練」や「試し出勤」するように指示をする場合があります。「通勤訓練」とは、自宅から復帰予定の職場近くまで、実際の通勤経路を移動し、職場付近で一定時間過ごした後帰宅するといういわば予行演習です。「試し出勤」とは、仕事に戻る事が可能なのかの判断を兼ねたリハーサルです。
*「通勤訓練」や「試し出勤」の実施指示が出た時に忘れてはならないことがあります。それは身分的な取扱いです。休職延長での対応なのか、それとも経過観察復帰といった特別な身分が与えられるのか、会社によって様々ですので、実際はどうなのか、忘れずに確認しておきましょう。
会社の人事担当者や産業医、または特別に用意された医師らと協議が終わり、復職前に、どういうことをする必要があるのかの確認が終わったら、それらの結果を忘れずに主治医に報告し、その後の対応を相談するよう支援してください。
★主治医としては「復帰可能」との診断を出しているにもかかわらず、会社側がまだ認めない場合、中には新たに“いついつまで休職延長を要す”といった記載のなされた診断書を改めて発行することや、更には傷病手当金への証明さえしぶる医師がいる現実があります。本来、主治医は患者のために存在する立場なのですが、中には沽券にかかわると曲げない方もいます。そのようになった場合には、もう一度、会社側と相談し、産業医か特別に用意された医師によってこれらの書類への証明をお願いする必要が出てきます。
この頃は、それまでの通院間隔が2週間に一度になっていた場合には、毎週へと変更するよう依頼してもらいましょう。なぜなら、復帰時期前後は体調を崩しやすい時期だからです。また、通院する曜日や時間帯は復帰後の仕事の日程と重ならないものなのか確認しておきましょう。
① ご本人を復職させてよいのか、つまりは会社に戻って仕事を開始しても体調が崩れなくて済むのかの判断ですが、必要な情報は多数に及びます。それらの収集と、それらを通じて様々な角度から状況を総合的に分析する必要があります。その結果として的確な評価が得られるようになります。
② 「手引き」で示された収集すべき情報は次の通りです。
(ア)労働者の職場復帰に対する意思の確認
(イ)産業医等による主治医からの意見収集
(ウ)労働者の状態等の評価
(エ)職場環境等の評価
(オ)その他
③ 次に、「手引き」で示された収集すべき情報の仔細を説明します。
(ア)~(ウ)は、これまで記載した内容で対応出来ていることを理解できるでしょう。そこで(エ)と(オ)を説明します。
④ 「(エ)職場環境等の評価」には、「業務及び職場との適合性、作業環境や作業環境管理に関する評価、職場側による支援準備状況」とあります。簡単に説明すると、病み上がりの方が無理なく仕事に戻れるような支援状況が、会社内にあるのかの確認と、ご本人に戻ってもらうために会社側が提供できる具体的な支援内容になります。
支援状況とは、復帰予定先に支援する上司や同僚がいるのか、産業医や復職支援に長けた医師の支援を提供する事も含まれます。支援体制に不安があった場合でも、『支援者編(会社の同僚、上司、そしてご家族向け)』と当書にてある程度の「模擬出勤」はこなしてきていますので、「通勤訓練」や「慣らし出社」、そして就労支援(就業上の配慮)として以下を検討してみてはいかがでしょうか。
就労支援例
・短時間勤務(no work, no payの原則より、利用期間中は控除される)
・元々営業職であれば、外回りからの復帰ではなく、営業用資料作成といった後方支援業務からの復帰のように、平易な補助的業務に復帰当初は従事してもらう
・残業禁止(長くても3か月)、残業制限
・交代制勤務ではなく日勤帯での勤務
・出張制限
・特別な健康診断が必要になる危険作業や高所作業、臨機応変な対応が求められる窓口や苦情処理業務以外の業務への配置
・フレックス制度の制限(朝早くから出勤する分には、日常生活リズムの安定化にプラスになるのですが、8時以降の起床でも間に合うような使い方だと、折角確立した自律神経リズムに調律出来た日常生活リズムが崩れてしまいます)
・転勤への配慮(単身赴任であれば、家族と過ごせるようにする)
・座席の配慮(隣には、仲が良い同僚を配置)
・通院時間の確保。平日だと終業時刻に職場を出ても、通院時間に間に合わない場合、会社が休日である土曜日に通う他ありません。土曜日の精神科外来の混雑ぶりは驚愕です。当書にある事を丹念に実行したとしても、更には「リワーク」施設を利用したとしても、職場復帰後の再発の可能性をゼロにする事は出来ません。そのような大切な期間、土曜日の通院は避けたいところです。従って、平日の勤務時間のうち、早い時間帯か遅い時間帯に通える支援があれば、より主治医からの支援を得やすくなります。通院に要した時間を、他の勤務日で補うような、支援的フレックス制度の適用は推奨出来る方法です。
*他にも会社の状況に応じて考案・検討可能ですので、産業医や復職支援に長けた医師とも相談してみてください。
⑤ 「手引き」での「(オ)その他」に記載された事項には、「その他必要事項、治療に関する問題点、本人の行動特性、家族の支援状況や、職場復帰の阻害要因等」とあります。専門的で難しい内容が多くあります。従って、この頃は当人と会うだけではなく、改めてご家族と会って情報交流を深めたり、主治医の元に「同伴通院」しなおしたりして、本人にとってより円滑な復職支援は何なのか、以下の表にまとめつつ検討を重ねてみてください。
⑥ 次の『職場復帰支援プラン作成時の検討内容』を参考に、「職場復帰支援プラン」を検討かつ作成してください。
「職場復帰支援プラン」とは、「手引き」では、以下の項目で構成されています。
(ア)職場復帰日
(イ)管理監督者による就業上の配慮
(ウ)人事労務上の対応等
(エ)産業医等による医学的見地からみた意見
(オ)フォローアップ
(カ)その他
⑦ 「(ア)職場復帰日」は、必ずしも主治医の診断書に書いてある通りにする必要はありません。受け入れる現場の都合もあるでしょう。産業医や復職支援に長けた医師の意見もあるでしょう。
⑧ 「(イ)管理監督者による就業上の配慮」は、⑤の「就労支援例」に書いた内容になります。
⑨ 「(ウ)人事労務上の対応等」は、復帰先の仕事内容の変更や異動の検討、交代制勤務従事者であれば、日勤帯のみへの配属といった対応になります。なお、基本的には以前に所属していた部署への復帰が望ましいです。理由は、部署異動には、一見すると良い面ばかりがあるように思われがちです。しかしです。部署を異動するという事は、慣れない仕事をこなす必要が出てくるかもしれません。新しい人間関係を作る必要性もあります。通勤経路が変わる可能性もあるでしょう。受け入れ側も休職に至った背景が判らず、復帰後の短時間勤務や残業制限、簡単な補助的業務からの復帰といった適切な支援を提供し辛くなります。
むろん、違う部署への異動が検討されるべき例外的な場合が2つあります。
1つ目:職場でのハラスメントや過重労働など、うつ病発症の原因が明らかに職場側にあると考えられる場合。
2つ目:仕事内容や求めるスキルが、当人の能力とかけ離れている場合。
これらの場合には、再発防止の一つの手段になります。むろん、あくまで一つでしかありません。総合的な支援方法を検討しましょう。
⑩ 「(エ)産業医等による医学的見地からみた意見」とは、病気を治すのが主たる仕事である主治医からの意見だけではなく、職場で病気が発生しないようにするのが役目である産業医や、更には第三者という立場から、働ける程度まで心身の状況が改善したのかという機能性の評価まで可能な、復職支援に長けた医師の意見を得る事を示します。病気やけがが治ったかどうかの次元で判断するのが主治医の仕事です。しかしながら、その次元では、仕事を継続的にこなし続けられるのかという次元の判断には至っていないので限界があります。従って主治医が「復職可能」との診断書を出してきたとしても、産業医または復職支援に長けた医師との判断では“時期尚早”という判断になるケースが出てきます。
このような場合ですが、労務法律上は主治医より産業医の診断が優先されます(「カントラ事件」大阪高判平成14.6.19)。
なお、産業医または復職支援に長けた医師からの意見は、以下の「職場復帰に関する意見書」を通じて得ておいてください。
⑪ 「(オ)フォローアップ」 とは、職場復帰後の本人に対する支援全般ですが、誰がどれくらいの頻度で状況を、何を通じて確認し、どうなったら残業制限等を緩和して良いのか、個別具体的に決める事になります。
病状が一人ひとり違う中ですが、リワーク施設や復職支援を専門にしている医師の中には、職場の同僚や上司が、簡単に評価できるチェックリストを用意しているところもあるので、相談されてみてください。
⑫ 「(カ)その他」は、休職者自らが責任を持って主体的に実施する事項となっています。例えば試し出勤制度や「リワーク」制度の利用を行うのかどうか、主体的に本人に判断してもらう内容が挙げられます。
⑬ 以上で議論を尽くしたら、以下に記載する「職場復帰支援に関する面談記録票」を用いて、状況を整理しておきましょう。
⑭ ご本人を受け入れる職場の同僚に対して、ご本人はどういう病状で、どのような支援を復帰後に提供したら良いのかの説明を行いましょう。
基本は以下になります。
イ:所定労働時間の勤務は可能
ロ:期待する役目の半分はこなせる
ハ:復帰当初の仕事量は制限があるが、腫物に触るかのような特別扱いは不要
ニ:周囲を必要以上に困らせる事はない
TIPS どうして運動がメンタル疾患の治療に良い効果を出すの
自らの意志で、自らに辛いことを課しながら、困難を克服していくことで、筋肉の成長だけではなく克己心という精神面の鍛錬にもなるだけではなく、ストレス耐性をも高める効果があることが、科学的にも正しい事が証明されてきています。例えば有酸素運動には、細胞一つひとつからの活性を高め、同じ負担をかけても疲れにくくなるという耐性向上作用があります。その理由は細胞内にある原動機であるミトコンドリアの活性を高められるからです。また、運動にはうつ病発生予防や治療効果がある事も検証されてきています。トレーニングの成果は所要時間や回数など数値に明確に現れ、そして「やればできる」という自信を深めやすい身近な手段であるため、当書でもリワーク内に運動要素については記載を詳しくしました。その背景には筋肉由来内分泌因子(マイオカイン)が精神機能に好影響を与え、脳由来神経栄養因子(BDNF)を増加させる作用があるからです。実際に7年の運動継続群にて8割ものうつ病発症予防効果があるという研究成果も出ています。更には、新潟県見附市での取り組みでは、運動プログラム実施群は未実施群に比べ一人あたりの年間医療費が10万円も少なくて済んでいたという結果が確認されています。
この頃の状態:復職可能期~復職期
所要期間:会社の状況次第。その後は復帰後3か月目程度まで
手引き:『<第4ステップ>最終的な職場復帰の決定』と『<第5ステップ>職場復帰後のフォローアップ』
・週5日、フルタイム勤務が安定して実施できるだけの体力と集中力の持続力が戻ってくる。
・会社側の考案した「職場復帰支援プラン」に則り、会社と調整し準備できる。
・復職が近づくと、不安が大きくなり、焦燥感や不眠といった症状がぶり返す事がある。
① 金曜日に帰った後、気が抜けて繁華街に繰り出したり、酒をあおりたくなる気持ちが出るかもしれません。これらはご法度です。規則正しく健康的な体調や生活リズムを取り戻すのに、どれだけの日時を要したでしょうか。でも崩すのは簡単です。
② 土曜には疲れ切っているため、寝込みたい気持ちが出るでしょう。土曜日なら昼まで寝てしまう事も、復職後1か月目程度までは構いません。でも、土曜日の深夜、夜更かしする事と、日曜の朝まで寝坊する事はご法度です。特に6時までの起床が8時と、2時間の時差が生じると大変です。時差ボケでも1日あたり最高30分しか調整が出来ません。2時間もの時差は120分割る30分で4日もかかります。つまりは翌月曜日から、自律神経というリズムがずれたままで仕事を始めないといけなくなります。“ブルーマンデー”といわれるのは、これが背景にある場合が少なくありません。
③ 日曜日は早寝早起きを心掛けさせましょう。そして日中は積極的に活動させましょう。「アクティブレスト(積極的休息法)」といいますが、積極的な活動の反動で、寝付きはよくなり、熟睡効果が得られます。1週間の疲れも、日曜の積極的な活動にて解消できるようになります。
再発のサインを真っ先に確認できるのはご家族をはじめとした支援者です。なぜなら、主治医は週に一度しかご本人と会う機会はありません(中には2週に一度の頻度でしか会ってくれない場合もあります)。同僚や上司になると、ご本人が通勤してくるか、自宅を訪問しない限り会うことは出来ません。更には毎日の心身の状況を確認するわけにはいきません。最も身近でご本人の状態の変化に気が付くことができるのはご家族になるので、この頃は、“もう大丈夫だ”と油断せずに以下で述べる再発サインの確認を忘れずに行ってください。
イ:【身体面に出るサイン】
まず、頭痛、腹痛、腰痛、めまい、動悸、微熱などの体の不調で現れます。なぜ体の不調で出やすいかというと、抗うつ薬や睡眠薬といった心の症状に対する内服はなされている場合が多いからです。なお、ストレスを感じたり、緊張を強いられる状況が続くと高血圧になります。また、体の表面を走行している血管が収縮し、皮膚の血流が悪くなるため、顔色が悪くなるだけではなく、吹き出物が出たり、皮膚に粉が吹いてきたり、乾燥肌になったり、更にはアトピー性皮膚炎になる場合もあります。
ロ:【精神面に出るサイン】
イライラしたり、そわそわしたり、些細なことで怒ったりといった感情が不安定になります。人によっては、突然、不安な気持ちに襲われたり、悲しい気持ちになってしまい泣き出すこともあります。
ハ:【行動面に出るサイン】
これまで出来ていたことが出来なくなります。起床、食事摂取、電話応対、電子メールへの返事…。集中力低下による物忘れの増加、不安や焦燥感が募った場合には寝付きが悪くなったり、寝入ったはいいが、すぐ目が覚めてしまって悶々とし、ますます辛くなったり。人によっては、禁止されている飲酒や喫煙本数が増えたりといった生活習慣の変化として現れる場合もあります。
上記のような、それまでとは違う変化のサインが確認されたら、それらを主治医や会社の人事担当者にも伝え、協調してそれぞれが担える支援を考案すると共に提供しあうようにしましょう。
飛行機が着陸する際、衝撃を受け機体が揺れたり滑ったりするのは避けられません。
このように、ある程度の衝撃を受ける事は覚悟する気持ちを持ってもらうと共に、これまで、『生活リズム立て直し法』や『社会機能回復訓練』等にて培った事を信じ、体調に悪影響が出たとしても、ずるずると悪化するに任せて悪化させ続けないよう、ストレスから逃げないよう励ますことが必要な支援になります。会社に行くのが辛くなった場合、丸1日休むのではなく、遅刻で済ませるとか、2日続けて休むのではなく、1日で済むように、主治医に通って気持ちの整理をするといった努力を加えてもらうことになります。
視界がゼロという事ではなく、状況を見渡してもらうと、“たいしたことない”と冷静さを取り戻せるものです。そのためにも『簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)』(https://www.cbtjp.net/qidsj/)を実施し続けているでしょうから、改めて実施してもらい、以前と比べて心理状況は本当に悪くなっているのか、現状を把握してもらうことで、自身を落ち着かせるきっかけにしてもらってください。
当たり前(A)の事を ぼんやり(B)せず こつこつとちゃんとやる(C) という凡事徹底の大切さを表わしたフレーズがあるように、これまで出来ていたことは中断させないように確認しましょう。6時までの起床、7時までの朝食摂取に20時までの夕食摂取。更には21時以降にテレビやPC画面、スマフォ画面を見るのは避け続けましょう(ブルーライトによる寝付き妨害作用は、太古の昔から本能に刻み込まれた生理作用ですので体調が良くなった段階でこそ、大いに生じます)。また、服薬が必要であれば、その継続も大切な要素です。
これら基本や基盤があってこそ、仕事という応用が載せられるようになるものです。
「職場復帰支援プラン」によって短時間勤務や残業制限を受けている場合には、それらをきちんと守ってもらうようにしましょう。そして日々、余力を残すということを意識してもらいましょう。仕事はじめの月曜だけ乗り越えられたらよいわけではありません。月曜から金曜にかけて、通勤し続ける必要があります。月曜よりは火曜、火曜よりは水曜と、日々、疲れは溜まっていきます。溜まる疲労が、休まないと回復しないレベルまで蓄積するに至ったら、明くる日は欠勤を余儀なくされてしまいます。金曜になっても休まなくても済むレベルまで、体力を温存するには、どうしたら良いのか、日々、意識してもらいましょう。
1日を5回繰り返して土日の2日休むと1週間になります。この1週間を52回繰り返すと1年になります。1年、無事で過ごすためには、1週間・1週間という単位が非常に大切になります。そのためには、体調が崩れたら、当書の、どこまで崩れたのか、ご本人と共に確認すると共に、「レジリエンス」という回復力や復元力が戻ってきているのだと信じ直してもらい、立て直しを図ってもらいましょう。
☆<補足> 休職中からの体力向上がなぜ大切なのか、ここまで読まれた読者の皆様、お分かりいただけたことでしょう。体力を高めておけば、あり余る余力に、幅広い安全マージンが獲得されているため、復帰後の安心感に違いが出ます。休職中、無理をする必要はまったくありませんが、無理なく継続するためには、休職中からも、“為すべきを為す!”必要があるということになります。
姿勢制御が間に合わないという場合には、日曜日はだらだらと遅くまで寝続けないようにさせてください。
早起き→積極的な外出による身体疲労→早寝を今一度、心掛けさせるということです。「アクティブレスト」より、体を疲れさせると寝付きは、自然に思ったよりも深くなるものです。経験ありますよね。体が疲れ切っている時には、眠ろうと思わなくても寝入ってしまった経験が。深い睡眠を確保することが出来たら出来ただけ、疲れは多く解消できるものです。従って、日曜まで遅寝していると、月曜以降、ずれた自律神経リズムも相まって、体調悪化が一気に進展しかねなくなりますのでご注意を。
この頃は、以下のような話をご本人にしてください。
休んでいた間の遅れを挽回したく、また、周囲にかけた迷惑を取り戻したく、無理を重ねる方が出る場合があります。でも過去は変えようがありません。カーブで車が加速したら、下手したらガードレールを突き破って転落してしまいます。人生の変化点においても同じです。時間をかけて、ゆっくりで構わないので、望ましい方向に人生の針路を転回させていきましょう。直線コースが来るまでは慎重に対応しましょう。スピードアップは直線コースに入ってからでよいのです。
① 「リワーク」施設の中には、復帰後も通えるプログラムがあるところがあります。迷わず続けて利用しましょう。
② 「リワーク」施設を使っていなかった場合でも、再発防止プログラムとして、「認知行動療法」に基づいた再発防止訓練を学べる場が用意されています。このプログラムを是非とも活用するよう提案しましょう。うつ病になりやすい方には、実のところ、うつになりやすいクセがある場合が多くあります。そのクセを修正しておけば、うつ病になりにくくなれるのです。
復帰後も無事に仕事し続けられる時間が1か月も、2か月も続いた場合、残業したくなる思いが募る場合がでるでしょう。中には、“同僚は遅くまで残っているのに、自分だけ早く帰るのは申し訳ない”と、後ろ髪を引かれる思いをする方もいます。また、“生活残業”と言われるように、残業代目的で残業をしたくなる場合もあるでしょう。では、どういう状態になったら残業が可能なのでしょうか。それは以下になります。
イ:8時間分の仕事に従事したとしても、6時間で終えられる程の余力を残す事が可能であり、上長もそれを認めている。
ロ:土日に生活リズムがずれない。逆に、余暇に趣味や特技を深める事で、上手にリフレッシュしえる。
ハ:食事をとる時刻や睡眠時間をはじめとした日常生活リズムが崩れていない。
ニ:主治医も許可を出している。
ホ:産業医や復職支援に長けた医師に確認しても、主治医と同じ意見が出る。
だいたい仕事に戻ったとしても最低で3か月程度。平均すると6か月は残業を避けた方が良いとされています。実のところ体も心も想像以上に疲れているものです。再発させずに、仕事をし続けられるという事が目的のはず。そのためにはあわてずに、これまで通りに為すべきを為す事をこころがけてもらいましょう。
① 「職場復帰支援プラン」に則った支援が提供出来ているのかの確認を行いましょう。
② ご本人の受け入れ先の管理者に日頃から確認してもらう表としては以下が一例です。
ここでの医師意見は、主治医ではなく産業医や復職に長けた医師を示します。
本人より“残業を早くこなしたい”という要望が根拠なく出てきた場合には、この結果をご家族や主治医に改めて相談する事も検討ください。何しろ主治医は週に一度の間隔でしか会う事はできませんので。
③ 上長より良くない結果が届く時には産業医や復職支援に長けた医師と頻回に連絡をとり、当人と面談してもらい、状況を確認してもらいましょう。
当書をご購入いただいた方に、当書で紹介したメンタル不調対応用の各種書類のひな形がそのまま、電子ファイル形式にてダウンロードできます。PDFではありませんので、すぐ利用可能です。
合同会社パラゴン(http://pro-sangyoui.com/) のトップページ左側にある「うつ予防3法 虎の巻購入者特典ページ」(http://pro-sangyoui.com/side/toranomaki)のバナーをクリックしてください。
または、下のQRコードから直接、確認が可能です。
暗証番号
tora3
当書は日頃、メンタル不調の予防方法に接する機会がない方々のために、予防方法から休職者に対する職場への早期復帰支援方法を紹介したくまとめたものです。その背景には「企業物価指数」では1991年11月以降、「GDPデフレーター」では1994年第4半期以降、「消費者物価指数」では1998年9月以降、統計指標上確認されているデフレ経済下のこの20数年間、企業はサバイバルをかけ、「成果主義」の名の下に労働者数を削減してきました。雇用調整として正社員の契約社員や派遣社員への代替化を推進してきました。平成24年度の厚生労働省「労働者健康状況調査」では、強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は60.9%に達しました。中には安全文化の伝承をも損なわせてしまったのでしょう。拡大する生産活動に対応出来ない現実が全国で続いている結果なのか、2014年の全産業における死傷者数と死亡者数は共に2013年より増加が確認されています。そのような状況下、休職を余儀なくされ、そして復職を希望する方々と接すると、そのほとんどの方々が
“もっと主治医から説明があったら”
“丁寧な指示が主治医からあったら”
“いくら短い診察時間内であっても理解したのか確認してもらいたかった”
というやり場のなかった希望を、こちらとの面談時間に寄せてきました。15分枠の中で6人も8人も患者様の対応を余儀なくされる精神科外来と違い、1時間も2時間も面談して構わないとする当方の契約先とでは、状況が異なるのは確かです。そこで契約外企業の労働者においても、上記のようなやるせない不全感を解消出来たらと、当書には予防方法と復職に向けた取り組みとして大切な要素を、以下の中核思想にて絞り込んだ上で織り込みました。
☆きちんとした科学的根拠がある
☆読みやすくわかりやすく、簡単に実行出来る
☆実際に多くの方が再発なく仕事に復帰出来ているという実績の裏打ちがある
例えば、朝ごはんを食べていなかったのなら、食べる。食べていても菓子パンや健康補助食品だったら和食に変え、かつ、それを続けることで体調は好転していきます。同様に、これまで、どちらかというと惰性のように繰り返されていた、望ましくない時間の積み重ねで作られた望ましくない人生と決別するためには、自らの将来は“必ずや好転する”と信じ、主体的かつ能動的に、今、より良い選択をし続けると良いのではないでしょうか。その良い選択を、たった「今」から開始するだけで、未来に良い変化が生じます。その良い変化が蓄積されると良い人生が形作られていきます。すなわち“Where there is a way, there is a way”よろしく、今という現在、それまでの良くない選択ではなく、より良い選択を選考し続けると、自らの力で、自らを、自らの希望する、更に良い未来に導くことが可能になります。
数式化すると以下です。
∫(行為)dt=習慣
∫(習慣)dt=行動
∫(行動)dt=人生
言葉で著わすと以下です。
変化是進化
不変非普遍
今回、ストレスを原因とするメンタル不調に“ならない”、“出さない”、“こじらせない”、以下『予防3法』の実践方法を紹介させてもらいました。
第1の方法 “ならない”:メンタル不調にならなくて済む予防方法
第2の方法 “出さない”:同僚・家族・上司等の支援者が行う支援方法
第3の方法 “こじらせない”:メンタル不調にて休職を余儀なくされた方が、早くかつ確実に職場に復帰する方法
本書を読まれた方々やその関係者が、この3法を通じてより良い未来を具現化し、幸福を享受出来ることになると信じております。
元々は世界的経営コンサルタント会社にて“コンサルタントのコンサルタント”として携わる中編成した「ストレス・マネジメント&ヘルスケア体系」が基盤になっています。 これまで医師向けの専門書と人事労務管理者に向けた専門誌で紹介したところ好評かつ、LinkedInで知遇を得た方より「電子書籍化してみたら?」との提案をもらったので、こうして刊行の運びとなりました。
何しろこの体系の成果により、多くの組織における人財管理や労務・健康管理水準は飛躍的に向上しました。うつ病による休職者ゼロを達成した東証一部上場企業も出たほどでした。
電子書籍という特質上、限界としては印刷された図書と違い他への貸与や複製が出来ない点が挙げられます。購入者が500名を超えたら印刷物として出版できるだけの原資が形成可能です。“参考になった”、“うつ病による休職者を少なくしたい!”、“自死者発生を防止したい!”と考えていらっしゃる方は、知己に積極的にご紹介をお願いします。
参考:
宮岡等. 内科医のための精神症状の見方と対応, 医学書院. 1995
小田上公法, 小林祐一. コンサルタントが知っておくべき職場のメンタルヘルス対策の知識. 安全衛生コンサルタント. 2014年1月号
櫻澤博文. 精神疾患発生予防と,発生後の復元力を高める方法について. 研究者・技術者のうつ病対策,(株)技術情報協会 2013
Designed by ELECTRIC DOC. うつ状態のステージ分類シート
鈴木庄亮. 生活と健康―人と仲良く、体はまめに、心は楽しませて. 産業医学ジャーナル. 2007, Vol.30, No.3, p.61-63
鈴木亜紀子, 赤松利恵. 職場における食環境と勤労者の食生活. 第264回日本産業衛生学会関東地方会例会 シンポジウム. 2014年6月28日
A Suzuki,H Sakurazawa,T Fujita,R Akamatsu.Overeating at dinner time among Japanese workers: Is overeating related to stress response and late dinner times? Appetite 2016, Vol.101, p.8-14
産官学で健康長寿と社会保障費抑制の二兎を追う スマートウェルネスコミュニティ協議会が発足. 日本公衆衛生学雑誌. 2015年11月15日号 情報ボックス
当冊子は『先見労務管理』誌(労働調査会発行)「“うつ”からの職場復帰支援ナビ」 2015年4月25日号から同11月25日号まで全8回連載された記事を参考に、平易かつ最新の編集を加えたものである。
【著者プロフィール】
1996年 産業医科大学医学部卒業後、亀田総合病院にて臨床研修修了。
2001年 産業医科大学 卒後修練「産業保健研修コース」修了。
その後京都大学大学院に働きながら通学し2003年までに社会健康医学修士号や医学博士号を取得。
2005年までに法科大学院に通学しながら世界的経営コンサルタント企業にて『コンサルタントのコンサルタント』として“ストレス・マネジメント”体系を錬成。
2007年 さくらざわ労働衛生コンサルタント設立。
企業や事業所にて労務・健康管理の質的向上方法として展開中。
2012年 オリンピック金メダリストの健康管理支援開始。
2013年 合同会社パラゴン設立
2015年 東証一部企業のBtoB部門に対しコーチングスキルを踏まえての営業力向上支援開始。
2016年 『先見労務管理』誌に「これで安心!ストレスチェックの実施実務」掲載中。現在に至る。
[保有資格]
・医師免許(医籍第383534)
・労働衛生コンサルタント<労働安全衛生マネジメントシステム監査員、労働安全衛生マネジメントシステム(担当者)研修修了>
・日本産業衛生学認定専門医、同指導医
・産業医科大学認定 メンタルヘルスエキスパート産業医
・日本医師会認定健康スポーツ医
・産業医科大学産業医学ディプロマ
・社会健康医学修士
・博士(医学)
・簿記3級
・神奈川県スキー連盟認定スキー指導員
[役職]
・日本産業衛生学会評議員
・神奈川県スキー指導員会会員
・Journal of Psychiatry reviewer
・Editorial Board Member of journal “Occupational Medicine and Health Affairs”
・平成27年度労災疾病臨床研究事業「職場におけるメンタルヘルス不調者の事例性に着目した支援方策に関する研究」研究協力員
・平成27年度労災疾病臨床研究事業「労働者の治療過程における、主治医と産業医等の連携強化の方策とその効果に関する調査研究」研究協力員
ストレスチェック実施後の対策はこれ! うつ予防3法 虎の巻
2016年5月13日 初版発行
ISBN978-4-908693-05-2 C0006
著 者 櫻澤博文
©2016 Hirofumi SAKURAZAWA,MD,MPH,PhD
発行所 合同会社パラゴン
〒107-0062 東京都港区南青山5-17-2 シドニービル502
URL http://pro-sangyoui.com
編集・校正・編纂
ぎょうせいデジタル株式会社
〒190-0012 東京都立川市曙町1-25-12
TEL 042-522-3176
タチヨミ版はここまでとなります。
2023年8月12日 発行 初版
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