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モジオロジー

喪字男

シュッシュッ出版



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 目 次

春はだいたい留守にしてます

夏はいろいろ思い出しがち

秋になったらどいてください

冬にバレたような記憶

おまけ的新年

この本を誰にも捧げません

春はだいたい留守にしてます

春一番次は裁判所で会はう


土器の出る小学校を卒業す


自動車の中は余寒のまま走る


風船は昨日の妻の息で満つ


豆撒きの鬼が幼女に触れたがる


濡れた手で電気に触るる雛の客


雛壇の所定の位置にをさまらず


梅咲いてひとのパジャマを着てをりぬ


たまに揉む乳房も混じり花の宴


一本の桜が全部知つてゐる


夜桜が下剤のやうに効いてゐる


ノートに書いて全部忘れる春の山


てふてふと扶養家族の欄に書く


万引きの老人とゐる春の暮


春眠や尻の財布のねじれたる


なんとなく蝶の種類のわかる距離


希望者を集めて蝶にしてしまふ


FAXで送る百枚風光る


亀が鳴くまでは殴るのをやめない


入園児引くに引けなくなつてをり


入金予定のセルに朧を貼りつけし


バタフライガーデンだけが残さるる


種袋終着駅へ持ち込まる


春立つやジャングルジムの中に糞


顰蹙を買つてしまへばあたたかし


咲く前の桜を皿に置かれたり


肛門のやうなサラミを食ふ遅春


あやまつておたまじやくしを服用す


モーテルの駐車場よりつばくらめ


鷹鳩と化してかすかべ防衛隊


やさしさは時間によつてチューリップ


赤ちやんに空耳のある四月かな


発泡スチロール曲がらず折れ暮春

夏はいろいろ思い出しがち

はつなつのふつつかものになりすます


あぢさゐに囲まれてゐる母子家庭


ねむられずあさぎまだらになりかかる


おもひでに網戸の穴を足しておく


対UFO秘密兵器として水母


たらちねの水母に会ひに来てみたり


鬱病は神輿を担いでれば治る


折紙のやうなる祖母の三尺寝


生で観るどつき漫才敗戦日


十代の脚はすとんと涼しかり


白南風に禁止事項のうらがへる


ふるさとは素足の母のゐるところ


起きてから理由を探す昼寝かな


密室のまだあたたかき竹夫人


さくらんぼ地球最後の日も死にたい


炎昼の拳で潰す段ボール


起きてまづ金魚の水のあとまはし


むぎのあき給湯室に暗躍す


ガソリンとトマトジュースの揺れにけり


平和とはおほむらさきに逢へること


昼寝用安定剤をわけておく


鍵穴を覆ふががんぼそれごと挿す


てんとむし裏のごちやごちやしてをりぬ


身を守るための仕組みの暑さかな


夏期休業S字フックにぶらさがる


ぎりぎりまでひつぱつてきし扇風機


ねえさんのラムネ百本抜く覚悟


かなぶんの維新の会にぶつかりぬ


デパスより落ち着くものに蚊遣香


輪ゴムごと紫蘇を刻みし人と寝る


八月の児童代表濡れてをり


冷房をすぐ消す人が施設長


短夜をもつと短くする薬


もつたいないほどの勃起や夏の雲


ひつぱつて輪ゴム千切れる土用入


蝉取りに出かけし家のルンバかな


とびうをや愛といふ字は混み合へり


テラスより指鉄砲に狙われし


まぶしきはサイハイストッキング首夏


トイレにも団扇の置いてあり実家

秋になったらどいてください

蜻蛉が吾子をさびしくしてしまふ


一面のとんぼの中のありがたう


隙間よりとんぼの羽の届きけり


けだものとしては鹿より目上なる


長き夜のダース・ベイダー卿の息


コピー機にひかり溢るる雨月かな


ステレオの中の空洞小鳥来る


ラジカセをガムテで留めて村祭


癖つ毛の先が茸に触れてゐる


月に行く人の知り合ひにはをらず


さはやかに0の並びしローンかな


心臓や天体望遠鏡は冷ゆ


レジ横の饅頭に触れ夜学へと


文旦のトミカタウンを押しつぶす


肛門を引き締め冬の支度とす

花野までゆけるタイプの飲み薬


捕食者は臭ひ少なくして良夜


濡れたままあがりこんだりして良夜


漢字ドリルの分厚く二百十日過ぐ


銀河まで届かざれども指切りす


保育所の窓は低けれ秋のくれ


あの日たしかに虫籠に入れたのに


引き金の湿つてゐたる花野かな


全日のマットに沈む秋思かな

冬にバレたような記憶

生足の交互に出づる毛皮かな


殴られた方が謝るおでん酒


病棟にマグロ解体ショーのデマ


アパートに白骨のある小春かな


おでん食ふための進化と言い切れる


腋毛よりかなしきものにくぢらの目


ともだちにならう蜜柑を剥いてあげる


動かなくなるまで殴る冬の山


かつこいい車に乗つてゐて寒し


靴下でくるむ靴下二月尽


蟹専用食器を持つてゐて家族


目の前でされるピンハネ懐手


ゴルゴダへ続く布団の最深部


想像の汽車が枯野へ着きたがる


こたつ好きゆえに戦闘には不向き


何もかも捨ててコタツを強にして


水洟がアンモナイトに垂れてをり


つけつぱなしの炬燵が意思を持ちはじむ


炬燵から炬燵へ移動倦怠期


全員は入りきらない炬燵かな


炬燵から天井までの空気かな


枯枝とカラーバットで攻めてくる


寒林の中のゆりかご研究所


猟犬のあくびのやうなホストかな


雪女郎被害対策弁護団


スケボーの空中停止春兆す

受付で足の爪切る春隣

おまけ的新年

まだ妻と呼べぬ女の初わらひ


窓ひとつコンロひと口淑気満つ


初夢のアルミサッシにつまづきぬ


初夢に出てきて邪魔をされました


右膝のバンドエイドも年を越す


中折れのままで貫く去年今年

モジオロジー

2024年4月4日 発行 初版

著  者:喪字男
発  行:シュッシュッ出版

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ペラペラでドロドロです。

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