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この本はタチヨミ版です。
◇ 基本用法
名詞用法
〔目的語〕
・ Then she rushed to her room and locked herself in. Since then she has refused to see me.
〈サセックスのバンパイア〉
〔主語〕
・ To revenge crime is important, but to prevent it is more so.
〈誉れ高き依頼人〉
〔補語〕
・ The best way of successfully acting a part is to be it,
〈死にゆく探偵〉
形容詞用法
・ I have a few questions to ask Miss Cushing,
〈ボール箱〉
・ Do you keep plate in the house, or anything to attract burglars?
〈海軍盟約書〉
副詞用法
・ He may have come to murder you.
〈王のダイヤ〉
・ Which key was used to open it?
〈ベリルコロネット〉
その他の副詞用法
・ I was certainly surprised to find you there. 〔感情の理由〕
〈唇のめくれた男〉
・ You must have examined the house very carefully to find a single pellet of paper. 〔判断の根拠〕
〈ウィステリア荘〉
・ It was early in April in the year ’83 that I woke one morning to find Sherlock Holmes standing, fully dressed, 〔結果〕
〈点々の帯〉
不定詞の形は to+動詞の原形( to do ) か 動詞の原形( do )
前置詞のtoも不定詞のtoも元は同じもので、イメージは「⇒ 向かう」。向かうと言っても、対象を見る⇒ これから向かう⇒ 向かっている途上⇒ 向かった地点に到達、とその段階はいろいろです。また、そこに意思を持って「向かう」場合ばかりとも限りません。
まずは中学校のときに習った「ため/べき/こと」を思い出します。
それぞれ、「ため(に)」副詞用法、「べき」形容詞用法、「こと」名詞用法でした。文中で「to do」を見たらこの3つの代表的な意味をまず考えてみるということです。実際、上の例文はこの3つの意味に当てはまります。
名詞用法から扱います。動詞が形を変えて名詞になってるとはどういうことでしょうか? 名詞であれば、文や節のS(主語)、O(目的語)、C(補語)に成ることができます。
一番目の例文では文の目的語に、
Since then she(S) has refused(V) to see me(O).
二番目では主語に、
To revenge crime(S) is(V) important(C), but to prevent it(S) is(V) more so(C).
三番目では補語になっています。
The best way of successfully acting a part(S) is(V) to be it(C)
※ “主語”、“補語”というと一語だけで構成されているみたいで “主語相当句”のように言った方がいいかもわかりませんが、長いのでここでは“主語”と言います。
名詞用法の訳は「~こと」でした。上の例文はそれぞれ、
Since then she has refused to see me.
(それから妻は私に会うことを拒んでいます。)
To revenge crime is important, but to prevent it is more so.
(過去の罪の報いを受けさせることも重要ではありますが、新たな悪事を防ぐことの方がより大事ですのでね。)
The best way of successfully acting a part is to be it,
(何かを演じるには、その何かになってしまうことがいちばんだってことだよ、)
という訳になります。ただし文頭に「~こと」のtoを置く二番目の例のような文は現在では少なくなってきています。「~すること」を文頭に持ってくる代わりに後で出てくるIt is~の形式主語の文で言えばいいし、何より読み進めてみないと「~こと」なのか「~ため(に)」なのかわからないのが不便です。それでかどうかわかりませんが「~すること」のto doを文頭に置くパターンはかなり少なくなってきていますので、文頭に「to do」を見たときは「~ため(に)」の意味と思った方が無難です。
不定詞でできた句(句= 語の集まり、SVなし)が名詞に使われたり形容詞に使われたり副詞に使われる.. ということは文全体をすっきり見るためには「to do」がどの用法なのかを区別できていた方がよいということです。英語のネイティブスピーカーがそんな使い分けを意識して読んでいるとは思いませんが、外国語として英文を読んでいく身としては慣れてから外す自転車の補助輪のようなものとして文法を意識しながら読んでいけばいいでしょう。
この名詞用法は「~すること」の意味を当てればよく、副詞用法のように意味の広がりがないので見つけやすいと言えます。
次に形容詞用法ですが、これの訳は「~べき」。他により自然な「~ため(の)」や「~するような」という訳もありますが、副詞用法の「~ため(に)」の訳とかち合ってややこしいのでここでは「~べき」を充てています。他には「~した」と訳すこともあります。
He was the first man to walk on the moon.「彼は初めて月面を歩いた人間だ。」
形容詞のいちばんの働きは「高い山」のように名詞を修飾する(=説明する)こと。形容詞には他に叙述用法と言われる「This clock is very old.」のような名詞の補語になる使い方もありますが、不定詞の形容詞用法に関しては名詞を修飾する働きを意識するだけで構いません。
さて、この形容詞用法のところで注目してもらいたいのは、これが後置修飾の一つだという点です。後置修飾とは名詞を後ろから説明するやり方、日本語とは逆のやり方になっています。英語の場合もnew, difficultなどの形容詞は日本語のように名詞の前に置くことが多いですが、長い句や節(節= 語の集まり SVあり)はふつうその名詞の後ろにまわして説明していきます。対象が現れないままそれを説明していかないといけない前置修飾の日本語では説明部分があまりに長くなるときは二つに砕いたりする工夫が必要ですが、後置修飾の場合は「学生」とか「机」などとそれが何なのかをすでに表に出している安心感からか、説明部分が長くなっても一気に名詞の後ろに置いたりします。
以下が後置修飾の主なメンツです。
┣ 不定詞(形容詞用法)
┣ 分詞
┣ 関係詞
┣ 前置詞
前置詞は a professor at Oxford Universityのように前置詞でつなげて名詞を修飾する形のこと。分詞、関係詞については後の章で扱います。
一番目の例文ではto ask Miss Cushingが後ろからquestionsという名詞にかかって、
I have a few questions to ask Miss Cushing,
(クッシング婦人に2、3訊きたいことがあるんだけど、)
二番目はto attract burglarsがanythingにかかっています。
Do you keep plate in the house, or anything to attract burglars?
(食器や、他に泥棒の興味を引きそうなものというのはありますか?)
三つ目は副詞用法です。副詞の役目は名詞以外のいろいろな語句を修飾することです。名詞を修飾するものは形容詞と呼ばれますので。
まずは副詞は英語でadverb(ad ~に/verb 動詞)というくらいなので動詞を修飾「ゆっくりしゃべる speak slowly」。それから形容詞を修飾「本当に小さい really small」。副詞も修飾「とてもゆっくり歩く walk very slowly」。文全体を修飾「明らかにあの人は頭がいい。Obviously, he is an intelligent person.」といった働きがあります。あとは『時の副詞』(now, yesterday)や『場所の副詞』(there, abroad)など、どの言葉にかかっているか言いにくいようなものもあります。
5文型のやり方では副詞は文や節の骨組み、つまりS,V,O,Cには成らないので、文の造り、つまり骨格や修飾部分を見分けることに慣れていけば副詞用法と名詞用法を混同するようなことはないはずです。
副詞用法のtoはいろいろな意味を持っていますが、一番手としては『目的』を表す「~ために」。
He may have come to murder you.
(そいつは君を殺すために来たかも知れないんだぞ。)
Which key was used to open it?
(それを開けるために使われたキーはどれです?)
『目的』以外の使われ方では..
I was certainly surprised to find you there.
(確かにあの場所で君を見たときはびっくりしたけどな。)
〔感情の理由〕
You must have examined the house very carefully to find a single pellet of paper.
(そんな紙切れを見つけ出すなんて、屋敷内をかなり徹底的にやられたようですね。)
〔判断の根拠〕
It was early in April in the year ’83 that I woke one morning to find Sherlock Holmes standing, fully dressed,
(83年の4月上旬、朝に目を覚ますと、すでに着替えを済ませたシャーロック ホームズがベッドのそばに立っていることに気づいた。)
〔結果〕
「⇒ 向かう」のイメージが変わっているわけではありませんが、これらの英文に先ほどの「~ために」という日本語を当てるとおかしくなります。
最後の例文のtoは『結果のto』と呼ばれるもので、to以下になるよう意思を持って向かった、のではありません。これは「~ために」ではなく、「Aしたら → Bになった/した」という順番で訳します。『結果のto』が過去の話をしている文で使われているときは(その使われ方がほとんどですが)このtoは「⇒」の段階で言えば「その地点に到着した」まで表していると言えます。副詞用法の一番手「~ために」のtoが過去の描写の中にあるときでも後から「でもやはり到達しなかった」という意味のことをつなげられるのに対し、『結果のto』の場合は文字通り結果で、to以下になったという事実は揺るがないようです。
ちなみに『結果のto』ではその意味であることをよりわかりやすくするためかコンマで区切られることもよくあります。
I lowered my handkerchief and glanced at Mrs. Rucastle, to find her eyes fixed upon me with a most searching gaze.
(私はハンカチを下にやってから奥様の方にちらっと目をやったんですが、奥様はじっと私のことを見ていて、その目がすごく探るようなものになっていました。)
〈ブナ屋敷〉
【練習問題】
次の太字部分の不定詞が、名詞用法、形容詞用法、副詞用法のどれに当たるか答えなさい。
① It is fortunate that you are old schoolfellows, as you must have much to talk over.
〈海軍盟約書〉
② Why should anyone desire to steal it or to publish it?
〈2つ目の染み〉
③ “It may be a hit, or it may be a miss, but we are bound to do something for friend Hopkins, just to justify this second visit,” said he.
〈アビー屋敷〉
〔答え〕
① 形容詞用法 to talk over「(~について)話すような/べき」が前のmuchにかかっている。(昔の友だちということだから、お互いに話には事欠かないだろ?)
② SVOのOになっている名詞用法。 anyone(S) should desire(V) to steal it or to publish it(O) (誰がそれを盗むことや公にすることを望むのか?)
③ 「ために」の意味になる副詞用法 (これはヒットするかどうかちょっとわかんないけど、ホプキンズには何か残しておかないとね。もう1回屋敷に戻ってきた理由付けのためだけでも。)
◇ It is 形容詞 for 人 to ~
It is 形容詞 of 人 to ~
・ Well, Mr. Holmes, it is difficult for me to refuse you anything,
〈ノーウッドの工務店主〉
・ Perhaps it was thoughtless of me to say so.
〈ベリルコロネット〉
上の二つの例文中の前置詞の違いをみていく前に、形式主語という構文について。
正確には形式主語は一番目の文だけです。この文のtoは名詞用法で「~こと」、名詞なので主語として普通の位置である文頭に持ってきて、To refuse you anything is difficult for me.(SVC)と、日本語と同じような順番で言ってもいいのですが、英語ではその代わりにItという仮の主語を文頭にすえておいて後からto以下の真主語のところで具体内容を言う、というやり方を多用します。
It is difficult for me to refuse you anything(It is それは~だ/ difficult 難しい/ for me 私にとって/ to refuse you anything 君の何の望みも断ること)。この場合のtoの行為主は(for 人)の部分で示されている人や物です。この(for 人)はいつも入っているとは限らず、(for 人)のない次のような文をいきなり言えば、to不定詞の行為主は“一般の人々”になります。
タチヨミ版はここまでとなります。
2024年4月11日 発行 初版
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