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なんとなく、今日はこっちに行ってみようかな、と思ったことはないだろうか。一つ隣の駅で降りてみたり、普段はいかない道に入ってみたりしたことはないだろうか。そのような小さな気まぐれがきっかけで、新たな発見をしたり、出会いがあるのかもしれない。今回は、私がふらり、と寄り道した中で印象に残っている行き先を一つ紹介しようと思う。
東京大神宮は、飯田橋駅から徒歩で約五分の場所にある。なだらかな坂を少し上った先にあり、石階段を上ると目の前に本殿が見えてくる。周囲はマンションやビルが立ち並ぶ中、この場所は自然が多くあることが特徴的だった。参拝を済ませた後、私は御朱印を頂くことにした。御朱印を待つ間、境内を見て回ると、東京大神宮ならではの特徴があることに気が付いた。
まず、お守りの種類が豊富という点である。一般的なお守りからハローキティがデザインされているものまであり、縁結びの神様が祀られる神社として、恋愛に関するお守りも数多くあった。デザインの種類も豊富で、「心の扉を開く」という意味を込めて鍵の形になっているものや、「幸福が訪れる」という花言葉を持つスズランをかたどったものなどお守りの意味に合わせてあり、購入する人が自身の思いに合わせて選べるようになっていた。
また、おみくじにも様々な種類があった。恋愛に関する助言が記された「恋みくじ」であったり、四季ごとに色が変わり開運色などが記された「四季みくじ」、傘の形をしていて開いた中に開運の助言が記されている「お天気みくじ」など多種多様で特徴的なおみくじがあった。さらに、「英文みくじ」というものもあり、外国人に向けたものまで置いてあった。
このように、東京大神宮には祀られている縁結びの神様ならではのお守りやおみくじが置いてあった。また、都内のビル群の中にありながら自然が豊富であり、それも新たな発見となった。東京大神宮の他にも足を延ばしてみたが、飯田橋には、靖国神社やテレビドラマのロケ地にもなったことのある毘沙門天善国寺など有名な神社や寺があり、さらに神楽坂や外濠公園など多くの観光客が訪れる場所であり、寄り道にも合う場所であった。
今回は私が寄り道して印象に残っている飯田橋の話をつづったが、寄り道というものは人によって変わってくるものである。行ってみようと思った場所、歩いてみようと思った道は十人十色であり、それぞれの発見があるだろう。また、寄り道というのは途中で迷子になってしまうなどのデメリットもあるが、メリットも多くある。毎日同じ道を通り、学校に通い、自分の予想ができる範囲内で効率的に生活するだけでは、新たな出会いや面白さと出会うきっかけを失ってしまっているかもしれない。それが良いという意見も一つの価値観でありよいと思うが、新たな挑戦をしてみたり、知らない場所に行ってみたりすると、驚きや発見を与えてくれるかもしれない。また、行動範囲を広げることで様々なことに目を向けることができるようになり、自分の中のできることが増えるかもしれない。
ぜひ一度、降りたことのない駅、行ったことのない道に進んでみてほしい。必ずしもやったほうが良いことではないけれど、小さな気まぐれで寄り道をしてみると、自分の知らないものに出会えるかもしれない。
杉並区に位置する下町、下高井戸。1ヶ月ぶりに下車した駅前の景色は一変していた。かねてから決まっていた新開発により、4月から下高井戸駅前市場が取り壊されていたのだ。68年も続いた古き良き市場であり、小売店と地元民で賑わっていたはずのアーケード街は、今では見る影もない。良く言えばレトロ、悪く言えば古びたアーケードは、危ないと言われれば確かに納得もできる。馴染みの景色が失われた淋しさを抱えながらも、筆者は今しか見られない街並みを記憶に残すべく下高井戸に繰り出した。
駅の改札を抜けて出迎えてくれたのは、線路に面した何の変哲もない窓だ。夕日が綺麗に見えるスポットでもあり、夕方になると誰か心ある人が足を止めて夕焼けに見惚れている。駅を出ると、白い壁に覆われたかつての市場が目に飛び込んできた。それを横目に商店街を進むと、いつもどおりのんびりした空気が流れていることに気づく。つられて歩調がゆっくりになる。親子連れの自転車を横目に、フラフラと近くの店に立ち寄った。
「南蛮屋」の看板に惹かれて立ち寄ったのは、初めて見る自家焙煎珈琲店であった。こういったお店としては珍しく、店頭にコーヒーの抽出かすが干してある。店主によれば、どうやら一人一杯無料で試飲させてくれるらしい。豆の特性に合わせた淹れ方をしており、豆によって使うお湯の温度も違うというこだわりようだ。
店内をぐるりと見回すと、瓶詰にされて行儀よく並んだハーブたちが目に入った。ハーブティーだろうか、珈琲店にしては珍しい。聞いたところハーブも販売しており、漢方のように効能で選べるらしい。婦人科が近いこともあり、詳しくなったのだと店主は語る。自分が男性だから、女性にすすめてもなかなか信用してもらえないとのこと。
誠実さがうかがえる態度に惹かれて、コーヒーバッグ(ティーバッグのようなもの)を少し購入する。南蛮屋の優しい香りを少しばかりカバンに詰めて、また街に繰り出した。
木枠のガラス戸を開けると、コーヒーの香りと穏やかなBGMが出迎えた。自家焙煎コーヒーのお店、COFFEE & ROASTTER 2-3の日常風景である。いつもは常連さんの誰かがカウンターにいらっしゃるが、今は留守のようだ。席に着き、渡された手作りのメニュー表をそっと開く。前回のサンドイッチがとびぬけて美味しかったのを思い出しつつ、今回は季節のブレンドとメープルチーズケーキを注文した。
スマホばかりいじるのも無粋な気がして、ゆっくり店内を見回す。飾られた猫の絵は、店主の奥さんによるものだ。看板や額縁の中など、いたるところで柔らかいタッチの猫が戯れている。飾り棚のレコードジャケットは、ジャズ好きの店主の趣味だろうか。珈琲豆焙煎の準備なのか、店主の奥さんが豆のハンドピックをしている。地道だがコーヒーの味が変わる大事な作業だ。
しばらくして珈琲とケーキが運ばれてくる。お手製のケーキを口に運ぶと、メープルがじわりと香った。マイルドな飲み口の青葉ブレンドは、来年も楽しめるだろうか。BGMに混じって、カウンターから微かに話し声が溢れて耳を癒やす。店主夫妻の趣味に囲まれたここは、肩肘張らない居心地の良さが魅力だ。SNSではなく口伝てで友人に教えたくなるような、大事な場所である。
駅前に戻ると、解体されて背が低くなった市場が迎えてくれた。寂しくはあるが、街を歩けば変わらないものが多いことが分かる。買い出しの自転車に、楽しそうに語らう近所の大学生。どこかのんびりした独特の空気は、以前と変わらない。銀行やスーパーなど必要なものが揃う下高井戸には、生活感と気安さが感じられる。
締めくくりとして、本稿は、2024年5月時点で執筆したものであることを明記しておきたい。街は生き物ゆえ、10年後、50年後は多少なりとも姿を変えているだろう。そのころの下高井戸はどうなっているだろうか。現時点では京王線の高架化計画が進んでいる。その一方で、市場跡地には駅前広場の整備も予定されている。地元の組合の協力の元で、商店街のにぎわいを失わないように検討されているようだ。終わりがあれば始まりがあるように、また次の変化のために動き続けている。
願うなら、どんなに変わっても人々に愛される街でいてくれたら。過渡期の下高井戸には、寂しさと可能性が入り混じっていた。
・東京新聞 「人情市場 惜別の春 下高井戸駅前 68年の歴史に幕」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/317986
・学生街ガイド・日本大学や明治大学すぐそば『下高井戸』編
https://www.takeda.tv/niigata/blog/post-161135/
(2024/05/17現在)
・多様なライフスタイルに寄り添ってくれる街。ほどよいレトロ感が心地いい「下高井戸」の魅力
https://www.goodrooms.jp/journal/?p=52631
(2024/05/17現在)
・COFFEE&ROASTTER 2-3 two-three公式サイト
http://coffee2-3.jp/
(2024/05/17現在)
・備長炭焙煎珈琲南蛮屋 樹 公式サイト
https://nanbanya.jp/index.html
(2024/05/27現在)
・下高井戸駅周辺街づくりニュース 第9号【令和6年3月】
https://www.city.suginami.tokyo.jp/kusei/toshiseibi/ensen/1049542.html
(2024/05/27現在)
2024年7月26日 発行 初版
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