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 アニメ文化は、現代では昔より身近な存在になった。この本は、そんなアニメ文化がどのようにしてここまで発展してきたのかを、流行してきたアニメジャンルという観点から考えるものである。

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アニメの軌跡

矢部汰空、谷本大和

二松学舎大学



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 目 次

どんなアニメジャンルが流行してきたか

谷田部空

アニメを消費してきたデバイスの歴史

谷本大和

どんなアニメジャンルが流行してきたか

谷田部空

どんなジャンルのアニメが流行してきたか

谷田部空

昔の流行


 アニメ文化がどのように発展したのか考えるために、まずは昔(ここでは1990年頃~2000年頃とする)に流行したアニメやアニメジャンルを調べてみよう。
まずわたしは、そのころのアニメ作品に触れていた一番身近な人物である父親に話を聞いてみた。すると、「ドラゴンボール」や「キャプテン翼」、初代「遊戯王」、「スラムダンク」など、今現在大学生であるわたしでも知っているような作品を挙げてくれた。その後わたしは、周りの友人何人かに、昔流行したアニメ作品といえば? という質問をしてみた。すると、多くの友人から「ドラゴンボール」という返答をもらった。わたし自身も、当時のアニメ作品といえば「ドラゴンボール」、というイメージはあったので、これは納得の結果ではあった。
 ところで、前述した作品にはある共通点があることに気づいた人はいるだろうか。それは、原作が週刊少年ジャンプに連載された漫画である、という点だ。週刊少年ジャンプは現代でも人気漫画を数多く連載している漫画雑誌であり、名前を知らない人はいないだろう。これらの作品は、俗にジャンプ作品といわれ現代でもその呼び名は親しまれている。
これらのジャンプ作品は現代でも続編が制作されたり、リメイクされたりして今でも大きな人気を保っている。しかし、現代での人気の背景には、もちろん当時からの人気があるのは間違いない。つまり、これらの作品が当時流行していた作品と言って差し支えないだろう。
 また、これらの作品は、週刊少年ジャンプが掲げている友情、努力、勝利というコンセプト(諸説あります)に忠実である、という共通点が存在している。つまり、この作品たちはバトルやスポーツなどという違いはあれど、作品のジャンルには大きな違いはないといえるのではないだろうか。ジャンプ作品以外の作品も、例えば「ガンダム」などは似たような構成になっているように思う。だとすれば、当時流行していたアニメジャンルは、アニメの王道を突き進む熱い展開のアニメである、といえるのではないだろうか。


今の流行


 では、今現在流行しているアニメジャンルはどのようなものがあるだろうか。現在流行している作品といえば「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」、「SPY×FAMILY」などは外せないだろう。この3つの作品は、現代のジャンプで人気な作品たちである。これらの作品は、昔のジャンプ作品の主人公たちが順当に戦って勝っていくものとは少し違う構成になっているように思う。3つの作品、特に「鬼滅の刃」と「呪術廻戦」は主人公の境遇であったり作中で不幸な目にあったりするなど、昔のジャンプ作品の熱い展開の作品とは少しちがった構成であるように見える。
しかしその一方で、「ONE PIECE」や「NARUTO疾風伝」など、友情、努力、勝利というジャンプのコンセプトに忠実な昔ながらのジャンプらしい作品も多く存在しており、海外にわたるような日本を代表するようにまでなった作品も多く存在している。
さらに、現代では、ジャンプ作品以外にも、なろう系といわれる作品たちが流行している。なろう作品とは、ネットの小説を読めるサイト、「小説家になろう」中心に流行しているジャンルで、異世界転生や主人公の無双を中心とした作品の事であり、代表する作品には、「転生したらスライムだった件」、「無職転生~異世界行ったら本気出す~」、「オーバーロード」などの作品があり、大きな人気を博している。これは昔には見られなかった特徴を持ったアニメ作品である。
 このように現代では数多く、幅広いジャンルのアニメ作品が多くの人から見られており、さまざまな媒体で流行している。アニメは、前述した通り昔にはなくて現在には存在するような作品が続々と生まれ続けている。この新しいものが次々と生まれていく過程が、アニメ文化の発展を示す大きな指標となっているのではないだろうか。

アニメを消費してきたデバイスの歴史

谷本大和

アニメを消費してきたデバイスの歴史

谷口大和

 アニメというのは、必ず何かしらのデバイスを通して視聴者に届けられるメディアであり、アニメ文化史を語る上で、それを放送するに際してメディアを切り離す事はできない。今でこそ近年のサブスクリプションサービスによって何時でも、どんな場所でもアニメを享受することが可能となったが、つい十年ほど前まではアニメとは大多数が深夜に放送されるものを録画して見るという視聴形態が基本だった。当然それはテレビ番組やスポーツ中継でも同じ条件ではある。この書では、アニメ文化という文脈と他の映像メディアの差異についての考察を交えつつ、黎明期からのアニメに介在したデバイスの歴史を追って行こうと思う。
 「アオイホノオ」という漫画原作のドラマ作品がある。このドラマのワンシーンに、のちに新世紀エヴァンゲリオンの監督となる庵野秀明が若かりし頃、電気屋の店先に置いてあるテレビで放映されているアニメを食い入るように見ているシーンがある。また、同ドラマには主人公の焔燃(ホノオモユル)が、同寮の先輩の部屋に上がり、当時最先端の技術だった録画機能で宇宙戦艦ヤマトをこれまた食い入るように視聴しているシーンがある。この作品は作者、島本和彦が母校の美術大学にて様々な苦難の末に漫画家を志すという自伝のような作品であり、多少の脚色はあろうが当時のアニメがどのような扱いを受け、そしてどのように視聴されていたのかが描かれている作品だ。前述の描写からして「アオイホノオ」の舞台である1980年代初頭では、アニメの視聴環境は非常に劣悪だったであろうことが読み取れる。テレビやドラマのようにゴールデンタイムに放映されている作品をリアルタイムで見るのではなく、深夜放送のアニメを録画して見るという作業は、アニメ文化が日本のカルチャーのメインストリームに長い間押し上げられることがなかった一つの大きな要因であるように思われる。そして、アニメの冷遇は続いたまま、1990年代に誕生したアニメジャンルが「深夜アニメ」である。これら午後11時以降に放映される青年向けアニメは、深夜ゆえの番組枠の確保の容易さ、俳優を起用する必要がない人件費の安さを背景に産まれる。
 ここで一つ念を押しておきたいのが、ここで自分が言うアニメ文化というのは深夜アニメに限るということである。数が多いので代表的な作品で語るが、一般大衆が視聴することができる時間帯に放映されていたアニメ、例えば「ドラゴンボール」や「スラムダンク」はここで自分が言うデバイスによって制限されたアニメ文化からは外させて頂きたい。勿論、「ドラゴンボール」もデバイスを通して視聴されるアニメに他ならないが、この作品は放送時間が1980年代当時で水曜日の午後七時、ゴールデンタイムの放送であった。これは本論では二次元と三次元という差異はあれど、放送時間という点でテレビ番組やドラマと同じ文脈にあると定義したい。午後七時に放送されていた「ドラゴンボール」と午前二時に放送されていた「けいおん!」。どちらも人気アニメではあるが、この二つがアニメ文化という文脈において異なるグループに所属しているのは、肌感覚としても、実際にターゲットされた視聴者層としても明らかだろう。このターゲット層の違いにこそ前述のグループ分けの要因がある。萌アニメとはほとんどニアリーイコールで深夜アニメに結びつけられる。深夜アニメを見ている層は世間からして少数であるから深夜に放送するアニメなのだ。
 ここでデバイスの話に立ち帰ると、年から2000年頃まで、アニメを取り巻く視聴環境というのは大きな変化がなかった。その20年間に使われた記録デバイスであるVHSの取り回しの微妙さは自分も把握している。では2000年代初頭のデバイスの変化が何かというと、HDD、デジタルハードディスクの登場である。それまでのデバイスと違い、テレビ番組表から録画したい番組を指定するだけで外付けの記録媒体を使用することなく見たい番組が録画できるようになったことにより、深夜アニメというジャンルの敷居は大きく下がった。実際、HDDが一般家庭へと普及したタイミングである2000年代中頃というのは、自分が把握している今日まで続く深夜アニメ人気の大きな皮切りである「涼宮ハルヒの憂鬱」「けいおん!」などの放映時期と重なっている。それだけが要因でないのは当然だが、深夜アニメという時間帯が隔離されたジャンルに大衆がアクセスしやすくなったことによる恩恵が非常に大きいものであったことは間違いない。このHDDの普及と「涼宮ハルヒの憂鬱」「けいおん!」の放映時期の符合こそが、自分がデバイスの進化と深夜アニメの普及について高い相関性があることを論ずることにした大きな理由である。
 そして、ここから爆発的に深夜アニメという仕切りはデバイスの進化と共に取り外されていく。まずはスマートフォンの普及である。当時だとYouTubeやニコニコ動画によって、主に視聴者同士のコミュニティというのが形成された。そして冒頭にも言及したサブスクリプションサービスの登場である。今では大多数の人にとって通勤、通学、また家で過ごす時間の大半を占めるものであるのは間違いない。そしてサブスクリプションサービスのメニュー画面には、テレビ番組もアニメも同様に並べられる。ここでついに、長い間アニメ文化を深夜という枠へ押し込んできた仕切りが存在しなくなったのだ。
 現在、アニメについて言及する際に、少なくとも自分と同じ年代においては以前のような引け目は感じられない。それは、もちろん一般世間大衆にアニメ文化が普及したことが直接的な理由に他ならないが、ここで、アニメ文化を普及させるに至った立役者であるデバイスの進化の歴史に立ち帰り、考察するのも一興かもしれない。

アニメの軌跡

2024年7月26日 発行 初版

著  者:矢部汰空、谷本大和
発  行:二松学舎大学

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