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海の泡とわたし

たいいちろう

ANUENUEBOOKS



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 海の泡とわたしは一つ。
 海の泡とわたしは一つになって、わたしはいつも今と未来を楽しく生きるねん。
 生きてやるねん。
 それは簡単なようでいて、難しいことかもしれへん。
 そやけど、わたしはそうするねん。
 してやるねん。
 そう、自分で自分に言うてやるねん。
 海の泡ってなんやろうか?
 なんかええやん。
 水の泡とはちゃうねんで。
 白い泡がしゅわーっと碧い海の波とともにわたしの近くにやってきては、何事もなかったみたいに弾けながらね。白い泡はその姿を消していく。
 そんな光景を、海の砂浜に腰を下ろして見ているわたし。
 夏の光を吸収した熱い砂が、わたしの小さな足の小さな指に絡みついてきて、その感触はくちゅくちゅとしていて、とっても気持ちがよくて。
 それは今日というこの日の、この瞬間を、わたしは生きているんだぞって、わたしにそう実感させてくれるものなんだ。
 誰も人のいない夕暮れどきの砂浜。
 わたしだけがいる砂浜。
 なーんか、それはとっても寂しくもなってしまいそうになる。
 けれど、わたしは結局のところはそうならへんねん。
 なんでか言うたら、それはわたしの耳に流れてくるこの海の波の音たちがね。
 とーっても、わたしの心を優しい気持ちにさせてくれるからやねん。
 ほんでもって、海の波に混じった白い泡がしゅわしゅわーっと弾けていく姿にも、その白い泡に、とってもわたしは癒しを感じるから。
 うまく言われへんけれども、なんかいいんよ。好きなんよ。
 あーあ。
 なんや、いろんなことがある日常やんね。
 朝に目を覚ましたら、目覚まし時計の電池が止まってしもうてて、それはもう慌てて服を着替えたら、なんと休日の日やったりして。
 どんだけ行き詰まってるんかいな。
 自分に呆れてもう一回寝たら、もう夜や。
 夜御飯食べたら、一日が終わっちゃうよね。
 信じられへん。あー、勿体ない。
 そやけど、そんな日があってもええやんって、海のしゅわしゅわっと弾ける泡はその軽さで、わたしにそんなことを伝えてくれるねん。
 ひっしのぱっちで、なーんか、ずーっと、ほんまに疲れてしもうた、疲れてしまいました、そんな日の夜にね。
 この心についたその疲れを落とそうとして、なんやすっきりとせえへんもんも、全部じゃぶじゃぶと風呂場で洗い流したろかいと、わたしはそう決意してん。
 どんな決意やねんて話やけども。
 浴槽にお湯がしっかりとたまったかと思ったら、排水口のゴム栓をきちんとしてへんかって、結局はシャワーで洗ってん。
 なにしとんねんって話やろう?
 流れてしまった水たちが勿体ないし、その水たちが可哀想にも思えて、見えへん空気のなかで湯船につかった気になりながら、それで満足した夜もあったなあ。
 そやけど、そんなんもええやんって、海のしゅわしゅわっと弾ける泡はその軽さで、わたしにそんなことを伝えてくれるねん。
 気分を変えたろうと一人で外に食べに行ったら、店員さんがなんや機嫌がわるくて、わたしはわたしがなんかわるいことをしたような、そんな気持ちになって疲れた。
 そんなん相手がわるいことで、相手の問題やねんけど、そんなことを気にしてしまう繊細なわたしはどうかしてんのかいな。
 わたしが繊細なんかどうかは知らへんけれど。
 そやけど、そんなんもええやんって、海のしゅわしゅわっと弾ける泡はその軽さで、わたしにそんなことを伝えてくれるねん。
 すごい話をするけれど、小さな頃は飛行機乗りになりたかってんで。
 別にすごないか。
 映画を観てね。憧れてん。
 女性の飛行機乗りってかっこええやろ。
 空を飛ぶって、わたしの憧れやってね。
 ほんで、わたしが飛行機を飛ばすん想像したら、やっぱりすぐ墜落しそうで諦めました。
 そやけど、夢を持つってええよね。
 もしも、叶ったら儲けもんやで。
 何歳になったかて、わたしは持ち続けますよ。
 そんなんもええやんって、海のしゅわしゅわっと弾ける泡はその軽さで、わたしにそんなことを伝えてくれるねん。
 わたしはなんの為に生まれてきたんやろかとか、わたしの存在理由やら考えた時期があってんけど、考えてたら疲れてしもうて、そんな存在理由やらをもう考えへん人間になったろうってそう思ったら、なーんか落ち込んだりもせんようになったし、気にならへんようにもなった。
 こんなんはわたしの昔から持ってる強さなのかなあ。
 小学校の頃のことをなんや思い出したよ。
 忘れもんせんようにと、何度もランドセルのなかを確かめるようなそんな子供やったんやけれども、それでも忘れてるもんとか結局あって、先生によう怒られたりもしてたなあ。
 今も変わらんかあ。
 どこかわたしは抜けてるけれど、大事なもんを心に忘れてへんかったらそれでかまへん。
 わたしはわたしにそう言ってあげるよ。
 そんなんもええやんって、海のしゅわしゅわっと弾ける泡はその軽さで、わたしにそんなことを伝えてくれるねん。
 今もいっぱい失敗して、失敗して、失敗して、成功して、失敗して、失敗して、失敗のほうが多いねんけど。
 そやけど、そんなんもええやんって、海のしゅわしゅわっと弾ける泡はその軽さで、わたしにそんなことを伝えてくれるねん。
 なにをしてるんやろうかって、落ち込む自分に苦笑いをすることもようあるで。
 いつかの過去をまだ引きずったりもして、しょんぼりすることもあるしなあ。
 人に騙されて、傷ついたりもあったよ。
 もうあんな気持ちになるのはごめんやわあ。
 わたしのなにかの一生懸命が空回りになってしもうて、自分が嫌になることもあるねん。
 そやけど、そんなんもええやんって、海のしゅわしゅわっと弾ける泡はその軽さで、わたしにそんなことを伝えてくれるねん。
 海の泡は「すべてのことがなんの意味もない」なんて、「意味がなくなったよ」なんてことも、わたしにそんなことは言うてはきいひん。
「あんたは大丈夫、自分を信じなさい」
 そう言うてくれるんや。
 水の泡が言うこととは全然ちゃうんねん。真逆やねん。
 わたしはそんな海の泡が好きよ。
 海の泡は人と違(ちご)うててええんやでって、そうも言うてくれる。
 おんなじ人はいいひんのやからなって。
 自分のことをもっと信用したれ。なんてことも言うてくれる。
 ほんまにええ奴やし、ほんまに好き。
 海の泡とわたしは一つ。
 海の泡とわたしは一つになって、わたしはいつも今と未来を楽しく生きるねん。生きてやるんねん。
 それは簡単なようで、難しいことかもしれへん。
 そやけど、わたしはそうするねん。
 してやるねん。
 あんた、ようやってるやん。
 そう、自分で自分に言うてやるねん。
 白い泡がしゅわーっと碧い海の波とともにわたしの近くにやってきては、何事もなかったみたいに、弾けながらね。白い泡はその姿を消していく。
 夏の光を吸収した砂浜の熱い砂が、わたしの小さな足の小さな指に絡みついてきて、その感触はくちゅくちゅとしていて、とっても気持ちがよくて。
 それは今日というこの日の、この瞬間を、わたしは生きてるんだぞって、わたしにそう実感させてくれるものなんだ。
 海の弾ける泡はほんまに優しいやっちゃなあ。
 簡単に弾けて跡形もなく消えてしまうんやけども、また新しい海の波とともにその姿を見せてくれる。
 そんな軽さが好きよ。
 そんな軽さは「心よ自由であれ」って、いっつもわたしにそう言うてくれてる。励ましてくれてるんやな。
 そやから、好きや。
 ほんまに好きやで。
 そんなんもええやんって、海のしゅわしゅわっと弾ける泡はその軽さで、わたしにそんなことを伝えてくれてるねん。

海の泡とわたし

2025年7月28日 発行 初版

著  者:たいいちろう
発  行:ANUENUEBOOKS

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たいいちろう

巡り会えた皆様に、
幸せが訪れますように…。

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