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夏の夜の空のその黒の色。
その黒の色を夜の薄い白い雲たちの白の色がかすめていくと、まるで一つの集合体になるかのように、その雲たちはぼんやりとゆっくりと一つに重なっていく。
そのぼんやりとしていて、ゆっくりとした流れは、この世界のなにかに、すべてに抗うことのない、それはとても自然な流れであり、部屋の窓からその光景をぼうっと眺めていると、それはとても僕の心を落ち着かせてくれるものであった。
目を閉じて、大きく深呼吸をしてみる。
瞳の奥に、いつかに飲んだ夏のソーダ水の炭酸が弾ける音の姿が見えて、その透き通った水の色にこの身をゆだねてみると、その特別さは夏にしか訪れない歓びと、なにかどこか切ない懐かしさのような感覚もあって、でもそれがとても心地がよかったりもする。
部屋の開け放たれた窓から夜風が入ってくると、その風たちが楽しそうになにかを囁いているみたいにも感じられて、その囁きはまるで夏の季節に咲く、夏の風に揺れる花のようで。
僕はそんな風を手に取ると、その風で花飾りの帽子を作り、目には見えないあなたに、心で繋がる遠い地の大切なあなたの可愛らしいその頭の上に、僕が作った髪飾りをそっと優しく飾る。
ほんの少し王子様になったような気持ちになって、太陽と温かい土の香りのする、優しくてとてもしっかりとしているあなたの手を僕は握ると、今度は部屋のなかにいる風たちの友人である窓から入ってきた月の光が僕に挨拶をしてくれる。
すると僕の部屋は神聖な空気と、どこか陽気さを感じさせる静寂さが広がり、その月の光は美しいムーンライトフロアを生み出して、目には見えないけれど目の前にいるあなたと僕は軽やかなステップをそこで一緒に踏み始めるんだ。
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そのムーンライトフロアにはほかにも多くの人たちが集まり始めて、いつの間にか一緒にこの空間で踊り始める。
それは夜空に住んでいる美しくもあり逞しい翼を生やした白い馬たちが、僕が気づかぬうちにこの場所に連れてきた人たちだ。
人は数え切れぬほどの涙の粒を流して、その涙の粒はでも哀しいだけのものばかりではなくて、歓びや心を温かくするものたちだって多くある。
その涙は優しい雨のなかの見えない雨粒みたいで。
その雨粒の感触は口に入れた小さな甘い金平糖のようでもあり、ムーンライトフロアから僕が見上げた夜の空は大きく広がっていくと、その夜の空の大きさは心を縛るものなどなにもないのだと、そう伝えてくれる。
僕もあなたも、ここで踊る人たちみんなも、誰もが楽しそうな顔をしていて、その心は解き放たれているみたいだ。
何度も心が折れそうになったり、心が破れそうになることがあったならば、そのことも自らを愛してその大切さを知る。
「無駄なことはないからね」と。
そんな言葉が、この大きく広がり続ける頭上の夜の空から聞こえてくるんだ。
僕は優しくあなたの手を取り、自然に溢れ出てくる笑顔とともにあなたと踊る。
魂は自由になることで、より美しい翼を与えてくれるものだということにも気がついていく。
その瞬間はまるで自分が一番好きな色をしたスプーンで、自分が一番好きな色をしたゼリーをすくうみたいな完璧な瞬間。
その完璧さは「どんな味なのだろう?」と想像する、心躍る待ち遠しさのような、生きることへの高騰感。
部屋のなかで遊んでいる夏の夜の風たちみんなが、生きる歓びを謳っている。
世界のルールなど知らなくとも、わからなくとも、このムーンライトフロアで楽しく踊る気持ちを忘れずにさえいたのならば、「それで大丈夫だよ」と彼らは謳うのだ。
頂の見えない山であっても、気づいたらいつの間にか勇気をだして前へ踏み出していたり、勇気をだせずに踏み出せずにいたことにも意味があることや、意味があったことにも気がついていくのだと。
そんなことも、彼らは伝えてくれているのだ。
僕はあなたが大好きで、あなたも僕を大好きでいてくれて、それがとっても嬉しくて。
このムーンライトフロアで踊るみんなも似た心を持ち、僕たちが大好きで、僕たちもみんなが大好きで、まるでそれはくるくると回る環のような指環のように巡る想い。
巡る想いは途絶えることはなくて、脚をもつれさせ、前が見えないそんな日にも、どんな日であっても静かな情熱のように灯り続ける、そんな心のなかにある灯りのような輝きで、足元や目の前にある世界をいつも照らしてくれているから。
だから心にはいつも安心する気持ちと、そこには不安などという感情は生まれてはこないんだ。
すべて大丈夫だと、ただそう信じていればいいという、そのたった一つの言葉の色が美しい音色により綺麗な色を添えて、このムーンライトフロアのどこかで奏でられて聴こえてくる音楽を、より美しいものにしていく。
ムーンライトフロア。
そのフロアは夜が静かに流れ、まるで美しい月が優しく満たされていくかのように夜が更けていく、そんな特別な夏の夜に現れるものだという。
でも、本当のところは心が自由であればいつだって、その姿を見せてくれるんだ。
このムーンライトフロアでは誰もがみんな自由で、誰もが誰かの手を取り、心のままに自分の自分らしいステップを踏んで、とても幸せそうに誰かと踊っている。
自分らしいステップでよいし、ふらついたって素敵だし、脚がからまっていても魅力的だ。
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僕はムーンライトフロアから自分の部屋に戻ってくると、またいろんなことを考えたりもするのだけれど、前向きなところに辿り着いている自分に気がつく。
部屋の開け放たれた窓から入ってくる夜風たちが楽しそうにまたなにかを囁いているのを感じて、その囁きはまるで夏の季節に咲く、夏の風に揺れる花のようで。
風たちの囁きはこんなふうに伝えてくれているみたいに感じる。
「君の思う通り。そうなんだよ」って。
夏の夜風がまた部屋のなかに流れてきて、僕はその風を手に取ると、その風で花飾りの帽子を作り、目には見えないあなたに、心で繋がる遠い地の大切なあなたの可愛らしいその頭の上に、僕の作った髪飾りをそっと優しく飾る。
ほんの少し王子様になったような気持ちになって、夏の風の香りを添えた月の優しい光に照らされながら、その光は僕の全身を照らして、心の瞳に映る大切なあなたと一緒に、この部屋でまた楽しく僕はステップを踏み始める。
2025年7月28日 発行 初版
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巡り会えたあなたに、
幸せが訪れますように…。