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まず、はじめて本稿を読み始めてくださった貴方には、特大の感謝を申し上げたく思います。たくさんある本の中から、この作品を手に取っていただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、遅ればせながら、本稿の紹介をさせていただきます。本稿は皆様が普段過ごしている通学・通勤時間の使い方に疑問を付すものになっています。コンセプトは「普段の移動時間に付加価値を」。もちろん、皆様がしたいことが最優先であることには変わりありません。ですが、本稿をご覧の皆様がもしも普段とは違った特別な時間の使い方に少しでも興味を持たれるようでしたら、お役に立てるかもしれません。
本稿では読書を用いた時間の使い方を提案させていただきます。そうと言いましても、ひとえに読書と言っても様々な媒体があります。そのため、今回は学生時代に教科書で掲載されていた作品を再度読んでみるという取り組みをご提案させていただきます。具体的には、小学校、中学校、高等学校の3段階で、文学的文章というジャンルに絞って、紹介していきたいと思います。また文庫本など、書籍として入手しやすいことも、判断材料の一つとさせていただきます。
・『少年の日の思い出』(ヘルマン・ヘッセ)
さてはじめに紹介させていただくのは、ヘルマン・ヘッセ作『少年の日の思い出』という作品になります。このタイトルに覚えがない方々も、「エーミール」または「そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな」というフレーズには覚えがあるのではないでしょうか。この作品のあらすじを簡単に説明いたしますと、かつて蝶や蛾の収集に熱中していた少年であった「私」が少年時代の思い出として、近所に住んでいる「エーミール」とのやり取りを懐古するお話です。
初めにこの作品を持ってきた理由といたしましては、先ほど申し上げたフレーズがとても強く、印象に残っているということもあります。ですが、それ以上に、岡田朝雄氏の翻訳がとても秀逸で、読みやすいことが理由になります。また、教科書で読んでいると該当作品しか読むことができませんが、電車の中で読みたい場合、文庫本などを購入する必要があります。その場合、この作品が掲載されている草思社の文庫本は短編集となっているため、同作者の他の作品に触れやすいというのも理由の一つになります。
ヘルマン・ヘッセの世界観は純朴な日常生活を基盤としながらも人間の根本的な心理に触れているものが多く、大人が読んでも十分読み物として耐えうる完成度を誇っています。もしご興味があれば手に取っていただけると幸いです。またヘルマン・ヘッセの他の作品として、最も著名な『車輪の下』や『デミアン』などがあります。私個人としては、少しマイナーですが『シッダールタ』という作品もおすすめです。
・『夏の葬列』(山川方夫)
さて、次に紹介させていただくのは山川方夫作『夏の葬列』という作品になります。正直に申し上げますと、本稿を読んでくださっている皆様方の中でこの作品をご存知の方はあまりいらっしゃらないかもしれません。それというのも、現在この作品を採録しているのは教育出版株式会社のみであり、内容も戦争に関わるデリケートなものであるため、最近はあまり教材として利用されていないと聞いています。それでも、この作品を紹介させていただきたい理由は、この作品はすでにパブリックドメインになっており、とても読みやすい状態になっていることと、その内容があまりにも衝撃的だからです。
正直に打ち明けてしまいますと、私が本稿のテーマを教科書に掲載された作品にしようと思ったのはこの作品が根本にあります。少しでもこの作品の魅力を知ってくださる方が増えれば嬉しいと思い、今回採用させていただきました。
さてあまりネタバレにならない程度にあらすじをご紹介いたしますと、出張帰りのサラリーマンだった主人公は、気まぐれから十数年前の小学校時代の自分が疎開していた農村に行くことにします。ですが、その気まぐれが彼に一生消えない傷を思い出させることになるというものです。
この作品のインパクトはその結末にありますが、個人的にはそれ以上に主人公の心の揺れ動く様がとても美しく、そこに作品の魅力が詰まっていると思っています。忘れ去ろうとした過去から逃避し、それでも逃げ切ることができず自分の罪に正面から向き合わなければならなくなった主人公の諦観の笑みが簡単に脳裏に浮かぶ作品です。私は初めて読んだ時は作品自体の衝撃はさることながら、それ以上にこの作品が中学校の教科書に採用されているということ自体に凄まじい衝撃を受けました。
本作品の紹介は以上となります。もしご興味を持たれた方は、この作品はパブリックドメインになっているため、青空文庫で読むことができます。ぜひご覧になってください。また「少女レイ」という曲を読んだ後に聞いていただけるとまた格別の味わいになると思いますので、もしご興味がありましたらお楽しみください。
・『こころ』(夏目漱石)
さて、最後にご紹介させていただくのは夏目漱石作『こころ』になります。この作品はほとんどの教科書で採用されており、その知名度も論じるまでもありません。ですが、きちんと最初から最後まで読んだことがある人となると、思いのほか多くないことに驚かされます。実際教科書に採用されている部分は本文における10パーセントほどしかありません。それではあまりにもったいないと思い、改めてこの場をお借りして紹介したいと思います。
また移動時間にこの作品を読むことについて、この作品はもともと新聞に毎週掲載されていたこともあり、短い章がいくつも連なって構成されています。そのため、ストーリーを追いやすく、理解しやすいという点も今回紹介させていただく一因となりました。
あらすじとして、1人鎌倉を旅行していた「私」は「先生」という人物と親しくなり、「先生」の家に通うようになります。しかし「先生」には暗い過去があり、「私」は手紙による独白の形でその過去を追体験していくというものになります。
この作品の一番の魅力は何と言っても、先生の過去になります。親友のKと想い人のどちらを選択するのか。先生はその判断を一生悔やみ、死ぬまで過去にとらわれることとなってしまいます。そのどうしようもない普遍的な人間性の発露が、この作品が近代小説の中で最高峰とされる理由であり、今なお教科書で採用され続ける理由となるのかもしれません。
意外に知られていないこの作品のポイントとしては、一番初め、「上 先生と私 一」の冒頭部分に『こころ』という作品全体に関わるキーワードが詰め込まれていることです。、それは友人や家族、結婚やお金などのように、のちのち明らかになる先生の過去との類似性が見て取れます。そして、これはもちろん意図的なものであり、夏目漱石の構成力に改めて驚かされます。
また、もし小説が読みづらいという方には漫画版も出版されていますので、そちらの方をご覧にいただけると幸いでございます。また、最近はAudibleなど耳を使って楽しむ媒体も発達してきているので、そちらで楽しむということも素敵な選択肢だと思います。
ここまで読んでくださった皆様、誠にありがとうございました。こうして改めて振り返ってみると、「電車の中で読書をおすすめする本」というよりも「皆様に改めて読んで欲しい教科書の掲載作品ランキング」という方が近いものになってしまいました。ですが、本稿をご覧になり、もし電車内で読書することに対し、少しでも興味を持っていただく方がいらっしゃいましたら、それは何より喜ばしいことであります。
昨今のコストパフォーマンスを求める風潮のためか、空いた時間の使い方について、とにかく自分を高めることに使うべきであるという論調をよく目にします。実際、そうして少ない時間でも前に進むことは有意義なことであり、大変素晴らしいことでしょう。ですが、本当にたまにで構いませんので、昔読んだ本をもう一度開いてみるのも一興なのかもしれません。
改めて、ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございました。
最後になりますが、皆様が健やかな時間を過ごされることをお祈り申し上げ、本稿の締めとさせていただきます。
・ヘルマン・ヘッセ著、岡田朝雄訳『少年の日の思い出』(草思社、2016年2月8日)
・山川方夫『夏の葬列』
https://www.aozora.gr.jp/cards/001801/card59532.html
・『少女レイ』
https://www.youtube.com/watch?v=JW3N-HvU0MA
・夏目漱石『こころ』
https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/card773.html
趣味が細分化している現代。国外のコンテンツにも容易に触れられるようになり、選択肢が広がった。しかし、選択肢が多すぎて何が良いか分からず、趣味を決めにくいのが現状である。私は正直、多趣味である。また、ハマってしまうと没頭し、自分がハマっている話題を誰かと共有したいと思う節がある。そこで、迷える皆さんのために「趣味、その先の沼を見つけるお手伝いをしたい。」という思いで「手引き」としてこの本を執筆するに至った。今回は、「音楽編」と題して、音楽にまつわるコンテンツに絞った内容となっている。これは、ラヴァー達による趣味愛溢れる本。私達の色々な「好き」が伝わっていたら幸いである。
私が今回紹介するのは、ミュージカルの世界。中でも劇団四季が手掛ける作品である。「劇団四季」と言うと、CMや電車内の広告で一度は見聞きしたことがある知名度の高い劇団である。まずは劇団四季について説明しよう。以下が公式サイトに書かれた概要である。
劇団四季は、俳優・技術スタッフ・経営スタッフ約1,700名で組織された、世界的に見て
も最大規模の演劇集団です。日本国内に専用劇場を持ち、ストレートプレイ(芝居)、オリジ
ナルミュージカル、海外ミュージカル、ファミリーミュージカルなど幅広いレパートリーを上
演しています。(※1)
劇団四季では東京、大阪、名古屋に専用劇場を持ち、さらに札幌、仙台、静岡、広島、福岡にオフィスを設置し、日本全国で公演をしています。(※2)
そんな彼らは、ディズニー映画のミュージカル作品を多く上演している。
・『ライオンキング』(有明四季劇場、ロングラン上演)
・『アラジン』(電通四季劇場[海]、ロングラン上演)
・『アナと雪の女王』(JR東日本四季劇場[春]、ロングラン上演)
・『美女と野獣』(舞浜アンフィアシアター、ロングラン上演)
・『ノートルダムの鐘』(現在、公演予定なし)
・『リトルマーメイド』(現在、公演予定なし)(※3)
他にも最近、実写映画版にアリアナ・グランデが出演したことで話題になった『ウィキッド ふたりの魔女』や『オペラ座の怪人』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など多くの作品を上演しており、ストレートプレイやコンサート公演とミュージカル以外にも幅広く展開している。劇場によって上演している作品が異なるため、席の予約が完了した際には、時間や席の番号だけでなく、劇場の場所も確認して行くことを大いにおすすめする。
劇団四季について何となく分かっていただけたところで、今回取り上げる『美女と野獣』について公式サイトを元に説明をしておく。(※4)
東京ディズニーリゾート(R)内に位置する舞浜アンフィシアター(千葉・舞浜)にて、2022年10月よりロングラン上演中のディズニーミュージカル『美女と野獣』。
『美女と野獣』は、エンターテインメントの雄・ディズニーが、演劇ビジネスに初進出した作品です。ディズニー・シアトリカル・プロダクションズの手により1994年にアメリカ・ブロードウェイで初演されて以来、世界中で大ヒットを記録しました。
劇団四季では、翌1995年に「東京・大阪同時ロングラン」という前代未聞の上演方式で初演。
(中略)
オリジナルバージョンの芯の部分はそのままに、おとぎ話でありながらも今を生きる人々がより共感できる、モダンな舞台へと生まれ変わりました。
提携25周年を超えるディズニー・シアトリカル・プロダクションズと劇団四季のパートナーシップは、この『美女と野獣』が原点。
また、以下が公式サイトに記載されたストーリーからの抜粋である。(※4)
昔、ある国の光り輝く城に、若くて美しい王子が住んでいました。
(中略)
ある寒い夜、城にみすぼらしい老婆がやってきて、一輪のバラの花と引き換えに宿を乞いますが、王子は老婆のみにくい姿を嫌って追い払います。
「外見で人を判断してはいけない」と説く老婆を、王子が再び追い払おうとしたとたん、 彼女は魔法使いに変身し、王子をみにくい野獣に、召使いたちを「もの」に変えてしまいました。
魔法使いはいいます。「バラの花が散る前に王子が人を愛し、 愛されなければ魔法は解けず、永遠に人間に戻ることはできない、――と。
ある日、近くの村に住む美しくて聡明な娘ベルが、城に迷い込んできました。
召使いたちは魔法を解くチャンスだとベルをもてなします。
一方、野獣は次第にベルに思いを寄せますが、愛を伝える術を知らず悩み、また自分のみにくい姿を恥じて苦しむのでした。
(中略)
お互いの優しさに気づき、少しずつ心が通いはじめた二人。
しかし、バラの花は日に日に散ってゆき、野獣の身にも危険が迫ります。
二人が愛し愛され、魔法が解ける日は来るのでしょうか……。
『美女と野獣』は、ディズニーの中でもクラシックに分類される作品で「外見に捕らわれない真実の愛」がテーマである。巨匠アラン・メンケン作の楽曲や個性あふれるキャラクター達により人気を博し、今もなお愛され続けている普及の名作の一つである。実写映画も2作品公開されている。ディズニーが原作のものと、フランスに昔から伝わるおとぎ話に準じて作られたものである。後者の作品は、現在広く知られる物語の元となっている。ディズニー実写版『美女と野獣』では『ハリー・ポッターシリーズ』でハーマイオニーを務めたエマ・ワトソンがベル役だったことも話題になった。また、シーンやビジュアルの再現度には注目が集まった。有名なあのダンスシーンを待ちわびたファンは少なくなかっただろう。そして、2022年、舞浜アンフィシアターにてミュージカルとして『美女と野獣』の世界観を体験できることになる。私は公演2年目の冬に観に行き、今でも初めて観た時のことを覚えている。
いよいよここから、劇団四季ミュージカル『美女と野獣』へのテビキをしていく。「最初は歌唱力やパフォーマンス力などを挙げてくるんだろ?」と思っていただろう。もちろん、そこも触れるが、第一の魅力として「原作がディズニー映画」と挙げた理由は私が観劇にハマるきっかけになったからである。ミュージカル、舞台の類いはどうしても「内容が難しいし、ハードルが高いから私なんか到底行けない。」と思いがちである。私も同意見であった。しかし、原作が有名なディズニー作品であることでストーリーがイメージしやすく、劇中で歌唱する楽曲に訳の違いが多少あるが、自分が知っている内容とほぼ同じで映画を観ているような安心感がある。私からすればその微細な違いも楽しさの一つである。ディズニー映画ではなく本来の原作を重視している作品も中にはあるので比較して観るのはおすすめである。『美女と野獣』でも僅かながら違いがあるので探してみてほしい。そして、世界的に大人気コンテンツであるディズニー原作のミュージカルは劇団四季でしか味わえないのである。この特異性とディズニーブランドの人気、それと安心感によりハードルの高さが幾分か解消されるのである。
立地的にも行きたくなる理由がある。『美女と野獣』を上演している劇場の最寄りが東京ディズニーリゾートと同じ舞浜駅だからである。東京ディズニーリゾートは午後五時から入園できるウィークナイトパスポートやミュージカルのチケット代込みのチケットプランを提供している。事前に購入しておけば、観劇が終わった数時間後には魔法の国で写真を撮ったり、ついさっき観劇した作品のアトラクションに乗ったりとミュージカルの余韻を楽しめる。また、丸一日満喫できてお出かけプランとしても良質なものと言えるのではないだろうか。
劇団四季の歌唱力・演技力・ダンススキルの高さ。ここは絶対に抑えておきたい点である。ここまでレベルの高いパフォーマンスができるのは、劇団四季のかねてからのポリシーとそれに基づいた練習や採用形式に秘訣がある。以下は、会社概要に記載されているパフォーマンスにおける内容である(※1)。
またその一例が、四季の舞台に貫かれている厳格な実力主義です。テレビや映画などで有名なスターを、その知名度を生かしてキャスティングすることはありません。舞台俳優にとって重要なのは、知名度よりも観客を感動させる技術と能力です。俳優は作品を輝かせるために存在するのであって、その逆ではありません。
四季は全ての実力ある俳優たちに門戸を開き、公平なオーディションを通してキャストを決定します。日本の四季以外の劇団や興行会社では、これとは逆の「スター主義」を採るところも少なくありません。しかし四季が、一劇団としては日本最大の観客動員を実現しているのは、作品のクオリティを最優先に考える舞台造りに、多くのお客様が共感してくださっているからに違いありません。(※1)
さらに、キャストの層の厚さが質の高い公演を維持する要因である。『美女と野獣』はロングラン、二部制なので、シフト制になっている。一役あたり2〜3人配役される。この層の厚さが毎年のロングラン公演を支えている。ファンとしては、各キャラクターのキャストの組み合わせが異なるので同じ作品で色々なベル、色々な野獣やガストンを楽しめるのも醍醐味である。推しのキャスト、組み合わせが出来たならそれ目当てに行くのもまた楽しい。それに加え、大人気ナンバーを歌うのだから大号泣である。超有名曲『Beauty and Beast』のダンスシーンでは幸福感と甘く愛しい雰囲気に包まれる。この楽曲は『美女と野獣』のメインソングと言っても過言ではない。しかし、主役である王子とプリンセスが歌唱せずダンスと表情で魅せるという構図が珍しく、観客が没入できるポイントである。曲自体を歌うのはポット夫人だが、「あくまで私は語り部。しかし、王子が本当の愛を見つけたことが嬉しくてたまらない。」といった面持ちと歌声が何とも印象的なのである。
ディズニーには世界中のファンがいる。国内だけでも相当だろう。そのため、期待値やプレッシャーのかかり方が尋常ではない。それでも、毎回その期待すら優に超えてくるのが劇団四季である。どうしても何度も観たくなってしまうのは必然である。
セットと衣装も触れなければならない魅力の一つである。世界観を作るには、背景、小道具、衣装のそれぞれが緻密で再現性の高いものでなければならない。その点において劇団四季のセットや衣装は本当に良く作りこまれている。そのため、美女と野獣の世界観に没入することは容易である。劇場に入って一番最初に思うことは「幕のデザインすげえ。」これに尽きる。金と赤でバラ模様がデザインされており、ベルが作中で進む茨道を彷彿とさせる。ストーリー上、王子に仕える者達が「もの」になっている。歌唱シーンがあるため、小道具で代用することはできない。人間が務めるしかなく「ものらしさ」が無くなりそうなところだが、衣装の形や色彩でクリアしている。むしろ、人間味があり等身大であることから、自分も「もの」になったような気持ちになる。私が印象的だったのは、野獣の姿の王子である。実写映画では、獣感を出すためにモーションキャプチャーを駆使しているのに対して、ミュージカルはメイクと小道具でどうにかしている。顔の部分は人間のもの。体の部分は着ぐるみチックに見える。胸板の厚さやシルエット、ベルと並んだ時の身長差で再現性の高さが伺える。キャストが日本人で構成されているため、国外の作品と比べるとサイズ感は小さいと言えるが、出演者全体のサイズバランスが良いのでさほど気にならない。
初めて観劇する、とセットまで目がいかないだろうが、実は感心することばかりである。ステージは半円型になっており、床が回転する仕組みである。お城のシーンは高低差を上手く利用し城の広大さを表現している。また、冒頭のベルが住む村のシーンでは、暖かな色合いでおとぎ話感が強い。これからベルに起こる壮絶な出来事とのコントラストを表現しているとも取れる。セットや衣装をじっくり見たいのであれば前列を「キャンセル拾い」をしてゲットすると良い。前列でなくても、中央列であれば演出が分かりやすいだろう。
劇団四季は、観客が通る導線にさえ力を入れている。まず、アンフィアシアターの入口前に『美女と野獣』のポスターが大きく掲示されている。そこで一緒に写真を撮る人は多い。パンフレットなどを買って一緒に撮るのも良いかもしれない。ポスター掲示は複数あるので回転率も速い。また、シアター内にはTULLY’S COFFEEがあり施設内で飲食が可能である。
グッズショップは、そこでしか売っていないアイテムばかりで必見である。個人的に小物系がめちゃくちゃ可愛い。私のお気に入りは、バラバッグチャームとチケットフォルダである。バラバッグチャームは大きなバラが特徴的で皮生地になっている。粗めの縫い目が余計に可愛いハート型の金属チャームは向かい合った王子とベルの横顔がデザインされている。加えてリングが二つ付いているのでストラップとしての機能性も高い。続いてチケットフォルダだが、ミュージカルでなくても紙媒体のチケットを保存する際に大変便利である。デザインはメインポスターと同様のものでゴージャスな配色がより特別感を演出している。コスパが良く、お財布に優しい点もおすすめの理由である。
最後に、施設内の写真スポットを紹介しこの節を終えようと思う。劇場を出て施設内右側トイレ付近に設置されているフォトスポットがある。そこには、作品と関わる重要なアイテムオブジェがガラスケースに入っている。今回は、あえて写真を出さない。ぜひ足を劇場に足を運んで確認してみてほしい。そのフォトスポットの背景パネルには日付が掲示されており自分がいつ観に来たのか分かる。記念写真としてうってつけである。別日の公演を観てまた写真を撮る。すると、コレクションが出来上がっていく。きっとその写真を見返してニマニマしてしまうことは間違いない。好きなものを「集める」作業は趣味化への第一歩である。
いかがだっただろうか。劇団四季、ミュージカル『美女と野獣』への「好き」を熱く語ってきた。これを読んで「観に行きたい!」、「少し劇団四季のサイトを開いてみようかな。」と思っていただけたら嬉しい限りである。あとは、劇団四季および『美女と野獣』の魅力の数々が沼へと引きずり込んでくれるので心配は無用である。YouTubeやXにPR動画や稽古場の映像があり、ミュージカルを観に行く前日にはこれらを観てモチベーションを高めておくと良いだろう。また、後方からでもキャストの表情が見えるので、席がステージから遠い場合は双眼鏡やオペラグラスを購入もしくは持参すると良い。
趣味とは、たとえ歴が短く、流行ではなくてもそのコンテンツへの愛さえあれば、いくらでもハマることはできる。もっと言うと、教えられて好きになる場合もあるが、大体は偶然見つけて気づいたらハマってたことがほとんどである。しかし、「好き」を共有することで友人と行く場所が増えたり、バイト先の子と仲良くできるきっかけになるのではないだろうか。
(※1)劇団四季会社概要 劇団四季とは
https://www.shiki.jp/group/company/about.html
(※2)劇団四季会社概要 事業所一覧
https://www.shiki.jp/group/company/office.html
(※3)劇団四季会社概要 上演作品リスト
https://www.shiki.jp/group/company/performances.html
(※4)劇団四季 『美女と野獣』作品紹介
https://www.shiki.jp/applause/bb/#section_2
私の推しは、競馬ファンから天才少年・世界最強馬と称されるイクイノックスです。
戦績は10戦8勝(うちG1・6連勝)。主な勝ち鞍としては天皇賞・秋を2連覇、有馬記念、ドバイシーマクラッシック、宝塚記念、ジャパンカップなどが挙げられます。これらの実績により2022年にはJRA賞最優秀3歳牡馬および年度代表馬、2023年にはJRA賞最優秀4歳以上牡馬および年度代表馬に選出されました。また、2023年にはロンジン・ワールド・ベスト・レースホース・ランキングにおいて、日本の競走馬として史上最高記録の135ポンドを獲得し世界ランキング1位に輝き世界的名馬として知られています。
加えて、種牡馬としては初年度の種付け料としてディープインパクト・コントレイルの1200万円を大きく上回る史上最高の2000万円に設定されました。
私とイクイノックスの出会いは、2021年8月28日、新潟競馬場の芝1800mで行われた彼のデビュー戦でした。レースでは特に注目している馬がいたわけでもなく、ただ漠然とレースを眺めていた私の目に鮮烈な光景が飛び込んできました。それが、イクイノックスでした。
各々の騎手に鞭を打たれながら他の馬が懸命に走る中、ただイクイノックスだけが鞭をほとんど使われることなく、まるで鼻歌でも歌っているかのように馬なりのままに後続を置き去りにしていき、結果的に6馬身差の圧勝でした。他馬と比べてもまだ若駒であることを象徴するような線が細く厚みのない薄い青鹿毛の馬体からは、想像もつかないほどの力強く美しいストライドでターフを駆け抜ける圧倒的な走りに目が釘付けになっていました。このデビュー戦で私は間違いなく、ターフで輝く彼に心を奪われました。
イクイノックスがターフを駆け抜けた全10戦を観戦する中で、私の感情はまさにジェットコースターのように激しく上下しました。彼の存在が、私自身の感情の振れ幅を最大限に引き出したといっても過言ではありません。
デビュー戦の衝撃的な勝利後、イクイノックスはGⅡ東京スポーツ杯2歳ステークスを勝利牡馬クラシックレースの最有力候補の評価を得ました。しかし、その後の皐月賞で初の敗戦となる2着。続く日本ダービーも2着という結果に終わりました。生涯1度きりのクラシックレースであと1歩届かなかった頂点に、まるで自分事のように悔しかったです。しかし、同時に彼への誇らしさも覚えました。当時のイクイノックスの馬体は未熟で厚みが一切なく、虚弱体質から調教も満足に積むことができないと耳にしていました。さらに、2戦連続で大外枠である18番枠という不運まで背負っており、これほどのハンデと未完成さがありながらポテンシャルだけで2着になったイクイノックスを私は誇らしく思いました。
夏を経て、イクイノックスは身体的にも大きく成長しました。虚弱体質も改善され、調教も積むことができるようになった彼は、まるで本領を発揮するかのように躍動していきました。2022年の天皇賞・秋での勝利は、彼の才能がついにG1制覇という形で証明された瞬間であり、私は心の底から喜びました。続く有馬記念も制し、イクイノックスは最優秀3歳牡馬と年度代表馬に輝きました。翌年のドバイシーマクラシックでは、前年の覇者シャフリヤールなど強力なライバルを相手に終始馬なりで鞭を使われることなく3馬身差で圧勝。コースレコードを更新し、世界レーティング1位を獲得しました。
私は、世界一となったイクイノックスに喜びと誇らしさを感じる一方で、「負ける姿を絶対に見たくない。もし負けてしまったら……」と、イクイノックスがレースに負けることに対し極端に恐れていました。特に、帰国初戦となった宝塚記念では出走が発表された直後から私は不安で仕方ありませんでした。コンディションがあまり良くはないという陣営の発言、初の関西輸送、初の阪神競馬場、前走逃げの形をうったことで抑えがきかないのではないかというSNSの意見。なにより、父であるキタサンブラックが2017年の宝塚記念において単勝1・4倍の圧倒的な支持を集めながら大敗したことが頭をよぎり、当日ゲートが開くまで私は毎日ふとした時にイクイノックスのことを考えるたびに不安に襲われました。しかし、イクイノックスはそんな私の不安をよそに、宝塚記念、天皇賞・秋、ジャパンカップとG1を6連勝し現役生活を終えました。
彼の走りを通じて、私は喜び、誇り、そして不安という様々な感情を経験しそのたびに心が大きく揺さぶられました。
そうした感情の中でも、宝塚記念の頃から特に顕著になった「負ける姿を見たくない」という強い不安は、私自身の内面を見つめなおすきっかけとなりました。イクイノックスの勝利が続けば続くほど、私は無意識のうちに彼に完璧を求めていました。それは、イクイノックスの成功がまるで自分自身の成功であるかのように感じられ、彼の輝かしい功績が、私自身の自己肯定感や幸福感に繋がっていたからかもしれません。彼の存在は、単なる「推し」としての応援対象を超え、私の感情や心の安定に強く影響を与えていたことを痛感しました。
イクイノックスとの距離感が、私独自の「推し活」スタイルを築き上げました。彼のデビュー戦以降、ドバイを除く全てのレースと引退式に足を運びパドックでその美しい馬体を目に焼き付けました。
SNS、特にX(旧Twitter)では、毎日イクイノックスと検索することが習慣となり常に新しい情報を追いかけました。レース後には、ファンが撮影した彼の写真を眺めるたびに私は充足感を得ていました。また、グッズ収集にも熱中しアイドルホースぬいぐるみをはじめ、サラブレットコレクションシリーズ、引退を記念したブルーレイ、写真集などイクイノックスの関連グッズなどを集めています。こうした1つ1つの「推し活」は単なる趣味を超え、私にとってかけがえのない心の支えとなっています。
イクイノックスが引退した現在もX(旧Twitter)やYouTubeで彼の近況を追い、種牡馬として管理されている社台スタリオンステーションでの写真や初年度産駒の姿を見ることで日々癒されています。
イクイノックスが私の人生にもたらしてくれたものは、計り知れません。彼の勝利は私に最高の喜びと高揚感を与え、彼の存在そのものが日々のモチベーションとなりました。競馬場に足を運び、SNSで情報を追いかけ、グッズを集める。こうした「推し活」を通じて私の毎日は彩られ、自己肯定感も高まっていったように思います。
イクイノックスは現役を引退し、現役時代以上の大きな期待を背負いながら種牡馬として第2の道を歩んでいます。ターフで彼の走りを見ることは2度とありません。しかし、それは決して終わりではなく2027年には彼の遺伝子を受け継いだ初年度産駒達がターフを駆け始めていきます。彼の紡ぐ血統の物語を追い、その子供たちを応援できることは、私に尽きることのない喜びを与えてくれます。
イクイノックスとは、私にとって、終わりのない夢と希望を見せてくれる存在です。
近年はストリーミング配信サービスの流行や、ショート動画の流行によって、音楽を流し聞きしてしまったり、BGMのようにしてしまったりしていることが多いのではないでしょうか。そこで本稿では、歌詞にこだわりを詰め込んでいるバンド、曲を紹介していきたいと思います。
歌詞にこだわりを詰め込んでいるバンドとして紹介するのは、2018年に大阪の東大阪で結成された三人組ロックバンドのammoです。
ammoの歌詞は、韻を踏んでいたり、同音異義語を多用していたり歌詞カードを見ないと気づけないような言葉遊びをしていることが特徴です。その中でも筆者が特に気に入っている歌詞について紹介していこうと思います。
一つ目は『不気味ちゃん』という曲についてです。〝起きれば午後でそれでも横で〟や〝寝る前のチューか駅前の中華〟〝部屋着は無地だった/二人は無知だった〟など、さりげなく韻を踏んでいる箇所が多くあります。この曲には、ほかにも言葉遊びがされている箇所があります。
それは〝線にならない点と点を絡めあって痺れた千ロ〟という部分です。漢字の千とカタカナのロで(せんろ)と読ませて、〝点と点を〟の部分と韻を踏んでいると同時に、千とロを組み合わせて舌という文字を作ることができます。これを歌詞に当てはめると、絡めあって痺れた舌とも解釈することができ、歌詞の印象や受け取り方が変化します。このような言葉遊びには、ただ曲を聴いているだけでは気が付けませんが、歌詞カードを見ながら曲を聴いてみることで、言葉遊びがされていると気が付くことができるというところがこのバンドの魅力のひとつであると考えています。
https://youtu.be/NtTxqh7B6Ao?si=ZIJ-7h0SCtbBkyfz
二つ目は『何℃でも』(なんどでも)という曲です。この曲はammoのメジャーデビューを記念したEP【※1】のリード曲【※2】であり、彼らのこだわりや多くの言葉遊びが詰め込まれており、メジャーデビューするにあたっての名刺代わりの曲であると筆者は考えています。ここからはこの曲に詰められた言葉遊びの一部を紹介していきます。
まずは、〝I see ってマスカラとセットでBye〟〝愛してますからもピンとこない〟と、1番と2番で歌詞の表記が変わっているという点です。曲を聴いているだけだと二つとも(あいしてますから)という音の聞こえ方は同じですが、表記の仕方を変えるという言葉遊びがされています。
〝切り揃ったショートカットは /気が付いたら北月中にまで伸びた〟この部分は、先ほどの『不気味ちゃん』と同じような言葉遊びがされています。〝気が付いたら〟と〝北月中〟(きたつきなか)で韻を踏むと同時に、北と月を組み合わせることで背という一文字の漢字が出来上がります。これを歌詞に当てはめると、切り揃ったショートカットは背中まで伸びたとなり、ショートカットだった髪の毛が背中まで伸びたという時間の経過を表しているように思えます。
この曲にはこのほかにも歌詞カードを見ないと気が付けないような面白い箇所がたくさんあるので皆さんも聞いてみてください。
https://youtu.be/XOjeAAaw_NI?si=ZQxipiHynEGF5PyV
【※1】:EPとはWikipediaによると、以下のような意味である(2025年5月29日閲覧)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/EP
EP (Extended Play) - 楽曲の販売単位のうち、シングルより収録曲数が多く、アルバムよりも少ないもの。もともとはレコード盤の種類のうち、シングル盤と同じ大きさで片面に2〜3曲ずつ収録されたもの。
【※2】:リード曲とはFSM福岡スクールオブミュージック&ダンス専門学校の用語集によると、以下のような意味である(2025年5月19日閲覧)。
https://www.fsm.ac.jp/career-debut/glossary/4069/
音楽アルバム作品の中で、「アルバムを象徴する曲」 や 「アルバムの顔となる曲」の事を指す。
先ほどまでに紹介した2曲は押韻や歌詞の表記の仕方に歌詞を読むことの面白さが詰められていましたが、ここでは歌詞を深読みすることで面白さを発見することができる歌詞を紹介します。
それは、マカロニえんぴつの『洗濯機と君とラヂオ』という曲の〝君が好きと言ってた/映画をもう16回みた〟という歌詞です。ここで指している映画とは、ボーカルのはっとりさんの元カノが好きだった『マイ・ブルーベリー・ナイツ』のことであるとされており、この映画は1時間半の映画です。16回見ると24時間になるので、1日中君のことを考えていたよという比喩表現なのではないかと考察することができます。また、マカロニえんぴつは「ブルーベリー・ナイツ」という曲をリリースしています。この曲では元恋人への未練の気持ちや、心の揺れ動きを歌ってます。これらのことから、「洗濯機と君とラヂオ」と「ブルーベリー・ナイツ」ははっとりさんが元カノに向けて書いた曲なのではないでしょうか。
歌詞を読みながら聞くと、ただ聞くだけだった音楽に感じる・考える・想像するという要素が加わり、より音楽を楽しむことができます。皆さんにも音楽を読みながら、考えながら聞いてほしいです。
https://www.youtube.com/watch?v=LLYPfI-cFcc
歌ネット「洗濯機と君とラヂオ/マカロニえんぴつ」(2025年5月29日最終閲覧)
https://www.uta-net.com/song/224156/
2025年7月25日 発行 初版
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