起源の章
───西暦2XXX年、世界が終わりかけた。
全世界の首都を同時に襲った超巨大地震。マグニチュード測定不能、推定震度10超。
天文学的には惑星ひとつが消滅してもおかしくない規模───それが、後に“魔震(ましん)”と呼ばれる災厄だった。
だが、被害はゼロ。建物は崩れず、人も死ななかった。
まるで"何か"が、この星を揺らしただけで満足したかのように。
異変は魔震の後に訪れた。
世界各地に“空間の歪み”が不定期に発生し、そこから“異形(いぎょう)”と呼ばれる存在が這い出してきたのだ。
知能を持ち、人間に憑依し、あるいは寄生して内側から乗っ取る───人類は格好の獲物だった。滅亡は、時間の問題かに思えた。
しかし。“異形”と交戦した者たちの中に、“目覚める”者が現れ始める。
───自らの血の奥底に眠っていた“太古の記憶(いにしえのちから)”。
人類がとうに忘れ去った、祖なる者たちから受け継がれし“異能”。
それは“先祖返り”であり、同時に、人という種の隠された真実だった。
各国は“異能”を持つ者を“超人”と認定し、管理機関“ギルド”を設立。
そして日本では、内閣にすら属さない独立行政機関───
“夜狩省(よがりしょう)”
───が、その全てを統べている。
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本書は、文章を読み進めながら選択肢を選び、ポイントを記録していく「ゲームブック&コミック風ノベル」です。10インチサイズでの快適なプレイを想定した、特別レイアウトでお届けします。
冒険を始める前に、以下の【3つの掟】をご確認ください。
◆掟その一:『なりきりクイズ』と地雷の罠
物語の要所では、あなたの知識と直感が試される3択クイズが出題されます。
[正解の選択肢]:見事正解!ストーリーを優位に進めるポイントを獲得できます。
[不正解の選択肢]:残念!しかし、物語はそのまま進みます。
[選んだらアカン選択肢]:痛恨の地雷!選んだ瞬間、キャラクターたちから愛のある(?)罵倒や強烈な洗礼を受ける【お叱り部屋】へと強制送還されます。
◆掟その二:ゲームオーバーによる「読み直し」は不要
選択肢を間違えたり、お叱り部屋に飛ばされたりしても、最初から物語をやり直す必要は一切ありません。お叱り部屋で洗礼を受けたあとは、すぐに本編(ストーリー再開)へと復帰できます。
1つの節を完読すれば、ポイントの有無に関わらず、必ず次の物語へと進むことができる安心設計です。
◆掟その三:ポイントは次巻・オマケへ持ち越し可能
巻末には、スクリーンショット等で手軽に記録できる「ポイントメモ表」をご用意しています。
本作は自己申告制のフリーメモ仕様ですので、ここでたっぷり貯めたポイントは、本編の裏で発生する【断章(オマケストーリー)】の解放に使用したり、そのまま【次巻(続編)】へと引き継いで持ち越すことが可能です。
すべての準備は整いました。
現代の理《ことわり》と古代の神話が交錯する、血脈の迷宮へ。
指先ひとつで、歴史の扉を開いてください──。
【夜狩省】──────【留置所】。
檻の中の冷たい床に、あぐらをかいて座る朔は、ふてぶてしい態度で調書を取りに来た人物に受け答えする。
【夜狩省】の職員の半分は、【国】の行政機関から出向している職員である。
今、朔から聞き取りをしている人物も出向組で朔と同じ【警察庁】の刑事である。
刑事が留置所に入れられて、刑事に調書を取られるという光景だった。
しかも、取調室に連れて行かずに留置所の内と外での問答だ。
なぜか─────それは、朔が刑事であるが【風魔】の【忍】でもあるからだ。
そして、朔を尋問する人物──────日景叶も【忍】である。ただし流派は【伊賀藤林流】だ。
【忍】同士で抗争になるのを避ける為だ。
留置所には、他にも拘留されている者がいてオモシロそうにニヤニヤして朔と叶の問答を聞いている。
留置所に入れられるからには、問題を起こしたのだろうが朔は自分が悪いことをしたと思っていない態度だ。
そして、相手をする叶は態度の悪い朔を注意するでもなく、性別が男で勿体ない美貌の表情1つ変えない。
褐色肌のエキゾチックな美形の朔と透けるような色白肌の白皙の美貌の叶の問答の光景は、目の保養であった。
叶「陵警視正……田原警部へ暴力を振るった理由は、まだ話す気がないのか?」
朔「言葉遣いに気をつけろよ。俺は、警視正……お前は警視……階級は俺が上だろ」
留置所に入れられて階級も、何もないような気がするのだが先程からずっと朔は、質問に答えずに叶の上官に対する言葉遣いの言及ばかりして話が進まない。
どうやら、朔は刑事を凹って留置所行きになったようだ。
朔は、ニ十代の若さで異例の警視正になっているので、叶は然るべき理由があっての暴力行為だと考えて尋問をしているのだが、朔がのらりくらりと躱して全く話にならない。
叶が、ため息をついた時──────【夜狩省】のトップである楠木将成がやって来て、朔を外へ出すよう叶へ指示する。
叶は、理由を聞かずに言われた通りに従った。
朔が質問に答えてくれないので、叶は精神的に疲れていたのだ。引き取り手がいるなら丸投げできるので、一安心だった。
留置所の檻を開けて外へ出された朔は、叶の肩をポンポンと叩いて「お疲れ」と爽やかな笑顔を向ける。
朔のせいで疲れた叶は、形の良い眉を顰めて朔を見るが何も言わずにプイッと顔を背けて去って行った。
朔「千年ぶりの再会だってのに、連れねえ異母弟だ」
朔は、ボソッとつぶやく。常人なら聞こえない声量だったが、将成は【すべての忍】の源流である【楠木一族】なので、彼も【忍】の端くれだ。朔のつぶやきがバッチリ聞こえていた。
将成「叶が異母弟とは、どういうことだ!」
朔「あららー……こりゃ洗いざらい吐かねえとならない雰囲気……」
朔は、観念した。
朔「ヘッド、これから非常に大事な話をする。盗聴されるとマズい!」
拉致するように朔は、将成を連れ出そうとする。
将成「待て待て!俺は、省長なんだぞ。外出の連絡ぐらいさせてくれ!」
朔「チッ……しょうがねえな。あんまり問題起こすのもマズいしな……」
そう言って朔は、将成に連絡する時間を与えてロビーで待つ、と言って留置所生活から解放された。
もっとも、ほんの数時間だが朔が拘束された時点で尋問に答えていれば留置所行きはなかったのだが──────。
第壹節 千年ぶりの再会 【完読】
── 第壹節クリア!
【50ポイント】 を獲得しました!
(※手元のメモ等に「50pt」と記録するか、スクショあるいは暗記して、次の節へお進みください)
➔10ポイント消費して[第貳節 リモート会話① を読む]
朔は「盗聴対策は万全だ」と言って、将成を【風魔の里】へ連れてきた。
将成は内心で嫌な予感を抱いていたが、それが現実となる。案の定、案内された先は里の中枢───【風魔本陣】だった。
自然と背筋が伸びる。
かつて、世界各国を巻き込んだ【異形】対【人類】の大戦───【起源の大戦】。その折、日本に侵攻してきた【異形】を殲滅した【五英雄】のうち、2人がこの本陣にいる。
どちらも将成の亡き父の盟友であり、幼い頃から面識はある。だが、“知っている”ことと“慣れている”ことは別問題だった。
静まり返った室内に、コツコツと障子を叩く音が響く。
すっと横に滑るように障子が開き、僧服を着崩した洸が姿を現した。入室と同時に、音も立てずに背後の障子を閉める。
片手を軽く上げ、「やあ、ヘッド」とだけ挨拶すると、洸はそのまま両手を前に突き出した。
次の瞬間、彼の掌に【チャクラ】が集束し始める。
人体には【チャクラ】を循環させる経路───【経絡】が存在する。だが洸が今練っているのは、外へ放つための術ではなく、内側で練り上げる【勁(けい)】。すなわち、【体内チャクラ】のみを用いた精密制御だった。
これが【忍法】───外部の干渉を一切受けず、術者の肉体と精神の力のみで、無から有(硝子)を「固定」する精密制御の極致だ。
術者のチャクラが尽きない限り、その硝子板は物理法則を無視してそこに在り続ける。
つまり、これは───【忍法】だ。
室内には、朔・将成・洸の三人しかいない。誰も口を開かないため、自然と全員の視線が洸の手元に集中する。
やがて、その意図はすぐに理解できた。
一瞬だった。
何もなかった空間に、透明なガラス板が出現する。
将成は思わず声を上げた。
将成「早いな……! それは、【大鏡】か?」
横幅だけでも100インチは優にある。これほどのサイズとなれば、【四鏡シリーズ】の中でも最大級の【硝子の忍法】───そう考えるのが自然だった。
だが洸は、にやりと笑って首を振る。
洸「違うな。【水鏡】だ。……どうだ? ここまでのサイズを創れる者は、そうはいないぞ」
露骨なドヤ顔だった。
選択肢:
a. を選ぶ
(すごい技術なのは確かだけど……。なんでこの人たち、自分の凄すぎる能力をこういうニッチな家電の代用みたいなことに全力で使っちゃうんだろう……)
と、技術の無駄遣いに静かに遠い目をする。
b. を選ぶ
(このサイズで、水鏡……!? 通常の規格を遥かに超越している。悔しいが認めざるを得ない、この男の精密制御能力は間違いなく『五英雄』の領域だ……!)
と、その圧倒的な実力に内心で戦慄する。
c. を選ぶ
(へー、大きいテレビ画面ですね! これならみんなで大画面の家庭用ゲーム機を繋いで、格闘ゲームの大会を開いたら絶対に盛り上がりますよ!)
と、本陣の緊張感をゼロにするアホな提案を脳内で展開する。
ツッコみマスターの回答です!
問題に再挑戦する。
ストーリーの続きを読む。
忍マスターの回答です!
ストーリーの続きを読む。
(【転生戦士】の精密制御能力をナメると、脳みそまでアメーバにされそうです。真面目に選び直しましょう)
➔[反省して、もう一度問題を選び直す]
将成は眉をひそめる。
将成(このサイズで、【水鏡】……?)
疑問はすぐに口をつく。
洸はあっさりと答えた。
洸「リモート会話用だ」
なるほど、と将成は納得する。【水鏡】をモニターとして用いるのは、確かに一般的な応用だ。
だが───。
将成(大きすぎる気がするな……それに)
通信はどうする?
パソコンなら回線がある。しかし【異能力】に“通信回線”などという概念はない。【属性】に基づく力である以上、単にガラス板を作ったところで通信は成立しない。
現状、この【水鏡】はただの巨大な透明板に過ぎない。
その疑問に答えるように、洸は「こうすればいい」と呟いた。
ガラス板を垂直に立て、その裏面へ手を当てる。
瞬間、【雷遁】が流し込まれた。
すると、透明な板の内部に電気信号の回路が奔る。これは先ほどのような自己完結した力ではない。大気中の電子や性質を操り、情報を伝達する「仕組み」として定着させる技術───すなわち【忍術】だ。
体内エネルギーで現象を起こす【忍法】に対し、外界の【光流(ソーマ)】を媒介にして「物理的な現象(通信)」をシミュレートするのが【忍術】の本質。忍法で創った「モニター」に、忍術という「ケーブル」を繋いだ瞬間だった。
将成は目を見開く。
将成「……光通信システムか!」
洸は軽く肩をすくめた。
洸「あとは向こうと繋がるかどうかだな」
そう言って、スマートフォンを取り出し操作を始める。
朔と将成は一瞬、それをリモコン代わりに使うのかと思った。だが様子が違う。
洸「一寸伯父さん……」
どうやら通話だ。
次の瞬間。
据え置かれた【水鏡】が、テレビの電源を入れたときのように一瞬だけ閃光を放つ。
そして───映像が現れた。
そこには三人の姿。
一寸法師、ウラシマ、そして燎。
二人の顔ぶれから、場所はすぐに推測できる。【ニライカナイ】───通称【竜宮城】だ。
将成は呆れ混じりに呟いた。
将成「燎センパイ……また【竜宮城】に行っているのか」
将成(あそこに、モフモフ生物なんていたか……?)
そんな疑問が脳裏をよぎる。
朔が適当に答えた。
朔「ん? ああ……“男兄弟”で水入らずってやつだろ」
その一言に、将成は勢いよく食いついた。
将成「兄弟!? 誰と誰が!?」
すると、モニター越しの一寸法師が口を開く。
映像は驚くほど鮮明で、音声にもノイズは一切ない。
一寸法師「それは僕から説明しよう」
穏やかな声だった。
一寸法師「将成、改めて自己紹介するよ。陵究。【風魔総帥】影連の長男だ」
続いて視線で促す。
一寸法師「次、ウラシマ」
ウラシマ「陵灼。同じく四男だ」
簡潔な名乗り。
そして――。
燎「フハハハハ! 燎だ! 六男だ!」
頼んでもいないのに、燎が堂々と名乗りを上げた。
将成は思わず顔をしかめる。彼とは面識があり、これまで通り“燎センパイ”と呼ぶ関係だ。
その様子を見て、すぐそばにいた洸がぼそりと呟いた。
洸「……ウザ」
小声だった。
だが、しっかり拾われていた。
モニターの向こうで燎の表情が変わる。
燎「洸。親に向かって“ウザい”とは何事だ」
完全に説教モードである。
将成は内心で感心する。
将成(音声精度も完璧だな……)
すると燎が胸を張って言い放つ。
燎「聞け! このシステムはな……俺と洸が【水遁忍法】の【水鏡】と【雷遁忍術】の【光通信】を媒介にして、【ニライカナイ】と【風魔本陣】を繋いだものだ!」
誇らしげに続ける。
燎「親子だからな。この程度、朝飯前よ!」
あまりにも当然といった口ぶりだった。
だが───。
将成(いや、普通じゃないだろ……)
将成は、先ほど洸が【水鏡】を構築する一部始終を見ていたからこそ断言できる。
これは決して容易な技ではない。
しかし同時に悟る。
将成(この親子に、それを言っても意味はないな……)
常人の尺度など、最初から通用しないのだから。
将成は、半ば諦めにも似た感覚で小さく息をついた。
第貳節 リモート会話① 【完読】
── 第貳節クリア!
【10ポイント】 を獲得しました!
➔10ポイント消費して[第參節 リモート会話②を読む]
将成は、洸と燎が構築した光通信システムを前に、感心と呆れの入り混じった視線を向けていた。常識の枠を軽々と飛び越えるその技量は、もはや人の域を外れている。
──────そのときだった。
遙「朔……暴力沙汰を起こして拘置所にブチ込まれたそうだな」
頭上から不意に声が落ちてくる。
見上げると、【格天井】の一部がわずかに開き、そこから目だけを覗かせた遙の姿があった。
朔「遙……普通に、そこから入って来いよ!」
朔は呆れたように、先ほど洸が出入りした障子を指差す。
遙「ここは【忍屋敷】だぞ。そんな普通の入り方をすれば、屋敷に失礼だろう」
屋敷は無機物である。文句など言うはずもない。遙の理屈は、単に常道を嫌っているのか、それとも本気で敬っているのか判然としなかった。
次の瞬間、遙は微かな衣擦れの音さえなく天井から降り、畳の上へと着地する。
遙「ヘッド、朔が世話をかけたな」
入室の仕方は常識外れでも、対人の礼は弁えているらしい。
そう言ってから、遙はすぐに朔へ視線を向けた。
遙「で、何で殴ったんだ? しかも倒れた相手に馬乗りで、更に殴ったらしいじゃないか」
“らしい”とは言っているが、その語り口はまるで現場を見ていたかのように克明だった。
洸「エグいな! 朔……お前、ボクシングの元世界チャンピオンだろ。お前の拳は凶器なんだぞ!」
洸の言葉に、ウラシマが勢いよく反応する。
ウラシマ「マジか! すげぇな! その体格の階級って、一番人口多いとこじゃねえのか?」
興味津々といった様子に、朔は肩をすくめた。
朔「戦場でドンパチやってた遙に比べりゃ……スポーツを頑張った程度でしかねえな」
卑下ではない。ただ、銃弾が飛び交い爆薬が炸裂する戦場と比べれば、ルールに守られたリングの上の殴り合いが、どうしても“安全な競技”に思えてしまうだけだった。
話題が自然と暴力沙汰へと戻り、将成が口を開く。
将成「そうだ、朔。なぜ田原(たわら)警部をあそこまで殴ったんだ? ボクシングの世界王者の拳(コブシ)なんて、鉄アレイみたいなものだぞ!幸い田原警部は、脳震盪で気絶で済んだが……現場の床は陥没して凄惨な状態だったぞ。俺の知る限り、彼は好青年だ。殴られる理由がわからん!」
朔「ここで問題だ。俺は、田原真陽(たわらしんや)という刑事(階級:警部)を半殺し状態に殴った」
遙「おいおい……嘘つくな。元世界チャンピオンの拳で半殺しで済むわけねえだろ」
洸「生殺しだな!」
将成「それ、マジで死んでるから!」
朔「出題中に割り込むな!」




忍マスターの回答です!
洸「お、正解。やっぱり警察の階級社会だし、下の奴が何かやらかしてキレさせたんじゃねえのかって思ったんだよな。……まあ、実際はそんな生易しい理由じゃなかったわけだけど」
遙「普通の【人間】の常識なら、警察の上下関係で片付くからな。ヘッド(読者)もしっかり文章が読めている証拠だ。5ポイントをやるよ。……だが、物語はここからさらに加速するぞ!」
➔[問題に再挑戦して、10ポイントを狙う!]
➔[ストーリーの続きを読む。]
スーパー忍マスターの回答です!
洸「なっ……!?すげえなヘッド(読者)、これから俺たちが話す予定の、物語の裏の核心(前世の因縁)を完璧に見抜いてやがった……!」
朔「フッ……大正解だ。さすがはスーパー忍マスター。ただの警察のトラブルじゃねえ、あの田原って男は、【古代】で一寸も知ってる日子坐(ヒコイマス)の“一番問題児”のガキ……【真若(マワカ)】の転生体だ。俺の野生の勘が、あのクソ野郎の魂の激臭を嗅ぎつけたから殴った。それだけだ」
一寸法師『未公開の伏線を一発で見抜くなんて、【夜狩省省長】の肩書は伊達じゃないね!文句なしの10ポイント獲得だよ!』
➔[ストーリーの続きを読む。]
(いくら朔が豪快だからといって、顔の良さだけで国宝級の拳を振るう暴君ではありません! 罰として大ダメージの10点減点です。猛省して選び直しましょう!)
➔[反省して、もう一度問題を選び直す]
洸「脳震盪で済んだのか?ソイツ【人間】じゃねえな。けど……警部なら、朔より二階級下だろ。何かやらかしてキレさせたんじゃねえのか?」
洸は、警察という階級社会の中での“締め”の一環だったのではと推測する。
遙「【怪物くん】だな!朔の左ストレートは【国宝級】の【刀剣】と同じだ。これを食らって、脳震盪で済む奴が【人間】のわけがない!」
遙の言葉に、洸が遙へ「巨大ブーメランが刺さってるぞ」とツッコむ。
ウラシマ『【怪物くん】の遙に【怪物くん】呼ぼわりされる田原とやらは、どんだけだよ』
モニターの向こうでウラシマも便乗してツッコんだ。
朔は小さく鼻を鳴らした。
朔「好青年ねえ……今はそうでも、いつ本性表すか知れたもんじゃねえ」
ぼそりと呟いたその一言は、しかし【忍】たちの耳にははっきりと届いていた。
一寸法師『好青年には“裏の顔”がある……ってことかな?』
モニター越しに、一寸法師が問いかける。
朔「……【古代】で一寸も知ってるクソ野郎だ……【日子坐】の“一番問題児”のガキ」
その言葉に、真っ先に反応したのは燎だった。
燎『イマスの……!真若か!』
燎は、声を上げると同時に殺気を漲らせた。
一寸法師『燎!落ち着いて!お前が殺気立った【チャクラ】を放出したら、九州地方が水に沈むから!』
一寸法師が、【海の先住王・大海主之王】の【転生戦士】である燎の起伏次第で、近隣周辺が水没すると言った。
【ニライカナイ】は【異世界】なので、外の状況は判らないがおそらく今ので外で遊泳していた【海の民】たちが、こぞって【ニライカナイ】に戻って来ることだろう。
ウラシマ「そうだそ。燎、まず最初に【ニライカナイ】が壊滅する!これから戻って来る【人魚】や【天女】たちが路頭に迷う!」
ウラシマは、非常に現実的な意見を言った。
【転生戦士】とは、【前世】の【精神と魂魄】を引き継ぐだけでなく【回生】(※永遠に転生を続けること)の度に【チャクラ】を増し強化される特典付きなので、燎がキレるのは非常にマズいのだ。
話の流れについていけず、将成は完全に取り残される。
そこへ遙が割って入った。
遙「朔と燎だけ分かって、俺らは放置かよ」
洸「ヒコイマスって……【古代史オタク】が飛びつきそうな、あの【皇族】か?いや、当時はそういう言い方しねえか」
洸の言葉に、一寸法師が補足する。
一寸法師『【天孫族】だよ』
ウラシマ「子や孫だけで独立国家が作れるって言われた、あの皇子な」
ウラシマは、【漂泊の者】(転移者)として【古代】を実体験した記憶から、確信をもって言った。
しかし将成にとっては、情報過多もいいところだった。
将成「燎センパイ、一寸殿、ウラシマ殿……まずは、あなた方は本当の兄弟か否かをハッキリさせてもらえませんか?」
話題が飛びすぎて、理解が追いついていない。もっともな要求だった。
将成は、燎の義弟(燎の妹の配偶者)と学生時代は同期だったので、その繋がりから燎とも旧知の仲である。故に兄弟関係は網羅しているはず───だった。
【竜宮城の王】ウラシマと【竜宮城の影の帝王】一寸法師が燎の兄というのは初耳なのである。
つまり将成は義兄弟の契りを交わしていると思っているのだ。
朔「……そりゃそうだな」
朔も同意する。
するとモニターの向こうで、一寸法師が頷いた。
一寸法師『じゃあ、僕から説明するよ。将成は、究と灼――燎の異母兄たちの名前は知っているよね?』
将成「はい、知っています」
一寸法師『その究が僕で、ウラシマが灼。そしてもう一人……【鶴姫】が欅だよ』
将成は息を呑んだ。
将成「では……【風魔総帥】の【第一夫人】の御子たちは、消息不明とされていましたが……実は生きていて、名を変えていたと?」
【α異能力者】は【重婚】を推奨されるのが現代だ。許可ではなく、激推しされる。【起源の大戦】の【英雄】は、当然【α】──────【風魔総帥】には妻が二人いた。
一寸法師『生きていた、という点は正解。名前も……まあ、結果的に変えた形にはなるね。現代に戻ってきたから戻してもいいんだけど、もう今の名前で定着しちゃってるし』
軽い口調ではあったが、その内容は決して軽くはない。
すなわち───
一寸法師、ウラシマ、そして鶴姫。その三人こそが、かつて消息を絶った【風魔頭領】の“亡き第1夫人”の子らだったのだ。
将成「……わかりました」
将成はゆっくりと頷く。
そして、思わず本音が漏れた。
将成「【鬼狩り三兄弟】が、【風魔総帥】の御子……【風魔頭領一族】……なんて人材の宝庫なんだ」
夜狩省の長としての、偽らざる羨望だった。
第貳節 リモート会話② 【完読】
── 第貳節クリア!
【10ポイント】 を獲得しました!
➔10ポイント消費して[第肆節 リモート会話③を読む]
将成は、ぼやくように口を開いた。“出向組”は命令違反が常習で、挙げ句の果てには【夜狩省】の正規職員ですら、自分のことを“父の跡を継いだだけの世間知らずのお坊っちゃん”扱いする───そんな不満が、次々と零れ落ちていく。
それを聞いた洸は、露骨に顔をしかめた。
洸「うわっ……超メンドくせー」
あからさまな反応に、将成がさらに何か言い返そうとした、そのときだった。
「誰が、君を世間知らずのお坊っちゃん呼ばわりしたのかね?」
不意に差し込まれた声に、一同の視線がそちらへ向く。
そこに立っていたのは、甲賀望月一族総帥・癸と、その孫の満だった。満は腕の中に幼い息子を抱いており、子どもはすやすやと眠っている。どうやら昼寝の最中らしい。
癸は、淡々とした口調で言った。
癸「君たち、ずいぶんエキサイトしていたね。ノックしてもまったく反応がなかったから、勝手に入室させてもらったよ」
【忍】として鍛えられた鋭敏な聴覚をもってしても気づけなかったほど、彼らは会話に没頭していたのだろう。
しかし、そんな空気を一瞬で吹き飛ばす勢いで、満が声を荒げた。
満「【ヘッド】、どないなっとんねん!【伊賀】の【ゲスクソ忍】が、朔を拘留したそうやないか!しかも【藤林】や!あいつらに、俺ら一族を拘束する権利なんぞあらへんで!むしろ狩られる側やろ!」
【甲賀】と【伊賀】の不仲は周知の事実だが、満の怒りはそれだけでは説明できないほど苛烈だった。そこには、もっと根深い確執が滲んでいる。
その剣幕に驚いたのか、満の腕の中で眠っていた幼児が目を覚ました。小さな手を伸ばし、父に何かを伝えようとする仕草を見せる。
その様子に、朔と遙はすぐに察した。
朔「ミッチ……お前の息子は親孝行だな」
遙「必死に手を伸ばして、お前の怒りをなだめようとしてるぞ」
そして、子どもに頭を撫でさせてやれと促す。
満は眉を寄せた。
満「どういうことや?」
整った顔立ちに浮かぶその表情は、どこか舞台役者のような華やかさを持っている。
癸が静かに説明した。
癸「頭を撫でれば、怒りが収まると思っているのだよ」
子育てを経験した者には、子どもの意図が手に取るように分かるものらしい。
満「そうか……尊はええ子やなあ。オトンに気ぃつこてくれるんか」
満はそう言って、息子の小さな手に自分の頭をそっと押し当てた。くせ毛でふわりとした髪が気に入ったのか、尊は嬉しそうに両手でそれを掴んではしゃぐ。
満「いや〜、我が息子ながら尊はほんまに出来た子やで!俺の怒りのチャクラを瞬時に察知して、ちっちゃい手ぇ伸ばしてなだめてくれるんやからな。
……っと、ここで画面の前の【ヘッド(読者)】に問題や!
緊迫しとったその場の空気を一瞬でハッピーに変えた、この時の尊の『尊すぎる行動』として、正しいのは次のうちどれや?」
選択肢:
➔[a.を選ぶ]
「満のくせ毛でふわりとした髪を、ちっちゃい両手で嬉しそうに掴んではしゃいだ。」
(父親の髪の毛の触り心地がよっぽどお気に召したようやな!)
➔[b.を選ぶ]
「満の代わりに、モニターの向こうの燎叔父ちゃんに向かって『おんちゃ、がんばえー!』とバブみ溢れる声でエールを送った。」
(義父からの塩対応に泣きそうな燎叔父ちゃんを救う、天使の激励や!)
➔[c.を選ぶ]
「あまりの部屋の緊迫感に耐えかねて、実世界から【ニライカナイ】の海まで届くほどの超音波のギャン泣きを炸裂させた。」
(別の意味で全員の背筋が凍りついて、話し合いどころじゃなくなるやつや!)
ツッコみマスターの回答です!
満「おいおいヘッド、気持ちはわかるけど盛りすぎや!
b.の『燎叔父ちゃんへのエール』はな、やってくれたら俺も燎叔父ちゃんも嬉しくて泣いてまうけど、尊はまだそこまで喋れへんし、そもそも燎叔父ちゃんはモニターの向こうや!」
➔[問題に再挑戦する。]
➔[ストーリーの続きを読む。]
忍マスターの回答です!
満「せや、大正解!尊は俺が頭を差し出したら、そのふわりとしたくせ毛を嬉しそうに両手で掴んではしゃいでくれたんや。あのごっつい張り詰めた空気が、一瞬でマイナスイオン空間になったわ。いや〜、ほんまに親孝行な息子やで!」
朔「ミッチ、お前が親バカモード全開になるのはいつものことだけどな。……まあ、あの状況で尊が癒やしになってくれたのは事実だ。ヘッド、正解の5ポイントをくれてやるよ」
遙「英才教育して、将来は『鬼狩り』ならぬ『親バカ狩り』の【忍】になってもらうか」
満「誰がバカ親やねん!」
➔[ストーリーの続きを読む。]
(満の親バカトークの裏にある、正確な事実の描写を見落としてしまったようです。尊くんの可愛さに免じて、もう一度深呼吸をしてから真面目に選び直しましょう!)
➔[反省して、もう一度問題を選び直す]
➔ [ストーリーの続きを読む。]
その微笑ましい光景に、先ほどまで張り詰めていた空気は、自然と緩んでいった。
やがて、癸はモニター越しに一寸法師やウラシマと挨拶を交わす。しかし燎に視線を移した瞬間、態度は一変した。
癸「君もいたのかね」
明らかな塩対応だった。
燎は抗議する。
燎『義父上……兄上たちと自分との対応に温度差を感じますが!』
その言葉に、癸は感情の読めない目を向け、はっきりと言い放った。
癸「私から娘を奪った男なんだから、憎たらしいに決まっている」
あまりにも直球な物言いだった。
満「祖父ちゃん……燎叔父ちゃんは甥やないか」
満がフォローを入れるが、癸は首を横に振る。
癸「燎が私の娘・百合子を奪っていった時点で、叔父と甥の関係など破綻したのだよ」
モニターの向こうでは、一寸法師とウラシマが他人事のように呟く。
一寸法師『癸様の娘さんをお嫁さんにしてなくてよかったね』
ウラシマ『だよなー』
その軽口に、朔が問いを投げた。
朔「それじゃあ、癸祖父様の息子を婿にした俺らの母親は?」
癸はあっさりと答えた。
癸「棗には感謝しかないよ。政略結婚とはいえ、あの出来損ないの愚息の嫁になってくれたのだからね」
どうやら息子への評価は、極めて低いらしい。
遙「燎は、俺らのクソ親父と同列かよ」
遙は鼻で笑ったが、その声音にはどこか自嘲が混じっていた。
そして、彼はすぐに話題を切り替える。
遙「それより、【鬼狩り兄弟】って名前、めちゃくちゃカッコよくね?」
厨二心をくすぐるその響きに、目を輝かせている。
洸「いや、ちょっと待てよ。俺の父親と祖父がいがみ合ってるんだぞ?」
洸がツッコミを入れるが、癸は涼しい顔で言った。
癸「その疑問はすぐに解消してあげるよ。孫は目に入れてもいいくらい可愛い。だが――娘を奪った婿は、ただただ憎たらしい」
その背後に、どす黒い気配が立ち上る。
洸「地雷踏んじまった……」
洸は引きつった笑みを浮かべた。
一方で、唯一の部外者である将成は、燎に深い同情を寄せていた。
将成(英雄から私情で恨みを買うなんて……燎センパイも苦労しているんだな)
目の前にいるのは、起源の大戦を終結させた五英雄の一人――癸。さらに風魔総帥夫婦も含めれば、ここには三人もの英雄が揃っている。
そのうちの一人から、解消不可能に思える恨みを向けられている燎。
それに比べれば、自分の悩みなど些細なものだと、将成は思わずにはいられなかった。
思いがけず、燎と癸の関係が、将成の心を軽くしていたのである。
そのとき、モニターの向こうから一寸法師が声をかけた。
一寸法師『【ユニット名】の由来、話してもいい?』
朔「【ユニット名】って言い方、なんかチャラいな」
朔がぼそりと呟く。
しかし遙も洸も満も、期待に満ちた目で続きを待っていた。
一寸法師は頷く。
一寸法師『僕とウラシマと鶴姫はね、【漂泊の者】の【境界を越えし者】っていう【亜神のギフト】を持ってるんだ。まあ、わかりやすく言うと【チート能力】だね』
その言葉に、場は一気にざわめいた。
遙「チートスキルって言わないんだな」
洸「転移者だぞ?むしろこのネーミングが常識だろ」
満「なんや、めっちゃ期待持てそうな名前やんけ」
三者三様に盛り上がる。
一寸法師は苦笑しつつ、続けてもいいかと確認した。
どうぞ、と声が揃う。
一寸法師『僕たち三兄弟の力……【境界を越えし者】の力はね、“人外特攻”なんだ。だから、先住者最強の鬼神を一瞬で倒せる。それで【鬼狩り】って呼ばれるようになったのが最初だよ』
その説明に、一同は納得するように頷いた。
一寸法師は、【ギフト】と言おうとしたが、3人の甥たちの過度な期待に言葉の字数の多い【境界を越えし者】という言い方をわざわざした。そのために少し間があった。
どうやら【鬼狩り兄弟】という異名は、彼らの持つ規格外の力───【亜神のギフト】に由来するものらしい。
第肆節 リモート会話③ 【完読】
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一寸法師は、自分たちの【漂流】(転移)について、【チェンジリング】だと語った。
その言葉に、癸が静かに補足する。
癸「【チェンジリング】というのは、本来は【妖精】が人間の赤ちゃんと【妖精】の子どもを入れ替える現象のことだ。……だが、究たちの場合は代わりに妖精が来たわけではない。となると、原理は少し違うのかもしれないね」
童話で語られるそれとは、似て非なるもの───そんな印象だった。
しかし、その話題に食いついたのは洸だった。
洸「【妖精】か……あいつら最悪だぞ。自己中だし、イタズラは笑えねえレベルでタチ悪いし……一番最悪なのは、人間のガキが【異形のバケモノ】に食われてるのを、笑いながら見てるってとこだな」
あまりにも生々しい内容に、場の空気が一瞬で冷える。
将成は思わず眉をひそめた。
将成「洸……お前、【妖精】に恨みでもあるのか?」
同時に、満の腕の中にいる尊(たける)の存在が気にかかる。幼子に聞かせるには、あまりに刺激が強すぎる話だ。
だが、満はあっさりと頷いた。
満「いいや……ヘッド、それガチやで」
さらに追い打ちをかける。
満「尊(たける)のことは気にせんでええ!俺は【妖精】見たら、両手でパンして潰せ言うてるからな!」
どうやら、【妖精】は蚊と同列の扱いらしい。
将成は内心で、教育方針に一抹の不安を覚えた。
そんな中、朔が別の角度から説明を加える。
朔「ヘッド、【妖精】ってのは【東洋】じゃ【天邪鬼】って呼ばれる【小鬼】だ」
将成「【イタズラ好きの小鬼】が【妖精】と同じ……?」
将成は困惑する。【夜狩省】の長として、日本の【あやかし】や【怪異】については熟知しているはずだが、その認識が揺らぐ話だった。
「フン……ショックで現実逃避か?まあ無理もないが」
鼻で笑いながら入ってきたのは環だった。
ここ【風魔本陣】は彼女の実家でもあるため、ノックもなしに入ってくる様子は実に自然だ。その後ろには凱の姿もある。
【風魔頭領】である環と、【副頭領】である凱───いわゆる【風魔頭領夫婦】の登場で、場の空気がさらに賑やかになる。
続いて、梓が蘇芳の腕を掴むようにして入室してきた。
その様子を見て、洸がすぐさま反応する。
朔「シスコン、ウザい」
朔が一刀両断する。
洸と梓は二卵性双生児の兄妹だが、洸の反応は過剰だった。
遙「洸……よく見ろよ。あれ、腕組んでるんじゃなくて、掴まれて連行されてるぞ」
遙が呆れたように指摘する。シスコンフィルターがかかっている洸には、どうやら正確な状況認識が難しいらしい。
そのやり取りを横目に、将成はますます自分の立場を実感していた。
増えていく【風魔頭領一族】の面々。その中で、自分だけが明らかに部外者だ。
もっとも、蘇芳も本来は同じ立場のはずだった。赤子の頃に【漂流】(転移)してきた彼は燎に拾われ、そのまま後見を受け続けている。しかし今や完全に“身内”として扱われている。
その違いに、将成は軽くため息をついた。
満「ヘッド、アウェイ感ハンパない顔しとるな」
満が苦笑する。
満「……けど、しゃあない。それもこれも盗聴・盗撮する【夜狩省】が悪いんや!」
痛いところを突かれ、将成は言葉に詰まった。
このままでは不利だと判断し、話題を本筋へと戻す。
将成「一寸殿たちは……誰かと入れ替えられた、ということでしょうか?」
一寸法師は頷いた。
一寸法師『ヘッドは頭の回転が早いね。そうだよ。その考え方でいい』
凱「将成は万年成績トップの秀才だからな」
凱がさらりと言う。
さらに燎が続けた。
燎『同期には【鬼道衆】のツートップや、先日退位した【六代国王】もいた。それを抑えての成績トップだ。もっとドヤっていいぞ、ヘッド!』
環「兄上は、どこから目線だ?」
環が呆れながらも、ドヤることに許可などいらないと笑う。
気づけば、またしても話題の中心が将成になっていた。
一寸法師はそれを察し、自然に話を戻す。
一寸法師『でもね、僕たちの【チェンジリング】は、ただの入れ替えじゃなかったんだ』
そして、静かに続けた。
一寸法師『僕とウラシマと鶴姫は、失踪扱いだったよね』
癸「そうだね。通常の【チェンジリング】なら、代わりがこちらに来るはずだ。だがそれがなかったから、消息不明になった」
癸が補足する。
癸「しかも、その期間は“3分の2世紀”だ」
聞き慣れない表現に、将成は少し考えてから言った。
将成「半世紀以上、一世紀未満……ということですね」
癸は小さく頷く。
すると、ウラシマが遠い目をして口を開いた。
ウラシマ『こっちじゃあ、たったの六十〜七十年か……。俺と兄者は、二千年かかって戻ってきたんだけどな』
その言葉に、場が静まり返る。
彼らは【漂流先(※転移先)】である【古代】から、【現代】に至るまで二千年以上を生き抜いてきたのだ。
癸「灼は名前の通り、浦島太郎になったわけだね。ところで、なぜその名を名乗ったんだい?」
癸の問いに、ウラシマは首を横に振った。
ウラシマ『癸様、それは違うぜ。俺は確かにお伽噺の浦島太郎のように【竜宮城】で何千年も過ごした。でもな……』
そして、にかっと笑う。
ウラシマ『俺には、帰って来た時に迎えてくれる親兄弟や親戚がいたからな!』
その一言に、場の空気が一変した。
モニターの向こうでは、燎が号泣している。こちらでは癸がそっと目元を拭ったが、一同がそれには触れずスルーした。
感動するポイントが同じあたり、この二人は案外気が合うのかもしれない。
将成(……この二人、仲が悪いのか良いのか、もはや判別不能だ)
と将成の思考を他所に満の「ええ話や」のひとことが、静かにその場を締めくくった。
伍節 リモート会話④ 【完読】
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ドンッ!
庭のほうから、空気を震わせるような爆発音が響いた。
将成「っ!?」
将成だけが、はっきりと肩を揺らして驚く。対して、その場にいた【風魔頭領一族】と癸、満は、まるで遠くで風鈴が鳴ったかのような顔をしていた。
慣れ、というよりも、日常の範疇なのだろう。
縁側の障子が開けられる。
そこに立っていたのは、桂と絹───宝塚の舞台からそのまま抜け出してきたような、一卵性双生児の美男子だった。
桂は、まるで舞台の主役を張る貴公子のように、ゆるやかなウェーブを描く長い黒髪を背に流している。その姿は、まさに“動く絵画”。一方の絹は、対照的に整えられたストレートロング。濡れたような艶を帯びた黒髪は、光を受けてさらりと反射し、静かな湖面のような美しさを湛えていた。
例えるなら、桂は“炎をまとった黒薔薇”、絹は“月光を映す黒曜石”───同じ黒でも、質の違う輝きを放っている。
桂「おや、少し火力が強すぎたか。……だが、これで障壁の強度は証明されただろう?」
絹「……兄上、証明する前に将成殿が心臓を止めていたら、始末書では済みません」
悪びれもなく言った桂へ朔が物申す。
朔「爆発音を“ちょっと”で済ませるとは……いい度胸だな」
朔が呆れ半分に返すと、絹は将成へきちんと頭を下げた。
絹「すみません、驚かせてしまって」
兄が“嵐”なら、弟は“静寂”───そんな対比が、その一言だけでよく分かる。
二人は庭で【鬼道】の検証をしていたらしい。桂が【風魔六番隊元帥】、絹が【少将】。そして何より、彼らもまた【風魔頭領一族】の一員───燎の長男と次男だ。
桂は室内を見渡し、癸と満に気づいた。
桂「おや、早退か?」
本来なら勤務時間のはずだ。癸と満は【夜狩省】との兼業である。
遙「朔、桂と絹に集合かけなかったのかよ」
遙が、まるで裏社会の寄り合いでも開いているかのような口調で言う。左目が眼帯のせいか、その雰囲気は妙に説得力があった。
朔「L◯NEは送ったんだがな……既読スルーどころか、未読だ」
つまり、見てすらいない。
その間にも、モニター越しの面々は好き勝手に盛り上がっていた。
棗『今の爆発音は襲撃か!?』
欅『完膚なきまでに叩きのめしただろうな』
【ニライカナイ】では、来たばかりの棗と欅は完全に戦闘前提で話を進め───
瑪瑙「アニキ(朔)にボコられた奴がリベンジしに来たのか?」
こちらでは、到着直後の瑪瑙がさらに勘違いを重ねる。
その背後には【鬼道衆】のツートップまで控えており、場はもはや収拾のつかない“お祭り状態”だった。
ただ一つ、将成にとって救いだったのは───完全アウェイではなくなったことだ。
同じく“外様”に近い立場の者が増えたことで、孤立感がほんの少し和らいでいた。
遙「内容によっては、日光殿と月光殿にも共有が必要になる。だから瑪瑙に迎えに行かせた」
遙が淡々と説明する。
一瞬、将成は“自分のための配慮か”と考えたが、すぐに違うと理解した。
この一族は、そんな回りくどい気遣いをするタイプではない。
朔「まあいい。昔話をする。お前らも中に入れ」
朔が言い、桂と絹を室内へ招き入れる。
そこで将成は、改めて気づいた。
この場にいる人間たちは、まるで“高層ビル群”のようだと。
見上げるほどの長身ばかりが並び、圧迫感すらある。洸、絹、満でさえ170センチ台後半───“平均より高い”はずなのに、この場では“中層階”にしか見えない。
他はほとんどが180センチを超え、凱に至っては190センチ超えの“超高層”。
将成自身も190センチあるが、この場ではようやく“並んだ”程度の感覚だ。
女性陣も例外ではない。環は成人男性の平均を軽々と超え、瑪瑙もほぼ同等。唯一小柄に見える梓ですら、単体で見れば“充分に高い”。
つまり───ここでは“普通のサイズ感”が、完全にバグっているのだ。
モニター越しも負けていない。ウラシマと燎は190センチ超え、棗と欅も180センチ台の長身。バレーボール選手に混じっても違和感がない高さだ。
そんな中で、一寸法師だけが例外だった。
小中学生のような見た目の小柄な体格───だがそれは、逆に“黒い画用紙に一滴落ちた白い絵の具”のように、強烈な存在感を放っている。
大きい者たちの中で、小さいというだけで、目を奪われるのだ。
将成(……なるほどな)
将成は、ようやく理解した。
なぜ自分が、この“宴会場のように広い部屋”に通されたのか。
この“高層ビル群”を一室に詰め込めば、普通の部屋では息苦しくなる。だからこその広さ、そして高い天井。
もっとも、日本家屋である以上、限界はある。
身長190センチ超えの者たちは、出入りのたびにわずかに膝を折らなければならない。
朔はギリギリで回避していたが、将成は少し頭を下げて入室した。
そして遙は、なぜか天井から入ってきた。
将成(……あれ、頭ぶつけるのが嫌だからじゃないか?)
そんな疑念が、ふとよぎる。
改めて、将成はこの場を見渡した。
規格外の実力者たち。常識外れの能力。そして───舞台俳優のような美貌。
まるで“最高級の素材だけで作られたフルコース”のような一族だ。
将成(人材豊富ってレベルじゃないな……)
思わず、そんな感想が漏れそうになる。
ここにいるのは、ただの人間ではない。
“役者は揃った”───その言葉が、これ以上なく似合う光景だった。
第陸節 リモート会話⑤ 【完読】
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音もなく襖が滑るように開き、その場の空気が一変した。現れたのは【風魔本陣】の主───陵影連と、その妻・篁甲。並び立つ二人の姿は、静かでありながら圧倒的な存在感を放っていた。
将成、日光、月光の三人は、言葉を交わすよりも早く、自然と背筋を伸ばし姿勢を正していた。場の主が誰であるかを、身体が本能的に理解している。
朔「御大登場だな」
遙「今の登場シーンで、関心全部持って行かれた!」
洸「もう影連祖父様が主役でよくね?」
そんな張り詰めた空気とは裏腹に、影連の孫たちは好き勝手にメタな感想を口にしている。
モニター越しの面々の反応も様々だった。一寸法師はどこぞの貴族のように優雅な礼を取り、燎と棗は軽く「やあ父上、母上」と挨拶する。対してウラシマと鶴姫は「オッス父上、甲様」と、実にフランクな調子だ。
なお、風魔総帥夫婦が別姓なのは、【忍】の世界では名字など適当に名乗るのが常であり、結婚を機に変えること自体が面倒だから、という極めて実務的な理由に過ぎない。
実際、影連の娘である環は【陵】姓のまま、夫の凱は【龍紋】姓を名乗っている。
一方で燎は例外的に、妻の【篁】姓を選んでいた。それは【甲賀望月一族総帥】・篁癸と同じ姓である。もっとも、その癸は燎に対して塩対応を貫いているのだが、同姓を許しているあたり、単なる拒絶ではなく独特の距離感のコミュニケーションとも言えた。
癸「影連さん、姉上……いつから聞いていたのですか?」
癸の問いに、影連は当然とばかりに答える。
影連「無論、初めからじゃ」
日本家屋の造り上、襖一枚隔てた続きの間にいれば、会話は筒抜けだ。影連と甲はすべてを聞いていたのである。
そう言い切ると、影連は改めて場にいる面々───【夜狩省】のトップと【鬼道衆】のツートップに目を向け、ゆるりと口を開いた。
影連「伊勢の若(日光)、将成、里見の若(月光)……よう参られた」
【伊勢家(後北条の始祖一族)】は【風魔】の【主家】である。そのため、影連が将成よりも日光を優先するのは、ごく自然な序列だった。
なお、影連と甲は普段、【変化(へんげ)の術】で老いた姿を装っている。しかし今は違う。現れているのは、本来の若々しい姿だった。
彼らのように【超越の者】となった者───いわゆる先祖返りを果たした存在は、寿命の枠を越え、不老に近い長命を得る。老いは訪れない。
ではなぜ、わざわざ老人の姿に化けているのか。
理由は単純で、そして少々物騒だった。
そしてそのたびに───
甲が半殺しにし、影連がさらに追い打ちをかける。
結果、死屍累々。
その光景をこれ以上増やしたくないという、ある意味での配慮から、甲は自ら老いた姿を選び、影連もそれに付き合っているのだった。
世間で言われる“厳格で冷酷な風魔総帥”の実態は、ただの愛妻家であり、その妻は夫以外の男を武力で排除することに一切の躊躇がない、“極端に一途な人物”だった。
そんな影連が、ふいに口にしたのは、穏やかとは程遠い言葉だった。
影連「朔を留置所へ入れた【藤林】への報復はいかがする」
場の空気が一瞬で凍りつく。
将成「【総帥】!お待ちください!」
将成が慌てて制止する。
将成「朔が拘留されたのは、いきなり暴力を振るったからです!」
事情を説明すると、田原警部は朔に殴られた人物であり、彼は今回拘束を行った日景警視のバディだった。つまり、仲間が暴行されたために介入した───誰が見ても、朔に非がある状況である。
だが、影連はわずかに目を細めただけだった。
影連「暴力行為については、朔に非があると認めよう。しかし───【伊賀藤林流】は別じゃ」
その声には、静かな怒気が滲む。
その鋭い視線は、整った顔立ちゆえになおさら凶悪さを増し、将成たちは思わず息を呑んだ。
気を抜けば、この場で失禁してしまいそうなほどの圧迫感。
その極限状態を断ち切ったのは、意外な人物だった。
梓「ちょっと待ってください」
梓の一言である。
その瞬間、あれほど濃密だった殺気が嘘のように消え去った。
影連は、甲に瓜二つの孫───梓に対して、とことん甘いのだ。
この場で彼を止められるのは、まさに彼女しかいなかった。
救いの一声かと思われたその提案は、見事に期待を裏切った。
三十代半ばの男たちに対して、まさかのオムツ推奨である。
日光「梓嬢……なぜ、私らにオムツを?」
慎重に問い返す日光。その選択は正しい。【主家】である【伊勢家】の人間であれば、多少の無礼も許される余地がある。
梓は、きっぱりと言い切った。
梓「これからの話で、影連お祖父さまは何度もキレます。そのたびに……我慢できますか?」
ぐうの音も出ない正論だった。
三人は互いに顔を見合わせる。失禁の屈辱か、それとも若さに反する羞恥か。
答えは一瞬で出た。
将成、日光、月光「「「……オムツで」」」
その決断を待っていたかのように、桂が得意げに割って入る。
桂の自己評価の高さは、決して傲慢から来るものではない──────もっとも他人から見れば傲慢でいけ好かないが──────桂は、かつては【崑崙十二仙】と呼ばれた【天仙・太乙真人】の【転生戦士】であった。
梓「性能は保証します」
梓も静かに補足する。
梓「【風魔二番隊】の【下忍】たちが潜入任務で使用し、その有用性を実証済みです。現在はケース単位で導入しています」
彼女自身もまた【前世持ち】───【三清道祖】の一柱、【道徳天尊】の【転生戦士】であり、虚偽を語れない性質を持つ。
その言葉に、日光は小さく頷いた。
そして三人は、ボクサーパンツ型オムツを手に、揃ってお手洗いへ向かう。
すなわち───連れションである。
第漆節 リモート会話⑥ 【完読】
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「見た目はスタイリッシュなボクサーパンツで、中身を異次元収納してくれる高性能な【異次元オムツ】」
➔[b.を選ぶ]
「着用した者のチャクラを強制的に増幅させ、お祖父さまの殺気を100%跳ね返す【対総帥用・特級結界防護服】」
➔[c.を選ぶ]
「漏らしてしまった水分をすべて超高熱で蒸発させ、爆風に変えて周囲に撒き散らす【自爆型お漏らしパンツ】」
ツッコみマスターの回答です!
梓「残念ながら不正解です。
b.のような『防護服』はありません。
そんな便利なものがあれば、三十代半ばのオトナたちが揃って恥を忍ぶ必要はありませんでした……」
➔[問題に再挑戦する。]
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忍マスターの回答です!
梓「大正解です。見た目はオシャレなボクサーパンツですが、性能は抜群の【異次元オムツ】です。風魔二番隊の下忍たちが潜入任務で実証済みですので、これからの影連お祖父さまの激昂にもバッチリ耐えられるはずです」
洸「日光……試供品、使ったなら【裏高野】(日光が座主をしている東洋魔術ギルド)で箱買い確定な!……桂、営業してやったからマージン寄越せや!」
桂「……洸、【僧侶】とは思えん銭ゲバ!
しかし、 俺の天才的な発明の価値をよく分かっているじゃないか! 見た目のスタイリッシュさを崩さずに極限状態を生き抜く、これぞ【天仙】の知恵!」
➔[ストーリーの続きを読む。]
(梓ちゃんの静かながらも芯のあるお説教が心に刺さります。大人のプライドを捨ててボクサーパンツ型オムツを装着した3人の決断を無駄にしないよう、真面目に選び直しましょう!)
➔[反省して、もう一度問題を選び直す]
➔[ストーリーの続きを読む。]
屈辱を受け入れるか、それとも現実的な羞恥───すなわち失禁───を回避するか。
その究極の二択において、将成、日光、月光の三人が選んだのは後者だった。
厠から戻った彼らの目に飛び込んできたのは───弛緩しきった光景である。
透明な大型クッションに、これでもかと体を沈めている【風魔頭領一族】の面々と、癸、満。まるで溶けたように力を抜き、思い思いの姿勢でくつろいでいた。
中でも梓は酷い。うつ伏せにだらけた姿で、もはや寝ているのではないかと疑いたくなるほどだ。しかも、彼女の服装はゴシックメイド衣装である。
将成(……せめてスカートの裾くらいは気にしてほしいものだが)
将成が内心でそう思った、その瞬間。
洸「ヘッド、今パンツ見ようとしたな!このムッツリめ!」
洸の鋭いツッコミが飛ぶ。
さらに追撃とばかりに、モニターの向こうから燎の声が響いた。
燎『何だと!?パパも見せてもらったことないのに!』
騒がしさが一気に加速する。
甲「お前たち、ウザいよ!」
甲の一喝が場を制した。
甲「よく見な。スカートはめくれてないだろ。それに……梓のおパンツを見た奴がいたら、私と影連さんで目を潰して、頭をいじって記憶を消してやるからな。安心しな」
まったく安心できない宣言である。
そんな中、当の梓はうつ伏せのまま、顔だけをひょいと上げて言った。
遙が即座にツッコむ。
遙「スカートの中身が下着だと思ってる奴が聞いたら、ショートレギンスも下着扱いになるだろ!」
価値観の違いは時に危険である。幸いにもこの場には、その手の“嗜好”の持ち主はいなかったため、大事には至らなかった。
ふとモニターに目をやれば、向こう側でも似たような光景が広がっている。
一寸法師は、子どもの体格ゆえにクッションへ座る際、ウラシマに抱えられていた。そのまま深く沈み込んだ結果、まるでベッドで寝転んでいるかのように見えてしまっている。
このクッション、通称【人間をダメにするクッション】。市販品で言えば二~三万円クラスの大型モデルと同等のサイズと感触らしい。
影連「若たちの席もあるぞ」
影連が指し示したのは、空いている同型のクッション。
その座り姿は、まるで玉座に腰掛ける王のように堂々としている。もっとも、その“玉座”は人を堕落させるクッションなのだが。
日光「これは……【水遁】と【火遁】の【合成技】か……」
腰を下ろした日光が、いかにも【鬼道衆・主席】らしい分析を口にする。
月光の冷静なツッコミ。
だが、その声音には先ほどまでの緊張はなく、わずかな余裕が感じられる。【人ダメクッション】の効果は伊達ではないらしい。
朔「刹那が帰る前に終わらせたい。さっさと話すぞ」
朔が本題を切り出す。
刹那───環と凱の長男であり、十八歳の高校生。今はまだ授業中の時間帯だ。
「まず、俺が凹った田原真陽……こいつは【転生者】だ。【古代】では真若王、蘇我蝦夷……【平安時代】では藤原秀郷……」
時間制限があるためか、朔は矢継ぎ早に情報を叩き込む。
だが当然、処理が追いつくはずもない。
将成「待ってくれ!早すぎて脳が追いつかない!」
将成がストップをかける。
日光「つまり……【転生者】で、【古代】と【平安時代】で過去二回の【転生】をしている、という認識でいいのか?」
日光が整理しようとする。
「ん?三回じゃないのか?」
月光が首を傾げる。
早速、認識のズレが生じた。
影連「何度【転生】したかはどうでもよい」
影連が一刀両断する。
影連「これは普通の【輪廻転生】じゃ。【魂魄】が【浄化】され、記憶を失って生まれ直すタイプ……【非能力者】に多い、【純粋な人間】の【転生】じゃな」
記憶を引き継ぐ特別な【転生】ではない、ということだ。
そして影連は、さらに続ける。
影連「朔の粗相については詫びねばと思うておったが……あの“ゴミ人間”が【前世】なら、その必要はないのう」
日光「えっ……【総帥】、それは……」
日光が思わず声を上げる。
日光「朔は手を出しています」
影連「真若王はな……」
影連の声音が、わずかに低くなる。
影連「【魔界】を【人間界】へ侵食させ、地上を【魔界大帝国】に変えようとした“大罪人”じゃ」
その一言に、場の空気が再び張り詰める───はずだった。
「「「【魔界大帝国】!?」」」
しかし、別方向から食いついた者たちがいた。
遙「それは【邪王神眼の魔王】が統べる帝国か!」
洸「【ダークデーモン軍】襲来!」
満「【悪魔】の支配下に置かれた世界!」
遙、洸、満───通称“厨二病御三家”が、勝手に設定を盛り始める。
朔「……【“蛇王”神眼】持ってたら【魔王】になれるのか?なら俺は【魔王】だな」
朔がぼそりと呟く。
燎『【嶽(みたけ)】(朔の前世)は【蛇王神眼】を持つ【二代目・山の先住王】だった』
モニター越しに燎が補足する。
朔「お前らの言う“邪王”は、よこしまの方だろ。俺のは“蛇王”、へびの方な」
漢字一字の違い。
だが───
遙「ガチだった……」
洸「魔王キタコレ!」
満「モノホン“蛇王神眼”!」
三人にとっては、発音が同じ「じゃおう」であることの方が重要だった。
最初から分かっていたのだ。自分の前世───闇嶽之王が持っていた【蛇王神眼】の話をすれば、こうなることは。
だからこそ、今まで隠していたのだが───
結果は、やはりこの有様である。
第捌節 厨二病は発音を重視する【完読】
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遙が不意に立ち上がる。
静かに、だが迷いなく縁側へと歩み寄り、障子へ手をかけた。その横顔には、先ほどまでの厨二病を拗らせていた雰囲気は微塵もない。
そこにあったのは、戦場を潜り抜けてきた者だけが持つ、鋭く張り詰めたソルジャーの顔だった。
遙「……庭から、血の匂いがする」
低く告げる遙に、洸も鼻を鳴らす。
洸「あー……ホントだ。錆びたみてぇな匂いだな」
遙の【輪廻眼】、洸の【六道眼】。いずれも“地上に降下した”【現神(うつしよしん)の権能の欠片】を宿す最強の【瞳術】───その代償として、彼らの視力は極端に落ちている。
だが、その代わりに研ぎ澄まされた【嗅覚】は、もはや人の領域を超えていた。
凱「クソ親父……いい歳して、派手に暴れやがって」
凱が額を押さえながら、【龍眼】(遺伝による固有瞳術)で気配を探る。そして、呆れたように息を吐いた。
その一言で、将成はすぐに察する。
将成「影結様が……来られたのか?」
凱は短く頷いた。
凱「遙、警戒を解け。……表は、オヤジが片付けた」
その直後───
バタバタ、キシキシ、と廊下から派手な足音が近づいてくる。
【忍屋敷】の床は侵入対策として“うぐいす張り”になっている。本来ならば音など立てないのが【忍】の作法だ。
にもかかわらず、この音は───
(わざとだな……)
誰もがそう理解した瞬間。
スパーン!!
派手な音と共に障子が開け放たれた。
あまりに【忍】らしからぬ所作に、影連は露骨に呆れた視線を向ける。
影結「おお……揃ってるな!」
豪快に笑って現れたのは影結───【起源の大戦】を終結させた【五英雄】の4人目だ。兄・影連の呆れた視線など気にも留めない。
瑪瑙「お祖父ちゃん……また誰かに何か言われた?」
瑪瑙がため息交じりに問う。祖父がわざと音を立てる理由を、彼女はよく知っていた。
爽やかな笑顔で、とんでもないことを言い放つ影結。
顔や腕の血は拭われているが、衣服に染みついた血の匂いは誤魔化せない。
【アルティメット忍マスター】
これこそが真の理由!物語の裏の核心を見抜いた、完全正解(20ポイント獲得)
【スーパー忍マスター】
これもまた真実!目の前の状況を正しく読み解いた、正解(10ポイント獲得)
─────【選んだらアカン選択肢】
この一族の、ある“絶対的な地雷”を完全に踏み抜いた回答(10ポイント減点)
選択肢:
➔[a.を選ぶ]
「伊賀忍の中に昔、影結様の奥方様(龍玉麗)に告る勇気がなくて影結様に嫉妬している、己のヘタレを棚に上げた意味不明な男がいたから。」と推測。
➔[b.を選ぶ]
「影結様が実家に帰って来たら、伊賀藤林流の下忍が屋敷を囲んでいたので、条件反射で粛清した。」と推測。
➔[c.を選ぶ]
「伊賀藤林流の下忍が、影結様に向かって、NGワードである【女帝の婿殿】と呼んだ。」と推測。
アルティメット忍マスターの回答です!
影結「だろ!? 大正解! 俺に向かって“女帝の婿殿”とか、死ぬより恐ろしいNGワードを抜かす野郎がいてよ! あの呼称は、玉麗が世界で一番憎んでる言葉だってことを、伊賀の回しもんは知らねえのか?……あいつらは、玉麗への無礼と俺のプライドの破壊という、二重の地雷を踏みやがった。だから、とりあえず全員、この世から消えてもらった!」
瑪瑙「……なるほど。お祖父ちゃんの地雷っていうより、お祖母ちゃんの地雷を完璧に踏んじまったわけだ。
正解した解答者【ヘッド(読者)】には20ポイント進呈だ!」
➔[ストーリーの続きを読む。]
スーパー忍マスターの回答です!
影結「お、正解!確かに、久々に実家に顔を出そうと思ったら、【伊賀藤林の下忍】どもが俺の目の前で屋敷を囲んでたからな。そんなもん、【忍】の世界じゃ粛清の対象以外の何物でもねえ。だから、条件反射で片付けた!」
凱「正解だ。無断で【風魔の里】に潜入しただけでなく、【風魔本陣】を囲むなんて、明らかな敵対行為。まあ、物理的に床が陥没した理由はオヤジの怒気だが、粛清すること自体は至極当然の話だ。……将成、お前も【忍の総領】(楠木一族)らしい貫禄がついてきたな。10ポイントの付与だ。……だが、地雷の理由はこれだけじゃないぞ!」
➔[問題に再挑戦して、アルティメット称号(20ポイント)を狙う!]
➔[ストーリーの続きを読む。]
(嫉妬から来る「ヘタレな回答」を選んでしまいました。チャレンジャーになる勇気がなかった自分を反省し、もう一度真面目に、影結が大暴れした理由を考え直しましょう!)
➔[反省して、もう一度問題を選び直す]
“女帝の婿殿”。
それは影結を指す呼び名だ。
彼の妻――凱の母にして瑪瑙の祖母、龍玉麗は【女傑族・龍一族】の当主。そして【起源の大戦】を終結させた【五英雄】の1人でもある。
女が頂点に立つ一族ゆえ、当主は“女帝”と呼ばれる。そして影結は、その婿養子であった。
当然、その呼び名が気に入るはずもない。
朔が舌打ちする。おそらく日景叶との接触を辿られ、ここに【伊賀忍】を差し向けられたのだろう。
甲「今日のアポは若殿、将成、月光だけだよ?それなのに【下忍】を寄越すなんてね。遺体を送り返されても文句は言えないだろうさ」
甲が冷ややかに言う。【甲賀】の出である甲にとって、伊賀に対する情けなど存在しない。
洸「日景桐生……相変わらず小っせぇな」
洸が吐き捨てる。その名には、【過去世】から続く深い怨恨が滲んでいた。
洸「たぶん、末の弟を風魔に取られる……とか思ったんだろうよ」
その言葉に、将成はある噂を思い出す。
将成「日景叶は……晴弦の実子ではない、という噂があったな。だが、それと【風魔】に何の関係が……?」
洸は薄く笑った。
洸「もし、叶が“【風魔頭領一族】の血”を引いてるとしたら?」
その一言で、将成、日光、月光の視線が一斉に影結へと向く。
影結「……お前ら、なんで俺を見る?」
呆れた影結に、日光が慎重に口を開く。相手は【風魔忍】なので、【伊勢一族】の日光が口を開くのが適切だ。
日光「隠し子がいるとすれば……影結様ではないかと……」
その瞬間、凱が堪えきれずに喉を鳴らして笑った。
瑪瑙「……人望ねえな、お祖父ちゃん」
瑪瑙の冷たい視線が突き刺さる。
影結「ふざけるな!俺は浮気なんてしてねぇ!そんなことしたら玉麗に殺される!」
凱「だな。オフクロなら相手の女じゃなくてオヤジを殺る」
即座に同意する凱。
遙「龍一族の情報網、マジでエグいぞ。影結祖父様の行動は全部、玉麗様に筒抜けだ。今ここにいることも含めてな」
遙は、義理の祖母・玉麗──────遙は瑪瑙の父親の養子になっている──────が影結にベタ惚れしていて、常に影結は【女帝の目】と呼ばれる【監視者】に見張られていることを知っている。
遙の言葉はフォローになっているのか怪しいが、少なくとも潔白の証明にはなった。
日光「では……誰の子だ?燎センパイか?」
叶の年齢を逆算すると、該当しそうなのが燎かウラシマだ。ウラシマは、【漂流】(転移)していたので消去法で燎しか考えられない。一寸法師は───見た目が子どもなので、除外されていた。
日光の推測に、場の空気が一瞬固まる。
癸「それはないね」
穏やかな声で否定したのは癸だった。だが、その目はまったく笑っていない。
癸「私から娘を奪っておいて浮気などしたら……どうなるか、想像はつくだろう?」
モニター越しに、燎が『義父上!』と感涙しているのが見える。
だが、洸は首を振った。
洸「なんで“生きてる人間”限定なんだよ。陵一族にいただろ……“子が授かれる男”が」
その言葉の意味を理解し、場の空気が変わる。
【Ω異能力者】───男女問わず、子を宿す器官を持つ存在。
洸「日景叶は……陵御影の“第二子”だ」
洸の声は静かだったが、その内容は重かった。
洸「【凍結受精卵】を晴弦の妻に“体外受精”して懐妊させた……“体外受精”した所までは御影はまだ息があったが……その後はもう意識がなくなってな……」
言葉が途切れる。
洸の口から語られたのは、陵御影(洸の1つ前の過去世)の死の直前の生々しい真実だった。
影結「【凍結受精卵】……【凍結】!御影は“凍死”……まさか……!」
影結の中で、点と点が繋がる。「そこまでやりやがったのか」と口にして、怒りが一気に噴き上がった。
【起源の大戦】を終結させた【五英雄】の怒気に当てられて皮膚がヒリつく。
将成、日光、月光は───
オシャレオムツに“異次元用足し”をしたのであった。履いててよかった【異次元オムツ】。
第玖節 女帝の婿殿【完読】
──第玖節クリア!
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➔10ポイント消費して[第拾節 御影の子を読む]
陵御影は、“真冬の川で全裸で発見された”───そう報道された。
その情報だけを見れば、誰もが凍死だと考える。実際、大衆の認識もそうだった
洸そして【過去世】の御影は、体は【人間】でも、中身は【竜】だ。皮肉なことに【凍結耐性】で“凍死するはずのない”【水竜】が【凍結受精卵】の【容れ物】にされたことで、常に体温を氷点下にしていたことが原因で“凍死”したのだ。
だが───真実は、そんな単純なものではなかった。
人間が、ここまで残酷になれるのか。そう問わずにはいられない、あまりにも異様なものだった。
御影は懐妊していた。
そして、あろうことか───その身体を“凍結受精卵を保存するための容器”として利用されていたのだ。
生きた人間を、凍結保存タンクの代わりにする。
常軌を逸している、という言葉すら生ぬるい。
発見時に全裸だったのは、身元特定を遅らせるためだろう。
さらに真冬の川へ投げ捨てたのも、死亡推定時刻を曖昧にするため。
───捕まりたくない。
その一心で行われた、稚拙でありながらも悪意に満ちた隠蔽工作。
それ自体は、皮肉なことに推理小説などでも語られる手口だ。
はずみで人を殺してしまった者が、証拠隠滅のために知識を悪用する───そういう話は珍しくない。
だが。
人間を凍らせ、保存容器の代わりにするなど、常識の外にある。
そこには“過失”ではなく、明確な狂気があった。
影結「ふざけるなよ」!
影結は、怒りに顔を歪めた。
冗談のような言葉だった。
だが、その目は一切笑っていない。本気だった。
影連「やめい!」
短く制したのは影連だった。
影結は舌打ちを一つし、用意されていたクッションへ乱暴に腰を下ろす。いわゆる“人をダメにするクッション”だが、その座り方は前屈みで、まるでリラックスとは程遠い。
影連はその様子を気にも留めず、静かに口を開いた。
影連「日景叶は“第二子”と言うたな……では、“第一子”はどうした?」
言われて、影結は「あ」と小さく息を漏らした。
洸が、重い口を開く。
洸「……多分、生きてない……と思う」
甲が目を細める。
甲「死産…というわけでもなさそうだね。その第一子も、体外受精か?」
つまり───二度も御影を“保存容器”にしたのか。
その確認だった。
洸は、ゆっくりと首を振る。
洸「第一子は……御影が産んだ。腹を切り裂かれてな。麻酔なんて、ねえ」
空気が凍りついた。
環「はぁ!?麻酔なしの帝王切開とか……クソだな!」
環が吐き捨てる。
甲もまた、苦い表情で呟いた。
甲「御影……よく耐えたな。女なら“産みの痛み”に耐える術(すべ)を持つ。だが男なら……ショック死してもおかしくない」
知らぬ痛みは、時に命を奪う。
それほどの苦痛だった。
洸は続ける。
洸「生まれた子は……奇形児だった。晴弦は、それを見て“失敗作だ”っつって……捨てた」
その言葉は、御影の記憶そのものだった。
生々しく、鮮明に蘇る光景。
将成「捨てた……だと?」
将成の声が低くなる。
倫理の問題ではない。
そもそも、その男には“倫理”が存在していないのではないか───そう疑いたくなるほどだった。
朔が口を挟む。
同時に、モニター越しの燎が鋭い声で問いかけた。
二人の様子は、明らかに異様だった。
朔「そのガキ……本当に死んだのか!?」
朔が詰め寄る。
洸「知らねえよ!御影は、腹を裂かれたんだ!8割方死んでたわ!」
洸の怒声が響く。
その通りだった。
男の身体で、麻酔なしの帝王切開。生きているだけで奇跡だ。
桂「朔、まず謝れ」
桂が静かに言った。
桂「御影様が奇跡的に生き延びた状況で、子どもの行方を問うのは無神経だ」
正論だった。
朔「……悪かった」
朔は素直に頭を下げる。
絹「洸、朔は素直に謝ったんだ。怒りを鎮めろ」
絹が穏やかに促す。
洸「ああ……わかった」
洸もそれを受け入れ、場は一旦落ち着いた。
だが───
モニター越しに、燎と朔が顔を見合わせる。
そして、静かに頷いた。
朔「……奇形のガキは、“鬼陸之王(きくがのみこと)”の器だったかもしれねぇ」
朔の言葉に、空気が張り詰める。
燎『外道どもめ……とんでもないことをしでかしたかもしれんぞ』
燎の声は低く、重かった。
影連「……【柘榴】か」
影連が呟く。
影結「千五百年だ。そろそろ目を覚ましてもおかしくねぇ」
影結が続けた。
燎は将成に視線を向ける。
燎『イザナミとイザナギの“国生み”は知っているな?』
将成「ええ……淡路島から始まって、本州を生んだ話ですよね」
将成が答えると、朔が鼻で笑った。
朔「それは子ども向けだ」
影連「【古事記】の話じゃ」
影連が補足する。
将成「造化三神の後……ですよね?」
将成が記憶を辿る。
燎『いや、その後だ。イザナギとイザナミが地に降りた後の話だ』
燎が続ける。
将成「確か……最初に【蛭子】、次に【淡島】が……」
将成の言葉に、静かな沈黙が落ちた。
【蛭子】は“不具の子”。
【淡島】は“奇形の子”。
───ゆえに、捨てられた。
海へ流された。
それはつまり、親が子を捨てたということだ。
燎『二度目はな……』
燎の口調が変わる。
どこか威厳を帯びた、“王”の声だった。
燎『我(われ)と“大闇(おおくら)”が出て行き、叱りつけた。【海】から【淡島】を拾い上げ、【オノゴロ島】に埋葬したのだ。二度も子を捨てた罰として、あやつら自身に【土】を掘らせてな』
その記憶は、はるか過去のもの。
燎『そして――』
燎の声が、低く響く。
燎『その土から、産声が上がった。“鬼陸(きくが)”が生まれたのだ』
奇形児として捨てられた存在。
それが、新たな“王”として生まれ変わる。
つまり───
御影の子もまた、その可能性を秘めていたということ。
『陵御影事件』は、単なる復讐で終わるものではない。
それは、はるか神代に連なる因果を呼び覚ます、災厄の序章に過ぎなかった。
第拾章 完読特典へ➔
明かされた『陵御影事件』のあまりにも凄惨な真実。
そして、神代の「国生み神話」へと繋がっていく壮大な因果の歯車。
日景叶(前世:霞童子)、そして田原真陽(前世:真若王)との間に横たわる、古墳時代から続くあまりにも深い因縁の始まり──。
この重厚にして耽美なる深淵を最後まで読み解いたあなたに、完読ボーナスを付与します。
───神代より連なる深き因縁に、10ポイント獲得!
手元のスコア表(スクショ用ポイントメモ)に【+10pt】を静かに記録し、物語のさらなる核心へと足を進めましょう……。
➔10ポイント消費して[第拾壹節 初国知らす(前編)を読む]
陵御影の凄惨な最期から話題を一転して朔は語り始める。
朔「【御真木】は……即位直後にパンデミックが起こってな……」
朔がポツリと、あまりに世界観に合わない横文字を呟いた。
瞬間、その場にいた満の鋭いツッコミが炸裂する。
満「【ミマキ】て誰やねん!そんで……パンデミックて何でそこだけ急に横文字つこた! 雰囲気ぶち壊しやろが!」
癸「満、第十代……【崇神天皇】のことだよ」
頭を抱える満をなだめるように、歴史オタクの癸が補足を入れる。
癸「“御肇国天皇”──そう呼ばれることもある、日本史で実在が確実視されている最初の【大王】さ。その【大王】の即位直後、この国には凄まじい疫病が蔓延したんだ」
朔「そうそう。要するに、当時の【オオモノヌシ】を祀ってる神社が半壊状態だったせいでな」
朔がさも「ちょっと実家が雨漏りしてさ」くらいの軽いトーンで言葉を続ける。
朔「【三輪】の“家”がボロくなってな……。そこらの鼠の死骸から下界、つまり【大和の都】に感染が広がった。それがパンデミックのガチな原因だ」
平然と言うが、朔の前世は【闇嶽之王】──その本性は、かつてこの地を支配していた古き【蛇神】である。
同じ【蛇神】のネットワークとして、【三輪】とはそれなりに近所付き合い(神的な意味で)があったらしい。
遙「けど、結果を見りゃ……今こうして人類がピンピンして存続してるわけだし……その疫病とやらはきっちり収まったんだろ?」
腕を組んだ遙が、持ち前の脳筋思考で楽観的な推測を口にした。
朔「そうだ。【三輪】の子孫がそのボロくなった“家”を修復して……そのまま神主になった」
日光「……ん?」
月光「ちょっと待て、朔」
ここで、部屋の片隅で静かに話を聞いていた日光と月光のふたりが、同時に眉をひそめて声を上げた。
ふたりは東洋魔術師のギルド【鬼道衆】のトップに君臨する実力者だ。それゆえに、引っかかるワードがあった。
日光「朔、それは“家”ではなく“神社”ではないのか? その言い方だと、まさか【大神神社】のことでは……」
月光「【三輪山】か……。あそこの代表は、確か【三輪明仁】という名前だったはずだが……まさかその男、本当に【オオモノヌシ】その人なのか!?」
月光が驚愕に目を見開く。
対する朔は、「は?」と心底嫌そうな顔を浮かべた。
朔「“三輪明神”……マジか。あいつ、今【現代】でそんな名前名乗ってんのか? ガチの神様とはいえ、ちょっとは名前ひねれよな」
【オオモノヌシ】の別名は【三輪明神】。あまりにもそのまんまである。
すると、部屋の中央にある大型モニターから、ひょっこりと一寸法師のグラフィックが割り込んできた。
一寸法師『朔、一文字違い! “明仁”の“じん”は、神様じゃなくて【人間】を意味する“にんべんに漢数字のニ【仁】”のほうだよ!』
朔「ああ……そっちか。……ってことは、もしかしてその名前、一寸が名付けたのか?」
朔の言葉に、モニターの奥から今度はウラシマがドヤ顔で割り込んでくる。
ウラシマ『どうだ?うちの兄者のネーミングセンスは!元の名前の原型を完璧に残しつつ、それでいて“神”であることを絶妙に隠す、まさに神業の文字選びだろ!』
洸「いや……逆に“神バレ”しねえのか、それ?」
洸が呆れたようにツッコむ。洸の脳裏には、何も知らない一般人から「三輪明仁さんって、なんか名前からしてご利益ありそうですよね!」と拝まれている哀れな男の姿が容易に想像できていた。
一寸法師『僕だって、この名前(一寸法師)で一度も“神バレ”したことないから大丈夫だよ。ぶっちゃけ【人間】の認識なんてさ、名前がちょっと違うだけで案外気づかないものなんだって』
画面の向こうでケラケラと笑う一寸法師。お伽話の手のひらサイズのヒーローだが、その正体は【国造りの神・スクナビコナ】だという説がある。ついでに言えば、隣でドヤっているウラシマが名前を使っている浦島太郎も、その正体は【山幸彦(ホオリノミコト)】だという説が濃厚だった。神々のバーゲンセールである。
そんな中、完全に話が脱線しかけているのを察し、将成が真面目な顔で本筋を戻しにかかった。
将成「朔……お前がさっきから“三輪”と呼んでいる人物についてだが、やはり【オオモノヌシ】のことで間違いないんだな?」
しかし、将成は質問する相手を致命的に間違えていた。朔は記憶のデータベースとしては少々大雑把すぎるのだ。
朔「んー?あいつの【国津神】としての本来の名前……何だっけ?……俺、昔からずっと【三輪】って呼んでたから本名わかんねえわ!」
一寸法師『あ、それなら僕が答えるよ!』
画面の中から一寸法師が元気よく手を挙げた。
一寸法師『そうだよ、あいつも僕と同じ【ナムチ(クズ野郎)】の被害者!この前【ナムチの転身者】に会ったんだけどさ……なんかムカつくくらいイケメンな顔してたから、僕、出会い頭にキレて飛び蹴りくらわせちゃった!』
「「一寸殿の飛び蹴り!?」」
日光と月光の声が綺麗にハモった。東洋魔術界の重鎮ふたりが、完全に顔を引き攣らせている。
日光「な、致命傷になってないでしょうね……?相手は神格だぞ……」
遙「大丈夫だろ。あいつ、“ハガネ”のように頑丈なことだけが取り柄だから、今もピンピンしてるぞ」
心配するふたりに、遙が「問題ない」とばかりにサムズアップを返す。だが、日光と月光は「……ハガネ?」と怪訝そうに顔を見合わせた。完全に会話が噛み合っていない。
そこへ、朔が冷ややかな補足を入れた。
朔「【ナムチ】──【大国主】の【転身者】は、長男・鋼だ。あいつ、まだ【前世】の記憶が戻ってねえからさ。【スクナ】に【国造り】の面倒な仕事を全部丸投げしておいて、最終的にテメエの手柄にしたクソみたいな過去も忘れたまま、のうのうと生きてるわけ」
まったくいい気なもんだ、と朔は実の兄を心の底から軽蔑しきった目で吐き捨てる。
影連「相変わらず鋼と仲が悪いのう」
部屋の隅でふっと笑ったのは、【風魔総帥】影連だった。若者たちのやり取りを微笑ましそうに見つめている。
遙「影連祖父様、喧嘩するほど仲がいいんだよ。むしろ仲良しのほうがヤバい」
弟という特等席からふたりを見てきた遙が、苦笑しながらフォローを入れる。長男・鋼と、次男・朔。このふたりにとっては、互いをディスり合うことこそが日常のコミュニケーションなのだ。
一方、その様子をじっと見ていた将成は、驚愕を通り越して、もはや感動すら覚える限界オタクのような表情で言ってしまっていた。
将成「鋼が【オオクニヌシ】……!ただのチャラいプレイボーイだと思っていたあの鋼までが……!……本当に【風魔頭領一族】、人材の宝庫だな!羨ましすぎるぞ!」
ハイスペックすぎる身内事情に、将成はただただ、羨望に満ちた本音を漏らすことしかできないのだった。
第拾壹節(前編) 完読特典へ➔
現代に生きる神々のバーゲンセールと、まさかの長男・鋼の『大国主(オオクニヌシ)』発覚!
前世の記憶を持たない兄たちと、すべてを把握しているチート民、そして記憶の覚醒を巡る神代の因縁が交錯する「初国知らす(前編)」を最後まで読み解いたあなたに、完読ボーナスを付与します。
─────風魔一族の人材の宝庫っぷり(とスクナの飛び蹴り)に、10ポイント獲得!
手元のスコア表(スクショ用ポイントメモ)に【+10pt】を記録したら、いよいよ物語は本編最終盤へ──。
続く後編では、古事記の知識が試される、獲得30ポイントの「達人級・超難問クイズ(レジェンド忍の称号付き)」があなたを待ち受けています。スコアを限界突破させる準備はいいですか?
➔[第拾壹節(後編) ストーリーの続きへ進む]
後の世において『崇神天皇』──またの名を【御真木大王】と呼ばれる男の治世は、開幕と同時に発生した最悪のパンデミックによって、国家崩壊の危機に瀕していた。
しかし、彼はそこからの巻き返しが凄まじかった。全国各地の【八百万の神様】を祀るための【神社】を次々と建造し、【神武天皇】以来、長らく放置されていた神々への不義理を謝罪。その誠意が天に通じたのか、猛威を振るっていた疫病は劇的な終息を迎えることになる──。
朔「……まあ、それが表向きの“美談”なんだがな」
朔の冷ややかな声が響いた。
大型モニターに映し出された燎がその含みのある言葉に深く頷く。
朔が淡々と答えを継いだ。つまり、神様を祀るという大義名分のもと、建築予定地とその周辺を文字通り歩き回ったということだ。
朔と燎──かつて【山】と【海】の【先住王】として君臨し、現代に蘇った【転生戦士】の二人が語る歴史の真実は、教科書の記述よりも遥かに血生臭く、そして合理的だった。
歴史オタクである癸が、納得した表情でうなずく。
“元傭兵”の経歴を持つ遙が、感心したように顎を撫でた。
遙「【古代】の人間は何かと神がかりな事象に弱かったはずだ。【神社の建立】という大義を掲げられれば、現地の住人も疑わずに協力的になっただろう。災害時の避難経路や避難場所が、戦の局面においてはそのまま『部隊の逃走経路』や『潜伏場所』に化けるのは軍事の基本だからな」
癸「話の途中、割り込んでごめんね」
知的好奇心を刺激された癸が、挙手しながら朔に視線を向けた。
癸「その【御真木版・四道将軍】の具体的なメンバーが知りたいな。僕の知る“史実の四道将軍”とは、おそらく顔ぶれが異なるんだろう?」
朔「さすが癸祖父様だ。こちらが話す前に、歴史書の矛盾点に気づくとは恐れ入ったよ」
朔は不敵に笑み、癸の直感を肯定した。
朔「“彦国葺”という名に聞き覚えは?」
癸「歴史書が正確なら、【開化天皇】の側室妃の兄だね。この側室妃こそが、日本史上のレジェンドヒーローである【ヤマトタケル】の祖にあたる“日子坐王”の母上だ」
ここまで公式の歴史書と、実際に古代を生き抜いた【転生戦士】たちの証言に齟齬があると、歴史書の信憑性など雀の涙ほどしかないと癸は理解していた。
朔「あいつが【韓土(からくに)】からの“流れ者”だってことは、歴史書には書かれていないのか?」
癸「いや、そういう書き方ではないね。一般的には【渡来人・和邇一族の祖】というスマートな記述だよ」
朔「……ふん。マンガのキャラクタープロフィール程度の情報だな」
吐き捨てる朔に、隣にいた梓がぽつりと口を挟む。
梓「出自が判るだけマシ」
朔「まあな。信憑性の薄い情報なんて、いくら量があってもゴミと同じだ」
吐き捨てる朔の言葉を追うように、モニターの燎が彦国葺のさらなる情報を開示した。
燎『その彦国葺だが、実はイマス(日子坐)の育ての親だ。アヤツは、イマスが物心ついた頃から容赦なく戦場へ連れ回していたぞ』
満が、自身の腕の中で無邪気な声を上げている幼子・尊を見つめながら呟いた。尊よりも、ほんの2歳ほど上の幼児が戦場に立っていたということになる。
遙「それは“英才教育”というより、ただの“ソルジャー育成”だな」
遙の目が、一瞬だけ鋭い軍人のそれに変わる。十代で外国人部隊の傭兵として硝煙に塗れた遙には、そんな狂った環境で育った人間がどうなるかが痛いほど解った。
遙はそう言いながら、モニターに映る燎とウラシマの体格を値踏みするように見た。二人のガタイはまさにミドル級、あるいは上背がある分それ以上に見えるが、無駄のない筋肉の付き方は遙の言う「理想の兵士」そのものだった。
その熱い視線に気づいた一寸法師が、画面の端から苦笑交じりに口を開く。
朔「ああ……あの時か」
朔が何かを思い出したようにポンと手を打った。
朔「【邪神】を倒した後だったから、全然気にも留めてなかったわ」
将成「──【邪神】!?」
その単語に、これまで聞き手に徹していた【夜狩省】の省長・将成が【人間をダメにするソファー】から身を乗り出した。国家の裏秩序を守る長として、【古代】における未確認の脅威、それも【邪神】との戦闘データは見過ごせるものではない。
せっかく温まってきた話を遮られた朔が嫌そうな顔をする。
だが、邪道と知りつつも、より刺激的なワードに釣られる男が将成に加勢した。
遙「いや、朔。理想的なマッチョの成長痛の話より、俺たち的には【邪神情報】のほうが先だろ!」
遙の意見を遮るように、癸が極めて平坦なトーンで呟いた。歴史オタクの放った冷徹なこだわりによって、作戦室の室温が体感で2度ほど下がった気がする。
将成「……日子坐の英才教育から、続きをよろしく頼む」
将成はすんなりと折れた。遙もそれ以上は口を挟まない。大河ドラマの様式美には勝てないのだ。
朔「やれやれ」
朔は小さく肩をすくめると、話を本筋へと戻した。
朔「既にオチは話したが、要するにパンデミックだ。大流行した疫病のせいで、【大王】である【御真木】は首都である【大和】を離れ、避難生活を余儀なくされていた。今風の言葉で言うなら、“ロックダウン(都市封鎖)”だな」
癸「疫病が蔓延していた【大和】は、事実上のロックダウン状態だったのかい?」
癸の確認に、朔は首を縦に振る。
朔「【御真木】が避難した先は、【三輪】の縄張り……今で言う【大神神社】がある場所だ」
朔は【前世】の名残で【オオモノヌシ】を『三輪』と呼んだが、現代人である一同に配慮して、分かりやすい現代の名称に言い換えた。
日光「なるほど、繋がったぞ」
【鬼道衆】のツートップの一人、日光(高野山座主)がポンと手を叩いた。
月光(比叡山座主)も、冷徹な分析を重ねる。
月光「【大王】が寝ている時に、【オオモノヌシ】が“夢枕”に立って『新しい神社を建てろ、さすれば病を収めてやる』と命じれば、それで話は成立する」
さすがは東洋魔術師ギルド【鬼道衆】のツートップ、状況証拠からの察しが早くて大いに助かる。
つまり全体の構図としてはこうだ。パンデミック発生→大和が危険なため【三輪山】へ避難→避難先で自粛生活→オオモノヌシが夢枕に立ち「神社を新築すれば疫病を収める」という御神託を下す──。
満「……ってことは、大和の民間人は病気でそのまま死ねゆうんか?いつの時代も、政治家ちゅーんは自分本位で反吐が出るな!」
【古代】における『上級国民』たちの“選民意識”と無責任さに、満が本気で憤慨した。そんな満の荒んだ心をなだめるように、腕の中の尊が小さな手で満の頬を優しく撫でている。
癸「【上級国民】が無責任なのは、二千年経っても変わらないさ」
癸が苦笑混じりに同意した。
癸「だが……この時点で当時の【大和朝廷】(正確にはヤマト王権)は完全に機能を停止、事実上の休業状態だったわけだね」
朔「その通り。そして、パンデミックがひとまず終息したことで、御真木は再び【大和入り】を決意する。その大王の帰還を手助けした組織こそが──【第一次・四道将軍】だ」
そのどこか“厨二心”をくすぐる組織名が告げられた瞬間、室内にいた一部の面々──通称『厨二病御三家』の目の色が変わった。
遙「朔……さっきは話をスキップしろなんて言って悪かった。全面撤回する」
遙が真剣な顔で頭を下げ、それに続いて洸が身を乗り出す。
洸「“第一次”……ということは、当然“第二次”があるんだな!?」
満「その次はやっぱり“Z”か!?」
満までが完全にロボットアニメのノリで興奮し始めた。
朔「いや、アルファベットは付かねえよ」
朔は呆れ果てながらも、解説を締めくくる。
朔「【御真木】の大和入りを武力的に補佐したのが、【大彦】【武埴安】【彦国葺】の3人。この3人に御真木自身を加えた4人体制……これが【第一次・四道将軍】だ。そして、その軍勢の中には、当時まだ5〜6歳だった日子坐の姿もあった」
疫病という天災によって、一度は自然消滅しかけていた【大和朝廷】。
しかし、【御真木大王】がこの屈強な将軍たちを率いて【大和】へ戻ったその瞬間から、歴史は再び動き出し、【ヤマト王権】は真の復活を遂げることになる。
これこそが、後の世において彼が“御肇国天皇”──すなわち、初めて国を治めた輝かしい【大王】として称えられる、隠された歴史の第1ページであった。
古事記の知識試しの前に、まずはここまで辿り着いた証として、第拾貳節完読の報酬を受け取りましょう。
闇嶽之王「……ここまでの話は、『初国知らす』のほんの序章に過ぎない。……なぜなら、この『初国知らす』の主人公は御真木(ミマキ)ではなく日子坐(ヒコイマス)だからだ。わずか5歳で戦場に赴き、鬨の声を子守唄に育ったこの幼子……フッこれ以上は、お喋りが過ぎるな……」
───── 第拾貳節を最後まで読み解いたあなたに、10ポイント獲得! ─────
(手元のスコア表に【+10pt】を記録してクイズへ!)
オオモノヌシ「ふふ、私の『夢枕の御神託』の裏で、そんな脳筋ソルジャーたちが動いていたとはね。……さあ、物語の本当のエンディング、そして第貳章への繋ぎとなる【断章(必要ポイント:20pt)】を解放するための、最終クイズの時間だ」
癸「歴史は好き嫌いが分かれるからね。今回は【一発勝負】さ。正解すればそのまま次のステップへ。もし間違えてしまったら、僕や究(一寸法師)の個人授業を受けてもらうよ。もちろん、どちらのルートに行っても最後に単位を修得すればボーナスポイントが貰えるから、恐れずに挑んでごらん」
➔古事記クイズ第1問へ
※古事記クイズは、正解の方と不正解の方で見られるスチルが異なります。スチルをフルコンプしたい方は、リンクを踏まずにページをめくればフルコンプが可能となっています。
癸「本文中では【欠史八代】の一人である【孝霊天皇】の皇子として名前が出た、のちに史実の【四道将軍】の一人として西国(吉備国)を平定し、童話『桃太郎』のモデルになったとされる人物は誰だい?」
➔[a.大彦命(オオヒコノミコト)を選ぶ]
➔[b.吉備津彦命(キビツヒコノミコト)を選ぶ]
➔[c.武埴安彦命(タケハニヤスヒコノミコト)を選ぶ]
癸「素晴らしい!正解は【吉備津彦命】だ。桃太郎の鬼退治のモチーフは、まさに彼が吉備国で行った平定(侵略工作)がルーツだと言われているよ。君もなかなかの歴史通だね!
これはご褒美の20ポイントだよ」
正解者は、20ポイントを獲得してそのまま最高峰の謎が待ち受ける【達人級問題】へ進みましょう。
➔[第2問:【達人級・超難問】パンデミック終息の英雄の回答を選ぶ]
ポイントは失いませんが、一寸法師の『桃太郎講義』を受けてもらいます。
一寸法師『あちゃ〜!間違えちゃったね!ここで英雄・桃太郎の裏話!
【御伽噺の桃太郎】は、正義のヒーローだけれど……岡山県だけは、桃太郎を“侵略者”とする伝承が残っているらしいよ。【四道将軍】の【吉備津彦】の派遣先は岡山県周辺だったから……【四道将軍】の【大和平定】が侵略だったというのは、あながち間違ってなさそうだね』
一寸法師からとっておきの【桃太郎情報】を得たので、見事に単位修得です!
─────【神話・桃太郎の単位】修得!10ポイント獲得!─────
(手元のスコア表に【+10pt】を記録してください)
➔[【達人級・超難問】パンデミック終息の英雄(正解すれば30ポイント)に挑戦]
➔[歴史なんてどうでもいい!20ポイントを消費して【断章 四道将軍の派遣(前編)】を読む]
オオモノヌシ「『古事記』において、私の呪いによるパンデミックを収めるため、御真木大王(崇神天皇)に探され、私の祭祀を任された、私の“実の子孫”である英雄は誰かな?」
➔[ア.意富多多泥古(オオタタネコ)を選ぶ]
➔[イ.日子坐王(ヒコイマスノミコト)を選ぶ]
➔[ウ.彦国葺(ヒコクニブク)を選ぶ]
オオモノヌシ「見事だ……! 私が夢枕に立ち『オオタタネコを神主とせよ』と告げた神話の核心、そして吉備津彦の裏の顔を完璧に見抜いていたね。君には文句なしに【レジェンド忍】の称号を授けよう!」
オオタタネコ「正解、おめでとうございます! 名前すら出なかったワタクシめをご存知でいらっしゃる読者様へ、感謝の気持ちを込めて30ポイントをお贈りさせていただきます!」
(スコア表に【+30pt】を記録してください)
朔「クイズはこれで終了だ。その前にオッサン(大海主之王)から戯言があるようだ。
オッサンの話を聞くか、断章に進むか選んでくれ」
➔【海の先住王】のお言葉を聞く。
➔[20ポイントを消費して【断章 四道将軍の派遣(前編)】へ進む!]
ポイントは失いませんが、癸の『オオモノヌシ講義』を受けてもらいます。
癸「トホホ、大河ドラマの様式美(生い立ち)に気を取られて、肝心の歴史の記述をごっちゃにしちゃったね?でも、歴史が苦手なのにここまで真剣に読んで挑戦してくれたこと、僕たちはすごく嬉しいよ。
実は……御真木大王(崇神天皇)も、【オオモノヌシ】の子孫なんだよ。【初代・神武天皇の皇后様】が【オオモノヌシ】の娘さん!
御真木大王は【欠史八代】を経由しての系譜、【オオタタネコ】は【四世代後】の系譜。つまり、血の濃さだね!その証拠に【オオタタネコ】の容姿は髪の色を除けば【オオモノヌシ】にソックリだよ』
癸からディープな【オオモノヌシ情報】を得たので、見事に単位修得です!
───── 【神話・オオモノヌシの単位】修得!10ポイント獲得! ─────
(手元のスコア表に**【+10pt】**を記録してください)
➔[【海の先住王】のお言葉を聞く]
➔[20ポイントを消費して【断章 四道将軍の派遣(前編)】を解放して読む]
大海主之王の特別進呈イベント
大海主之王「フッ、個人授業を楽しめたようで何よりだ。お前がここで得た知識は、この先の物語で必ず血肉になる!
ここまで来たおヌシらには、我から20ポイント進呈しよう!
さあ、20ptを支払って、我らと共に【異界】の門を叩け!」
➔20ポイントを消費して[断章 四道将軍の派遣(前編)を読む]
※前後編となってますので、こちらで20ポイント消費すると前編・後編の2編が解放されることになります。
◇古代パート
三輪山の麓に新たに築かれた、瑞々しい木香の漂う社。
そこを仰ぎ見ながら、【御真木大王】御真木大王は深く息を吐き出した。
御真木「……これで、【大和】を脅かした疫病は去った」
【大和】を滅亡の淵から救ったのは、他でもない。御真木がその直系子孫であるオオタタネコを見出し、初代神主として【美輪山の社】へと捧げたこと。そして、大いなる神【オオモノヌシ】がその至誠に大満足し───御神託でオオタタネコをご指名したのだから不満はないはずだ───荒ぶる神気を収めたからに他ならなかった。
だが、安堵の息を漏らしたのも束の間。
御真木の切れ長の瞳に宿る光は、未だ冷徹な厳しさを失っていなかった。
御真木「神が鎮まっても、人の世の毒は抜けておらぬ、か」
御真木たちが疫病対策のために【大和の都】を離れている間、各地の【豪族】どもは、まるで己がその地の『王』にでもなったかのように傲慢に振る舞い、権力を貪っていた。【大和朝廷】の威信は、今や彼らの身勝手な専横によって脅かされつつある。
御真木(……オオタタネコ)
御真木の脳裏に、【三輪山】を出立する前夜、夜通し語り明かした“心友”の顔が浮かぶ。
同じ【オオモノヌシ】の血を引く者として、寝る間も惜しんで魂を通わせ合ったあの時間こそが、御真木にとって最後の安息であった。【神の子】たるオオタタネコも、それが「今生の別れ」になることを薄々察していたのだろう。睡魔と必死に格闘しながら、最後まで御真木の話に付き合ってくれた健気な姿が愛おしい。
あのような、心底信頼できる部下が、今の自分の陣営に一人でもいれば───。
「【大王《おおきみ》】、お耳に入れたき儀が」
低く、どこか尊大な声が御真木の思考を遮った。
声の主は、父王【ワカネコヒコ大王】の兄であり、御真木の伯父にあたる大彦だ。
もう一人の伯父である武埴安は、理知的で政治家肌の宰相気質を見せているが、この大彦は違う。娘の御間城比売(ミマキヒメ)が御真木の妃となってからは、まるで自分が王権を握ったかのように露骨に増長し、日に日に目に余る態度が目立っていた。
御真木「……何だ、大彦」
大彦「【和邇一族】の彦国葺が、【大王】への目通りを求めて参じております。いかがなさいますか? 疫病が収まった途端、すり寄ってくる有象無象など、追い返しても良かろうかと存じますが」
鼻で笑う大彦。
だが、御真木はその名を聞いて、記憶の糸を手繰り寄せた。
御真木(彦国葺……確か、彼の妹は父王の側室だったはず。そして───)
御真木の脳裏に閃きが走る。
御真木(確か……朕よりだいぶ年齢の離れた異母弟を、彦国葺が引き取って育てていたな!)
そうだ。ひねくれた大人どもを今から調教し、自分に忠誠を誓わせるのは骨が折れるし、ほぼ不可能に近い。しかし、まだ何色にも染まっていない年端もいかない子どもであれば───自分の絶対的な懐刀へと育て上げることができるのではないか?
御真木は唇の端をわずかに上げた。
御真木「通せ。彦国葺には、我が末の皇子の養父という大義名分がある。【大和】の安泰を語る上で、退ける理由などない」
大彦「チッ……」
大彦があからさまに不快そうな顔で舌打ちをしたが、御真木は完全に無視した。知ったことか。
謁見の間へと通された彦国葺は、一人の幼児を伴っていた。
その瞬間、室内の空気が一変した。
大彦も、武埴安も、居並ぶ重臣たちも、すべての人間が言葉を失い、その場に動きを止めた。
彦国葺が、【大王】の前に進み出る。
【古墳時代】の礼法に則り、左手を胸に当て、右手で腰の勾玉の佩緒を軽く押さえながら、膝を折って深く深く頭を垂れた。その隣で、小さな幼児もまた、彦国葺の動きを完璧になぞり、一寸の乱れもない見事な敬礼を捧げたのである。
小さな身体から放たれる、ただ者ではない凛とした覇気。
御真木は、直感した。間違いなく、この童は己の母違いの末弟であると。
御真木「……そこの男童(おのわらべ)は、朕の異母弟か?」
【大王】としての威厳を保ちつつ、御真木は問いかけた。
【大王】のほうから尋ねてきたので、彦国葺は肯定する。
彦国葺「ははっ。大王のご推察の通りにございます」
彦国葺が誇らしげに頭を上げる。
御真木「名は、何と申す?」
御真木が重ねて問うと、彦国葺は隣の幼児へ視線を落とし、「自分で名乗るがよい」と短く促した。
御真木(いくらなんでも、ようやく少し舌が回り始めた頃合いの幼児に、朕の前で直接名乗らせるのは厳しすぎではないか?)
御真木は一瞬眉をひそめたが、それは全くの杞憂だった。
日子坐「……日子坐と申します」
鈴を転がすような、しかし凛と通る声。
はっきりとした見事な滑舌で、幼児は臆することなく己の名を響かせた。
年齢からは考えられないそのハキハキとした聡明な応対に、大彦や武埴安ら周囲の大人たちは、驚愕のあまり目を見開いている。
御真木「……ふっ、見事なものだ」
御真木は満足げに深く頷いた。この逸材、手放す手はない。
御真木「彦国葺よ。日子坐を大層見事に育ててくれた。今後も評議の場には、常に日子坐を同伴せよ」
御真木は、まだ小さな我が弟を、そのまま古墳時代の政治方針を話し合う『評議』の席へと参列させることを宣言した。
(➔後半へ続く)
◇古代パート
一同が席につくと、御真木は座から立ち上がり、鋭い視線で一同を見回した。
その場が静まり返るのを見計らい、彼は朗々と声を響かせる。
御真木「集まった皆に、朕から言うことがある!……昨晩、朕は【太陽神様】から【御神託】を受けた!」
「なっ……!?」
「【太陽神様】、だと……!?」
場が激しくざわめいた。太陽神───すなわち【アマテラスオオミカミ】である。
【天孫一族】の正統たる【御真木大王】がそう口にしたのだ。誰一人として、その言葉を疑う者などいなかった。一同は息を呑み、静まり返って次の言葉を待つ。
御真木は内心で冷たく笑いながら、神妙な、そして有無を言わせぬ大義名分を厳かに突きつけた。
御真木「【初代イワレビコ大王(神武天皇)】が、かつて【大和平定】を成し遂げた際、各地へ神々を祀る【社】を建造された。……しかし!我らは【初代大王】から数百年もの長きに渡り、この【聖なる社】を放置し続けてきたのだ。その結果、神々の怒りを買い、【大和】にあの凄惨な疫病が蔓延した!」
御真木は一拍置き、悲壮感すら漂わせる声で叫ぶ。
「おおお……!」
居並ぶ豪族たちが感極まったように声を上げる。
なんと信心深い、なんと国を想う素晴らしい大王か───と、誰もが目を潤ませていた。
だが───
その座の片隅で、幼き日子坐(ヒコイマス)だけは、兄である【大王】の瞳の奥に宿る「冷徹な野心」を見逃さなかった。
日子坐は小さな唇の端を、誰にも気づかれないように歪めた。
“神を祀るための測量”だと言えば、反抗的な周辺豪族の領地であっても、大義名分を持って合法的に兵を送り込み、地形や防衛線を「下見」することができる。拒めば「神への不敬」として即座に討伐できるのだ。これ以上ない、完璧な奇策。
御真木は、自らの壮大な征服計画の第一手として、ニヤリと笑み浮かべながら告げた。
御真木「これより、方々の測量を行う。派遣するのは───大彦、武埴安、彦国葺。そして、朕自らも赴く。【大和】に仇なす邪気(まつろわぬ者ども)を払い、四方に王権の楔を打ち込むのだ!」
後に【四道将軍】の派遣と呼ばれる、【大和朝廷】による日本全土掌握への進撃───。
その幕が今、【大王】の冷徹な策略と、それを察知した美幼児・日子坐の静かな視線の中で、妖しく切って落とされた。
[初国知らす 第壹章 終了]
あとがき
はじめまして。
本書を手に取ってくださった読者様、誠にありがとうございます。
Kindleでの出版は、本作で3冊目となります。
私はあえて、SNS等での事前の告知や宣伝を行っておりません。そのため、本を開いてくださるすべての読者様に対して「常に『はじめまして』の新鮮な気持ちでお迎えしたい」という思いから、このご挨拶をさせていただいております。
宣伝をしない理由は、私の小さなこだわりでもあります。――“本との出会いは一期一会”。表紙を見て直感的にビビッときた、その偶然が出会わせるワクワク感を、読者様にも純粋に楽しんでいただきたいからです。
これまでの既刊は、投稿サイトに連載している本編『忍シリーズ』のスピンオフにあたります。
1冊目は読み切り、2冊目の『忍 SHINOBI【追憶】必殺篇』は独立した前後編の二部作でした。
そして3冊目となる本作は、ガラリと趣向を変えて**「ゲームブック」**という新たな形式に挑戦いたしました。
実は、前作『必殺篇』の下巻において、一般の人々が見ている「表舞台」と、忍たちが暗躍する「裏舞台」が交錯する構成を執筆した際、「このギミックは、ゲームブックにした方が読み手の方に何倍も楽しんでもらえるのではないか?」と閃いたのです。そこで、長編読み切りを分冊にするための新たな試みとして、本作を書き下ろしました。
本作『忍 SHINOBI【回想】古墳時代篇』を執筆するにあたり、私自身が多大な影響を受け、敬愛してやまない氷室冴子氏の『銀の海 金の大地』、そして山藍紫姫子氏の『闇の継承・日影成璽シリーズ』へのオマージュとリスペクトを随所に込めさせていただきました。
元々、古典や時代劇が大好きだった私は、『銀の海 金の大地』との鮮烈な出会いをきっかけに『古事記』を読み耽るようになりました。文語版と現代語訳版の両方に触れましたが、編纂者の意図や当時の情勢が透けて見える文語版の奥深さはもちろん、翻訳家の方々の独自の解釈によって幾通りものドラマを見せる現代語訳の多様性に、すっかり魅了されてしまったのです。「自分でも、この魅力的な『古事記』の世界をベースにした物語を紡いでみたい」――その強い衝動から生まれたのが、この忍版・古代大河ファンタジーです。
本作では現代パートと古代パートを織り交ぜ、現代の若者たちが古代の出来事にツッコミを入れたりネタばらしをしたりする、一風変わったエンタメ構造を取り入れています。私なりの大胆な解釈やユーモアを含んでおりますので、歴史を愛する皆様にも「こんなアプローチの古事記ファンタジーもあるのか」と、新鮮なエンターテインメントとして楽しんでいただければ幸いです。
また、本作の大きな見どころとして、作中に「3択クイズ」をご用意しました。
ストーリーをしっかり読んでいれば解ける簡単なものから、『古事記』の知識が試される本格的な歴史クイズまで様々です。格付けチェックのようなバラエティ感を意識しており、中には「選んだらアカン選択肢」が紛れ込んでいます。もしもその地雷を選んでしまった場合は、罰ゲームとして「お叱り部屋」へ強制送還され、本作のキャラクターたちから愛のある(?)お叱りを受けることになりますので、ぜひ全問正解を目指してみてください。
この本を作るにあたり、ゲームブックとしての最適なボリュームを研究した結果、「ページ数は多すぎず、サクサク読める方が面白い」という知見を得ました。そのため、今後は読みやすさを重視した「分冊版」として、テンポよくお届けしていく予定です。
『古事記』は神話の時代から推古天皇の御代までが描かれますが、本作のタイトルからもお分かりの通り、物語はあえて「第十代・崇神(すじん)天皇記」からのスタートとなります。日本の神話や神武天皇の物語は、子供向けの絵本や学校の図書室にある歴史漫画などで誰もが一度は触れており、少し見飽きている方も多いのではないか、と考えたからです。
崇神天皇は歴史的に「実在がほぼ確実視されている最初の天皇」ですが、一般的な知名度はそれほど高くありません。「ヤマトタケルは知っているけれど、その父親(景行天皇)やご先祖様の名前はパッと出てこない」という方も多いのではないでしょうか。そんな、教科書の行間に隠れた時代だからこそ、最高に新鮮で面白い物語が描けるのではないかと思っています。
ちなみに、私が小学生の頃に読んだ歴史漫画では、なぜかヤマトタケルの父親が初代・神武天皇になっていました(笑)。私はそれを大人になるまでずっと信じ込んでおり、東宝映画の『日本誕生』を観たことで、ようやく自分の知識の間違いに気づかされたという可笑しな思い出があります。そんな歴史の迷宮に迷い込む楽しさも、本作に詰め込みました。
本作には、AIで生成したイラストをベースに、アイビスペイントでコラージュや加筆を施した、ひと手間仕込みのビジュアルも多数掲載しています。
「普段は活字だけの小説はちょっと苦手……」という方でも、イラスト多めのコミック風ノベルゲームブックとして、直感的に楽しめる仕上がりになりました。
一期一会の素晴らしい出会いによって、本作が皆様の退屈な時間を一瞬でもきらめかせる存在になれば、作者としてこれ以上の喜びはありません。
それでは、また次のステップでお会いできることを、心より楽しみにしております。
2026年6月5日 発行 初版
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アニメ、ゲーム、ミステリー、時代劇が好きです。 好きなアニメは『ガンダムシリーズ』、『鋼の錬金術師』。 好きなゲームは『スーパーロボット大戦』。 好きな映画は黒澤明監督の『七人の侍』。 好きな時代劇は、『影の軍団』『必殺シリーズ』。 好きな作家は、江戸川乱歩、京極夏彦、山田風太郎、池波正太郎、藤沢周平、大藪春彦、栗本薫、山藍紫姫子、吉原理恵子、夢枕獏、田中芳樹、菊地秀行、吉岡平、荒俣宏です。(敬称略してます) 最近のマンガやライトノベルでは、『葬送のフリーレン』『薬屋のひとりごと』『Dr.STONE』『転生したらスライムだった件』『けものみち』(アニメでは頭に旗揚!が付いてる)『捨てられ聖女の異世界ごはん旅』など、日常を重視したファンタジー系が好きです。