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邦楽ロックの歩き方

環真名、ぴのわ、narimi

二松学舎大学



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 目 次

まだ誰のものでもない音楽

音楽と栞

Rock Through Lyrics

まだ誰のものでもない音楽

環真名

まだ誰のものでもない音楽

環真名

 ライブハウスに通うようになってから気づけば3年以上経っていた。最初は恐る恐る足を踏み入れていたのに今では一人で堂々と下北沢を闊歩し、飲酒しながらライブを見ているのだから驚きだ。通い始めた当初はメジャーシーンで活躍するバンドとは違い驚くことばかりだったが、3年間でそれもまた魅力だと思えるようになった。ここではエピソードも交えてインディーズバンドのライブに通うことの魅力を記していきたいと思う。

魅力その①チケットが手に入りやすい

 インディーズバンドのライブはメジャーデビューしたバンドに比べるとかなりチケットが手に入りやすく、また価格も手頃である。先着販売でもよほど小さな会場でない限り残っていることが多く、売り切れていても予告なく復活していることがあるので気になるバンドがいたらSNSや各種プレイガイドをチェックしてみよう。基本的には平日の夜に開催されるライブが多いため、空いた時間に軽い気持ちで見に行けるのも魅力的だ。物販に行くと次のライブのチケットをその場で販売していることもあるのでライブに行く時はちょっとだけ現金を多く持っていくのがいいかもしれない。

魅力その②自分の好きな位置で楽しめる

 インディーズバンドのライブは基本的にはライブハウスで行われる。ライブハウスは指定席がないので基本的には好きな位置に行ける。もちろん最低限のルールと常識は必要だが後ろで静かに聞くもよし、前で拳を突き上げながら踊るもよし、良識の範囲内であれば自由に音楽を楽しめる。私の個人的なおすすめはPA卓と呼ばれるスピーカーから出す音のバランスをまとめる機械の前で、ここだとスピーカーで耳を破壊されにくくかつ全体の音が良く聞こえやすい。初めてライブに足を運ぶ場合はぜひ選んでみてほしい。

魅力その③通っていくうちに好きな箱に出会える

 ライブハウスはライブハウスごとにそれぞれ違った特色を持っている。それは外観だけでなくライブハウス側が打つ企画の特色や、音響まで多岐に渡る。また、ライブハウスによってはドリンクやフードに力を入れている所もあるので音楽以外の楽しみも生まれる。ライブハウス主催の企画に行ったことがきっかけで新しいバンドやそのライブハウスが好きになる、なんてことも多い。ここでは私が特に好きなライブハウスを紹介したい。
F.A.D YOKOHAMA
 横浜中華街のはずれにある箱。近くにありえない量のチャーハンを出すコスパ最強の中華料理屋がある。毎年年末に爆裂F×A×Dという企画を行っており、その時に行くと鍋が食べられる。ここの緑茶ハイが本当に美味しいので行った際は是非飲んでみてほしい。
下北沢近松
入口が少し分かりにくいが、とにかく音と雰囲気が良いのと会場のスタッフがとても優しい。バーカウンターがフロアの外にあり椅子もあるため休憩しやすく、ドリンクもグラスで提供されるのが嬉しい。トイレがひとつしかないので転換の時はかなり混む。
下北沢SHELTER
 下北沢駅からのアクセスが良く、音も良く、雰囲気がとてもサブカルチャーなので一度は行ってみてほしい箱。アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の聖地でもあるので当日券で来る外国人のお客さんが一定数居て盛り上がりやすく、楽しい。
渋谷CLUB CRAWL
渋谷駅から少し離れていることと空調が少し弱いことが難点だが音がよく、渋谷にしては珍しく周辺の治安が良いので一人でも安心していける箱。入場時に貰えるドリンクチケットが電車の切符風のデザインでとても可愛い。住宅街にあるため整列に関してはすごく厳しいのでそこだけ注意しよう。

魅力その④ 距離感が近い

私がライブに通い始めて一番驚いたのが距離感の近さだ。
 まず、ライブ終わりに物販に行くと普通にメンバーがいる。そして話しかけると普通に対応してくれる。SNS上で感想を発信すれば反応が返ってくることもあるし、バンドによってはチケットはプレイガイドを通さずダイレクトメッセージに連絡して取り置きするシステムなこともある。私は人見知りがゆえに最初は中々話せなかったが段々と通ううちに気さくに話せるようになり、そのバンドのことがもっと好きになった。バンドの音楽だけでなく、その人本人の人柄に触れることができるのもインディーズバンドの魅力のひとつなのだと思う。
ここまで様々な魅力を語ってきたが、その魅力を私に教えてくれた大切な存在として大好きなバンドであるAMUSEMENT LAGERを紹介したい。
 AMUSEMENT LAGERは2021年に結成されて以降、数々のオーディションやコンテストを勝ち抜きオープニングアクトとして大型フェスに出演を果たすなど、高い実力を持つバンドだ。特徴的な鋭いギターとともに緻密に作り上げられた超絶技巧のサウンドを形成するベースとドラム、そしてどこまでもまっすぐな感情が込められた歌詞は国内だけに留まらず海外のファンも魅了しておりSNSのコメント欄はほとんどが海外からのコメントで埋まるなど、人気を誇っている。
 2025年にリリースされた楽曲『君のスピードに追いついて』では間奏のフレーズがTiKToKで話題を呼んだ。夏の予兆を感じさせるギターリフから始まるこの曲はAMUSEMENT LAGERらしい複雑で緻密に構成されたサウンドと爽やかな恋をまっすぐに歌う歌詞のバランスが絶妙な青春ソングなのでぜひ一度聴いてみてほしい。そして気になった人はぜひ一度ライブに足を運んでみてほしい。
https://youtu.be/6BtqnMqt0hM?si=qlfTQyiPW5GgQgR8

おわりに

 今日では様々な方法でインディーズバンドと出会うことができる。SNSや動画サイトで「インディーズバンド おすすめ」と検索すれば沢山のバンドが出てくるだろう。もしくはサブスクリプションサービスのおすすめ機能でも良いかもしれない。入口は何でもいい。どんな方法でも飛び込んでしまえば、きっとあなたの心を沸き立たせるバンドが見つかるはずだ。ここまで読んでくれたあなたが自分だけのときめきを教えてくれるバンドに出会えること、そしてそのバンドを見にライブハウスへ足を運んでくれることを願っている。

音楽と栞

ぴのわ

音楽と栞

ぴのわ

はじめに

「本と音楽ってどこか似ている気がしませんか?」という問いに対して「似ていないだろう」と答える人ももちろんいることだろう。しかし、私は本と音楽はとても似ていると思う。本を読んでいる時に頭の中に音楽が流れていたり、逆に音楽を聴いていて歌詞が小説のように感じたりする瞬間がある。この本では、そんな本と音楽がなぜこんなにも相性がいいのかについて語っていこうと思う。

1.共通点「記憶との結びつき」

 音楽は記憶を連れてくるといわれることがあるが、それは本当だと思う。音楽を聴いていると、突然過去の懐かしい記憶が蘇ってくることがある。小学生や中学生のとき通学中によく聴いていた曲、昔ハマってよく見ていたアニメのオープニング、他にも本を読みながらよく聴いていた曲などを何年か後に再び聴くと、当時の懐かしい記憶を思い出すという経験をしたことがある人は少なくないだろう。これは本にも似たようなことが言える。昔読んでいた小説を読み返したりしたとき、その物語だけでなく、読んでいた場所や季節、初めて読んだ時どんな気持ちで読んでいたかなどを思い出すことがあると思う。このように、音楽と本はその作品単体としてだけではなく、その時の景色や感情も一緒に記憶となって残りやすいのである。特に、「嬉しい」「悲しい」「つらい」などの感情は、音楽や本と強く結びつけることが出来る。私自身も、落ち込んでいるときや泣きたいときには励ましてもらえる曲を聞いたり、面白い本を読んで気分をリフレッシュさせるなどしている。強く印象に残っている時間ほど、作品と記憶が結びつきやすいのだ。そのため、久しぶりにその曲を聴いたり本を読み返したりすると当時の自分に再会したような感覚になる。これが、本と音楽が似ていると感じる理由の一つになるのだと私は思う。

2.小説のような歌詞

皆さんは音楽を聴いていて、「小説の一部のようだな」と思ったことが一度はあるのではないだろうか。私は普段音楽を聴いていて小説みたいだと思うことが多くある。ここで、「Chevon-シェボン」を例に出して見ようと思う。まず「Chevon-シェボン」とは、どんなバンドなのか公式サイトから引用する。(※1)

ボーカルの谷絹茉優、ギターのKtjm、ベースのオオノタツヤからなる、札幌市で結成された3ピースロックバンド。楽曲制作は、詞/メロディを谷絹、リズム/キメをオオノ、コード/リフをKtjmが担当。予見不可能な楽曲の展開力とボーカルの谷絹が生み出す複雑怪奇なメロディーラインが魅力のひとつ。



 特に、感情をストレートに伝える言葉選びや歌詞が小説を読んでいる感覚に近いと感じる。その中でも、『ハルキゲニア』という曲の歌詞に注目して考えていきたい。この曲は、特に情景が浮かびやすく小説の一場面のように感じられる。(※2)

拝啓 手紙は行ったきりで
君からの知らせはないままに
最近寒さが身に染みて来ましたが
風邪など引いていないか、とても心配です




 この歌詞は読んで分かるように、少し寂しさや悲しさを感じるとても儚い歌詞になっている。「手紙は行ったきり」という歌詞から相手からの返事がなく報われない想いだということ、「風邪など引いていないか、とても心配です」という歌詞から報われなくてもずっと相手を想っているということが感じ取れる。

きっといつかまたどこかで君と
出会っていることすら気付かず
ふたり、すれ違って
僕の見ないところで
素敵に変わってしまった君に
もう恥ずかしくてさ
…馬鹿みたいだ
僕だけが街に残っているんだひとり



 また、この曲のサビでは街を出て行ってしまい全く連絡が取れていなかった相手が素敵に変わっているのに対し、街に残っている「僕」は何も変わっていないという現実に「馬鹿みたいだ」と感じていることが読みとれる。「僕だけが街に残っている」という言葉の表現は、ただ場所の違いを示しているだけではなく二人の時間の流れ方の違いも一緒に表されているようにも感じられる。相手が新しい環境で成長している一方で、「僕」は過去の思い出や未練をずっと引きずっていて何も変わっていない、馬鹿だな、と自分にあきれているように捉えることができる。

精神的にどこかよく似ていた
図書館で借りた本にはいつも先に君の名前
ずっと深いところで
僕らは通じ合っていた筈だ
その筈だったんだ
あぁ、春と一緒に
君もこの街へ戻って来ればいいのに

僕だけが残っているんだ、ひとり



 「図書館で借りた本にはいつも先に君の名前」という歌詞から、本の好みが一緒でこの二人がどこか似ているところがあったことから「僕らは通じ合っていた筈だ」という歌詞が次に来たのかなと考察することが出来る。このような歌詞からこの曲は、最後まで報われない「僕」の恋を描いていることが伝わると思う。歌詞を見て情景を思い浮かべるのは、小説を読んでその背景を思い浮かべることと非常に似ているため相性がいいと言えるだろう。

おわりに

ここまで「Chevon-シェボン」を例にして考えてみたが、音楽と本は「懐かしい記憶を思い出す」「音楽を聴いて情景を思い浮かべることと本を読んで背景を思い浮かべる」と似ている点があることから、この2つの相性が良いと言えるのかもしれない。
 音楽と本は一見あまり関係のないもののように見えて、実はかなり似た要素がある。懐かしい記憶を連れてきたり、言葉の背景や情景を想い浮かべたりと、お互いの魅力をより深く感じさせてくれる相性の良い存在ではないのだろうか。

参考文献

(※1)Chevon Offical site プロフィール
https://www.chevon.biz/profile.html

(※2)ハルキゲニア/Chevon 【Lyric Video】 (YouTube公式チャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=7QoiSZ3wnI4

Rock Through Lyrics

narimi

Rock Through Lyrics

narimi

はじめに

 本稿では、日本のロックバンドの楽曲の歌詞に焦点を当てて、筆者による楽曲紹介を行う。
 バンドの楽曲は、単に音が大きいだけではない。実は、歌詞に詩的でストーリー性がある楽曲も多く存在する。普段、「うるさい」「なんか怖い」とバンドの楽曲を聴かない人もいると思う。ぜひ、この本を読み終わったあと、ロックバンドの楽曲を音だけでなく、歌詞で聴いてみてほしい。

My Hair is Bad

新潟県上越市出身のスリーピースロックバンドであるMy Hair is Bad。通称マイヘアの楽曲の魅力は、ロックバンドらしい疾走感のあるサウンドはもちろん、Gt.Vo椎木知仁の実体験を歌詞に落とし込んでいるところだ。特にマイヘアの恋愛ソングは、情けなかったり、重かったり、赤裸々に歌詞が綴られているものが多い。
『舌』
 一曲目に取り上げるのは、2022年5thフルアルバム『angels』に収録された『舌』という楽曲である。

〝「このまま君の舌を嚙み切ったら噓をつけなくなるかな?」〟

私は、インパクトの強い歌詞から始まるこの楽曲を、別れてもなお完全に関係を断ち切れない男女を描いていると解釈している。

もしも君が噓をつかなかったら
きっと僕は傷付くから
この先もずっとずるい人でいてね
誰か一人だけを愛せる人にならないでね
乾いたキスが好きな君のままでいてね(※1)


 「君」が「僕」のことを好きだという噓をついてくれることによって、「僕」は傷付かずに済んでいるが、「僕」はその噓に気付いてしまっている。私は『舌』のこの歌詞をそう読み解く。
 恋愛の幸せな側面だけを描かないマイヘアらしい楽曲である。

『自由とヒステリー』
 二曲目は、『悲劇のヒロイン』という楽曲と対になる作品としてリリースされた『自由とヒステリー』。MVが公開された際には、歌詞はもちろん、役者を使ったストーリー性のある映像にもファンによる考察が行われた。『悲劇のヒロイン』と『自由とヒステリー』、どちらもバンドメンバーによる演奏シーンがあるのだが、『悲劇のヒロイン』は映像が反転しているのだ。歌詞と合わせてMVも見ると、解像度がぐっと上がるのでぜひ見てみてほしい。
 『自由とヒステリー』では、ヒステリックな彼女と別れた後、自由を手に入れた彼氏の姿が描かれている。

月曜から金土日
毎日、楽しいから
もう帰ってこないでね
もしも出会う前に戻れるなら
僕ら、出会わせないで
二人が過ごした小さな部屋の窓辺には
君と育てた観葉植物
君がいなくなった日から
前よりも元気になったんだ(※2)


 「君」から解放されたことによって毎日楽しく過ごしている「僕」の姿と、二人が過ごした部屋にある観葉植物の様子が読み取れる。〝君と育てた観葉植物〟という歌詞のところでMVにはワスレナグサが映し出される。この歌詞とシーンの考察がYouTubeのコメント欄で多くされている。
 ワスレナグサの花言葉「私を忘れないで」は彼女の想いなのではないか。彼と観葉植物を掛けていて、彼女の愛と水を掛けているのではないか。花は水をあげすぎると枯れる。彼女も彼に愛を注ぎすぎた。彼女がいなくなったことで水(愛)が適切な量になったから観葉植物(彼)は元気になったのではないか。(※3)
 作詞した椎木知仁本人からの解説はないが、ここまでの考察がファンによって行われているのが、この楽曲の面白いところである。

君からの電話に出たのも
今からこのドアを開けるのも
君のためじゃない
僕は僕の自由を今夜勝ち取るためだ
でも
ドアを開くその先には
泣きながら笑ってる君がいて
そのまま僕に抱きついて一言
「ただいま。」って言ったんだ(※4)



 私がこの歌詞の中で注目してほしいのは、〝でも〟というワードである。このワードの前には〝僕は僕の自由を今夜勝ち取るためだ〟という歌詞がある。「でも」という接続詞は「反対・対立・逆説」の関係を作る働きがある。しかし、後に続くのは〝ドアを開くその先には 泣きながら笑ってる君がいて そのまま僕に抱きついて一言 「ただいま。」って言ったんだ〟という歌詞であり、反対の意味が含まれる歌詞ではない。
 彼は「自由を勝ち取る」と彼女からの解放を望んでいるように見える。しかし、「でも」という「反対・対立・逆説」の関係を作る接続詞を入れることによって、実は心のどこかでそう思えていないことを表しているのではないか。また、接続詞でありながら〝僕は僕の自由を今夜勝ち取るためだ〟の後に接続する歌詞を入れていないのも面白い。歌詞の空白を聴き手が埋めることができるのだ。

おわりに

 今回、My Hair is Badの楽曲から『舌』、『自由とヒステリー』の二曲を紹介した。恋愛ソングを紹介したが、彼らの楽曲には等身大の日常を描いた楽曲も多いので、是非聴いてみてほしい。
 私は高校生の頃にこのバンドに出会い、歌詞の面白さからバンドの音楽に夢中になった。詩的でストーリー性のある歌詞を力強いバンドサウンドと共に楽しむことが好きだ。
 歌詞に共感し、自然と涙が出たライブは、強く印象に残っている。いつか、心動かされる歌詞を書くバンドに出会ったときは、ライブハウスにも足を運んでみてほしい。

参考文献

(※1)My Hair is Bad 『舌』 歌詞参照 LINE MUSIC(閲覧日:2026年5月21日)
(※2)(※4)My Hair is Bad 『自由とヒステリー』 歌詞参照 LINE MUSIC(閲覧日:2026年5月21日)
(※3)My Hair is Bad 『自由とヒステリー』 YouTube 2024年2月21日 https://www.youtube.com/watch?v=tSv3pEYGjo4 コメント欄(閲覧日:2026年5月21日)

邦楽ロックの歩き方

2026年7月24日 発行 初版

著  者:環真名、ぴのわ、narimi
発  行:二松学舎大学

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長島 珠希

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