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音楽で大切にしているもの

笹木 環真名 つな narimi

二松学舎大学



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 目 次

ライブハウスのすすめ

笹木

まだ誰のものでもない音楽

環真名

おまもりみたいな曲たち

つな

Rock Through Lyrics

narimi

ライブハウスのすすめ

笹木

ライブハウスのすすめ

笹木

ライブハウスってどんな場所?

 ライブハウスは、アーティストと観客の距離が非常に近い音楽空間である。大規模なアリーナライブとは違い、数十人から数百人ほどの規模で行われることが多く、音の振動や熱気を直接感じられることが特徴だ。ライブハウスは地下にあることが多い。もちろん、渋谷CLUB QUATTROのように地上にある会場も存在するが、一般的には地下のイメージが強い。この「地下」という立地や、暗い照明、爆音の音楽が、「怖そう」「入りづらそう」という印象につながっているのかもしれない。しかし、ライブハウスの暗さには理由がある。照明演出を際立たせ、非日常的な空間を作るためだ。暗い空間の中でスポットライトが当たることで、ステージ上の演奏はより鮮明に見える。

ドリンク代ってなに?

ライブハウスに入る際には、受付でチケット確認を行い、ドリンク代を支払う。紙チケットの場合もあれば、スマートフォンの電子チケットの場合もある。この「ドリンク代」は、ライブハウス初心者が特に疑問を持ちやすいシステムだろう。一般的に600円前後で設定されており、「なぜチケット代とは別に払う必要があるのか」と感じる人も多い。実際、このドリンク代はライブハウス側の重要な収益源になっている。出演者へ直接渡るお金ではない。しかし、ライブハウスという場所そのものが存在しなければ、多くのアーティストは演奏する機会を持てない。つまり、ライブハウスは音楽文化を支える〝土台〟でもあるのだ。だからこそ、このドリンク代は単なる飲み物代ではなく、「空間を維持するための料金」と考えることもできる。ライブハウスに通う人々の中には、その文化を支える意味を込めて支払っている人も少なくない。

ライブハウスごとの〝空気〟

ドリンク代の解説はここまでにして、次はライブハウスのルールについて説明していく。ライブハウスによって、それぞれかなり性格が違う。例えば、下北沢のDaisy Barはインディーズロックの登竜門みたいなイメージがある。昔ここに出ていたバンドが売れて、後に凱旋ライブをする、なんて話もよく聞く。逆に、横浜のF.A.D.みたいなライブハウスは、もっとパンクとかラウド系のイメージが強い。盛り上がり方もかなり激しい。今の時代だから、もちろん「モッシュ・ダイブ禁止」と書かれていることは多い。でも、感情が高まると飛んでしまう人はやっぱりいる。モッシュというのは、観客同士がぶつかり合いながら暴れること。ダイブは、そのまま観客の上に飛び込むことだ。飛びたそうにしていると、後ろのデカい人が足を持ち上げてくれることもある。そして、そのまま人の上をゴロゴロ転がっていく。あれは毎回、城本クリニックのCMみたいだなと思う。もちろん危険なので、小さいライブハウスでやると普通に迷惑になる。セキュリティがいない会場も多いし、スタッフが止めないといけなくなるからだ。ただ、そういう熱狂も含めて、ライブハウス文化として長年続いてきたんだな、とは感じる。

どこでみるのが正解なのか

次は、「ライブハウスのどこで見るべきか」について話していく。ライブハウスでは、チケットに「整番(整理番号)」というものが書かれていることが多い。例えば、「A二十五」「B二◯五」のような番号は整番と呼ばれ、ある程度の〝序列〟がある。頭についているアルファベットはチケットの販売形式を表していることが多く、一般的には「A」がオフィシャル先行、「B」が一般販売、アルファベットが付いていないものは手売りチケットを意味している。
ちなみに、手売りチケットはバンドマン本人が直接売る形式で、ライブハウス文化の中ではかなり特別感がある。バンドとの距離が近い証拠みたいなところもあり、序列としてはかなり高めだったりする。そして、その後に続く数字が入場順になる。つまり、「A二十五」の人は、「A五十」の人より先に入れる。人気公演だと、開演前にはすでに長い列ができていて、スタッフが整番順に呼びながら入場させていくことが多い。ただ、これはあくまで完売公演の話だ。売り切れていない公演だと、整番で呼ばれてもそこまでギュウギュウにはならない。だから整番は、「絶対的な席順」というより、〝目安〟くらいに考えるのがいいと思う。ちなみに、自分は「前が空いていたら前に行ってもいい派」である。整番が悪くても、前が空いていたら詰めればいいし、逆に整番が良くても後ろでゆっくり見たい人は後ろにいていい。ライブハウスは意外と自由だ。ただ、一つ忠告しておくと、前に行きすぎると盛り上がった時に後ろから押される。ジャンルによっては、本当に内臓が潰されかけるので注意した方がいい。

ライブが終わったあと

最後に、公演後の流れについても説明しておきたい。ライブが終わると、みんな写真を撮ったり、一緒に来た人と感想を言い合ったりしている。自分は後ろで見ていた時は、だいたいすぐ抜ける。帰りの列が混雑すると面倒だからだ。でも、前で見ていた時は、そのまま余韻に浸りながら写真を撮るのも良いと思う。出口付近には、大抵「物販」が並んでいる。TシャツやCD、ステッカーなどが売られていて、欲しいものがあれば並ぶのもライブの楽しみの一つだ。最近は通販をやらないバンドも増えてきたので、会場でしか買えない物も多い。また、たまにさっきまで演奏していたメンバー本人が物販に立っていることもある。そういう時は、直接話しかけられるチャンスだったりする。ただ、自分はそういうのが少し苦手なので、物販も見ずにそのまま抜けてしまうことが多い。あとから「実はサイン会やっていたらしい」と知って後悔したことも何回かある。

おわりに

ライブハウスについて、なんとなく雰囲気は伝わっただろうか。『ライブハウスのすすめ』というタイトルをつけたものの、実際は〝おすすめ〟というより、自分が感じてきたライブハウスの空気を、そのまま書いただけの冊子になった気もする。それでも、この冊子を読んで、少しでもライブハウスに興味を持ってくれる人がいたら嬉しい。

まだ誰のものでもない音楽

環真名

まだ誰のものでもない音楽

環真名

ライブハウスに通うようになってから気づけば3年以上経っていた。最初は恐る恐る足を踏み入れていたのに今では一人で堂々と下北沢を闊歩し、飲酒しながらライブを見ているのだから驚きだ。通い始めた当初はメジャーシーンで活躍するバンドとは違い驚くことばかりだったが、3年間でそれもまた魅力だと思えるようになった。ここではエピソードも交えてインディーズバンドのライブに通うことの魅力を記していきたいと思う。

魅力その①チケットが手に入りやすい

 インディーズバンドのライブはメジャーデビューしたバンドに比べるとかなりチケットが手に入りやすく、また価格も手頃である。先着販売でもよほど小さな会場でない限り残っていることが多く、売り切れていても予告なく復活していることがあるので気になるバンドがいたらSNSや各種プレイガイドをチェックしてみよう。基本的には平日の夜に開催されるライブが多いため、空いた時間に軽い気持ちで見に行けるのも魅力的だ。物販に行くと次のライブのチケットをその場で販売していることもあるのでライブに行く時はちょっとだけ現金を多く持っていくのがいいかもしれない。

魅力その②自分の好きな位置で楽しめる

インディーズバンドのライブは基本的にはライブハウスで行われる。ライブハウスは指定席がないので基本的には好きな位置に行ける。もちろん最低限のルールと常識は必要だが後ろで静かに聞くもよし、前で拳を突き上げながら踊るもよし、良識の範囲内であれば自由に音楽を楽しめる。私の個人的なおすすめはPA卓と呼ばれるスピーカーから出す音のバランスをまとめる機械の前で、ここだとスピーカーで耳を破壊されにくくかつ全体の音が良く聞こえやすい。初めてライブに足を運ぶ場合はぜひ選んでみてほしい。

魅力その③通っていくうちに好きな箱に出会える

ライブハウスはライブハウスごとにそれぞれ違った特色を持っている。それは外観だけでなくライブハウス側が打つ企画の特色や、音響まで多岐に渡る。また、ライブハウスによってはドリンクやフードに力を入れている所もあるので音楽以外の楽しみも生まれる。ライブハウス主催の企画に行ったことがきっかけで新しいバンドやそのライブハウスが好きになる、なんてことも多い。ここでは私が特に好きなライブハウスを紹介したい。

F.A.D YOKOHAMA

横浜中華街のはずれにある箱。近くにありえない量のチャーハンを出すコスパ最強の中華料理屋がある。毎年年末に爆裂F×A×Dという企画を行っており、その時に行くと鍋が食べられる。ここの緑茶ハイが本当に美味しいので行った際は是非飲んでみてほしい。

下北沢近松

入口が少し分かりにくいが、とにかく音と雰囲気が良いのと会場のスタッフがとても優しい。バーカウンターがフロアの外にあり椅子もあるため休憩しやすく、ドリンクもグラスで提供されるのが嬉しい。トイレがひとつしかないので転換の時はかなり混む。
下北沢SHELTER
 下北沢駅からのアクセスが良く、音も良く、雰囲気がとてもサブカルチャーなので一度は行ってみてほしい箱。アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の聖地でもあるので当日券で来る外国人のお客さんが一定数居て盛り上がりやすく、楽しい

渋谷CLUB CRAWL

渋谷駅から少し離れていることと空調が少し弱いことが難点だが音がよく、渋谷にしては珍しく周辺の治安が良いので一人でも安心していける箱。入場時に貰えるドリンクチケットが電車の切符風のデザインでとても可愛い。住宅街にあるため整列に関してはすごく厳しいのでそこだけ注意しよう。

魅力その④ 距離感が近い

私がライブに通い始めて一番驚いたのが距離感の近さだ。
 まず、ライブ終わりに物販に行くと普通にメンバーがいる。そして話しかけると普通に対応してくれる。SNS上で感想を発信すれば反応が返ってくることもあるし、バンドによってはチケットはプレイガイドを通さずダイレクトメッセージに連絡して取り置きするシステムなこともある。私は人見知りがゆえに最初は中々話せなかったが段々と通ううちに気さくに話せるようになり、そのバンドのことがもっと好きになった。バンドの音楽だけでなく、その人本人の人柄に触れることができるのもインディーズバンドの魅力のひとつなのだと思う。
 ここまで様々な魅力を語ってきたが、その魅力を私に教えてくれた大切な存在として大好きなバンドであるAMUSEMENT LAGERを紹介したい。
 AMUSEMENT LAGERは2021年に結成されて以降、数々のオーディションやコンテストを勝ち抜きオープニングアクトとして大型フェスに出演を果たすなど、高い実力を持つバンドだ。特徴的な鋭いギターとともに緻密に作り上げられた超絶技巧のサウンドを形成するベースとドラム、そしてどこまでもまっすぐな感情が込められた歌詞は国内だけに留まらず海外のファンも魅了しておりSNSのコメント欄はほとんどが海外からのコメントで埋まるなど、人気を誇っている。
 2025年にリリースされた楽曲『君のスピードに追いついて』では間奏のフレーズがTiKToKで話題を呼んだ。夏の予兆を感じさせるギターリフから始まるこの曲はAMUSEMENT LAGERらしい複雑で緻密に構成されたサウンドと爽やかな恋をまっすぐに歌う歌詞のバランスが絶妙な青春ソングなのでぜひ一度聴いてみてほしい。そして気になった人はぜひ一度ライブに足を運んでみてほしい。https://youtu.be/6BtqnMqt0hM?si=qlfTQyiPW5GgQgR8

おわりに

今日では様々な方法でインディーズバンドと出会うことができる。SNSや動画サイトで「インディーズバンド おすすめ」と検索すれば沢山のバンドが出てくるだろう。もしくはサブスクリプションサービスのおすすめ機能でも良いかもしれない。入口は何でもいい。どんな方法でも飛び込んでしまえば、きっとあなたの心を沸き立たせるバンドが見つかるはずだ。ここまで読んでくれたあなたが自分だけのときめきを教えてくれるバンドに出会えること、そしてそのバンドを見にライブハウスへ足を運んでくれることを願っている。

おまもりみたいな曲たち

つな

おまもりみたいな曲たち

つな

はじめに

私は音楽が好きだ。
 私個人に限った話では全くないと思うが、とにかく毎日聴いている。そんな過ごしてきた日々の記憶と結びついている曲や、この曲が良いんだ! と主張したい曲について自由に話したい。普段歌詞に着目して音楽を聴くので、印象深い歌詞やおまもりみたいに思っている歌詞というのも書いていこうと思う。いわば、これは自分の自分による自分のための「好き」の記録である。

思い出深い曲編

まずは、ロックバンド・BUMP OF CHICKENの『透明飛行船』である。この曲は、2010年発売のアルバムに収録されている。テンポは速く、バンドサウンド全開である。過去を振り返りながら現在を見つめるように書かれた、プライドや優しさについての歌詞は、共感できる点も多い。さらに歌詞には、BUMP OF CHICKENの出身地である千葉県佐倉市にある「宮田公園」という場所が登場する。リスナーにとって欠かせない聖地であり、私も実際に訪れたことがある。住宅街にある木々に囲まれた公園で、子供の頃の拠り所のような場所であったのかななどさまざまな想像をした。まず曲が特に好きで、聖地巡礼という楽しみ方もしたという点において思い出深い一曲である。
 二曲目は、『Blessing』である。この曲は、halyosyというネットを中心に活動するシンガーソングライターが制作した曲で、特にニコニコ動画では、その初期から人気を誇っていた投稿者である。歌ってみた動画やボーカロイドのオリジナル楽曲を投稿しており、歌い手への楽曲提供も多数行っている。
 この曲はニコニコラボと銘打った2014年の音楽作品であり、投稿された動画は3バージョンある。一つは初音ミクをはじめとするボーカロイド6人が歌うVOCALOIDSバージョン。次に、halyosyを含めた歌い手、踊り手、ゲーム実況者など13人が歌唱しているSINGERSバージョンがA、Bとある。私は中学生の頃、まさにニコニコ動画でこれらの動画を見て、曲を聴いていた。生きることについて優しく心に寄り添いながら歌われており、とても励まされていた思い出がある。世界中のさまざまな言語で歌われている動画もニコニコ動画には上がっていたり、今現在も多くの歌い手がコラボをする楽曲であったりと、この曲のもつ力が大きいことも魅力の一つである。

歌詞が響いた曲編

 ここではまずアイドルグループ・嵐の曲を紹介する。なんと言ってもアイドルなので、恋愛がテーマであったり、前向きで元気のくれるきらきらした曲の印象が強いかもしれない。もしくは大人っぽくかっこいい曲だとか。ただ嵐、けっこうシビアな曲も歌ってます。ここで挙げるのは、『できるだけ』という2003年発売のアルバムに収録されている、〝変化〟について歌われている曲である。歌い出しからして衝撃を受けたので、ここに記そうと思う。

あの店のケーキ 苺の数が減って
紅茶も何だか コクがなくなったよね
そんなふうにきっと 変わっていくものを
ちょっと淋しいけど 僕らは受け入れてく(※1)

 2003年は嵐のデビュー4年目であり、平均年齢は20・6歳。大ブレイクしたきっかけのドラマ『花より男子』よりも前の、じわじわと勢いをつけていた頃の曲だ。

変わっていくことを何故
僕らは恐れるのかなぁ
変わらないものを笑うくせに(※1)

 これがサビの一節である。人としてもグループとしても若く、これからであるアイドルに書き下ろされた曲としてあまりにもメッセージ性が強い。いつこの歌詞を聴いても心に響くのは、歌手である嵐と重ねて聴いてしまう部分があるからであり、一個人としても変化を恐れる気持ちを多少なりとももっているからだと思う。

 次に、BUMP OF CHICKENの『真っ赤な空を見ただろうか』を紹介する。この曲は、2006年発売のシングルに収録されたカップリング曲である。

夕焼け空 きれいだと思う心を どうか殺さないで
そんな心 馬鹿正直に 話すことを馬鹿にしないで(※2)

 この歌詞が、私の特に好きな部分となっている。周りの人の目を妙に気にしてしまったり、自分の素直な気持ちを自分で否定してしまいそうなとき、この言葉は心強くそばにいてくれる。また、傷ついたときや疲れたときには、この言葉をお供に、自分は自分のことを大切にしようと思える。そしてこの曲をはじめ、BUMP OF CHICKENがこのように真っ直ぐに言葉にして歌ってくれることで、自分もそういう気持ちを持っていていいのだなと、気恥ずかしくても人に言えなくても、自分が思ったことは大事にしていていいのだなと思うのだ。

おわりに

気分によって自然と心が求めたり、自分にとって大事だったり、頭にふと浮かぶ曲はここに書ききれないほどある。そしてきっと今後もいくつもの素敵な曲と出会うし、そうして感じた自分の「好き」を大事にしたい。音楽は私の感情を時に強引に救い上げ、それぞれの曲のやり方で私のおまもりみたいな存在になってくれる。そんな風に思う。

参考文献

(※1)嵐「できるだけ」歌詞 歌ネット
https://www.uta-net.com/song/55468/
(※2)BUMP OF CHICKEN「真っ赤な空を見ただろうか」歌詞 歌ネット
https://www.uta-net.com/song/48200/

Rock Through Lyrics

narimi

Rock Through Lyrics

narimi

はじめに

本稿では、日本のロックバンドの楽曲の歌詞に焦点を当てて、筆者による楽曲紹介を行う。
 バンドの楽曲は、単に音が大きいだけではない。実は、歌詞に詩的でストーリー性がある楽曲も多く存在する。普段、「うるさい」「なんか怖い」とバンドの楽曲を聴かない人もいると思う。ぜひ、この本を読み終わったあと、ロックバンドの楽曲を音だけでなく、歌詞で聴いてみてほしい。

My Hair is Bad

新潟県上越市出身のスリーピースロックバンドであるMy Hair is Bad。通称マイヘアの楽曲の魅力は、ロックバンドらしい疾走感のあるサウンドはもちろん、Gt.Vo椎木知仁の実体験を歌詞に落とし込んでいるところだ。特にマイヘアの恋愛ソングは、情けなかったり、重かったり、赤裸々に歌詞が綴られているものが多い。

『舌』

 一曲目に取り上げるのは、2022年5thフルアルバム『angels』に収録された『舌』という楽曲である。〝「このまま君の舌を嚙み切ったら噓をつけなくなるかな?」〟私は、インパクトの強い歌詞から始まるこの楽曲を、別れてもなお完全に関係を断ち切れない男女を描いていると解釈している。

もしも君が噓をつかなかったら
きっと僕は傷付くから
この先もずっとずるい人でいてね
誰か一人だけを愛せる人にならないでね
乾いたキスが好きな君のままでいてね(※1)

 「君」が「僕」のことを好きだという噓をついてくれることによって、「僕」は傷付かずに済んでいるが、「僕」はその噓に気付いてしまっている。私は『舌』のこの歌詞をそう読み解く。
 恋愛の幸せな側面だけを描かないマイヘアらしい楽曲である。

『自由とヒステリー』

二曲目は、『悲劇のヒロイン』という楽曲と対になる作品としてリリースされた『自由とヒステリー』。MVが公開された際には、歌詞はもちろん、役者を使ったストーリー性のある映像にもファンによる考察が行われた。『悲劇のヒロイン』と『自由とヒステリー』、どちらもバンドメンバーによる演奏シーンがあるのだが、『悲劇のヒロイン』は映像が反転しているのだ。歌詞と合わせてMVも見ると、解像度がぐっと上がるのでぜひ見てみてほしい。
 『自由とヒステリー』では、ヒステリックな彼女と別れた後、自由を手に入れた彼氏の姿が描かれている。

月曜から金土日
毎日、楽しいから
もう帰ってこないでね
もしも出会う前に戻れるなら
僕ら、出会わせないで
二人が過ごした小さな部屋の窓辺には
君と育てた観葉植物
君がいなくなった日から
前よりも元気になったんだ(※2)

 「君」から解放されたことによって毎日楽しく過ごしている「僕」の姿と、二人が過ごした部屋にある観葉植物の様子が読み取れる。〝君と育てた観葉植物〟という歌詞のところでMVにはワスレナグサが映し出される。この歌詞とシーンの考察がYouTubeのコメント欄で多くされている。
 ワスレナグサの花言葉「私を忘れないで」は彼女の想いなのではないか。彼と観葉植物を掛けていて、彼女の愛と水を掛けているのではないか。花は水をあげすぎると枯れる。彼女も彼に愛を注ぎすぎた。彼女がいなくなったことで水(愛)が適切な量になったから観葉植物(彼)は元気になったのではないか。(※3)
 作詞した椎木知仁本人からの解説はないが、ここまでの考察がファンによって行われているのが、この楽曲の面白いところである。

君からの電話に出たのも
今からこのドアを開けるのも
君のためじゃない
僕は僕の自由を今夜勝ち取るためだ
でも
ドアを開くその先には
泣きながら笑ってる君がいて
そのまま僕に抱きついて一言
「ただいま。」って言ったんだ(※4)

 私がこの歌詞の中で注目してほしいのは、〝でも〟というワードである。このワードの前には〝僕は僕の自由を今夜勝ち取るためだ〟という歌詞がある。「でも」という接続詞は「反対・対立・逆説」の関係を作る働きがある。しかし、後に続くのは〝ドアを開くその先には 泣きながら笑ってる君がいて そのまま僕に抱きついて一言 「ただいま。」って言ったんだ〟という歌詞であり、反対の意味が含まれる歌詞ではない。
 彼は「自由を勝ち取る」と彼女からの解放を望んでいるように見える。しかし、「でも」という「反対・対立・逆説」の関係を作る接続詞を入れることによって、実は心のどこかでそう思えていないことを表しているのではないか。また、接続詞でありながら〝僕は僕の自由を今夜勝ち取るためだ〟の後に接続する歌詞を入れていないのも面白い。歌詞の空白を聴き手が埋めることができるのだ。

おわりに

今回、My Hair is Badの楽曲から『舌』、『自由とヒステリー』の二曲を紹介した。恋愛ソングを紹介したが、彼らの楽曲には等身大の日常を描いた楽曲も多いので、是非聴いてみてほしい。
 私は高校生の頃にこのバンドに出会い、歌詞の面白さからバンドの音楽に夢中になった。詩的でストーリー性のある歌詞を力強いバンドサウンドと共に楽しむことが好きだ。
 歌詞に共感し、自然と涙が出たライブは、強く印象に残っている。いつか、心動かされる歌詞を書くバンドに出会ったときは、ライブハウスにも足を運んでみてほしい。

参考文献

(※1)My Hair is Bad 『舌』 歌詞参照 LINE MUSIC(閲覧日:2026年5月21日)
(※2)(※4)My Hair is Bad 『自由とヒステリー』 歌詞参照 LINE MUSIC(閲覧日:2026年5月21日)
(※3)My Hair is Bad 『自由とヒステリー』 YouTube 2024年2月21日 https://www.youtube.com/watch?v=tSv3pEYGjo4 コメント欄(閲覧日:2026年5月21日)

音楽で大切にしているもの

2026年7月24日 発行 初版

著  者:笹木 環真名 つな narimi
発  行:二松学舎大学

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笹木 環真名 つな narimi

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