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私は今まで、いわゆる「推し活」をあまりしてこなかった。グッズを集めるというよりも、自分で推しのキャラクターの絵を描く方が好きで、推し活というものにはあまり興味を持っていなかった。理由は色々あったが、両親からのお小遣いは高校一年生で月二千円ほどであり、高校生からはバイトをしなさいという環境であったため、高校生まではお金があまりかからない絵を描くこと自体が好きであったことが一番の理由であった気がする。実際、初めてグッズを買ったのも、高校一年生の頃にハマった『ゴールデンカムイ』や『新世紀エヴァンゲリオン』で、自分が推し活にここまで熱中することはないと思っていた。
そんな私が推し活にハマるきっかけになったのが、2025年公開の『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』である。映画を観てから、気づけば毎日のように作品のことを考え、関連するグッズや情報を調べるようになっていた。最初は「少し気になる」程度だったはずなのに、いつの間にか作品そのものだけでなく、〝推しを応援すること〟の楽しさにも惹かれていった。
初めの頃は、グッズを集めたり、いわゆる推し活をしたりするつもりは全くなかった。しかし、好きな作品について調べたり、グッズを見たり、絵を描いたりしているうちに、自分でも驚くほど夢中になっていった。
私がぬいぐるみにハマったきっかけは、『名探偵コナン』にハマっていた頃に仲良くなったネットの友達だった。その友達は『名探偵コナン』に出てくる諸伏高明や諸伏景光のぬいぐるみを持ち歩き、料理と一緒に写真を撮っていた。最初は「かわいいな」くらいにしか思っていなかったが、「小さき命、どう?推しを連れ歩けるし、本当に可愛いし、本当にちまくて可愛い」と何度も布教されるうちに、だんだん気になり始めた。
そこで私も試しにメルカリでぬいぐるみを購入してみることにした。当時『名探偵コナン』にハマっていた私は、萩原研二と松田陣平のぬいぐるみを選んだ。実際に届いてみると、その小ささや表情、キャラのデフォルトのデザインが想像以上に可愛らしく、一気に夢中になってしまった。
最初はぬいぐるみをぬいポーチに入れてバッグにつけていただけだったが、今では毎日のようにズボンにつけて出かけている。気づけば、ぬいぐるみはただのグッズではなく、自分のファッションの一部のような存在になっていた。
大学に入ってから、私はセルフネイルにハマっていた。二年ほど続けるうちに、ネイルはただおしゃれを楽しむだけでなく、自分の好きなものを表現できるものになっていった。そして推し活にハマってからは、「推しネイル」いわゆる痛ネイルにも挑戦してみたいと思うようになった。
特にやりたかったのが、ボンボンドロップシールをネイルにつけるボンドロネイルだった。しかし、当時ハマっていたのは『忍たま乱太郎』であり、忍たま乱太郎のチェリジェムステッカーは人気で、どこの店舗を探してもほとんど在庫がなかった。どうしても諦めきれず、私は家から車で片道二時間かかるロフトまで買いに行くことにした。
今思えば、たったのチェリジェムステッカーを買うためだけにそこまで時間をかけるのは少し大げさだったかもしれない。それでも、推しをイメージしたネイルを完成させたいという気持ちの方が強かった。実際に欲しかったシールを見つけた瞬間はとても嬉しく、時間をかけてでも行ってよかったと思えた。推し活を始める前の私なら、きっとここまで行動することはなかったと思う。
これは私が初めて一番くじを引いた時の話である。当時の私は『新世紀エヴァンゲリオン』にハマっており、一番くじでフィギュアが出ることを知ってから、ずっとそわそわしていた。
発売前日には、近所のセブンイレブンへ行き、「すみません、エヴァンゲリオンの一番くじってここでやりますか?」と店員さんに確認までしていた。今思えばかなり気合いが入っていたと思う。そして当日、朝八時頃にセブンイレブンへ向かった。
最初は「数回だけ引こう」と思っていた。しかし、いざ引き始めると、推しのフィギュアが出るまで止まれなくなってしまった。「次こそ出るかもしれない」という気持ちで引き続け、気づけばかなりの金額を使っていた。最終的には三万円は飛んでいたと思う。
それでも後悔はなかった。むしろ、全賞のフィギュアを一体ずつ手に入れられた時の達成感はすごかった。一度家に帰った後も諦めきれず、出かけるついでに再びセブンイレブンへ寄り、追加で二回だけ引いてみた。すると、そこで初号機のフィギュアが当たったのである。
その瞬間の嬉しさは今でも覚えている。まさに「脳汁が出る」という表現がぴったりだった。推しのためにここまでお金を使うなんて、昔の自分なら想像もしていなかった。しかし、推し活には、理性を超えてしまうほどの楽しさがあるのだと思う。いや、理性は超えても、財布の紐だけは締めて欲しい。
私が『ゴールデンカムイ』にハマりはじめていた頃、「ゴールデンカムイ展」の存在を知った。しかし、その時にはすでに東京会場の開催は終了していた。もっと早く知っていれば……とかなり落ち込んだが、調べてみると京都会場の開催期間がまだ残っていることに気づいた。その瞬間、「京都に行こう」と勢いで決めていた。気づけば、一週間後に二泊三日の京都一人旅行に向かう夜行バスに乗っていた。
当時の私は、一人旅の経験がまったくなかった。夜行バスに乗るのも初めてで、ホテルに一人で泊まるのも、知らない土地を一人で歩くのも、何もかもが新鮮だった。それでも、不安より「展示会に行きたい」という気持ちの方が大きかった。
実際の京都旅行は、展示会だけでは終わらなかった。伏見稲荷大社や清水寺へ行ったり、鴨川沿いを行けるところまで散歩したりと、観光も思い切り楽しんだ。全く知らない駅で間違えて降りて、マップを頼りにかんかん照りの真夏に京都内のどこかを彷徨ったり、知らないおばあちゃんにつられて親子丼を食べて甘くて驚いたことなど、一人旅で多くのことを体験した。好きな作品がきっかけで訪れた京都だったが、その旅そのものが大切な思い出になっていた。
今振り返ると、推しの展示会を見たいという気持ちだけで、よくあそこまで行動できたと思う。しかし、推し活をしている時の自分は、驚くほど行動力がある。好きなものがあるだけで、人はこんなにも遠くまで行けるのだと実感した。
推し活は、お金も時間もかかる。冷静に考えれば、シール一枚のために二時間かけるのも、一番くじに三万円使うのも、馬鹿らしいことなのかもしれない。それでも、自分の「好き」に本気になれる時間は、毎日を少し楽しくしてくれる。私は最近になって、ようやくその楽しさを知った。
オタクであることは、別に恥ずかしいことではない。少なくとも私は、推し活を始めてから前より明るくなれた気がする。ズボンにぬいポーチをつけてファッションの一部にするのも、キーホルダーをつけて「かわいい」「おしゃれ」と思う感覚と、そこまで変わらない。推し活をきっかけに、一人で旅行へ行くようにもなった。ネットを通じて、日本のいろいろな場所に住む友達も増え、その友達に会うために旅行をすることもある。以前の自分なら、ここまで行動的にはなれなかったと思う。
クレーンゲームに一万円使ってしまうこともある。お金がなくなった喪失感はすごいが、自分の机の上に推しのグッズが置いてあるだけで、なんだか全部許せてしまう。好きという気持ちは、それほど大きな力を持っているのだと思う。
推し活は、お金も時間もかかる趣味かもしれない。しかし、自分の「好き」を全力で楽しめる時間は、毎日を少し特別にしてくれる。私はこれからも、「好き」を隠さずに全力で「好き」を楽しんで生きていきたい。
2026年7月31日 発行 初版
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