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負の数×負の数 フォッフォッフォッフォッ.

星 令奈

星奈出版



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~~「序」~~


 先日、こんな本を見つけました。

  おい点P、動くんじゃねえ! | 晶文社
  https://www.shobunsha.co.jp/?p=9167

 その本の中には「(負の数)×(負の数)=(正の数)って、ポジティブすぎるやろ」という一節がありました。

 私は、この本がきっかけで、以前からあたためていたことを、このサイトでまとめてみました。

 本書では「正の数・負の数」の学習が終わった頃の生徒さんを想定して、授業を始めています。

~~「第1時間目」~~

教師:みなさんは、一学期に「正の数・負の数」と「その計算」について学びました。今日は、まず、「負の数」そのものからお話しますが、「負の数」については、小学生のころから聞いたことはあったでしょう。

例えば、天気予報で「明日は氷点下5度近くまで下がりそうです」と発表された時には、
氷が溶け始める温度である「0℃」を【基準】にして、それよりも寒暖計の目盛りが5個下回ることを言っていますね。

また、ある商店の特定の商品が、毎日の平均で10個ずつ売れていたとき、今日、売れた個数が8個だった場合には、平均の個数を【基準】にして、「今日の売り上げの平均からの差は、ー2個だった」といっても通じるでしょう。
このように、みなさんにとって、「マイナス」の数は学習済みでしょうし、使えないと恥ずかしいですよね。フォッフォッフォッフォッ.

生徒X君:センセイって、バルタン星人ですか?お年が分かりますよ。

教師:まあまあ、とりあえず問題です。

ある晩、私の家の裏口に2匹の野良猫がエサをねだりに来ていました。
そして、朝になると猫の数は、なんと3倍になっていました。
さて、朝の猫の数は何匹になったでしょうか?
ちなみに、これは「いじわるクイズ」ではありません。裏口のドアを開けたら猫は驚いて逃げて行った、ということはありません。

生徒たち:(2匹)×(3倍)=(6匹)、だから6匹です!
教師:みなさん!ご名答でした。簡単すぎてごめんなさいね。

教師:では、次の問題です。

ある晩、私の家の裏口に「マイナス2匹」の野良猫がエサをねだりに来ていました。そして、朝になると猫の数は、なんと「マイナス3倍」になっていました。さて、朝の猫の数は何匹になったでしょうか?

みなさんは1学期に「正の数・負の数」とともに「その計算方法」も習っているはずですし、その計算の規則を守らないと、期末テストも高校受験もできませんからねぇ。フォッフォッフォッフォッ.

さあ、お答えください。

生徒:……?

教師:えっ?  いかがですか。 誰か答えてください。

A君:(ー2匹)×(ー3倍)=(+6匹)、ですけどぉ?

教師:計算は合っていますよ。みなさんもそうなりましたか?

B君:センセイ、なんか、おかしいです。

C君:そもそもぉ~、「マイナス2匹の猫」っていうのが、ヤバくね。

教師:えっ、さっき【基準】を決めればマイナスの数も使えるというお話をしたでしょ。わたしは、いつもの猫の数を【基準】にして、その夜は「ー2匹」としたのですよ。

Dさん:「ー3倍」が、ありえないのではないですか。

教師:ええっ、そうなのぉ? みなさんは、「負の数の掛け算」も習っていたでしょうに。

生徒:「???」

  -----教室には、しばらく沈黙が続いた-----

教師:じゃあ、そろそろ。まともなお話をしましょうか。

みなさん、A君が発表してくれた式は
(ー2)×(ー3)={(ー1)×(2)}×{(ー1)×(3)}、と書けませんか。

この式の中身は、掛け算ばかりなので「交換法則」により、その順番を変えることができます。

2×{(ー1)×(ー1)}×(3)

問題は、この真ん中の、(ー1)×(ー1)なのです。わたしも、長年の間、うまく説明できなかったので、ベテランのM先生に聞いてきたのです。

では、黒板に注目してください。


   ######「黒板」######


分配法則を逆に使って、

(ー1)×(ー1)+(ー1)×1=(ー1)×{(ー1)+(+1)}=0

よって、(ー1)×(ー1)+(ー1)×1=0・・・①

次に、1×1+(ー1)×1={1+(ー1)}×1=0

よって、1×1+(ー1)×1=0・・・②

ここで①と➁を比較すると、

(ー1)×(ー1)と、1×1とは、同値である。・・・(*)となります。

ネコの問題の式に戻ると、
(ー2匹)×(ー3倍)
={(ー1)×2}×{(ー1)×3}
=2×{(ー1)×(ー1)}×3
=2×{(+1)×(+1)}×3……(ここで*を使った)
=2×1×3
=+6・・・・「答」


   #####板書終わり#####


教師:以上ですが、計算だけは納得してもらえましたかね。

生徒:そうか!これが(負の数)×(負の数)が(正の数)になるっていうガチの説明だったのですね。

教師:そうなのですよ。私にとっても、M先生のおかげです。
しかし、さてさて、
「-2」×「-3」=「+6」とは、実際にはどのようなことが起こったと捉えたらよいでしょうか。

これを、今日の「ゆるい宿題」にします。
もちろん、猫以外の例も大歓迎します。

~~「第2時間目」~~

E君:先生、この例ならどうですか?
「2万円の借金」を負の数として、3回返したとします。
(-2万円)×(-3回)=6万円・・・・・③

教師:ほほぉ~
生徒たち:それでいいんじゃね。
教師:実はAIも同じような答えを出していましたけどねぇ。
生徒:そういう言い方、止めて欲しいですけど。
教師:まあまあ「AIと生徒は使いよう」ってことだな。
生徒:相変わらず変なセンセイ。

教師:みなさん。「Eくんの説明と③式」だけでは、6万円を得したようにも思えませんか?
AIもその点で誤解を招きかねない回答を作ってきたのです。
宿題をやってきたE君には、もちろん、よい点をあげますけどね。

E君:あっ、そっか。「6万円」が湧いてきたみたいですね。

教師:そうなんだよ。ここからが「みんなの頭の使いよう」だね。

生徒:うう~~ん。

教師:今回の「ポイント」は、2個目の「マイナス記号」なのですよ。

生徒:マイナスはマイナスじゃね?

教師:実は、そういう簡単なことでもないのですよ。
では、③式をこう書きます。
(-2)×(ー1)×3・・・って、間違っていないでしょ。
左半分の、(ー2)×(ー1)、は、
2万円の「借金」を「返済する」。
つまり「負の値」と「元に戻す」というイメージを持てたとしたら、
すなわち「借金を返す」というイメージにつながりますね。
そして「返す行為」を「3回」行えば、その人の会計では借金をする前の状態に戻るというイメージを持てませんか。
これでEくん自身も納得できましたか。
Eくん:あっ、「元に戻る」かあ。

教師:この後も【元に戻す】をキーワードにして例をあげてくださいね。

F君:センセイ、いいっすか。
ビルの11階にいた人が、エレベーターでうっかり2階分、下の階におりてしまいました。
愚かなことに、それを3回もやっちまったら5階に来たそうです。
その人は、元の階に戻ろうとしました。
5階+{(ー2階)×(ー1:逆転)×(3回分)}=11階、元の階に戻った。

生徒:おおぉ~。

教師:Fくん、よくぞ考えましたね。OK牧場!
これで、「マイナス記号」とは、単に「負の値を示す記号」ということだけではなくなったでしょう。

Gさん:センセ、私もいきます!
私の家の工場は、まあまあ順調なのですが、時には商品の「返品」もあるのです。
先月、2箱の荷物が3店舗から返品されました。
その式は、(ー2個)×(ー1:戻し)×(3店舗)=6箱、
これは、(ー2)×(ー3)=6、・・・6箱が元に戻ったっていうこと。

教師:そうそう。「マイナスの記号」って興味深いでしょ。

H君:猫の話ですが、「マイナス」って「元に戻った」と考えると、
たくさんの猫を保護しているセンセイの家から、二匹の猫が家出をしました。そんなことが3回もあったのですが、なんと、その都度、捕獲することに成功したのです。その式は
(ー2匹:家出)×(ー1:戻る)×(3回)=6、元に戻った猫の数。

教師:さすがはH君、いいですねぇ。

教師:じゃあ、Hくんに乗って応用問題を出します。
今月のことです。我が家の猫が2匹ずつ3回、家出をしたのですが、
そのうち2回分の家出猫は、無事に捕獲できました。
さて、今の猫の数と先月の猫の数の差は、何匹でしょうか?

Jさん:(ー2)×{3+(ー1)×2}=ー2、先月との差で~す。

教師:うん、Jさんの計算は正しいし最速の式ですが、
私はスローモーションのような式を作ってみます。
(ー2)×3=-6匹・・・・・いなくなった猫が6匹ってこと。
(ー2)×(ー1)×2=4・・・捕獲できた猫の数。
すると、二つの式から
(ー6)+4=ー2・・・・・先月との差です。


みなさん、今日も頑張りましたね。
「(負の数)×(負の数)は、なぜ(正の数)になるのか」から始まって、「負の状態を反転させる」ことまで考えました。
ただ、現実の例を無理に考えることは、もうしなくてもよいかもしれませんよ。そんなこともありますから明日は違う観点から同じテーマを考えましょう。

~~「第3時間目」~~

教師:きょうも(負の数)×(負の数)は(正の数)となることを実感してもらいます。

いま、黒板にxーy平面を書きました。
ところで、みなさんは、x軸とy軸とが交わる点を、なにげなく「O」と書いていませんか。
これは「数字のゼロ:0」に見えなくはないですが、
「アルファベットの大文字のオゥ:O、originの、O」です。

では、私は、y=ー2xのグラフを描くことにします。
「y=ー2x」の「x」にいくつかの値を代入してみましょう。
x=3のとき、y=-6
x=2のとき、y=-4
x=1のとき、y=-2
そして、x=0のときには、y=0
これらの点は、半直線で結べます。

今のところグラフは、原点と第4象限にしかありません。
さあ、xの値が負になったとき、グラフはどうあって欲しいものでしょうかね。

K君:そりゃもう、そのまんま左上の方に、ビヤーと延ばすだけでしょ。

教師:そうだよね~。そう思うのは当然だし、間違っていないのですよ。
ただ今度は「y=ー2x」の「x」に負の値を代入することになるから、
やはり「(ー2)×(負の数)」という問題に再会することになります。

さっきの代入の記録を、ここにもう一度書いてみます。

x=3のときには、y=-6
x=2のときには、y=-4
x=1のときには、y=-2
x=0のときには、y=0

ここで、yの値の変化を振り返ってみてください。
xの値が「1」ずつ減少するとき、yの値は「2」ずつ増加しています。
そして、この規則を守り続けると
x=-1,のとき、y=0+2=2
x=-2、のとき、y=(0+2)+2=4
x=-3、のとき、y=(0+2+2)+2=6

Lさん:あっ「-2という係数」と「負の値の変数x」をかけると、
「yの値が正」になるってことですね。

教師:そうなのですよ。だからグラフでも「xの値が負のとき」、
yの値は正になり、第二象限で、左上に向かって「ビヤー」っと延長していくことになりますよね。

M君:ちょっと先生さあ。俺たちを煙に巻こうとしていない?

教師:ほお~、なんで?わたしが「宇宙忍者」だから?(笑)

M君:だって、いま、「足し算」しかしていないじゃないか。

教師:そうだよ。いけなかったかな。

M君:えっ?

Nさん:ああ、掛け算の基本ですね。M君さ、例えば「九九の2の段」だったら答えは「2,4,6,8,10・・・」と「2ずつ」増えていったでしょ。
先生は、答を「2ずつ」増やしていくことで掛け算をしたんですよ。

教師:Nさん、フォローありがとう。実は、「ー2」を「負の値x」にかけることを回避したかったのですよ。

M君:センセイって、意外と基本に忠実な教師なんだ。

教師:いやいや、もし私が「(負の数)×(負の数)は(正の数)」を、すでに知っていたような計算をしたら、元も子もないでしょう。

生徒たち:ほほぉ~。


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これで教室からの中継は終わります。

読者の皆さんからの「こんな具体例がありますよ!」を大募集中です。

お読みいただきましてありがとうございました。
また、今回もお世話になったM先生には心より感謝いたします。


        ~~「了」~~

負の数×負の数 フォッフォッフォッフォッ.

2026年8月30日 発行 初版

著  者:星 令奈
発  行:星奈出版

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