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【無料】霊力使い小学四年生の京域信仰 第一三話 東山広域・東福寺の臥雲橋、豊国神社の蟷螂

坪内琢正

洛瑞書店



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一三話 東山広域・東福寺の臥雲橋、豊国神社の蟷螂

 一〇月上旬の夕方前頃に入ると、南北の東山通が西を向いて九条通に変わる東福寺交差点も、一年でも最も過ごしやすい季節となった。
 その東福寺交差点の角は、南東に二四時間営業をしているコンビニエンスストアだった。
 レジ台は二台あり、店内は閑散としていて、列に並ばなくても、すぐにその2か所にそれぞれ立っている二人の店員―年輩と、学生くらいの若者から成る男性―に会計ができる様相だった。
 やがてそのレジの片方、若い方の店員の側に、夫妻と思われる男女の二名、二人の子と思われる、園児くらいの女児、また別の、夫妻の友人と思われる二人の男性、合計五人が、いくつか商品を全員で一つのかごに入れて近づいた。
「いらっしゃいませ」
 店員は会釈をして挨拶をし、頼まれたビニール袋に、バーコード打ちをした商品を入れていった。
「お、これもどうだ?」
「そうだな、いっしょに頼もうか」
「俺もな」
 その間にも利用客のうち男性の三名が会話を続けていた。
「お兄さん、後でになるが、このチキンも三つ頼むよ」
「承知いたしました」
 男性たちはレジの横の什器の中にあったチキン三点を、追加注文した。
 すると店員は、その什器からトングで言われた通り、チキンを三点取り出し、それぞれ小さな紙の袋に入れた。
「袋にごいっしょしてもよろしかったでしょうか」
「ああ」
 続いて店員は、チキンを、他の商品の入っているビニール袋に入れようとした。
「あっ」
「え」
「わっ!」
 そのとき店員は誤って三つのチキンを落とした。そのチキンはレジ台を経て、床に落ちた。また、興味深そうにレジ台を覗き込んでいた女児の顔に当たりそうになり、彼女は慌ててそれを避けた。
「あっ、申し訳ありません……、すぐに取り替えますので……」
 若い店員は謝罪し、新たなチキンを用意すると約束し、また什器の方に向かおうとした。
「おい、待て、ちょっと出てこい!」
 その時突然夫と見える男性が怒号を上げた。
「今、ともこの顔に当たりそうだったじゃねぇか! しっかり持てや!」
「ほんとね……! かわいいともこちゃんのお顔が火傷したらどうしてくれるの?」
 妻とみられる女性も、女児の顔をなでながら続けた。
「あの、それは……その紙袋は耐熱になっておりまして……」
「そんな理論はありとあらゆる一切がいらねぇよ!」 
 店員の説明を一蹴してかれはまた怒鳴った。
「責任者いねぇのか? ん、あいつか?」
 友人とみられる男性が、もう一台のレジの方に立っていた初老の男性に向けて指を差した。それに気づいて、彼はすぐにその客たちのもとに歩み出た。
「あの、先ほどから窺っておりました、あらためて申し訳ございません……、品物を取り替えますので……」
 その男性は礼儀正しく謝罪した。
「そんなんじゃ済まねえよ!」
「え」
 続いての怒号を聞いて、彼も慌てた。
「そうよ、今日の買い物は、もう全部無料にしてくれない? そのくらいじゃないと割に合わないってことなのよ」
 妻の側が言った。
「あの、それはさすがに私共も……」
「はあ? なんだその態度! お客様は神様、今ならみんな知っていることだろ!」
 また夫の側が言った。
「そうだ、まるで役人がやる店みたいな態度をしやがって! そんなものは間違った存在だ、みんな知っていることだろ!」
「そうだな、何もやっていないくせに、役人なんて一人残らずいなくなってしまえ! 金稼ぎだけが『普遍的な社会』だ! 今こそ、みんな知っていることだろ!」
 続いて、夫の友人たちもリーダーの店員を詰問した。一方彼はそれを聞きながら少しの間考え込んだ。
(な、なぜこのお客たちは、こんな理不尽なことを、全くそうも感じずに……。そういえば……今日の同僚の彼は学生だし、あと、主婦の人も同僚で居るが……、フルタイムでこの店に貼りついて働いている若い子も……でも彼らと同じ基準でしか私も支払えないし、上げよ! と言われても無理か……ないしはどんな言い方をしても結局全て単純に物価に乗せるだけだ……、お客のような世帯をあの子たちは持っておらず、それは半分の人々はそうだし、それではあっという間に全体が壊れてしまうのは明白……。そもそもなぜ二四時間を開けているのだろう! そもそもなぜもはや大人の仕事シリーズの本をいとも簡単に子どもに見せられず、いとも簡単に火の用心部隊を結成できず、もうただちに日本語も右も左もわからない移民を入れないと間に合わないようなことをしているのだろう! だから、お客様が神様というのは違うし、みんながみんながみんながこそが正義というのも違う……これだからこそのこれほどの理不尽言ってくることだって……。でも……もう逃げよう……、時間なんか止めてしまおう……、あの買い物を全部無料にするんだ、それで終わらせられるんだ……)
「もう、別にいいでしょ! 今日はこれらは貰い物にするのよ!」
「あ、あの……」
 女性の催促に対し、リーダーの男性は了承しようと、たどたどしく口を開けた。
「ああ、もういいわ!」
「へ?」
「偉い偉い神様の言うことを聞かない奴らだ! じゃあせめて、お前らここで土下座しろ! それで勘弁してやろう!」
「えっ、あの、それは……」
 突然のお客の要求に対して、リーダーの店員は大きく戸惑った。
「ほら、とっととやれ! それで許してやる」
「そ、それは……」
 彼はなおも戸惑ったままだった。
「さっきからその態度いい加減にしろ! やらないのかぁ?」
「ひっ」
 子の夫に見える男性は、一、二歩わざと大股で店員に詰め寄った。それを見て彼は怖さを感じた。

【無料】霊力使い小学四年生の京域信仰 第一三話 東山広域・東福寺の臥雲橋、豊国神社の蟷螂

2026年9月22日 発行 初版

著  者:坪内琢正
発  行:洛瑞書店

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