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◇現代パート
───歴史的知識が、音を立てて崩壊した瞬間だった。

無理もない。かの高名な『古事記』において、ただひたすらに信心深く、神に祈りを捧げていたとされる【御真木大王】。その実態が、神社再建を建前に緻密極まる軍事戦略によって勝利を毟り取る冷徹なリアリストだったなどと、誰が想像できただろうか。
だが、真実を語るソースはあまりにも強力すぎた。

神話のメッキが剥がれ落ちる音が響く中、その場の空気をまったく別のベクトルに切り裂いたのは、一人の青年の物騒な呟きだった。
遙「……なぁ。日子坐って、三〜四歳の頃にはもう伯父で養父の彦国葺の馬に相乗りして戦場を駆け回ってたんだろ?」
不機嫌そうに腕を組んだのは遙である。彼の眼光には、なぜかメラメラと不穏なライバル心が燃え盛っていた。


冷徹な一喝を入れたのは朔だ。呆れ果てた視線を一卵性双生児の弟・遙へと向け、容赦なくその『前歴』を暴露する。
朔「【人間】同士の戦争なんてとっくに終わっているこの平和な【現代】で、わざわざ【外国人部隊】に登録して【傭兵】なんてやってた男だぞ? 完全に日子坐と同類だろ、お前は!」
遙「仕方ねえだろっ!」
遙は勢いよく立ち上がると、自らの正当性を主張すべく拳を握りしめた。
遙「王族の血を引くお嬢様を嫁に貰うんだぞ!? 俺自身が自立して、最低でも年収百億は稼ぎ出す超ハイスペック男子にならねえと、門前払いで塩撒かれるに決まってんだろ!」
遙は【転生戦士】である。それ故に、現代の法を軽々と超越する【α種】の【異能力者】にカテゴライズされていた。
この現代社会において、原則として一夫一妻制が絶対のルール。しかし、強大な力を有する【α種】に限っては、種の保存と遺伝子の優位性から“重婚”が合法化───否、むしろ国家レベルで推奨されている。つまり、遙が複数の妻を娶ることに法的な障害は何一つない。
ない、のだが。
日光「……いや、遙。いくらなんでも年収百億も稼がなくていいと思うぞ?」
思わずといった様子で、日光が引きつった笑みを浮かべながら口を挟んだ。実は、日光の二人の姪は、遙の妻である。
つまり日光は、【風魔頭領一族】としっかり“姻族関係”なのだ。身内の立場から見ても、百億はさすがに過剰請求が過ぎる。

突如として部屋に響き渡ったのは、満《みちる》の鋭い関西弁のツッコみだった。
満「なんでそこで急に“ゼニ”って言うたんや! 絶妙に銭ゲバ感が出とるがな! 途端にドス黒い欲望に見えてまうやろ!」
要するに、年収百億さえ叩き出していれば、たとえ相手がどこの国の【王族の姫君】であろうとも文句のつけようがないはずだという、遙自身の脳内だけで完結した極論(ただし思い込み)なのであった。
やれやれ、と一同が肩を落としたその時。
部屋に設置された大型モニターの向こう側───遥か彼方の【ニライカナイ】からリモートで繋がっている燎が、ふっと目を細めた。
燎『ふっ……遙のその極端な思考回路、どこかイマス(日子坐)を思い出させるな。……まぁ、行動の目的は一から十まで完全に異なるのだが』
画面の中の燎は、二千年以上も昔に生きていた個体に思いを馳せるように、どこか遠い目をしている。
朔「全然違うだろ」
そこに冷や水を浴びせたのは朔だった。
朔「……日子坐の行動原理は“純然たる野心”だ。だが、遙にはそんな大層なものは欠片も無い。遙のやつは、【前世】のから妻に対して一途になりすぎた結果、ネジが数本ぶっ飛んだだけの──ただの“狂妻《きょうさい》”だ」
そう、彼は妻を恐れる“恐妻家”ではない。文字通り、妻に狂っていると書いて───“狂妻”なのだ。
実のところ、遙の現在の妻二人とは、【前世】から紡がれた何千年もの【縁】によって結ばれている。遙の【前世の真名】は【二郎真君】。その【縁】の長さを辿れば、優に七〜八千年以上という、人類の歴史を置き去りにするほどの歳月だ。
現在は【龍紋遙】という人間の肉体に【回生】(※1)しているが、たとえ【宿体】(※2)を何度変えようとも、その精神と魂魄は気の遠くなるような時間を越え、ただ二人の妻にのみ一途に執着し続けてきた。……要するに、歴史の裏に隠された超ド級の激ヤバ執着系男子なのである。
朔にしてみれば、「戦いに身を投じる動機が日子坐とは根本的に違いすぎる」と言いたくなるのも当然だった。
日子坐のそれが「天下への野心」だとするならば、遙のそれは「妻への全肯定」。世界が滅びようとも妻さえ笑っていればそれでいいという、スケールが大きいのか小さいのか分からない狂気なのだ。
しかし、画面の向こうの燎は、なおも物憂げに呟く。
燎『だがな、朔よ……。イマスとて、途中からは自らが地位と権力を欲する“野心”で動いているのか、それとも、ただ一人の女のために全てを捧げているのか……自身でも分からなくなっていたように見えたぞ』

画面の音声が、突如として怒号に変わる。モニターには鶴姫が燎の胸ぐらを掴んで、早く話せとせっつく姿が映っていた。
鶴姫『野望に生きる冷徹な男を変えた、たった一人の女の存在……! 素晴らしい、めちゃくちゃ気になる! おい燎、隠さず全部吐け! 日子坐って言ったら、あの鷹丸のオヤジさんだろ!? 私にとっては義理の父親にあたる人だ! 娘として聞く権利は一億パーセントあるよなァ!』
燎『ぐ、は……ッ!? つ、姉上、苦しい……っ』
モニター越しにバイオレンスなガチの締め上げ現場を目撃してしまった将成は、「うわぁ……」と目に見えて顔色を悪くしている。

目を輝かせて、すっと手を挙げたのは、この場における解説役の最高峰───歴史オタクの癸だった。彼がいてくれるおかげで、いちいち面倒な歴史解説を挟まなくていいのは非常に助かる。
癸「確か、【戦国時代】の【大祝鶴姫】の恋人だったはずだね」
そう。今まさに画面の向こうで燎のライフを削り取っている鶴姫こそ、かつて【瀬戸内のジャンヌ・ダルク】と謳われた【大祝鶴姫】その人の【転生者】である。
彼女は【亜神】の手によって【戦国時代】へと【強制転移】させられ、そこで過酷な役目を全うした。その“ご褒美”として、元いた【現代】へと帰還を許された【漂泊の者(転移者)】なのだ。
───そもそも【亜神】の都合で拉致されているので帰還は“ご褒美”ではなく“常識”あるいは“道徳”に当たるため、鶴姫は褒美を貰っていないことになるのだが───相手は【世界を管理】する【亜神】だ。そこは深く考えず、スルッと受け流すのが大人のマナーである。突っ込んだら負けだ。
癸「しかし、なぜ【越智安成】が日子坐王の息子ということになるのかな?」
癸は純粋な疑問を投げる。事情を知る当の燎は、いまだに鶴姫にガクガクとシェイクされていて喋れる状態ではない。代わりに画面の端からひょっこりと顔を出したのは、同じく【ニライカナイ】に身を置く一寸法師だった。

実は、影連の【前世】と一寸法師、ウラシマの三人は、かつて【古代】の地で実際に顔を合わせている。影連の口ぶりからして、彼もしっかりと【前世の記憶】を引き継いでいるため、全容を理解するのは早かった。
日光「それは奇妙な【縁】だ……無理矢理連れて行かれた【古代】で後見人をされた【大海主之王】が、【現代】では弟君……。【亜神】は、これも見越していたのだろうか……」
日光が厳かに、どこか恐れを抱くようなトーンで呟く。
梓「ねえねえ、一寸伯父様たちを強制転移させた張本人って……ぶっちゃけ“サクちゃん”と“チルちゃん”でしょ?」
さらりと爆弾発言を投下する梓。彼女は【道徳天尊】の【転生戦士】という破格のポジションにいるため、世界の最高権力者たる【亜神】を、まるで近所の友達かペットのように愛称で呼ぶ悪癖がある。
月光「【生神】と【死神】……」
あまりにもフランクすぎる梓の呼び方に、背中に冷や汗を流しながら、月光がその【亜神】の名を補足した。
月光「かの二柱は、【時間を司る亜神】。やはり、あの不可解な【強制転移】は、あの方々の御業であったか……」

将成「ということは、梓嬢」
将成が、あえて確証を得るための───言質を取るための質問を投げかける。
将成「【時間の神】であれば、燎センパイと、かつての【大海主之王】が同一人物であると見抜くことなど、容易いということか?」
梓「うーん、それはどうかな?」
梓は人差し指を顎に当てて、少しだけ小首をかしげた。

梓が自らの推論を述べ終えた、その時だった。画面の向こうで、ようやく鶴姫のホールドから脱出した燎が、衣服の襟を整えながらフッと不敵に笑った。
燎『偶然……か。フッ、どちらかと言えば、我の“願い”が時を越えて届いた、と言うべきかもしれん』
往時を回顧しているためか、燎の一人称が自然と【前世】のそれ───“【大海主之王】の一人称だった我”と口にしている。
燎『【大海主之王】としての我が肉体は、結果として幕末の激動期まで生き永らえることとなった……。その今際の際、我が最後に思ったのだ。……次に生まれ変わるのなら、一寸、ウラシマの“未来人兄弟”の弟にでもなってみたら、さぞかしオモシロい人生になりそうだな、とな』
画面の向こうで悪戯っぽく笑う燎の姿を見て、一同は一様に沈黙した。
画面の向こうで悪戯っぽく笑う燎の姿を見て、一同は一様に沈黙した。
かつて【古代】の世界で交わった歪な縁が、巡り巡って【現代】の“兄弟”という温かな形に収束した。
それが精緻に組まれた神のプログラミング(摂理)によるものなのか、あるいは【海の先住王】が死に際に抱いた、ただの気まぐれな願いが世界のシステムをバグらせた奇跡なのか───。
それこそはまさに、文字通り“神のみぞ知る”領域の話であった。
【※脚注】
(※1)【回生】転生戦士における転生のこと。
(※2)【宿体】魂が宿る体のこと。常人との区別のために呼び方を変えている。
【派遣先・ルート選択】
サクヤ「はい、皆様こんにちは!ここからは少し趣向を変えまして……なんと豪華にストーリーが分岐いたします!パチパチパチ☆」
(満面の笑みで拍手するサクヤを、チルヤがクールに横目で睨みつける)
チルヤ「……うるさい。静かにしなさい。ここからはルール説明よ。一回しか言わないから、一度で理解してね。この先の分岐選択ではリンクを踏んで好きなルートを選ぶのよ!」
サクヤ「はーい、チルヤ……補足ありがとう!さてさて、用意された道は3本。うち1本が本命の『正規ストーリー』です!ヒントも書いてありますし、キャラクター名を見ただけで『あ、これだな』ってバレバレな気もしますけど……。なんと他の2本は、“ざまぁ系”や“笑いオチ系”の贅沢なご褒美(?)ルートとなってまーす!そういうお味が大好物な方は、あえて地雷原に飛び込んでみるのも一興ですよ♪」
チルヤ「選んだルートによっては、さらにその先で分岐しているものもあるわ。歴史やストーリーの辻褄がちょっと怪しくなっても、気にしないで進みなさい。分岐ルートを抜けた後は、ちゃんと現代パートに合流する仕様になっているから。……まあ、このシステム自体、時代設定が噛み合ってないんだけどね」
サクチル「それでは、どのルートを選んでも最終的にはちゃんと現代パートに辿り着ける安心設計でお届けします。あなたのお好みの将軍(と、その運命)をお選びください!」
東北ルート:大彦
サクヤ「野心家でちょっと尊大なオジさん好きには、たまらないルートだと思いますよ♪」
※注意:北の大地には、最凶の“鬼神三きょうだい”が待ち構えています。おじ様の尊厳が木っ端微塵に破壊される様を、笑顔で見届けたい方はこちらへ!
丹波ルート:武埴安
サクヤ「知的でダンディなオジサマ好きなら、間違いなくこの方でしょう!」
※注意:そこにいるのは、絶対に怒らせてはいけない山の先住王代理。戦ったらアカン状態から、どうやって命からがら逃げ帰るのか?プレイヤー様の生還報告待ちとなる、スリル満点の待機ルートです。
邪馬台国ルート:御真木・彦国葺・日子坐【推奨・正規ストーリー】
チルヤ「……ハァ。イケメン大王、頼れるイケオジ、そして圧倒的覇気を放つ美幼児好きは、こっちへ来なさい。私がまともに案内するのはここだけよ」
未知なる女王の国「邪馬台国」へと切り込む、大和の未来を拓く本命の物語。まともなストーリーを楽しみたい方は、迷わずこちらを選択してください。
サクヤ「さてさて……分岐ルートの前にネタバレしたい方はこちら!」
➡閑話へ
(注※正しくは『東北の蝦夷』ですが、人名や地名で『蝦夷』が使用されるので、混乱を避ける為に『戎』と漢字を置き換えています。)
◇古代パート
大彦「……っ議議議議議ぃぃぃぃーーーッッ!!!」
【東北】へ向かう悪路の途中、大彦は地響きのような歯ぎしりを炸裂させていた。
不機嫌。圧倒的不機嫌。理由は極めてシンプル、自分の派遣先が未開の地【東北】だからである。出立の際、あの嫌味ったらしい腹違いの弟・武埴安の「お先でーす」と言わんばかりのドヤ顔。
あるいは、調子に乗った甥の大王・御真木の「武埴安が一番乗りで戻るそうだ!」という無神経な煽り。思い出すだけで血管がはち切れそうだ。
大彦「何が社の測量だ!あんな不毛な田舎、適当に足跡だけつけて、さっさと帰ってやらぁ!」
大彦は完全にナメきっていた。【東北】に住まう【戎(えみし)】など、しょせん言葉も通じぬ野蛮な田舎部族。大和の精鋭にかかれば、一ひねりだと。
だが、現実は非情であった。
「突撃ィィィーーーッッ!!」
「ヒヒーンッ!」
【東北】の地を踏むや否や、地平線を埋め尽くす怒涛の砂煙。現れたのは、【戎(えみし)の首長(おびと)】阿弖流為(アテルイ)が率いる、一糸乱れぬ最強の“騎馬兵団”だった。
大彦「な、なんだあいつらの馬の速さは!?ちょっ、待っ、【大和】の戦術にない動きをするなーーーッ!?」
ナメプ大彦軍、初手で完膚なきまでに蹴散らされる。
命からがら這々の体で逃げ出した大彦たちだったが、逃げ込んだ先の渓谷で待ち構えていたのは、【戎(えみし)の副首長】母禮(モレ)率いる“弓兵団”の容赦ない一斉射撃だった。
大彦「ひぎぃっ!?どこから撃ってきてるんだ!?連携が良すぎるだろ!」
武闘派を気取る【御真木大王】の陣営にすら、これほど統率された戦術家はいない。大彦はプライドも大義名分もすべて放り出し、部下たちを引き連れて泥だらけになりながら逃げ惑う羽目になった。
◇古代パート
大彦「はぁ、はぁ……死ぬ、死ぬかと思ったぞ……っ」
すっかり日が暮れた頃、満身創痍の大彦一行は、山麓にポツンと佇む一軒の民家に辿り着いた。
藁にもすがる思いで一宿を頼むと、そこに住む姉弟は、怪しい大和の男たちを快く迎え入れてくれたのだが───。
家の中に一歩足を踏み入れた瞬間、大彦軍の面々は恐怖に絶句した。
「……で、でけぇえええええ!!」
そこにいた弟は、まるで動く岩石。天井に届かんばかりの超巨漢。
さきほど最強の騎馬兵&弓兵にボコボコにされたばかりの大彦軍は、生物としての圧倒的な格の違いを前に、完全に心を折られていた。
しかし。ただ一人、我が道を突き進む男がいた。
大彦の視線は、巨漢の背後に隠れるように佇んでいた、一人の『姉』へと釘付けになる。
大彦(……な、ななな、なんという絶世の美女だ……っ!!)
その美しさたるや、もし【大和の都】に住まわせようものなら、男たちが夜な夜な求婚に訪れる“妻問いの行列”が、巨大な大蛇の体長すら超えるであろうレベル。
さっきまで「東北マジ最悪、大和に帰りたい」と半泣きで愚痴っていた大彦の顔が、一瞬で鼻の下を限界まで伸ばしきった、だらしなーーーいエロオヤジのそれに変貌する。
大彦(神様仏様太陽神様ありがとう!【東北】最高!この美女とお近づきになれるなら、ここまでの災難は全部帳消しだわ!)
現金極まるオッサンであった。
「ちょうど今、長兄が留守にしておりまして。部屋が空いておりますので、どうぞお使いください」
美女の鈴を転がすような透き通る声に、大彦は「うむうむ!」と激しく頭を縦に振る。
当然のように、大彦は姉弟と同じ屋根の下の特等席へ。
一方、むさ苦しい部下たちは軒先で野宿である。東北の夜の殺人級の冷え込みを舐めてはいけないが、今の彼にとってはどうでもよかった。
巨漢の弟が「あっちの馬小屋なら藁があって温かいぞ。お前らは俺と一緒に来い」と親切に部下たちを連れて部屋を出ていき、ついに室内には、大彦と美女の二人きりになった。
大彦「いやぁ、こんな山奥に君のような大輪の花が咲いているとはねぇ。どうかね? 朕……いや、私の妻となって、華やかな【大和の都】へ来る気はないかね? 悪いようにはしないよぉ、グフフ……」
全年齢対象の限界に挑むかのように、年甲斐もなく激しく盛りまくるイタいオッサン。
美女の手を握ろうと、いやらしい手つきでじりじりと距離を詰めていく。
大彦「さあ、恥ずかしがらずに、こっちへおいで───」
ボッ!!!(鈍く重い破裂音)
大彦「ぶふぇっ!?」
何が起きたのかを理解する間もなく。
大彦の意識は、白目とともに唐突に暗転した。
◇古代パート
◆吊るされた男
大彦「……う、ううむ……?」
どれほどの時間が経っただろうか。後頭部にジンジンとした激痛を感じながら大彦が目を覚ますと、視界が上下逆さまになっていた。
大彦「えっ?え、何これ?どういうこと……っ!?」
身ぐるみを完璧に剥がされ、下着一丁の状態で天井から逆さに吊るされている。そんな大彦の目の前には、冷ややかな目で見下ろす絶世の美女の姉、岩石のような巨漢の弟。そして───見慣れない圧倒的グラフィックの美男子が立っていた。
「……大嶽、鈴鹿。阿弖流為(アテルイ)たちが言っていた『大和からの間抜けな侵入者』ってのは、この軟弱なオッサンのことか?」
美男子が大彦を一瞥し、心底ゴミを見るような溜息をついた。大彦は吊るされたまま、必死に頭を回転させる。
大彦「こ、これはどういう状況だ!?まさか君、その美女の夫か!?す、すまない!私はてっきり彼女が未婚だと思ってだな、ハハハ……」
すると、巨漢の弟───【大嶽丸】が、大彦から没収した【太刀】をまじまじと見つめながら言った。
大嶽丸「へぇ、これなかなかの名刀じゃん。いただき!」
大彦「ああっ!俺の宝剣が!?」
さらに、絶世の美女───【鈴鹿御前】が、大彦の財布(巾着袋)をジャラジャラと揺らしながら喜色満面で叫ぶ。
鈴鹿「うっわ、コイツ金(カネ)持ってんじゃん!最高!」
先ほどまでの淑やかな雰囲気はどこへやら、完全にガラの悪い山賊のテンションである。この時代、現金を持ち歩く者は“身分の高い者”だ。美男子は、大彦の着物の刺繍を見てフムと顎をさすった。
「着物も上物だな。【大和】のそこそこ格式高い【豪族】、いや、【王族】の血筋か」
大嶽丸「さすが兄貴!目が高い!」
この美男子は、留守にしていた長兄で、【盗賊三兄弟】兼【山の先住者】の【鬼神・悪路王】であった。
【悪路王】は、“大和の物資”と“東北の物資”を物々交換するために【大和】の【山の先住王代理・闇嶽之王】の元へ出かけていたのだが、【丹波】に測量調査と言って怪しい動きをしていた【大和朝廷の者】を【天狗族】の【太郎坊】と【僧正坊】が捕まえ、【闇嶽之王】が【土蜘蛛】をけしかけて食わせようとして───【闇嶽之王】はフリと言っていたが、絶対にガチだった───裏事情を洗いざらい吐かせていた場面にかち合った。それで大慌てで戻ってきたのだ。
悪路王「戻る途中で阿弖流為(アテルイ)たちから『変な余所者を騎馬兵と弓兵で払い下げた』と聞いてな。急いでねぐらに帰ってみれば、留守中にお前が妹の鈴鹿にキモい絡み方をしていただろう?だから後ろから一撃で気絶させた。……以上が現在の状況だ」
大彦「な、何だと……?【丹波】にいた【大和朝廷の者】を捕まえた……?」
大彦は吊るされた状態で、ハッと目を見開いた。【丹波】にいた【大和朝廷の者】。最速で戻ると豪語していた奴。
大彦「あ、ハハ……ハハハハハ!武埴安か!あいつ、もう捕まってやんの!ざまぁみやがれぇぇーーーッッ!!」
自分がほぼ全裸で吊るされているのも忘れ、ライバルの大失態に大爆笑する大彦。そんな身の程知らずなオッサンに、【鈴鹿御前】が信じられないものを見る目で吐き捨てた。
鈴鹿御前「……ハッ、てめえのナリ見てから笑えよ、クソオヤジ!言葉遣い丁寧にするの、マジ疲れたわ……」
大嶽丸「なぁ兄貴、このオッサン、身ぐるみ剥がれて人質の自覚ねぇのかな?脳みそ湧いてんぞギャハハハ!」
【大嶽丸】がゲラゲラと笑う。【悪路王】は呆れ果てて首を振ると、【大嶽丸】に尋ねた。
悪路王「大嶽、コイツが連れてきた部下たちはどうした?」
大嶽丸「あ、それなら阿弖流為と母禮(モレ)に全員引き渡した。今頃は『大彦様が捕まったぞーーーっ!』って大慌てで、大和に向かって馬を爆走させて逃げ帰ってる頃じゃね?」
それを聞いた【鈴鹿御前】が、ケラケラと蓮っ葉に笑う。
鈴鹿御前「あはは!部下にソッコーで置き去りにされてんじゃん!人望なさすぎでしょウケる!」
大彦「えっ、みんな帰っちゃったの!?」
大彦の顔から、ようやく血の気が引いていった。
◆その頃、大和の都
大彦の部下「報告、報告いたしますッッ!!」
大彦の部下たちが、命からがら、【大和】へと駆け込んできた。彼らを迎えたのは、一足早く
(物理的に捕まって)釈放され、【大和】へと逃げ戻っていた武埴安である。
武埴安「な、何事だ、そんなに慌てて……。大彦の兄上は、【東北】でさぞ素晴らしい成果を……」
ゼィゼィと息を切らす部下の一人が、涙目で叫んだ。
大彦の部下「お、大彦様が……!【東北】の化け物みたいな姉弟に引っかかり、身ぐるみ剥がれて人質にされましたぁぁーーーッッ!!」
武埴安「……は?」
武埴安の思考が停止した。一番乗りで戻ってドヤ顔をするはずが、自分も情報漏洩の失態を犯し、さらに脳筋の兄は【東北】でエロに狂って人質に。
武埴安「う、嘘だろ……あの馬鹿兄上は、何やっているんだーーーッッ!!」
【大和】の作戦本部に、武埴安の(色んな意味で終わった)という絶望の悲鳴が、虚しくこだまするのであった。
断章 東北の戎(えみし)(完)
➔【派遣先・ルート選択】
➔閑話へ
◇古代パート
【丹波】に派遣された武埴安の任務は、周囲の誰の目にも「近場で楽勝な作業」に見えていた。
しかし───この地には、武埴安の異母弟がいた。
それも、【大和の王族】でありながら、この地に根を張る【先住者】の血を引く混血の皇子である。
「……大宝(おおたから)の引き抜き、見事なものですな、武埴安王」
神社の裏手に広がる、陽の光さえ遮るほどに鬱蒼とした杉林。
冷ややかでありながら、どこか朗らかな鈴の音を思わせる声が、黙々と測量用の木杭を打ち込んでいた武埴安の背中に突き刺さった。
振り返った武埴安の視線に飛び込んできたのは、息を呑むほどに美しい一人の青年だった。
衣服の裾が泥で汚れることなど端から気にも留めず、切り株に腰掛けているその姿は、まるで一幅の美しい絵画のようだ。
彼の名は、彦湯牟須美。
【先代・ワカネコヒコ大王(オオキミ)】の息子たちの中で、最も【太陽神】の名残りが色濃く現れている皇子であった。
本来なら【アマテラスの直系】として「天孫」となるはずの血筋。しかし、【大和】が開拓される遥か昔からこの丹波に根を張る【先住者】たちは、彼を親しみを込めて【月の民(ツクヨミの子孫)】と呼ぶ。【太陽神】の弟である【ツクヨミの末裔】扱いをすることで、彼を【大和の理(ことわり)】から切り離し、同朋として迎え入れているのだ。
異端にして妖艶なる皇子。その白皙の美貌には、人間離れした「不老長寿」の気配さえ微かに漂っている。
武埴安「おや、これは彦湯牟須美の君。このような埃っぽい実務の場に、どのような御用で?」
武埴安は人懐っこい職人のような笑みを顔に貼り付けたまま応じた。
だが、その細くしなやかな指先は、いつでも墨縄を手放して得物に手をかけられるよう、かすかに遊ばせている。
神社の再建───それが単なる公共事業ではなく、有事の際の「避難路」と「逃走経路」を割り出すための極秘任務であるという朝廷の意図を、この敏い【ツクヨミの末裔】に見透かされるわけにはいかない。
彦湯牟須美「用、というほどのものではありません。ただ……【大王(御真木)】が発した『四道将軍』の触れ回りが、あまりに鮮やかだったものでね」
彦湯牟須美は、自らの内に流れる【大和】の理とは異なる古い血を憐れむように、自身の透き通るような白い手の甲を見つめた。長い睫毛が、その涼やかな瞳に暗い影を落とす。
彦湯牟須美「……丹波に誰よりも深い繋がりを持つのは、この私だ。【月の民】である私が動けば、他領地の領主たちも少しは素直に首を縦に振ったでしょうに。【大王】の側近に加えられたのは、私ではなく彦国葺だった」
武埴安「はは、彦国葺殿は実直な男ですから。泥臭い平定作業には彼のような実務派が向いていると判断されたのでしょう」
彦湯牟須美「実直、ですか」
彦湯牟須美は立ち上がり、武埴安の持つ木製の歩測計へとゆっくり歩み寄った。
その足音は驚くほど静かで、まるで気配を完全に消した極上の肉食獣のようだ。
彦湯牟須美「私には、こう聞こえるのですよ。『異端の者は、どれほど【大和】に尽くそうとも、肝心な時には背後を任せられぬ』とね。だから私は、こうして【大王】の『目』として動く貴方たちの測量を、ただ眺めることしかできない」
あまりにも美しく、そして深く張り詰められた沈黙が二人の間を支配する。
武埴安は胸の内で冷や汗が流れるのを感じていた。
彦湯牟須美のこの静かな不満は、一歩間違えれば【朝廷】への牙(反逆の火種)になり得る。何より、彼がこの測量の本質に、直感的に気づいている何よりの証拠でもあった。
武埴安「……お言葉が過ぎますよ、彦湯牟須美王。我らは皆、【大王】の御心のままに動く手足に過ぎません」
彦湯牟須美「ええ、分かっていますとも」
彦湯牟須美は、ふっと花が綻ぶような妖艶な笑みを浮かべ、武埴安のすぐ傍らで足を止めた。
そして、丹波の山々の峰を、慈しむような、あるいは冷徹に値踏みするような目で見つめる。
彦湯牟須美「ですが、武埴安殿。【佐保】の閉ざされた呪に手を焼く【大和】が、次に欲するのは【丹波】の『鉄』と『船』だ。力で奪えば、古い血の者たちは全てを焼き尽くして逃げるでしょう。【大王】が本当に私を、私の血を必要とする時は……そう遠くないはずです」
それだけを言い残すと、美しき異端の皇子はひらりと身を翻し、木々の喧騒の中へと鮮やかに消えていった。
残された武埴安は、手にした巻尺を、白くなるほど強く握りしめる。
武埴安(【先住者】、か……。敵に回れば、【佐保一族】どもよりよほど厄介な相手になるな)
切り株に残された微かな香りと、張り詰めた空気だけが、その場に虚しく残されていた。
【丹波ルート・前編終了】
───武埴安の測量は続く。しかしこの先、後編にて待つのは、
絶対にエンカウントしてはイケナイ【先住王代理】。
(第陸節へつづく)
◇古代パート
森の奥へと戻った彦湯牟須美は、不機嫌に美しい眉をひそめていた。
自分を遠ざけた【御真木大王】への苛立ちは募るばかりだ。
まさか、御真木が弱冠五歳の幼児(日子坐)を政治に関わらせるという「斜め上すぎる人事」を断行しているとは夢にも思わない彦湯牟須美は、自分がガチで【大王】から警戒されているのだと、盛大に拗らせていた。
彦湯牟須美「……少し、【大和】の鼻を明かしてやりましょうか」
ちょっとした意趣返しのつもりで、彦湯牟須美は術を使い、【愛宕の太郎坊】と【鞍馬の僧正坊】の元へ【使い魔】を飛ばした。『【大和朝廷】が怪しい動きをしている』という、不穏な伝令を持たせて。
───だが、これが最悪の噛み合わせを生むことになる。
運悪く、その頃、【鞍馬の僧正坊】の元には、山を統べる真の王たる【山の先住王代理・闇嶽之王】が訪れていたのだ。
【人間】たちが身勝手にも「間引き」や「みなし子」として山に差し出してきた【生贄の子供たち】を引き取り、【窺視(※1)】として育成していた【闇嶽之王】。彼は、ちょうどその子供たちを【朝廷】の動向を探るために連れ出しにきていた。
そこへ、彦湯牟須美からの【使い魔】が舞い降りたのである。
闇嶽之王「【僧正】、【愛宕山】から【太郎】を連れて来い!俺は先に行って【朝廷】の潜入者を捕まえておく!」
燃え盛るような、圧倒的な王の覇気を放ちながら、【闇嶽之王】は即座に立ち上がった。
その白銀の髪と鋭い眼光は、見る者の魂を射すくめるほどの峻烈な美しさを湛えている。彼は自身の配下である【土蜘蛛】を二人従え、またたく間に風となって駆け去っていった。
残された【鞍馬の僧正坊】は、呆れたようにそう呟いたが、止める気は毛頭なかった。
なぜなら、【闇嶽之王】が【大和の人間】を【土蜘蛛】の餌にするという、極上の「脅迫シーン」が見られそうだったからだ。
僧正坊「とっとと【太郎坊】を連れて行かねえと、嶽王が【大和の人間】をギャフンする所、見逃しちまう!」
赤みを帯びた肌に、背中には夜を切り取ったかのような美しい【黒い翼】。【人間】を遥かに超越した超絶美形な生き物───【天狗】は、優雅に【翼】を広げて後を追った。
◆無慈悲なる尋問と、苦渋の撤退
「ひ、ひぃぃっ……!助けてくれ、頼む、助けて……っ!」
【僧正坊】と【太郎坊】が現場に到着したとき、そこはすでに阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。途中で【悪路王】に行きあったので彼も連れて来た。
【朝廷】の潜入重臣たちのうち、二人がすでに【土蜘蛛】によって片足を綺麗にかじり取られ、その精神的ショックと激痛のあまり失神し、血の海に伏している。
そして、その中心に、腰を抜かしてガタガタと震えている指揮官───武埴安がいた。
闇嶽之王「おい、【大和の鼠】。貴様らの真の狙いは何だ。言わねば残りの脚も、その腕も、全てこの者たちの餌にするぞ」
【闇嶽之王】は、冷酷極まる美貌で武埴安を見下ろし、淡々と尋問を続けていた。
───有言実行の王としては完璧な仕事なのだが。
見るに見かねた【天狗】二人が仲裁に入り、【闇嶽之王】の尋問を一時中断させた。
【太郎坊】は、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしている男の顔を覗き込み、「あ」と声を上げた。
太郎坊「こいつ、【山背】の武埴安じゃねぇか。嶽王、こいつ一応【王族】だぜ!ここで殺ると後々面倒なことになる!」
闇嶽之王「【王族】か……」
【闇嶽之王】は不快そうに目を細めた。確かに、【朝廷の王族】を直接手にかけるのは本意ではない。
闇嶽之王「ならば、そこの二人を置いて帰れ」
【闇嶽之王】は、【土蜘蛛】に片足を食われて失神している部下二人を指差した。彼らを【生贄】として置いていくならば、武埴安たちの命は助け、手打ちにしてやるという譲歩のつもりだっ
た。
武埴安「な……っ、部下を見捨てて、自分だけ逃げろというのか……!?」
武埴安は震える声で言った。片足を失ったとはいえ、彼らは【大和】へ連れ帰れば、【武官】としては無理でも、有能な【文官】としてまだ使える。何より、部下を売るなどという汚名を背負いたくはなかった。
言い返そうとする武埴安の前に、【悪路王】がすっと立ちはだかり、冷徹に囁く。
その声音には、拒絶を許さない絶対的な圧があった。
目の前には、冷酷な美貌の【先住王】。横には、人知を超えた【先住者】たち。
武埴安は、きつく唇を噛み締め、血が出るほどに拳を握りしめた。これ以上抗えば、自分を含めた全員がこの山の肥やしになるだけだ。
武埴安「……撤退だ……!」
武埴安は、絞り出すような声で命じた。
気絶した二人の部下を置き去りにし、背中を向けて逃げ出す武埴安の胸中を、激しい罪悪感と、耐え難い後味の悪さが支配する。
楽勝な任務のはずだった【丹波】の地で、【朝廷の将軍】は、【先住者】の圧倒的な力の前にただ平伏し、惨めにも【大和】へと逃げ帰るしかなかったのである。
※脚注
【窺見(うかみ)】……密偵など諜報活動をする者。
断章 丹波の異母弟(完)
丹波ルートは後日譚があります。
後日譚では、驚きのネタバレがされます。
◇古代パート
後ろ髪を引かれるように、何度もこちらを振り返りながら去っていく武埴安王。その背中には、隠しきれない疲労困憊の気配が色濃く漂っていた。
太郎坊「やれやれ……」
【大天狗】の1人である【太郎坊】は、冷徹な視線を足元へと落とした。
そこにあるのは、武埴安が【闇嶽之王】への非礼の詫びとして置いていった貢ぎ物───もとい、【生贄】として差し出された【人間】の男が二人。
彼らは【闇嶽之王】に同伴した【土蜘蛛】(硬そうなギザギザの尻尾が生えてる以外は人間の姿)2人にそれぞれ片足を喰われ、手当てすらされずに転がされている。太腿の傷口から溢れ出る鮮血は、すでに土壌を赤黒く染め上げていた。放っておけば、命の灯火が消えるのも時間の問題だろう。
闇嶽之王「太郎。あの【王族】……文官のようなツラをしていたが、ただの阿呆か?」
不意に、【闇嶽之王】が億劫そうに口を開いた。あまりにも辛辣な物言いに、傍らに控えていたもう1人の【大天狗】、【僧正坊】が形の良い眉をひそめる。
僧正坊「嶽王、いくらなんでも言い方が酷えよ」
太郎坊「うーん、でもな。あの【王族】の中じゃ、ヒコユ(彦湯牟須美)の次くらいには頭がキレる傑物だと思ってたんだけどなぁ」
【太郎坊】が頬をかきながら苦笑する。だが、【闇嶽之王】の冷ややかな眼差しは変わらない。
闇嶽之王「ならば見損ないだな。あの男、この“土蜘蛛の餌”が、【狗奴国】の放った【窺視(※)】だと気づいていなかったぞ」
僧正坊「マジか?『はいそうですか』って即断即決で差し出しちゃ体裁が悪いから、わざと食い下がってみせただけじゃねえのか?」
太郎坊「そうそう。建前だけでも抵抗しておかないと、『部下想いの武埴安王』の面目が丸潰れだからな!」
【天狗】たちの推測に、【闇嶽之王】は小さく首を振った。
闇嶽之王「いや……あれは本気だ。片足を失わせた後も、文官として手元で使うつもりだった様子がある。……その歪んだ執着という意味では、太郎の言う通り“部下想い”なのだろうがな」
太郎坊「うわぁ、武埴安、ダメダメじゃね」
僧正坊「全くだ。あんな奴が【大王】にでもなってみろ、【大和】は【狗奴国】に裏から支配されて一発で詰むぞ」
【大和】の暗雲立ち込める明日を憂う【天狗】たちを余所に、【闇嶽之王】は「いっそ【狗奴国】に支配させた方が、【悪しき人間】が明確になって間引きやすい」などと、冗談とも本気ともつかぬ不穏な言葉を呟く。
【人間界】の困窮は凄まじい。生きるために我が子を捨てる親は後を絶たず、それを一概に「悪」と断じることもできなかった。流通が盛んで資産の潤沢なこの【丹波】であれば救いもあるが───【大和の都】は、いまだ蔓延した疫病の名残から抜け出せず、市井では堕胎や間引き、子捨てが日常茶飯事となっていた。
闇嶽之王「御真木だったな。今の【大和の大王】は」
【闇嶽之王】の問いに、2人の【天狗】が頷く。
闇嶽之王「視野の広い王のようだが……まずは自分の足元を見るべきだ。【大和の都】の市井すら不安定なままで【大和平定】を掲げるとは、随分と向こう見ずな【大王】ではないか」
太郎坊「嶽王、そりゃ仕方ねえよ。【人間】ってのは短命だ。自分が生きている間に【国】を立て直したいなら、多少の無謀をやらかさなきゃ何も遺せねえ」
僧正坊「そうだな……ニニギやイワレ(神武天皇)の時代は数百年の寿命があったが、代を重ねるごとにどんどん短命になってる。【太陽神の血】とやらが薄まってきてるのかねぇ」
闇嶽之王「今の御真木で、【十代目】か」
そう言葉にした瞬間、【闇嶽之王】は急激な目眩に襲われたように、うっと額を押さえた。そのただならぬ様子に、【太郎坊】と【僧正坊】の顔色が変わる。
太郎坊「嶽王!?どうした!」
僧正坊「まさか……この【生贄】ども、体内に【神殺しの毒】でも仕込んでやがったか!?」
【僧正坊】がキツい目付きで瀕死の【狗奴国の窺視】たちを睨みつけるが、【闇嶽之王】はそれを手で制した。
闇嶽之王「違う……。消えている……。イワレの子と、その孫の記憶が、俺の頭から綺麗に消え去っている!」
太郎坊「はあ!?いやいや、【王族】は無駄に子沢山だからな!ど忘れしただけだろ!」
【太郎坊】は笑い飛ばそうとした。しかし、【僧正坊】がハッと息を呑む。
僧正坊「……待て。あの【大王】に即位したガキと、その子供の名前……俺も思い出せねえ!」
太郎坊「おいおい、【天狗】がボケるわけねえだろ?ええっと、確か名前は……」
【太郎坊】も言葉を続けようとして、愕然と口を噤んだ。名前が出てこない。
太郎坊「嘘だろ……やべえ、俺までボケたのか!?」
闇嶽之王「3人同時に同じ記憶を失うなど、流石に異常だ。一体、何が起きて……」
【闇嶽之王】が深刻な表情で思考を巡らせた、その時。張り詰めた緊張感を木っ端微塵に打ち砕く、けたたましい悲鳴が響き渡った。
実は【亜神】と【天狗】は、あまり友好的ではない。
【天狗】は【山岳信仰】で【神】として奉られる存在なので、【天上界】の【神】である【亜神】と反発するのだ。おそろしく折り合いが悪い。
くすくす笑う【天狗】たちを尻目に、チルヤは表情を険しく引き締め、一気に核心を告げた。
チルヤ「ふざけてる場合じゃないの。……【邪馬台国】で起きていた【時間の繰り返し現象】が、ついにこの【人間界】の歴史へ深刻な影響を及ぼし始めたわ!」
その言葉を聞いた瞬間、【闇嶽之王】の脳裏で全ての点と線が繋がった。
【二代目大王】と【三代目大王】の記憶が、自身の頭から綺麗に消失していた理由。
闇嶽之王「……なるほど。すでに【二代目】と【三代目】は、歴史の因果ごと消失したというわけか。今の御真木は【十代目】。このまま過去が侵食され、【七代目大王】が消失すれば……【大和】から【大王の血脈】そのものが消滅する」
【闇嶽之王】の記憶では御真木の祖父が【七代目】で【八代目】はその祖父の兄弟だ。
闇嶽之王「俺たちは【先住者】だから、【人間】より記憶保持が長い……しかし【人間】は……」
サクヤ「もう【六代目】まで消えちゃったのよーう!」
サクヤの叫びに、【太郎坊】と【僧正坊】が怒髪天を突いた。
チルヤ「話を聞いてちょうだい!」
ビビりながらもチルヤは言葉を絞り出す。
チルヤ「最初は、ただ同じことを【くり返し】行われる世界が1つだけだったの!それが、今は3つに増えたのよ!」
闇嶽之王「単純計算で3倍速で【過去の事象】が消失しているな」
サクヤ「そうなの!後からできた【平行世界(歪み)】は、都度消してるの!でも、【核】になってる大元の【くり返し世界】を消さないと、増え続けるのよー!もう私たちの力じゃ収拾がつかないの!」
息を呑む一同に、サクヤとチルヤは、この世界の崩壊を引き起こしている致命的な原因を告げた。
御真木より【四代あとの未来の大王】───オオタラシナカツヒコ。彼は【神】の意志に背いて暴言を吐き、呪い殺される運命にある。そして、その最愛の妻であるオキナガタラシヒメが、夫の死という現実を受け入れられず、禁忌の力で『死に戻りの時間遡行』を永遠に繰り返しているのだという。
歴史を喰らう、終わりなき愛執のループ。
【時間を司る亜神】たちがもたらしたその絶望的な報告に、【古代】の大地が不穏に鳴動した。
※脚注
【窺視】…密偵、間諜のこと。
【管理者】…【世界の管理者】。現代では【亜神】と呼ばれる【十ニ柱の神】。古代では【管理者】と呼ばれている。
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◇古代パート
◆大王の密談と、美幼児の脳内
御真木「……ふふっ」
パカパカと心地よい蹄の音を響かせ、街道を進む
軍列。
御真木は、隣に馬を並べる和邇一族の長・彦国葺と、その胸に相乗りしている五歳児の異母弟・日子坐の無邪気な笑顔を見つめ、激しく心を癒やされていた。
表情には出さないが、御真木の内心は身悶えんばかりのデレ状態だった。
思えば、即位直後の最も重要な時期に【大和の都】を謎の疫病が襲った。【大王】である御真木自身の罹患という最悪の事態は免れたものの、【三輪山】への避難手配が「なぜか」遅れたせいで、何人もの兄弟たちが帰らぬ人となってしまったのだ。あの暗黒の自粛生活の傷を埋めてくれるのは、この可愛い弟だけである。
御真木「皆の者、前後に五間(約十メートル)ほど距離を取れ」
御真木が周囲の近習たちに命じると、気が利く部下たちは「御神託の件に違いない」「いや大王が弟君にデレたいだけだな」と察して、素早く距離を空けた。
これによって、御真木は彦国葺と腹を割った「政治(密談)」ができるようになった。
しかし、大いたずらな運命か───。御真木の胸を射抜いているこの美幼児・日子坐は、わずか三〜四歳にして彦国葺の馬に同乗し、実戦の修羅場をくぐり抜けてきた、ヤマト王権きっての『ガチ英才教育児』。大人の難しい話を「うにゃ?」という顔で聞き流すフリをしながら、その脳内細胞はフル回転していた。
彦国葺の目が細められた。やはり【大王】は気づいていたのだ。大彦が裏で手を回し、意図的に大王の避難を遅らせて王位継承者を間引こうとしていたことに。
御真木「して、朕が留守にしていた間の【大和周辺】の様子は?」
御真木が訊ねると、彦国葺は含みのある笑みを浮かべた。
彦国葺「【大王】の叔父君にあたる、彦湯牟須美王はご存知で?」
御真木「彦湯……おお!【丹波】のあの、えーと、名前が妙に長い叔父上か!」
御真木はちょっと考え込んでいたが、完全に名前が長すぎて覚えきれなかっただけである。領地は覚えていた。
実は、この時の「神社建築(という名の侵略)の測量」において、【丹波】の彦湯牟須美は、派遣されてきた武埴安に対して「大王は私より彦国葺を重用している」と不満を漏らしていたが───。
実は、あれはすべて壮大な「演技」であった。
彦国葺「我が【和邇一族】は、【丹波】の鉄を流通させる役目を担っておりますゆえ、彦湯牟須美様とはかねてより密な『同盟関係』にございます」
そう、二人の絆は極めて堅固。なんなら「日子坐が将来大きくなって男児をもうけたら、彦湯牟須美様の娘を嫁に」という、ガチガチの婚姻約束(後の史実となる)まで既に交わしているズブズブの仲なのだ。
彦国葺が「先代【ワカネコヒコ大王】の皇子である彦湯牟須美様が我が方(朝廷側)におられる以上、【畿内】の【豪族】どもは表面上、逆らえませぬ」と報告すると、御真木は少し申し訳なさそうに眉を下げた。
───まさかその頃、「最速でサクッと戻る」と豪語していた武埴安が、遭遇してはいけない最強の山神【闇嶽之王】と最悪のエンカウントを果たし、部下二人を【土蜘蛛】の餌(生贄)に捧げて失意と自己嫌悪のどん底で逃げ帰っているとは、この時の二人は知る由もなかった。
◆動く島と、海の先住王
密談を終え、御真木は「皆、戻れ」と近習たちを呼び戻した。
そして、視線を遥か瀬戸内海の向こうへと向ける。
御真木「クニブクよ。【大和】に不服従を貫く、あの【邪馬台国】の様子はどうだ?」
彦国葺「はっ……。実は既に『窺視(密偵)』を放って調査させているのですが、奇妙なことが起きております。誰も、あの国に辿り着けないのです」
御真木「辿り着けない?」
御真木が怪訝に片眉を上げる。
彦国葺「はい。島は確かにそこに見えているのですが、不可視の力に弾かれて侵入できません。まるで───」
御真木「まるで、南国の【常世の国】だな」
彦国葺「それだけではございません。あやつら……『移動』している形跡がございます」
御真木「何だと?」
彦国葺の報告に、御真木の瞳が鋭く輝いた。最初は【窺視】の気のせいだと思われていたが、明らかに日々、座標が書き換わっているのだという。
日子坐は兄のブレない野心に心中でツッコミを入れる。
御真木「それに、朕は避難生活の中で不思議な奇跡に出くわした。あの【三輪山の蛇神(オオモノヌシ)】が朕の夢枕に立たれたのだ。そしてオオタタネコを神主にするよう、直接お告げを授かった」
彦国葺「それは……なんと畏れ多くも貴重な経験をされましたな」
彦国葺が真摯に頭を垂れると、御真木は嬉しそうに口元を綻ばせた。
御真木「お前は笑わないのだな。大彦の奴など、朕が夢の話をしたら無礼にも大口を開けて爆笑しおった。武埴安は……笑いはしなかったが、『【大王】、自粛生活のストレスで頭がおかしくなったか』という目で朕を見ておったからな」
日子坐(あーあ、大彦のオッサン、完全にフラグ立てて【東北】に行ったなぁ……)
日子坐が冷ややかな視線を北に送っていると、突如、軍列の先頭から大慌てで伝令の兵が駆け戻ってきた。
「ほ、報告!報告いたしますッ!進行方向の海岸線に、お、恐るべき軍勢が出現!我らへ会談を申し入れています!」
御真木「何だと?どこの【豪族】だ」
御真木が問うと、伝令はガタガタと震えながらその名を口にした。
「豪族ではございません……!溢れんばかりの神気を放つ、あの【海の先住王】一派にございます!!」
「ッ……!」
御真木と彦国葺の間に激震が走った。
【邪馬台国】へ近付こうとした【窺視】が弾かれた理由。動く島。そのパズルが、一瞬で組み上がっていく。
御真木「まさか……【邪馬台国】は、【海の先住者】の縄張り、その不可侵領域だったというのか……!」
御真木は即座に馬のハミを引いた。
御真木「すぐに対面する!案内せよ!」
【海の先住王】は、【三輪山の蛇神】と同じく、この地上に君臨する本物の【神】である。
人の身で拒絶するという選択肢など、最初から存在しない。
───【大和の軍勢】の前に現れたのは、シャボン玉のような不可視の結界を纏い、悠然と海を往く、息を呑むほど巨大な『亀』であった。
◇古代パート
◆亀甲の上なる覇王と、伝説の系譜
瀬戸内から吹き抜ける潮風が、白砂の海岸を激しく揺らしていた。
【海の先住王】との極秘会談。【御真木大王】が伴ったのは、【父王】の代から【朝廷】を支える宿老・伊香色雄と、実戦の修羅場をくぐり抜けてきた名将・彦国葺のわずか二名。
本来ならば、五歳の幼き異母弟・日子坐は置いていくはずだった。しかし───。
『大海主之王様が、日子坐皇子だけは必ず連れてまいれと仰せです』
神の使者からもたらされた絶対の神託に、御真木はやむなく最愛の弟を同行させることにしたのだ。彦国葺の腕に抱かれた日子坐は、愛らしい瞳をしばたたかせながら、密かに周囲の霊気を探っていた。
「……待たせたな、【大和の大王(おおきみ)】よ!」
波打ち際に現れたのは、息を呑むような巨大な亀。その甲羅はまるで、精緻に組み上げられた城壁のような奇妙な質感を有している。その甲羅の上に、圧倒的な存在感を放つ超絶美丈夫が腰に手を当てて仁王立ちしていた。
【海の先住王】は【古竜神】だと伝わっている。流れるような紺碧の髪、神秘的な金色の瞳は伝承通り【古竜の証】だ。彼の左右には、元服前と思しき怜悧な美少年と、王に勝るとも劣らぬ体格を誇る屈強な美丈夫が控えている。その二人から放たれるオーラもまた、尋常なものではなかった。
大海主之王「我が【海の先住王・大海主之王】である!」
朗々と響く至高の声。誰もがその美しさと威圧感に平伏しかけたその時、王は不敵に微笑み、傍らの美丈夫を示した。
大海主之王「まずは紹介しよう。この者は……【ホオリ】だ。【天孫】よ、【日向三代(ひむかさんだい)】の【ホオリノミコト】だ」
その疑問を誘うように、大海主之王が愉快そうに喉を鳴らす。
大海主之王「ふはは!いや、そやつは【スクナビコナ】だ」
一瞬、全員の頭の中が真っ白になった。激しい衝撃のなか、真っ先に我に返ったのは宿老・伊香だった。
◆見透かされる建前、【狗奴国】の影
衝撃が走った自己紹介を終えると、【大海主之王】は不敵に目を細め、本題を切り出した。
大海主之王「我がその幼子を連れてこさせたのは、頭の固い大人には理解できぬ、荒唐無稽な話を今からするからだ。子供の柔らかい頭ならば、小難しい理屈抜きに記憶に留めておける。……大彦と武埴安がここにおらぬのは、実に僥倖であったな」
御真木「大彦はともかく……なぜ武埴安まで?」
御真木が首を傾げた。大彦の対人(神)受けの悪さは自覚していたが、部下からの人望が厚い武埴安まで同列に扱われたのが意外だったのだ。
大海主之王「【大王】よ。武埴安は慕われている、とでも思っているのか?」
【大海主之王】の射抜くような視線に、御真木は背筋が凍るのを覚えた。
御真木「はは……武埴安は、部下思いの良い男ですが……まあ……武のほうは可もなく不可もなく……ではあります」
大海主之王「ならば教えてやろう。その武埴安はな……旅先の丹波にて【山の先住王代理・闇嶽之王】と相対し、恐怖のあまり部下二人を【生贄】に差し出して命乞いし、涙目で【大和】へ逃げ帰ったぞ」
御真木「なっ……!?」
御真木は絶句した。あまりの衝撃に言葉を失う【大王】の後ろで、臣下二人の脳内にも嵐が吹き荒れる。
一瞬でそこまで思考を巡らせた伊香に対し、【大海主之王】はすべてを見透かしたように告げた。
大海主之王「その通り。嶽(闇嶽之王)が片付けた【生贄】の正体は、【大和】に潜入していた【狗奴国(くなこく)】の【窺視】二名だ」
実のところ、その裏では、【天狗】の【太郎坊】から事の顛末を聞いた彦湯牟須美が「ちょっとした意趣返しのつもりが、異母兄に大赤恥をかかせてしまった」と複雑な心境で反省していたのだが───何はともあれ、武埴安の失態は事実だった。
◆時空を超える「英雄」の謎
【大海主之王】は、長きに渡り【大王】の宿老を務める伊香と【大和一の将軍(いくさのきみ)】彦国葺へ「ソナタらのほうが事情を知っているだろう」と【先住王】への質問を許可した。
【大海主之王】が促すと、伊香が一歩前に出た。美しい宿老の瞳に、鋭い光が宿る。
彦国葺もこれに続く。
彦国葺「【邪馬台国】は元々、【九州の地】にあったはず。【狗奴国】は“露骨な男尊女卑”の国ゆえ、神託を聞く【女王・卑弥呼】を認めず、幾度も戦を仕掛けていると聞きますが……」
大海主之王「さすがは将軍(いくさのきみ)、耳が早いな」
【大海主之王】は満足げに頷いた。
素直に臣下の言葉を受け入れる御真木を見て、【大海主之王】は「良き王の器だな」と微笑んだ。己の足りぬ部分を臣下に補わせる、それこそ
が理想の調和だと。
大海主之王「お前たちがここへ来たのは、【邪馬台国】を武力で服従させるためであろう?だが、その必要はない。話し合いで解決する」
神の言葉に、御真木はバツが悪そうに視線を逸らした。神社建築の測量という建前のため、今の御真木は軽装だ。馬を駆るための最低限の胸当てや脛当てしかつけておらず、実戦になれば防御力は皆無に近い。全てを見透かされているのだ。
大海主之王「それに、今の【邪馬台国】には、恐るべき【英雄】がいる。名を【タケル】という」
御真木「英雄……!」
武闘派たる御真木の血が騒ぐ。猛者がいるなら、ぜひ手合わせをしてみたい。
御真木「会ってみたいものだな!」
大海主之王「残念だが、それは叶わん。その【英雄】は……すでに死んでいる」
御真木「何と!【狗奴国】との戦で討ち死にいたしましたか!?」
当然の結末を想像した御真木だったが、歴戦の将である彦国葺は、王の言葉の奇妙な『歪み』を鋭く捉えていた。
彦国葺「……僭越ながら、【大海主之王様】。お言葉に些か引っかかりを覚えます。“討たれた”のであれば、“戦死”、あるいは“討ち死に”と仰るはず。なぜ、ただ“死んでいる”と?」
大海主之王「くはは!さすがだ」
【大海主之王】は妖しく、そして残酷なほどに美しい笑みを深めた。ここからが、子供の柔らかい頭にしか受け入れられぬ、“世界の理(ことわり)”を揺るがす禁忌の真実。
大海主之王「これこそが、我が話す荒唐無稽な物語の核心。……【英雄・タケル】はな、この世界において、“死”と“甦り”を、幾度も幾度も繰り返しているのだ」
死と再生を繰り返す、終わらない【英雄】の輪廻。
常識を超越した神の告白に、御真木たちは、ただただ深い混沌の渦へと突き落とされるのだった。
◇古代パート・正道ルート
◆クリティカルな神託と、始祖のノリ
【邪馬台国】の島が実際に移動しているという事実。そして、そこには“死と蘇生”を幾度も繰り返す【タケル】という【英雄】がいるという、神々の口から告げられた信じがたい二重のクリティカル───。
常人ならば発狂しかねない超常現象の連発に、【大和の大王・御真木】は激しく動揺した。
しかし、彼はかつて【三輪山】で【オオモノヌシ】の恐るべき【御神託】を直にその身で受け止めた【超常経験者】である。ここで取り乱しては王の威厳がすたる、と自身に深く言い聞かせた。
【大海主之王】は至高の微笑みを浮かべた。
【天津神】、【国津神】に並ぶ【外津神(※)】と呼ばれる【神格】こそが、この【先住王の一族】なのだ。地上の【大王】の霊性をあらかじめ見越していたのだろう。
かつての出雲の主の輝かしいイメージが音を立てて崩れ去る一言だったが、誰もそれを指摘することはできなかった。
◆理(ことわり)の外の箱庭と、三代先の血統証明
大海主之王「【大王】の質問に対する答えだが」
【大海主之王】の金色の瞳が、すっと冷徹に細められる。
【ホオリ】が嬉しそうに指を鳴らす。
大海主之王「初めに言っておこう。【邪馬台国】の【女王・卑弥呼】と【英雄・タケル】は、この世界の『理(ことわり)の外の者』なのだ」
【大海主之王】が告げると、間髪入れずに【スクナ】がその小さな唇を開いた。
スクナ「補足するとね。【女王・卑弥呼】も【英雄・タケル】も……そこの【和邇一族】の系譜に連なる、遥か『未来の人間』なんだよ」
【国造りの神・スクナビコナ】その人が放った、あまりにも説得力がありすぎる爆弾発言。
『邪馬台国には未来人が住んでいる。そして彼らを世界の理(ことわり)から逸脱させないために、【スクナビコナ】が隔離用の国を造った』───その壮大すぎる背景を、御真木たちは勝手に想像して納得した。
御真木「【和邇一族】の、“未来人”……」
御真木は、彦国葺の胸に抱かれた、まだ五歳児の可愛い弟・日子坐を凝視した。彦国葺はすでに高齢だ。消去法で考えれば、答えは一つしかない。
御真木「ということは……イマスの子か、あるいは孫なのでしょうか!?」
スクナ「曾孫だね」
【スクナ】が間髪入れずに即答した。あまりのピンポイントな指定に、次の言葉が出てこない。常人離れした聡明さを持つ五歳の美幼児・日子坐も、さすがにこれには数秒ほど思考が停止した。
御真木は大彦の娘を妃に迎えている。
ここで彼女との間に子が生まれれば、大彦の増長は目に余るものになるだろう。
だが、日子坐の後世が三世代先まで輝かしく保証されていると分かった今、誰が次の【皇太子】になろうとも、日子坐にその後見(バックアップ)を任せれば、大彦の好き勝手にはさせまい───という、冷徹な王権の絵図を完成させたのだ。
◆神々のジョブチェンジ、体験版の戦いへ
そんな【大和の兄弟】の脳内を知ってか知らずか、【大海主之王】は愉しげに目を細めた。
大海主之王「どうだ?俄かには信じがたいなら、実際に【邪馬台国】に入って、その『理(ことわり)の外の繰り返し』を体験してみるか?」
その口ぶりは完全に、「君たち体験してみたいでしょ?いいよ、入れてあげるよ」という軽いノリだった。
御真木「えっ、【邪馬台国】に入れてもらえるのですか!?」
御真木が身を乗り出す。
大海主之王「うむ。その『繰り返し』とやらには、現在三つの種類があってな……
一つ、【異形の妖鬼】と化した【元祖・卑弥呼】と戦う。
二つ、【御神託】の場で、【タケル】が“呪殺される”のを特等席で見物する。
三つ、襲撃してくる粗暴な【狗奴国(くなこく)】との防衛戦をする。
……この三つだ」
御真木「ちょっと待ってください!」
御真木は美形な顔を台無しにしてツッコミを入れた。
【大海主之王】は事もなげに言った。
大海主之王「しかし……戦闘行為であれば、我の【通力】を使って、【大王】たちを【邪馬台国】の『臨時の将軍』として戦に直接参戦できるようにしてやろう。伊香は、頭が良さそうだから『軍師』で決まりだな」
神々の手によって、勝手に役割分担(ジョブチェンジ)が決められていく。
御真木「お待ちください!イマスはまだ5歳ですよ!?そんな小さな子を戦場にやれるわけがありません!」
御真木は完全に、過保護で行き過ぎたお兄ちゃん全開のモードになっていた。大切な天使を危機に晒すなど、【大王】として、いや兄として断じて許せるはずがない。
スクナ「じゃあ、僕がちょっとだけ大きくしてあげるよ」
【スクナ】が、端正な顔に悪戯っぽい笑みを浮かべた。
【大海主之王】が快活に笑い飛ばす。
「僕が許可を出したら、いつでも島に入れるからね」と、【スクナ】が人差し指を立ててウィンクした。やはりこの動く【邪馬台国】は、【国造りの神】たる彼が仕掛けた箱庭なのだろう。
御真木は小さくため息をつき、覚悟を決めたように神々を見上げた。
御真木「分かりました……。ですが、いざ一歩踏み込んだら、バフッと結界で弾かれるようなお茶目なオチは無しにしてくださいよ?」
麗しき【大和の王族】と【将軍(いくさのきみ)】たちは、神々の導きにより、ついに時空の歪む神秘の島へと足を踏み入れる。
➔派遣先・ルート選択
➔閑話へ
※脚注
【外津神(トツガミ)】
書物などに記されていない歴史の外の【神】。
実は【天津神】【国津神】より【神格】は上。
【先住王】や【先住王の子孫】、【先住者】の【首長(おびと)】が該当する。
◇現代パート
◆暴露された亜神の過去
日本書紀が神功皇后が卑弥呼だったと誘導するような記述をしていることや【四道将軍・吉備津彦】の姉・百襲比売=卑弥呼説は、つまるところ「卑弥呼を王族の皇女、あるいは名門豪族の令嬢ということにしたい」という朝廷側の見栄が透けて見える。
【夜狩省(※)】トップの将成(まさなり)、そして【鬼道衆(※)】のツートップである日光と月光は、自分たちの読み通りの答え合わせに、至福の満足感に浸っていた。
しかし───この部屋に集う【風魔頭領一族】が、そんなエリートたちにいつまでも安息をくれるはずがなかった。
月光「おい、個人情報が筒抜けすぎるだろ……」
月光が本気で引いたような声を漏らす。
月光「いくら忍の総統(たばね)だからって、ストーカーじみててちょっと引くわー……」
日光「ならば……【風魔】が【伊勢新九郎(北条早雲)】の末裔だということも当然知っているわけだな」
日光は隠す必要なしとばかりにあけすけに言った。
実は、【伊勢新九郎】と【初代小太郎(くノ一)】は内縁関係にあり、二人の間には【二代目小太郎】(第1子・男)と【三代目小太郎】(第2子・女)が生まれているのだ。
環「ふはは!私の【過去世(※)】こそが、その【初代小太郎】だ!」
話に聞き耳を立てていた環(たまき)が、豪快に胸を張った。
環「まあ、当時は【足利茶々丸】を名乗って、色々とヤンチャさせてもらったがな!」
桂「環様……【足利茶々丸】のあの凄惨な【下剋上】を『ヤンチャ』の一言で片付けるとは……」
苦笑したのは桂だ。彼は【太乙真人】の【転生戦士(※)】であり、【過去世】では【飛び加藤】こと名忍・【加藤段蔵】だった。
環と桂は、激動の【戦国初期】をリアルタイムで駆け抜けた【過去世】を持っていた。
「ちなみに!」と環はさらに声を張り上げる。
環「知らんものは知らんのだ!物心ついた時にはすでに義兄弟だったからな!詳しいことを知っているとすれば、私のオヤジとオフクロ……ではなく、当時の【初代風魔小太郎】の両親【相模坊】と【伯耆女天狗】だな」
朔「【相模】と【伯耆】。【山の先住者】の【天狗】だ」
すかさず朔が冷めた声で補足を加えた。
【五代目小太郎紅蓮】の【過去世】を持つ朔にとっては曾祖父母にあたる存在だが、呼び捨てである。それというのも、彼の【魂の起源】は【天狗】の親玉たる【二代目山の先住王・闇嶽之王】なのだから当然だった。
朔「実はな、鬼童丸と小源太は【亜神】になる前は【山の先住者】だったんだよ。鬼童丸は【鬼神・蒼炎鬼】、小源太は【天狗・颶風坊】ってのが【真名(まな)】だ。しかも小源太は鬼童丸の姉を嫁にしてるから、文字通りガチの義兄弟だな」
将成「おいおい何でもアリか【亜神】!!」
将成がキレ気味に頭を抱えた。
将成「っていうか【真名】!世界の管理者の個神(?)情報をそんなあっさりバラしていいのか!?」
【世界を管理】する十二柱の【亜神】たちの顔ぶれは、驚くほどバラエティ豊富だ。元奴隷の無敗の【拳奴】、【仏教】の【宗派開祖の僧侶】、【妖怪仙人】(尸解仙)、【八百万の神】からの離脱組。そして【先住者】───。
将成は日光と月光に「この情報は国家機密、絶対に外に漏らすな」とアイコンタクトで固く頷き合った。
◆ 亜神は元・召使い!? 真田十勇士の「ムサい」真実
「それでな」と、遙が楽しげに話を継ぐ。
遙「【元祖卑弥呼ルート】で壹与の【守護者】をしていた【鬼童丸・小源太・晶竜・王虎】の四柱は、【戦国時代】には【人間界】に降下して【忍】をやってたんだよ。鬼童丸と小源太が【風魔忍】だったのは環ちゃんの話で分かっただろ?」
将成「待ってくれ、残る二人は……?」
将成が冷や汗を流す中、桂が懐かしそうに目を細めた。
桂「晶竜と王虎は【真田】だ。俺の【過去世・加藤段蔵】だった頃の話だ。……アイツら武田信虎(信玄の父)の命令で、【はぐれ忍(フリーランス)】だった俺を暗殺しようとしたことがあった。ちなみに晶竜が【由利鎌之助】、王虎が【霧隠才蔵】だ」
癸「時代が合わないんじゃないかね? 【真田十勇士】が活躍したのは【武田信玄】の晩年から【武田勝頼】の代、あるいは【真田幸村】の時代のはずだが……信虎公の時代では早すぎる」
桂「癸お祖父様、【真田十勇士】は代々の“襲名制”だ。月光殿のところの【八犬士】と同じ」
桂に話を振られ、月光は「ああ、その通りだ」と苦笑しながら頷く。
月光の本名は、『里見匡』。あの『南総里見八犬伝』のモデルになった【里見家】の子孫である。
【現代】では親友の日光【伊勢家(北条氏)】と月光【里見家】だが、【戦国時代】では互いのご先祖様が血で血を洗う敵対関係だったのだから、歴史とは皮肉なものだ。
癸「【真田十勇士】といえば、【鉄砲使い】、【僧侶】、【獣使い】、【くノ一】、【巫女】までいて華やかなイメージだが……信虎公の時代の十勇士もそうだったのかい?」
と癸は興味津々で訊く。
「いや」と桂は即答した。
桂「あの頃の十勇士は……とにかくムサかった!」
「そうそう!」と環も鼻で笑う。
環「【くノ一】が1人もいなかったからな!完全な編成失敗だ!」
潜入任務に女性がいないなど致命的だと切り捨てる環に、桂がそっと手を挙げた。
朔「他にも、喉元を凝視されて喉仏でバレるとか、手がゴツゴツしすぎてて男だと一発で見抜かれるケースもあるな」
朔の極めて実践的な指摘に、日光は「ふむ、これからは怪しい奴の手と喉元を注視しよう」と手帳にメモを取り始めた。
◆豪華すぎるVRゲーム
月光「【忍】の観察眼は素晴らしいが……そもそも、なぜ【亜神】ともあろう四柱が、揃って【人間界】に降下していたんだ?」
月光の純粋な疑問に、朔が首を振った。
朔「いや、降下じゃない。アイツらどういう経緯なのか……【人間】になってた」
環「そうだな。少なくとも私の義兄弟だった頃の鬼童丸と小源太は、【人間】だった」
朔と環は同意見だ。
すると、甲が不思議そうに眉をひそめた。
甲「妙な話だねえ。【亜神】になる前は【先住者】や【尸解仙(妖怪仙人)】だったんだろう? 言い方は悪いが、【人間】に堕とされたのは、『劣化』してるじゃないか!」
確かに言い方が悪いが【先住者】や【尸解仙】は、【長命種】なので【悠久の生命】に比べれば平均五十年〜六十年(戦国時代の平均寿命)の【人間】は、劣化したことになるのだろう。
梓「もし同点(4対4)になった場合は自動的に【有罪】になるからね。神様のシステムってこういうところだけは無駄に合理的!」
【道徳天尊】の【転生戦士】の梓が補足する。
燎(前世・大海主之王)と梓(前世・道徳天尊)の【魂の起源】は【天地開闢】から始まったので、【神々の円卓会議】やら【掟】やらには明るい。
『ちなみに』と、燎が話を邪馬台国に戻した。
燎『【元祖卑弥呼ルート】における四柱は、【現代】でいう【VRゲームのプレイヤー】のようなものだ。ナカツヒコの【呪殺】を回避するのが本筋(メインルート)だが、【死に戻りのくり返し】をやりすぎた歪みで複数の【並行世界(パラレルワールド)】が生まれてしまった。それを彼らがゲームのように攻略して、バグをクリアしていったわけだ』
【時間を司る亜神】が絡むゲームのプレイヤーが、これまた【亜神】。なんとも豪華すぎる特製ゲームだが、将成は【並行世界】の発生理由に納得しつつ、次の疑問をぶつけた。
将成「では、【戦国時代】に彼ら四柱が同時に【天罰】で【人間】に堕とされていた理由は?一体どんな大罪を犯したのですか?」
「ズボラしたんだろ」と朔があっさり切り捨てた。
と洸が冷ややかに付け足す。【前世】の【黒竜王】の時に、従者だった晶竜の性格を知り尽くしているのだ。
洸「晶竜は無駄に好奇心旺盛だからな。【雷神】と【風神】が【人間界】に堕とされるって聞いて、『ならば、私も【人間界】へ降ろしてほしい』……とかなんとかノリで言って付いて行ったんだよ。王虎は相棒だから巻き添えだ」
洸の【竜神】の口調マネに遙が「似てるクオリティ高けえな」と言う。
遙は【二郎真君】の【転生戦士】で、【竜種の王族】とは【親族関係】になるので、元従者の【竜神】のことはよく知っている。
「【竜神】……大迷惑だな!」と甲が呆れ果てる。
【亜神】の相棒事情がシュール過ぎる。
将成「なるほど、実際に【天罰】を喰らったのは【雷神様】と【風神様】だけですか」
将成が納得すると、影結がここぞとばかりにドヤ顔を決めた。
【アンチ上級国民】のガチ組織【夜狩省】のトップが放った悲痛な叫びは、ただただ虚しく響き渡るのだった。
※脚注
【夜狩省《よがりしょう》】
【ギルド】を統括する【行政機関】。【国】の機関だが、【省長】は【楠木一族】の世襲制という特殊性から【民間】寄り。故に政治的圧力など【上級国民】の権力が一切通用しない【アンチ上級国民ガチ組織】。
【鬼道衆《きどうしゅう》】
東洋魔術師ギルドのこと。
東洋は【魔術】の種類が多いので、【東洋魔術】のことを大雑把に【鬼道】という呼び方をする。
【亜神(あしん)】
世界を管理する十二柱の超高次元生命体(神)。それぞれ異なる概念を司るため万能ではないことからこう呼ばれます。一部は人間界の影の組織で暗躍しています。
【過去世】
複数の【前世】がある者は、最初の【前世】を【前世】と言い2回目から後の【前世】は【過去世】と言う。
【転生戦士(てんせいせんし)】
転生術により永遠に魂が生まれ変わり続ける、絶対に消滅しない存在。胎児の時点で前世の記憶と全能力を使える超弩級チート持ちであり、本作のメインキャラクターたちがこの属性にあたります。
この度は、『忍【回想】古墳時代篇 第貳章(上)』をご覧いただき、誠にありがとうございます。
本作は「第貳章(上)」と銘打っておりますが、前巻にあたる第壹章をお読みでない初見の読者様でも、一巻完結のエンタメ作品として楽しんでいただける仕様にしております。
では、なぜあえて古典的な「章・節」の形式をとっているのか───。
それは、現代パートこそ完全オリジナルで構築しているものの、古代パートは『古事記』をベースにしています。
『古事記』が天地開闢から歴代天皇の治世へと節を重ねて描かれているように、本作もまたその歴史のロマンと形式を踏襲したかったからです。
また、私事ではございますが、Kindleでの出版も本作で4冊目を数えることとなりました。
過去3冊であとがきを書き尽くし、早くもネタが枯渇してしまったため───今作からは「あとがき」改め「解説」と銘打ち、作品の裏側について少しお話しさせていただこうと思います。
そもそも『忍【回想】古墳時代篇』は、現在投稿サイトにて連載中の本伝『忍 柳生武藝帖篇』から派生したスピンオフ作品です(現在は本伝をお休みしてこちらを執筆中ですが……)。
本伝を書き進めるうち、登場人物が増え、それぞれのバックボーンや情報量が膨大になっていきました。
しかし、私自身が「他人様の作られた膨大な設定資料集」を覚えるのが苦手な性質です。
それならば、「キャラクターの設定資料をそのまま並べるのではなく、一つの重厚な物語として体験してもらい、『あー、こんな奴らいたな』と血肉として思い出してもらったほうが、作品世界を深くご理解いただけるのではないか」───そう思い立ち、スピンオフという形でキャラクターたちの起源(ルーツ)を描くことにいたしました。
その結果、彼らのルーツは天地開闢、さらには『古事記』や中国神話の仙人の領域へと遡ることになりました。
歴史や神話というものは、単なる年号や文字の羅列として覚えるよりも、ドラマや想像力を通して追体験したほうが圧倒的に記憶に残ります。読者の皆様にも、この物語の箱庭を楽しみながら、キャラクターたちの生き様を頭に焼き付けていただけたなら、書き手としてこれ以上の喜びはありません。
なお、投稿サイトでの公開時にも明記しておりますが、本作は敬愛する氷室冴子氏の『銀の海金の大地』や、山藍紫姫子氏の『闇の継承シリーズ』といった伝説的な大河ロマン・伝奇小説への深いオマージュを込めて執筆しています。90年代の黄金期を彩ったあの熱量の高いファンタジーや伝奇の空気を、現代のWEB発のエンタメとしてどう昇華させるか───その挑戦の軌跡を感じていただければ幸いです。
解説からお読みくださる読者の方もいらっしゃるかと存じますが(かくいう私も解説から読みます!)───長々と語りすぎて疲れてしまっては本末転倒ですので、本日はこのあたりで筆を置かせていただきます。
私は毎回、本との出会いは一期一会と持論にしています。
ですので締めの挨拶も───
それでは皆様、次回の一期一会で!
2026年10月17日 発行 初版
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アニメ、ゲーム、ミステリー、時代劇が好きです。 好きなアニメは『ガンダムシリーズ』、『鋼の錬金術師』。 好きなゲームは『スーパーロボット大戦』。 好きな映画は黒澤明監督の『七人の侍』。 好きな時代劇は、『影の軍団』『必殺シリーズ』。 好きな作家は、江戸川乱歩、京極夏彦、山田風太郎、池波正太郎、藤沢周平、大藪春彦、栗本薫、山藍紫姫子、吉原理恵子、夢枕獏、田中芳樹、菊地秀行、吉岡平、荒俣宏です。(敬称略してます) 最近のマンガやライトノベルでは、『葬送のフリーレン』『薬屋のひとりごと』『Dr.STONE』『転生したらスライムだった件』『けものみち』(アニメでは頭に旗揚!が付いてる)『捨てられ聖女の異世界ごはん旅』など、日常を重視したファンタジー系が好きです。