社会統計学者のジャック・アレンは、来日して十四年。本業は、統計の専門知識を生かしてのコンサルティングだが、その傍らで、文化交流の一環として、何人かの日本人に英語を教える仕事を続けている。
ジャックは、ここのところ、なにもかもが、上手く行っていないと感じている―難聴を患い、妻とは諍いが絶えず、取り組みたかった仕事は、同僚に「横取り」される。雑誌を開けば、大学時代の友人のサクセス・ストーリー。
「なんでこう、他のやつにばかり、いい風が吹くのか」
そんな思いを抱えて過ごしていたある日、彼は、同僚の紹介で、新しい英会話の生徒、川喜多奈那子と出会う。絵の勉強をするために、イギリスに留学する予定で、その準備として英会話に力を入れたいという彼女は、自分のここ数年の暮らしについて綴った英語の作文を、添削して欲しいと依頼する。
興味本位でその依頼を引き受けたものの、自分よりはるかに年下で、さほど面白い人生経験を積んでいるとも思えない日本人女性の「作文」に、当初、ジャックは、何の期待も抱いてはいない。ところが…
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