福島県の甲状腺スクリーニング健診でがんと診断された子どもたちはたいへん多く、市民の不安が高まった。調査検討委員会の専門家は放射線被ばくが原因とは考えにくいとする一方で、統計的に有意とする学者もいるが今の時点で結論づけることはむずかしい。
そんな中で2014年6月、アメリカ合衆国が60余年前に太平洋マーシャル諸島で行った、水爆実験による放射性降下物で被ばくした島民たちのがんリスクに関する評価報告書のデジタルデータが利用可能になった。アメリカ国立衛生研究所報告「ビキニとエニウェトク核兵器実験からの放射性降下物と被ばくに関するマーシャル諸島の放射線量とがんリスク:概要」である。
この報告書は、水爆実験の放射性降下物による被ばくをアメリカ政府機関が公式に認め、被ばく線量の増加につれ、がんリスクも増加したことを明確に記している。この中で、筆者が最も驚いたことは、高い被ばくを受けたとするロンゲラップ環礁周辺のセシウム137の沈着量が、今も人々が住む福島と同程度のレベルと図示されていることだった。
前代未聞の放射線被ばく被害を生んだ水爆実験と、福島原発事故の影響は同じレベルとなるのか。同報告書の執筆者らにメールして聞いた内容と現地取材をもとに、憂える福島の将来を考察する。
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