「冬の駅のホームに白い吐息を吐きながら佇むオーバーコートを着たサラリーマンたち。
私にはそんな彼らの心に宿った悲しみがわかる。
栄光を求めた遠い日々を忘れることも立ち返ることもできずに、ただぎこちなく過ごす日々。――
そうだった。私にはそんな彼らの悲しみがわかる。
なぜなら?
なぜなら私も彼らもそしてまたすべての男たちが、朝日の中で電車を待つ哀しきパンチドランカーなのだから……。」
ボクシング。パンチドランカー。――それは鬱病のサラリーマンが出会った、あまりにも哀しい男の寓話だった。
前編 「鬱の風景」
ある朝一夜の酒に酔いつぶれた私は、見知らぬ駅のホームに佇んでいた。その町で私を待ち受けていた不思議な転生の物語。
後編 「哀しきパンチドランカー」
「世界」の栄光を目指すボクサーを襲った不慮の事故? 記憶をなくした私を前に、誰もが口を閉ざすその真相とは……
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