「ご縁に感謝」「地域密着型社長飯」「#パスタ #談合 #ハッシュタグ」——。
地鎮祭よりもインスタ映え、見積書よりも自撮り。
会社は祖父の代から続いているけれど、今の社長が継いでいるのは“土建業”ではなく“いいね!”の文化。
本書は、地方にありがちな「名ばかり社長」の生態を徹底観察した風刺的エッセーです。
SNSに生き、和風パスタに死す。
娘のインスタを真似して紙カップの写真を投稿し、顧客の家族写真を勝手にアップして「#感謝」で包み込むその感覚。
情報はタイムラインからしか得られず、世界を語るのはすべてSNS経由。
無教養を“人柄”と勘違いしたまま還暦を迎えるその姿に、笑いとため息が交錯します。
・Facebookでしか存在できない人
・ハッシュタグで人生を飾る人
・いいね!がないと呼吸できない人
・そしてなぜか、どこにでもいる人
――この本は、そんな《身近な誰か》にそっくりかもしれません。
でも安心してください、完全なるフィクションです。
(…ええ、たとえそっくりな人がご近所にいたとしても。)
老害一歩手前のSNS中毒者たちを笑い飛ばしながら、自分はそうならないように。
読むとゾッとして笑える、“ネット時代の人間観察バイブル”です。
【本文より抜粋】
彼の投稿には、必ずこう書いてある。
「本日も、素晴らしいご縁に感謝。」
弁当の写真に添えられていた。
なぜか冷凍のコロッケと卵焼きに、ご縁を感じたらしい。
たぶん、醤油差しとの縁だろう。知らんけど。
—
地鎮祭で撮った顧客家族の写真を、本人の了承もなくFacebookにアップし、
「#笑顔が素敵なご家族」「#今日もご縁に感謝」
と書くその姿に、誰もが思った。
“この人、家より先にSNSに引き渡してるな”と。
—
誰の投稿を見ても、彼の「いいね!」がある。
まるで呪いのスタンプ。
「SNSを開けば、そこにいる」。
タイムラインの神か。守護霊か。
—
彼の和風パスタは、すべてに麺つゆがかかっている。
それを「素材の味を活かしてます」と誇る。
だが、冷蔵庫の残り物を炒めただけのそれを、「創作料理」と呼ぶあたり、もうだいぶ終わっている。
—
まるで本人は気づいていない。
誰も「社長」だとは思っていないことに。
ただ、たまにランチは奢ってくれる。
だから嫌われすぎないだけの話だ。
本を入手していないとコメントは書けません。