「川が呼んでいる。」「でも、だんだん呼んでいるのは森だという気がしてきた。」
本を入手していないとコメントは書けません。
一気に読んでしまいました。
素直な語りは自然と吸い込まれるように体に入り、幸せな読後感であった。
アキという人間の女の子が清流の主であるアマゴと心を通わせ、
川と森に抱かれたふしぎな時間と空間に迷い込む。
幻想的で思わず引きずり込まれる世界を森の住人であるツキノワグマが森と川とともに語ると言う設定が素晴らしい。
一つ一つの描写の中に自然と人間の心が繋がる一瞬を切り取る文章は、読者の脳裏に鮮やかな情景を浮かび上がらせる。
作者が自然と通じ合った経験を持っているに違いないと読者に思わせるリアリティーがある。
イノチとタマシイが交錯する輪廻の世界を行き来するアマゴ族の物語は、自然の前では儚い存在にすぎないヒトへの救済の
メッセージだろうか。