この本は、既刊「最後の花摘み」の続巻で未完結です。まだ途上のため、「最後の花摘み」の広報宣伝も兼ねて無料公開しています。お気に召しましたら「最後の花摘み」のほうも是非手にとってみてください。
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花は落日に燃え。うつくしく青ざめた夕暮れが行き場を失ってさまよう。
たとえば整ったかたちの指先に塗られた爪色の、深みと鮮やかさだけが信じられる。それが誓いとは無縁だから。曖昧な現実感への片思い。それだけが私たちの交わせるすべてだ。
曇天と日々の渦。
希望は首を括り、讃歌は蒼褪め、栄光は逃げ出そうとしている。
この残酷な世界で、私たちは問うことしか許されないのでしょうか。断崖に咲くカトレアのように。答えは摘み取られる前に朽ちてゆきます。私たちは一等うつくしく、残酷に降るこの雨にきっとこれからも打たれつづけるのです。
いつか愛した指先も、ひさしくなぞった面影も、「さよなら」はそのぜんぶに背を向けて屋上から身を投げる。
赤と橙で編んだ金魚。記憶のあやとり。
──記憶を回遊する春
──白んだ空に揮発する夏
──映写機から投影される秋
──明滅をくりかえす冬
助言というもの自体がそもそもいびつで不完全なものです。誰も相手のすべてを知り得ないし、もしもあらゆる背景や状況を考慮して語られるアドバイスがあるとしたら、それは唯一イコール何も語らないことです。他愛ない個人的な動機で語られる言葉に意味があります。
白く曇った窓に指先でねがいをしるす。誰かに見られたら叶わないから、見つかるまえにもう一度指先でなぞって消す。そうやってあなたに見つからないままのねがいを私はもうじゅうねん持ちつづけている。
炭酸水に沈む、自罰感情とレモン。
息も絶え絶えな内省が仰ぎ見る視界には、匿名の住人たちが振り下ろした正しさで撲殺された死体が山と積まれている。
孤独には等高線が引けない。
出来ることと、出来ないことが明確になっていくが、それは敗北ではない。
退屈な「愛している」を出し抜いて、その場かぎりの「好き」が略奪する。
君臨する、簒奪者としての夏。
紅茶 / セロファン / 明度を落とした照明 / うずくまる猫
──本文より抜粋
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